(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0018】
また、この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位をポリマー構造中に含む重合物をいい、典型的には(メタ)アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を50重量%を超える割合で含む重合物をいう。また、(メタ)アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。したがって、ここでいう(メタ)アクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。同様に、この明細書において「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸およびメタクリル酸を、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0019】
<粘着シートの構造例>
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層を含んで構成されている。ここに開示される粘着シートは、上記粘着剤層が支持基材の片面または両面に積層された基材付き粘着シートの形態であってもよく、支持基材を有しない基材レス粘着シートの形態であってもよい。以下、支持基材を単に「基材」ということもある。
【0020】
一実施形態に係る粘着シートの構造を
図1に模式的に示す。この粘着シート1は、第一面10Aおよび第二面10Bを有するシート状の支持基材10と、その第一面10A側に設けられた粘着剤層21とを備える基材付き片面粘着シートとして構成されている。粘着剤層21は、支持基材10の第一面10A側に固着している。粘着シート1は、粘着剤層21を被着体に貼り付けて用いられる。使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の粘着シート1は、
図1に示すように、粘着剤層21の表面(粘着面)21Aが、少なくとも粘着剤層21に対向する側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー31に当接した形態の剥離ライナー付き粘着シート100の構成要素であり得る。剥離ライナー31としては、例えば、シート状の基材(ライナー基材)の片面に剥離処理剤による剥離層を設けることで該片面が剥離面となるように構成されたものを好ましく使用し得る。あるいは、剥離ライナー31を省略し、第二面10Bが剥離面となっている支持基材10を用い、粘着シート1を巻回することにより粘着面21Aを支持基材10の第二面10Bに当接させた形態(ロール形態)であってもよい。粘着シート1を被着体に貼り付ける際には、粘着面21Aから剥離ライナー31または支持基材10の第二面10Bを剥がし、露出した粘着面21Aを被着体に圧着する。
【0021】
他の一実施形態に係る粘着シートの構造を
図2に模式的に示す。この粘着シート2は、第一面10Aおよび第二面10Bを有するシート状の支持基材10と、その第一面10A側に設けられた粘着剤層21と、第二面10B側に設けられた粘着剤層22と、を備える基材付き両面粘着シートとして構成されている。粘着剤層(第一粘着剤層)21は支持基材10の第一面10Aに、粘着剤層(第二粘着剤層)22は支持基材10の第二面10Bに、それぞれ固着している。粘着シート2は、粘着剤層21,22を、被着体の異なる箇所に貼り付けて用いられる。粘着剤層21,22が貼り付けられる箇所は、異なる部材のそれぞれの箇所であってもよく、単一の部材内の異なる箇所であってもよい。使用前の粘着シート2は、
図2に示すように、粘着剤層21の表面(第一粘着面)21Aおよび粘着剤層22の表面(第二粘着面)22Aが、少なくとも粘着剤層21,22に対向する側がそれぞれ剥離面となっている剥離ライナー31,32に当接した形態の剥離ライナー付き粘着シート200の構成要素であり得る。剥離ライナー31,32としては、例えば、シート状の基材(ライナー基材)の片面に剥離処理剤による剥離層を設けることで該片面が剥離面となるように構成されたものを好ましく使用し得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート2とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面22Aが剥離ライナー31の背面に当接した形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
【0022】
さらに他の一実施形態に係る粘着シートの構造を
図3に模式的に示す。この粘着シート3は、粘着剤層21からなる基材レスの両面粘着シートとして構成されている。粘着シート3は、粘着剤層21の一方の表面(第一面)により構成された第一粘着面21Aと、粘着剤層21の他方の表面(第二面)により構成された第二粘着面21Bとを被着体の異なる箇所に貼り付けて用いられる。使用前の粘着シート3は、
図3に示すように、第一粘着面21Aおよび第二粘着面)21Bが、少なくとも粘着剤層21に対向する側がそれぞれ剥離面となっている剥離ライナー31,32に当接した形態の剥離ライナー付き粘着シート300の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート3とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面21Bが剥離ライナー31の背面に当接した形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
【0023】
なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベル等と称されるものが包含され得る。粘着シートは、ロール形態であってもよく、枚葉形態であってもよく、用途や使用態様に応じて適宜な形状に切断、打ち抜き加工等されたものであってもよい。ここに開示される技術における粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、これに限定されず、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されていてもよい。
【0024】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、ポリマーAと、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であるポリマーBと、を含む粘着剤層を備える。このような粘着剤層は、ポリマーAまたはその前駆体と、ポリマーBと、を含有する粘着剤組成物から形成されたものであり得る。粘着剤組成物の形態は特に制限されず、例えば水分散型、溶剤型、ホットメルト型、活性エネルギー線硬化型(例えば光硬化型)等の、各種の形態であり得る。
【0025】
(ポリマーA)
ポリマーAとしては、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の、室温域においてゴム弾性を示す各種のポリマーの一種または二種以上を用いることができる。
【0026】
ポリマーAのガラス転移温度T
Aは、特に限定されず、ここに開示される粘着シートにおいて好ましい特性が得られるように選択することができる。いくつかの態様において、T
Aが0℃未満であるポリマーAを好ましく採用し得る。このようなポリマーAを含む粘着剤は、適度な流動性(例えば、該粘着剤に含まれるポリマー鎖の運動性)を示すことから、初期の低粘着性と加熱後の強粘着性とを兼ね備えた粘着シートの実現に適している。ここに開示される粘着シートは、T
Aが−10℃未満、−20℃未満、−30℃未満または−35℃未満のポリマーAを用いて好ましく実施され得る。いくつかの態様において、T
Aは、−40℃未満でもよく、−50℃未満でもよい。T
Aの下限は特に制限されない。材料の入手容易性や粘着剤層の凝集力向上の観点から、通常は、T
Aが−80℃以上、−70℃以上または−65℃以上のポリマーAを好ましく採用し得る。N
50の上昇を抑制する観点から、いくつかの態様において、T
Aは、例えば−63℃以上であってよく、−55℃以上でもよく、−50℃以上でもよく、−45℃以上でもよい。
【0027】
ここで、この明細書において、ポリマーのガラス転移温度(Tg)とは、文献やカタログ等に記載された公称値か、または該ポリマーの調製に用いられるモノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。Tgの特定に係る対象のポリマーがホモポリマーである場合、該ホモポリマーのTgと対象のポリマーのTgとは一致する。
【0028】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。具体的には、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989年)に数値が挙げられている。上記Polymer Handbookに複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。
【0029】
上記Polymer Handbookに記載のないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度としては、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー以外は、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度に相当する温度をホモポリマーのTgとする。
【0030】
また、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーについては、該モノマーについてDSC(示差走査熱量測定)を行うことにより得られる値、より具体的には後述する実施例に記載の方法に準じて得られる値を、当該ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーのガラス転移温度として、Foxの式を適用するものとする。
【0031】
特に限定するものではないが、ポリマーAの重量平均分子量(Mw)は、通常、凡そ5×10
4以上であることが適当である。かかるMwのポリマーAによると、良好な凝集性を示す粘着剤が得られやすい。いくつかの態様において、ポリマーAのMwは、例えば10×10
4以上であってよく、20×10
4以上であってもよく、30×10
4以上であってもよい。また、ポリマーAのMwは、通常、凡そ500×10
4以下であることが適当である。かかるMwのポリマーAは、適度な流動性(ポリマー鎖の運動性)を示す粘着剤を形成しやすいことから、貼付け初期の粘着力が低く、かつ加熱後粘着力の高い粘着シートの実現に適している。
【0032】
なお、この明細書において、ポリマーAおよびポリマーBのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算して求めることができる。より具体的には、後述する実施例において記載する方法および条件に準じてMwを測定することができる。
【0033】
ここに開示される粘着シートにおけるポリマーAとしては、アクリル系ポリマーを好ましく採用することができる。ポリマーAとしてアクリル系ポリマーを用いると、ポリマーBとの良好な相溶性が得られやすくなる傾向にある。ポリマーAとポリマーBとの相溶性が良いことは、粘着剤層内におけるポリマーBの移動性向上を通じて、初期粘着力の低減および加熱後粘着力の向上に寄与し得るので好ましい。
【0034】
アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマー単位を50重量%以上含有するポリマー、すなわち該アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量のうち50重量%以上が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるポリマーであり得る。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1〜20の(すなわち、C
1−20の)直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。特性のバランスをとりやすいことから、モノマー成分全量のうち(メタ)アクリル酸C
1−20アルキルエステルの割合は、例えば50重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分全量のうち(メタ)アクリル酸C
1−20アルキルエステルの割合は、例えば99.9重量%以下であってよく、98重量%以下でもよく、95重量%以下でもよい。いくつかの態様において、モノマー成分全量のうち(メタ)アクリル酸C
1−20アルキルエステルの割合は、例えば90重量%以下であってよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸C
1−20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0036】
これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸C
1−18アルキルエステルを用いることが好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸C
1−14アルキルエステルを用いることがより好ましい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸C
4−12アルキルエステル(好ましくはアクリル酸C
