(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605507
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】球面クラッチを有するトルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
F16H45/02 X
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-570318(P2016-570318)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公表番号】特表2017-516962(P2017-516962A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】US2015032574
(87)【国際公開番号】WO2015183886
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月24日
(31)【優先権主張番号】62/005,289
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】515316355
【氏名又は名称】シェフラー グループ ユー・エス・エイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Group USA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック リンデマン
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−157520(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/130398(WO,A1)
【文献】
特開平10−331945(JP,A)
【文献】
特開2002−310262(JP,A)
【文献】
特表2016−525197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/22
F16H 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータアセンブリであって、
回転軸線と、
該回転軸線に沿って位置決めされた第1および第2の球面中心と、
カバーと、
インペラシェルを含むインペラであって、前記インペラシェルは、第1の球面を含む第1の球面部分と、曲がり部分と、前記カバーまで延びておりかつ該カバーと接続されるように配置された端部を含む円筒状部分とを有し、前記第1の球面は、第1の曲率を規定する半径と、第1の球面中心と、第1の摩擦面とを有する、インペラと、
タービンシェルを含むタービンであって、前記タービンシェルは、第2の球面を含む第2の球面部分を有し、前記第2の球面は、前記第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する前記半径と、第2の球面中心と、第2の摩擦面とを有する、タービンと、を備え、
前記第1および第2の摩擦面は、摩擦係合のために配置されており、前記第1および第2の摩擦面が係合しているとき、前記第2の球面中心は前記第1の球面中心とほぼ同じかまたは等しく、前記第1および第2の摩擦面が係合していないとき、前記第2の球面中心は前記第1の球面中心からずれていることを特徴とする、トルクコンバータアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の球面は、前記半径と前記第1の球面中心とを有する大円をさらに含み、該大円に沿った摩擦係合のために前記第1および第2の摩擦面が配置されている、請求項1記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項3】
摩擦材料をさらに含み、前記第1または第2の摩擦面は前記摩擦材料に配置されている、請求項1または2記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項4】
前記摩擦材料は、接着面と、反対側の面とを有する、請求項3記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項5】
前記反対側の面は、凸状である、請求項4記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項6】
前記インペラシェルは、第1の内側球面と、リヤカバー外面と、第1の厚さとを有する第1の球面部分を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のトルクコンバータアセンブリ。
【請求項7】
前記インペラシェルは、第1および第2のテーパ部分と、前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さとをさらに有する、請求項6記載のトルクコンバータアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、球面クラッチ配列を有するトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2015/0021137号には、インペラクラッチを開放させる弾性要素を備える2パス多機能トルクコンバータが説明されている。
【0003】
