特許第6605537号(P6605537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605537
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/24 20060101AFI20191031BHJP
   F16J 13/02 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   F16J13/24
   F16J13/02
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-113907(P2017-113907)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-204766(P2018-204766A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 和章
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 秀幸
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−264469(JP,A)
【文献】 特開2009−138866(JP,A)
【文献】 特開平11−192289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00−2/28
11/00−12/14
F16J 12/00−13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、この容器本体の開口部に配設される蓋体と、この蓋体をロックするロック機構と、を有する圧力容器であって、
前記蓋体に配設され、ロック穴が形成されたロックホルダと、
前記容器本体に配設され、前記ロック穴に挿通離脱自在に支持されたロックピンと、
このロックピンを前記ロック穴に対して挿通離脱方向に駆動させる駆動力を付与するロック機構と、
このロック機構によるロック状態を保持して、ロック解除動作を規制するロック解除規制機構と、を備え、
前記ロック機構は、
前記ロックピンに対して軸方向に移動自在に嵌合された駆動部材と、
前記駆動部材の挿通方向への移動を規制する挿通方向規制部と、
前記ロックピンを前記駆動部材に対して離脱方向に付勢するロックピン付勢手段と、
前記駆動部材を前記挿通離脱方向に移動させる駆動部材移動手段と、
を備え、
前記ロック解除規制機構によって、
前記ロックピンが前記ロックホルダに係止される付勢力が付与されていること、
を特徴とする圧力容器。
【請求項2】
容器本体と、この容器本体の開口部に配設される蓋体と、この蓋体をロックするロック機構と、を有する圧力容器であって、
前記蓋体に配設され、ロック穴が形成されたロックホルダと、
前記容器本体に配設され、前記ロック穴に挿通離脱自在に支持されたロックピンと、
このロックピンを前記ロック穴に対して挿通離脱方向に駆動させる駆動力を付与するロック機構と、
このロック機構によるロック状態を保持して、ロック解除動作を規制するロック解除規制機構と、を備え、
前記ロック解除規制機構によって、
前記ロックピンが前記ロックホルダに係止される付勢力が付与され
前記ロック解除規制機構は、前記圧力容器内に配設されたチャンバ内の内圧の作用によって前記付勢力を付与する内圧付勢機構と、
更に前記蓋体を閉じた状態で、前記ロックホルダを前記ロックピンに付勢するロックホルダ付勢補助手段と、を備えていること、
を特徴とする圧力容器。
【請求項3】
前記ロック解除規制機構は、前記圧力容器内に配設されたチャンバ内の内圧の作用によって前記付勢力を付与する内圧付勢機構を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記ロック解除規制機構は、更に前記蓋体を閉じた状態で、前記ロックホルダを前記ロックピンに付勢するロックホルダ付勢補助手段を備えていること、
を特徴とする請求項に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記ロックホルダ付勢補助手段は、前記ロックホルダを前記蓋体が開く方向に付勢すること、
を特徴とする請求項に記載の圧力容器。
【請求項6】
使用者が前記蓋体を閉じる方向に押し込むことで、前記ロック解除規制機構による前記付勢力を開放して、ロック解除動作を行うこと、
を特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項7】
前記ロック機構は、