4−10アルキルエステル、例えばアクリル酸C
6−10アルキルエステル)から選択される少なくとも一種を、モノマー単位として含有し得る。例えば、アクリル酸n−ブチル(BA)およびアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)の一方または両方を含むアクリル系ポリマーが好ましく、少なくとも2EHAを含むアクリル系ポリマーが特に好ましい。好ましく用いられ得る他の(メタ)アクリル酸C
1−18アルキルエステルの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸n−ブチル(BMA)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(ISTA)等が挙げられる。
【0037】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー単位は、主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等の、N−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等の、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルイソオキサゾール、N−ビニルチアゾール、N−ビニルイソチアゾール、N−ビニルピリダジン等(例えば、N−ビニル−2−カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルへキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール類。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
【0039】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全量の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用による効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全量の0.1重量%以上としてもよく、1重量%以上としてもよい。また、共重合性モノマーの使用量は、モノマー成分全量の50重量%以下とすることができ、40重量%以下とすることが好ましい。これにより、粘着剤の凝集力が高くなり過ぎることを防ぎ、常温(25℃)でのタック感を向上させ得る。
【0040】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、下記一般式(M1)で表されるN−ビニル環状アミドおよび水酸基含有モノマー(水酸基と他の官能基とを有するモノマー、例えば水酸基とアミド基とを含有するモノマーであり得る。)からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーを含有することが好ましい。
【0041】
【化1】
ここで、上記一般式(M1)中のR
1は、2価の有機基である。
【0042】
N−ビニル環状アミドの使用により、粘着剤の凝集力や極性を調整し、加熱後粘着力を向上させ得る。N−ビニル環状アミドの具体例としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等が挙げられる。特に好ましくはN−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタムである。
【0043】
N−ビニル環状アミドの使用量は、特に制限されないが、通常、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量の0.01重量%以上(好ましくは0.1重量%以上、例えば0.5重量%以上)とすることが適当である。いくつかの態様において、N−ビニル環状アミドの使用量は、上記モノマー成分全量の1重量%以上としてもよく、5重量%以上としてもよく、10重量%以上としてもよい。また、常温(25℃)でのタック感向上や低温における柔軟性向上の観点から、N−ビニル環状アミドの使用量は、通常、上記モノマー成分全量の40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよい。
【0044】
水酸基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力や極性を調整し、加熱後粘着力を向上させ得る。また、水酸基含有モノマーは、後述する架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤)との反応点を提供し、架橋反応によって粘着剤の凝集力を高め得る。
【0045】
水酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等を好適に使用することができる。なかでも好ましい例として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。
【0046】
水酸基含有モノマーの使用量は、特に制限されないが、通常、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量の0.01重量%以上(好ましくは0.1重量%以上、例えば0.5重量%以上)とすることが適当である。いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、上記モノマー成分全量の1重量%以上としてもよく、5重量%以上としてもよく、10重量%以上としてもよい。また、常温(25℃)でのタック感向上や低温における柔軟性向上の観点から、水酸基含有モノマーの使用量は、通常、上記モノマー成分全量の40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよく、10重量%以下または5重量%以下としてもよい。
【0047】
いくつかの態様において、共重合性モノマーとして、N−ビニル環状アミドと水酸基含有モノマーとを併用することができる。この場合、N−ビニル環状アミドと水酸基含有モノマーとの合計量は、例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量の0.1重量%以上とすることができ、1重量%以上としてもよく、5重量%以上としてもよく、10重量%以上としてもよく、15重量%以上としてもよく、20重量%以上としてもよく、25重量%以上としてもよい。また、N−ビニル環状アミドと水酸基含有モノマーとの合計量は、例えば、モノマー成分全量の50重量%以下とすることができ、40重量%以下とすることが好ましい。
【0048】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。いくつかの態様において、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際の重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜170℃程度(典型的には40℃〜140℃程度)とすることができる。
【0049】
重合に用いる開始剤は、重合方法に応じて、従来公知の熱重合開始剤や光重合開始剤等から適宜選択することができる。重合開始剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等);過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルマレエート、過酸化ラウロイル等);レドックス系重合開始剤等が挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーの調製に用いられるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部〜5重量部、好ましくは0.05重量部〜3重量部の範囲内の量とすることができる。
【0051】
光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーの調製に用いられるモノマー成分100重量部に対して0.01重量部〜5重量部、好ましくは0.05重量部〜3重量部の範囲内の量とすることができる。
【0052】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーは、上述のようなモノマー成分に重合開始剤を配合した混合物に紫外線(UV)を照射して該モノマー成分の一部を重合させた部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)の形態で、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物に含まれ得る。かかるアクリル系ポリマーシロップを含む粘着剤組成物を所定の被塗布体に塗布し、紫外線を照射させて重合を完結させることができる。すなわち、上記アクリル系ポリマーシロップは、アクリル系ポリマーの前駆体として把握され得る。ここに開示される粘着剤層は、例えば、上記アクリル系ポリマーシロップとポリマーBとを含む粘着剤組成物を用いて形成され得る。
【0053】
(ポリマーB)
ここに開示される技術におけるポリマーBは、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(以下、「モノマーS1」ともいう。)と(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体である。ポリマーBは、モノマーS1に由来するポリオルガノシロキサン構造の低極性および運動性によって、被着体への貼付け初期の粘着力を抑制し、かつ、50℃より高い温度への加熱または経時によって被着体に対する粘着力を上昇させる粘着力上昇遅延剤として機能し得る。モノマーS1としては、特に限定されず、ポリオルガノシロキサン骨格を含有する任意のモノマーを用いることができる。モノマーS1は、その構造に由来する極性の低さにより、使用前(被着体への貼付け前)の粘着シートにおいてポリマーBの粘着剤層表面への偏在を促進し、貼り合わせ初期の軽剥離性(低粘着性)を発現する。モノマーS1としては、片末端に重合性反応基を有する構造のものを好ましく用いることができる。このようなノマーS1と(メタ)アクリル系モノマーとの共重合によると、側鎖にポリオルガノシロキサン骨格を有するポリマーBが形成される。かかる構造のポリマーBは、側鎖の運動性および移動容易性により、初期粘着力が低く、かつ加熱後粘着力の高いものとなりやすい。
【0054】
モノマーS1としては、例えば、下記一般式(1)または(2)で表される化合物を用いることができる。より具体的には、信越化学工業株式会社製の片末端反応性シリコーンオイルとして、X−22−174ASX、X−22−2426、X−22−2475、KF−2012などが挙げられる。モノマーS1は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【化2】
【化3】
ここで、上記一般式(1),(2)中のR
3は水素またはメチルであり、R
4はメチル基または1価の有機基であり、mおよびnは0以上の整数である。
【0055】
モノマーS1の官能基当量は、例えば、700g/mol以上15000g/mol未満であることが好ましく、800g/mol以上10000g/mol未満であることがより好ましく、850g/mol以上6000g/mol未満であることがさらに好ましく、1500g/mol以上5000g/mol未満であることが特に好ましい。モノマーS1の官能基当量が700g/mol未満であると、初期粘着力が十分に抑制されないことがあり得る。モノマーS1の官能基当量が15000g/mol以上であると、粘着力の上昇が不十分になることがあり得る。モノマーS1の官能基当量が上記範囲内であると、粘着剤層内における相溶性(例えば、ポリマーAとの相溶性)や移動性を適度な範囲に調節しやすく、初期の低粘着性と、粘着力上昇後の強粘着性とを高レベルで両立する粘着シートを実現しやすくなる。
【0056】
ここで、「官能基当量」とは、官能基1個当たりに結合している主骨格(例えばポリジメチルシロキサン)の重量を意味する。標記単位g/molに関しては、官能基1molと換算している。モノマーS1の官能基当量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)に基づく
1H−NMR(プロトンNMR)のスペクトル強度から算出することができる。
1H−NMRのスペクトル強度に基づくモノマーS1の官能基当量(g/mol)の算出は、
1H−NMRスペクトル解析に係る一般的な構造解析手法に基づいて、必要であれば特許第5951153号公報の記載を参照して行うことができる。
【0057】
なお、モノマーS1として官能基当量が異なる二種類以上のモノマーを用いる場合、モノマーS1の官能基当量としては、算術平均値を用いることができる。すなわち、官能基当量が異なるn種類のモノマー(モノマーS1
1,モノマーS1
2・・・モノマーS1
n)からなるモノマーS1の官能基当量は、下記式により計算することができる。
モノマーS1の官能基当量(g/mol)=(モノマーS1
1の官能基当量×モノマーS1
1の配合量+モノマーS1
2の官能基当量×モノマーS1
2の配合量+・・・+モノマーS1
nの官能基当量×モノマーS1
nの配合量)/(モノマーS1
1の配合量+モノマーS1
2の配合量+・・・+モノマーS1
nの配合量)
【0058】
モノマーS1の含有量は、ポリマーBを調製するための全モノマー成分に対して、例えば5重量%以上であってよく、粘着力上昇遅延剤としての効果をよりよく発揮する観点から10重量%以上とすることが好ましく、15重量%以上としてもよく、20重量%以上
