(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ペプチドリンカーが、剛性リンカー、可動性リンカー、及び酵素的に切断可能なリンカーのうちの1つ以上から選択される、請求項4に記載の前記p97融合タンパク質。
治療を必要とする対象におけるリソソーム蓄積症を治療するための、請求項1〜9のいずれかに記載のp97融合タンパク質または請求項10に記載の薬学的組成物を含む組成物。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実践は、具体的に別様に示されない限り、分子生物学の従来の方法、及び当該技術分野内の組換えDNA技法を採用し、これらの多くは例証目的で下に記載される。そのような技法は文献において詳細に説明されている。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3
rd Edition,2000)、DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.)、Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984)、Oligonucleotide Synthesis:Methods and Applications(P.Herdewijn,ed.,2004)、Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985)、Nucleic Acid Hybridization:Modern Applications(Buzdin and Lukyanov,eds.,2009)、Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984)、Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986)、Freshney,R.I.(2005)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,5
th Ed.Hoboken NJ,John Wiley & Sons、B.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(3
rd Edition 2010)、Farrell,R.,RNA Methodologies:A Laboratory Guide for Isolation and Characterization(3
rd Edition 2005)を参照されたい。
【0032】
本明細書に引用される全ての公開公報、特許、及び特許出願は、ここに参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0033】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似または同等の任意の方法及び材料を本発明の実践または試験において使用することができるが、ある特定の例示的な方法及び材料を本明細書に記載する。本発明の目的に関して、以下の用語を下に定義する。
【0034】
「1つの(a)」及び「1つの(an)」という冠詞は、1つまたは1つを上回る(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法上の目的語を指すように、本明細書において使用される。例として、「1つの要素(an element)」とは、1つの要素または1つを上回る要素を意味する。
【0035】
「約」は、基準の量(quantity)、水準、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%の大きさで異なる、量(quantity)、水準、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さを意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、天然型及び非天然型のアミノ酸の両方、ならびにアミノ酸類似体及び模倣物を意味するように意図される。天然型アミノ酸としては、タンパク質生合成中に活用される20種類のL−アミノ酸、ならびに例えば4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン、及びオルニチン等の他のものが挙げられる。非天然型アミノ酸としては、例えば、D−アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p−フルオロフェニルアラニン、エチオニン等が挙げられ、これらは当業者には既知である。アミノ酸類似体としては、天然型アミノ酸及び非天然型アミノ酸の変性形態が挙げられる。そのような変性は、例えば、アミノ酸における化学基及び部分の置換または置き換え、あるいはアミノ酸の誘導体化によるものを含み得る。アミノ酸模倣物としては、例えば、基準アミノ酸の電荷及び電荷間隔特性等の性質と機能的に類似する性質を提示する有機構造物が挙げられる。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造物は、天然型Argアミノ酸の側鎖のe−アミノ基と類似する分子空間内に位置し、それと同程度の可動性を有する正電荷部分を有することになる。模倣物はまた、アミノ酸またはアミノ酸官能基の最適な間隔及び電荷相互作用を維持するような、拘束された構造物も含む。どのような構造物が機能的に等価なアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を構成するかは、当業者ならば既知であるか、決定することができる。
【0037】
本明細書を通じて、文脈が別様に要求しない限り、語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、明言されたステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群の包含を示唆するが、任意の他のステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群の除外は示唆しないように理解される。「からなる」は、語句「からなる」の後に続くものを含み、それに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要である、あるいは必須であり、他の要素は存在してはならないことを示す。「から本質的になる」は、その語句の後に列挙される任意の要素を含み、それらの列挙された要素に関する本開示内で特定された活性または作用に干渉しない、あるいは寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要である、あるいは必須であることを示すが、他の要素は任意選択であり、それらが、列挙された要素の活性または作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してもよいか、あるいは存在してはならないことを示す。
【0038】
用語「抱合体」は、薬剤または他の分子、例えば生物学的に活性な分子の、p97ポリペプチドまたはp97配列への共有結合もしくはリンケージまたは非共有結合もしくはリンケージの結果として形成される実体を指すことを意図する。抱合体ポリペプチドの一例は、「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」、すなわち、元々別個のポリペプチドをコードしていた2つ以上のコード配列の接合を通じて形成されたポリペプチドであり、接合されたコード配列の翻訳は、それら別個のポリペプチドのそれぞれに由来する機能性を典型的には伴う、単一の融合ポリペプチドを結果としてもたらす。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「機能」及び「機能性」等は、生物学的、酵素的、または治療上の機能を指す。
【0040】
「相同性」は、一致するアミノ酸の百分率数、または保存的置換を構築するアミノ酸の百分率数を指す。相同性は、GAP(Deveraux et al.,Nucleic Acids Research.12,387−395,1984)等の配列比較プログラムを用いて決定することができ、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。このようにして、本明細書に引用される配列に対して、類似の長さまたは実質的に異なる長さの配列を、アライメントへのギャップの挿入で比較することができ、そのようなギャップは、例えばGAPで使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0041】
「単離された」は、ある材料がその天然状態において通常付随する構成要素を、実質的または本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」等は、本明細書で使用する場合、その天然の細胞環境から、ならびに細胞の他の構成要素との会合からのペプチドまたはポリペプチドのインビトロ単離及び/または精製を含み、すなわち、それはインビボ物質と有意には会合していない。
【0042】
用語「リンケージ」、「リンカー」、「リンカー部分」、または「L」は、本明細書において、p97ポリペプチドを目的の薬剤から分離するため、または例えば2つ以上の薬剤が結合してp97抱合体または融合タンパク質を形成している場合に、第1の薬剤を別の薬剤から分離するために使用することができるリンカーを指すように使用される。リンカーは、生理学的に安定であってもよく、酵素的に分解可能なリンカー等の解放可能なリンカー(例えば、タンパク質切断可能なリンカー)を含んでもよい。ある特定の態様において、リンカーは、例えば、p97融合タンパク質の一部としてのペプチドリンカーであってもよい。一部の態様において、リンカーは、非ペプチドリンカーまたは非タンパク質性リンカーであってもよい。一部の態様において、リンカーは、ナノ粒子等の粒子であってもよい。
【0043】
用語「調整する」及び「改変する」は、典型的には、統計学的に有意な、あるいは生理学的に有意な量または程度で、対照に対して「増加させる」、「増進する」、または「刺激する」、ならびに「減少させる」、「低減する」ことを含む。「増加された」、「刺激された」、または「増進された」量は、典型的には「統計学的に有意な」量であり、組成物無し(例えば、本発明の融合タンパク質の不在)、または対照組成物、試料、もしくは試験対象によって生成された量の、1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例えば500、1000倍)(1を上回る全ての整数及びその中間の小数点を含む、例えば1.5、1.6、1.7、1.8等)の増加を含み得る。「減少された」または「低減された」量は、典型的には「統計学的に有意な」量であり、組成物無しまたは対照組成物によって生成された量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少を含み得、その間の全ての整数が含まれる。非限定的一例として、対照は、酵素活性、血液脳関門を越える輸送/送達の量もしくは速度、中枢神経系組織への分散の速度及び/もしくは水準、ならびに/または薬剤/タンパク質単独と比較した、p97融合タンパク質の、血漿、中枢神経系組織、もしくは任意の他の全身性もしくは末梢非中枢神経系組織でのC
max等の活性を比較することができる。比較及び「統計学的に有意な」量の他の例が、本明細書に記載される。
【0044】
ある特定の実施形態において、組成物中の任意の所与の薬剤(例えば、融合タンパク質等のp97抱合体)の「純度」は、具体的に定義され得る。例えば、ある特定の組成物は、例えば、決して限定するものではないが、化合物を分離、同定、及び定量化するために生化学及び分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの周知の形態である、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される際、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(その間の全ての小数を含む)純粋な薬剤を含み得る。
【0045】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において交換可能に使用されて、アミノ酸残基のポリマー、ならびにそれらの変異型及び合成類似体を指す。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然型アミノ酸の化学類似体等の合成非天然型アミノ酸であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然型アミノ酸ポリマーに適用される。本明細書に記載されるポリペプチドは、特定の長さの生成物に限定されず、したがって、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質がポリペプチドの定義内に含まれ、そのような用語は、具体的に別様に示されない限り、本明細書において交換可能に使用され得る。本明細書に記載されるポリペプチドはまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等の発現後修飾、ならびに天然型及び非天然型の両方の、当分野において既知の他の修飾も含み得る。ポリペプチドは完全なタンパク質であってもよく、あるいはその部分配列、フラグメント、変異型、または誘導体であってもよい。
【0046】
「生理学的に切断可能」または「加水分解性」または「分解可能な」結合とは、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)結合である。結合の水中での加水分解の傾向は、2つの中心原子を接続するリンケージの一般型だけでなく、これらの中心原子に付着する置換基にも依存することになる。適切な、加水分解的に不安定または脆弱なリンケージとしては、限定されるものではないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、酸無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、チオエステル、チオールエステル、炭酸塩、ならびにヒドラゾン、ペプチド、及びオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0047】
「解放可能なリンカー」としては、限定されるものではないが、生理学的に切断可能なリンカー及び酵素的に分解可能なリンカーが挙げられる。したがって、「解放可能なリンカー」とは、自然発生的な加水分解、または生理学的条件下での、ある他の機序(例えば、酵素触媒、酸触媒、塩基触媒等)による切断のいずれかを受け得るリンカーである。例えば、「解放可能なリンカー」は、駆動力としてプロトン(例えば、イオン化可能な水素原子、Hα)の塩基抽出を有する、脱離反応を伴い得る。本明細書の目的に関して、「解放可能なリンカー」は「分解可能なリンカー」と同義である。「酵素的に分解可能なリンケージ」としては、リンケージ、例えば、1つ以上の酵素、例えばペプチダーゼまたはプロテアーゼによる分解を受けるアミノ酸配列が挙げられる。特定の実施形態において、解放可能なリンカーは、pH7.4、25℃、例えば生理学的pH、人体の温度(例えば、インビボ)において、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、または約96時間以下の半減期を有する。
【0048】
用語「基準配列」は、別の配列が比較される核酸コード配列またはアミノ酸配列を一般的には指す。本明細書に記載される全てのポリペプチド及びポリヌクレオチド配列は、名称で記載されるもの及び配列一覧に記載されるものを含んで、基準配列として含まれる。
【0049】