前記ロックピンに対して軸方向に移動自在に嵌合された駆動部材と、
前記駆動部材の挿通方向への移動を規制する挿通方向規制部と、
前記ロックピンを前記駆動部材に対して離脱方向に付勢するロックピン付勢手段と、
前記駆動部材を前記挿通離脱方向に移動させる駆動部材移動手段と、
を備えていること
を特徴とする請求項2に記載の圧力容器。
【請求項8】
前記駆動部材移動手段は、前記駆動部材を離脱方向へ移動させる直動ソレノイドと、
前記駆動部材を挿通方向へ付勢するばね部材と、
を備えていること
を特徴とする請求項1または請求項に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記蓋体を閉じたことを検知する検知装置をさらに備えていること、
を特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項10】
前記駆動部材を前記離脱方向へ移動させるロック解除操作部材をさらに備えていること、
を特徴とする請求項1または請求項に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器に関し、特に、ロック機構を備えた圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用および歯科用器具等を高圧蒸気で滅菌する圧力容器が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された圧力容器は、圧力容器内と外気に圧力差がある状態で、不用意に蓋体が開かないように回転ハンドル式の閉蓋機構が採用され、解除可能にロックするロック機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−167107号公報(請求項1、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の回転ハンドル式の閉蓋機構は、ハンドルの回転操作に要する作業が煩雑で使用者の負担が増大するという問題があった。一方、レバー操作等による簡易な蓋体の開閉機構を採用すると、誤操作を誘発して使用者が誤って蓋体を開閉してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、簡易な操作により蓋体のロックおよびロック解除を可能とするとともに、誤操作を防止することができる圧力容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器本体と、この容器本体の開口部に配設される蓋体と、を有する圧力容器である。本発明に係る圧力容器は、前記蓋体に配設され、ロック穴が形成されたロックホルダと、前記容器本体に配設され、前記ロック穴に挿通離脱自在に支持されたロックピンと、このロックピンを前記ロック穴に対して挿通離脱方向に駆動させる駆動力を付与するロック機構と、このロック機構によるロック状態を保持して、ロック解除動作を規制するロック解除規制機構と、を備え、前記ロック機構は、前記ロックピンに対して軸方向に移動自在に嵌合された駆動部材と、前記駆動部材の挿通方向への移動を規制する挿通方向規制部と、前記ロックピンを前記駆動部材に対して離脱方向に付勢するロックピン付勢手段と、前記駆動部材を前記挿通離脱方向に移動させる駆動部材移動手段と、を備えている。
【0007】
本発明に係る圧力容器は、前記ロック解除規制機構によって、前記ロックピンが前記ロックホルダに係止される付勢力が付与されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な操作により蓋体のロックおよびロック解除を可能とするとともに、誤操作を防止する圧力容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る圧力容器の外観を示す斜視図であり、(a)は全体図、(b)は蓋体を開けた状態を示す部分斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る圧力容器の要部の構成を示す側面断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る圧力容器におけるロック機構およびロック解除規制機構の構成を示す前方から見た要部断面図であり、蓋体を閉じた状態を示す。
図4】本発明の実施形態に係る圧力容器の動作を示す側面断面図であり、プル型直動ソレノイドを励磁させてロックレバーを離脱方向へ移動させた状態を示す。
図5】本発明の実施形態に係る圧力容器の動作を示す側面断面図であり、使用者が扉を強く下方へ押した状態を示す。
図6】本発明の実施形態に係る圧力容器の動作を示す側面断面図であり、扉を開いた状態を示す。
