(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本発明は、DV感染の処置および/または予防のための方法および組成物を提供する。とりわけ、本発明は、4つすべてのDV血清型を中和する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、参照抗体4E11の改変体であり;いくつかのそのような実施形態において、提供される抗体剤は、4E11のアミノ酸配列と高い全体的な配列同一性を示すアミノ酸配列またはその関連するフラグメントを有するが、4E11と比べて特定の配列バリエーションを含み、4E11で観察される中和と比べて、少なくとも1つのDV血清型の中和の有意な改善を示す。
【0007】
本発明は、参照抗体4E11が、ある特定の望ましい特質(4つすべてのDV血清型に結合することおよび4つのうち3つのDV血清型を強力に中和する能力を有することを含む)を有するが、第4のDV血清型を効果的に中和する能力を欠くという見識を提供する。本発明は、4E11がこの第4のDV血清型を効果的に中和することができないという問題の原因を特定する。特に、本発明は、構造的特徴の改変を有しない4E11の能力と比べて、関連するDV血清型を中和する改変を含む配列を有する抗体剤の能力を改善する構造的特徴の改変を定義する。ゆえに、本発明は、関連する構造的特徴の改変を含む構造を有し(しかし、その他は4E11の構造と実質的に同一であり得る)、かつDV血清型4(DV4)を中和する能力を特徴とする、抗体を定義し、提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、4E11と比べて有意に低くない、他の3つのDV血清型の各々を中和する能力を示す。実際に、いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、4E11で観察される中和能と比べて、他の3つのDV血清型の1つ以上(DV1〜4)の中和能の驚くべき増加を特徴とする。
【0008】
本発明は、他の活性を保つのに必要な構造的特徴は維持しつつ、目的の生物学的活性をポリペプチドに付与する構造的改変を定義するための技術を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、DVエピトープに結合する抗体剤ならびにそれらを含む組成物、ならびにそれらを設計する、提供する、製剤化する、使用する、同定するおよび/または特徴付ける方法を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、複数のDV血清型に対して有意な結合を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、4つすべてのDV血清型に対して有意な結合を示す。提供される抗体剤は、例えば、DVの予防、処置、診断および/または研究において有用である。
【0010】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、1つ以上の前述の参照抗DV抗体と交差競合する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、配列番号17(EDIII−DV1)、配列番号18(EDIII−DV2)、配列番号19(EDIII−DV3)、配列番号20(EDIII−DV4)および/またはそれらの組み合わせの中のアミノ酸配列であるかまたはそれを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、1つ以上の特定の前述の抗DV抗体と有意に交差競合しない。
【0011】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、確立されたモデル系において、1つ以上の前述の参照抗DV抗体よりも高力価でDVを中和する。本発明は、とりわけ、提供される抗体剤が、前述の抗DV抗体よりも大きな治療的および/または予防的な利点を提供し得るという認識を含む。
【0012】
提供される抗体剤は、例えば、治療、予防、診断および/または研究への適用を含む、種々の状況において有用である。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、例えば、慢性および/または急性のDV感染に罹患しているかまたは感受性である被験体に、治療有効量の1つ以上の提供されるそのような提供される抗体剤を投与することによる、そのような感染の処置において有用である。いくつかの実施形態において、治療有効量は、(i)DV感染に感受性であるもしくは罹患している個体におけるDV感染の1つ以上の症状もしくは特色の、重症度もしくは頻度を低下させること、および/またはその発生もしくは再出現を遅延させること;ならびに/あるいは(ii)DV感染に曝露された個体もしくはその曝露のリスクがある個体におけるDV感染に感染するリスクおよび/またはその1つ以上の症状もしくは特色を発症するリスクを低下させることを含むがこれらに限定されない1つ以上の特定の生物学的効果を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態において、DV感染の1つ以上の症状または特色は、高熱および少なくとも1つ以上のさらなる症状(例えば、重度の頭痛、重度の眼痛、関節痛、筋肉痛、骨の疼痛、発疹、軽度の出血の発現(例えば、鼻または歯肉からの出血、点状出血、あざができやすい(easy bruising))、腹痛、嘔吐、タール状の黒色便、眠気または被刺激性、蒼白色の、冷たいまたはベトベトした皮膚、呼吸困難(difficulty breathing)、低白血球数、個体またはその1つ以上の組織(例えば、血液、骨髄)もしくは臓器(例えば、肝臓)における循環ウイルス粒子から選択される)であるかまたはそれらを含む。いくつかの実施形態において、DV感染に罹患している個体は、高熱および少なくとも2つのそのようなさらなる症状を示す。
【0013】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、DV感染の1つ以上の症状または特色の再発を予防するため、減少させるため、および/またはその発生を遅延させるために使用され得る。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、例えば、DVに最近曝露されたもしくはDVに曝露されるリスクがある個体、DV陽性の母親から生まれた乳児および/または肝臓移植患者の受動免疫法のために、使用され得る(例えば、そのような患者における可能性のある再発性のDV感染を予防するために)。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、ウイルス模倣剤を提供し、そのウイルス模倣剤の構造は、例えば、そのウイルス模倣剤が、関連するDV抗原の1つ以上の生物学的活性の模倣を可能にするのに十分なある特定のDV抗原の保存された1つ以上のエレメントを含む。いくつかの実施形態において、そのようなウイルス模倣剤は、例えば本明細書中で定義されるような、DV抗原のそのような保存された構造エレメントを含み、かつDV抗原の1つ以上の他の構造エレメントを欠く。いくつかの実施形態において、提供されるウイルス模倣剤は、1つ以上のポリペプチドであるかまたはそれらを含む。いくつかの実施形態において、提供されるウイルス模倣剤ポリペプチドは、DV抗原由来の1つ以上の保存配列エレメントを含むアミノ酸配列を有し;いくつかの実施形態において、提供されるウイルス模倣剤ポリペプチドは、DV抗原由来の1つ以上の他の配列エレメントを欠く。例えば、いくつかの実施形態において、提供されるウイルス模倣剤ポリペプチドは、DV抗原のフラグメントであるかまたはそれらを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、DV感染の1つ以上の症状が発症した後に利用される治療的な処置方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV感染の1つ以上の症状が発症する前および/またはDV、DV感染もしくはそのリスクに曝される前に利用される治療的な予防方法を提供する。いくつかの特定の実施形態において、本発明は、受動免疫技術を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル(例えば、臨床、環境および/または研究サンプル)中のDVを検出するおよび/または別途特徴付ける診断方法を提供する。
【0017】
本発明は、有用な抗DV抗体剤を設計するため、同定するためおよび/または特徴付けるためのシステムを提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、タンパク質の界面に共通する特定の物理化学的な特徴を捕捉する、コンピュータによる経験的なアプローチを提供する。いくつかの実施形態において、そのようなアプローチは、タンパク質間相互作用(例えば、抗原−抗体相互作用)の予測(例えば、どのアミノ酸配列が特に高い相互作用親和性を示し得るかを予測することを含む)を可能にする。いくつかの実施形態において、提供されるアプローチは、参照配列とは異なり、かつタンパク質間相互作用に関する1つ以上の改善された特色(例えば、改善された親和性)を示す、配列を設計するため、同定するためおよび/または特徴付けるために有用に適用される。
【0018】
本発明は、DVに対する免疫学的応答に基づいて患者を層別化するためのシステムを提供する。本発明は、DV免疫療法に対して良好に反応する可能性が高い患者を同定するための方法を提供する。例えば、患者の血清を使用することにより、DVの特定のエピトープ(例えば、提供される抗体剤が特異的に結合するエピトープ)に対して指向される抗体の存在について試験され得る。その患者が、適切なレベルの、そのようなエピトープに指向される抗体を有しない場合、提供される1つ以上のDV抗体剤が、その患者に投与され得る。提供されるDV抗体剤によって、その患者自身の免疫応答が補われ得る。いくつかの実施形態において、免疫療法は、DVウイルスのクリアランスおよび/またはDV感染の消散を助ける。いくつかの実施形態において、本発明に係る免疫療法は、慢性DV感染を処置および/または予防する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明は、有用な抗体剤を設計する、同定するおよび/または特徴付ける方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、そのような方法は、被験抗体剤が、1つ以上の参照抗DV抗体および/または他の抗体剤と抗原結合について競合するか否かを決定する工程を含む。いくつかの実施形態において、被験抗体剤が、1つ以上の参照DV抗体と交差競合する場合、それは、有用な抗体剤と同定される。
【0020】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、1つ以上のさらなる薬学的に許容され得る物質と組み合されることにより、薬学的組成物を提供する。本発明は、DV感染の処置、予防、診断および/または特徴付けのための薬学的組成物を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、例えば、インビトロにおいて任意のDV血清型に結合してDV感染を中和するヒト抗体またはそのフラグメントもしくは改変体であるかまたはそれを含む抗体剤を含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、例えば、インビボにおいて任意のDV血清型に結合してDV感染を中和するヒト抗体またはそのフラグメントもしくは改変体であるかまたはそれを含む抗体剤を含む。いくつかの実施形態において、インビトロの系における提供される抗体剤によるDVの中和は、インビボにおける(例えば、ヒトおよび/または他の哺乳動物における)提供される抗体剤によるDVの中和と相関するおよび/またはそれを予測する。