用語「配列同一性」または、例えば、「と50%一致する配列」を含むことは、本明細書で使用する場合、比較の窓において、各ヌクレオチドベースで、あるいは各アミノ酸ベースで配列が一致する程度を指す。したがって、「配列同一性の百分率」は、比較の窓において最適にアライメントされた2つの配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が両方の配列において発生する位置の数を決定して一致する位置の数を得て、この一致する位置の数を比較の窓内の位置の総数(すなわち、窓のサイズ)で割り、この結果に100を乗じて配列同一性の百分率を得ることにより算出できる。典型的には、ポリペプチド変異型が基準ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持する場合、本明細書に記載される基準配列(例えば、配列一覧を参照)のうちのいずれかと少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド及びポリペプチドが含まれる。
【0050】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列の関係性を説明するために使用される用語としては、「基準配列」、「比較窓」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」、及び「実質的同一性」が挙げられる。「基準配列」とは、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を包含する、長さが少なくとも12であるが、多くの場合15〜18であり、しばしば少なくとも25のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列のうちの一部分のみ)、及び(2)2つのポリヌクレオチド間で相違する配列を含む場合があるため、2つ(以上)のポリヌクレオチド間での配列比較は、典型的には、2つのポリヌクレオチドの配列を「比較窓」において比較して、局所領域の配列類似性を特定及び比較することで行われる。「比較窓」は、少なくとも6個、通常は約50〜約100個、より通常には約100〜約150個の隣接する位置の概念上のセグメントを指し、ここで、配列は、同じ数の隣接する位置の基準配列と、2つの配列を最適にアライメントした後に比較される。比較窓は、2つの配列の最適なアライメントのために、基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。比較窓をアライメントするための配列の最適なアライメントは、アルゴリズムのコンピュータ処理実行(the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USAのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、または検査、及び選択される様々な方法のいずれかによって生成される最適なアライメント(すなわち、比較窓において最も高い相同性%をもたらすアライメント)によって実行され得る。例えば、Altschul et al.,Nucl.Acids Res.25:3389,1997によって開示されるような、プログラムのBLASTファミリーを参照してもよい。配列分析の詳細な考察は、“Current Protocols in Molecular Biology,”John Wiley & Sons Inc,1994−1998,Chapter 15のUnit 19.3において見出すことができる。
【0051】
「統計学的に有意」とは、その結果が偶然に起こった可能性が低いことを意味する。統計的有意性は、当分野において既知の任意の方法で決定することができる。一般的に使用される有意性の尺度としてはp値が挙げられ、これは、帰無仮説が真であった場合は、観察された事象が起こる頻度または可能性である。得られたp値が有意水準よりも小さい場合、帰無仮説は棄却される。単純な場合においては、有意水準は、0.05以下のp値で定義される。
【0052】
用語「溶解度」は、タンパク質が液体溶媒中に溶解し、均質な溶液を形成する特性を指す。溶解度は、典型的には、溶媒の単位体積当たりの溶質の質量(溶質g/溶媒kg、g/dL(100mL)、mg/ml等)、容量モル濃度、重量モル濃度、モル分率、または他の類似する種類の濃度のいずれかによって、濃度として表される。溶媒の体積当たりの溶解可能な溶質の最大平衡量が、温度、圧力、pH、及び溶媒の性質を含む特定の条件下における、その溶質のその溶媒中での溶解度である。ある特定の実施形態において、溶解度は、生理学的pHまたは他のpH、例えばpH5.0、pH6.0、pH7.0、またはpH7.4において測定される。ある特定の実施形態において、溶解度は、水、またはPBSもしくはNaCl(NaPを伴う、あるいは伴わない)等の生理学的緩衝液で測定される。特定の実施形態において、溶解度は、比較的低いpH(例えば、pH6.0)、及び比較的高い塩分(例えば、500mMのNaCl及び10mMのNaP)において測定される。ある特定の実施形態において、溶解度は、血液または漿液等の生物学的流体(溶媒)で測定される。ある特定の実施形態において、温度は、ほぼ室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)またはほぼ体温(約37℃)であることができる。ある特定の実施形態において、p97ポリペプチド融合タンパク質は、室温または約37℃において、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、または30mg/mlの溶解度を有する。
【0053】
「対象」は、本明細書で使用する場合、本発明のp97融合タンパク質で治療または診断できる症状を呈するか、あるいは症状を呈する危険性がある任意の動物を含む。好適な対象(患者)としては、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット等)、家畜動物、及び飼育動物またはペット(ネコまたはイヌ等)が挙げられる。非ヒト霊長類、ならびに好ましくはヒト患者が含まれる。
【0054】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全体またはほぼ完全、例えば、ある所与の量の95%、96%、97%、98%、99%以上を意味する。
【0055】
「実質的に含まない」は、所与の量のほぼ完全な不在または完全な不在、例えば、ある所与の量の約10%未満、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%以下を指す。例えば、ある特定の組成物は、細胞タンパク質、膜、核酸、エンドトキシン、または他の汚染物質を「実質的に含まない」場合がある。
【0056】
「治療」または「治療する」は、本明細書で使用する場合、疾患または病態の症状または病理に対する任意の望ましい効果を含み、治療されている疾患または病態の1つ以上の測定可能なマーカーにおける極小の変化または改善ですら含み得る。「治療」または「治療する」は、疾患もしくは病態、または関連付けられるそれらの症状の、完全な根絶または治癒を必ずしも示さない。この治療を受ける対象は、治療を必要とする任意の対象である。臨床的改善の例示的マーカーは、当業者には明らかであろう。
【0057】
用語「野生型」は、遺伝子または遺伝子産物を指し、これは、天然源から単離されたときにその遺伝子または遺伝子産物の特性を有する。野生型遺伝子または遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)は、集団内で最も頻繁に観察されるものであり、したがって遺伝子の任意に設計された「通常」または「野生型」の形態である。
【0058】
融合タンパク質
本発明の実施形態は、概して、ヒトp97(メラノトランスフェリン、MTf)ポリペプチド配列及びイズロン酸−2−スルファターゼ(IDSまたはI2S)ポリペプチド配列を含む融合タンパク質、それらの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、融合タンパク質を生成する宿主細胞及び方法、ならびに関連する組成物及びその使用方法に関する。例示的な融合タンパク質(例えば、表1)、p97ポリペプチド配列(例えば、表2)、及びIDSポリペプチド配列(例えば、表3)が本明細書に記載される。用語「p97」及び「MTf」は、用語「IDS」及び「I2S」と同様に、本明細書において交換可能に使用される。
【0059】
p97ポリペプチド配列をIDS配列に連結するための例示的方法、及びそのための構成要素もまた記載される。ある特定の実施形態において、p97融合タンパク質は、1つ以上のシグナルペプチド配列(SP)、精製タグ(TAG)、プロテアーゼ切断部位(PS)、及び/またはペプチドリンカー(L)を含み(前述の任意の組み合わせを含む)、この例が本明細書に提供される。前述のうちのいずれかの変異型及びフラグメントもまた、本明細書に記載される。
【0060】
ある特定の実施形態において、p97融合タンパク質は、下に例証される構成のうちの少なくとも1つを含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる(N末端>C末端)。
・IDS−p97
・p97−IDS
・IDS−L−p97
・p97−L−IDS
・SP−IDS−p97
・SP−p97−IDS
・SP−IDS−L−p97
・SP−P97−L−IDS
・SP−PS−IDS−p97
・SP−PS−P97−IDS
・SP−PS−IDS−L−p97
・SP−PS−p97−L−IDS
・SP−TAG−PS−IDS−p97
・SP−TAG−PS−p97−IDS
・SP−TAG−PS−IDS−L−p97
・SP−TAG−PS−p97−L−IDS
・TAG−IDS−p97
・TAG−p97−IDS
・TAG−IDS−L−p97
・TAG−p97−L−IDS
・TAG−PS−IDS−p97
・TAG−PS−p97−IDS
・TAG−PS−IDS−L−p97
・TAG−PS−p97−L−IDS
・IDS SP−HIS TAG−TEV PS−IDS−剛性L−p97
・IDS SP−HIS TAG−TEV PS−IDS−(EAAAK)
3−p97
・p97 SP−HIS TAG−TEV PS−p97−剛性L−IDS
・p97 SP−HIS TAG−TEV PS−p97−(EAAAK)
3−IDS
【0061】
これら及び関連する構成の融合タンパク質は、本明細書に記載されるIDS、p97、L、SP、TAG、またはPS配列(それらの機能的または活性の変異型及びフラグメントを含む)のいずれかを用いて構築することができる。
【0062】
p97融合タンパク質の具体的な例が、下の表1に例証される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0063】
したがって、一部の実施形態において、融合タンパク質は、表1のアミノ酸配列、またはそれらの変異型及び/もしくはフラグメントを含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる。
【0064】
p97配列.ある特定の実施形態において、本発明の組成物及び/または融合タンパク質において使用されるp97ポリペプチド配列は、下の表2に提供されるヒトp97基準配列を含むか、それから本質的になるか、あるいはそれからなる。その基準配列の変異型及びフラグメントもまた含まれる。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0065】
一部の実施形態において、p97ポリペプチド配列は、表2のヒトp97配列またはそのフラグメントと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性または相同性をその長さと共に有する配列を含む。
【0066】
特定の実施形態において、p97ポリペプチド配列は、配列番号2(可溶性MTf)または配列番号14(MTfpep)を含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる。一部の実施形態において、MTfpepは、配列番号148に示されるように、C末端チロシン(Y)残基を有する。
【0067】
特定の実施形態において、p97ポリペプチド配列は、表2のヒトp97配列のフラグメントを含む。ある特定の実施形態において、p97ポリペプチドのフラグメントは、長さが約、少なくとも約、または最大約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、700、710、720、730個以上のアミノ酸であり、その間の全ての整数及び範囲が含まれ、このフラグメントは、p97基準配列の配列の全てまたは一部を含み得る。
【0068】
ある特定の実施形態において、p97ポリペプチドのフラグメントは、長さが約5〜700、5〜600、5〜500、5〜400、5〜300、5〜200、5〜100、5〜50、5〜40、5〜30、5〜25、5〜20、5〜15、5〜10、10〜700、10〜600、10〜500、10〜400、10〜300、10〜200、10〜100、10〜50、10〜40、10〜30、10〜25、10〜20、10〜15、20〜700、20〜600、20〜500、20〜400、20〜300、20〜200、20〜100、20〜50、20〜40、20〜30、20〜25、30〜700、30〜600、30〜500、30〜400、30〜300、30〜200、30〜100、30〜50、30〜40、40〜700、40〜600、40〜500、40〜400、40〜300、40〜200、40〜100、40〜50、50〜700、50〜600、50〜500、50〜400、50〜300、50〜200、50〜100、60〜700、60〜600、60〜500、60〜400、60〜300、60〜200、60〜100、60〜70、70〜700、70〜600、70〜500、70〜400、70〜300、70〜200、70〜100、70〜80、80〜700、80〜600、80〜500、80〜400、80〜300、80〜200、80〜100、80〜90、90〜700、90〜600、90〜500、90〜400、90〜300、90〜200、90〜100、100〜700、100〜600、100〜500、100〜400、100〜300、100〜250、100〜200、100〜150、200〜700、200〜600、200〜500、200〜400、200〜300、または200〜250アミノ酸であり、p97基準配列の配列の全てまたは一部を含む。
【0069】
ある特定の実施形態において、目的のp97ポリペプチド配列は、p97アミノ酸配列、部分配列、及び/または血液脳関門を越えて、中枢神経系(CNS)内に目的の薬剤を輸送するのに有効なp97の変異型を含む。特定の実施形態において、変異型またはフラグメントは、ヒトp97のNローブ(配列番号1の残基20〜361)を含む。特定の態様において、変異型またはフラグメントは、インタクトかつ機能性のFe
3+結合部位を含む。
【0070】
一部の実施形態において、p97ポリペプチド配列は、p97ポリペプチドの可溶性形態(Yang et al.,Prot Exp Purif.34:28−48,2004)、またはそのフラグメントもしくは変異型である。一部の態様において、可溶性p97ポリペプチドには、疎水性ドメイン(配列番号1の残基710〜738)の全てまたは一部の欠失が、単独で、あるいはシグナルペプチド(配列番号1の残基1〜19)の全てまたは一部の欠失と共にある。特定の態様において、可溶性p97ポリペプチドは、配列番号2(配列番号1の残基約20〜710または20〜711)(その変異型及びフラグメントを含む)を含むか、あるいはそれからなる。
【0071】
ある特定の実施形態、例えば、リポソームを用いる実施形態においては、p97ポリペプチド配列は、p97ポリペプチドの脂溶性形態である。例えば、ある特定のこれらの実施形態及び関連する実施形態は、疎水性ドメインの全てまたは一部を、任意選択でシグナルペプチドと共に、あるいはそれを伴わずに含む、p97ポリペプチドを含む。
【0072】
ある特定の他の実施形態において、p97フラグメントまたは変異型は、p97受容体であるLRP1受容体及び/またはLRP1B受容体に対して特異的に結合可能である。
【0073】