図7】本発明の実施形態に係る圧力容器の動作を示す側面断面図であり、使用者が扉を閉じた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る圧力容器1について、高温滅菌処理装置に適用する場合を例として、適宜図1から図7を参照しながら詳細に説明する。高温滅菌処理装置は、歯科用の医療機器である。高温滅菌処理装置は、圧力容器1内に高圧条件下で高温の水蒸気を充填して歯科用医療機材(被滅菌物)の滅菌処理を行う。高温の水蒸気は、水をヒータ(不図示)で加熱して生成する。圧力容器1の用途は、特に限定されるものではないので、高温滅菌処理装置の詳細な説明は省略する。
【0011】
圧力容器1は、図1に示すように、容器本体11と、この容器本体11の上部に配設される扉12と、容器本体11に配設されたチャンバ2と、扉12に配設された蓋体3と、を備えている。
扉12の上部には、圧力計14と操作部15が配設されている。圧力計14は、チャンバ2内の圧力を計測する。操作部15は、使用者が扉12の開閉の操作をするための部位である。
【0012】
容器本体11の上部には、操作パネル13が配設されている。操作パネル13には、図1(b)に示すように、スタンバイスイッチ13a、運転・実行ボタン13b、停止・解除ボタン13c、および液晶表示部13eが配置されている。液晶表示部13eには、モード選択やメッセージ等が表示される。
【0013】
圧力容器1は、図3に示すように、蓋体3を閉じた状態でロックするロック機構4と、ロック解除動作を規制するロック解除規制機構5と、蓋体3を閉じたことを検知する検知装置6と、動作を制御する制御装置9(図2参照)と、を備えている。
【0014】
なお、圧力容器1において、図1(a)に示すように、説明の便宜上、使用者(不図示)から見て前後、上下、および左右というものとするが、特に蓋体3の開閉方向を限定する趣旨ではない。
【0015】
図2は、圧力容器1の要部の構成を示す側面断面図である。図2では、容器本体11の操作パネル13(図1参照)、扉12の圧力計14(図1参照)、周囲に配設された外装パネル16(図1参照)、上部パネル17等の付帯部品は省略する。
【0016】
図2に示すように、チャンバ2は、被滅菌物(不図示)を入れる容器であり、高圧高温下で耐久性を有する圧力室を構成する。
容器本体11は、フレーム構造をなした躯体21を備えている。躯体21は、チャンバ2、ロック機構4、ロック解除規制機構5、検知装置6等を支持するための所定の剛性を有する構造部材である。躯体21は、チャンバ2を支持する下部フレーム21a、前部フレーム21b、および後部フレーム21cを備えている。また、図3に示すように、躯体21は、後記するロックホルダ付勢補助手段52を支持するロック解除規制機構支持フレーム21dと、後記する駆動部材移動手段44を支持する移動手段支持フレーム21eと、を備えている。
【0017】
蓋体3は、図2に示すように、チャンバ2の開口部22に開閉自在に配設されている(符号Kを参照)。
蓋体3は、チャンバ2の上部に回転自在に軸支された軸支部31と、先端部に配設されたロックホルダ32と、を備えている。ロックホルダ32には、長穴形状のロック穴32aが形成されている。
図3に示すように、容器本体11には、ロック穴32aに挿通離脱自在に支持されたロックピン8が配設されている。ロックピン8は、ロック機構4によって挿通離脱方向(図3の左右方向)へ移動自在に支持されている。
【0018】
ロック機構4は、ロックピン8をロック穴32aに対して挿通離脱方向に駆動させる駆動力を付与するための装置である。
圧力容器1は、ロック機構4によって、ロックピン8を挿通方向(図3の右方向)へ駆動させると蓋体3を閉じた状態でロック可能となる(図3がロック状態を示す。)。離脱方向(図3の左方向)へ駆動させるとロックの解除が可能となる(図4から図6を参照)。
【0019】
ロック機構4は、駆動部材であるロックレバー41と、挿通方向規制部であるストッパ42と、ロックピン付勢手段43と、駆動部材移動手段44と、を備えている。
ロックレバー41は、断面L字形状をなした本体部41aと、ロックピン8が挿通された嵌合穴41bと、本体部41aを回転自在に軸支する軸支部41cと、係合部41dと、を備えている。
【0020】
本体部41aは、下部が軸支部41cによって支持され、上部に嵌合穴41bが配設されている。嵌合穴41bには、ロックピン8が所定の範囲で軸方向に移動自在に挿入されている。軸支部41cは、回転軸が前後方向に配設され、本体部41aを左右方向に揺動回転可能(符号Uを参照)に支持している。係合部41dは、バーリング形状をなした凸形状部である。
【0021】