【0022】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、DV感染またはその1つ以上の症状もしくは特色を処置するため、その発生数、頻度もしくは重症度を低下させるため、および/またはその発生を遅延させるための1つ以上の他の治療とともに利用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、1つ以上の抗ウイルス剤、抗炎症剤、鎮痛剤、免疫調節治療薬(immunomodulating therapeutics)、および好ましくは他のDV標的が関わる併用療法とともに利用される。例えば、いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、1つ以上のインターフェロン(例えば、インターフェロンα−2b、インターフェロン−γなど)、鎮痛薬(好ましくは、アセトアミノフェンを含むもの、ならびにアスピリンおよび/またはイブプロフェンを含まないもの)、抗DVモノクローナル抗体、抗DVポリクローナル抗体、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシドアナログ、ヘリカーゼ阻害剤、免疫調節物質、アンチセンス化合物、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、RNAアプタマー、リボザイムおよびそれらの組み合わせとともに投与される。
【0023】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、詳細には、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合してそれらを中和する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、その抗体剤は、配列番号17(EDIII−DV1)、配列番号18(EDIII−DV2)、配列番号19(EDIII−DV3)、配列番号20(EDIII−DV4)またはそれらの組み合わせの中のアミノ酸配列であるかまたはそれを含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、その抗体剤は、デングウイルスのエンベロープ糖タンパク質のA鎖領域内のエピトープに結合する。
【0024】
いくつかの実施形態において、エピトープは、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの305、306、307、308、309、310、311、312、323、325、327、329、360、361、362、363、364、385、387、388、389、390、391位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される位置の残基に対応する1つ以上の残基を含む。いくつかの実施形態において、305位の対応する残基は、セリン、リジンおよびトレオニンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、310位の対応する残基は、リジンである。いくつかの実施形態において、311位の対応する残基は、リジンである。いくつかの実施形態において、323位の対応する残基は、アルギニン、リジンおよびグルタミンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、327位の対応する残基は、リジンおよびグルタミン酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、329位の対応する残基は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびトレオニンからなる群より選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が、参照抗体4E11のCDRと少なくとも80%の配列同一性を共有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むが、そのCDR内の少なくとも1つのアミノ残基の置換によって異なる、抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、抗体剤は、抗体4E11の参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、参照CDRは、4E11の重鎖(配列番号1)の残基27〜33に見られるもの、4E11の重鎖(配列番号1)の残基53〜58に見られるもの、4E11の重鎖(配列番号1)の残基100〜106に見られるもの、4E11の軽鎖(配列番号2)の残基24〜38に見られるもの、4E11の軽鎖(配列番号2)の残基54〜60に見られるもの、4E11の軽鎖(配列番号2)の残基93〜101に見られるもの;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、抗体剤は、下記に示される参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む:GFNIKDT(配列番号7)、DPANGD(配列番号8)、GWEGFAY(配列番号9)、RASENVDKYGNSFMH(配列番号14)、RASNLES(配列番号15)および/またはQRSNEVPWT(配列番号16)。いくつかの実施形態において、参照CDRは、重鎖CDRである。いくつかの実施形態において、参照CDRは、軽鎖CDRである。いくつかの実施形態において、抗体剤は、重鎖参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つの重鎖CDRを含み、軽鎖参照CDRと同一である少なくとも1つの軽鎖CDRも含む。いくつかの実施形態において、抗体剤におけるCDRの各々は、参照CDRのうちの1つと実質的に同一である。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明は、重鎖可変領域が、参照抗体4E11のCDRと少なくとも95%の配列同一性を共有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むが、そのCDR内の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換によって異なる、抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、抗体剤は、抗体4E11の参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、参照CDRは、4E11の重鎖(配列番号1)の残基27〜33に見られるもの、4E11の重鎖(配列番号1)の残基53〜58に見られるもの、4E11の重鎖(配列番号1)の残基100〜106に見られるもの、4E11の軽鎖(配列番号2)の残基24〜38に見られるもの、4E11の軽鎖(配列番号2)の残基54〜60に見られるもの、4E11の軽鎖(配列番号2)の残基93〜101に見られるものおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、抗体剤は、下記に示される参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む:GFNIKDT(配列番号7)、DPANGD(配列番号8)、GWEGFAY(配列番号9)、RASENVDKYGNSFMH(配列番号14)、RASNLES(配列番号15)および/またはQRSNEVPWT(配列番号16)。いくつかの実施形態において、参照CDRは、重鎖CDRである。いくつかの実施形態において、参照CDRは、軽鎖CDRである。いくつかの実施形態において、抗体剤は、重鎖参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つの重鎖CDRを含み、軽鎖参照CDRと同一である少なくとも1つの軽鎖CDRも含む。いくつかの実施形態において、抗体剤におけるCDRの各々は、参照CDRのうちの1つと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域CDRは、55位にアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、55位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域CDRは、31、57、59、60位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される位置にアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、31位における代わりのアミノ酸残基は、リジンである。いくつかの実施形態において、57位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸およびセリンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、59位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミンおよびアスパラギンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、60位における代わりのアミノ酸残基は、トリプトファン、チロシンおよびアルギニンからなる群より選択される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明は、IgGである抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、抗体剤は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗体剤は、マウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、精製された抗体、単離された抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、抗原結合フラグメントが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fdフラグメント、Fd’フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、scFvフラグメント、単離されたCDR領域、dsFvダイアボディ、一本鎖抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、抗体剤が、提供される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明は、デングウイルスに特異的な抗体剤を発現する細胞株を提供し、ここで、その抗体剤は、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合して中和する。いくつかの実施形態において、本発明は、1つ以上の抗体剤(ここで、その抗体剤は、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合して中和する)および薬学的に許容され得る賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも1つのさらなる抗ウイルス剤をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗体剤を投与する工程を含む、処置を必要とする被験体を処置する方法を提供し、ここで、その抗体剤は、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合して中和する。いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの抗体剤(ここで、その抗体剤は、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合して中和する)、少なくとも1つの抗体またはフラグメントを被験体に投与するための注射器、針またはアプリケーター、および使用のための指示書を備えるキットを提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明は、薬学的組成物を製造する方法を提供し、その方法は、抗体剤を提供する工程(ここで、その抗体剤は、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合して中和する)およびその抗体剤を少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアとともに製剤化する工程を含み、その結果、薬学的組成物が、生成される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、液体組成物である。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、非経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、小児への静脈内投与用に製剤化される。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