基準p97ポリペプチド及び他の基準ポリペプチドの変異型及びフラグメントについては、下においてより詳細に記載される。
【0074】
イズロン酸−2−スルファターゼ配列.ある特定の実施形態において、本発明の融合タンパク質において使用されるIDS(またはI2S)ポリペプチド配列は、下の表3に例証される1つ以上のヒトIDS配列を含むか、それから本質的になるか、あるいはそれからなる。
【表3-1】
【表3-2】
【0075】
表3及び配列一覧のIDS配列の生物学的に活性な変異型及びフラグメントもまた含まれる。ある特定の態様において、生物学的に活性なIDSポリペプチドまたはその変異型/フラグメントは、例えば、野生型ヒトIDS(例えば、配列番号31)の活性の約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%以上で、デルマタン硫酸塩、ヘパラン硫酸塩、及び/またはヘパリンのL−イズロン酸2−スルフェート単位の2−スルフェート基を加水分解する。
【0076】
リンカー.上述されるように、ある特定の融合タンパク質は、ペプチドリンカーを含む、1つ以上のリンカー基を用いてもよい。そのようなリンカーは、剛性リンカー、可動性リンカー、安定したリンカー、または酵素的に切断可能なリンカー等の解放可能なリンカーであり得る。例えば、Chen et al.,Adv.Drug.Deliv.Ref.,65:1357−69,2012を参照されたい。
【0077】
例えば、ポリペプチド−ポリペプチド抱合体に関して、ペプチドリンカーは、各ポリペプチドがその二次構造及び三次構造へと折り畳まれることを確実にするのに十分な距離で、構成要素を分離し得る。そのようなペプチドリンカー配列は、本明細書に記載され、当分野において周知の標準的な技法を用いて融合タンパク質に組み込むことができる。好適なペプチドリンカー配列は、以下の因子:(1)それらの配列の、剛性または柔軟で拡張された立体構造をとる能力、(2)それらの配列の、第1及び第2のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用し得る二次構造をとる能力の欠如、ならびに(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応し得る疎水性または荷電残基の欠如に基づいて選択され得る。リンカーとして有用に用いることができるアミノ酸配列としては、Maratea et al.,Gene 40:39−46,1985、Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262,1986、米国特許第4,935,233号、及び米国特許第4,751,180号において開示されるものが挙げられる。
【0078】
ある特定の例証的実施形態において、ペプチドリンカーは、約1〜5アミノ酸、5〜10アミノ酸、5〜25アミノ酸、5〜50アミノ酸、10〜25アミノ酸、10〜50アミノ酸、10〜100アミノ酸、または任意の介在する範囲のアミノ酸である。他の例証的実施形態において、ペプチドリンカーは、長さが、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50以上のアミノ酸を含む。特定のリンカーは、約1〜200アミノ酸、1〜150アミノ酸、1〜100アミノ酸、1〜90アミノ酸、1〜80アミノ酸、1〜70アミノ酸、1〜60アミノ酸、1〜50アミノ酸、1〜40アミノ酸、1〜30アミノ酸、1〜20アミノ酸、1〜10アミノ酸、1〜5アミノ酸、1〜4アミノ酸、1〜3アミノ酸の全体的なアミノ酸長、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100個以上のアミノ酸を有し得る。
【0079】
ペプチドリンカーは、本明細書の他の場所に記載され、当分野において既知の、任意の1つ以上の天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸、アミノ酸類似体、及び/またはアミノ酸模倣物を用いてもよい。リンカーとして有用に用いることができる、ある特定のアミノ酸配列としては、Maratea et al.,Gene 40:39−46,1985、Murphy et al.,PNAS USA.83:8258−8262,1986、米国特許第4,935,233号、及び米国特許第4,751,180号において開示されるものが挙げられる。特定のペプチドリンカー配列は、Gly、Ser、及び/またはAsn残基を含む。他のThr及びAla等のほぼ中性のアミノ酸もまた、所望される場合、ペプチドリンカー配列において用いることができる。
【0080】
特定の実施形態において、リンカーは、剛性リンカーである。剛性リンカーの例としては、限定されるものではないが、(EAAAK)
x(配列番号36)及びA(EAAAK)
xALEA(EAAAK)
xA(配列番号41)、ならびに(Ala−Pro)
xが挙げられ、ここで
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20以上である。剛性リンカーの具体的な例としては、EAAAK(配列番号36)、(EAAAK)
2(配列番号37)、(EAAAK)
3(配列番号38)、A(EAAAK)
4ALEA(EAAAK)
4A(配列番号42)、PAPAP(配列番号43)、及びAEAAAKEAAAKA(配列番号44)が挙げられる。
【0081】
特定の実施形態において、リンカーは、(EAAAK)
3またはEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号38)を含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる。
【0082】
一部の実施形態において、リンカーは、可動性リンカーである。特定の実施形態において、可動性リンカーは、GGGGS(配列番号45)、(GGGGS)
2(配列番号46)、(GGGGS)
3(配列番号47)、またはGly
2−10(配列番号48〜54)である。可動性リンカーの追加的な例が、下に提供される。
【0083】
ある特定の例示的リンカーは、以下のような、[G]
x、[S]
x、[N]
x、[GS]
x、[GGS]
x、[GSS]
x、[GSGS]
x(配列番号55)、[GGSG]
x(配列番号56)、[GGGS]
x(配列番号57)、[GGGGS]
x(配列番号45)、[GN]
x、[GGN]
x、[GNN]
x、[GNGN]
x(配列番号58)、[GGNG]
x(配列番号59)、[GGGN]
x(配列番号60)、[GGGGN]
x(配列番号61)リンカーであって、
xが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20以上である、Gly、Ser、及び/またはAsnを含むリンカーを含む。これら及び関連するアミノ酸の他の組み合わせは、当業者には明らかであろう。特定の実施形態において、リンカーは、[GGGGS]
3(配列番号47)配列、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号47)を含むか、あるいはそれからなる。
【0084】
特定の実施形態において、リンカー配列は、3つのグリシン残基を含むGly3リンカー配列を含む。特定の実施形態において、柔軟なリンカーは、DNA結合部位及びペプチド自体の両方をモデル化可能なコンピュータプログラム(Desjarlais & Berg,PNAS.90:2256−2260,1993、及びPNAS.91:11099−11103,1994)、またはファージディスプレイ法を用いて合理的に設計することができる。
【0085】
ペプチドリンカーは、生理学的に安定であってもよく、生理学的に分解可能であるか、あるいは酵素的に分解可能なリンカー等の解放可能なリンカー(例えば、タンパク質または酵素的に切断可能なリンカー)を含んでもよい。ある特定の実施形態において、1つ以上の解放可能なリンカーは、より短い半減期と、より迅速な融合タンパク質の除去を結果としてもたらし得る。これら及び関連する実施形態は、例えば、血流中のp97融合タンパク質の溶解度及び血液循環寿命を増進しながら、一方で、リンカーの分解後にp97配列を実質的に含まない血流中への(あるいはBBBを越えて)薬剤の送達も行うために使用することができる。これらの態様は、ポリペプチドまたは他の薬剤が、p97配列に対して永続的に融合したとき低減された活性を示す場合に特に有用である。本明細書に提供されるリンカーを使用することで、そのようなポリペプチドは、抱合または融合形態のときでもそれらの治療上の活性を維持することができる。これら及び他の方法で、p97融合タンパク質の特性は、生物活性とポリペプチドの循環半減期とで経時的にバランスを取るように、より効果的に適合させることができる。
【0086】
酵素的に切断可能なリンカーの具体的な例としては、限定されるものではないが、第XIa因子/FVIIa切断可能リンカー(VSQTSKLTR(下向き黒三角)AETVFPDV)(配列番号62)、マトリックスメタロプロテアーゼ−1切断可能リンカー(PLG(下向き黒三角)LWA)(配列番号63)、HIVプロテアーゼ切断可能リンカー(RVL(下向き黒三角)AEA)(配列番号64)、C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ切断可能リンカー(EDVVCC(下向き黒三角)SMSY)(配列番号65)、第Xa因子切断可能リンカー(GGIEGR/GS)(配列番号66)、フーリン切断可能リンカー(TRHRQPR(下向き黒三角)GWEまたはAGNRVRR(下向き黒三角)SVGまたはRRRRRRR(下向き黒三角)R(下向き黒三角)R)(配列番号67〜69)、及びカテプシンB切断可能リンカー(GFLG)(配列番号70)が挙げられる。
【0087】
特定の実施形態における使用にとって好適な、酵素的に分解可能なリンケージとしては、限定されるものではないが、トロンビン、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、またはサブチリシン等のセリンプロテアーゼによって切断されるアミノ酸配列が挙げられる。トロンビン切断可能なアミノ酸配列の例証的例としては、限定されるものではないが、−Gly−Arg−Gly−Asp−(配列番号71)、−Gly−Gly−Arg−、−Gly−Arg−Gly−Asp−Asn−Pro−(配列番号72)、−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−(配列番号73)、−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−Lys−(配列番号74)、−Gly−Pro−Arg−、−Val−Pro−Arg−、及び−Phe−Val−Arg−が挙げられる。エラスターゼ切断可能なアミノ酸配列の例証的例としては、限定されるものではないが、−Ala−Ala−Ala−、−Ala−Ala−Pro−Val−(配列番号75)、−Ala−Ala−Pro−Leu−(配列番号76)、−Ala−Ala−Pro−Phe−(配列番号77)、−Ala−Ala−Pro−Ala−(配列番号78)、及び−Ala−Tyr−Leu−Val−(配列番号79)が挙げられる。
【0088】
特定の実施形態における使用にとって好適な、酵素的に分解可能なリンケージとしてはまた、コラゲナーゼ、ストロメライシン、及びゼラチナーゼ等のマトリックスメタロプロテアーゼによって切断され得るアミノ酸配列が挙げられる。マトリックスメタロプロテアーゼ切断可能なアミノ酸配列の例証的例としては、限定されるものではないが、−Gly−Pro−Y−Gly−Pro−Z−(配列番号80)、−Gly−Pro−、Leu−Gly−Pro−Z−(配列番号81)、−Gly−Pro−Ile−Gly−Pro−Z−(配列番号82)、及び−Ala−Pro−Gly−Leu−Z−(配列番号83)であって、Y及びZがアミノ酸であるものが挙げられる。コラゲナーゼ切断可能なアミノ酸配列の例証的例としては、限定されるものではないが、−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−Z−(配列番号84)、−Pro−Leu−Gly−Leu−Leu−Gly−Z−(配列番号85)、−Pro−Gln−Gly−Ile−Ala−Gly−Trp−(配列番号86)、−Pro−Leu−Gly−Cys(Me)−His−(配列番号87)、−Pro−Leu−Gly−Leu−Tyr−Ala−(配列番号88)、−Pro−Leu−Ala−Leu−Trp−Ala−Arg−(配列番号89)、及び−Pro−Leu−Ala−Tyr−Trp−Ala−Arg−(配列番号90)であって、Zがアミノ酸であるものが挙げられる。ストロメライシン切断可能なアミノ酸配列の例証的例は、−Pro−Tyr−Ala−Tyr−Tyr−Met−Arg−(配列番号91)であり、ゼラチナーゼ切断可能なアミノ酸配列の例は、−Pro−Leu−Gly−Met−Tyr−Ser−Arg−(配列番号92)である。
【0089】
特定の実施形態における使用にとって好適な、酵素的に分解可能なリンケージとしてはまた、例えば、−Asp−Lys−Pro−、−Gly−Asp−Lys−Pro−(配列番号93)、及び−Gly−Ser−Asp−Lys−Pro−(配列番号94)等のアンジオテンシン変換酵素によって切断され得るアミノ酸配列が挙げられる。
【0090】
特定の実施形態における使用にとって好適な、酵素的に分解可能なリンケージとしてはまた、例えば、−Val−Cit−、−Ala−Leu−Ala−Leu−(配列番号95)、−Gly−Phe−Leu−Gly−(配列番号96)、及び−Phe−Lys−等のカテプシンBによって分解され得るアミノ酸配列が挙げられる。
【0091】
しかしながら、ある特定の実施形態においては、任意の1つ以上の非ペプチドまたはペプチドリンカーが、任意選択である。例えば、リンカー配列は、機能性ドメインを分離し、立体障害を防止するのに使用できる非本質的なN末端及び/またはC末端アミノ酸領域を第1及び第2のポリペプチドが有する場合、融合たんぱく質において必要でない場合がある。
【0092】
シグナルペプチド配列.ある特定の実施形態において、p97融合タンパク質は、1つ以上のシグナルペプチド配列(SP)を含む。特定の実施形態において、シグナルペプチド配列は、N末端シグナル配列、すなわち融合タンパク質のN最末端部である。
【0093】
シグナル配列の具体的な例が、下の表4に提供される。Kober et al.,Biotechnology and Bioengineering.110:1164−73,2013もまた参照されたい。
【表4】
【0094】
したがって、一部の実施形態において、シグナルペプチドは、表4の少なくとも1つの配列を含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる。一部の実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号149を含む。
【0095】
特定の実施形態において、シグナルペプチド配列は、融合タンパク質のN最末端タンパク質(p97またはIDS)に対応する。すなわち、一部の実施形態において、N末端シグナルペプチド配列は、ヒトp97シグナルペプチド配列(配列番号39)であり、p97融合タンパク質は、一般構造:p97 SP−p97−IDSを含む。他の実施形態において、N末端シグナル配列は、ヒトIDSシグナルペプチド配列(配列番号40)であり、p97融合タンパク質は、一般構造:IDS SP−IDS−p97を含む。任意選択で、融合タンパク質は更に、本明細書の他の場所に記載されるように、例えば、融合タンパク質のN末端シグナル配列とp97/IDS部分との間に1つ以上の精製タグ及び/またはプロテアーゼ部位を含み得る。ここで、プロテアーゼ部位は、対応するプロテアーゼによる処理が、N末端シグナル配列、精製タグ、及びプロテアーゼ部位の大部分または全体を融合タンパク質から除去するように、典型的にはシグナル配列または精製タグのC末端に配置される。
【0096】