参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2012/0152680号は、第1の摩擦面が、第1の内径と第1の外径との間の摩擦面の部分において軸方向膨張部を有しており、この軸方向膨張部は、内径と外径との間の半径方向距離よりも少なくとも一桁大きい半径を有する円弧によって規定されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な態様は、広くは、クラッチアセンブリにおいて、回転軸線と、回転軸線に沿って位置決めされた第1および第2の球面中心と、第1の球面を有する第1の部材であって、第1の曲率を規定する半径と、第1の球面中心と、第1の摩擦面とを有する、第1の部材と、第2の球面を有する第2の部材であって、第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する半径と、第2の球面中心と、第2の摩擦面とを有する、第2の部材と、を備える、クラッチアセンブリを含む。1つの例示的態様では、クラッチが係合しているとき、第2の球面中心は第1の球面中心とほぼ同じかまたは等しい。1つの例示的態様では、クラッチが係合していないとき、第2の球面中心は第1の球面中心からずれている。1つの例示的態様では、第1の球面は、半径と第1の球面中心とを有する大円をさらに含み、この大円に沿った摩擦係合のために第1および第2の摩擦面が配置されている。1つの例示的態様では、第1または第2の部材は摩擦材料を含み、第1または第2の摩擦面は摩擦材料に配置されている。1つの例示的態様では、摩擦材料は、接着面と、反対側の面とを有する。1つの例示的態様では、反対側の面は凸面状である。
【0005】
その他の例示的態様は、広くは、トルクコンバータにおいて、回転軸線と、回転軸線に沿って位置決めされた第1および第2の球面中心と、第1の内側球面を有するインペラシェルを含むインペラであって、第1の曲率を規定する半径と、第1の球面中心と、第1の摩擦面とを有する、インペラと、第2の内側球面を有するタービンシェルを含むタービンであって、第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する半径と、第2の球面中心と、第2の摩擦面とを有する、タービンと、を備え、第1および第2の摩擦面は、摩擦係合のために配置されている、トルクコンバータを含む。1つの例示的態様では、インペラシェルまたはタービンシェルは摩擦材料を含み、第1または第2の摩擦面は摩擦材料に配置されている。1つの例示的態様では、摩擦材料は、接着面と、反対側の面とを有する。1つの例示的態様では、反対側の面は凸面状である。1つの例示的態様では、インペラシェルは、第1の内側球面と、後側カバー外面と、第1の厚さとを有する第1の球面部分を含む。1つの例示的態様では、インペラシェルは、第1および第2のテーパ部分と、第1の厚さよりも大きい第2の厚さとをさらに有する。1つの例示的態様において、インペラシェルは、端部を有しかつカバーまで延びかつカバーと接続されるように配置された円筒状部分と、インペラシェルトーラス部分まで延びかつインペラシェルトーラス部分に一体に取り付けられた曲がり部分とをさらに含む。1つの例示的態様では、タービンシェルは、第2の内側球面と、外側タービンシェル面とを有する第2の球面部分を含む。1つの例示的態様では、タービンシェルは、タービンシェルトーラス部分まで延びかつタービンシェルトーラス部分に一体に取り付けられた半径方向壁部をさらに含む。1つの例示的態様では、第1の球面は、半径と第1の球面中心とを有する大円をさらに含み、この大円に沿った摩擦係合のために第1および第2の摩擦面が配置されている。
【0006】
その他の例示的態様は、広くは、トルクコンバータにおいて、回転軸線と、回転軸線に沿って位置決めされた第1および第2の球面中心と、カバーと、インペラシェルを含むインペラであって、インペラシェルは、第1の内側球面を含む第1の球面部分と、曲がり部分と、カバーまで延びておりかつ該カバーと接続されるように配置された端部を含む円筒状部分とを有し、第1の球面は、第1の曲率を規定する半径と、第1の球面中心と、第1の摩擦面とを含む、インペラと、タービンシェルを含むタービンであって、タービンシェルは、第2の内側球面を含む第2の球面部分を有し、第2の内側球面は、第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する半径と、第2の球面中心と、第2の摩擦面とを有する、タービンと、を備え、第1および第2の摩擦面は、摩擦係合のために配置されており、クラッチが係合しているときは第2の球面中心は第1の球面中心とほぼ同じかまたは等しく、クラッチが係合していないときは第2の球面中心は第1の球面中心からずれている、トルクコンバータを含む。1つの例示的態様では、第1の球面は、半径と第1の球面中心とを有する大円をさらに含み、この大円に沿った摩擦係合のために第1および第2の摩擦面が配置されている。1つの例示的態様では、第1または第2の球面部分は摩擦材料を含み、第1または第2の摩擦面は摩擦材料に配置されている。
【0007】
ここで、本発明の性質および動作モードを、添付の図面とともに本発明の以下の詳細な説明においてより完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリを有するトルクコンバータの部分的な側方断面図を示している。
【
図2】1つの例示的態様による、回転軸線Aを中心に回転される、
図1のトルクコンバータの側方断面図を示している。
【
図3】1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリを有するトルクコンバータの、
図1の四角Bによって示された、部分的な側面図を示している。
【