デングウイルスに特異的な抗体剤であって、ここで、前記抗体剤は、デングウイルス血清型D1、D2、D3およびD4の各々に結合し、それらを中和する、抗体剤。
(項目2)
前記抗体剤が、配列番号17(EDIII−DV1)、配列番号18(EDIII−DV2)、配列番号19(EDIII−DV3)、配列番号20(EDIII−DV4)またはそれらの組み合わせの中のアミノ酸配列であるかまたはそれを含むエピトープに結合する、項目1に記載の抗体剤。
(項目3)
前記抗体剤が、デングウイルスのエンベロープ糖タンパク質のA鎖領域内のエピトープに結合する、項目1に記載の抗体剤。
(項目4)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの305、306、307、308、309、310、311、312、323、325、327、329、360、361、362、363、364、385、387、388、389、390、391位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される位置の残基に対応する1つ以上の残基を含む、項目2に記載の抗体剤。
(項目5)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの305、310、311、323、327、329位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される位置の残基に対応する1つ以上の残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目6)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの305位の残基に対応する残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目7)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの310位の残基に対応する残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目8)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの311位の残基に対応する残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目9)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの323位の残基に対応する残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目10)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの327位の残基に対応する残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目11)
前記エピトープが、配列番号17〜20のうちのいずれか1つの329位の残基に対応する残基を含む、項目4に記載の抗体剤。
(項目12)
前記対応する残基が、セリン、リジンおよびトレオニンからなる群より選択される、項目6に記載の抗体剤。
(項目13)
前記対応する残基が、リジンである、項目7に記載の抗体剤。
(項目14)
前記対応する残基が、リジンである、項目8に記載の抗体剤。
(項目15)
前記対応する残基が、アルギニン、リジンおよびグルタミンからなる群より選択される、項目9に記載の抗体剤。
(項目16)
前記対応する残基が、リジンおよびグルタミン酸からなる群より選択される、項目10に記載の抗体剤。
(項目17)
前記対応する残基が、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびトレオニンからなる群より選択される、項目11に記載の抗体剤。
(項目18)
その重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が、抗体4E11の参照CDRと少なくとも80%の配列同一性を共有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むが、前記CDR内の少なくとも1つのアミノ残基の置換によって異なり、前記抗体剤が、4つすべてのDV血清型を強力に中和する、項目1に記載の抗体剤。
(項目19)
前記抗体剤が、抗体4E11の参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む、項目18に記載の抗体剤。
(項目20)
前記参照CDRが、
4E11の重鎖(配列番号1)の残基27〜33に見られるもの;
4E11の重鎖(配列番号1)の残基53〜58に見られるもの;
4E11の重鎖(配列番号1)の残基100〜106に見られるもの;
4E11の軽鎖(配列番号2)の残基24〜38に見られるもの;
4E11の軽鎖(配列番号2)の残基54〜60に見られるもの;
4E11の軽鎖(配列番号2)の残基93〜101に見られるもの;および
それらの組み合わせ
からなる群より選択される、項目19に記載の抗体剤。
(項目21)
前記抗体剤が、下記:
参照CDR:GFNIKDT(配列番号7)、DPANGD(配列番号8)、GWEGFAY(配列番号9)、RASENVDRYGNSFMH(配列番号14)、RASNLES(配列番号15)および/またはQRSNEVPWT(配列番号16)
に示される参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む、項目19に記載の抗体剤。
(項目22)
前記参照CDRが、重鎖CDRである、項目19に記載の抗体剤。
(項目23)
前記参照CDRが、軽鎖CDRである、項目19に記載の抗体剤。
(項目24)
前記抗体剤が、重鎖参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つの重鎖CDRを含み、かつ軽鎖参照CDRと同一である少なくとも1つの軽鎖CDRも含む、項目19に記載の抗体剤。
(項目25)
前記抗体剤におけるCDRの各々が、前記参照CDRのうちの1つと実質的に同一である、項目19に記載の抗体剤。
(項目26)
その重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が、抗体4E11の参照CDRと少なくとも95%の配列同一性を共有する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むが、前記CDR内の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換によって異なり、前記抗体剤が、4つすべてのDV血清型を強力に中和する、項目1に記載の抗体剤。
(項目27)
前記抗体剤が、抗体4E11の参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む、項目26に記載の抗体剤。
(項目28)
前記参照CDRが、
4E11の重鎖(配列番号1)の残基27〜33に見られるもの;
4E11の重鎖(配列番号1)の残基53〜58に見られるもの;
4E11の重鎖(配列番号1)の残基100〜106に見られるもの;
4E11の軽鎖(配列番号2)の残基24〜38に見られるもの;
4E11の軽鎖(配列番号2)の残基54〜60に見られるもの;
4E11の軽鎖(配列番号2)の残基93〜101に見られるもの;および
それらの組み合わせ
からなる群より選択される、項目27に記載の抗体剤。
(項目29)
前記抗体剤が、下記:
参照CDR:GFNIKDT(配列番号7)、DPANGD(配列番号8)、GWEGFAY(配列番号9)、RASENVDRYGNSFMH(配列番号14)、RASNLES(配列番号15)および/またはQRSNEVPWT(配列番号16)
に示される参照CDRと同一であるかまたはそのような参照CDR内に1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、そのような参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDRを含む、項目27に記載の抗体剤。
(項目30)
前記参照CDRが、重鎖CDRである、項目27に記載の抗体剤。
(項目31)
前記参照CDRが、軽鎖CDRである、項目27に記載の抗体剤。
(項目32)
前記抗体剤が、重鎖参照CDRと実質的に同一である少なくとも1つの重鎖CDRを含み、かつ軽鎖参照CDRと同一である少なくとも1つの軽鎖CDRも含む、項目27に記載の抗体剤。
(項目33)
前記抗体剤におけるCDRの各々が、前記参照CDRのうちの1つと実質的に同一である、項目27に記載の抗体剤。
(項目34)
前記重鎖可変領域CDRが、55位にアミノ酸残基の置換を有する、項目18または26のいずれか1項に記載の抗体剤。
(項目35)
55位における代わりのアミノ酸残基が、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択される、項目34に記載の抗体剤。
(項目36)
55位における代わりのアミノ酸残基が、グルタミン酸である、項目34に記載の抗体剤。
(項目37)
前記軽鎖可変領域CDRが、31、57、59、60位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される位置にアミノ酸残基の置換を有する、項目18または26のいずれか1項に記載の抗体剤。
(項目38)
前記軽鎖可変領域CDRが、31位にアミノ酸残基の置換を有する、項目37に記載の抗体剤。
(項目39)
31位における代わりのアミノ酸残基が、リジンである、項目38に記載の抗体剤。
(項目40)
前記軽鎖可変領域CDRが、57位にアミノ酸残基の置換を有する、項目37に記載の抗体剤。
(項目41)
57位における代わりのアミノ酸残基が、グルタミン酸およびセリンからなる群より選択される、項目40に記載の抗体剤。
(項目42)
57位における代わりのアミノ酸残基が、グルタミン酸である、項目40に記載の抗体剤。
(項目43)
前記軽鎖可変領域CDRが、59位にアミノ酸残基の置換を有する、項目37に記載の抗体剤。
(項目44)
59位における代わりのアミノ酸残基が、グルタミンおよびアスパラギンからなる群より選択される、項目43に記載の抗体剤。
(項目45)
59位における代わりのアミノ酸残基が、グルタミンである、項目43に記載の抗体剤。
(項目46)
前記軽鎖可変領域CDRが、60位にアミノ酸残基の置換を有する、項目37に記載の抗体剤。
(項目47)
60位における代わりのアミノ酸残基が、トリプトファン、チロシンおよびアルギニンからなる群より選択される、項目46に記載の抗体剤。
(項目48)
60位における代わりのアミノ酸残基が、トリプトファンである、項目46に記載の抗体剤。
(項目49)
IgGである、項目1に記載の抗体剤。
(項目50)
モノクローナル抗体である、項目1に記載の抗体剤。
(項目51)
前記抗体剤が、マウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、精製された抗体、単離された抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の抗体剤。
(項目52)
前記抗体剤が、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fdフラグメント、Fd’フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、scFvフラグメント、単離されたCDR領域、dsFvダイアボディ、一本鎖抗体およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の抗体剤。
(項目53)
項目1に記載の抗体剤を発現する細胞株。
(項目54)
項目1に記載の1つ以上の抗体剤;および
薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤
を含む、薬学的組成物。
(項目55)
少なくとも1つのさらなる抗ウイルス剤をさらに含む、項目54に記載の薬学的組成物。
(項目56)
