(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、光学システム110は、例えば、白色光を発する拡張出力表面を有する平面ライトガイドのような拡張光源102と偏光子104との間に配設した微細複製光学フィルム119を含む。光学システム110は、光学ディスプレイ、バックライト、又は同様のシステムであってよく、液晶パネル及び追加の偏光子、拡散体、リターダー、及び/又は他の光学フィルム若しくは構成要素など、図に示されていない他の構成要素を含む場合がある。本明細書の主旨に沿って、説明を容易にするために、そのような他の構成要素は無視する。前側主面119aと後側又はリアの主面119bとを有する光学フィルム119は、プリズム層150を支持する基材120から構成されるものとして示されているが、その他の層構成もまた使用することができる。基材120は、1つ以上の介在層が基材をプリズム層に物理的に接続する場合であってもプリズム層150を支持するものであると言うことができる。プリズム層150は、微細パターンを有する道具を用いてポリマーフィルム基材120の上にポリマー組成物をキャスティングし、硬化することによって作製することができる。この道具は、フィルム119の前側主面119aと一致するプリズム層150の第1主面150aが、リニアプリズムのアレイを形成する個々の面又はファセットを有するこの道具の微細構造化複製物となるように構成される。例えばエンボス加工、エッチング、及び/又は他の周知の技法など、キャスティング及び硬化以外の他の周知の製造法を用いて微細構造化表面150aを形成してもよい。プリズム層150の第2主面150bは基材120の第1主面120aと一致する。基材120の第2主面120bはフィルム119の後側主面119bと一致する。
【0017】
参照のために、デカルトx−y−z座標系を図に含めた。フィルム119はx−y面に概ね平行に延び、システム110の光軸はz軸に相当する。構造化表面の各プリズムは、少なくとも平面図において概ね直線方向に、y軸に平行に延在する。リニアプリズムのアレイは、フィルム119を有していない同一のシステムと比較してシステムの軸上の輝度又はルミナンスが増加するように光を屈折させる。
【0018】
プリズム層150を支持する基材120は複屈折性である。複屈折性は意図的な設計機構であってもよく、非意図的であってもよい。光学フィルム用途での使用に望ましい機械的及び光学的な特性を有するように、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)で作られたフィルムを経済的に作製することができるが、PET製のフィルムは無視できない量の複屈折性を呈する場合がある。複屈折性は空間的にほぼ均一であってよく、即ち、基材内の一つの位置の複屈折性は基材内のその他の位置の複屈折性とほぼ同じであってよい。複屈折性は通常、少なくとも面内の複屈折性を特徴とする。即ち、x軸、y軸、z軸に沿って偏光した光の屈折率がそれぞれnx、ny、nzである基材の場合、面内屈折率nxとnyの間に有意差が存在する。x方向及びy方向は、例えば、ポリマーフィルムのウェブ横方向及びウェブ下方向に相当し得る。nx−nyの大きさは、通常、少なくとも0.01、又は0.02、又は0.03であり得る。特定の屈折率の差が有意かどうかは、基材の厚さに依存し得る。屈折率の小差は、薄い基材では無視できる程度であり得るが、より厚い基材では有意であり得る。
【0019】
図中、任意の光線103は、光源102から観察者101に向かって進むものとして示されている。この光線を辿ると、光線が主面120b(119b)で屈折し、基材120を通じて伝播し、再び主面120a(150b)で屈折し、プリズム層150を通じて伝播し、再び主面150a(119a)で屈折し、偏光子104に進んでおり、その光線の一つの偏光成分が偏光子を通過して観察者101に進んでいるのがわかる。光線103は、光線が光源102を出てからフィルム119に当たるまで偏光されないと仮定する。直交するs及びp偏光状態は入射角及び基材の屈折率に依存して概ね異なるやり方で透過(及び反射)するので、光線は、主面120bで空気・基材の界面にぶつかると部分的に偏光する。説明を容易にするために、
図1には反射光の成分を示していない。表面120bの近くで光線103の上に重ねられている両方向の矢印は、光線103が基材120を通り始めるときの部分的な偏光を示している。光線103が表面120aに向かって基材120を通じて伝播するとき、その部分的偏光状態は、一般に、基材120の複屈折性によって変化する。偏光状態のこの変化は、基材の複屈折の量(及び厚さ)だけでなく光線の伝播の角度及び光線の波長にもまた依存する。図中、この変化した偏光状態は、表面120aの近くの光線103の上に重ねられている小さい楕円として描かれている。次いで、光線はその修正された偏光状態でプリズム層150によって屈折され、偏光子104の通過軸と整合する偏光成分が偏光子104を通過して観察者101に進む。
【0020】
上述したように、基材120内の偏光状態の変化は光の波長に依存する。これは、基材の材料が分散を全く示さない場合も同じである。結果として、光線103が辿る通り道のようなシステム110を通る同じ又はほぼ同じ通り道を辿る異なる波長の光線は、一般に、相対的に異なる量で観察者101まで透過するであろう。この相対的な量は、光線の伝播方向に依存することになり、光源102が有意な角度範囲にかけて光を発する結果として、例えばランバート分布又は他の適切な角度分布において、伝播方向の範囲又は円錐が存在すると仮定する。波長の関数として及び伝播方向の関数としての両方の異なる相対透過率の結果、伝播方向の範囲又は円錐にかけての光、及び例えば青色から赤色までの可視の波長帯にかけてなどの波長範囲にかけての光を知覚する観察者101には、本明細書で基材色むら(SCM)と呼ぶ有色の像若しくはパターンが見える。基材120とプリズム層150の関連する設計の特徴が実質的に空間的に均一であるならば、即ち、フィルムの一つの場所又は領域から別の場所又は領域にかけてそれらが実質的に変化しないならば、SCMパターンは観察者101の観点からは空間において固定されないであろう。むしろ、観察者が例えばx軸及び/又はy軸に沿って光学フィルム119に対する位置を変えると、SCMパターンは観察者101とともに等しい量だけ変位するように見えるであろう。換言すると、観察者が固定の観察位置及び視角を維持しているが、フィルムはx又はy方向に沿って平行移動した場合、フィルムの光学特性が平行移動から独立しているならば、パターンは安定しているであろう。
【0021】
図1に示す構成要素を含む多くの実用的な実施形態では、観察者がよく訓練されていない限りは、及び/又は観察者が特別にSCMを見つけようとしない限りは、SCMパターンは比較的わかり難く、容易に見過ごされる。空気・基材の界面120bにもたらされる部分的な偏光が、偏光子104によりもたらされる偏光よりも通常ははるかに弱いことが、このSCMパターンがわかり難い一つの理由である。
【0022】
SCMパターンについての説明を更に進める前に、ここで
図2を参照して、本開示の光学フィルムに使用し得るプリズム及びプリズムアレイの様々なタイプのうちのいくつかについて、読者の理解のために説明をする。
【0023】
図1及び以下の他の図中のプリズムは、高さ、幅、頂角を含めて名目上同じ幾何形状を有するものとして示されている。これは、主に説明を単純にするためである。一般には、特に記載のない限り、
図2に示唆されているように、プリズム層のプリズムは様々な構成のいずれをも有し得る。
【0024】
ディスプレイ、バックライト、又は他のシステムの輝度向上フィルムとして機能することができる微細複製光学フィルム219を
図2に示す。光学フィルム219は、輝度を向上させるためのリニアプリズム又は微細構造のアレイ251を含む。光学フィルム219は、y方向に沿って延在する複数の微細構造即ちリニアプリズム251を含む第1主面即ち構造化表面219aを含む。フィルム219は、第1主面即ち構造化表面219aの反対側の第2主面219bを含む。
【0025】
フィルム219は基材層220を含み、基材層は第1主面220a、及び主面219bと一致する反対側の第2主面220bを含む。光学フィルム219は、基材層220が支持するプリズム層250を含む。プリズム層250は基材層の主面220aの上に配設され、この表面220aは層250の主面250bと一致するものであり、層250は別の主面250aもまた含み、この主面はフィルム219の主面219aと一致する。
【0026】
光学フィルム219は、説明を目的として複屈折性であると仮定する基材層220と、プリズム層250との2つの層を含む。一般的に、光学フィルム219は1つ以上の層を有し得る。例えば、場合によっては、光学フィルム219は、それぞれ第1主面219a及び第2主面219bを含む単一の層のみを有する場合がある。別の例として、場合によっては、光学フィルム219は多くの層を有する場合がある。例えば、場合によっては、基材220は複数の個々の層で構成される場合がある。光学フィルムが多層を含む場合、フィルム構成層は通常は互いに同一の広がりを有し、隣接する構成層の対のそれぞれの層は有形の光学材料を含み、互いに完全に一致する主面、若しくはそれらのそれぞれの表面積の少なくとも80%を超える又は少なくとも90%を超える部分が互いに物理的に接触する主面を有する。
【0027】
プリズム251は、例えば正のz方向に沿ってなど所望の方向に沿って光学フィルム219の主面219bに入射する光の光路を変更するように設計することができる。例示の光学フィルム219では、プリズム251はリニアプリズム構造である。一般に、プリズム251は、例えば、入射光の一部を屈折させること、及び入射光の異なる一部を再利用することによって、光路を偏光することができる任意のタイプのプリズム又はプリズム様微細構造であってよい。例えば、プリズム251の断面形状は曲線及び/又は区分的に直線状の部分とするか、これを含んだものとすることができる。
【0028】