ロックレバー41は、軸支部41cの周りに回転可能なリンク部材であり、先端部に形成された嵌合穴41bにロックピン8が嵌合されている。かかる構成により、ロックレバー41は、ロックピン8に対して軸方向に移動自在に嵌合されている。
【0022】
ストッパ42は、躯体21に固定された板状部材であり、ロックレバー41の挿通方向への移動を規制する部材である。ストッパ42は、本体部41aに当接させて、本体部41aが挿通方向に移動する際の移動端に配設されている。
【0023】
ロックピン付勢手段43は、ロックピン8をロックレバー41に対して離脱方向(図3の左方向)に付勢する機構である。ロックピン付勢手段43は、ロックピン8を離脱方向に付勢するスプリング43aと、スプリング43aを圧縮してロックピン8に装着するワッシャ43bおよびナット43cと、ロックレバー41をロックピン8に係止する拡径部43dと、を備えている。
【0024】
スプリング43aは、一端がロックレバー41に当接され、他端がワッシャ43bに当接されてロックピン8に装着されている。ナット43cは、ロックピン8に螺入されているため、スプリング43aの付勢力F1を調整できるようになっている。拡径部43dは、ロックピン8に形成された段部であり、ロックピン8に対するロックレバー41の挿通方向(図3の右方向)への移動を規制する。
【0025】
駆動部材移動手段44は、ロックレバー41を挿通離脱方向(図3の左右方向)に移動させる機構である。駆動部材移動手段44は、ロックレバー41を離脱方向(図3の左方向)へ移動させる直動ソレノイドであるプル型直動ソレノイド44aと、ロックレバー41を挿通方向(図3の右方向)へ付勢するばね部材44bと、を備えている。
【0026】
かかる構成により、制御装置9(図2参照)は、駆動部材移動手段44によって、ロックレバー41を離脱方向(図3の左方向)へ移動させる場合には、プル型直動ソレノイド44aに電力を供給して励磁させることで、ロックレバー41を駆動させる。
具体的には、プル型直動ソレノイド44aによって、ロックレバー41を離脱方向へ移動させると、スプリング43aが圧縮されて付勢力F1(図4参照)を発生する。これにより、プル型直動ソレノイド44aの駆動力がスプリング43aの付勢力F1(図4参照)に変換されて、スプリング43aに蓄積される。
【0027】
ロックレバー41を挿通方向(図3の右方向)へ移動させる場合には、プル型直動ソレノイド44aに供給する電力を遮断してオフにすることで、ばね部材44bの付勢力によって駆動させる。
【0028】
なお、ロックレバー41の下端部には、手動でロックレバー41を離脱方向(図3の左方向)へ移動させるためのロック解除操作部材である非常用ロック解除フック45が取り付けられている。使用者は、停電等の事情によって、ロックが解除できない場合には、非常用ロック解除フック45を図の右方向へ引くことで、ロックを解除することができる。
【0029】
ロック解除規制機構5は、蓋体3を閉じた状態で、ロックホルダ32をロックピン8に付勢する機構である。つまり、ロック解除規制機構5によって、ロックピン8がロックホルダ32に係止される付勢力がロックホルダ32に付与されている。
ロック解除規制機構5は、チャンバ2内の内圧の作用によってロックホルダ32をロックピン8に付勢する第1の付勢力F1を付与する内圧付勢機構51と、第2の付勢力F2を付与するロックホルダ付勢補助手段52と、を備えている。
内圧付勢機構51は、圧力容器1のチャンバ2内の内圧が所定の開放可能圧力よりも高い場合に作用する機構である。内圧付勢機構51は、チャンバ2内の内圧が蓋体3を開く方向に作用することで、ロックホルダ32に形成されたロック穴32aの内周部をロックピン8に付勢する機構である。
【0030】
かかる構成により、内圧付勢機構51を設けたことで、圧力容器1のチャンバ2内の内圧が所定の開放可能圧力よりも高い場合には、ロックピン8がロックホルダに係止されるように、確実に付勢力を作用させることができる。
【0031】
ロックホルダ付勢補助手段52は、内圧付勢機構51に加えてより確実に付勢力を作用させる付加的な機構であり、ロックホルダ32に直接付勢力を付与する。ロックホルダ付勢補助手段52は、ロックホルダ32を蓋体3が開く方向に付勢する。
ロックホルダ付勢補助手段52は、支持ブラケット52aと、支持ブラケット52aに支持された係止ピン52bと、係止ピン52bをロックホルダ32に押圧する方向に付勢するばね部材52cと、を備えている。
【0032】
支持ブラケット52aは、ロック解除規制機構支持フレーム21dに配設されている。係止ピン52bは、支持ブラケット52aによって上下方向(ロックホルダ32の移動方向)に移動自在に支持されている。