図4】クラッチが係合しているときの、1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリの部分的な側面図を示している。
【
図5】クラッチが分離しているときの、1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリの部分的な側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、異なる図面に現れる同じ図面番号は、同じかまたは機能的に類似の構造要素を識別していることが認識されるべきである。さらに、本発明は、本明細書に説明された特定の実施の形態、方法、材料および変更に限定されるのではなく、したがって、もちろん変更されてよいことが理解される。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定することが意図されたものではなく、本発明の範囲は添付の請求項のみによって限定されることも理解される。
【0010】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において説明されたものと同様のまたは均等のあらゆる方法、装置または材料を、発明の実施または試験において使用することができるが、ここでは、以下の例としての方法、装置および材料が説明される。
【0011】
本明細書に開示される球面クラッチ配列は、不整合の補償などの利点を提供しつつ、同時にトーラスサイズを減少させる。球面クラッチアセンブリは、例えばトルクコンバータにおける使用に適している。動作中の構成部材の不整合は、望ましくないトルク変動につながる恐れがある。本明細書に説明される球面クラッチはセルフセンタリングする。トルクコンバータのトーラスサイズを減じること、ひいては、アセンブリの総重量をも減じることは、例えば燃料経済性を高めるために現代の自動車では望ましい。
【0012】
以下の説明は、
図1〜
図5を参照して行われる。
図1は、1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリを備えるトルクコンバータの部分的な側方断面図を示している。トルクコンバータ10は、本明細書では互換的にトルクコンバータアセンブリと称される。トルクコンバータ10は、スタッド11を介して内燃機関のクランクシャフトに接続するためのフロントカバー12と、インペラ18のための、本明細書では互換的にインペラシェルとも称されるリヤカバー16と、を有する。インペラは、当該技術分野では互換的に「ポンプ」とも称される。フロントカバー12およびリヤカバー16は、溶接部14によって互いに固定されている。カバー12はカバーパイロット部分90を有する。トルクコンバータ10は、タービン20、タービンシェル22、およびタービン20とインペラ18との間のステータ32をも有する。タービンおよびインペラは、当該技術分野において公知のように、複数のブレードを有する。トルクコンバータ10は、
図1に示すように、破線の間のタービン20およびインペラ18を含む流体連結部分と一般的に称される、トーラス部分75を有する。
【0013】
トルクコンバータ10は、ステータ32を支持しかつ内レース88、ローラ92、および外レース94を有する一方向クラッチ30を備える。側板36は、一方向クラッチ30をステータ32内の所定の位置に保持している。トルクコンバータ10はダンパアセンブリ40も備える。ダンパアセンブリ40は、タービン20に接続されており、タービン20によって駆動可能であり、タービン20とフロントカバー12との間に位置決めされている。ダンパアセンブリ40は、ばね42、フランジ46、およびダンパアセンブリ40へタービンシェル22に固定された駆動タブ44を有する。
【0014】
図3〜
図5においてより詳細に説明するように、トルクコンバータ10はクラッチアセンブリ50を有する。
図1に示すように、トルクコンバータ10は、フランジ46に固定されたハブ80、ブシュ86、溶接部96、およびハブ98をさらに有する。
図1は、トランスミッション構成部材スプライン78、入力軸82、およびステータ軸84も示している。ハブ80は入力軸82にスプライン結合されており、内レース88は、スプライン78においてステータ軸84にスプライン結合されている。ブシュ86はタービンシェル22を軸82に位置決めし、少なくとも部分的にシールしている。
【0015】
トルクコンバータ10は、単に軸線Aとも称される回転軸線A、球面中心60、および半径65を有する。トルクコンバータ10の構成部材は球面を有しており、幾何学的に言えば、特定の構成部材の輪郭または表面形状が、少なくとも球の一部に近似しているかまたは等しく、この球は中心と半径とによって規定される。球面中心60は回転軸線A上に位置決めされており、半径65は軸線Aと交差する。半径65は、球面中心60からクラッチアセンブリ50の部分までの距離である。より具体的に言えば、半径65は、球面中心60からクラッチアセンブリ50の第1の球面までの距離であり、この第1の球面は、
図3〜
図5においてより詳細に示されている。第1の軸方向AD1は、第2の軸方向AD2とは反対である。
【0016】
図2は、1つの例示的態様による、回転軸線Aを中心に回転される、
図1のトルクコンバータの側方断面図を示している。
図2は、
図1に示したトルクコンバータエレメントを示しており、大円70をも含む。大円70は、球面中心60および半径65を有する球の円を示している。大円70を通る平面は、球を2つの等しい部分に分割している。クラッチアセンブリ50は、大円70に沿って係合するように配置されている。
【0017】
図3〜
図5は、1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリを有するトルクコンバータの、