としてもよい。また、モノマーS1の含有量は、重合反応性や相溶性の観点から、ポリマーBを調製するための全モノマー成分に対して、60重量%以下とすることが適当であり、50重量%以下としてもよく、40重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよい。モノマーS1の含有量が5重量%より少ないと、初期粘着力が十分に抑制されないことがあり得る。モノマーS1の含有量が60重量%より多いと、粘着力の上昇が不十分になることがあり得る。
【0059】
ポリマーBの調製に用いられるモノマー成分は、モノマーS1に加えて、モノマーS1と共重合可能な(メタ)アクリル系モノマーを含む。一種または二種以上の(メタ)アクリル系モノマーとモノマーS1とを共重合させることにより、粘着剤層内におけるポリマーBの移動性を好適に調節し得る。モノマーS1と(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させることは、ポリマーBとポリマーA(例えば、アクリル系ポリマー)との相溶性の改善にも役立ち得る。
【0060】
ここに開示される技術におけるポリマーBにおいて、上記モノマー成分に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの組成は、該(メタ)アクリル系モノマーの組成に基づくガラス転移温度T
m1が50℃以上100℃以下となるように設定することが好ましい。T
m1が50℃以上であるポリマーBによると、該ポリマーBを含む粘着シートにおいて、N
50の上昇が抑制される傾向にある。これは、T
m1が50℃以上であるポリマーBによると、室温から50℃程度までの温度上昇に伴うポリオルガノシロキサン構造部分の運動性や移動性の向上が、ポリマーBに含まれる(メタ)アクリル系モノマー由来のモノマー単位によって効果的に抑制され、上記ポリオルガノシロキサン構造部分の存在に起因する低粘着性をよりよく維持し得るためと考えられる。T
m1が50℃より低くなると、N
50の上昇を抑制する効果が減少する。また、T
m1が100℃より高くなると、加熱後粘着力(N
80)が低下する傾向にある。T
m1が50℃以上100℃以下であるポリマーBによると、N
50に対してN
80を大きく上昇させることができる。したがって、T
m1が上記範囲にある組成のポリマーBは、N
80/N
50≧5を満たす粘着シートの実現に適している。
【0061】
いくつかの態様において、ガラス転移温度T
m1は、例えば53℃以上であってよく、56℃以上でもよく、59℃以上でもよく、62℃以上でもよく、65℃以上でもよく、68℃以上または70℃以上でもよい。よりT
m1が高いポリマーBによると、N
50の上昇を抑制する効果はより大きくなる傾向にある。また、50℃より高い温度域への加熱による粘着力の上昇を容易化する観点から、いくつかの態様において、T
m1は、例えば100℃以下であってよく、90℃以下でもよく、85℃以下でもよく、80℃以下または80℃未満でもよい。
【0062】
ここで、上記(メタ)アクリル系モノマーの組成に基づくガラス転移温度T
m1とは、ポリマーBの調製に用いられるモノマー成分のうち(メタ)アクリル系モノマーのみの組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。T
m1は、ポリマーBの調製に用いられるモノマー成分のうち(メタ)アクリル系モノマーのみを対象として、上述したFoxの式を適用し、各(メタ)アクリル系モノマーのホモポリマーのガラス転移温度と、該(メタ)アクリル系モノマーの合計量に占める各(メタ)アクリル系モノマー重量分率とから算出することができる。T
m1を適切に設定することによる効果を発揮しやすくする観点から、ポリマーBを調製するための全モノマー成分に占めるモノマーS1と(メタ)アクリル系モノマーとの合計量は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、実質的に100重量%でもよい。
【0063】
ポリマーBのガラス転移温度T
Bは、特に限定されず、ここに開示される粘着シートにおいて好ましい特性が得られるように選択することができる。ポリマーBのT
Bは、例えば50℃未満であってよく、30℃以下でもよく、20℃以下でもよく、15℃以下でもよく、10℃以下でもよい。ポリマーBのT
Bが低くなると、該ポリマーBの移動性が向上し、50℃より高い温度域での加熱によって粘着力を上昇させやすくなる傾向にある。また、いくつかの態様において、ポリマーBのT
Bは、例えば−40℃以上であってよく、−30℃以上でもよく、−20℃以上でもよく、−10℃以上でもよい。ポリマーBのT
Bが高くなると、N
50を抑制しやすくする傾向にある。
【0064】
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、ポリマーBは、ホモポリマーのガラス転移温度が170℃より高いモノマーの共重合割合が30重量%以下であることが好ましい。ここで、本明細書においてモノマーの共重合割合がX重量%以下であるとは、特記しない場合、該モノマーの共重合割合が0重量%である態様、すなわち該モノマーが実質的に共重合されていない態様を含む概念である。また、実質的に共重合されていないとは、少なくとも意図的には上記モノマーが共重合されていないことをいう。ホモポリマーのガラス転移温度が170℃より高いモノマーの共重合割合が高いと、ポリマーBの移動性が不足しがちとなって、50℃より高い温度域への加熱による粘着力の上昇が困難となることがあり得る。ホモポリマーのガラス転移温度が170℃より高いモノマーの共重合割合を30重量%未満とすることにより、N
80の向上およびN
50/N
80の向上の少なくとも一方の効果が実現され得る。
【0065】
いくつかの態様において、ポリマーBを調製するためのモノマー成分の組成は、T
m1がT
Bより高くなるように、すなわちT
m1−T
Bが0℃より大きくなるように設定することができる。このような組成によると、上記モノマー成分に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの組成によってポリマーBの移動性を調節する効果が好適に発揮されやすい。T
m1−T
Bは、例えば40℃〜100℃程度であってよく、50℃〜90℃程度でもよく、65℃〜85℃程度でもよい。
【0066】
粘着剤層内におけるポリマーBの移動性を制御しやすくする観点から、いくつかの態様において、ポリマーBを調製するためのモノマー成分の組成は、ポリマーAのガラス転移温度T
Aとの関係で、T
m1がT
Aより20℃以上高くなるように、すなわちT
m1−T
Aが20℃以上となるように設定することができる。いくつかの態様において、T
m1−T
Aは、例えば50℃〜130℃であってよく、60℃〜120℃程度または70℃〜120℃程度でもよい。
【0067】
ポリマーBを調製するためのモノマー成分に使用し得る(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。例えば、ポリマーAがアクリル系ポリマーである場合に用いられ得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして上記で例示したモノマーの一種または二種以上を、ポリマーBの共重合成分として用いることができる。いくつかの態様において、ポリマーBは、(メタ)アクリル酸C
4−12アルキルエステル(好ましくは(メタ)アクリル酸C
4−10アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸C
6−10アルキルエステル)の少なくとも一種をモノマー単位として含有し得る。他のいくつかの態様において、ポリマーBは、メタクリル酸C
1−18アルキルエステル(好ましくはメタクリル酸C
1−14アルキルエステル、例えばメタクリル酸C
1−10アルキルエステル)の少なくとも一種をモノマー単位として含有し得る。ポリマーBを構成するモノマー単位は、例えば、MMA、BMAおよび2EHMAから選択される一種または二種以上を含み得る。
【0068】
上記(メタ)アクリル系モノマーの他の例として、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等を用いることができる。いくつかの態様において、ポリマーBは、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートから選択される少なくとも一種をモノマー単位として含有し得る。
【0069】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび上記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、ポリマーBを調製するための全モノマー成分に対して、例えば10重量%以上95重量%以下であってよく、20重量%以上95重量%以下であってもよく、30重量%以上90重量%以下であってもよく、40重量%以上90重量%以下であってもよく、50重量%以上85重量%以下であってもよい。50℃より高い温度への加熱による粘着力の上昇容易性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用が有利となり得る。いくつかの態様において、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、ポリマーBを調製するためのモノマー成分に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの合計量の50重量%未満であってよく、30重量%未満でもよく、15重量%未満でもよく、10重量%未満でもよく、5重量%未満でもよい。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを使用しなくてもよい。
【0070】
いくつかの態様において、ポリマーBを調製するためのモノマー成分は、少なくともMMAを含むことが好ましい。MMAを共重合させることは、T
m1をここに開示される好ましい範囲に調節するための有用な手段となり得る。また、MMAが共重合されたポリマーBによると、N
80/N
50の大きな粘着シートが得られやすい。ポリマーBを調製するためのモノマー成分に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの合計量に占めるMMAの割合は、例えば5重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、30重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。いくつかの態様において、上記(メタ)アクリル系モノマーの合計量に占めるMMAの割合は、例えば50重量%超であってよく、55重量%超でもよく、60重量%超でもよく、65重量%超でもよく、70重量%超でもよい。また、上記(メタ)アクリル系モノマーの合計量に占めるMMAの割合は、T
m1が100℃以下になる範囲であればよく、通常は95重量%以下が適当であり、90重量%以下でもよく、85重量%以下でもよい。
【0071】
ポリマーBを構成するモノマー単位としてモノマーS1とともに含まれ得るモノマーの他の例として、ポリマーAがアクリル系ポリマーである場合に用いられ得るモノマーとして上記で例示したカルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイミド類、イタコンイミド類、(メタ)アクリル酸アミノアルキル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、オレフィン類、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、複素環含有(メタ)アクリレート、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0072】
ポリマーBを構成するモノマー単位としてモノマーS1とともに含まれ得るモノマーのさらに他の例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート;ポリオキシアルキレン骨格を有するモノマー、例えばポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレン鎖の一方の末端に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の重合性官能基を有し、他方の末端にエーテル構造(アルキルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル等)を有する重合性ポリオキシアルキレンエーテル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル等の多価(メタ)アクリレート:塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル等のハロゲン化ビニル化合物;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチル等のアジリジン基含有モノマー;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物等の水酸基含有ビニルモノマー;フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニルモノマー;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニル等の反応性ハロゲン含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素含有ビニルモノマー;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類;等を挙げることができる。これらは、一種を単独であるいは組み合わせてモノマーS1と共重合させることができる。