項目1に記載の抗体剤を投与する工程を含む、処置を必要とする被験体を処置する方法。
(項目57)
項目1に記載の少なくとも1つの抗体剤;
前記少なくとも1つの抗体またはフラグメントを被験体に投与するための注射器、針またはアプリケーター;および
使用のための指示書
を備える、キット。
(項目58)
薬学的組成物を製造する方法であって、前記方法は、
項目1に記載の抗体剤を提供する工程;および
前記抗体剤を少なくとも1つの薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤とともに製剤化する工程
を含み、その結果、薬学的組成物が生成される、方法。
(項目59)
前記薬学的組成物が、液体組成物である、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記薬学的組成物が、非経口投与用に製剤化される、項目58に記載の方法。
(項目61)
前記薬学的組成物が、静脈内投与用に製剤化される、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記薬学的組成物が、小児への静脈内投与用に製剤化される、項目61に記載の方法。
(項目63)
抗体剤であって、その重鎖が、配列番号21の中のアミノ酸配列であるかまたはそれを含み、かつその軽鎖が、配列番号22の中のアミノ酸配列であるかまたはそれを含む、抗体剤。
(項目64)
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28からなる群より選択される配列を有する少なくとも1つのCDRを有する抗体剤。
【0031】
図面の図は、単に例証目的であって、限定目的でない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明が、より簡単に理解されるために、まず、ある特定の用語を下記に定義する;当業者は、下記に定義されるようなおよび/または本明細書中の他の箇所で使用されるようなこれらの用語の使用および範囲を認識し、理解するだろう。
【0034】
成人:本明細書中で使用されるとき、用語「成人」とは、18歳以上のヒトのことを指す。成人の体重は、90ポンド〜250ポンドである典型的な範囲で広く変動し得る。
【0035】
親和性:当該分野で公知であるように、「親和性」は、特定のリガンド(例えば、抗体)がそのパートナー(例えば、エピトープ)に結合する堅固さの尺度である。親和性は、種々の方法で測定され得る。
【0036】
アミノ酸:本明細書中で使用されるとき、用語「アミノ酸」とは、その最も広い意味において、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質のことを指す。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、一般構造H
2N−C(H)(R)−COOHを有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、合成アミノ酸であり;いくつかの実施形態において、アミノ酸は、d−アミノ酸であり;いくつかの実施形態において、アミノ酸は、l−アミノ酸である。「標準的なアミノ酸」とは、天然に存在するペプチドに通常見られる20種の標準的なl−アミノ酸のうちのいずれかのことを指す。「標準的でないアミノ酸」とは、それが合成的に調製されるかまたは天然の供給源から得られるかに関係なく、標準的なアミノ酸以外の任意のアミノ酸のことを指す。本明細書中で使用されるとき、「合成アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(例えば、アミド)および/または置換を含むがこれらに限定されない、化学的に改変されたアミノ酸を包含する。ペプチドにおけるカルボキシ末端および/またはアミノ末端のアミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基、および/またはそのペプチドの活性に悪影響を及ぼさずにその循環半減期を変化させ得る他の化学基による置換によって改変され得る。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。アミノ酸は、1つまたは翻訳後の修飾(例えば、1つ以上の化学実体(例えば、メチル基、酢酸基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分など)との会合)を含み得る。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と交換可能に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基のことを指し得る。この用語が遊離アミノ酸のことを指すのかまたはペプチドの残基のことを指すのかは、この用語が使用されている文脈から明らかになるだろう。
【0037】
動物:本明細書中で使用されるとき、用語「動物」とは、動物界の任意のメンバーのことを指す。いくつかの実施形態において、「動物」とは、いずれかの性別の任意の発生段階のヒトのことを指す。いくつかの実施形態において、「動物」とは、任意の発生段階の非ヒト動物のことを指す。ある特定の実施形態において、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類および/またはブタ)である。いくつかの実施形態において、動物には、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫および/または蠕虫が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、動物は、DVによる感染に感受性である。いくつかの実施形態において、動物は、トランスジェニック動物、遺伝的に操作された動物および/またはクローンであり得る。
【0038】
抗体剤:本明細書中で使用されるとき、用語「抗体剤」とは、特定の抗原に特異的に結合する作用物質のことを指す。いくつかの実施形態において、この用語は、特異的結合をもたらすのに十分な免疫グロブリン構造エレメントを有する任意のポリペプチドを包含する。好適な抗体剤としては、ヒト抗体、霊長類化(primatized)抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、結合体化抗体(すなわち、他のタンパク質、放射標識、細胞毒に結合体化または融合された抗体)、小モジュール免疫薬剤(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)(「SMIPs
TM」)、一本鎖抗体、ラクダ科(cameloid)抗体および抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用されるとき、用語「抗体剤」は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはそのフラグメント))、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメント(それが所望の生物学的活性を示す限り)も含む。いくつかの実施形態において、この用語は、ステープルドペプチド(stapled peptide)を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、1つ以上の抗体様で結合するペプチド模倣物を包含する。いくつかの実施形態において、この用語は、1つ以上の抗体様で結合する足場タンパク質(scaffold protein)を包含する。いくつかの(come)実施形態において、この用語は、モノボディ(monobody)またはアドネクチン(adnectins)を包含する。多くの実施形態において、抗体剤は、そのアミノ酸配列が当業者が相補性決定領域(CDR)として認識する1つ以上の構造エレメントを含むポリペプチドであるかまたはそれを含み;いくつかの実施形態において、抗体剤は、そのアミノ酸配列が参照抗体に見られるCDRと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDRおよび/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、配列が同一であるかまたは参照CDRと比べて1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、それが、参照CDRと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を示すという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含められるCDRは、それが、参照CDRと少なくとも96%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を示すという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含められるCDRは、その含められるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比べて欠失しているか、付加されているかまたは置換されているが、その含められるCDRが、その他では参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含められるCDRは、含められるCDR内の1〜5個のアミノ酸が、参照CDRと比べて欠失しているか、付加されているかまたは置換されているが、その含められるCDRが、その他では参照CDRと同一であるアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含められるCDRは、その含められるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比べて置換されているが、その含められるCDRが、その他では参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含められるCDRは、その含められるCDR内の1〜5個のアミノ酸が、参照CDRと比べて欠失しているか、付加されているかまたは置換されているが、その含められるCDRが、その他では参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、抗体剤は、そのアミノ酸配列が当業者によって免疫グロブリンの可変ドメインとして認識される構造エレメントを含むポリペプチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、抗体剤は、免疫グロブリン結合ドメインと相同であるかまたは大部分は相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。
【0039】