各プリズム251は、頂角252、及び例えば主面250bなどの共通基準面から測定された高さを含む。個々のプリズム251a、251b、251c等は、高さ253a、253b、253c、...、253e等を有するものとして示されている。例えば、光結合若しくはウェットアウトを低減させること、及び/又は光方向転換光学フィルムの耐久性を向上させることが望ましいなど、場合によっては、所与のプリズム251の高さは、y方向に沿って変化してよい。例えば、リニアプリズム251aのプリズムの高さはY方向に沿って変化する。そのような場合、プリズム251aはy方向に沿って変化する局所高さ253aを有し、その変化する高さは最大高さ及び平均高さを定義する。場合によっては、リニアプリズム251cのようなプリズムは、y方向に沿って一定の高さを有する。そのような場合、プリズムはプリズムの最大高さ及び平均高さと等しい一定の局所高さ253cを有する。
【0029】
光結合又はウェットアウトを低減させることが望ましいなど場合によっては、一部のリニアプリズムは低く、一部のリニアプリズムは高い。例えば、リニアプリズム251cの高さ253cはリニアプリズム251bの高さ253bより小さい。
【0030】
各プリズムの頂点又は上反角252は、用途に望ましい任意の値を有することができる。例えば、場合によっては、頂角252は、約70度〜約110度、又は約80度〜約100度、又は約85度〜約95度の範囲であってよい。場合によっては、プリズム251は等しい頂角を有してよく、これは、例えば90度など、約88度又は89度〜約92度又は91度の範囲であってよい。
【0031】
プリズム層250は任意の好適な光透過性材料で構成することができ、任意の好適な屈折率を有することができる。例えば、場合によっては、プリズム層の屈折率は、約1.4〜約1.8、又は約1.5〜約1.8、又は約1.5〜約1.7の範囲であってよい。場合によっては、プリズム層は、約1.5以上、又は約1.55以上、又は約1.6以上、又は約1.65以上、又は約1.7以上の屈折率を有することができる。プリズム層の全て又は部分が複屈折性であってよく、その全て又は部分が(実質的に)等方性であってよい。
【0032】
ほとんどの場合、液晶ディスプレイシステムに光学フィルム219が使用される場合など、光学フィルム219は、光学フィルム219のない同一のディスプレイと比較して、ディスプレイの軸上輝度即ちz軸に沿って測定される輝度を増す。軸方向のルミナンスの向上を定量化するために、光学フィルム219は1より大きい「有効透過率」又は相対「ゲイン」を有するものとする。本明細書で使用するとき、「有効透過率」(「ET」)は、光源が拡散反射率>80%を有するランバート又はほぼランバートの光源であるときの、所定のフィルムを用いた軸上ルミナンスと、所定のフィルムがないディスプレイシステムの軸上ルミナンスとの比を指す。
【0033】
光学フィルムのETは、中空のランバートライトボックスと、線状光吸収偏光子と、ライトボックスの光軸に中心を置く光ディテクターとを含む光学システムを用いて測定することができる。中空のライトボックスは光ファイバーを介してライトボックスの内部に接続した安定化された広帯域光源により照らすことができ、ライトボックスの発光面即ち光の出る面から発される光はランバートルミナンス分布を有することができる。ETの測定の対象である光学フィルム又は他の試験試料は、ライトボックスと吸収性の線状偏光子との間の場所に配置される。システムに光学フィルムが存在する光ディテクターの出力を、システムに光学フィルムが存在しない光ディテクターの出力で割算することにより、光学フィルムのETが得られる。
【0034】
ETの測定での使用に好適な光ディテクターはSpectraScan(商標)PR−650 SpectraColorimeter(カリフォルニア州ChatsworthのPhoto Research,Incより入手可能)である。そのような測定に好適なライトボックスは、約85%の合計反射率を有するテフロン立方体である。
【0035】
光学フィルム219のETは、主面219a(及びリニアプリズム251)が光ディテクターに面し、主面219bがライトボックスに面するように、特定の場所に光学フィルム219を配置することによって測定することができる。次に、スペクトル的に重み付けされた軸方向ルミナンスI1(光軸に沿ったルミナンス)が、線状吸収偏光子を通じて光ディテクターによって測定される。次いで、光学フィルム219を取り外し、光学フィルム219なしで、スペクトル的に重み付けしたルミナンスI2を測定する。ETは、比I1/I2である。ETは、線状吸収偏光子に対する光学フィルムの向きを特定することによって更に詳細に特定することができる。例えば、「ET0」は、各プリズム251が線状吸収偏光子の通過軸に平行な方向に沿って延在するように光学フィルムが配向されているときの有効透過率を指し、「ET90」は、各プリズム251が線状吸収偏光子の通過軸に垂直の方向に沿って延在するように光学フィルムが配向されているときの有効透過率を指す。更にこれに関し、「平均有効透過率」(「ETA」)は、ET0とET90の平均値である。追加的な用語に関して、先に、つまりこれまでに言及した用語「有効透過率」即ち「ET」は、光学フィルムの平均有効透過率を指す。
【0036】
代表的な例では、光学フィルム219を含めて、開示の微細複製光学フィルムは、システムの輝度を増すように構成されており、リニアプリズムは少なくとも約1.6の屈折率を有し、光学フィルムの平均有効透過率(ETA)は少なくとも約1.3、又は少なくとも1.5、又は少なくとも1.7、又は少なくとも1.9、又は少なくとも2.1である。
【0037】
図3は、SCMの観察及び測定をより容易にするためにもう1つの偏光子が追加されていることを除き、いくつかの観点で
図1のシステムと類似している光学システム310を示している。具体的には、システム110と同様に、システム310は拡張光源302、偏光子304、及び光源と偏光子の間に配設された微細複製光学フィルム319を含む。光学フィルム119と同様に、光学フィルム319は、前側主面119aと後側又はリアの主面319bを有し、プリズム層350を支持する基材320から構成されているが、その他の層構成もまた使用することができる。プリズム層350の第2主面350bは基材320の第1主面と一致する。基材320の第2主面はフィルム319の後側主面319bと一致する。また、光学フィルム119と同様に、基材320は、
図1に関して説明したように複屈折性のプリズム層350を支持する。観察者101と同様の観察者301は、伝播方向の範囲又は円錐にかけて、及び青色から赤色までの可視波長帯にかけてのような波長範囲にかけて光を知覚する。
【0038】
図1と異なり、
図3のシステム310は、フィルム319と光源302の間に配設された第2の即ちリアの偏光子306を含むものとして示されており、フィルム319はリア偏光子306と前側偏光子304の間に配設されている。リア偏光子は複屈折性基材320に入射する光の偏光度を増すので、リア偏光子306の追加はSCMパターンの可視性を増す。
図3のシステムのようなシステムにおいて観察されるSCMを「向上した」SCMと呼んでいるが、そのように呼ぶのは、空気・媒体の界面でのフレネル反射によりもたらされる部分的な偏光に依存せずに、問題の光学フィルムを2つの実際の線状偏光子の間に挟むことによりSCMの可視性を向上するための工程が行われているからである。
【0039】
システム310は、何らかの面内配向軸を有する複数のフィルム及び構成要素を含む。例えば、プリズム層350は、各プリズムがy軸のようなプリズム軸に対して平行に延在する
図2に示すようなプリズムアレイ(個々のプリズム351a、351b、351cを参照)を備える。前側偏光子304は、本明細書で通過軸1と呼ぶ通過軸を有し、この通過軸に平行に偏光された光はこの偏光子を実質的に透過し、この通過軸に垂直に偏光された光は実質的に吸収されるないしは別の方法で遮断される。リア偏光子306もまた通過軸を有し、本明細書ではこの軸を通過軸2と呼ぶ。基材320は複屈折性であり、本明細書で基材速軸と呼ぶ最低限の屈折率の面内軸を特徴とすることができる。例えば観察者301の観点から見た
図3aの平面図に、プリズム軸、通過軸1、通過軸2、及び基材速軸を全て示す。
【0040】
図3に示す軸は、図の目的上、異なる軸を容易に認識することができるように相対的な関係において示されている。一般には、これらの軸と、
図3及び本明細書の他の場所でそれらが対応するフィルム並びに層は、任意の所望の相対的配向を有することができる。一般には、相対的配向は観察されるSCMに影響を及ぼす。以下に詳述するような一つのシナリオでは、通過軸1は通過軸2に直交であり、プリズム軸及び基材速軸の両方は通過軸1に対して平行である。
【0041】
微細複製フィルム、拡張白光光源、2つの線状吸収偏光子を入手し、実質的に
図3に示すように配列する。微細複製フィルムは、PET基材により支持されているリニアプリズムのプリズム層を有する3M(商標)Thin Brightness Enhancement Film−TBEF2−GT(24)である。それらのリニアプリズムはそれぞれプリズム軸に平行に延在している。PET基材は約50マイクロメートルの厚さであり、速軸を画定する面内複屈折を有していた。プリズム層は約1.64の屈折率及び約24マイクロメートルのプリズムピッチを有していた。
【0042】
第1の配向では、前側及び後側の偏光子の通過軸が互いに直交し、基材の速軸がわずかにプリズム軸と不整列になるように、即ちプリズム軸に平行でないように、それらの偏光子を配向した。向上後のSCMパターンは、その有色帯及び特徴とともに観察された。カメラを使用して撮影したSCMパターンのコノスコープ像のグレースケール版を
図4に示す。図中、光学フィルムのプリズム軸の方向を表すために水平の破線が示されている。像の中心は光学システムの軸方向、例えば
図3のz方向を表す。像の中心から図の4つの曲がり角のいずれかまでの距離は、約20度の極角を表す。
【0043】
同じ光学構成要素及び
図3と同じ一般的な配列を用い、ただし第2の配向で、別の像を得た。第2の配向は第1の配向と同様であるが、基材速軸がプリズム軸に平行であることにおいて異なる。プリズム軸は前側偏光子の通過軸に平行である。この設定で、別の向上後のSCMパターンが観察された。カメラを使用して撮影したSCMパターンのコノスコープ像のグレースケール版を
図5に示す。図中、光学フィルムのプリズム軸の方向を表すために水平の破線が示されている。像の中心は光学システムの軸方向、例えば
図3のz方向を表す。像の中心から図の4つの曲がり角のいずれかまでの距離は、約20度の極角を表す。
【0044】
また、光学モデリングソフトウェアを使用して、