【0073】
ポリマーBのMwは特に限定されない。ポリマーBのMwは、例えば1000以上であってよく、5000以上でもよい。ポリマーBのMwが低すぎると、粘着力の上昇が不十分になることがあり得る。いくつかの好ましい態様において、ポリマーBのMwは、例えば10000以上であってよく、12000以上でもよく、15000以上でもよく、17000以上でもよく、20000以上でもよい。また、ポリマーBのMwは、例えば100000以下であってよく、70000以下でもよい。ポリマーBのMwが高すぎると、初期粘着力が十分に抑制されないことがあり得る。いくつかの好ましい態様において、ポリマーBのMwは、例えば50000以下であってよく、50000未満でもよく、40000未満でもよく、35000未満でもよく、30000以下でもよく、28000以下でもよく、25000以下でもよい。ポリマーBのMwが上述したいずれかの上限値および下限値の範囲内であると、粘着剤層内における相溶性や移動性を適度な範囲に調節しやすく、貼付け初期の良好なリワーク性と粘着力上昇後の強粘着性とを高レベルで両立する粘着シートを実現しやすくなる。
【0074】
ポリマーBは、例えば、上述したモノマーを、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の公知の手法により重合させることで作製することができる。
【0075】
ポリマーBの分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。使用する連鎖移動剤の例としては、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−チオグリセロール等のメルカプト基を有する化合物;チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル等のチオグリコール酸エステル類;α−メチルスチレンダイマー;等が挙げられる。
【0076】
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限されないが、通常、モノマー100重量部に対して、連鎖移動剤を0.05重量部〜20重量部、好ましくは、0.1重量部〜15重量部、さらに好ましくは0.2重量部〜10重量部含有する。このように連鎖移動剤の添加量を調整することで、好適な分子量のポリマーBを得ることができる。なお、連鎖移動剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
特に限定するものではないが、ポリマーBの使用量は、ポリマーAの使用量100重量部に対して、例えば0.1重量部以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.3重量部以上としてもよく、0.4重量部以上としてもよく、0.5重量部以上としてもよい。リワーク性向上等の観点から、いくつかの態様において、ポリマーA100重量部に対するポリマーBの使用量は、1重量部以上としてもよく、2重量部以上としてもよく、3重量部以上としてもよい。また、ポリマーA100重量部に対するポリマーBの使用量は、例えば75重量部以下であってよく、60重量部以下でもよく、50重量部以下でもよい。粘着剤層の凝集力が過度に低下することを避ける観点から、いくつかの態様において、ポリマーA100重量部に対するポリマーBの使用量は、例えば40重量部以下とすることができ、35重量部以下、30重量部以下または25重量部以下としてもよい。より高い加熱後粘着力を得る観点から、いくつかの態様において、上記ポリマーBの使用量を20重量部以下としてもよく、17重量部以下としてもよく、15重量部以下としてもよく、10重量部以下としてもよい。ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、ポリマーA100重量部に対するポリマーBの使用量は、例えば10重量部未満であってよく、8重量部以下でもよく、5重量部以下または5重量部未満でもよく、4重量部以下でもよく、3重量部以下でもよい。
【0078】
粘着剤層は、ここに開示される粘着シートの性能を大きく損なわない範囲で、ポリマーAおよびポリマーB以外のポリマー(任意ポリマー)を必要に応じて含有し得る。そのような任意ポリマーの使用量は、通常、粘着剤層に含まれるポリマー成分全体の20重量%以下とすることが適当であり、15重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。いくつかの態様において、上記任意ポリマーの使用量は、上記ポリマー成分全体の5重量%以下であってよく、3重量%以下でもよく、1重量%以下でもよい。ポリマーAおよびポリマーB以外のポリマーを実質的に含有しない粘着剤層であってもよい。
【0079】
(架橋剤)
粘着剤層には、凝集力の調整等の目的で、必要に応じて架橋剤が用いられ得る。架橋剤としては、粘着剤の分野において公知の架橋剤を使用することができ、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。特に、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤を好適に使用することができる。架橋剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
具体的には、イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニル(メタ)ンジイソシアネート、水添ジフェニル(メタ)ンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニル(メタ)ントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、および、これらとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体を挙げることができる。あるいは、1分子中に少なくとも1つ以上のイソシアネート基と、1つ以上の不飽和結合を有する化合物、具体的には、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどもイソシアネート系架橋剤として使用することができる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンおよび1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
架橋剤を使用する場合における使用量は、特に限定されず、例えばポリマーA100重量部に対して0重量部を超える量とすることができる。また、架橋剤の使用量は、ポリマーA100重量部に対して、例えば0.01重量部以上とすることができ、0.05重量部以上とすることが好ましい。架橋剤の使用量の増大により、貼付け初期の粘着力が抑制され、リワーク性が向上する傾向にある。いくつかの態様において、ポリマーA100重量部に対する架橋剤の使用量は、0.1重量部以上であってもよく、0.5重量部以上であってもよく、1重量部以上であってもよい。一方、過度な凝集力向上によるタックの低下を避ける観点から、ポリマーA100重量部に対する架橋剤の使用量は、通常、15重量部以下とすることが適当であり、10重量部以下としてもよく、5重量部以下としてもよい。架橋剤の使用量が多過ぎないことは、N
80/N
50の高い粘着シートを実現しやすくする観点からも有利となり得る。
【0084】
ここに開示される技術は、架橋剤として少なくともイソシアネート系架橋剤を用いる態様で好ましく実施され得る。貼付け初期の良好なリワーク性と粘着力上昇後の強粘着性とを兼ね備えた粘着シートを実現しやすくする観点から、いくつかの態様において、ポリマーA100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば0.1重量部以上5重量部以下とすることができ、0.3重量部以上4重量部以下としてもよく、0.5重量部以上3重量部以下としてもよい。
【0085】
特に限定するものではないが、粘着剤層がモノマー単位として水酸基含有モノマーを含む構成においてイソシアネート系架橋剤を用いる場合、イソシアネート系架橋剤の使用量W
NCOに対する水酸基含有モノマーの使用量W
OHは、重量基準で、W
OH/W
NCOが2以上となる量とすることができる。このようにイソシアネート系架橋剤に対する水酸基含有モノマーの使用量を多くすることにより、貼付け初期の粘着力に対して加熱後粘着力を大きく上昇させるために適した架橋構造が形成され得る。いくつかの態様において、W
OH/W
NCOは、3以上であってよく、5以上であってもよく、10以上であってもよく、20以上であってもよく、30以上であってもよく、50以上であってもよい。W
OH/W
NCOの上限は特に制限されない。W
OH/W
NCOは、例えば500以下であってよく、200以下であってもよく、100以下であってもよい。
【0086】
上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、例えばスズ系触媒(特にジラウリン酸ジオクチルスズ)を好ましく用いることができる。架橋触媒の使用量は特に制限されないが、例えば、ポリマーA100重量部に対して凡そ0.0001重量部〜1重量部とすることができる。
【0087】
粘着剤層には、必要に応じて多官能性モノマーが用いられ得る。多官能性モノマーは、上述のような架橋剤に代えて、あるいは該架橋剤と組み合わせて用いられることで、凝集力の調整等の目的のために役立ち得る。例えば、光硬化型の粘着剤組成物から形成される粘着剤層において、多官能性モノマーが好ましく用いられ得る。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、通常は、ポリマーA100重量部に対して0.01重量部〜3.0重量部程度の範囲とすることが適当である。いくつかの態様において、多官能性モノマーの使用量は、ポリマーA100重量部に対して、例えば0.02重量部以上であってもよく、0.03重量部以上であってもよい。多官能性モノマーの使用量の増大により、貼付け初期の粘着力が抑制され、リワーク性が向上する傾向にある。一方、過度な凝集力向上によるタックの低下を避ける観点から、多官能性モノマーの使用量は、ポリマーA100重量部に対して2.0重量部以下であってよく、1.0重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよい。多官能性モノマーの使用量が多過ぎないことは、N
80/N
50の高い粘着シートを実現しやすくする観点からも有利となり得る。
【0089】
(粘着付与樹脂)
粘着剤層には、必要に応じて粘着付与樹脂を含ませることができる。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水添化などにより変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンや、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。
上記ロジン誘導体としては、例えば、
ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;
未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水添ロジンエステル、部分水添ロジンエステルなど)などのロジンエステル系樹脂;
未変性ロジンや変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;
ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;
未変性ロジン、変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;
未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩などが挙げられる。
【0091】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0092】
フェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、上記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、上記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが挙げられる。
【0093】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0094】
好ましく使用され得る重合ロジンエステルの市販品としては、荒川化学工業株式会社製の商品名「ペンセルD−125」、「ペンセルD−135」、「ペンセルD−160」、「ペンセルKK」、「ペンセルC」等が例示されるが、これらに限定されない。
【0095】
好ましく使用され得るテルペンフェノール系樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル株式会社製の商品名「YSポリスターS−145」、「YSポリスターG−125」、「YSポリスターN125」、「YSポリスターU−115」、荒川化学工業株式会社製の商品名「タマノル803L」、「タマノル901」、住友ベークライト株式会社製の商品名「スミライトレジンPR−12603」等が例示されるが、これらに限定されない。
【0096】
粘着付与樹脂の含有量は特に限定されず、目的や用途に応じて適切な粘着性能が発揮されるように設定することができる。ポリマーA100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量(二種以上の粘着付与樹脂を含む場合には、それらの合計量)は、例えば5〜500重量部程度とすることができる。