精製タグ.一部の実施形態において、融合タンパク質は、1つ以上の精製または親和性タグ(TAGまたはTAGs)を含む。精製タグの非限定的例としては、ポリヒスチジンタグ(例えばHis tag(6個))、アビジン、FLAGタグ、グルタチオンS−転移酵素(GST)タグ、マルトース結合タンパク質タグ、キチン結合タンパク質(CBP)、及びその他が挙げられる。高親和性抗体に結合するエピトープタグもまた含まれ、これらの例としては、V5−タグ、Myc−タグ、及びHA−タグが挙げられる。特定の実施例において、精製タグはポリヒスチジンタグ(H
5−10)であり、例えば、H
5、H
6、H
7、H
8、H
9、またはH
10(配列番号113〜118)である。
【0097】
精製タグの非限定的例が、下の表5に提供される。
【表5】
【0098】
したがって、ある特定の実施形態において、精製タグは、表5の少なくとも1つの配列を含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる。特定の実施形態において、タグは、FLAGタグ及びHISタグ、例えばHISタグ(10個)を含む。
【0099】
プロテアーゼ部位(PS).一部の実施形態において、融合タンパク質は、1つ以上のプロテアーゼ部位を含む。任意選択で、1つ以上のプロテアーゼ部位は、対応するプロテアーゼによる処理が、N末端シグナル配列、精製タグ、及び/またはプロテアーゼ部位の大部分もしくは全てを融合タンパク質から除去するように、精製タグ及び/またはシグナルペプチド配列(いずれか1つまたは両方が存在する場合)のC末端に配置される。
【0100】
特定の実施形態において、例えば、融合タンパク質が酵素的に切断可能なリンカーを含む場合、プロテアーゼによる処理が、p97配列とIDS配列との間のペプチドリンカーを切断することなく、任意の末端配列(例えば、シグナルペプチド配列、精製タグ)を除去するように、プロテアーゼ部位は、典型的には、酵素的に切断可能なリンカーのものとは異なる。
【0101】
プロテアーゼ部位の非限定的例が、下の表6に提供される。
【表6】
【0102】
したがって、ある特定の実施形態において、プロテアーゼ部位は、表6の少なくとも1つの配列を含むか、それからなるか、あるいはそれから本質的になる。特定の実施形態において、プロテアーゼ部位は、TEVプロテアーゼ部位(配列番号135)を含む。
【0103】
変異型配列.ある特定の実施形態は、名称で記載されるか、あるいは配列識別子への参照で記載されるかに関わらず、p97配列、IDS配列、リンカー配列、シグナルペプチド配列、精製タグ、及びプロテアーゼ部位(例えば、表1〜6及び配列一覧を参照)を含む、本明細書に記載される基準ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列の変異型を含む。これらのポリペプチドの野生型配列または最も普及している配列は当分野において既知であり、本明細書に記載される変異型及びフラグメントに対する比較として使用することができる。
【0104】
「変異型」配列は、本明細書において使用される用語としては、本明細書に開示される基準配列とは1つ以上の置換、欠失(例えば、トランケーション)、付加、及び/または挿入によって異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を指す。したがって、ある特定の変異型は、本明細書に記載される基準配列のフラグメントを含む。変異型ポリペプチドは生物学的に活性であり、すなわち、それらは、基準ポリペプチドの酵素活性または結合活性を保有し続けている。そのような変異型は、例えば、遺伝的多型性及び/または人間による操作の結果としてもたらされ得る。
【0105】
多くの事例において、生物学的に活性な変異型は、1つ以上の保存的置換を含むことになる。「保存的置換」は、ペプチド化学の分野の当業者が、ポリペプチドの二次構造及び疎水性親水性の性質が実質的に変化しないと予期するような、あるアミノ酸による類似の特性を有する別のアミノ酸との置換である。上に記載されるように、修飾は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの構造内において行ってもよく、望ましい特性をもつ変異型または誘導体ポリペプチドをコードする機能分子を得ることができる。本発明のポリペプチドの等価物、または更に改善された変異型もしくは部分を作製するためにポリペプチドのアミノ酸配列を改変することが所望されるとき、当業者ならば、典型的には、下の表Aに従ってコード化DNA配列のコドンのうちの1つ以上を変更することになる。
【表A】
【0106】
例えば、ある特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原結合領域または基材分子上の結合部位等の構造との相互作用的結合能の明らかな損失を伴わずに、タンパク質構造内で他のアミノ酸と置換することができる。タンパク質の生物学的機能活性を画定するのはそのタンパク質の相互作用的能力及び性質であるため、ある特定のアミノ酸配列の置換を、タンパク質構造、及び当然その基礎をなすDNAコード配列において行うことができ、それでも、同様の特性を持つタンパク質を得ることができる。したがって、開示される組成物のペプチド配列、または該ペプチドをそれらの有用性の明らかな損失を伴わずにコードする、対応するDNA配列において、様々な変更を行い得ることが企図される。
【0107】
そのような変更を行う際、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮してもよい。相互作用の生物学的機能をタンパク質に与える際の、アミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当分野において一般的に理解されている(Kyte & Doolittle,1982、参照により本明細書に組み込まれる)。アミノ酸の相対的な疎水性親水性特性が、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、ひいてはそのタンパク質の他の分子、例えば、酵素、基材、受容体、DNA、抗体、抗原等との相互作用を画定することが認められている。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づく疎水性親水性指標を割り当てられている(Kyte & Doolittle,1982)。それらの値は、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、トレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)、及びアルギニン(−4.5)である。ある特定のアミノ酸は、類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸で置換してもよく、それでも類似の生物学的活性をもつタンパク質を結果としてもたらす、すなわちそれでも生物学的に機能性が等価であるタンパク質を得られることが、当分野において既知である。そのような変更を行う際、その疎水性親水性指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものが更に一層、特に好ましい。
【0108】
類似するアミノ酸の置換は、親水性ベースでも有効に行えることがまた、当分野において理解されている。米国特許第4,554,101号(その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる)は、タンパク質の最大の局所平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性によって決定されるが、そのタンパク質の生物学的特性と相関関係にあると述べている。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値、アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、及びトリプトファン(−3.4)がアミノ酸残基に割り当てられている。アミノ酸は、類似する親水性値を有する別のアミノ酸と置換することができ、それでも、生物学的に等価であり、具体的には、免疫学的に等価であるタンパク質を得られることが理解されている。そのような変更の際、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものが更に一層、特に好ましい。
【0109】
それ故に、上に概説されるように、アミノ酸置換は概して、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズ等に基づく。様々な前述の特性を考慮した例示的な置換が当業者には周知であり、アルギニン及びリジン、グルタメート及びアスパルテート、セリン及びトレオニン、グルタミン及びアスパラギン、ならびにバリン、ロイシン、及びイソロイシンが挙げられる。
【0110】
アミノ酸置換は更に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性における類似性に基づいて行われてもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としてはリジン及びアルギニンが挙げられ、類似の親水性値を有する、無電荷の極性頭基をもつアミノ酸としてはロイシン、イソロイシン、及びバリン、グリシン及びアラニン、アスパラギン及びグルタミン、ならびにセリン、トレオニン、フェニルアラニン、及びチロシンが挙げられる。保存的変更を表し得るアミノ酸の他の群としては、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、及び(5)phe、tyr、trp、hisが挙げられる。
【0111】
変異型はまた、あるいは代替的に、非保存的変更を含み得る。好ましい実施形態において、変異型ポリペプチドは、天然配列または基準並列とは、約10、9、8、7、6、5、4、3、2個より少ないアミノ酸、またはたった1個のアミノ酸の置換、欠失、または付加によって異なる。変異型はまた(あるいは代替的に)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造、酵素活性、及び/または疎水性親水性の性質に最小限の影響しか与えないアミノ酸の欠失または付加によって修飾され得る。
【0112】
ある特定の実施形態において、ポリペプチド配列は、長さが約、少なくとも約、または最大約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700。700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000個以上の隣接するアミノ酸であり、その間の全ての整数が含まれ、このポリペプチド配列は、基準配列(例えば、配列一覧を参照)の全てまたは一部を含み得る。
【0113】
他の特定の実施形態において、ポリペプチド配列は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800。800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000個以上の隣接するアミノ酸、またはそれ以下のアミノ酸からなり、その間の全ての整数が含まれ、このポリペプチド配列は、基準配列(例えば、配列一覧を参照)の全てまたは一部を含み得る。
【0114】
更なる他の特定の実施形態において、ポリペプチド配列は、約10〜1000、10〜900、10〜800、10〜700、10〜600、10〜500、10〜400、10〜300、10〜200、10〜100、10〜50、10〜40、10〜30、10〜20、20〜1000、20〜900、20〜800、20〜700、20〜600、20〜500、20〜400、20〜300、20〜200、20〜100、20〜50、20〜40、20〜30、50〜1000、50〜900、50〜800、50〜700、50〜600、50〜500、50〜400、50〜300、50〜200、50〜100、100〜1000、100〜900、100〜800、100〜700、100〜600、100〜500、100〜400、100〜300、100〜200、200〜1000、200〜900、200〜800、200〜700、200〜600、200〜500、200〜400、または200〜300個の隣接するアミノ酸であり、その間の全ての範囲が含まれ、基準配列の配列の全てまたは一部を含む。ある特定の実施形態において、任意の基準ポリペプチドのC末端またはN末端領域は、切断型ポリペプチドが、基準ポリペプチドの結合特性及び/または活性を保持する限り、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、または800個以上のアミノ酸で切断されるか、あるいは約10〜50、20〜50、50〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜550、550〜600、600〜650、650〜700、700〜750、750〜800個以上のアミノ酸で切断されてもよく、その間の全ての整数及び範囲(例えば、101、102、103、104、105)が含まれる。典型的には、生物学的に活性であるフラグメントは、それが由来する生物学的に活性である基準ポリペプチドの活性の約1%、約5%、約10%、約25%、または約50%以上を有する。
【0115】
一般的に、変異型は、基準ポリペプチド配列に対して、少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性または配列同一性もしくは配列相同性を示すことになる。また、天然または親配列とは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100個のアミノ酸(その間の全ての整数及び範囲を含む)の付加(例えば、C末端付加、N末端付加、両方)、欠失、トランケーション、挿入、または置換(例えば、保存的置換)によって異なるが、親配列または基準ポリペプチド配列の特性または活性を保持する配列が、企図される。
【0116】
一部の実施形態において、変異型ポリペプチドは、少なくとも1個であるが、50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3、または2個未満のアミノ酸残基で基準配列とは異なる。他の実施形態において、変異型ポリペプチドは、残基の少なくとも1%であるが、20%、15%、10%、または5%未満で基準配列とは異なる。(この比較がアライメントを必要とする場合は、配列は最大の類似性を有するようにアライメントされなければならない。欠失もしくは挿入に由来する「ループ」アウトされた配列またはミスマッチは、差異とみなされる。)
【0117】
配列間での配列類似性または配列同一性(これらの用語は、本明細書において交換可能に使用される)の計算は、以下のように行われる。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するためには、これらの配列は最適な比較目的のためにアライメントされる(例えば、最適なアライメントのために、第1及び第2のアミノ酸配列または核酸配列のうちの一方または両方にギャップを導入することができ、非相同配列は、比較目的のために無視することができる)。ある特定の実施形態において、比較目的のためにアライメントされる基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、更により好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列中のある位置が、第2の配列中の対応する位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一のもので占められている場合、その位置において分子は同一である。
【0118】
2つの配列間での同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入されるべきギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れた、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0119】