抗体:当該分野で公知であるように、「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合する免疫グロブリンである。この用語は、それが抗原に反応する生物によって産生されるという点において天然に生成される免疫グロブリン、および合成的に生成されるかまたは操作される免疫グロブリンを包含する。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、任意のヒトクラス:IgG、IgM、IgAおよびIgDを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。当該分野において理解されている典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を構成すると知られている。各四量体は、同一の2対のポリペプチド鎖から構成され、各対は、1本の「軽」鎖(およそ25kD)および1本の「重」鎖(およそ50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。用語「可変軽鎖」(VL)および「可変重鎖」(VH)とは、それぞれこれらの軽鎖および重鎖のことを指す。各可変領域はさらに、超可変(HV)領域およびフレームワーク(FR)領域に細分される。超可変領域は、ベータシート構造を形成し、HV領域を適所に保持する足場として働く4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR2およびFR4)で分断された、相補性決定領域と呼ばれる超可変性配列の3つの区域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含む。各重鎖および各軽鎖のC末端は、軽鎖の場合は1つのドメイン(CL)および重鎖の場合は3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる定常領域を定義する。いくつかの実施形態において、用語「完全長」は、抗体に関しては、天然に生成された抗体で生じているような、必要に応じてジスルフィド結合によって会合される2本の重鎖および2本の軽鎖を含むことを意味するために使用される。いくつかの実施形態において、抗体は、細胞によって産生される。いくつかの実施形態において、抗体は、化学合成によって生成される。いくつかの実施形態において、抗体は、哺乳動物から得られる。いくつかの実施形態において、抗体は、動物(例えば、マウス、ラット、ウマ、ブタまたはヤギであるがこれらに限定されない)から得られる。いくつかの実施形態において、抗体は、組換え細胞培養系を用いて生成される。いくつかの実施形態において、抗体は、精製された抗体であり得る(例えば、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって)。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体(そのタンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生される抗体改変体に対する類似度を高めるために改変された、非ヒト種由来の抗体)であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、キメラ抗体(非ヒト供給源、例えば、マウス、ラット、ウマまたはブタ由来の遺伝物質をヒト由来の遺伝物質と組み合わせることによって生成される抗体)であり得る。
【0040】
抗体フラグメント:本明細書中で使用されるとき、「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部(例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域)を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;トリアボディ(triabody);テトラボディ(tetrabody);線状抗体;一本鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。例えば、抗体フラグメントには、単離されたフラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、軽鎖可変領域および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続された組換え一本鎖ポリペプチド分子(「ScFvタンパク質」)および超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が含まれる。多くの実施形態において、抗体フラグメントは、そのフラグメントの親抗体と同じ抗原に結合する、その親抗体の十分な配列を含み;いくつかの実施形態において、フラグメントは、親抗体に匹敵する親和性で抗原に結合し、かつ/または抗原への結合について親抗体と競合する。抗体の抗原結合フラグメントの例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFvフラグメント、Fvフラグメント、dsFvダイアボディ、dAbフラグメント、Fd’フラグメント、Fdフラグメントおよび単離された相補性決定領域(CDR)領域が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合フラグメントは、任意の手段によって生成され得る。例えば、抗体の抗原結合フラグメントは、インタクトな抗体の断片化によって酵素的もしくは化学的に生成され得、かつ/または部分的な抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に生成され得る。代替的または付加的に、抗体の抗原結合フラグメントは、完全にまたは部分的に合成的に生成され得る。抗体の抗原結合フラグメントは、必要に応じて、一本鎖抗体フラグメントを含み得る。代替的または付加的に、抗体の抗原結合フラグメントは、例えばジスルフィド結合によって、共に連結された複数の鎖を含み得る。抗体の抗原結合フラグメントは、必要に応じて、多分子複合体を構成し得る。機能的な抗体フラグメントは、代表的には、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より代表的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0041】
抗ウイルス剤:本明細書中で使用されるとき、用語「抗ウイルス剤」とは、ウイルス粒子を阻害、不活性化または破壊することによってウイルス感染を処置するために特異的に使用される医薬品の1クラスのことを指す。通常、抗ウイルス剤は、任意の化学クラス(例えば、小分子、金属、核酸、ポリペプチド、脂質および/または炭水化物)の化合物であり得るかまたはそれを含み得る。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、抗体または抗体模倣物であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、核酸剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNAなど)またはその模倣物であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、小分子であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、天然に存在する化合物(例えば、小分子)であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、抗ウイルス剤は、人間の手によって作製されたおよび/または改変された化学構造を有する。
【0042】
およそ:本明細書中で使用されるとき、用語「およそ」または「約」は、1つ以上の目的の値に適用されるとき、述べられている参照値に類似の値のことを指す。ある特定の実施形態において、用語「およそ」または「約」は、別段述べられていないかまたは別段文脈から明らかでない限り(そのような数が可能性のある値の100%を超え得る場合を除く)、述べられている参照値のいずれかの方向(超または未満)の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に入る値の範囲のことを指す。
【0043】
乳児:本明細書中で使用されるとき、用語「乳児」とは、2歳未満のヒトのことを指す。乳児の代表的な体重は、3ポンド〜最大20ポンドの範囲である(rages)。
【0044】
生物学的に活性な:本明細書中で使用されるとき、句「生物学的に活性な」とは、生体系(例えば、細胞培養物、生物など)において活性を有する任意の物質の特色のことを指す。例えば、生物に投与されたときに、その生物に対して生物学的効果を有する物質が、生物学的に活性であるとみなされる。特定の実施形態において、タンパク質またはポリペプチドが、生物学的に活性である場合、そのタンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの一部は、通常、「生物学的に活性な」部分と称される。
【0045】
特徴的な部分:本明細書中で使用されるとき、用語「特徴的な部分」は、その存在(または非存在)が、ある物質の特定の特徴、特質または活性の存在(または非存在)と相関する、その物質の部分のことを指すために、その最も広い意味において使用される。いくつかの実施形態において、ある物質の特徴的な部分は、特定の特徴、特質または活性を共有する物質および関連物質に見られるが、その特定の特徴、特質または活性を共有しないものには見られない部分である。ある特定の実施形態において、特徴的な部分は、インタクトな物質と少なくとも1つの機能的特色を共有する。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質またはポリペプチドの「特徴的な部分」は、一続き(continuous stretch)のアミノ酸、または一体となってタンパク質またはポリペプチドに特徴となる一続きのアミノ酸のコレクションを含むものである。いくつかの実施形態において、そのような各一続きは、通常、少なくとも2、5、10、15、20、50個またはそれ以上のアミノ酸を含む。一般に、ある物質(例えば、タンパク質、抗体など)の特徴的な部分は、上に明記された配列同一性および/または構造的同一性に加えて、関連するインタクトな物質と少なくとも1つの機能的特色を共有するものである。いくつかの実施形態において、特徴的な部分は、生物学的に活性であり得る。
【0046】
小児:本明細書中で使用されるとき、用語「小児」とは、2〜18歳のヒトのことを指す。体重は、年齢の間でおよび特定の小児の間で広く変動し得、代表的な範囲は、30ポンド〜150ポンドである。
【0047】
併用療法:用語「併用療法」は、本明細書中で使用されるとき、2つ以上の異なる医薬品が重複レジメンで投与されて、その被験体が両方の薬剤に同時に曝露される状況のことを指す。
【0048】
匹敵する:用語「匹敵する」は、得られた結果または観察された現象の比較が可能であるのに十分互いによく似た2つ(またはそれ以上)の条件セットまたは状況セットのことを記載するために本明細書中で使用される。いくつかの実施形態において、匹敵する条件セットまたは状況セットは、複数の実質的に同一の特徴および様々な特徴のうちの1つまたは少数によって特徴づけられる。当業者は、異なる条件セットまたは状況セットの下で得られた結果または観察された現象の差異が、変動するそれらの特徴のバリエーションによって引き起こされるかまたはそのバリエーションを示唆するという合理的な結論を保証するのに十分な数およびタイプの実質的に同一の特徴によって特徴付けられるとき、それらの条件セットは互いに匹敵することを認識するだろう。
【0049】
〜に対応する:本明細書中で使用されるとき、用語「〜に対応する」は、目的のポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置/正体を指定するために使用されることが多い。当業者は、単純にするために、ポリペプチドにおける残基が、関連する参照ポリペプチドに基づいて正準のナンバリングシステムを使用して指定されることが多いことを認識するだろう。例えば、190位の残基「に対応する」アミノ酸は、実際に、特定のアミノ酸鎖における190番目のアミノ酸である必要はなく、参照ポリペプチドにおいて190位に見られる残基に対応する;当業者は、どのようにして「対応する」アミノ酸を同定するかを容易に理解する。
【0050】
剤形:本明細書中で使用されるとき、用語「剤形」および「単位剤形」とは、処置されるべき患者に対する治療用タンパク質(例えば、抗体)の物理的に分離した単位のことを指す。各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性な材料を含む。しかしながら、組成物の合計投与量は、適切な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることが理解されるだろう。
【0051】
投与レジメン:「投与レジメン」(または「治療レジメン」)は、この用語が本明細書中で使用されるとき、代表的には期間を隔てて、被験体に個別に投与される単位用量(代表的には1より大きい)のセットである。いくつかの実施形態において、所与の治療薬は、推奨される投与レジメンを有し、それは、1回以上の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、投与レジメンは、複数回の投与を含み、その各々は、同じ長さの期間だけ互いに隔てられており;いくつかの実施形態において、投与レジメンは、複数回の投与、および個々の投与を隔てる少なくとも2つの異なる期間を含む。いくつかの実施形態において、投与レジメン内のすべての投与が、同じ単位用量である。いくつかの実施形態において、投与レジメン内の異なる投与は、異なる量である。いくつかの実施形態において、投与レジメンは、第1の用量での第1の投与に続く、第1の用量とは異なる第2の用量での1回以上のさらなる投与を含む。いくつかの実施形態において、投与レジメンは、第1の用量での第1の投与に続く、第1の用量と同じ第2の用量での1回以上のさらなる投与を含む。