図3の光学システムに実質的に相当する光学システムのシミュレーションも実施した。このシミュレーションでは、拡張光源はランバート発光分布の白光を放出すると仮定した。前側及び後側の偏光子は、それらの通過軸が90度の角度で交差する配向であると仮定した。プリズム層のプリズムは均一の高さ及び頂角で、頂角は90度と仮定した。プリズムの屈折率は1.64で、等方性と仮定した。基材は2.05ミル(52マイクロメートル)の物理的厚さを有し、x、y、z軸に沿って偏光される光の屈折率はそれぞれnx、ny、nzであり、ny−nx=0.037695;nz−((nx+ny)/2))=−0.1679であり、かつ(nx
*nx+ny
*ny+nz
*nz)/3=(1.61383)
2であると仮定した。基材層は0.0191mm
−1の吸収率を有すると仮定した。これらは、x−y面で望ましい配向であり得る速軸を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを代表する値である。シミュレーションという目的上、基材速軸はプリズム軸と平行かつ前側偏光子の通過軸と平行であると仮定した。
【0045】
システム構成要素をそのように定義し、光学シミュレーションソフトウェアを使用して、観察者301に対して表示されるであろう向上後のSCMのそれぞれのコノスコープ角での透過スペクトルを生成した。計算で得られたコノスコープ像は
図4及び5と類似しており、有色の帯及び特徴を含んでいた。計算で得られたコノスコープスペクトルをそれぞれの角度でのCIE x及びyの色座標に分解して表した。
図5a及び5bはそのような色分解手順の結果である。元のシミュレーションによる(色)コノスコープスペクトルから始めて、特定の極角及び特定の方位角を表す像の各点又は画素について、CIE(x、y)の色座標におけるその色の評価を行った。CIE色座標は、1931年にCommission international de l’eclairage(「CIE」、又は国際照明委員会)によって策定された、数学的に定義された色空間を定義するものであり、当該技術分野で周知である。CIE x及びyの色座標は、例えば
図1、2又は3のデカルトxyz(物理的)座標系で示すような物理的位置又は変位などに関連したxとyの座標と混同されるべきではない。物理的座標と異なり、この(x、y)色座標は無単位である。
【0046】
元の(色の)シミュレーションによるコノスコープ像の各点のCIE(x、y)色座標を決定した後、像を、その構成成分のCIE x座標とCIE y座標の成分色に分離した。これは、2つのコノスコープ像、即ちCIE x色成分のプロットである
図5aの像とCIE y色成分のプロットである
図5bの像を生成した。
図5a及び5bのそれぞれにおいて、像の中心は光学システムの軸方向(例えば
図3のz方向)を表し、像の外側の境界円は20度の極角を表す。各像の外側の境界の数値0、45、90等は弧度の単位での方位角を表す。光学フィルムのプリズム層のプリズム軸は、0〜180度の方位角に対応する。各像の右側にあるのは、図に使用されているグレーの陰影に対応する色座標値を示す縦棒形式のスケールである。
【0047】
図3の光学システムの観察者は、
図4、5、5a及び5bに示す向上後のSCMパターンに容易に気づくであろう。例えば
図1のような光学システムにより生成された通常の(向上されていない)SCMパターンは、一般に、より不明瞭であり、通常の観察者が容易に気づくものではない。しかしながら、SCMパターンが向上されているか否かにかかわらず、複屈折性の基材の代わりに、より高価な等方性の基材を用いる必要なしに、かつ好ましくは光学フィルムの輝度向上能力に実質的な悪影響を及ぼすことなく、かつ好ましくは追加の有害な光学的現象又はアーチファクトを全く導入することなしにSCMパターンを除去すること又は少なくとも実質的に低減することができるかどうかを決定することが望ましい。
【0048】
これらの目標の1つ以上を達成するために、非平滑、又はテクスチャ付き、ないしは別の種類の構造化表面を用いて、光散乱、拡散、又はヘイズを付加することを研究した。これに関して、
図6は、システムに光散乱又はヘイズを導入することによってSCMパターンを完全に若しくは部分的に除去することができるかどうかを研究するために使用することが可能な光学システム610を示す。この設定で、複屈折性基材とプリズム層を隔離するために、これらの構成要素を物理的に分離し、間に空隙を設けた。また、複屈折性基材の上位の主面が表面拡散体として作用するように、それを非平滑化するか、又はテクスチャ付きにするか、ないしは別の方法で構造化するために、複屈折性基材の上位の主面を修正する。
【0049】
得られた光学システム610は
図3のシステム310と同様であるが、この光学フィルムは、空隙によって互いに完全に分離されているプリズム層650と複屈折性基材620とに分割されている。プリズム層650は、プリズムアレイを形成するように構造化された第1主面650aと、平滑であると仮定される第2主面とを有する。プリズム層650は、
図1、2及び3に関して説明したプリズム層と同一又は同様であり得る。本明細書におけるプリズム層650は、有意な複屈折性を有さない等方性の材料で構成されていると仮定する。基材620は、非平滑である、テクスチャ付きである、ないしは別のやり方で構造化されている、第1主面620aと、平滑であると仮定される第2主面620bとを有する。基材620は複屈折性であると仮定し、より具体的には、それは、1つの面内方向に沿って偏光された光の屈折率(例えばnx)が、直交する面内方向に沿って偏光された光の屈折率(例えばny)と異なるように、面内の複屈折性を有すると仮定する。
【0050】
システム310と同様に、システム610もまた、光源102又は302と同一若しくは同様であり得る拡張光源602、
図3の偏光子304、306と同一若しくは同様であり得、かつ間にプリズム層650並びに複屈折性基材620が配設されている、第1及び第2の偏光子604、606、及びディテクター601を含む。ディテクター601は、観察者101、301と同様の、人である観察者であってもよく、あるいは、ディテクター601はカメラ又は同様の光学デバイスであってもよい。観察者101、301と同様に、ディテクター601は、例えば青色から赤色までの可視波長のような、ある範囲又は円錐の伝播方向及びある範囲の波長にかけての光を撮像するように構成される。
【0051】
複屈折性基材620の拡大図を
図6aに示す。表面620aは構造化され、空気に露出されており、構造化表面の拡散体として機能する。表面620aは、全表面にかけての傾斜又は配向の分布によって特徴づけることができる。これに関して、構造化表面620aは、その表面の所与の点における測定可能な傾斜又は配向を有する。この場合の「点」は、局所的にほぼ平らであるように十分に小さい表面の一領域又は一部分を指すことができる。
図6aはいくつかの代表的な点及び傾斜を示し、点621a、621b、621c、621dにおいて表面620aはそのそれぞれの点を通過する破線によって示される傾斜又は配向を有する。実際の3次元空間において、破線は、それらの点で構造化表面620aに接する平面を表し、そのような平面のそれぞれと基材平面即ちx−y平面とが成す二面角αを測定するないしは別の方法で決定することができる。角度αは、傾斜角度、配向角度、又は面角度と呼ばれる場合がある。
【0052】
面角度の全体的な分布は、構造化表面全面にかけて抽出されたとき、構造化表面の種類の違いに応じて一般に異なるであろう。
図6の光学系610をシミュレーションする目的上、簡潔さ及び一般性のために、構造化表面620aはガウス形状の面角度分布を有すると仮定することができる。そのようなガウス分布を
図6bの曲線605に示す。ガウス分布605は、フィルムの面に平行な配向の表面部分に対応する最大面角度αをゼロとし、その分布605はαの値が増すにつれて減少し、このことは、αの値が高くなるほど表面620aの傾斜部分が徐々に小さくなることを意味する。ガウス分布は、αと同じ単位即ち度(又はラジアン)で与えられる標準偏差パラメータσによって完全に特徴付けられる。シミュレーションの目的上、好適なσの値を選択することにより構造化表面620aのトポグラフィーのばらつきの量又は重大度を制御若しくは特定し、σ=0は平滑な表面(トポグラフィーのばらつきなし)に対応し、小さいσ値は軽度に構造化された表面に対応し、大きいσ値は重度に構造化された表面に対応する。構造化表面620aは空気に露出されているので、トポグラフィーばらつきの量は構造化表面がもたらすヘイズの量と直接相関する。以下に詳述するように、埋め込まれた構造化表面もまたヘイズをもたらすことができる。
【0053】
光の拡散又は散乱は、「光ヘイズ」又は単に「ヘイズ」と呼ばれるパラメータによって表現することができる。正規の入射光線により照らされるフィルム、表面、又はその他の物体の場合、物体の光ヘイズは、垂直方向から4度を超えて逸れている透過光と合計透過光との比を指す。ヘイズはシミュレーションで算出することができ、実際のサンプルに関しては、ASTM D1003に記載の手順にしたがって、又は他の好適な手順を用いて、Haze−Gard Plusヘイズ計(BYK−Gardner、メリーランド州Columbia)を使用して測定することができる。光ヘイズに関係するのは光学的透明度であり、これは、比(T
1−T
2)/(T
1+T
2)を指すものであり、ここで、T
1は、垂直方向から1.6度〜2度逸れている透過光であり、T
2は、垂直方向から0度〜0.7度にある透過光である。透明度値は、BYK−GardinerのHaze−Gard Plusヘイズ計を使用して測定してもよい。
【0054】
シミュレーションは、上述のように
図6の光学システムについて実行した。これらのシミュレーションでは、異なった光散乱量に対応する、構造化表面620aの異なるばらつきの量を表すように、異なるσ値を選択した。光散乱量及び事実上の拡散面の完全なパラメータ化は、パラメータσと散乱構造の表面の割合との両方を必要とする。
【0055】
図6の光学システムをモデル化するために多くの異なるシミュレーション手法を使用することができる。場合によっては、例えばレンズレットの特定の配列、又は特定の幾何形状を有する波状面などの特定の表面トポグラフィーをシミュレーションで定義し、使用することができる。しかし、この例では、シミュレーションの結果をより一般的に様々なトポグラフィーに適用することができるように、特定の表面トポグラフィーを一切仮定せずにシミュレーションを実行した。代わりに、構造化表面を平面によって表し、光線追跡中、光線と構造化表面との交差点における局所的な傾きが、構造化表面を表すという仮定によって屈折角を計算するために表面を処理した。したがって、任意のシミュレートされた光線が所与の点でその平面に衝突すると、ソフトウェアは、ガウス分布及びそのシミュレーションのσの値に基づく加重ランダム関数にしたがって選択された角度でそれが傾いていると仮定されるようにその交差点の表面を修正した。この傾きは、その特定の屈折した光線の方向及び他の関係する特徴を計算するためだけの目的で使用し、その後に保存することはせず、また、残りのシミュレーションに関して特定の交差点と関連付けることはしなかった。