配列の比較、及び2つの配列間での同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間での同一性パーセントは、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重量及び1、2、3、4、5、または6の長さ重量を用いる、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedleman−Wunsch(J.Mol.Biol.48:444−453,1970)アルゴリズムを用いて決定される。更に別の好ましい実施形態においては、2つのヌクレオチド配列間での同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または80のギャップ重量及び1、2、3、4、5、または6の長さ重量を用いる、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて決定される。パラメータの特に好ましいセット(及び別様に特定されない限り、使用されるべきもの)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、及び5のフレームシフトギャップペナルティを伴う、Blossum 62スコアリングマトリックスである。
【0120】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間での同一性パーセントは、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いる、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller(Cabios.4:11−17,1989)のアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0121】
本明細書に記載される核酸及びタンパク質配列は、公衆データベースに対して検索を行って、例えば他のファミリーメンバーまたは関連する配列を特定するための、「問い合わせ配列」として使用することができる。そのような検索は、AltschulらのNBLAST及びXBLASTプログラム(version 2.0)(1990,J.Mol.Biol,215:403−10)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行って、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を獲得することができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行って、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を獲得することができる。比較目的のためのギャップ付きアライメントを得るためには、Altschul et al.,(Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997)に記載されているように、Gapped BLASTを活用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを活用する際は、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。
【0122】
一実施形態において、上述されるように、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドは、BLASTアライメントツールを用いて評価することができる。局所アライメントは、単純に、1対の配列セグメントからなり、配列の各々からの1つが比較される。Smith−WatermanまたはSellersアルゴリズムの修正形は、高スコアリングセグメント対(HSP)と呼ばれる、伸長またはトリミングによって改善することができないスコアをもつ全てのセグメント対を見付ける。BLASTアライメントの結果は、BLASTスコアが偶然のみから予期され得る可能性を示す統計的尺度を含む。
【0123】
生スコア、Sは、各アライメントした配列に関連付けられるギャップ及び置換の数から計算され、より高い類似性スコアは、より有意なアライメントを示す。置換スコアは、ルックアップテーブルで得られる(PAM,BLOSUMを参照)。
【0124】
ギャップスコアは、典型的には、ギャップ開始ペナルティG及びギャップ伸長ペナルティLの合計として計算される。長さnのギャップに関しては、ギャップコストはG+Lnである。ギャップコスト、G、及びLの選択は経験的なものであるが、Gについては高い値(10〜15)、例えば11、及びLについては低い値(1〜2)、例えば1を選択することが慣習的である。
【0125】
ビットスコアS’は、生アライメントスコアSから誘導され、ここでは、使用されるスコアリングシステムの統計学的性質が考慮されている。ビットスコアはスコアリングシステムに関して正規化されるため、異なる検索によるアライメントスコアを比較するのに使用することができる。用語「ビットスコア」及び「類似性スコア」は、交換可能に使用される。ビットスコアは、アライメントがいかに良好であるかの指標を提供し、スコアが高ければ高いほど、アライメントは良好である。
【0126】
E値、または期待値は、類似のスコアをもつある配列がデータベース内で偶然発生する可能性について説明する。E値は、データベース検索において偶然発生することが予期されるSと同等またはそれより良好なスコアをもつ異なるアライメントの数の予測である。E値が小さければ小さいほど、そのアライメントはより有意である。例えば、e
−117のE値を有するアライメントは、類似のスコアをもつ配列が単に偶然によって発生する可能性が非常に低いことを意味する。加えて、ランダムな一対のアミノ酸をアライメントする場合の期待されるスコアは負である必要があり、さもなければ、長いアライメントは、アライメントされたそれらのセグメントが関連しているか否かとは独立して高いスコアを有しやすくなる。加えて、BLASTアルゴリズムは、適切な置換マトリックス、ヌクレオチド、またはアミノ酸を使用し、ギャップ付きアライメントについては、ギャップ挿入及び伸長ペナルティを使用する。例えば、BLASTアライメント及びポリペプチド配列の比較は、典型的には、BLOSUM62マトリックス、11のギャップ存在ペナルティ、及び1のギャップ伸長ペナルティを用いて行われる。
【0127】
一実施形態において、配列類似性スコアは、BLOSUM62マトリックス、11のギャップ存在ペナルティ、及び1のギャップ伸長ペナルティを用いて行われるBLAST分析から報告される。
【0128】
特定の実施形態において、本明細書に提供される配列同一性/類似性スコアは、GAP Version 10(GCG,Accelrys,San Diego,Calif.)を用いて得られる値を指し、これは以下のパラメータを用いる:ヌクレオチド配列の同一性%及び類似性%に関しては、50のギャップ重量及び3の長さ重量、ならびにnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを用いる;アミノ酸配列の同一性%及び類似性%に関しては、8のギャップ重量及び2の長さ重量、ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(Henikoff and Henikoff,PNAS USA.89:10915−10919,1992)。GAPは、Needleman−Wunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:443−453,1970)を使用して、マッチの数を最大化しギャップの数を最小化する、2つの完全な配列のアライメントを見付ける。
【0129】
特定の一実施形態において、変異型ポリペプチドは、少なくとも約50、60、70、80、90、100、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000以上のBLASTビットスコアまたは配列類似性スコアを生み出すように、基準ポリペプチド配列(例えば、配列一覧を参照)と最適にアライメントされ得るアミノ酸配列を含み、その間の全ての整数及び範囲が含まれ、BLASTアライメントは、BLOSUM62マトリックス、11のギャップ存在ペナルティ、及び1のギャップ伸長ペナルティを使用した。
【0130】
上述されるように、基準ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、トランケーション、付加、及び挿入を含む様々な方法で改変され得る。そのような操作の方法は、当分野において一般的に既知である。例えば、基準ポリペプチドのアミノ酸配列変異型は、DNAの変異によって調製することができる。変異誘発及びヌクレオチド配列改変のための方法は、当分野において周知である。例えば、Kunkel(PNAS USA.82:488−492,1985)、Kunkel et al.,(Methods in Enzymol.154:367−382,1987)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(“Molecular Biology of the Gene,”Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、及びこれらに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する指導については、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルにおいて見出すことができる。
【0131】
そのような修正によって作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための方法、及び選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーをスクリーニングするための方法については、当分野において既知である。そのような方法は、基準ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングのために適合可能である。一例として、ライブラリー内の機能的変異体の頻度を増進する技法、再帰的アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis:REM)を、スクリーニングアッセイと組み合わせて、ポリペプチド変異型を特定するために使用することができる(Arkin and Yourvan,PNAS USA 89:7811−7815,1992;Delgrave et al.,Protein Engineering.6:327−331,1993)。
【0132】
ポリヌクレオチド、宿主細胞、及び生成方法.ある特定の実施形態は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびにそのようなポリヌクレオチドを含むベクターに関し、ここでは、例えば、そのポリヌクレオチドは、1つ以上の調節エレメントと作動可能に連結される。そのようなポリヌクレオチド、ベクター、融合タンパク質を含む組換え宿主細胞、及び前述の組換え生成方法もまた含まれる。
【0133】
融合タンパク質は、標準的技法を用いて調製することができる。しかしながら、融合タンパク質は、本明細書に記載され、当分野において既知であるように、発現系において組換えタンパク質として発現されることが好ましい。融合タンパク質は、任意の所望の配置で存在する、p97配列の1つまたは複数のコピー、及びIDS配列の1つまたは複数のコピーを含むことができる。
【0134】
ポリヌクレオチド及び融合ポリヌクレオチドは、p97ポリペプチド配列をコードする核酸の1つまたは複数のコピーを含むことができ、かつ/あるいはIDS配列をコードする核酸の1つまたは複数のコピーを含んでもよい。
【0135】
融合タンパク質に関しては、p97ポリペプチド配列、目的のIDS配列、及び任意選択でペプチドリンカー構成要素をコードするDNA配列は、別個に組み立てられてもよく、その後、適切な発現ベクターへと結合される。1つのポリペプチド構成要素をコードするDNA配列の3’端は、配列のリーディングフレームがインフレームであるように、ペプチドリンカーを伴って、あるいは伴わずに、その他のポリペプチド構成要素(複数可)をコードするDNA配列の5’端に結合され得る。結合されたDNA配列は、好適な転写及び/または翻訳調節エレメントと作動可能に連結される。DNAの発現を担う調節エレメントは、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5’にのみ通常位置する。同様に、翻訳を終わらせるのに必要な停止コドン及び転写終結シグナルは、大部分のC末端ポリペプチドをコードするDNA配列に対して3’にのみ存在する。これが、両方の構成要素ポリペプチドの生物学的活性を保持する単一の融合ポリペプチドへの翻訳を可能にする。
【0136】
類似の技法、主に、プロモーター、停止コドン、及び転写終結シグナル等の調節エレメントの配置が、非融合タンパク質の組換え生成に対して適用可能である。
【0137】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び他の配列を適切に含む、適切な調節配列を含む好適なベクターを、選択または構築することができる。ベクターは、適切に、プラスミド、ウイルス性、例えばファージ、またはファージミドであり得る。更なる詳細に関しては、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。核酸の操作、例えば核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、DNAの細胞への導入及び遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析に関する多くの既知の技法及びプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1992及びこれに続く最新版において詳細に記載されている。
【0138】
当業者によって理解されるように、非天然型コドンを保有する、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を生成することが、一部の事例においては有利であり得る。例えば、特定の原核宿主または真核宿主に好ましいコドンを、タンパク質発現の速度を増加させるように、あるいは天然型配列から生成される転写物の半減期よりも長い半減期等の望ましい特性を有する組換えRNA転写物を生成するように、選択することができる。そのようなポリヌクレオチドは一般的に「コドン最適化」されたと称される。本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれも、コドン最適化形態で活用され得る。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、大腸菌等の特定の細菌、またはサッカロマイセスセレヴィシエ等の酵母菌における使用のためにコドン最適化され得る(例えば、Burgess−Brown et al.,Protein Expr Purif.59:94−102,2008を参照)。
【0139】
例示的ポリヌクレオチド配列が、下の表7に提供される。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【0140】
したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載される融合タンパク質もしくは抗体融合物、またはその一部をコードするポリヌクレオチドは、表7の1つ以上のポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号143〜147)またはそれらのフラグメント/変異型を含む。
【0141】