【0052】
DV血清型:本明細書中で使用されるとき、用語「血清型」とは、一般に、DV内の異なるバリエーションのことを指す。DV遺伝群を構成する4つの異なるDV血清型(DV1〜4)は、アミノ酸レベルにおいて、互いにおよそ25%〜40%異なる。DVの4つの血清型は、病原性が異なるが、すべてが、アジア、アフリカ、中央アメリカおよび南アメリカの地域で流行している。これらの血清型のうちの1つへの感染は、その血清型への終生免疫を提供するが、しかしながら、異種DV血清型による二次的な感染時の重篤な疾患のリスクを高める。
【0053】
エピトープ:本明細書中で使用されるとき、用語「エピトープ」は、当該分野において理解されているような意味を有する。抗原決定基としても知られるエピトープは、免疫系、具体的には、抗体、B細胞またはT細胞によって認識される抗原の分子領域であることが、当業者によって認識されるだろう。エピトープは、糖、脂質またはアミノ酸から構成され得ることがさらに認識されるだろう。タンパク質抗原のエピトープは、その構造およびパラトープ(エピトープを認識する抗体の一部)との相互作用に基づいて、2つのカテゴリー、すなわち、コンフォメーションエピトープおよび線状エピトープに分けられる。コンフォメーションエピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続な区画から構成され、これらのエピトープは、抗原の3D表面の特徴および形状または三次構造に基づいてパラトープと相互作用する。線状エピトープは、その1次構造に基づいてパラトープと相互作用し、線状エピトープは、抗原由来のアミノ酸の連続した配列によって形成される。
【0054】
発現:本明細書中で使用されるとき、核酸配列の「発現」とは、以下の事象のうちの1つ以上のことを指す:(1)DNA配列からのRNA鋳型の生成(例えば、転写によるもの);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成および/または3’末端形成によるもの);(3)RNAからポリペプチドもしくはタンパク質への翻訳;および/または(4)ポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾。
【0055】
機能的:本明細書中で使用されるとき、「機能的な」生物学的分子は、それを特徴づける特性および/または活性を示す形態の生物学的分子である。
【0056】
遺伝子:本明細書中で使用されるとき、用語「遺伝子」は、当該分野において理解されているような意味を有する。用語「遺伝子」は、遺伝子制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)および/またはイントロン配列を含み得ることが当業者によって認識されるだろう。遺伝子の定義には、タンパク質をコードせず、機能的なRNA分子(例えば、tRNA、RNAi誘発剤など)をコードする核酸への言及が含まれることがさらに認識されるだろう。明確にする目的で、本発明者らは、本願において使用されるとき、用語「遺伝子」が、通常、タンパク質をコードする核酸の一部のことを指すことを注記し;この用語は、文脈から当業者に対して明らかであるとき、必要に応じて制御配列も包含し得る。この定義は、タンパク質をコードしない発現単位に用語「遺伝子」を適用することを排除することを意図しておらず、むしろ、ほとんどの場合、この文書において使用されるこの用語は、タンパク質をコードする核酸のことを指すことを明らかにする。
【0057】
遺伝子産物または発現産物:本明細書中で使用されるとき、用語「遺伝子産物」または「発現産物」は、通常、遺伝子から転写されたRNA(プロセシング前および/またはプロセシング後)または遺伝子から転写されたRNAによってコードされるポリペプチド(修飾前および/または修飾後)のことを指す。
【0058】
相同性:本明細書中で使用されるとき、用語「相同性」とは、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性のことを指す。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一である場合、互いに「相同」であるとみなされる。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%類似である場合、互いに「相同」であるとみなされる。
【0059】
同一性:本明細書中で使用されるとき、用語「同一性」とは、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性のことを指す。例えば、2つの核酸配列の同一性パーセントの計算は、その2つの配列を最適な比較目的のためにアラインメントすることによって行われ得る(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップが導入され得、同一でない配列は、比較目的のために無視され得る)。ある特定の実施形態において、比較目的でアラインメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または実質的に100%である。次いで、対応するヌクレオチドの位置におけるヌクレオチドが、比較される。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置と同じヌクレオチドによって占められているとき、それらの分子は、その位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮したときの、それらの配列によって共有される同一である位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重み付き残基表(weight residue table)、12というギャップ長ペナルティ(gap length penalty)および4というギャップペナルティ(gap penalty)を使用する、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、MeyersおよびMillerのアルゴリズム(CABIOS,1989,4:11−17)を用いて決定され得る。あるいは、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMP行列を使用する、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて決定され得る。
【0060】
単離された:本明細書中で使用されるとき、用語「単離された」とは、(1)最初に生成されたときに関連していた構成要素の少なくともいくつかから分離された物質および/もしくは実体(天然に存在するかおよび/または実験環境に存在するかに関係なく)、ならびに/または(2)人間の手によって生成、調製および/もしくは製造された物質および/もしくは実体のことを指す。単離された物質および/または実体は、それらが最初に関連していた他の構成要素の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約99%超から分離され得る。いくつかの実施形態において、単離された作用物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約99%超純粋である。本明細書中で使用されるとき、物質は、それが他の構成要素を実質的に含まない場合、「純粋」である。本明細書中で使用されるとき、単離された物質および/または実体の純度パーセントの計算には、賦形剤(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)を含めるべきでない。
【0061】
ミモトープ(Mimotope):本明細書中で使用されるとき、用語「ミモトープ」とは、エピトープの構造を模倣する高分子のことを指す。いくつかの実施形態において、ミモトープは、対応するエピトープによって誘発される抗体応答と同一または類似の抗体応答を誘発する。いくつかの実施形態において、エピトープを認識する抗体は、そのエピトープを模倣するミモトープも認識する。いくつかの実施形態において、ミモトープは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、ミモトープは、小分子、炭水化物、脂質または核酸である。いくつかの実施形態において、ミモトープは、保存されたDVエピトープのペプチドまたは非ペプチドのミモトープである。いくつかの実施形態において、規定のウイルスエピトープの構造を模倣することによって、ミモトープは、DVウイルス粒子が、例えば、その天然の結合パートナー(例えば、DV標的レセプターであるRab5、GRP78)自体への結合によって、その天然の結合パートナーに結合する能力を干渉する。
【0062】
変異体:本明細書中で使用されるとき、用語「変異体」とは、参照実体と有意な構造的同一性を示すが、参照実体と比べたとき1つ以上の化学部分の存在またはレベルにおいて参照実体と構造的に異なる実体のことを指す。多くの実施形態において、変異体は、その参照実体と機能的にも異なる。通常、特定の実体が、参照実体の「変異体」であると正しくみなされるか否かは、参照実体との構造的同一性の程度に基づく。当業者が認識するように、任意の生物学的または化学的な参照実体は、ある特定の特徴的な構造エレメントを有する。変異体は、定義上、1つ以上のそのような特徴的な構造エレメントを共有する異なる化学的実体である。ほんの少しの例を挙げると、小分子は、特徴的なコア構造エレメント(例えば、大環状分子コア)および/または1つ以上の特徴的なペンダント部分を有し得、その小分子の変異体は、そのコア構造エレメントおよび特徴的なペンダント部分を共有するが、他のペンダント部分および/またはそのコア内に存在する結合のタイプ(一重対二重、E対Zなど)が異なる変異体であり、ポリペプチドは、線状もしくは3次元空間において互いに対して指定の位置を有するおよび/または特定の生物学的機能に寄与する、複数のアミノ酸を含む特徴的な配列エレメントを有し得、核酸は、線状または3次元空間において互い(on another)に対して指定の位置を有する複数のヌクレオチド残基を含む特徴的な配列エレメントを有し得る。例えば、変異体ポリペプチドは、アミノ酸配列の1つ以上の差および/またはポリペプチド骨格に共有結合的に付着された化学部分(例えば、炭水化物、脂質など)の1つ以上の差の結果として、参照ポリペプチドと異なり得る。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドは、参照ポリペプチドと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または99%である全体的な配列同一性を示す。代替的または付加的に、いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドは、参照ポリペプチドと少なくとも1つの特徴的な配列エレメントを共有しない。いくつかの実施形態において、参照ポリペプチドは、1つ以上の生物学的活性を有する。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物学的活性の1つ以上を共有する。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物学的活性の1つ以上を欠く。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドは、参照ポリペプチドと比べて低レベルの1つ以上の生物学的活性を示す。
【0063】