【0033】
かかる構成により、蓋体3を閉じる際にロックホルダ32が係止ピン52bを下方に押圧してばね部材52cが撓んで圧縮される。これにより、ロックホルダ付勢補助手段52は、蓋体3を閉じた状態で、ばね部材52cによって係止ピン52bをロックホルダ32に押圧する付勢力F2(図4参照)を発生させる。
【0034】
検知装置6は、係止ピン52bの下方に配設されたリミットスイッチ61を備えている。かかる構成により、使用者が蓋体3を閉じることによって、係止ピン52bが下方へ移動するので、係止ピン52bが下方へ移動したことをリミットスイッチ61で検知することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、検知装置6としてリミットスイッチ61を採用したが、これに限定されるものではなく、光センサや磁気センサ等によってロックホルダ32の位置を検知してもよい。
【0036】
以上のように構成された本実施形態に係る圧力容器1の動作について、主として図3から図7を参照しながら説明する。
図3は、蓋体3を閉じてロックした状態を示す。図4は、プル型直動ソレノイド44aを励磁させてロックレバー41を離脱方向(図4の左方向)へ移動させた状態を示す。図5は、使用者(不図示)が扉12を強く下方へ押した状態を示す。図6は、使用者(不図示)が扉12の操作部15(図1(a)参照)を強く押してから、手を離して扉12を開いた状態を示す。図7は使用者が扉12を閉じた状態を示す。
【0037】
〈扉を開く動作〉
扉12を閉じた状態から開く場合には、順次図3から図6へ進む。使用者は、最初にスタンバイスイッチ13a(図1(a)参照)を押す。図3に示すように、圧力容器1は、検知装置6によって、扉12が閉じていることを検知する。制御装置9は、扉12を開けてもよい状態であることを停止・解除ボタン13cを点滅させて使用者に知らせる。
使用者は、停止・解除ボタン13cが点滅していることを確認してから、停止・解除ボタン13cを押して、扉12を開く操作を開始する。
【0038】
これにより、図4に示すように、圧力容器1は、プル型直動ソレノイド44aを励磁させてロックレバー41を離脱方向(図4の左方向)へ移動させる。ロックレバー41を離脱方向(図4の左方向)へ移動させると、スプリング43aが圧縮されるため、ロックピン8を離脱方向(図4の左方向)へ移動させようとする付勢力F1が発生する。
【0039】
このとき、ロックホルダ付勢補助手段52は、ばね部材52cによって係止ピン52bをロックホルダ32に押圧する付勢力F2(図4参照)を付与している。付勢力F2は、ロックピン8とロック穴32aとの接触部に摩擦力Mを生じさせている。この摩擦力Mは、ロック機構4による付勢力F1に抗してロックホルダ32をロックピン8に係止させるように設定されている。
【0040】
このようにして、圧力容器1は、ロック機構4によって、ロックピン8をロック穴32aに対して離脱方向に駆動させる駆動力を付与しても、ロックホルダ付勢補助手段52によって、ロック解除動作を規制する。
【0041】
つまり、使用者が、停止・解除ボタン13cを押しても、ロックホルダ付勢補助手段52によって、ロック解除動作が規制されている。このため、ロック解除動作を完了させるためには、図5に示すように、使用者が扉12を閉じる方向にさらに強く押し込んでから手を離す操作が必要である。使用者が扉12を強く押してから手を離すとロックが解除されるようになっている。
使用者は、扉12を強く押すことで(符号Pを参照)、ばね部材52cによる付勢力F2を相殺する。これにより、ロックホルダ付勢補助手段52による付勢力F2(図4を参照)を解除することで、図6に示すように、初めてロック機構によってロック解除動作が実行される。
【0042】
具体的には、図5に示すように、使用者がばね部材52cによる付勢力F2(図4参照)に抗して扉12を下方へ強く押すことによって(符号Pを参照)、ロックピン8とロック穴32aとの接触部に隙間δが形成される。これにより、ロックピン8とロック穴32aとの接触部に生じていた摩擦力M(図4を参照)が消失して、スプリング43aによる付勢力R1(復帰力)だけが残る。このスプリング43aによる付勢力R1によって、ロックピン8を離脱方向(図5の左方向)へ移動させる(図6の符号R2を参照)。このため、図6に示すように、ロックピン8とロックホルダ32との係合が解除されるため、ロックホルダ32は上方への移動(符号Qを参照)が可能となる。
【0043】
これにより、使用者は、ワンタッチで簡易な操作によってロック解除動作を実行することができる。
【0044】