一部の実施形態において、対象のp97ポリペプチド、IDSポリペプチド、及び/またはp97−IDS融合物をコードする核酸またはベクターが、宿主細胞に直接導入され、その細胞は、コードされたポリペプチド(複数可)の発現を誘導するのに十分な条件下においてインキュベートされる。それ故に、ある特定の関連する実施形態によれば、本明細書に記載される1つ以上の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは融合ポリヌクレオチドを含み、かつ追加的な外因性のポリヌクレオチドを任意選択で含む組換え宿主細胞が提供される。
【0142】
宿主細胞における融合タンパク質の発現は、適切な条件下で、(ポリヌクレオチド(複数可)を含む)組換え宿主細胞を培養することで達成できる。発現による生成後、ポリペプチド(複数可)及び/または融合タンパク質は、任意の好適な技法を用いて単離及び/または精製され、その後所望に応じて使用され得る。用語「宿主細胞」は、本明細書に記載されるポリペプチドのうちの1つ以上をコードする核酸配列を導入されているか、あるいはそれに導入させることが可能であり、かつ本明細書に記載される任意のポリペプチドをコードする遺伝子等の選択された目的の遺伝子を更に発現するか、あるいは発現可能である細胞を指す。この用語は、選択された遺伝子が存在する限り、子孫が元々の親と形態学的にあるいは体質的に同一であるか否かに関わらず、親細胞の子孫を含む。宿主細胞は、ある特定の特性、例えば、非天然アミノ酸をポリペプチド内に組み込むことができるアミノアシルtRNA合成酵素(複数可)の発現に関して選択されてもよい。
【0143】
様々な異なる宿主細胞におけるタンパク質のクローニング及び発現のための系は周知である。好適な宿主細胞としては、哺乳動物細胞、細菌、酵母菌、及びバキュロウイルス系が挙げられる。異種のポリペプチドの発現のための、当分野において利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、HEK−293細胞、ヒト線維肉腫細胞株HT−1080(例えば、Moran,Nat.Biotechnol.28:1139−40,2010)、NSOマウスメラノーマ細胞、及び多くの他のものが挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞株の追加的な例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(懸濁培養液中での成長のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980))、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TR1細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982))、MRC 5細胞、FS4細胞、及びヒト肝臓癌株(Hep G2)が挙げられる。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR−CHO細胞(Urlaub et al.,PNAS USA 77:4216(1980))、ならびにNSO及びSp2/0等の骨髄腫細胞株を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。ポリペプチド生成にとって好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.255−268を参照されたい。ある特定の好ましい哺乳動物細胞発現系としては、CHO及びHEK293−細胞系発現系が挙げられる。哺乳動物発現系は、当分野において既知の他のものの中でも、例えばT型培養瓶、ローラボトル、もしくは細胞ファクトリー内の付着細胞株、または例えば1L及び5Lスピナー、5L、14L、40L、100L、及び200L撹拌タンクバイオリアクター、もしくは20/50L及び100/200LのWAVEバイオリアクター内の懸濁培養液を活用することができる。
【0144】
一般的で好ましい細菌宿主は大腸菌である。大腸菌等の原核細胞におけるタンパク質の発現は、当分野において良好に確立されている。概説については、例えば、Pluckthun,A.Bio/Technology.9:545−551(1991)を参照されたい。培養中の真核細胞における発現もまた、ポリペプチドの組換え生成のための選択肢として当業者には利用可能である(Ref,Curr.Opinion Biotech.4:573−576,1993、及びTrill et al.,Curr.Opinion Biotech.6:553−560,1995を参照)。特定の実施形態において、タンパク質発現は、T7 RNAポリメラーゼ(例えば、pETベクターシリーズ)で制御することができる。これら及び関連する実施形態は、発現宿主系統BL21(DE3)、T7媒介発現を支持し、lon及びompTプロテアーゼにおいて不十分なBL21の λDE3溶原菌を、向上された標的タンパク質の安定性のために活用してもよい。Rosetta(商標)(DE3)及びRosetta 2(DE3)系統等の、大腸菌において滅多に使用されないtRNAをコードするプラスミドを担持する発現宿主系統もまた含まれる。細胞溶解及び試料の取り扱いはまた、Benzonase(登録商標)ヌクレアーゼ及びBugBuster(登録商標)タンパク質抽出試薬等の試薬を用いることで改善することができる。細胞培養に関しては、自己誘導培地が、ハイスループット発現系を含む、多くの発現系の効率性を向上させ得る。この種類の培地(例えば、Overnight Express(商標)自己誘導系)は、漸進的に、IPTG等の人工誘導剤の添加を伴わずに代謝シフトを通じてタンパク質発現を誘発する。特定の実施形態は、ヘキサヒスチジンタグ(His・Tag(登録商標)融合物等)を採用し、その後固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)精製または関連する技法が続く。しかしながら、ある特定の態様においては、臨床グレードのタンパク質は、アフィニティタグまたはその使用を伴わずに大腸菌封入体から単離することができる(例えば、Shimp et al.,Protein Expr Purif.50:58−67,2006を参照)。更なる例として、低温での大腸菌におけるタンパク質の過剰発現はそれらの溶解度及び安定性を向上させるため、ある特定の実施形態は、低温ショック誘導大腸菌高収率生成系を採用してもよい(例えば、Qing et al.,Nature Biotechnology.22:877−882,2004を参照)。
【0145】
加えて、宿主細胞系統は、挿入された配列の発現を調整するその能力、または発現されたタンパク質を所望の様式で処理するその能力に関して選択されてもよい。そのようなポリペプチドの修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、及びアシル化等の翻訳後修飾が挙げられる。タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後処理もまた、正確な挿入、折り畳み、及び/または機能を促進するために使用され得る。細菌細胞に加えて、そのような翻訳後活性のために、特定の細胞機構及び特性機序を有するかあるいはそれらを欠きさえする、酵母菌、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びW138等の異なる宿主細胞が、目的の融合タンパク質の正確な修飾及び処理を確実にするために選択され得る。
【0146】
長期的には、組換えタンパク質の高収率生成、安定発現が、一般的には好ましい。例えば、目的のポリヌクレオチドを安定的に発現する細胞株は、ウイルス性起源の複製エレメント及び/または内因性発現エレメントを含み得る発現ベクターと、同一のまたは別個のベクター上の選択可能なマーカー遺伝子とを用いることで、転換することができる。ベクターの導入後、細胞は、富化培地において約1〜2日間成長させ、その後それらの細胞を選択培地に切り替えてもよい。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在は、導入された配列を成功裡に発現する細胞の成長及び回収を可能にする。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞の種類にとって適切な組織培養技法を用いて増殖させ得る。一過性導入または一過性感染等の一過性生成もまた採用することができる。一過性生成にとって好適な、例示的な哺乳動物発現系としては、HEK293及びCHOに基づく系が挙げられる。
【0147】
目的のポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、タンパク質の発現及び細胞培養物からのその回収にとって好適な条件下で培養され得る。ある特定の実施形態は、血清を含まない細胞発現系を活用する。例としては、血清を含まない培地で成長可能なHEK293細胞及びCHO細胞が挙げられる(例えば、Rosser et al.,Protein Expr.Purif.40:237−43,2005、及び米国特許第6,210,922号を参照)。
【0148】
組換え細胞によって生成されたタンパク質(複数可)は、当分野において既知の様々な技法に従って生成及び特徴付けることができる。タンパク質生成の実行及びタンパク質純度の分析のための例示的システムとしては、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)(例えば、AKTA及びBio−Rad FPLCシステム)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、Beckman及びWaters HPLC)が挙げられる。精製の例示的化学作用としては、当分野において既知の他のものの中でも、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Q、S)、サイズ排除クロマトグラフィー、塩勾配、親和性精製(例えば、Ni、Co、FLAG、マルトース、グルタチオン、タンパク質A/G)、ゲル濾過、逆相セラミックHyperD(登録商標)イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用カラム(HIC)が挙げられる。典型的には、タンパク質組成物の純度を測定するために、生成または精製処理の任意の工程中に活用され得る、SDS−PAGE(例えば、クーマシー、銀染色)、免疫ブロット、Bradford、及びELISA等の分析方法もまた含まれる。
【0149】
組換え生成されたタンパク質、例えば融合タンパク質を濃縮する方法もまた含まれる。例としては凍結乾燥が挙げられ、この方法は、溶液が目的のタンパク質以外に可溶性の構成要素をほとんど含まない場合に典型的に採用される。凍結乾燥は多くの場合HPLCランの後に行われ、混合物から大部分または全ての揮発性構成要素を除去することができる。限外濾過技法もまた含まれ、この方法は典型的には、1つ以上の選択性透過膜を用いてタンパク質溶液を濃縮する。これらの膜は水及び低分子を通過させ、タンパク質を保持し、溶液は、他の技法の中でもとりわけ、機械式ポンプ、ガス圧力、または遠心分離によって膜に対して押し付けられ得る。
【0150】
ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、当分野における通例の技法に従って測定した際、少なくとも約90%の純度を有する。ある特定の実施形態において、診断用組成物またはある特定の治療用組成物等の融合タンパク質は、少なくとも約95%の純度を有する。特定の実施形態において、治療用組成物または薬学的組成物等の融合タンパク質は、少なくとも約97%または98%または99%の純度を有する。他の実施形態において、基準試薬または研究試薬として使用される場合等の融合タンパク質は、より低い純度のものであり得、少なくとも約50%、60%、70%、または80%の純度を有してもよい。純度は全体として、あるいは他のタンパク質等の選択された構成要素に対して、例えばタンパク質ベースの純度として測定することができる。
【0151】
ある特定の実施形態において、上述されるように、本明細書に記載される組成物は、例えば、エンドトキシンを約95%含まない、好ましくはエンドトキシンを約99%含まない、より好ましくはエンドトキシンを約99.99%含まない等、エンドトキシンをほぼ実質的に含まない。エンドトキシンの存在は、本明細書に記載されるように、当分野における通例の技法に従って検出できる。特定の実施形態において、融合タンパク質は、血清を実質的に含まない培地において、哺乳動物細胞またはヒト細胞等の真核細胞から作製される。
【0152】
使用方法及び薬学的組成物
本発明のある特定の実施形態は、本明細書に記載されるp97融合タンパク質を使用する方法に関する。そのような方法の例としては、治療方法及び診断方法が挙げられ、例えば、神経系の医用画像診断等、ある特定の器官/組織の医用画像診断のためのp97融合タンパク質の使用が挙げられる。一部の実施形態は、中枢神経系(CNS)の障害もしくは病態、またはCNS構成要素を有する障害もしくは病態の診断及び/または治療の方法を含む。特定の態様は、CNS構成要素を有するものを含む、リソソーム蓄積症(LSD)を治療する方法を含む。
【0153】
したがって、ある特定の実施形態は、本明細書に記載されるp97融合タンパク質を投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法を含む。本明細書に記載されるp97融合タンパク質を含む組成物を投与することを含む、対象の神経系(例えば、中枢神経系組織)にIDS酵素を送達する方法もまた含まれる。これら及び関連する実施形態のうちのある特定のものにおいて、これらの方法は、例えば非融合IDS酵素を含む組成物による送達と比較して、中枢神経系組織への薬剤の送達の速度を増加させる。
【0154】
一部の事例において、対象は、リソソーム蓄積症を有するか、あるいはそれを有する危険性がある。したがって、ある特定の方法は、治療を必要とする対象におけるリソソーム蓄積症の治療に関し、任意選択でそれらのリソソーム蓄積症は中枢神経系と関連付けられるか、あるいはCNS合併症を有する。例示的なリソソーム蓄積症としては、ムコ多糖症II型(ハンター症候群)が挙げられる。ハンター症候群は、グリコサミノグリカン(GAG)の蓄積によって特徴付けられる、X連鎖性多系統障害である。冒された個体の大多数は男性であり、ごく稀に、保有者である女性が所見を示す。発症の年齢、疾患の重症度、及び進行速度は著しく異なり得る。
【0155】
重度の疾患を有する人々において、CNS合併症(主に進行性の認知衰退によって顕在化する)、進行性気道疾患、及び心臓病は、通常、人生の最初の10年または20年内に死をもたらす。それ故に、ある特定の実施形態は、CNS合併症を伴うハンター症候群の治療を含む。
【0156】
弱毒化された疾患を有する人々において、CNSは冒されていない(あるいは最小限しか冒されていない)が、他の器官系へのGAGの蓄積の影響は、進行性の認知低下を有する人々における場合とほぼ同様の重症度であり得る。正常な知性を有しつつ成人初期まで生存することは、この疾患の弱毒化形態においては一般的である。しかしながら、弱毒化された疾患を有する対象でも、CNS組織への向上した浸透を有するp97−IDS融合タンパク質の投与から利益を得て、弱毒化ハンター症候群からCNS合併症を伴うハンター症候群への進行の危険性を低減することができる。
【0157】
ハンター症候群の両方の形態における追加的な所見としては、低身長、交通性水頭症を伴う、または伴わない大頭症、巨舌症、嗄声、伝音性難聴及び感覚神経性難聴、肝腫大及び/または脾腫、多発性骨形性不全症及び顎関節の強直症を含む関節拘縮、脊柱管狭窄症、ならびに手根管症候群が挙げられる。したがって、本明細書に記載される融合タンパク質による治療を受ける対象は、ハンター症候群のこれらの所見のうちの1つ以上を有し得る。
【0158】
尿中GAG及び骨格検査は、MPS病態の存在を確立できるが、MPS II型に対して特異的ではない。男性の被験者におけるMPS II型の診断の至適基準は、少なくとも1つの他のスルファターゼの正常な活性の存在下における、白血球、線維芽細胞、または血漿中の不十分なイズロン酸スルファターゼ(IDS)酵素活性である。変異がハンター症候群と関連付けられることが既知である唯一の遺伝子、IDSの分子遺伝子検査を、異常な表現型またはGAG試験の結果と一致しない表現型をもつ男性の被験者における診断を裏付けるために使用することができる。