【0097】
粘着付与樹脂としては、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上、例えば凡そ120℃以上)であるものを好ましく使用し得る。上述した下限値以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂によると、N
80/N
50≧5を満たす粘着シートが得られやすい。軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には180℃以下)であり得る。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0098】
その他、ここに開示される技術における粘着剤層は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、レベリング剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料等)、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等の、粘着剤に使用され得る公知の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
【0099】
ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化層であり得る。すなわち、該粘着剤層は、水分散型、溶剤型、光硬化型、ホットメルト型等の粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。二種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合、冷却等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階にわたって行うことができる。モノマー成分の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる。すなわち、部分重合物をさらなる共重合反応に供して完全重合物を形成する。例えば、光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。例えば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に光硬化を行うとよい。完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。
【0100】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。
【0101】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば1μm以上とすることができる。いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば3μm以上であってよく、5μm以上でもよく、8μm以上でもよく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよく、20μm以上または20μm超でもよい。粘着剤層の厚さの増大により、加熱後粘着力が上昇する傾向にある。また、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば300μm以下であってよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、40μm以下でもよい。粘着剤層の厚さが大きすぎないことは、粘着シートの薄型化や粘着剤層の凝集破壊防止等の観点から有利となり得る。なお、基材の第一面および第二面に第一粘着剤層および第二粘着剤層を有する粘着シートの場合、上述した粘着剤層の厚さは、少なくとも第一粘着剤層の厚さに適用され得る。第二粘着剤層の厚さも同様の範囲から選択され得る。また、基材レスの粘着シートの場合、該粘着シートの厚さは粘着剤層の厚さと一致する。
【0102】
特に限定するものではないが、粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、通常、20.0%〜99.0%の範囲にあることが適当であり、30.0%〜90.0%の範囲にあることが望ましい。ゲル分率を上記範囲とすることにより、貼付け初期のリワーク性と粘着力上昇後の強粘着性とを高レベルで両立する粘着シートを実現しやすくなる。ゲル分率は、以下の方法で測定される。
【0103】
[ゲル分率の測定]
約0.1gの粘着剤サンプル(重量Wg
1)を平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(重量Wg
2)で巾着状に包み、口をタコ糸(重量Wg
3)で縛る。上記多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜としては、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(日東電工株式会社、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用する。この包みを酢酸エチル50mLに浸し、室温(典型的には23℃)で7日間保持して粘着剤中のゾル分(酢酸エチル可溶分)を上記膜外に溶出させる。次いで、上記包みを取り出し、外表面に付着している酢酸エチルを拭き取った後、該包みを130℃で2時間乾燥させ、該包みの重量(Wg
4)を測定する。各値を以下の式に代入することにより、粘着剤のゲル分率G
Cを算出することができる。
ゲル分率G
C(%)=[(Wg
4−Wg
2−Wg
3)/Wg
1]×100
【0104】
<支持基材>
いくつかの態様に係る粘着シートは、支持基材の片面または両面に粘着剤層を備える基材付き粘着シートの形態であり得る。支持基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチック基材等が挙げられる。
【0105】
ここに開示される粘着シートの基材としては、各種のフィルム基材を好ましく用いることができる。上記フィルム基材は、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質の基材であってもよく、非多孔質の基材であってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造の基材であってもよい。いくつかの態様において、上記フィルム基材としては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)ものが好ましく用いられ得る。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の多層構造(例えば、三層構造)であってもよい。
【0106】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂を用いることができる。上記樹脂フィルムは、このような樹脂の一種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、二種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。
【0107】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、ポリエステル系樹脂、PPS樹脂およびポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、PPS樹脂とはPPSを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリオレフィン系樹脂とはポリオレフィンを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。
【0108】
ポリエステル系樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。
【0109】
上記ポリエステルを構成するジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;これらの誘導体(例えば、テレフタル酸等の上記ジカルボン酸の低級アルキルエステル等);等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。強度等の観点から芳香族ジカルボン酸が好ましい。なかでも好ましいジカルボン酸として、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。例えば、上記ポリエステルを構成するジカルボン酸のうち50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には95重量%以上)が、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはこれらの併用であることが好ましい。上記ジカルボン酸は、実質的にテレフタル酸のみ、実質的に2,6−ナフタレンジカルボン酸のみ、または実質的にテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸のみから構成されていてもよい。
【0110】
上記ポリエステルを構成するジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等が挙げられる。これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、透明性等の観点から脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。上記ポリエステルを構成するジオールに占める脂肪族ジオール(好ましくはエチレングリコール)の割合は、50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には95重量%以上)であることが好ましい。上記ジオールは、実質的にエチレングリコールのみから構成されていてもよい。
【0111】
ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0112】
ポリオレフィン樹脂としては、一種のポリオレフィンを単独で、または二種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα−オレフィンのホモポリマー、二種以上のα−オレフィンの共重合体、一種または二種以上のα−オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。ポリオレフィン樹脂フィルムの例としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、二種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム等が挙げられる。
【0113】
ここに開示される粘着シートのベースフィルムとして好ましく利用し得る樹脂フィルムの具体例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPPフィルムおよびOPPフィルムが挙げられる。強度や寸法安定性の観点から好ましいベースフィルムの例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルムおよびPEEKフィルムが挙げられる。基材の入手容易性等の観点からPETフィルムおよびPPSフィルムが特に好ましく、なかでもPETフィルムが好ましい。
【0114】
樹脂フィルムには、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
【0115】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0116】
上記基材は、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材に所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。
【0117】
基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば1000μm以下であり得る。いくつかの態様において、粘着シートの取扱い性や加工性の観点から、基材の厚さは、例えば500μm以下であってよく、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。粘着シートが適用される製品の小型化や軽量化の観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば160μm以下であってよく、130μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、粘着シートの柔軟性や被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、5μm以上でもよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよく、25μm以上または25μm超でもよい。いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば30μm以上であってよく、35μm以上でもよく、55μm以上でもよく、75μm以上でもよく、120μm以上でもよい。例えば、被着体の補強、支持、衝撃緩和等の目的に使用され得る粘着シートにおいて、厚さ30μm以上の基材を好ましく採用し得る。
【0118】