【0056】
シミュレーションは、上述のように
図6の光学システムについて実行した。シミュレーションは、
図6に示す層が以下の特性を有すると仮定した。
・プリズム層650:屈折率1.64、プリズム角90度、全てのプリズムが同一の対称の配向。
・複屈折性基材層620:物理的厚さ2.05ミル(52マイクロメートル)。屈折率は、ny−nx=0.037695;nz−((nx+ny)/2)=−0.1679、かつ(nx
*nx+ny
*ny+nz
*nz)/3=(1.61383)
2となるように、x、y、z軸に沿って偏光される光の屈折率nx、ny、nzと仮定した。基材層は0.0191mm
−1の吸収率を有すると仮定した。これらの値は、x−y面で望ましい配向であり得る速軸を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを表している。
【0057】
前側及び後側の偏光子は交差する、即ち90度の相対回転角度で配向されると仮定した。いくつかのシミュレーションでは、プリズム軸と前側の偏光子の通過軸が成すバイアス角は45度と仮定した。別のシミュレーションでは、バイアス角はゼロ(即ちプリズム角は前側の偏光子の通過軸に平行である)と仮定した。
【0058】
シミュレーションは(100%の表面被覆で)様々な構造化表面パラメータσについて、及びしたがって、構造化表面620aがもたらす様々なヘイズの量(0〜30度の範囲のσに対応する0%〜約92%の範囲のヘイズ)について、実行した。実行した各シミュレーションについて、向上後のSCMパターンのコノスコーププロットを生成した。それらのコノスコーププロットのいくつかを
図7a〜7eに示す。これらの図は、0〜20度の範囲の極角にかけての向上後のSCMパターンの計算されたCIEx色成分を示している。
図7a、7b、7c及び7eは、それぞれ0%、1%、1.8%、2.7%及び6.2%のヘイズ量について生成されたものであり、これらの図の全ては、プリズム方向、基材速軸、及び上の偏光通過軸の整合を仮定している。これらの図の比較は、向上後のSCMの可視性は
図6の構造化表面620aのヘイズの増加によって大幅に減少し得ることを示す。
【0059】
SCMパターンの可視性がどの程度減少するかを定量化するためには、所与のSCMパターンの可視性を正当に表すパラメータが必要である。このパラメータをSCM可視性と呼ぶ。SCM可視性は多様な方法で定義することができる。好ましくは、SCM可視性は、所与のコノスコーププロットについて、定義された極角の範囲にかけて及び360度の完全な方位角にかけての輝度のばらつき及び色の変化の両方を計算に含める。本明細書の目的上、特に記載のない限り、以下のように仮定する。
【0060】
【数1】
式中、σ
x及びσ
y(表面のばらつきパラメータσと混同してはならない)は、コノスコープ像の極角及び方位角の範囲にかけてのx及びyの色座標の標準偏差である。SCM可視性に関するこの定義を用い、
図7a、7b、7c、7d及び7eに関連するSCMパターンの可視性を計算し、それぞれ、0.108、0.092、0.069、0.055及び0.051と算出した。このように定義されるSCM可視性のパラメータは、コノスコーププロットのSCMパターンの可視性を正当に表すものである。
【0061】
このようにSCM可視性を定義して、シミュレーションの結果を分析し、表面のばらつきσ又はヘイズの関数としての、及び使用した異なるバイアス角での、
図6のシステムの向上後のSCMパターンの可視性を定量的に評価することができる。この分析の結果を
図8のグラフに示す。
図8で、上述のSCM可視性はヘイズの関数としてプロットされており、ここでもヘイズは表面の割合=100%を有する表面のばらつきσに直接相関している。シミュレーションしたゼロ度のバイアス配向でのデータポイント(ここでのバイアスは、プリズム方向と上の偏光通過軸とが成す相対角度を指す)は曲線810を描いており、シミュレーションした45度のバイアス条件でのデータポイントは曲線812を描いている。このグラフから少なくとも2つのことが明確である。第1に、所与のヘイズ値で、ゼロ度のバイアス角は45度のバイアス角より多くの可視のSCMパターンを生成する。第2に、両方のデータセットは非常に少量のヘイズに対するSCM可視性の初期の急速な減少を示し、次いで、ヘイズの量の増加に伴ってSCM可視性はよりゆっくりと減少する。急速な減少の領域と、よりゆっくりとした減少の領域との間の区切り点は、約2%のヘイズで生じる。曲線810の最も左側の5つのデータポイントはそれぞれ
図7a〜7eに関連するSCM可視性に対応することに注意されたい。
【0062】
図6と同様に、
図9は、システムに光散乱又はヘイズを導入することにより、向上後のSCMパターンを完全に又は部分的に除去することができるかどうかを研究するために、別のシミュレーションセットについて使用した設定を示す。システム610と同様に、
図9の光学システム910もまた、光源602と同一若しくは同様であり得る拡張光源902、偏光子604、606と同一若しくは同様であり得る第1及び第2の偏光子904、906、及びディテクター601と同一若しくは同様であり得るディテクター901を含む。
【0063】
しかしながら、
図9のシステムは、プリズム層と複屈折性基材との間に空隙が提供されていないこと、及び構造化表面の露出によってではなく、埋め込まれた構造化表面によって光散乱又はヘイズを提供していることにおいて、
図6のシステムと異なる。したがって、システム910では、2つの偏光子の間に単一の複屈折性光学フィルム919を配設し、このフィルム919は、複屈折性基材920とプリズム層950とを含み、それらの間には空隙は提供されていない。基材920はプリズム層950並びに、フィルム構成に含まれ、プリズム層と基材との間に配設された別個の光拡散層930を支持する。プリズム層650はプリズムアレイを形成するように構成された第1主面を有し、このプリズムアレイは本明細書でその他の場所に記載されているプリズムアレイと同一若しくは同様であり得る。本明細書では、プリズム層950は有意な複屈折性を有さない等方性の材料で構成されていると仮定する。基材920は第1主面及び第2主面を有し、それらは各々平滑であると仮定する。基材920は、基材620に関連して上述したような複屈折性であると仮定する。
【0064】
光学システム910の光学フィルム919をより詳細に
図9aに示す。フィルム919は、プリズム層950の第1主面950aと一致する前側の主面919aと、複屈折性基材920の第2主面と一致する後側即ちリアの主面919bとを有する。フィルム919の光拡散層930はプリズム層950と複屈折性基材920との間に示されている。光拡散層とプリズム層との間の界面又は表面933は、平らでないか、テクスチャ付きであるか、ないしは別のやり方で、制御された量の光拡散又はヘイズを提供するように構造化されている。構造化表面933は、例えば、好適な光透過性のポリマー材料のような固体ないしは有形である光透過性材料によって両面が有界であるために、埋まっている又は埋め込まれていると言うことができる。これは、空気又は真空に露出されている
図6の構造化表面620aと対照的である。シミュレーションという目的上、簡潔さのために、光拡散層930は体積散乱性を有さない(即ち、光拡散層930の対向する主面の間に光散乱要素は存在しない)と仮定した。
図6に関連するシミュレーションと同様に、フィルム919の構造化表面933は、
図6bに関して説明したのと同じ標準偏差パラメータσによって特徴付けられるガウス傾斜分布を有すると仮定した。
【0065】
図9aにおいて、光源からの光線903が光学フィルム919を通じて移動しているのが示されており、この光線は拡散層とプリズム層との間の構造化表面933で偏向又は散乱される。所与の量の表面のばらつきσを有する構造化表面が埋め込まれた構成(例えば
図9及び9aを参照)においてもたらすであろうヘイズの量は、露出構成(例えば
図6及び6aを参照)においてそれがもたらすであろうヘイズと同等の量ではないであろうと予測される。その理由は、構造化表面の対向する両面上の媒体の屈折率の差が、必ずではないが典型的に、埋め込まれた構成と比較して露出構成でははるかに大きくなるからである。したがって、所与の値の表面のばらつきσを有する構造化表面は、典型的には、露出構成においてそれが生成するより実質的に少ないヘイズを埋め込まれた構成において生成するであろう。
【0066】
このことを念頭において、
図9aに示す層は以下の特性を有すると仮定して、
図9の配列についてのシミュレーションを実行した。
・プリズム層950:プリズム表面の反対側の主面が光拡散層に接触し、かつ表面のばらつきパラメータσによって特徴付けられる表面のばらつきを有することを除いて、
図6のシミュレーションと同じ特性を仮定した。
・複屈折性基材層920:両方の主面が平滑であると仮定したことを除いて、
図6のシミュレーションと同じ特性を仮定した。
・光拡散層930:異なるシミュレーションに対して選択した値と同等の等方性屈折率を仮定した(1.6、1.57、1.54、1.5、1.45、又は1.4)。
【0067】
前側及び後側の偏光子904、906は交差する、即ち90度の相対回転角度の配向と仮定した。全てのシミュレーションについて、プリズム層のプリズム軸と前側の偏光子の通過軸とが成すバイアス角は
図8の高いSCM可視性の配向に対応するゼロ度と仮定した。
【0068】
シミュレーションは、(100%の表面被覆で)構造化表面933がもたらす様々なヘイズの量を結果として与える0度〜30度の範囲の様々な構造化表面パラメータσについて実行した。また、上述のように光拡散層930について仮定した様々な等方性屈折率についてもシミュレーションを実行した。
【0069】
実行した各シミュレーションについて、向上後のSCMパターンを典型的に含むコノスコーププロット又は像を生成した。そのようなSCMパターンのそれぞれの可視性を、上述のSCM可視性パラメータを用いて計算した。これらの計算の結果を