【0159】
ハンター症候群の一般的な治療としては、発達療法、作業療法、及び理学療法、水頭症のためのシャント手術、扁桃切除及びアデノイド切除、陽圧換気療法(CPAPまたは気管切開術)、手根管減圧術、弁置換術、鼠径ヘルニア修復が挙げられる。それ故に、ある特定の態様において、本明細書に記載される融合タンパク質による治療の対象は、これらの治療のうちの1つ以上を受けようとしているか、受けているか、受けていた可能性がある。
【0160】
疾患モニタリングは、器官系合併症及び疾患の重症度に依存し得、通常、年毎の心臓病の評価及び心エコー図、肺機能試験を含む肺の評価、聴力図、眼科検診、発達の評価、ならびに神経学的検査を含む。追加的な研究は、閉塞性無呼吸のための睡眠検査、手根管症候群を評価するための神経伝導速度(NCV)、水頭症の評価、股関節疾患を監視するための整形外科的評価を含み得る。したがって、一部の態様において、本明細書に記載される融合タンパク質による治療の対象は、これらの疾患モニタリングプロトコルのうちの1つ以上を受けようとしているか、受けているか、受けていた可能性がある。
【0161】
インビボでの使用、例えばヒトの疾患の治療、医用画像診断、または試験のために、本明細書に記載されるp97融合タンパク質は概して、投与前に、薬学的組成物に組み込まれる。薬学的組成物は、本明細書に記載されるp97融合タンパク質のうちの1つ以上を、生理学的に許容される担体または賦形剤と共に含む。
【0162】
薬学的組成物を調製するために、有効量または所望量の1つ以上の融合タンパク質を、投与の特定の形態にとって好適であるように、当業者に既知の任意の薬学的担体(複数可)または賦形剤と共に混合する。薬学的担体は、液体、半液体、または固体であってもよい。非経口、皮内、皮下、または局所適用のために使用される溶液または懸濁液は、例えば、無菌希釈剤(水等)、食塩水(例えばリン酸緩衝生理食塩水、PBS)、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤(ベンジルアルコール及びメチルパラベン等);酸化防止剤(アスコルビン酸及び亜硫酸水素ナトリウム)及びキレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA));緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩等)を含んでもよい。静脈内に投与される(例えば、静脈内注入によって)場合、好適な担体としては、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらの混合物等の増粘剤及び可溶化剤を含有する溶液が挙げられる。
【0163】
本明細書に記載される融合タンパク質の、純粋な形態での投与または適切な薬学的組成物中での投与は、類似の有用性を提供する薬剤の投与の許容される形態のうちのいずれかを介して実行することができる。薬学的組成物は、融合タンパク質含有組成物を、適切な生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることによって調製することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶剤、坐薬、注射、吸入剤、ゲル、ミクロスフェア、及びエアロゾル等の、固体、半固体、液体、またはガス状形態の調製物へと配合され得る。加えて、他の薬学的活性成分(本明細書の他の場所に記載されるような他の小分子を含む)及び/または塩、緩衝剤、及び安定化剤等の好適な賦形剤が組成物内に存在してもよいが、存在しなくともよい。
【0164】
投与は、経口、非経口、経鼻、静脈内、皮内、皮下、または局所投与を含む、様々な異なる経路で達成され得る。投与の好ましい形態は、治療または予防する病態の性質に依存する。特定の実施形態は、静脈内注入による投与を含む。一部の実施形態は、腹腔内(IP)注射による投与を含む。それらの組み合わせもまた含まれる。
【0165】
担体としては、例えば、用いられる投与量及び濃度においてそれに曝露される細胞または哺乳動物に対して無毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤が挙げられる。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトールもしくはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;ならびに/またはポリソルベート20(TWEEN(商標))ポリエチレングリコール(PEG)、及びポロキサマー(PLURONICS(商標))等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0166】
ある特定の態様において、融合タンパク質は、粒子、例えばナノ粒子、ビーズ、脂質製剤、脂質粒子、またはリポソーム、例えば免疫リポソームと結合するか、その内部に封入される。融合タンパク質は、例えばコアセルベーション技法または界面重合によって調製されるマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル)内に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、微乳濁液、ナノ粒子、及びナノカプセル)内に、あるいはマクロエマルション内に封入され得る。そのような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.,Ed.,(1980)に開示されている。粒子(複数可)またはリポソームは更に、他の治療剤または診断剤を含み得る。
【0167】
正確な投与量及び治療期間は、治療される疾患の関数であり、既知の試験プロトコルを用いることで経験的に決定されるか、あるいは当分野において既知のモデル系内で組成物を試験して、そこから補外することによって決定され得る。対照臨床試験もまた行われてもよい。投与量もまた、緩和されるべき病態の重症度によって異なり得る。薬学的組成物は概して、望ましくない副作用を最小化する一方で、治療上有用な効果を及ぼすように配合及び投与される。組成物は1回で投与されてもよく、あるいは時間の間隔を空けて投与されるように、いくつかのより小さい用量へと分割されてもよい。任意の特定の対象に対して、具体的な投与レジメンは、個々の必要性に応じて経時的に調整されてもよい。
【0168】
したがって、これら及び関連する薬学的組成物を投与する典型的な経路は、限定されるものではないが、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔、直腸、経膣、及び鼻腔内を含む。用語、非経口は、本明細書で使用する場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技法を含む。本発明のある特定の実施形態による薬学的組成物は、その中に含有される活性成分が、患者への組成物の投与の際に生物学的に利用可能であることを可能にするように配合される。対象または患者に投与される組成物は、例えば、錠剤が単回投与単位であり得る場合、及び本明細書に記載されるエアロゾル形態の抱合体の容器が複数の投与単位を保持し得る場合、1つ以上の投与単位の形態をとってもよい。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者にとっては既知であるか、あるいは明白であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)を参照されたい。投与される組成物は典型的には、目的の疾患または病態の治療のために、治療有効量の本明細書に記載される融合タンパク質を含有することになる。
【0169】
薬学的組成物は、固体または液体の形態であり得る。一実施形態において、組成物が例えば錠剤形態または散剤形態であるように、担体(複数可)は粒子性である。担体は、組成物が例えば吸入投与において有用な、例えば経口油、注射可能な液体、またはエアロゾルである場合、液体であり得る。経口投与が意図される場合、薬学的組成物は、固体または液体形態のいずれかであることが好ましいが、ここで、半固体、半液体、懸濁液、及びゲル形態は、本明細書において固体または液体のいずれかとしてみなされる形態の中に含まれる。
【0170】
経口投与のための固体組成物として、薬学的組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸薬、カプセル剤、チューインガム、ウエハ等へと製剤化され得る。そのような固体組成物は典型的には、1つ以上の不活性希釈剤または食用担体を含有することになる。加えて、以下のうちの1つ以上が存在してもよい:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガントガム、またはゼラチン等の結合剤;デンプン、ラクトース、またはデキストリン等の賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotex等の滑沢剤、コロイド状二酸化シリコン等の流動促進剤;スクロースまたはサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料等の香味剤;及び着色剤。薬学的組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、薬学的組成物は上記の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコールまたは油等の液体担体を含有し得る。
【0171】
薬学的組成物は、液体の形態、例えばエリキシル剤、シロップ剤、溶剤、乳剤、または懸濁剤の形態であり得る。液体は、2つの例としては、経口投与のため、または注射による送達のためであり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、存在する化合物に加えて、甘味剤、保存剤、染料/着色剤、及び風味増強剤のうちの1つ以上を含有する。注射によって投与されることが意図される組成物においては、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定化剤、及び等張化剤のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0172】
液体薬学的組成物は、それらが溶剤、懸濁剤、または他の類似の形態であるかに関わらず、以下の補助剤のうちの1つ以上を含み得る:注射用蒸留水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンガー液、等張食塩水、溶媒もしくは懸濁媒体として機能し得る合成モノグリセリドもしくはジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩等の緩衝剤、及び塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張性の調整のための薬剤。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックで作製されたアンプル、使い捨てシリンジ、または多人数用バイアル内に密閉することができる。生理食塩水が好ましい補助剤である。注射可能な薬学的組成物は、無菌であることが好ましい。
【0173】
非経口または経口投与のいずれかが意図される液体薬学的組成物は、好適な投与量が得られるような、ある量の融合タンパク質を含有すべきである。典型的には、この量は、組成物中少なくとも0.01%の目的の薬剤である。経口投与が意図される場合、この量は、組成物の0.1〜約70重量%になるように変動し得る。ある特定の経口薬学的組成物は、約4%〜約75%の目的の薬剤を含有する。ある特定の実施形態において、本発明による薬学的組成物及び調製物は、非経口投与単位が、希釈前に、0.01〜10重量%の目的の薬剤を含有するように調製される。
【0174】
薬学的組成物は局所投与が意図されてもよく、この場合、担体は、溶剤、乳剤、軟膏、またはゲル基剤を好適に含み得る。この基剤は、例えば、以下のうちの1つ以上を含み得る:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、水及びアルコール等の希釈剤、ならびに乳化剤及び安定化剤。増粘剤が、局所投与用の薬学的組成物中に存在してもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入器を含み得る。
【0175】
薬学的組成物は例えば坐薬の形態で直腸投与が意図されてもよく、これは直腸内で溶解し薬物を放出することになる。直腸投与用の組成物は、好適な非刺激性賦形剤として、油性基剤を含有してもよい。そのような基剤としては、限定されるものではないが、ラノリン、カカオバター、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0176】
薬学的組成物は、固体または液体投与単位の物理的形態を修正する、様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は典型的には不活性であり、例えば、砂糖、シェラック、及び他の腸溶コーティング剤から選択され得る。あるいは、活性成分は、ゼラチンカプセル内に包み込まれてもよい。固体または液体形態の薬学的組成物は、抱合体または薬剤に結合する薬剤を含み、それによって化合物の送達を促進し得る。この能力で作動し得る好適な薬剤としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、1つ以上のタンパク質、またはリポソームが挙げられる。
【0177】
薬学的組成物は、エアロゾルとして投与することができる投与単位から本質的になってもよい。用語、エアロゾルは、コロイド状性質のシステムから圧力パッケージからなるシステムまで多岐に亘る、様々なシステムを意味する。送達は、液化ガスまたは圧縮ガスによって、あるいは活性成分を送出する好適なポンプシステムによって行われ得る。エアロゾルは、活性成分(複数可)を送達するために、単相、二相性、または三相性システムで送達され得る。エアロゾルの送達は、必要な容器、アクティベータ、弁、サブ容器等を含み、これらが一緒になってキットを形成し得る。当業者ならば、余計な実験無しに、好ましいエアロゾルを決定できる。
【0178】
本明細書に記載される組成物は、融合タンパク質が体から迅速に排除されないように保護する、徐放性製剤またはコーティング等の担体と共に調製されてもよい。そのような担体としては、限定されるものではないが、移植及びマイクロカプセル封入送達システム、ならびにエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及び当業者に既知の他のもの等の生分解性の生体適合性ポリマーが挙げられる。
【0179】
薬学的組成物は、製薬分野において周知の手法で調製することができる。例えば、注射による投与が意図される薬学的組成物は、塩、緩衝剤、及び/または安定化剤のうちの1つ以上を、溶液を形成するように無菌蒸留水と共に含み得る。界面活性剤が、均質な溶液または懸濁液の形成を促進するために添加されてもよい。界面活性剤は、水性送達系における抱合体の溶解または均質な懸濁を促進するように、抱合体と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0180】
組成物は、治療有効量で投与され得るが、この治療有効量は、採用される特定の化合物の活性;化合物の代謝安定性及び反応の長さ;患者の年齢、体重、一般の健康状態、性別、食事;投与の形態及び時間;排泄の速度;薬物の組み合わせ;特定の障害または病態の重症度;ならびに療法を受ける対象を含む、様々な因子に依存して変動することになる。一般的に、治療的に有効な1日用量は(70kgの哺乳動物に関して)、約0.001mg/kg(すなわち、約0.07mg)〜約100mg/kg(すなわち、約7.0g)、好ましくは、治療有効量は(70kgの哺乳動物に関して)、約0.01mg/kg(すなわち、約0.7mg)〜約50mg/kg(すなわち、約3.5g)、より好ましくは、治療有効量は(70kgの哺乳動物に関して)、約1mg/kg(すなわち、約70mg)〜約25mg/kg(すなわち、1.75g)である。