また、ロック解除規制機構5は内圧付勢機構51を備えたことで、チャンバ2内の内圧(残留圧力)が所定の開放可能圧力よりも高い場合には、ロック機構4によって、ロックピン8をロック穴32aに対して離脱方向に駆動させる駆動力を付与しても、内圧付勢機構51によって、ロック解除動作を規制する。
【0045】
さらに、ロックホルダ付勢補助手段52は、ロックホルダ32を蓋体3が開く方向に付勢する。これにより、チャンバ2内の圧力が充分に低下していない状態でロック解除動作を実行しようとした場合には、ロックピン8に対して、チャンバ2内の残留圧力に加えて、ロックホルダ付勢補助手段52のばね部材52cにより付勢力F2がチャンバ2内の残留圧力と同じ方向に作用する。このため、使用者が蓋体3を閉じる方向に負荷を加える際の必要な負荷の大きさが増大する。これにより、ロックを解除するのが好ましくない状態である場合には、ロック解除動作を困難にすることで、チャンバ2内の圧力が充分に低下していない状態では蓋体3を開放しにくくすることができる。
【0046】
このとき、使用者が扉12を強く押してから手を離すと、ばね部材52cによる付勢力F2がさらに増大される。このため、増大された付勢力F20(復帰力)によって、図6に示すように、扉12を上方にはじくようにして開放することができる。
【0047】
〈扉を閉じる動作〉
扉12を開いた状態から閉じる場合には、開く場合とは逆に図7から図3へ進む。
図7に示すように、使用者が扉12を押し込んだ状態まで閉じると(符号Sを参照)、リミットスイッチ61がロックホルダ32の位置を検知するので、制御装置9は、扉12が閉じられた状態であることを判定する。これにより、制御装置9は、ロック動作に移行する。
【0048】
ロック動作では、制御装置9は、プル型直動ソレノイド44aに供給する電力を遮断してオフにする。これにより、ばね部材44bの付勢力によってロックレバー41を挿通方向(図7の右方向)へ移動させる。図3に示すように、蓋体3を閉じた状態では、ロックホルダ付勢補助手段52によって係止ピン52bをロックホルダ32に押圧する付勢力F2(図4参照)を発生させて待機している。
【0049】
〈滅菌処理〉
使用者は、圧力容器1によって滅菌処理を行う場合には、チャンバ2内に被滅菌物を入れてから、扉12を閉じて、運転・実行ボタン13b(図1(a)参照)を押す。圧力容器1は、自動運転による滅菌処理を開始する。滅菌処理が終了すると、制御装置9は、チャンバ2内を減圧、および冷却してから扉12を開けてもよい状態になったことを停止・解除ボタン13cを点滅させて使用者に知らせる。これにより、使用者は、扉12を開く操作を開始することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されず、適宜変形して実施することが可能である。例えば、本実施形態においては、駆動部材移動手段44は、ロックレバー41によってリンク機構を構成し、プル型直動ソレノイド44aとばね部材44bとを備えてロックレバー41を駆動させたが、これに限定されるものではなく、リンク機構ではなく歯車やベルト等の動力伝達手段を介して、モータ等の駆動源を使用して駆動させてもよいし、エアシリンダ等の駆動源を使用してもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、操作性を考慮して、ロックホルダ付勢補助手段52は、ロックホルダ32を蓋体3が開く方向に付勢して構成したが、これに限定されるものではなく、摩擦力Mを発生して、ロックホルダ32をロックピン8に係止させることができればよいので、下方、左右方向に付勢してもよい。
【0052】
本実施形態においては、内圧付勢機構51に加えてより確実に付勢力を作用させるためにロックホルダ付勢補助手段52を設けたが、付加的な機構であり、必ずしも設けなくともよい。
【符号の説明】
【0053】
1 圧力容器
2 チャンバ
3 蓋体
4 ロック機構
5 ロック解除規制機構
6 検知装置
8 ロックピン
9 制御装置
11 容器本体
12 扉
13 操作パネル
13a スタンバイスイッチ
13b 運転・実行ボタン
13c 停止・解除ボタン
21 躯体
31 軸支部
32 ロックホルダ
32a ロック穴
41 ロックレバー(駆動部材)
42 ストッパ(挿通方向規制部)
43 ロックピン付勢手段
44 駆動部材移動手段
44a プル型直動ソレノイド(直動ソレノイド)
44b ばね部材
45 非常用ロック解除フック
51 内圧付勢機構(ロック解除規制機構)
52 ロックホルダ付勢補助手段(ロック解除規制機構)
52a 支持ブラケット
52b 係止ピン
52c ばね部材
61 リミットスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7