基材の第一面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布による下塗り層の形成等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。例えば、樹脂フィルムをベースフィルムとして含む基材を備えた粘着シートにおいて、かかる投錨性向上処理が施された基材を好ましく採用し得る。上記表面処理は、単独でまたは組み合わせて適用することができる。下塗り層の形成に用いるプライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm〜1μm程度が適当であり、0.1μm〜1μm程度が好ましい。必要に応じて基材の第一面に施され得る他の処理として、帯電防止層形成処理、着色層形成処理、印刷処理等が挙げられる。
【0119】
ここに開示される粘着シートが基材の第一面にのみ粘着剤層を有する片面粘着シートの形態である場合、基材の第二面には、必要に応じて、剥離処理や帯電防止処理等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、基材の背面を剥離処理剤で表面処理することにより(典型的には、剥離処理剤による剥離層を設けることにより)、ロール状に巻回された形態の粘着シートの巻戻し力を軽くすることができる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等を用いることができる。また、印字性の向上、光反射性の低減、重ね貼り性向上等の目的で、基材の第二面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理等の処理が施されていてもよい。また、両面粘着シートの場合、基材の第二面には、必要に応じて、基材の第一面に施され得る表面処理として上記で例示したものと同様の表面処理が施されていてもよい。なお、基材の第一面に施される表面処理と第二面に施される表面処理とは、同一であってもよく異なってもよい。
【0120】
<粘着シート>
(粘着シートの特性等)
ここに開示される粘着シートは、粘着力N
50に対する粘着力N
80(加熱後粘着力)の比、すなわちN
80/N
50が5以上であるので、貼付け初期に50℃程度の温度が加わり得る使用態様においても良好なリワーク性を示し、かつその後の加熱等により粘着力を大きく上昇させることができる。より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、N
80/N
50は、例えば7以上であってよく、10以上でもよく、15以上でもよく、20以上でもよい。N
80/N
50の上限は特に制限されないが、粘着シートの製造容易性や経済性の観点から、例えば80以下であってよく、60以下でもよく、50以下でもよく、40以下でもよい。ここに開示される粘着シートは、N
80/N
50が、例えば5以上60以下、7以上50以下、または10以上40以下である態様で好適に実施され得る。
【0121】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、粘着力N
23[N/25mm]に対する粘着力N
50[N/25mm]の比、すなわちN
50/N
23は、例えば10未満であってよく、好ましくは7未満であり、5未満または4未満であってもよい。N
50/N
23が小さい粘着シートによると、貼付け初期に50℃程度の温度が加わり得る使用態様においても良好なリワーク性が発揮される傾向にある。N
50/N
23の下限は特に限定されないが、通常は1.0以上、典型的には1.0超であり、例えば1.2以上であってもよい。
【0122】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、粘着力N
23[N/25mm]に対する粘着力N
80[N/25mm]の比、すなわちN
80/N
23は、例えば7以上であってよく、10以上でもよく、15以上でもよい。N
80/N
23が大きい粘着シートによると、貼付け初期の低粘着性および粘着力上昇後の強粘着性がより高レベルで発揮され得る。ここに開示される粘着シートは、N
80/N
23が例えば20以上、30以上または40以上である態様でも好適に実施され得る。N
80/N
23の上限は特に制限されないが、粘着シートの製造容易性や経済性の観点から、例えば100以下であってよく、80以下でもよく、60以下でもよく、50以下でもよい。
【0123】
ここで、粘着力N
23[N/25mm]は、被着体としてのステンレス鋼(SUS)板に圧着して23℃、50%RHの環境で30分間放置した後、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で180°引きはがし粘着力を測定することにより把握される。粘着力N
50[N/25mm]は、被着体としてのステンレス鋼(SUS)板に圧着して50℃の環境に30分間保持し、次いで23℃、50%RHの環境に30分間放置した後に、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で180°引きはがし粘着力を測定することにより把握される。粘着力N
80[N/25mm]は、被着体としてのSUS板に圧着して80℃で5分間加熱し、次いで23℃、50%RHの環境に30分間放置した後に、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で180°引きはがし粘着力を測定することにより把握される。被着体としては、粘着力N
23,N
50,N
80のいずれの測定においても、SUS304BA板が用いられる。測定にあたっては、必要に応じて、測定対象の粘着シートに適切な裏打ち材(例えば、厚さ25μm程度のPETフィルム)を貼り付けて補強することができる。粘着力N
23,N
50,N
80は、より具体的には、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0124】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートの粘着力N
23は、例えば2.0N/25mm以下であってよく、1.5N/25mm未満でもよく、1.2N/25mm以下でもよく、1.0N/25mm以下でもよく、0.8N/25mm以下でもよい。粘着力N
23が低いことは、リワーク性の観点から好ましい。粘着力N
23の下限は特に制限されず、例えば.0.01N/25mm以上であり得る。被着体への貼付け作業性や、粘着力上昇前における位置ズレ防止等の観点から、粘着力N
23は、通常、0.1N/25mm以上であることが適当である。加熱後粘着力の向上等の観点から、いくつかの態様において、粘着力N
23は、例えば0.2N/25mm以上であってよく、0.3N/25mm以上でもよく、0.4N/25mm以上でもよく、0.5N/25mm以上でもよい。
【0125】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートの粘着力N
50は、例えば7N/25mm以下であってよく、5N/25mm以下でもよく、4N/25mm以下でもよく、3.5N/25mm以下でもよく、3N/25mm以下、2.5N/25mm以下、または2N/25mm以下でもよい。粘着力N
50が低いことは、貼付け初期に50℃程度の温度が加わり得る使用態様においても良好なリワーク性を発揮する観点から好ましい。粘着力N
50の下限は特に制限されず、例えば.0.05N/25mm以上であり得る。粘着力上昇前における位置ズレ防止等の観点から、粘着力N
50は、通常、0.1N/25mm以上であることが適当である。加熱後粘着力の向上等の観点から、いくつかの態様において、粘着力N
50は、例えば0.2N/25mm以上であってよく、0.5N/25mm以上でもよく、0.7N/25mm以上でもよい。
【0126】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートの粘着力N
80(加熱後粘着力)は、例えば5N/25mm以上であってよく、7N/25mm以上でもよく、10N/25mm以上でもよく、13N/25mm以上でもよく、15N/25mm以上でもよく、17N/25mm以上でもよい。加熱後粘着力の上限は特に制限されない。粘着シートの製造容易性や経済性の観点から、いくつかの態様において、加熱後粘着力は、例えば70N/25mm以下であってよく、50N/25mm以下でもよく、40N/25mm以下でもよい。
【0127】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、粘着力N
50[N/25mm]と粘着力N
23[N/25mm]との差、すなわちN
50−N
23は、通常、5N/25mm未満であることが好ましく、例えば4N/25mm未満であってよく、3N/25mm未満でもよく、2.5N/25mm未満でもよく、2N/25mm未満でもよく、1.5N/25mm未満でもよい。N
50−N
23が小さい粘着シートによると、貼付け初期に50℃程度の温度が加わり得る使用態様においても良好なリワーク性が発揮される傾向にある。N
50−N
23の下限は特に限定されないが、通常は0N/25mm以上、典型的には0N/25mm超であり、例えば0.2N/25mm以上であってもよい。
【0128】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートの粘着力N
50[N/25mm]と粘着力N
23[N/25mm]との差に対する粘着力N
80[N/25mm]と粘着力N
50[N/25mm]との差の比、すなわち(N
80−N
50)/(N
50−N
23)は、例えば2以上であってあり得る。(N
80−N
50)/(N
50−N
23)の値がより大きいことは、50℃程度の温度が加わり得る使用態様における貼付け初期の粘着力に対して、加熱後粘着力の上昇の程度がより大きいことを意味する。いくつかの態様において、(N
80−N
50)/(N
50−N
23)は、例えば3以上であってよく、5以上でもよく、7以上でもよく、10以上でもよく、15以上でもよく、20以上でもよい。(N
80−N
50)/(N
50−N
23)の上限は特に限定されず、例えば100以下であり得る。
【0129】
なお、ここに開示される粘着シートの加熱後粘着力は、該粘着シートの一特性を表すものであって、この粘着シートの使用態様を限定するものではない。言い換えると、ここに開示される粘着シートの使用態様は、80℃で5分間の加熱を行う態様に限定されず、例えば室温域(通常は20℃〜30℃、典型的には23℃〜25℃)以上に加熱する処理を特に行わない態様でも使用することができる。かかる使用態様においても長期的に粘着力が上昇し、強固な接合を実現することができる。また、ここに開示される粘着シートは、貼付け後の任意のタイミングで50℃より高い温度で加熱処理を行うことによって粘着力の上昇を促進することができる。かかる加熱処理における加熱温度は、特に限定されず、作業性、経済性、粘着シートの基材や被着体の耐熱性等を考慮して設定することができる。上記加熱温度は、例えば150℃未満であってよく、120℃以下であってもよく、100℃以下でもよく、80℃以下でもよく、70℃以下でもよい。また、上記加熱温度は、例えば55℃以上、60℃以上、または70℃以上とすることができ、80℃以上としてもよく、100℃以上としてもよい。より高い加熱温度によると、より短時間の処理によって粘着力を上昇させ得る。加熱時間は特に限定されず、例えば1時間以下であってよく、30分以下であってもよく、10分以下でもよく、5分以下でもよい。あるいは、粘着シートや被着体に顕著な熱劣化が生じない限度で、より長期間の加熱処理を行ってもよい。なお、加熱処理は、一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。
【0130】
(基材付き粘着シート)
ここに開示される粘着シートが基材付き粘着シートの形態である場合、該粘着シートの厚さは、例えば1000μm以下であってよく、600μm以下であってもよく、350μm以下でもよく、250μm以下でもよい。粘着シートが適用される製品の小型化、軽量化、薄型化等の観点から、いくつかの態様において、粘着シートの厚さは、例えば200μm以下であってよく、175μm以下であってもよく、140μm以下でもよく、120μm以下でもよく、100μm以下(例えば100μm未満)でもよい。また、粘着シートの厚さは、取扱い性等の観点から、例えば5μm以上であってよく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよく、20μm以上でもよく、25μm以上でもよく、30μm以上でもよい。いくつかの態様において、粘着シートの厚さは、例えば50μm以上であってよく、60μm以上でもよく、80μm以上でもよく、100μm以上でもよく、130μm以上でもよい。粘着シートの厚さの上限は特に限定されない。
なお、粘着シートの厚さとは、被着体に貼り付けられる部分の厚さをいう。例えば
図1に示す構成の粘着シート1では、粘着シート1の粘着面21Aから基材10の第二面10Bまでの厚さを指し、剥離ライナー31の厚さは含まない。
【0131】
ここに開示される粘着シートは、例えば、支持基材の厚さTsが粘着剤層の厚さTaより大きい態様、すなわちTs/Taが1より大きい態様で好適に実施され得る。特に限定するものではないが、Ts/Taは、例えば1.1以上であってよく、1.2以上であってもよく、1.5以上であってもよく、1.7以上であってもよい。例えば、被着体の補強、支持、衝撃緩和等の目的に使用され得る粘着シートにおいて、Ts/Taの増大により、粘着シートを薄型化しても良好な効果が発揮されやすくなる傾向にある。いくつかの態様において、Ts/Taは、2以上(例えば2より大)であってよく、3以上でもよく、4以上でもよい。また、Ts/Taは、例えば50以下とすることができ、20以下としてもよい。粘着シートを薄型化しても高い加熱後粘着力を発揮しやすくする観点から、Ts/Taは、例えば10以下であってよく、8以下であってもよい。