図1の四角Bによって示された、部分的な側面図を示している。球面中心60および半径65は拡大
図3〜5には示されていないが、球面中心および半径エレメントは、
図1に示したように存在し、
図3〜
図5は単に、明瞭にするための
図1の拡大図である。球面クラッチアセンブリは、本明細書では互換的にクラッチアセンブリとも称される。
図3は、第1の部材、または1つの例示的態様ではリヤカバー116を有するクラッチアセンブリ150を示している。第1の部材またはリヤカバー116は、第1の球面部分152、曲がり部分154、および端部158を有する円筒状部分156を有する。端部158は、当該技術分野において公知のように溶接部114においてカバー112に接続されている。球面部分152は、本明細書では互換的に第1の内側球面とも称される第1の球面160を有し、第1の球面160の一部は、第1の摩擦面162を有する。球面部分152は、第1の内側球面160とは反対側の、リヤカバー外面164をさらに有する。クラッチアセンブリ150は、第2の部材を有し、または1つの例示的態様では、第2の球面部分166および半径方向壁部168を含むタービンシェル122の延長部をも有する。球面部分166は、本明細書では互換的に第2の内側球面とも称される第2の球面170を有しており、第2の球面170は第2の摩擦面172を有する。
図3〜
図5は、フランジ148およびばね142の部分も示している。
【0018】
全体として
図1〜
図5を、より具体的に
図4〜
図5を参照すると、クラッチアセンブリ250,350は、回転軸線Aと、回転軸線に沿って位置決めされた第1および第2の球面中心とを有する。
図4は、クラッチが係合しているときの1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリ250の部分的な側面図を示しているのに対し、
図5は、クラッチが分離しているときの1つの例示的態様による球面クラッチアセンブリ350の部分的な側面図を示している。明瞭にするために、クラッチアセンブリ350の分離距離は誇張されている。クラッチ係合状態に応じて、第2の球面中心は、軸線A上で、第1の球面中心60にあるかまたは第1の球面中心の近くにある。言い換えれば、クラッチアセンブリ250が係合している状態では、第2の球面中心は第1の球面中心60と同じ位置に位置決めされる。さらに、クラッチアセンブリ350が係合していないまたは分離している状態では、第2の球面中心は、第1の球面中心から軸線Aに沿って第1の球面中心60に対して第2の軸方向AD2にずれている。すなわち、クラッチが分離しているとき、第2の球面中心は、トーラス部分75から軸方向に離れるように軸線Aに対して平行な方向へ移動する。第2の球面中心は図示されていない。なぜならば、軸方向移動の規模は比較的小さく、数ミリメートルの移動の単位で考えることができ、このため、
図1および
図2における球面中心の識別は区別不能であるからである。
【0019】
再び
図1〜
図5を参照すると、1つの例示的態様では、クラッチアセンブリ150は、回転軸線Aと、第1および第2の球面中心と、第1の球面160を有する第1の部材116とを備えており、第1の球面160は、第1の曲率を規定する半径65と、第1の球面中心60とを有しており、第1の球面160は、第1の摩擦面162を有する。クラッチアセンブリ150は、第2の球面170を有する第2の部材122も備えており、第2の球面170は、第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する半径65と、第2の球面中心とを有する。第2の球面中心は、クラッチ係合モードでは球面中心60と一致してもよく、またはクラッチ分離モードでは、トーラス部分75から離れる軸方向AD2において軸線Aに沿って球面中心60に対してずれている。言い換えれば、クラッチが係合しているとき、第2の球面中心は第1の球面中心とほぼ同じかまたは等しく、クラッチが係合していないとき、第2の球面中心は第1の球面中心からずれている。球面170は第2の摩擦面172を有する。
【0020】
第1の球面160は、半径65と第1の球面中心60とを有する大円70をさらに含み、この大円70に沿った摩擦係合のために第1および第2の摩擦面162,172が配置されている。大円70に沿ってクラッチ係合を提供することにより、クラッチアセンブリ150はセルフセンタリングし、これにより、一貫したトルク性能と、摩擦面における均一な接触とを提供する。トランスミッション入力軸82と回転軸線Aとの不整合が補償され、このときクラッチ構成部材が大円70内で位置合わせされる。
【0021】
第2の部材、1つの例示的態様ではタービンシェル122は、接着面176と反対側の面178とを有する摩擦材料174を含む。第2の部材は、摩擦材料174を含むように本明細書に示されかつ説明されているが、当業者が認識するように、摩擦材料174は第2の部材に限定されず、第1または第2の部材のいずれかに組み込むことができる。言い換えれば、摩擦材料174を有する第1の部材が、例えばインペラシェルの内面に固定されることも考えられる。第2の摩擦面172は摩擦材料174上に配置されている。第2の摩擦面172は、1つの例示的態様では、反対側の面178上に配置されている。
【0022】