図10のグラフにまとめる。グラフの縦座標は、
図8で用いたSCM可視性パラメータと同じである。
図10のグラフの横座標は「エアヘイズ」と記載してあるが、これはいくらか説明を要する。「エアヘイズ」は構造化表面の表面のばらつきの尺度であり、パラメータσに直接相関する。
図9及び9aの構造化表面933は所与の表面のばらつきσを有すると仮定すると、100%の表面被覆では、「エアヘイズ」は、構造化表面933を
図6及び6aの露出構成において使用した場合にそれが示すであろうヘイズの量である。
図10で横座標としてこの「エアヘイズ」を用いることによって、
図10と
図8との直接比較が可能になる。シミュレーションのシステム910の構造化表面933によってもたらされる実際のエアヘイズは、それに関連づけられるエアヘイズより実質的に少ないが、この理由は、構造化表面933が、
図6の露出された構造化表面と比べて屈折率の差が小さい光媒体の間に埋め込まれているからである。
【0070】
図10において、曲線1010、1012、1014、1016、1018及び1020は、光拡散層930の屈折率1.6、1.57、1.54、1.5、1.45及び1.4にそれぞれ対応する。したがって、曲線1010、1012、1014、1016、1018及び1020は、プリズム層950と光拡散層930との屈折率の差0.04、0.07、0.10、0.14、0.19及び0.24にそれぞれ対応する。縦座標及び横座標の互換性があるので、
図8からの曲線810を
図10のグラフに重ね合わせて、
図10にプロットすることができる。
図10から、少なくとも2つのことが明確である。第1に、光拡散層930の屈折率の所与の値に関して、「エアヘイズ」の増加、及びしたがって表面のばらつきσの増加は、SCMパターンの可視性の減少に対応する。第2に、所与の「エアヘイズ」に関して、及びつまり所与の表面のばらつきσに関して、プリズム層950と光拡散層930との間の屈折率の差が大きいほどSCMパターンの可視性は減少する。
【0071】
破線1001が
図10のデータの上に重ねられている。SCM可視性約0.06に示されている線1001は、曲線810のおよその区切り点1002を示しており、その一方の側ではSCM可視性はヘイズの増加とともに急速に減少し、そのもう一方の側ではSCM可視性はよりゆっくりと減少する。線1001により画定されるこの区切り点でのSCM可視性は、構造化表面933の対向面の屈折率の差が減少するにつれて表面のばらつきが増加する(及びエアヘイズが増加する)位置で曲線1020、1018等と交差する。領域1003は、以下に詳述するフィルムの実施例からの結果のいくつかに関してのその有意性のために特定されている。
【0072】
図10のデータの更なる分析を
図1に提供する。
図11は、Δnの関数としての線1001とそれぞれの曲線1020、1018等の交差、即ち、構造化表面933の対向する面の屈折率の差により表される、エアヘイズの閾値のプロットである。例えば、
図10の曲線1020は約35%のエアヘイズで線1001と交差しており、この曲線1020は、構造化表面933にわたる屈折率の差0.24を表している。したがって、
図10の曲線1020は
図11の最も右下のデータポイントをもたらす。より小さいΔn値では、SCM可視性の区切り点に達するために、より大きい表面のばらつきσ及びより大きいエアヘイズ閾値が必要とされる。したがって、
図11は、エアヘイズの減少によって測定されるように、構造化表面933のばらつきが少なくなり、より平滑になるほど、その閾値のレベルでのSCM可視性を維持するためにより大きい屈折率の差Δnが必要になることを裏付けている。興味深いことに、
図11は、屈折率の差が0.05未満では、表面のばらつきを増やすことによってSCMの可視性を維持することができない場合があることもまた示している。
【0073】
このように、輝度向上フィルムのような微細複製フィルムに好適な、埋め込まれた構造化表面を使用することによって、SCMパターンの可視性を除去又は実質的に低減することができることが示された。しかしながら、輝度向上フィルムの主目的はバックライト又はディスプレイの軸上輝度を向上することであるので、埋め込まれた拡散構造体がフィルムの輝度向上性を有意に劣化させないこともまた望まれる。上述のように、フィルムがもたらす輝度向上の量は、有効透過率(ET)によって測定される。したがって、光学フィルムがもたらすETに、埋め込まれた構造化表面が及ぼす影響もまた、研究することが望ましい。上記のシミュレーションツールは、
図12の配列を使用してこの問題を研究するためにも使用することができる。
【0074】
図12は、前側及び後側の偏光子904、906が含まれていないことを除いて、
図9のシステム910と同一若しくは同様であり得る光学システム1210を示す。したがって、システム1210は、既に上述した埋め込まれた光源902及び光学フィルム919を含んでいる。このシステムはディテクター1201もまた含んでいる。ディテクター1201は
図9のディテクター901と同一若しくは同様であり得る。しかしながら、コノスコープ像を取得する代わりにディテクター1201を使用してETを測定してもよく、したがって、ディテクター1201は、光学システム1210の軸方向(例えばz軸)に対して有意に斜めの角度で伝播している光を検出しなくてもよい又は無視してもよい。フィルム919のETを測定するために、図のようにフィルム919が設置されたシステム1210についてのシミュレーションを実行し、また、フィルム919を含まないことを除いて同一のシステムについて別のシミュレーションを実行する。これらの2つのシミュレーションについての計算されたディテクターの出力値の比により、フィルム919のETが得られる。
【0075】
したがって、フィルム919の各実施形態について、光拡散層930についての選択された屈折率及び特定のエアヘイズに対応する選択された表面のばらつきσ(100%の表面被覆で)を用いて、システム1210の2つのシミュレーション、即ちフィルム919を有するシステムとフィルム919を含まないシステムのシミュレーションを実行し、結果を用いて有効透過率(ET)を計算した。シミュレーション結果は
図13のグラフに示されている。この図で、計算されたETは、
図10で使用したのと同じパラメータである「エアヘイズ」に対してプロットされている。曲線1310、1312、1314、1316、1318及び1320は、光拡散層の屈折率1.6、1.57、1.54、1.5、1.45及び1.4にそれぞれ対応する。したがって、曲線1310、1312、1314、1316、1318及び1320は、プリズム層と光拡散層との間の屈折率の差であるΔ n0.04、0.07、0.10、0.14、0.19及び0.24にそれぞれ対応する。
図13の検査はいくつかのことを明らかにする。第1に、輝度向上フィルムへの埋め込まれた拡散構造体の導入は、屈折率の差Δn及び構造化表面の表面のばらつきσに少なくともある程度依存して、フィルムのETを低下させる。図に描いた屈折率の差及び構造化表面のばらつき(又は「エアヘイズ」)の組み合わせのほとんどに関して、ETの低下は比較的緩やかであり、輝度向上フィルムとしてのフィルムの有効性は実質的に維持されている。例えば、少なくともいくつかの実施形態のETは、少なくとも1.3、1.4、1.5、1.6又は1.65である。第2に、光拡散層の屈折率の所与の値に関しては、非常に高いエアヘイズのレベル及び大きい屈折率の差を除いて、「エアヘイズ」の増加、及びしたがって表面のばらつきσの増加は、一般にフィルムのETの減少に対応する。第3に、所与の「エアヘイズ」に関して、及びしたがって所与の表面のばらつきσに関して、プリズム層と光拡散層の屈折率の差が大きいほどフィルムのETは大きく減少する。
【0076】
多くの場合、輝度向上フィルムの後側又はリアの露出された主面には、例えば欠陥を隠すために、つや消し仕上げが施される。シミュレーションしたフィルムの埋め込まれた拡散構造体の存在を鑑みると、フィルムの後側又は最もリアの表面につや消し仕上げを有する実施形態に関しても研究を行うことが望ましい。したがって、
図13のデータを生成するために使用したシミュレーションを再び実行したが、このシミュレーションでは、光学フィルム919の最もリアの表面(
図9aの表面920bを参照)が平滑な面ではなくつや消し仕上げを有すると仮定した。表面920bの光学モデリングソフトウェアが仮定したつや消し仕上げは、下の
図19に示す構造化表面のエアヘイズ及び透明度を再現するものであり、したがってこの表面を代表するものである。平滑な表面の代わりにつや消し表面を使用したことを除いて、
図13のシミュレーションと同じ方法でシミュレーションを行った。結果として得られる、様々な光学フィルム実施形態に関する計算されたETを
図14にプロットする。この図においてもETは埋め込まれた拡散層の「エアヘイズ」に対してプロットされている。曲線1410、1412、1414、1416、1418及び1420は、光拡散層の屈折率1.6、1.57、1.54、1.5、1.45及び1.4にそれぞれ対応する。したがって、曲線1410、1412、1414、1416、1418及び1420は、プリズム層と光拡散層との間の屈折率の差0.04、0.07、0.10、0.14、0.19及び0.24にそれぞれ対応する。
図13と
図14を比較すると、光学フィルムの底のつや消し表面は光学フィルムのETを減少させる傾向があるが、底のつや消し表面は、埋め込まれた構造化表面933に伴う拡散に対する光学フィルムのETの感度をいくらか減少させる傾向もまた有することがわかる。
【0077】
以上のように、輝度向上フィルムにおける拡散又はヘイズの量の制御を提供するために好適な埋め込まれた構造化表面を用いてSCMパターンの可視性を除去又は実質的に低減することができること、及び比較的少ないフィルムの輝度向上性の減少で、埋め込まれた拡散体をフィルムに組み込めることが示された。しかしながら、多くのエンドユーズ用途において、輝度向上フィルムを、何らかのパターンの付いた主面を有する第2のフィルム、層、又は物体の上に配置する場合があり、これらのフィルムの組み合わせは、「スパークル」として周知の光学アーチファクトを生じさせる場合がある。
【0078】