【0132】
上記粘着剤層は、支持基材に固着していることが好ましい。上記固着とは、被着体への貼付け後に粘着力が上昇した粘着シートにおいて、該粘着シートの被着体からの剥離時に粘着剤層と支持基材との界面での剥離が生じない程度に、粘着剤層が支持基材に対して十分な投錨性を示すことをいう。粘着剤層が支持基材に固着している基材付き粘着シートによると、被着体と支持基材とを強固に一体化することができる。このことによって、例えば、被着体の補強、支持、衝撃緩和等の機能を効果的に発揮することができる。粘着剤層が基材に固着している粘着シートの一好適例として、被着体への貼付け後、少なくとも5N/25mm、好ましくは10N/25mm以上、より好ましくは15N/25mm以上の粘着力(剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で測定される180°引きはがし粘着力)を発現しつつ上記被着体から剥離される際に、粘着剤層と支持基材との間での剥離(投錨破壊)が生じない粘着シートが挙げられる。加熱後粘着力(N
80)が15N/25mm以上であって、かつ該加熱後粘着力の測定時に投錨破壊が生じない粘着シートは、粘着剤層が基材に固着している粘着シートに該当する一好適例である。
【0133】
ここに開示される粘着シートは、例えば、液状の粘着剤組成物を基材の第一面に接触させることと、該第一面上で上記粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層を形成することと、をこの順に含む方法により好ましく製造され得る。上記粘着剤組成物の硬化は、該粘着剤組成物の乾燥、架橋、重合、冷却等の一または二以上を伴い得る。このように液状の粘着剤組成物を基材の第一面上で硬化させて粘着剤層を形成する方法によると、硬化後の粘着剤層を基材の第一面に貼り合わせることで該第一面上に粘着剤層を配置する方法に比べて、粘着剤層の基材への投錨性を高めることができる。このことを利用して、粘着剤層が基材に固着した粘着シートを好適に製造することができる。
【0134】
いくつかの態様において、基材の第一面に液状の粘着剤組成物を接触させる方法としては、上記粘着剤組成物を基材の第一面に直接塗布する方法を採用することができる。基材の第一面上で硬化させた粘着剤層の第一面(粘着面)を剥離面に当接させることにより、該粘着剤層の第二面が基材の第一面に固着し、かつ該粘着剤層の第一面が剥離面に当接した構成の粘着シートを得ることができる。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。
【0135】
また、例えば、モノマー成分の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた光硬化型の粘着剤組成物の場合、例えば、該粘着剤組成物を剥離面に塗布した後、その塗布された粘着剤組成物に基材の第一面を被せることで未硬化の上記粘着剤組成物に基材の第一面に接触させ、その状態で、基材の第一面と剥離面との間に挟まれた粘着剤組成物に光照射を行って硬化させることで粘着剤層を形成してもよい。
【0136】
なお、上記で例示した方法は、ここに開示される粘着シートの製造方法を限定するものではない。ここに開示される粘着シートの製造にあたっては、基材の第一面に粘着剤層を固着させ得る適宜の方法を、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。そのような方法の例には、上述のように液状の粘着剤組成物を基材の第一面上で硬化させて粘着剤層を形成する方法や、基材の第一面に粘着剤層の投錨性を高める表面処理を施す方法等が挙げられる。例えば、基材の第一面に下塗り層を設ける等の手法により粘着剤層の基材への投錨性を十分に向上させ得る場合には、硬化後の粘着剤層を基材の第一面に貼り合わせる方法で粘着シートを製造してもよい。また、基材の材質の選択や、粘着剤の組成の選択によっても、粘着剤層の基材への投錨性を向上させ得る。また、基材の第一面上に粘着剤層を有する粘着シートに室温より高い温度を適用することにより、該粘着剤層の基材への投錨性を高めることができる。投錨性を高めるために適用する温度は、例えば35℃〜80℃程度であってよく、40℃〜70℃以上程度でもよく、45℃〜60℃程度でもよい。
【0137】
ここに開示される粘着シートが、基材の第一面に設けられた第一粘着剤層と、該基材の第二面に設けられた第二粘着剤層を有する粘着シート(すなわち、両面接着性の基材付き粘着シート)の形態である場合、第一粘着剤層と第二粘着剤層とは、同一の構成であってもよく、異なる構成であっていてもよい。第一粘着剤層と第二粘着剤層との構成が異なる場合、その相違は、例えば、組成の違いや構造(厚さ、表面粗さ、形成範囲、形成パターン等)の違いであり得る。例えば、第二粘着剤層は、ポリマーBを含有しない粘着剤層であってもよい。また、第二粘着剤層の表面(第二粘着面)は、N
80/N
50が5未満であってもよく、2未満でもよく、1.5未満でもよく、1未満でもよい。
【0138】
<剥離ライナー付き粘着シート>
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の表面(粘着面)を剥離ライナーの剥離面に当接させた粘着製品の形態をとり得る。したがって、この明細書により、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、該粘着シートの粘着面に当接する剥離面を有する剥離ライナーと、を含む剥離ライナー付き粘着シート(粘着製品)が提供され得る。
【0139】
剥離ライナーの厚さは、特に限定されないが、通常は5μm〜200μm程度が適当である。剥離ライナーの厚さが上記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合わせ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。いくつかの態様において、剥離ライナーの厚さは、例えば10μm以上であってよく、20μm以上でもよく、30μm以上でもよく、40μm以上でもよい。また、剥離ライナーの厚さは、粘着剤層からの剥離を容易化する観点から、例えば100μm以下であってよく、80μm以下でもよい。剥離ライナーには、必要に応じて、塗布型、練り込み型、蒸着型等の、公知の帯電防止処理が施されていてもよい。
【0140】
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙(ポリエチレン等の樹脂がラミネートされた紙であり得る。)等のライナー基材の表面に剥離層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のような低接着性材料により形成された樹脂フィルムからなる剥離ライナー等を用いることができる。表面平滑性に優れることから、ライナー基材としての樹脂フィルムの表面に剥離層を有する剥離ライナーや、低接着性材料により形成された樹脂フィルムからなる剥離ライナーを好ましく採用し得る。樹脂フィルムとしては、粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエステルフィルム(PETフィルム、PBTフィルム等)、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。上記剥離層の形成には、例えば、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等の、公知の剥離処理剤を用いることができる。シリコーン系剥離処理剤の使用が特に好ましい。
【0141】
剥離層の厚さは特に制限されないが、通常は0.01μm〜1μm程度が適当であり、0.1μm〜1μm程度が好ましい。剥離層の形成方法は特に限定されず、使用する剥離処理剤の種類等に応じた公知の方法を適宜採用することができる。
【0142】
<用途>
この明細書により提供される粘着シートは、例えば、被着体に貼り合わせた後、室温から50℃程度までの温度域(例えば20℃〜50℃)においてしばらくの間は粘着力が低く抑えられており、この間は良好なリワーク性を発揮することができるので、歩留りの抑制や該粘着シートを含む製品の高品質化に貢献し得る。そして、上記粘着シートは、エージング(50℃より高い温度への加熱、経時、これらの組合せ等であり得る。)により粘着力を大きく上昇させることができる。例えば、所望のタイミングで加熱することにより、粘着シートを被着体に強固に接着させることができる。このような特徴を活かして、ここに開示される粘着シートは、種々の分野において、各種製品に含まれる部材の固定、接合、成形、装飾、保護、補強、支持、衝撃緩和等の目的で好ましく用いられ得る。
【0143】
ここに開示される粘着シートは、第一面および第二面を有するフィルム状基材の少なくとも第一面に粘着剤層が設けられた基材付き粘着シートの形態で、被着体に貼り付けられて該被着体を補強する補強フィルムとして好ましく用いられ得る。かかる補強フィルムにおいて、上記フィルム基材としては、樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく使用し得る。また、補強性能を高める観点から、上記粘着剤層はフィルム状基材の第一面に固着していることが好ましい。
例えば、光学製品に用いられる光学部材や、電子製品に用いられる電子部材では、高度な集積化、小型軽量化、薄型化が進行しており、線膨張係数や厚みの異なる複数の薄い光学部材/電子部材が積層され得る。このような部材に上記のような補強フィルムを貼り付けることにより、上記光学部材/電子部材に適度な剛性を付与することができる。これにより、製造プロセスおよび/または製造後の製品において、上記線膨張係数や厚みの異なる複数の部材間に発生し得る応力に起因するカールや湾曲を抑制することができる。
また、光学製品/電子製品の製造プロセスにおいて、上述のように薄い光学部材/電子部材に切断加工等の形状加工処理を行う局面において、該部材に補強フィルムを貼り付けて処理することにより、加工に伴う光学部材/電子部材への局所的な応力集中を緩和し、クラック、割れ、積層部材の剥がれなどのリスクを低減することができる。光学部材/電子部材に補強部材を貼り付けて取り扱うことは、該部材の搬送、積層、回転等の際における局所的な応力集中の緩和や、該部材の自重による折れや湾曲の抑制等にも役立ち得る。
さらに、上記補強フィルムを含む光学製品や電子製品等のデバイスは、市場において消費者に使用される段階において、該デバイスが落下した場合、重量物の下に置かれた場合、飛来物が衝突した場合等、非意図的な応力が付与された場合にも、該デバイスに補強フィルムが含まれていることにより、デバイスにかかるストレスを緩和することができる。したがって、上記デバイスに補強フィルムが含まれることにより、該デバイスの耐久性を向上させ得る。
【0144】
その他、ここに開示される粘着シートは、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)を構成する部材に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。ここで「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。また、ここでいう携帯機器の例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯電子機器の他、機械式の腕時計や懐中時計、懐中電灯、手鏡等が含まれ得る。上記携帯電子機器を構成する部材の例には、液晶ディスプレイ等の薄層ディスプイやフィルム型ディスプレイ等のような画像表示装置に用いられる光学フィルムや表示パネル等が含まれ得る。ここに開示される粘着シートは、自動車、家電製品等における各種部材に貼り付けられる態様でも好ましく用いられ得る。
【0145】
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) 粘着剤層を含む粘着シートであって、
上記粘着剤層は、ポリマーAと、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であるポリマーBと、を含み、
上記ポリマーBは、上記(メタ)アクリル系モノマーの組成に基づくガラス転移温度T
m1が50℃以上100℃以下であり、
ステンレス鋼板に貼り合わせた後に80℃で5分間加熱した後の粘着力N
80が、ステンレス鋼板に貼り合わせた後に50℃に30分間保持した後の粘着力N
50の5倍以上である、粘着シート。
(2) 上記粘着力N
50と、ステンレス鋼板に貼り合わせた後に23℃に30分間保持した後の粘着力N
23との関係が、次式:
(N
50/N
23)<10;
を満たす、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記粘着力N
80が、ステンレス鋼板に貼り合わせた後に23℃に30分間放置した後の粘着力N
23の10倍以上である、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
(4) 上記粘着力N
23[N/25mm]、粘着力N
50[N/25mm]および粘着力N
80[N/25mm]が、以下の関係式:
(N
80−N
50)/(N
50−N
23)≧2;
を満たす、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シート。
(5) 上記粘着力N
23は2.0N/25mm以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート。
(6) 上記粘着力N
50は4N/25mm以下である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着シート。
(7) 上記粘着力N