ダイを用いて部材に摩擦材料を取り付けるという技術分野において公知のように、摩擦材料174の厚さと、摩擦材料が取り付けられる部材の形状とを調整することによって、反対側の面178の形状を調整することが可能である。1つの例示的実施形態では、部材122は、タービンシェル外面184と、タービンシェル内面186とを有する。1つの例示的態様では、摩擦材料174を取り付ける前は内面186の形状は球状または平坦であってもよいが、いずれの場合にも、第2の内側球面170は球状である。これは、以下のようにして達成される。面186が平坦である例では、球面170が球状に維持されることを保証するために、摩擦材料174は凸状の厚さ輪郭を有する。言い換えれば、反対側の面178は凸状である。面186が球状であるさらに別の例示的実施形態では、摩擦材料174は均一な厚さを有しており、したがって、面170も、面186に取り付けられたときに球状である。
【0023】
別の例示的態様では、球面クラッチアセンブリを有するトルクコンバータが本明細書において提供される。トルクコンバータ10は、回転軸線Aと、回転軸線Aに沿って位置決めされた第1および第2の球面中心と、第1の内側球面160を有するインペラシェル16,116を含むインペラ18であって、第1の内側球面160は、第1の曲率を規定する半径65と、第1の球面中心60と、第1の摩擦面162とを有する、インペラ18と、第2の内側球面170を有するタービンシェル22,122を含むタービン20であって、第2の内側球面170は、第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する半径65と、第2の球面中心(クラッチ分離モードの場合には軸方向AD2にずれており、クラッチ係合モードでは第1の球面中心60と一致する)と、第2の摩擦面172とを有する、タービン20と、を備え、第1および第2の摩擦面162,172は、摩擦係合のために配置されている。第2の部材22,122は摩擦材料174を有しており、第2の摩擦面172は摩擦材料174に配置されている。摩擦材料174は、接着面176と、反対側の面178とを有する。反対側の面178は、1つの例示的態様では、凸状である。1つの例示的態様では、第1の球面160は、半径65と第1の球面中心60とを有する大円70をさらに含み、この大円70に沿った摩擦係合のために第1および第2の摩擦面162,172が配置されている。
【0024】
1つの例示的態様では、第1の部材116は、第1の内側球面160と、リヤカバー外面164と、第1の厚さt1とを有する第1の球面部分152を含む。1つの例示的態様では、第1の部材116は、第1および第2のテーパ部分180,182と、第2の厚さt2とをさらに有しており、t2はt1と少なくとも等しいかまたはそれよりも大きい。第1の球面部分152はテーパ状にされる必要はなく、球面部分152と、隣接部分円筒状部分156と、曲がり部分154との間の移行領域の構成または配列は、変化してもよい。1つの例示的態様では、第1の部材は円筒状部分156を有しており、円筒状部分156は、端部158を有しており、カバー112まで延びておりかつカバー112と接続されるように配置されている。1つの例示的態様では、第1の部材は、曲がり部分154を有する。曲がり部分154は、インペラシェルトーラス部分とも称される、インペラシェル116のトーラス部分75まで延びており、かつこのトーラス部分75に一体に取り付けられている。
【0025】
1つの例示的態様では、第2の部材122は、第2の球面部分166を有しており、この第2の球面部分166は、第2の内側球面170と、タービンシェル外面184とを有する。1つの例示的態様では、第2の部材122は、半径方向壁部168をさらに有しており、この半径方向壁部168は、タービンシェルトーラス部分とも称される、タービンシェル122のトーラス部分75まで延びておりかつこのトーラス部分75に一体に取り付けられている。
【0026】
さらに別の例示的態様では、トルクコンバータ10は、回転軸線Aと、回転軸線Aに沿って位置決めされた第1および第2の球面中心と、カバー12,112と、インペラシェル16,116を含むインペラ18であって、インペラシェル16,116は、第1の内側球面160を有する球面部分152と、曲がり部分154と、カバー12,112まで延びておりかつカバー12,112と接続されるように配置された端部158を含む円筒状部分156とを有し、第1の内側球面160は、第1の曲率を規定する半径65と、第1の球面中心60と、第1の摩擦面162とを有する、インペラ18と、タービンシェル22,122を含むタービン20であって、タービンシェル22,122は、第2の内側球面170を有し、第2の内側球面170は、第1の曲率とほぼ同じかまたは等しい第2の曲率を規定する半径65と、第2の球面中心(クラッチ分離モードの場合には軸方向AD2にずれており、クラッチ係合モードでは第1の球面中心60と一致する)と、第2の摩擦面172とを有する、タービンと、を備え、第1および第2の摩擦面162,172は、摩擦係合のために配置されている。言い換えれば、クラッチが係合しているとき(
図4)、第2の球面中心は第1の球面中心60とほぼ同じかまたは等しく、クラッチが係合していないとき(
図5)、第2の球面中心は第1の球面中心60からずれている。1つの例示的態様では、第1の球面160は、半径65と第1の球面中心60とを有する大円70をさらに含み、この大円70に沿ったまたは大円70と整合した摩擦係合のために第1および第2の摩擦面162,172が配置されている。1つの例示的態様では、第2の部材22,122は摩擦材料174を有しており、第2の摩擦面172は摩擦材料174に配置されている。
【0027】
もちろん、本発明の上記の例に対する改変および変更は、請求項に記載の発明の思想または範囲から逸脱することなく、当業者にとって容易に明らかとなるべきである。特定の好適なおよび/または例としての実施の形態を参照することによって本発明が説明されているが、請求項に記載の発明の範囲または思想から逸脱することなく変更をなし得ることは明らかである。