【0181】
本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載されるように、1つ以上の他の治療剤の投与と同時に、その前に、あるいはその後に投与されてもよい。例えば、一実施形態において、抱合体は抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤または抗炎症薬としては、限定されるものではないが、ステロイド及びグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬品、シクロホスファミド、及びミコフェノール酸を含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)が挙げられる。
【0182】
そのような併用療法としては、本発明の化合物(すなわち、融合タンパク質)及び1つ以上の追加的な活性剤を含有する単一の薬学的投与製剤の投与、ならびに本発明の抱合体を含む組成物と、それぞれ別個の薬学的投与製剤である活性剤との投与が挙げられ得る。例えば、本明細書に記載される融合タンパク質、及び他の活性剤は、錠剤またはカプセル等の単一の経口投与組成物として患者に対して一緒に投与することができ、あるいは各薬剤は、別個の経口投与製剤として投与することができる。同様に、本明細書に記載される融合タンパク質、及び他の活性剤は、食塩水中または他の生理学的に許容される溶液中等の単一の非経口投与組成物として患者に対して一緒に投与することができ、あるいは各薬剤は、別個の非経口投与製剤として投与することができる。別個の投与製剤が使用される場合、融合タンパク質を含む組成物と、1つ以上の追加的な活性剤とは、本質的に同じ時間に、すなわち同時に投与することができ、あるいは別個に交互のタイミングで、すなわち順次かつ任意の順番で投与することができ、併用療法は、全てのこれらのレジメンを含むものと理解される。
【0183】
本明細書に記載される様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を生み出すことができる。本明細書において言及され、かつ/または出願データシートに列挙される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、海外の特許、海外の特許出願、及び非特許刊行物の全ては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、尚も更なる実施形態を生み出すために様々な特許、出願、及び刊行物の概念を採用することが必要な場合、修正することができる。
【0184】
これら及び他の変更を、上に詳述された説明の観点から行うことができる。概して、以下の請求項において、使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲において開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、全ての可能な実施形態と、そのような請求項が権利を与えられる等価物の全範囲とを含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
【実施例】
【0185】
実施例1
融合タンパク質のインビトロ活性
ヒトp97(メラノトランスフェリン、MTf)及びヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(duronate−2−sulfatase)(IDS)の融合タンパク質を調製し、インビトロの酵素活性について試験した。表E1はアミノ酸配列を提供し、表E2は調製及び試験した融合タンパク質の対応するポリヌクレオチドコード配列を提供する。
【表E1-1】
【表E1-2】
【表E2-1】
【表E2-2】
【表E2-3】
【表E2-4】
【表E2-5】
【0186】
組換えタンパク質を調製し、組換えヒトIDS及び負の対照(トラスツズマブ−MTf融合物)と比較した、基質4−ニトロカテコール硫酸塩(PNCS)に対する酵素活性について試験した。結果を
図2〜4に示す。1μgの各試料を酵素活性アッセイにおいて使用し、提示されるデータは基質ブランクへと正規化されている。
【0187】
図2は、組換えヒトIDS及び負の対照(TZM−MTf融合物)に対する、基質4−ニトロカテコール硫酸塩(PNCS)を加水分解する能力で測定したI2S−MTf及びMTf−I2S融合タンパク質の酵素活性評価を示す。これらのデータは、I2S−MTf及びMTf−I2S融合タンパク質が、有意な酵素活性を有するだけでなく、また、野生型(非融合)ヒトIDSと比較して、増加した酵素活性を有したことを示す。
【0188】
図3は、I2S−MTf融合物及び負の対照(TZM−MTf融合物)に対する、基質PNCSを加水分解する能力で測定したMTfpep−I2S及びI2S−MTfpep(I2Sプロペプチドを伴う)融合タンパク質の酵素活性評価を示す。これらのデータは、MTfpep−I2S及びI2S−MTfpep融合タンパク質が、有意な酵素活性を有するだけでなく、また、(
図2からの)有意に活性なI2S−MTf融合タンパク質と比較して、増加した酵素活性を有し、したがって、野生型(非融合)ヒトIDSと比較して、増加した酵素活性を有したことを示す。
【0189】
図4は、基質PNCSを加水分解する能力で測定したI2S−MTfpep(I2Sプロペプチドを伴う)融合タンパク質とI2S−MTfpep(I2Sプロペプチドを伴わない)融合タンパク質との酵素活性の比較を示す。これらのデータは、MTfpep−I2S及びI2S−MTfpep融合タンパク質が、有意な酵素活性を有するだけでなく、また、野生型(非融合)ヒトIDSと比較して、増加した酵素活性を有したことを示す。
【0190】
実施例2
脳内でのI2S−MTf及びMTfpep−I2S融合物のインビボ分散
マウスにおけるI2S−MTf及びMTfpep−I2S融合タンパク質の脳生体内分布を、定量的共焦点顕微鏡イメージングで評価した。I2S−MTf及びMTfpep−I2Sの治療量等価物を、尾静脈注射でマウスに100μL投与した。安楽死させる前に、マウスには、脳の血管系を染色するために、10分間、トマトレクチン−FITC(40μg)を注射した(静脈内)。血液は、10mlのヘパリン添加した食塩水を毎分1mlの速度で心臓内灌流させることで取り除いた。脳を切除し、OCT内で凍結させ、−80℃で保管した。Tissue Tekに脳を載置し、−20℃のクリオスタットで薄片に切り分けた。薄片をSuperfrost Plus顕微鏡スライド上に載置し、室温で10分間、低温のアセトン/MeOH(1:1)中で固定し、PBSで洗浄した。Prolong Gold褪色防止用封入剤を、DAPI(分子プローブ、P36931)と共に使用して、カバーガラスを薄片上に載置した。三次元(3D)共焦点顕微鏡検査及び定量的分析を行った。
【0191】
図5は、全体(T)のシグナルに対する、毛細血管(C)と脳内の実質組織(P)との間のMTfpep−I2S(プロペプチドを伴う)融合タンパク質及びI2S−MTf融合タンパク質の相対分布の定量化を示す。毛細血管と比較して、実質組織の有意な染色は、MTfpep−I2S及びI2S−MTf融合タンパク質の両方が、血液脳関門(BBB)を越え、中枢神経系の組織内に蓄積することができることを裏付ける。
【0192】
要約すると、実施例1及び2のデータは、MTfpep−I2S(プロペプチドを伴う)融合タンパク質及びI2S−MTf融合タンパク質は、BBBを越えて、CNSの組織内で蓄積することができるだけでなく、野生型(非融合)組換えヒトIDSと比較して、有意に増加した酵素活性を有することを示す。
【0193】
実施例3
MPS II型のマウスモデルにおけるI2S−MTf及びMTfpep−I2S融合物のインビボ活性
I2S−MTf及びMTfpep−I2S融合タンパク質の治療効果を、ハンター症候群の治療に対して示されるイズルスルファーゼ(Elaprase(登録商標))と比較して、ハンター症候群またはムコ多糖症II型(MPS II型)のマウスモデルにおいて評価する。これらの研究は、ムコ多糖症II型(MPS II型)のノックアウトマウスモデルにおける脳病理に対する、これらの融合タンパク質の静脈内(IV)及び腹腔内(IP)投与の効果を評価するように設計される。
【0194】
ハンター症候群.上述されるように、ハンター症候群は、リソソーム酵素、イズロン酸−2−スルファターゼ(IDS)の不十分な水準によって引き起こされる、X連鎖性劣性遺伝病である。この酵素は、グリコサミノグリカン(GAG)デルマタン硫酸塩及びヘパラン硫酸塩から末端の2−O−スルフェート部分を切断する。ハンター症候群を有する患者における、欠けているか、あるいは欠陥のあるIDS酵素活性に起因して、GAGは、様々な種類の細胞のリソソーム内に進行的に蓄積する。これは、細胞充血、臓器肥大、組織破壊、及び器官系機能障害につながる。
【0195】
マウスモデル.IDS−KOマウスは、組織IDS活性をほとんど有さないか、全く有さず、増加した組織空胞形成、GAGレベル、及びGAGの尿排泄を含む、ハンター症候群において観察される細胞効果及び臨床効果の多くを提示する。ハンター症候群のX連鎖性劣性性質に起因して、全ての薬理学的研究は、オスのマウスで行う。動物育種は、Garcia et al,2007(3)に記載されているように行う。簡潔に述べれば、保有者であるメスを、C57Bl/6の背景系統の野生型のオスのマウスと飼育し、異種起源のメス及びヘミ接合性のオスのノックアウトマウス、ならびに野生型(WT)のオス及びメスを生み出す。代替的に、オスのIDS−KOマウスは、保有者であるメスをオスのIDS−KOマウスと飼育することによって得られる。これらの実験において使用される全てのマウスの遺伝子型は、尾の断片から得られるDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって確認する。全てのIDS−KOマウスは、ヘミ接合性IKO(−/0)のオスであり、治療開始の始めにおいて12〜13週齢である(12週よりも若いマウスはこの研究では使用しない)。未治療のWT同腹仔(+/0)のオスのグループを、対照として使用する。
【0196】
イズルスルファーゼ(Elaprase(登録商標)).イズルスルファーゼは、ハンター症候群(MPS II型とも呼ばれる)を治療するために使用される薬物である(Garcia et al.,Mol Genet Metab.91:183−90,2007を参照)。イズルスルファーゼは、リソソーム酵素、イズロン酸−2−スルファターゼの精製形態であり、ヒト細胞株の組換えDNA技術によって生成する。
【0197】
研究設計.研究設計が、下の表E3に概説される。
【表E3】
【0198】
全ての被験物質及びビヒクル対照は、週1回、全体で6週間行われる、2回の緩徐なボーラス(1回のIV及び1回のIP注射)で投与される。
【0199】
体重は、治療の初日及びその後毎週、無作為に判定される。臨床観察は毎日行う。動物は、最後の治療のほぼ24時間後に屠殺する。
【0200】
選択した器官(脳、肝臓、腎臓、及び心臓)っを収集し、それらの重量を記録する。脳は、病理組織診断及び免疫染色分析のために保存する。他の組織は、半分または1対の器官に分け、脳と同様の様式で、病理組織診断及び免疫染色分析のために保存する。もう半分または対の他方の器官は、液体窒素中で凍結させ、GAGについてアッセイするまで−80℃で保管する。
【0201】
研究エンドポイント:主要エンドポイントは以下の通りである。
・組織学的評価:脳薄片のヘマトキシリン及びエオシン染色。この方法は、治療が、IDS−KOマウスにおいて観察される細胞貯蔵空胞の数/サイズを低減するのに影響を及ぼしたかを評価するために使用される;ならびに、
・脳薄片のリソソーム膜タンパク質−1(LAMP−1)の免疫組織化学評価:この方法は、治療が、IDS−KOマウスにおいて観察される上昇したLAMP−1免疫反応性を低減するのに影響を及ぼしたかを判定するために使用される。
【0202】
実行可能な場合、定性的または半定性的方法もまたエンドポイント1〜2の分析について採用される(スコアリング、面積測定、横断スキャン等)。この分析を行う組織病理学者は、研究グループへのスライドの割り当てについて盲目である。リソソーム表面積は、LAMP1(IHC)について染色された領域をスキャンすることによって定量化し、実験グループ間で比較する。
【0203】
副次エンドポイントは以下の通りである。
・選択した組織(肝臓、腎臓、及び心臓)のGAGレベル;
・選択した組織のH&E染色及び細胞貯蔵空胞の検出;ならびに
・選択した器官/組織のLAMP−1レベルの免疫組織化学的評価。
【0204】
病理組織診断(H&E染色).組織を収集し、10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、次いでパラフィン中で処理及び包埋する。5μmのパラフィン薄片を調製し、標準的な手順を用いてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色する。
【0205】
免疫組織化学(LAMP−1).脱パラフィンしたスライドを、一次抗体としてのラット抗LAMP−1IgG(Santa CruzBiotechnology)、または対照抗体としてのラットIgG2a(AbDSerotec,Raleigh,NC)と共に夜通しインキュベートする。2〜8℃の夜通しのインキュベーション後、マウス組織の染色用の、ビオチン化ウサギ抗ラットIgG(H&L)(Vector Laboratories)を添加する。37℃のインキュベーションの30分後、試料を洗浄し、次いで、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(Vector Laboratories)で30分間処理する。標識されたタンパク質の位置を、3,39−ジアミノベンジジンを伴うインキュベーションによって特定する。LAMP−1陽性細胞の面積を、Image−Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics,Inc.,Bethesda,MD)で分析する。
【0206】
GAG測定.組織抽出物を、ガラス研摩機(Kontes Glass Company,Vineland,NJ)またはモーター付組織破砕機(PowerGen Model 125,Omni International,Warrenton,VA)を用いて、溶解緩衝液(10mMのTris、5mMのEDTA、0.1% Igepal CA−630、2mMのPefabloc SC)中で組織を均質化することによって調製する。次いで、破砕物を、エタノール/乾燥氷浴及び37℃の水浴を用いる5回の凍結融解サイクルに供する。組織破片を室温、2000gでの12分間の遠心分離によって2度ペレット化し、上清を収集し、ビシンコニン酸(bicinchonic acid)(BCA)アッセイ(Pierce,Rockford,IL)で、総タンパク質濃度(mg/mL)についてアッセイする。
【0207】
尿中のGAG濃度及び組織抽出物を、1,9−ジメチルメチレンブルー(DMB)色素、及びデルマタン硫酸塩(MP Biomedicals,Aurora,OH)から調製した標準曲線(1.56〜25μg/mL)を用いて、比色分析アッセイ(acolorimetric assay)によって定量化する。尿中試料を、1/10、1/20、及び1/40の希釈物でランさせる。タンパク質からのアッセイ干渉を回避するために、組織抽出物試料は、200μg/mLのタンパク質濃度まで希釈する。尿中のGAG濃度は、腎機能における差異を埋め合わせるために、市販のキット(Sigma,St.Louis,MO、part no.555A)で測定したクレアチニン濃度に関して調整し、μgGAG/mgクレアチニンとして表す。組織抽出物中のGAGレベルは、タンパク質濃度(μgGAG/mgタンパク質)またはグラム組織に関して調整する。