80は15N/25mm以上である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート。
【0146】
(8) 上記ポリマーAのガラス転移温度T
Aが−63℃以上0℃未満である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着シート。
(9) 上記ポリマーBのガラス転移温度T
Bが−10℃以上10℃以下である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着シート。
(10) 上記ポリマーBは、ホモポリマーのガラス転移温度が170℃より高いモノマーの共重合割合が30重量%以下である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の粘着シート。
(11) 上記粘着剤層は、上記ポリマーA100重量部に対して0重量部より多く10重量部以下の架橋剤を含む、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記ポリマーBは、重量平均分子量が10000以上50000以下である、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の粘着シート。
(13) 上記粘着剤層における上記ポリマーBの含有量は、上記ポリマーA100重量部に対して0.05重量部以上20重量部以下である、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の粘着シート。
【0147】
(14) 上記ポリマーAはアクリル系ポリマーである、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) 上記アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分は、水酸基含有モノマーを含む、上記(14)に記載の粘着シート。
(16) 上記アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分は、N−ビニル環状アミドおよび水酸基含有モノマーを含む、上記(14)に記載の粘着シート。
(17) 上記粘着剤層はイソシアネート系架橋剤を含む、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 上記ポリマーBを調製するためのモノマー成分は、メチルメタクリレート(MMA)を含む、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の粘着シート。
(19) 上記モノマー成分に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの合計量に占めるMMAの割合が55重量%以上95重量%以下である、上記(18)に記載の粘着シート。
(20) 上記粘着剤層の厚さが3μm以上100μm以下(例えば、20μm以上50μm以下)である、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の粘着シート。
【0148】
(21) 第一面および第二面を有する支持基材を備え、該支持基材の少なくとも上記第一面に上記粘着剤層が積層されている、上記(1)〜(20)のいずれかに記載の粘着シート。
(22) 上記支持基材の厚さは30μm以上である、上記(21)に記載の粘着シート。
(23) 上記支持基材の厚さは、上記粘着剤層の厚さの1.1倍以上10倍以下である、上記(21)または(22)に記載の粘着シート。
(24) 上記支持基材は、樹脂フィルムをベースフィルムとして含む、上記(21)〜(23)のいずれかに記載の粘着シート。
(25) 上記ベースフィルムは、厚さ35μm以上(例えば、厚さ35μm以上500μm以下)のポリエステルフィルムである、上記(24)に記載の粘着シート。
(26) 上記粘着剤層は上記支持基材の上記第一面に固着している、上記(21)〜(25)のいずれかに記載の粘着シート。
(27) 被着体に貼り付けられて該被着体の補強に用いられる、上記(21)〜(26)のいずれかに記載の粘着シート。
(28) 上記粘着剤層の表面(粘着面)は、水接触角100度以上の剥離性表面に当接している、上記(1)〜(27)のいずれかに記載の粘着シート。
【0149】
(29) 上記(1)〜(28)のいずれかに記載の粘着シートと、上記粘着シートの粘着面に当接する剥離性表面を有する剥離ライナーと、を含み、
上記剥離性表面の水接触角が100度以上である、剥離ライナー付き粘着シート。
(30) 上記剥離性表面は、シリコーン系剥離処理剤により形成された剥離層の表面である、上記(29)に記載の剥離ライナー付き粘着シート。
【実施例】
【0150】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0151】
(ポリマーA1の調製)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、2EHA60部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)15部、メチルメタクリレート(MMA)10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)15部、および重合溶媒として酢酸エチル200部を仕込み、60℃にて窒素雰囲気下で2時間撹拌した後、熱重合開始剤としてAIBN0.2部を投入し、60℃で6時間反応を行って、ポリマーA1の溶液を得た。このポリマーA1のMwは110万であった。
【0152】
(ポリマーB1の調製)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、トルエン100部、MMA40部、n−ブチルメタクリレート(BMA)20部、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)20部、官能基当量が900g/molのポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー(商品名:X−22−174ASX、信越化学工業株式会社製)8.7部、官能基当量が4600g/molのポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー(商品名:KF−2012、信越化学工業株式会社製)11.3部および連鎖移動剤としてチオグリコール酸メチル0.51部を投入した。そして、70℃にて窒素雰囲気下で1時間撹拌した後、熱重合開始剤としてAIBN0.2部を投入し、70℃で2時間反応させた後に、熱重合開始剤としてAIBN0.1重量部を投入し、続いて80℃で5時間反応させた。このようにしてポリマーB1の溶液を得た。このポリマーB1のMwは22000であった。
【0153】
(ポリマーB2〜B7の調製)
モノマー成分の組成を表1に示すように変更し、連鎖移動剤としてチオグリセロール0.8部を使用し、重合溶媒として酢酸エチルを使用した他は、ポリマーB1の調製と同様にしてポリマーB2〜B7を調製した。各ポリマーのMwは、ポリマーB2が19100、ポリマーB3が19700、ポリマーB4が19600、ポリマーB5が20000、ポリマーB6が18900、ポリマーB7が19500であった。
【0154】
ポリマーB1〜B7の調製に用いたモノマー成分の組成、該モノマー成分のうち(メタ)アクリル系モノマーの組成に基づくガラス転移温度T
m1、およびポリマーB1〜B7のガラス転移温度T
Bを、表1にまとめて示す。
【0155】
【表1】
【0156】
なお、上述した各ポリマーの重量平均分子量は、GPC装置(東ソー社製、HLC−8220GPC)を用いて下記の条件で測定を行い、ポリスチレン換算により求めた。
[GPC条件]
・サンプル濃度:0.2wt%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・サンプル注入量:10μl
・溶離液:THF・流速:0.6ml/min
・測定温度:40℃
・カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(1本)
・検出器:示差屈折計(RI)
【0157】
また、表1に示すT
Bの算出にあたっては、X−22−174ASXのTgの値として−126℃、KF−2012のTgの値として−127℃を使用した。これらのポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマーのTgは、該モノマー(測定試料)をアルミ製簡易密閉容器に入れて以下の条件でDSC(示差走査熱量測定)を行うことにより求めたものである。
[DSC条件]
装置:TA Instruments,Q−2000
温度プログラム:−160℃〜40℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気ガス:He(50ml/min)
【0158】
<粘着シートの作製>
(例1)
上記ポリマーA1の溶液に、該溶液に含まれるポリマーA1の100部当たり、ポリマーB1を2.5部、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学社製)を2.5部添加し、均一に混合して粘着剤組成物C1を調製した。
支持基材としての厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)の第一面に粘着剤組成物C1を直接塗布し、110℃で2分間加熱して乾燥させることにより、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層の表面(粘着面)に剥離ライナーR1の剥離面を貼り合わせた。このようにして、例1に係る粘着シートを、その剥離ライナーの剥離面に粘着面が当接した剥離ライナー付き粘着シートの形態で得た。
なお、剥離ライナーとしては、三菱ケミカル社製のMRQ25T100(ポリエステルフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離層を有する剥離ライナー、厚さ25μm)を使用した。
【0159】
(例2〜例11)
ポリマーBおよび架橋剤の使用量を表2に示すように変更した他は粘着剤組成物C1の調製と同様にして、粘着剤組成物C2〜C11を調製した。これらの粘着剤組成物C2〜C11をそれぞれ使用した他は例1に係る粘着シートの作製と同様にして、例2〜例11に係る粘着シートを得た。
【0160】
<対SUS粘着力の測定>
各例に係る粘着シートを剥離ライナーごと25mm幅に裁断したものを試験片とし、トルエンで清浄化したSUS板(SUS304BA板)を被着体として、以下の手順で粘着力N
23、粘着力N
50および粘着力N
80を測定した。
(粘着力N
23の測定)
23℃、50%RHの標準環境下にて、各試験片の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面を被着体に、2kgのローラを1往復させて圧着した。このようにして被着体に圧着した試験片を上記標準環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM−1kNB」ミネベア社製)を使用して、JIS Z0237に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で、180°引きはがし粘着力(上記引張りに対する抵抗力)を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を、23℃30分後の粘着力(N
23)[N/25mm]として表2に示した。
(粘着力N
50の測定)
上記粘着力
23の測定と同様にして被着体に圧着した試験片を、50℃の環境に30分間保持し、次いで上記標準環境下に30分間放置した後に、同様に180°引きはがし粘着力を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を、50℃30分後の粘着力(N
50)[N/25mm]として表2に示した。
(粘着力N
80の測定)
上記粘着力
23の測定と同様にして被着体に圧着した試験片を、80℃で5分間加熱し、次いで上記標準環境下に30分間放置した後に、同様に180°引きはがし粘着力を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を、80℃5分後の粘着力(N
80)[N/25mm]として表2に示した。なお、例1〜11に係る粘着シートは、いずれも、粘着力N
80の測定時に投錨破壊を起こさないことが確認された。
これらの粘着力測定結果に基づいて、N
80/N
50、N
50/N
23、N
80/N
23、N
50−N
23、および(N
80−N
50)/(N
50−N
23)を算出した。得られた結果を表2に示した。
【0161】
【表2】
【0162】
表2に示されるように、ガラス転移温度T
m1が50℃〜100℃の範囲にあるポリマーB3〜B5を用いた例5〜9の粘着シートは、N
80/N
50が5以上であることにより、貼付け初期に50℃程度の温度が加わってもリワークに適した低粘着性を維持し、かつ80℃5分の加熱により粘着力を大きく上昇させ得ることが確認された。
【0163】
一方、ガラス転移温度T
m1が50℃より低いポリマーB1,B2,B7を用いた例1〜4および例11の粘着シートは、N
80/N
50が5未満であり、貼付け初期に50℃程度の温度が加わることで粘着力が上昇しやすいものであった。例4の粘着シートでは、N
50は比較的低かったが、80℃5分の加熱により粘着力を大きく上昇させることはできなかった。また、ガラス転移温度T
m1が100℃を超えるポリマーB6を用いた例10は、80℃5分の加熱によっては粘着力を上昇させることができなかった。
【0164】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。