「スパークル」は、ランダムなパターンに見える明るい及び暗いルミナンスの小さい領域からなる粗いテクスチャ(キメムラ)の外観をした光学アーチファクトを指す。それらの明るい及び暗い領域の位置は、見る角度の変化につれて変化するので、視認者にとって特に明らかで好ましくないテクスチャとなる場合がある。スパークルは、何らかの種類の平滑でない表面と、その近くの別の構造体との光学的相互作用の結果として現れる場合があり、ここで言う別の構造体とは物体である。場合によっては、その物体は、例えば輝度向上フィルムのようなプリズムフィルムであることがある。そのような状況を
図15の光学スタックに図示する。
【0079】
図15はフィルムスタック1510の概略図であり、図中、光学フィルム1519は、ここで物体1569と呼ぶ別の光学フィルム1569の上に又はそれに対して設置されている。光学フィルム1519は、高い有効透過率(ET)を維持する一方でSCM可視性を低減するように散乱又はヘイズを導入するように作ることができる埋め込まれた構造化表面を有する。光学フィルム1519は、所望により、
図9aの光学フィルム919に示したような3層構成を有することができる。あるいは、フィルム1519は、プリズム層と複屈折性基材との間に別の埋め込まれた層が加えられた
図15に示すような4層構成を有することができる。この追加の層は、埋め込まれた構造化表面の両面上の材料の屈折率の選択における自由度を増すことができる。したがって、光学フィルム1519は、プリズム層1550、第1の光拡散層1530、第2の光拡散層1540、及び層1550、1530、1540を支持する複屈折性基板1520を有している。光学フィルム1519は、第1の主面1519a及び第2の主面1519bもまた有している。プリズム層1550は、
図1、2及び3のプリズム層と同一又は同様であり得る。複屈折性基材1520は、
図1、2、3、又は9aの複屈折性基材と同一又は同様であり得る。簡潔にするために、光拡散層1530、1540はそれぞれ体積散乱性を有していない、即ちこれらの層のそれぞれの対向する主面の間に光散乱要素は存在していないと仮定する。しかしながら、これらの層は、埋め込まれた構造化表面1533と交差する又はそれに沿ってぶつかる。構造化表面1533は表面のばらつきσを特徴とするガウス傾斜分布を有してもよく、あるいは、光を散乱若しくは拡散するように別の好適な傾斜分布を有してもよい。
【0080】
物体1569は従来の輝度向上フィルムとして図示されており、第1主面1569a、第2主面1569b、プリズム層1580、及び基材1570を有する。そのようなフィルムは、典型的には、物体1569のプリズムがx方向に平行に延びるように上側の輝度向上フィルムに交差する向きに配向されるが、図中、例示上の便宜のためにプリズムは別の方法で示されている。
【0081】
光学フィルム1519に埋め込まれた構造化表面1533は、一般性のために、不規則な起伏によって特徴づけられる構造化表面として示されている。
図16a及び16bに関連して説明したように、このような表面は、スパークルアーチファクトを生じさせる傾向がある。
【0082】
図16a及び16bは、構造化表面933又は1533と同一又は同様であり得る不規則な起伏のある表面1633の任意の部分を大きく拡大した図を示す。表面1633は、x−y平面に概ね平行に延びていると仮定し、かつ屈折率n1の第1の光学透過性媒体1630及び屈折率n2の第2の光学透過性媒体1640によって、対向する両面が境界付けされていると仮定する。表面部分1633は、
図16a及び16bと同一の幾何学又は形状を有するものとして示されているが、
図16aではn1はn2より大きいと仮定しており、一方、
図16bではn1はn2より小さいと仮定している。表面1633は起伏があるので、負のz方向に曲がる部分(即ち、
図16a、16bで下方向)と、正のz方向に曲がる部分(即ち、
図16a、16bで上方向)とを含んでいる。
図16a及び16bに示される表面部分1633において、境界線1605は、下方に曲がる表面部分の左側の副部分と、情報に曲がる表面部分の右側の副部分とを特定するように描かれている。プリズム層のプリズムは
図16a及び16bの観点から表面1633の上に配置されていると仮定すると、表面部分1633の左側の副部分はプリズムから離れる方向に曲がっていると言うことができ、表面部分1633の右側の副部分はプリズムに向かう方向に曲がっていると言うことができる。
【0083】
図16a、16bはまた、構造化表面1633の光の集束性又はデフォーカス性を実証するために光線1603a、1603bもまた含んでいる。
図16aにおいて左側の副部分が集束性を示しており、一方、右側の副部分は
図16bにおいて集束性を示しているのを、容易に見ることができる。集束の正確な性質は、表面の副部分の特定の形状及び屈折率n1、n2の特定の値に依存するであろう。
【0084】
図16a及び16bは、SCM可視性を低減するために、例えば919又は1519のような光学フィルムでの使用のために任意の形状の構造化表面を選択すれば、構造化表面の実質的な部分が集束若しくは撮像性を呈する場合があることを実証している。例えば、起伏のある埋め込まれた表面のいくつかでは、平面図の表面積の約半分は、n1>n2又はn1<n2のいずれであるかにかかわらず、集束性を呈する場合がある。そのような集束性は、集束距離、フィルムの厚さ、及び物体の間隔によっては、スパークルアーチファクトを生じさせる場合がある。それは、埋め込まれた構造化表面1633の個々の区域が、光学フィルム919、1519の後ないしは近くに配置された物体のパターンの付いた表面の部分を選択的に撮像又は拡大する小さい集束要素として作用することができるからである。
【0085】
スパークルアーチファクトを避けるためには、SCM可視性を低減するために光の適切な量を散乱又は拡散しながらもなお集束性若しくは撮像性をほとんど又は全く有さない構造化表面を選択して本開示の光学フィルムに使用することが望ましい。そのような構造化表面の一例を
図17に示す。
図17において、光学フィルム1719は、第1の主面1719a及び第2の主面1719bを有する。フィルム1719はフィルム1519と同様の4層構成を使用する。したがって、光学フィルム1719は、プリズム層1750、第1の光拡散層1730、第2の光拡散層1740、及び層1750、1730、1740を支持する複屈折性基板1720を有している。プリズム層1750は、プリズム層1550と同一又は同様であり得る。複屈折性基材1720は、複屈折性基材1520と同一又は同様であり得る。光拡散層1730、1740はそれぞれ体積散乱性を有していない、即ちこれらの層のそれぞれの対向する主面の間に光散乱要素は存在していないと仮定する。しかしながら、これらの層は、埋め込まれた構造化表面1733と交差する又はそれに沿ってぶつかる。構造化表面1733は、表面のばらつきσによって特徴づけられるガウス傾斜分布を有することができる、又は、本明細書の他の場所で述べているようにSCM可視性を低減するために光を散乱若しくは拡散するように、別の好適な傾斜分布を有することができる。
【0086】
これに加えて、構造化表面1733は、例えば、平面図の構造化表面の少なくとも80%又は少なくとも90%が集束性を呈さないように構成するのが好ましい。これを達成するための1つの方法は、表面の実質的に半分を超える部分が、例えばプリズム層1750のプリズムに向かう方向又はそれから離れる方向など、同じ向きに湾曲する部分で構成されるように構造化表面を構成することである。構造化表面のそのような湾曲した各部分をレンズレットと呼ぶことができる。例えば、
図17において、構造化表面1733の部分1733aの全ては、プリズム層1750から概ね離れる方向に湾曲しており、レンズレット1733aであるとみなすことができる。
図17の構成においては、レンズレット1733aはデフォーカスするであろう、即ち、層1740の屈折率が層1730のそれより大きいならば、それぞれのレンズレットは入射する視準光をデフォーカスするであろう。構造化表面1733の好ましくは少なくとも80%は、レンズレット1733aで覆われている又は占有されている。構造化表面1733の実質的に半分に満たない部分、例えば部分1733bは、表面1733の好ましくは20%未満又は10%未満を覆っている又は占有しており、集束性を有するように湾曲することができる。層1740の屈折率が層1730のそれより小さい場合は、全てのレンズレット1733がプリズム層1750のプリズムに向かう方向に湾曲するように、構造化表面1733は、
図17におけるその向きの逆の向きであることが好ましいことに注意されたい。
【0087】
所与の構造化表面の個々のレンズレットは、平面図で見ると、両方の主な面内方向に沿って横断寸法が限られている場合があることに注意されたい。換言すると、リニアプリズムのアレイと対照的に、これらのレンズレットのそれぞれは所与の面内方向に沿って永遠に延びるように構成されない場合があり、むしろ全ての面内方向において有限である又は有界である場合がある。このようにレンズレットを有界にすることは、それらを確実に適切に湾曲させることができ、したがって、一つの断面においてだけでなく直交する断面においてもデフォーカス性にすることができる。
【0088】
場合によっては、埋め込まれた構造化表面の特徴的寸法がプリズム層の特徴的な寸法と既定の関係を有するように光学フィルムを設計することが望ましいことがある。プリズム層の特徴的な寸法はプリズムのピッチであり、
図17でPと記されている。埋め込まれた構造化表面が、密に充填されたレンズレットの規則的又は不規則的なアレイのような複数のレンズレットを含む場合、各レンズレットは、少なくとも場合によっては、最大の横方向寸法D及び同等の円直径「ECD」を有するものとして特徴づけることができる。所与のレンズレットのECDは、平面図での面積がレンズレットの平面図での面積と同等である円の直径として定義することができる。複数のレンズレットの全てのレンズレットに関してこれらの値を平均化することにより、複数のレンズレットは平均最大横寸法D
avg及び平均等価円直径ECD
avgを有していると言うことができる。場合によっては、ECD
avgがプリズムピッチPより小さくなるように、プリズムの特徴的寸法より実質的に小さいレンズレットを設計することができる。別の場合には、ECD
avgがプリズムピッチPとほぼ同等になるように、プリズムの特徴的寸法とほぼ同等の大きさになるようにレンズレットを設計することができる。その他の場合には、ECD
avgがプリズムピッチPより大きくなるように、プリズムの特徴的寸法より大きいレンズレットを設計することができる。これらの場合のそれぞれにおいて、プリズムアレイのプリズムの少なくともいくつかの実施形態において、例えばそれらの頂角が、互いに平行な線又は平面によって二分されるように、それらの全てが横断面において同じ配向を有することが望ましい。したがって、これらのプリズムは、ECD
avgがピッチPより大きい場合でも均一の配向を有することができる。
【0089】
本開示の光学フィルムに多様な設計形態を採用することができ、具体的には、埋め込まれた構造化表面が組み込まれた光学フィルムが含まれる。図示し、図との関連において説明した特定の層の配列に加えて、所望の光学的及び/又は機械的機能性をもたらすためにフィルムは追加の層及び/又はコーティングを含んでもよい。記載したいずれの層も、2つ以上の個別の下位層を用いて構成することができる。同様に、2つ以上の隣接した層のいずれも、単一の層として組み合わせることができる、あるいは単一の層で置き換えることができる。多様なプリズム設計、フィルム又は層の厚さ、及び屈折率を使用することができる。プリズム層は、例えば、範囲で約1.4〜1.8、又は約1.5〜約1.8、約1.5〜1.7、あるいは約1.5以上、又は約1.55以上、又は約1.6以上、又は約1.65以上、又は約1.7以上の任意の好適な屈折率を有することができる。複屈折性基材は典型的な複屈折を有することができ、上述のように、面内の複屈折が含まれる。場合によっては、所望の機能性のために、染料、顔料、及び/又は粒子(散乱粒子又は他の好適な拡散剤を含む)を光学フィルムの1つ以上の層又は構成要素に含めてもよい。本開示の光学フィルムでの使用には、機能性及び経済性のためにポリマー材料が好ましい場合があるが、他の好適な材料を使用してもよい。
【0090】
例えば1.4未満、又は1.3未満、又は1.2未満、又は範囲で1.15〜1.35の屈折率など超低屈折率(ULI)を有するものが含まれるナノ空隙材料を本開示の光学フィルムに使用してもよい。そのようなULI材料の多くは、多孔質の材料又は層であると説明することができる。ULI材料は、例えば、
図9aの層930、及び
図15の層1540又は1530、及び
図17の層1730として使用することができる。ナノ空隙化されていない、実質的により高い(例えば1.5又は1.6より大きい)屈折率を有する、より一般的な光学ポリマー材料と組み合わせて使用すると、埋め込まれた構造化表面にわたって比較的大きい屈折率の差Δnを提供することができる。好適なULI材料は、参照により本明細書に組み込まれるWO 2010/120864号(Haoら)及びWO 2011/088161号(Wolkら)に記載されている。
【実施例】
【0091】
多くの微細複製光学フィルムを作製し、SCM可視性及びスパークルの低減について試験を行った。各フィルムは、
図9aに示すような3層構成を有する。いずれの例でも、使用した基材フィルムは、実質的に平らな主面及び実質的に面内複屈折性を有する厚さ3ミル(75ミクロン)のポリエチレンテレフタレート(PET)の層である。この基材の一つの主面に第1のポリマー材料をキャスティングし、硬化させて、光拡散層を形成した。以下に説明するように、光拡散層のPET基材と反対側の主面を特定の幾何形状に構造化するために、光拡散層を構造化表面ツールにキャスティングして成形した。次いで、光拡散層の構造化された主面に第2のポリマー材料をキャスティングし、硬化させて、プリズム層を成形した。得られたフィルムの構成は、実質的に
図9aに概略的に示すようなものである。
【0092】
埋め込まれた構造化表面には3つの異なる幾何形状(
図9aの表面933を参照)を使用した。構造化表面の幾何形状のうち2つには、密に充填されたレンズレットのパターンを使用した。構造化表面のもう一つの幾何形状には、不規則なパターンの平らなファセットを使用した。
【0093】
それら2つの密に充填されたレンズレット表面は、WO 2010/141261号(Aronsonら)にしたがって作製した。この参考文献には、例えば
図18の構造化表面などが記載されている。
図18は、主表面1825に不規則的なパターンを形成する微細構造1820の概略上面図である。場合によっては、マイクロ構造はランダムに見える擬ランダムパターンを形成し得る。一般に、微細構造は任意の高さ及び任意の高さ分布を有し得る。場合によっては、微細構造の平均の高さ(即ち、平均の最大高さから平均の最小高さを引いたもの)は、約5μm以下、又は約4μm以下、又は約3μm以下、又は約2μm以下、又は約1μm以下、又は約0.9μm以下、又は約0.8μm以下、又は約0.7μm以下である。
【0094】
密に充填されたレンズレットの構造化表面の一つは、本明細書では「レンズレット1」と呼ぶ。レンズレット1を上から見たときの顕微鏡写真を
図19に示す。もう一方の密に充填されたレンズレットの構造化表面は、本明細書では「レンズレット2」と呼ぶ。レンズレット2を上から見たときの顕微鏡写真を
図20に示す。
図19及び20には、レンズレット機構の実際の面内寸法を示すために基準尺度が提供されている。また、読者の便宜のために、2つのレンズレットはこれらの図のそれぞれにおいて強調して描かれている。
図19及び20にはデカルト座標系も提供されており、いずれの場合もフィルムのウェブ下方向がy方向である。
図19及び20のそれぞれにおいて、見て容易に認識できる実質的にすべてのレンズレットは同じ配向に湾曲しており、構造化表面の80%を超える部分、及び90%を越える部分がそのようなレンズレットで作られている。レンズレット1及びレンズレット2の構造化表面を使用した光学フィルムの実施形態において、いずれの場合もプリズム層(
図9aの層950を参照)の屈折率は光拡散層(
図9aの層930を参照)の屈折率より大きく、したがってそれらのレンズレットは、各レンズレットがプリズムから離れる方向に湾曲するように配向されていた。
【0095】
実施例に使用したもう一つの埋め込まれた構造化表面の幾何形状は、不規則的な平らなファセットの構造化表面であった。この構造化表面は本明細書では「ファセット」の名で呼ばれ、米国特許出願公開第2010/0302479号(Aronsonら)の教示にしたがって作製した。この参考文献には、微細構造化表面と窪みとが一体になっている、表面上にランダムに分布する窪みを有する微細構造化表面などが記載されている。ファセット構造化表面の上面顕微鏡写真を
図21に示し、同じ表面を大きく拡大した顕微鏡写真を
図21aに示す。これらの図には、平面ファセットの機構の実際の面内の寸法を示すために基準尺度が提供されている。
図21及び21aから明らかなように、構造化表面のほぼ全面の例えば80%を越える部分及び90%を超える部分は、ランダムに配向された平らなファセットで占められている。結果として、ファセット構造化表面は、レンズレット1及びレンズレット2構造化表面と同様に、集束性又は撮像性をほとんど又は全く有さないと予測することができる。
【0096】
図19、20、及び21の構造化表面は共焦点形顕微鏡で測定し、共焦点形顕微鏡からのデータを変換して、
図6bのものと同様の面角度分布情報を得た。結果を
図22a及び22bに示す。
図22aで、一つの面内方向(x)に沿った面角度分布は、レンズレット1については曲線2210aとして、レンズレット2については曲線2212aとして、ファセットについては曲線2214aとしてプロットした。
図22bで、一つの直交する面内方向(y)に沿った面角度分布は、レンズレット1については曲線2210bとして、レンズレット2については曲線2212bとして、ファセットについては曲線2214bとしてプロットした。
【0097】
別の試験で、空気に露出したポリマーフィルムの外面への可視光に対して
図19、20、21の構造化表面が生成する「エアヘイズ」の量を測定した。レズレット1の構造化表面は7%のエアヘイズを有することを示し、レンズレット2の構造化表面は70%のエアヘイズを有することを示し、ファセット構造化表面は100%のエアヘイズを有することを示した。
【0098】
上述のように、
図9aと同様の構成を有する微細複製光学フィルムは、第1のポリマー材料を平らなPETフィルムの上にキャスティングして成形することによって作製したものであり、このキャスティング成形は、レンズレット1、レンズレット2、又はファセット表面の幾何形状が画定されているツールを用いて行った。次いで、第1のポリマー材料の上に第2のポリマー材料をキャスティングして成形することによって第1のポリマー材料の構造化表面を埋め、即ち埋め込み、第2のポリマー材料を、第2のポリマー材料の外側の主面にリニアプリズム構造化表面をもたらすツールでキャスティング成形した。そのツールがもたらしたリニアプリズムは、24マイクロメートルの均一のピッチ、12ミクロンの均一の高さ、及び横断面において均一の配向を有するものであった。
【0099】
第1及び第2のポリマーは、次に挙げる硬化性樹脂の群から選択し、そのそれぞれは、光学的性質、高い透明度、低い吸収率のポリマー層をもたらすように適応される。可視光屈折率1.64のポリマー樹脂、可視光屈折率1.58のポリマー樹脂、可視光屈折率1.56のポリマー樹脂、及び可視光屈折率1.5のポリマー樹脂。
【0100】
埋め込まれた構造化表面としてレンズレット1の幾何形状を有する6つの光学フィルムを作製し、埋め込まれた構造化表面としてレンズレット2の幾何形状を有する6つの光学フィルムを作製し、埋め込まれた構造化表面としてファセットの幾何形状を有する6つの光学フィルムを作製した。これらの18枚の光学フィルムのほかに、基準として用いるために、光散乱層の代わりに平らな表面のPETフィルム基材の上に直接にキャスティングして硬化したプリズム層を有する「サンプル0」と呼ぶ別の光学フィルムを作製した。(向上後のSCMではなく)現実的なSCMを観察することができるように下位の偏光子が取り除かれていることを除いて
図9のものと同様の設定を用い、カメラの代わりに人を観察者として、これらのフィルムのそれぞれについてSCMの評価を行った。人である観察者は、「最良」(即ちSCMを最もよく除去している)、「良」(即ちSCMを良好に除去している)、「可」(即ちSCMを最低限度に除去している)、及び「不可」(即ち、例えばSCMがまだ可視であるなど、SCMがほとんど又は全く除去されていない)の4段階の尺度によりSCM可視性を評価した。
【0101】
光学フィルムのSCMに関する評価のほかに、スパークルアーチファクトの評価も行った。所与の光学フィルムのサンプルのスパークルの評価では、サンプルフィルムが従来のBEFのプリズム側に静置されるように、サンプルフィルムの下に従来のBEFフィルムを挿入した。前側の偏光子(
図9の偏光子904)もまた取り除いた。次いで、観察者がスタックのスパークルアーチファクトの存在を評価した。「不可」という評価は、観察者がスパークルアーチファクトを容易に感知できたことを示し、「良」という評価は、観察者がスパークルアーチファクトを容易に感知できなかったことを示す。
【0102】
SCM及びスパークルのほかに、光学フィルムの有効透過率(ET)の測定も行った。
【0103】
これらの実施例及び観察の結果を
図23の表に示す。各サンプルは1.6を超えるET(表に示されていない)を示した。これらの結果は、良好な有効透過率を維持する一方でスパークルアーチファクトを伴わずに十分にSCMを隠蔽するように、例えば、密に充填されたレンズレット又はランダムに配向された実質的に平面のファセット、及び十分な屈折率の差など、好適な埋め込まれた構造化表面を用いて微細複製光学フィルムを作製することが可能であることを示している。屈折率の差Δnが0.14、エアヘイズが70%のサンプル9がSCM隠蔽について「最良」の評価を得ていることに注意されたい。このサンプルを、同じく0.14の屈折率の差Δnを有し、約70%のエアヘイズで領域1003の閾線1001を横断している
図10の曲線1016と比較することができる。
【0104】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、数量、特性の測定値などを表す全ての数字は、全ての場合に、用語「約」によって修飾されているとして理解されたい。したがって、そうでないことが指示されない限り、明細書及び請求項において説明される数値的なパラメータは、本出願を使用して当業者によって得られるであろう所望の特性によって変化し得る、近似値である。特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、及び通常の四捨五入法を適用することによって解釈されなければならない。本発明の広範な範囲を説明する数値的範囲及びパラメータは近似値であるが、いずれかの数値が本明細書に記載される特定の実施例において説明される限りにおいて、これらは、合理的に可能であるかぎり正確に報告されている。しかしながら、いずれかの数値的レベルは、試験又は測定の限界に伴う誤差を含むことがある。
【0105】
以下は、本開示の項目の一覧である。
項目1は光学フィルムであって、
複屈折性基材と、
その基材に支持されているプリズム層であって、同一の第1方向に沿って延在する複数の並んだリニアプリズムを備える主面を有する、プリズム層と、
基材とプリズム層との間に配設されている埋め込まれた構造化表面であって、複数のデフォーカスレンズレットを備え、それらのでフォーカスレンズレットが埋め込まれた構造化表面の少なくとも80%を覆っている、埋め込まれた構造化表面と、を備えている。
【0106】
項目2は、プリズムが横断面において同一の配向を有する、項目1のフィルムである。
【0107】
項目3は、プリズムがピッチPを有し、各レンズレットが等価円直径ECDを有し、複数のレンズレットが平均等価円直径ECD
avgを有し、ECD
avgがPより大きい、項目2のフィルムである。
【0108】
項目4は、埋め込まれた構造化表面が、少なくとも0.05の屈折率の差を有する2つの光学媒体を分離している、項目1のフィルムである。
【0109】
項目5は、埋め込まれた構造化表面がプリズム層と埋め込まれた層との間の界面であり、埋め込まれた層は基材とプリズム層との間に配設されている、項目1のフィルムである。
【0110】
項目6は、プリズム層の屈折率が埋め込まれた層の屈折率より少なくとも0.05大きく、各デフォーカスレンズレットがプリズム層から離れる方向に湾曲している、項目5のフィルムである。
【0111】
項目7は、埋め込まれた構造化表面が第1の埋め込まれた層と第2の埋め込まれた層との間の界面であり、第1及び第2の埋め込まれた層は基材とプリズム層との間に配設されている、項目1のフィルムである。
【0112】
項目8は、第1の埋め込まれた層の屈折率と第2の埋め込まれた層の屈折率との差が少なくとも0.05である、項目7のフィルムである。
【0113】
項目9は、光学フィルムが1.5以上の有効透過率を呈するように埋め込まれた構造化表面が構成される、項目1のフィルムである。
【0114】
項目10は、基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、項目1のフィルムである。
【0115】
項目11は、空気に露出された主面を基材が備え、かつ基材のその主面が非平滑である、項目1のフィルムである。
【0116】
項目12は、項目1のフィルムを備えるバックライトである。
【0117】
項目13は、項目1のフィルムを備えるディスプレイである。
【0118】
項目14は光学フィルムであって、
複屈折性基材と、
その基材に支持されているプリズム層であって、同一の第1方向に沿って延在する複数の並んだリニアプリズムを備える主面を有する、プリズム層と、
基材とプリズム層との間に配設されている埋め込まれた構造化表面であって、ランダムに配向された実質的に平面の複数のファセットを備えており、それらのファセットが、埋め込まれた構造化表面の少なくとも80%を覆っている、埋め込まれた構造化表面と、を備えている。
【0119】
項目15は、プリズムが横断面において同一の配向を有する、項目14のフィルムである。
【0120】
項目16は、埋め込まれた構造化表面が、少なくとも0.05の屈折率の差を有する2つの光学媒体を分離している、項目14のフィルムである。
【0121】
項目17は、埋め込まれた構造化表面がプリズム層と埋め込まれた層との間の界面であり、埋め込まれた層は基材とプリズム層との間に配設されている、項目14のフィルムである。
【0122】
項目18は、プリズム層の屈折率が埋め込まれた層の屈折率より少なくとも0.05大きく、各デフォーカスレンズレットがプリズム層から離れる方向に湾曲している、項目17のフィルムである。
【0123】
項目19は、埋め込まれた構造化表面が第1の埋め込まれた層と第2の埋め込まれた層との間の界面であり、第1及び第2の埋め込まれた層は基材とプリズム層との間に配設されている、項目14のフィルムである。
【0124】
項目20は、第1の埋め込まれた層の屈折率と第2の埋め込まれた層の屈折率との差が少なくとも0.05である、項目19のフィルムである。
【0125】
項目21は、光学フィルムが1.5以上の有効透過率を呈するように埋め込まれた構造化表面が構成される、項目14のフィルムである。
【0126】
項目22は、基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、項目14のフィルムである。
【0127】
項目23は、空気に露出された主面を基材が備え、かつ基材のその主面が非平滑である、項目14のフィルムである。
【0128】
項目24は、項目14のフィルムを備えるバックライトである。
【0129】
項目25は、項目14のフィルムを備えるディスプレイである。
【0130】
本発明の様々な修正及び変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかとなり、本発明は本発明において説明される例示的な実施形態に限定されないものと理解されるべきである。例えば、開示される透明な導電性物品はまた、防反射コーティング、及び/又は保護ハードコートを含んでもよい。読者は、開示される一実施形態の特徴はまた、他に指示がない限り、他の全ての開示される実施形態に応用され得る。本明細書において参照される、米国特許、特許出願公開、並びに他の特許文献及び非特許文献は、これらが先行する開示と矛盾しない限りにおいて、参照として組み込まれる。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[10]に記載する。
[項目1]
光学フィルムであって、
複屈折性基材と、
その基材に支持されているプリズム層であって、同一の第1方向に沿って延在する複数の並んだリニアプリズムを備える主面を有する、プリズム層と、
前記基材と前記プリズム層との間に配設されている埋め込まれた構造化表面であって、複数のデフォーカスレンズレットを備え、前記デフォーカスレンズレットが、前記埋め込まれた構造化表面の少なくとも80%を覆っている、埋め込まれた構造化表面と、を備えている、光学フィルム。
[項目2]
前記プリズムがピッチPを有し、各レンズレットが等価円直径ECDを有し、前記複数のレンズレットが平均等価円直径ECDavgを有し、ECDavgがPより大きい、項目1に記載のフィルム。
[項目3]
前記埋め込まれた構造化表面が、少なくとも0.05の屈折率の差がある2つの光学媒体を分離している、項目1に記載のフィルム。
[項目4]
前記埋め込まれた構造化表面が前記プリズム層と埋め込まれた層との間の界面であり、前記埋め込まれた層は前記基材と前記プリズム層との間に配設されている、項目1に記載のフィルム。
[項目5]
前記プリズム層の屈折率が前記埋め込まれた層の屈折率より少なくとも0.05大きく、前記各デフォーカスレンズレットが前記プリズム層から離れる方向に湾曲している、項目4に記載のフィルム。
[項目6]
前記埋め込まれた構造化表面が第1の埋め込まれた層と第2の埋め込まれた層との間の界面であり、前記第1及び第2の埋め込まれた層は前記基材と前記プリズム層との間に配設されている、項目1に記載のフィルム。
[項目7]
空気に露出された主面を前記基材が備え、かつ前記基材の前記主面が非平滑である、項目1に記載のフィルム。
[項目8]
光学フィルムであって、
複屈折性基材と、
その基材に支持されているプリズム層であって、同一の第1方向に沿って延在する複数の並んだリニアプリズムを備える主面を有する、プリズム層と、
前記基材と前記プリズム層との間に配設されている埋め込まれた構造化表面であって、ランダムに配向された実質的に平面の複数のファセットを備えており、前記ファセットが、前記埋め込まれた構造化表面の少なくとも80%を覆っている、埋め込まれた構造化表面と、を備えている、光学フィルム。
[項目9]
前記埋め込まれた構造化表面が前記プリズム層と前記埋め込まれた層との間の界面であり、前記埋め込まれた層は前記基材と前記プリズム層との間に配設されている、項目8に記載のフィルム。
[項目10]
前記埋め込まれた構造化表面が第1の埋め込まれた層と第2の埋め込まれた層との間の界面であり、前記第1及び第2の埋め込まれた層は前記基材と前記プリズム層との間に配設されている、項目8に記載のフィルム。