核酸:本明細書中で使用されるとき、用語「核酸」は、その最も広い意味において、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれるかまたは組み込まれ得る任意の化合物および/または物質のことを指す。いくつかの実施形態において、核酸は、ホスホジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれるかまたは組み込まれ得る化合物および/または物質である。いくつかの実施形態において、「核酸」とは、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)のことを指す。いくつかの実施形態において、「核酸」とは、個々の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖のことを指す。本明細書中で使用されるとき、用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用され得る。いくつかの実施形態において、「核酸」は、RNAならびに一本鎖および/または二本鎖のDNAおよび/またはcDNAを包含する。さらに、用語「核酸」、「DNA」、「RNA」および/または同様の用語は、核酸アナログ、すなわち、ホスホジエステル骨格以外を有するアナログを含む。例えば、当該分野で公知であり、ホスホジエステル結合の代わりにその骨格にペプチド結合を有する、いわゆる「ペプチド核酸」は、本発明の範囲内であるとみなされる。用語「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであるおよび/または同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質および/またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。核酸は、天然の供給源から精製され得、組換え発現系を使用して生成され得、必要に応じて、精製され得、化学的に合成され得る、など。適切な場合には、例えば、化学的に合成される分子の場合、核酸は、ヌクレオシドアナログ(例えば、化学的に改変された塩基または糖、骨格修飾などを有するアナログ)を含み得る。核酸配列は、別段示されない限り、5’から3’の方向で示される。用語「核酸セグメント」は、より長い核酸配列の一部である核酸配列のことを指すために本明細書中で使用される。多くの実施形態において、核酸セグメントは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の残基を含む。いくつかの実施形態において、核酸は、天然のヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジン);ヌクレオシドアナログ(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C−5プロピニル−シチジン、C−5プロピニル−ウリジン、2−アミノアデノシン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、2−アミノアデノシン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニンおよび2−チオシチジン);化学的に改変された塩基;生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化された塩基);インターカレートされた塩基;改変された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノースおよびヘキソース);および/または改変されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホルアミダイト結合)であるかまたはそれらを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、送達を促進または達成するために、化学的に改変されていない核酸(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドを含む、ポリヌクレオチドおよび残基)を意味する「改変されていない核酸」に明確に関する。
【0064】
患者:本明細書中で使用されるとき、用語「患者」または「被験体」とは、例えば、実験、診断、予防、美容および/または治療の目的で、提供される組成物を投与され得る任意の生物のことを指す。代表的な患者には、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類および/またはヒト)が含まれる。いくつかの実施形態において、患者は、ヒトである。ヒトには、出生前および出生後の形態が含まれる。
【0065】
薬学的に許容され得る:用語「薬学的に許容され得る」は、本明細書中で使用されるとき、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わずに、適切な医学的判断の範囲内において、人間および動物の組織と接触させて使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比と釣り合った、物質のことを指す。
【0066】
薬学的に許容され得るキャリア:本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得るキャリア」は、薬学的に許容され得る材料、組成物またはビヒクル(例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、または対象化合物を1つの臓器すなわち身体の一部から別の臓器すなわち身体の一部に運搬もしくは輸送するのに関わる溶媒封入材料)のことを意味する。各キャリアは、その製剤の他の成分と適合性でありかつ患者にとって有害でないという意味において「許容され得る」ものでなければならない。薬学的に許容され得るキャリアとして働き得る材料のいくつかの例としては:糖類(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオバターおよび坐剤ろう);油(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;ならびに薬学的製剤において使用される他の無毒性の適合性の物質が挙げられる。
【0067】
薬学的組成物:本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的組成物」とは、1つ以上の薬学的に許容され得るキャリアとともに製剤化された活性な作用物質のことを指す。いくつかの実施形態において、活性な作用物質は、関連する集団に投与されたとき、所定の治療効果を達成する統計学的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与にとって適切な単位用量で存在する。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、以下のために適合された薬学的組成物を含む固体または液体の形態で投与するために特別に製剤化され得る:経口投与、例えば、水薬(drench)(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下および全身性の吸収を標的にした錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト;例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液または徐放製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、非経口投与;例えば、クリーム、軟膏もしくは放出制御パッチ、または皮膚、肺もしくは口腔に適用されるスプレーとしての、局所的適用;例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームとしての、膣内または直腸内;舌下;眼;経皮的;または経鼻的、肺および他の粘膜面。
【0068】
ポリペプチド:本明細書中で使用されるとき、「ポリペプチド」は、概して、ペプチド結合によって互いに付着された少なくとも2つのアミノ酸の鎖(string)である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも3〜5個のアミノ酸を含み得、それらのアミノ酸の各々は、少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に付着されている。当業者は、ポリペプチドが、時折、「非天然の」アミノ酸またはそれでもなお必要に応じてポリペプチド鎖に組み込むことができる他の実体を含むことを認識するだろう。
【0069】
タンパク質:本明細書中で使用されるとき、用語「タンパク質」とは、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸の鎖)のことを指す。タンパク質は、アミノ酸以外の部分を含み得(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなどであり得)、かつ/または別の方法でプロセシングもしくは修飾され得る。当業者は、「タンパク質」が、細胞によって産生されるような完全なポリペプチド鎖(シグナル配列を有するかまたは有しない)であり得るか、またはその特徴的な一部であり得ることを認識するだろう。当業者は、タンパク質が時折、例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって連結されたまたは他の手段によって会合された、2本以上のポリペプチド鎖を含み得ることを認識するだろう。ポリペプチドは、l−アミノ酸、d−アミノ酸またはその両方を含み得、当該分野で公知の種々の任意のアミノ酸修飾またはアミノ酸アナログを含み得る。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などが挙げられる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、合成アミノ酸およびそれらの組み合わせを含み得る。用語「ペプチド」は、通常、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満または10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドのことを指すために使用される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、抗体、抗体フラグメント、その生物学的に活性な一部および/またはその特徴的な一部である。
【0070】
再発性のDV感染:本明細書中で使用されるとき、「再発性のDV感染」とは、感染に関する臨床および/または研究室でのエビデンス、例えば、1つ以上の感染の症状または循環DV粒子および/もしくは被験体の肝臓におけるDV粒子の存在の再出現のことを指す。
【0071】
不応性:用語「不応性」は、本明細書中で使用されるとき、提供される組成物の投与後に、現場の医療関係者が通常観察するような、予想される臨床的有効性で反応しない任意の被験体のことを指す。
【0072】
血清型:通常、「血清型」または「血液型亜型」とは、細菌もしくはウイルスの種の中または異なる個体の免疫細胞の間における異なるバリエーションのことを指す。これらの微生物は、代表的には、それらの細胞表面抗原に基づいて一緒に分類され、生物の亜種レベルへの疫学的分類が可能になる。
【0073】
小分子:通常、「小分子」は、約5キロダルトン(kD)未満のサイズの分子である。いくつかの実施形態において、小分子は、約4kD、3kD、約2kDまたは約1kD未満である。いくつかの実施形態において、小分子は、約800ダルトン(D)、約600D、約500D、約400D、約300D、約200Dまたは約100D未満である。いくつかの実施形態において、小分子は、約2000g/mol未満、約1500g/mol未満、約1000g/mol未満、約800g/mol未満または約500g/mol未満である。いくつかの実施形態において、小分子は、非ポリマーである。いくつかの実施形態において、本発明によると、小分子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、多糖、糖タンパク質、プロテオグリカンなどではない。
【0074】
実質的に:本明細書中で使用されるとき、用語「実質的に」とは、目的の特色または特性の全体またはほぼ全体の範囲または程度を示す定性的な条件のことを指す。生物学の分野の当業者は、生物学的および化学的な現象が、完了まで進むことおよび/もしくは完全なところまで進むこと、または決定的な結果に到達することもしくは決定的な結果を回避することがあったとしてもごくまれであることを理解するだろう。ゆえに、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的な現象に固有の完全性を潜在的に欠くことを捉えるために本明細書中で使用される。
【0075】
実質的な配列相同性:句「実質的な相同性」は、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較のことを指すために本明細書中で使用される。当業者が認識するように、2つの配列は、対応する位置に相同な残基を含む場合、通常、「実質的に相同」であるとみなされる。相同な残基は、同一の残基であり得る。あるいは、相同な残基は、適度に類似の構造的特色および/または機能的特色を有する(will)同一でない残基であり得る。例えば、当業者に周知であるように、ある特定のアミノ酸は、代表的には、「疎水性」もしくは「親水性」アミノ酸として、および/または「極性」もしくは「非極性」側鎖を有するアミノ酸として、分類される。1つのアミノ酸から同じタイプの別のアミノ酸への置換は、しばしば「相同」置換であるとみなされ得る。代表的なアミノ酸の分類を下記に要約する:
【0078】
この分野において周知であるように、アミノ酸配列または核酸配列は、商業的なコンピュータプログラム(例えば、ヌクレオチド配列用のBLASTNならびにアミノ酸配列用のBLASTP、gapped BLASTおよびPSI−BLAST)において利用可能なものを含む種々のアルゴリズムのいずれかを用いて比較され得る。例示的なそのようなプログラムは、Altschulら、Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403−410,1990;Altschulら、Methods in Enzymology;Altschulら、“Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997;Baxevanisら、Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;およびMisenerら(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されており;それらの前述のすべてが、参照により本明細書中に援用される。上で述べられたプログラムは、相同配列の同定に加えて、代表的には、相同性の程度の指標を提供する。いくつかの実施形態において、2つの配列の対応する残基の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上が、関連する一続きの残基に対して相同である場合、その2つの配列は、実質的に相同であるとみなされる。いくつかの実施形態において、その関連する一続きは、完全な配列である。いくつかの実施形態において、その関連する一続きは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、少なくとも475、少なくとも500またはそれ以上の残基である。
【0079】
実質的な同一性:句「実質的な同一性」は、アミノ酸配列間または核酸配列間の比較のことを指すために本明細書中で使用される。当業者が認識するように、2つの配列は、対応する位置に同一の残基を含む場合、通常、「実質的に同一」であるとみなされる。この分野において周知であるように、アミノ酸配列または核酸配列は、商業的なコンピュータプログラム(例えば、ヌクレオチド配列用のBLASTNならびにアミノ酸配列用のBLASTP、gapped BLASTおよびPSI−BLAST)において利用可能なものを含む種々のアルゴリズムのいずれかを用いて比較され得る。例示的なそのようなプログラムは、Altschulら、Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403−410,1990;Altschulら、Methods in Enzymology;Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997;Baxevanisら、Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;およびMisenerら(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されている。上で述べられたプログラムは、同一の配列の同定に加えて、代表的には、同一性の程度の指標も提供する。いくつかの実施形態において、2つの配列の対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が、関連する一続きの残基に対して同一である場合、その2つの配列は、実質的に同一であるとみなされる。いくつかの実施形態において、その関連する一続きは、完全な配列である。いくつかの実施形態において、その関連する一続きは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500またはそれ以上の残基である。
【0080】
〜に罹患している:疾患、障害または状態(例えば、DV)に「罹患している」個体は、その疾患、障害または状態と診断されており、かつ/またはそれらの1つ以上の症状を示す。DV感染は、無症候であることが多い。いくつかの実施形態において、DVに罹患している個体は、DVに曝露されたことがあり、かつ/またはDVに感染したことがあるが、DV感染のいかなる症状も示さず、かつ/またはDV感染と診断されたことがない。いくつかの実施形態において、DVに罹患している個体は、その個体の血液中に1つ以上のDV粒子を有する個体である。
【0081】
〜に感受性である:ある疾患、障害または状態(例えば、DV)に「感受性である」個体は、その疾患、障害または状態の発症に対するリスクがある。いくつかの実施形態において、ある疾患、障害または状態に感受性である個体は、その疾患、障害または状態のいかなる症状も示さない。いくつかの実施形態において、ある疾患、障害または状態に感受性である個体は、その疾患、障害および/または状態と診断されたことがない。いくつかの実施形態において、ある疾患、障害または状態に感受性である個体は、その疾患、障害または状態の発症に関連する条件に曝露されたことがある個体である(例えば、その個体は、DVに曝露されたことがある)。いくつかの実施形態において、ある疾患、障害および/または状態を発症するリスクは、集団に基づくリスクである(例えば、静脈内薬物使用者;以下のような製品がスクリーニングされ始めた1992年より前の、献血された血液、血液製剤および臓器のレシピエント;針を取り扱う医療従事者;DVに感染した母親から生まれた乳児;など)。
【0082】
症状が減少する:本発明によると、特定の疾患、障害または状態の1つ以上の症状の大きさ(例えば、強度、重症度など)または頻度が低下するとき、「症状は減少する」。明確にする目的で、特定の症状の発生の遅延は、その症状の頻度の低下の1つの形態とみなされる。ほんの少しの例を挙げると、DVの例示的な症状としては、急激な発熱、高熱(40℃より高いことが多い)、筋肉痛および関節痛、頭痛、嘔吐、下痢、紅潮した皮膚のような発疹または麻疹様発疹の発生、点状出血(皮膚を押しても消えない、毛細血管の破壊によって引き起こされる小さな赤色斑)、粘膜からの出血、低白血球数、低血小板、代謝性アシドーシス、肝臓からの高レベルのアミノトランスフェラーゼ、血液濃縮(ヘマトクリットの増加によって示される)および低アルブミン血症をもたらす血漿漏出、胸部および腹腔における体液の蓄積(例えば、胸水または腹水)、胃腸出血、ショックおよび出血、陽性の駆血帯試験、血圧低下、脳もしくは心臓の感染、生命の維持に必要不可欠な重要な臓器(例えば、肝臓)の機能障害、横断性脊髄炎などの神経障害ならびに/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、それらの症状が排除される場合にだけ限定されると意図されていない。本発明は、完全に排除されなくても、1つ以上の症状が減少する(およびそれによって、その被験体の状態が「改善される」)ような処置を明確に企図する。
【0083】
治療薬:本明細書中で使用されるとき、句「治療薬」とは、生物に投与されたとき、所望の薬理学的効果を誘発する任意の作用物質のことを指す。いくつかの実施形態において、ある作用物質は、それが適切な集団にわたって統計学的に有意な効果を示す場合に、治療薬であるとみなされる。いくつかの実施形態において、適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態において、適切な集団は、様々な基準(例えば、ある特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床的状態など)によって定義され得る。いくつかの実施形態において、治療薬は、ある疾患、障害および/または状態の1つ以上の症状または特徴を軽減する、回復させる、緩和する、阻害する、予防する、その発生を遅延させる、その重症度を低下させる、および/またはその発生数を低下させるために使用され得る任意の物質である。
【0084】
治療有効量:本明細書中で使用されるとき、用語「治療有効量」とは、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で、処置される被験体に対して治療効果をもたらす治療用タンパク質の量のことを指す。治療効果は、客観的(すなわち、何らかの試験またはマーカーによって測定可能)または主観的(すなわち、被験体が効果の指標を与えるかまたは効果を感じる)であり得る。特に、「治療有効量」とは、所望の疾患もしくは状態を処置する、回復させるもしくは予防するのに効果的かまたは検出可能な治療的もしくは予防的な効果を示すのに有効な(例えば、その疾患に関連する症状を回復させる、その疾患を予防するもしくはその疾患の発生を遅延させる、および/またはその疾患の症状の重症度もしくは頻度を下げることによって)治療用タンパク質または組成物の量のことを指す。治療有効量は、通常、複数の単位用量を含み得る投与レジメンで投与される。任意の特定の治療用タンパク質の場合、治療有効量(および/または有効な投与レジメンの範囲内で適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬品との併用に応じて、変動し得る。また、任意の特定の患者に対する具体的な治療有効量(および/または単位用量)は、処置される障害およびその障害の重症度;使用される特定の医薬品の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用される特定の融合タンパク質の投与時間、投与経路および/または排出速度もしくは代謝速度;処置の期間;ならびに医学分野において周知の類似の因子を含む種々の因子に依存し得る。
【0085】
処置:本明細書中で使用されるとき、用語「処置」(また、「処置する(treat)」または「処置する(treating)」)とは、特定の疾患、障害および/または状態(例えば、DV)の1つ以上の症状、特徴および/または原因を部分的または完全に軽減する、回復させる、緩和する、阻害する、その発生を遅延させる、その重症度を低下させる、および/またはその発生数を低下させる物質(例えば、提供される組成物)の任意の投与のことを指す。そのような処置は、関連する疾患、障害および/もしくは状態の徴候を示さない被験体ならびに/またはその疾患、障害および/もしくは状態の初期徴候だけを示す被験体の処置であり得る。代替的または付加的に、そのような処置は、関連する疾患、障害および/または状態の1つ以上の確立された徴候を示す被験体の処置であり得る。いくつかの実施形態において、処置は、関連する疾患、障害および/または状態に罹患していると診断された被験体の処置であり得る。いくつかの実施形態において、処置は、関連する疾患、障害および/または状態を発症する高リスクと統計的に相関する1つ以上の感受性因子を有すると知られている被験体の処置であり得る。
【0086】
単位用量:表現「単位用量」は、本明細書中で使用されるとき、薬学的組成物の単回用量としておよび/または物理的に分離した単位で投与される量のことを指す。多くの実施形態において、単位用量は、所定の量の活性な作用物質を含む。いくつかの実施形態において、単位用量は、作用物質の全単回用量を含む。いくつかの実施形態において、2以上の単位用量が、総単回用量を達成するために投与される。いくつかの実施形態において、意図される効果を達成するために、複数の単位用量の投与が、必要とされるかまたは必要とされると予想される。単位用量は、例えば、所定の量の1つ以上の治療薬を含むある体積の液体(例えば、許容され得るキャリア)、所定の量の1つ以上の固体形態の治療薬、所定の量の1つ以上の治療薬を含む徐放製剤または薬物送達デバイスなどであり得る。単位用量は、治療薬に加えて種々の任意の構成要素を含む製剤中に存在し得ることが認識されるだろう。例えば、下に記載されるような、許容され得るキャリア(例えば、薬学的に許容され得るキャリア)、希釈剤、安定剤、緩衝剤、保存剤などが含められ得る。多くの実施形態において、特定の治療薬の適切な総1日投与量は、単位用量の一部または複数を含み得、それは、例えば、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが当業者によって認識されるだろう。いくつかの実施形態において、任意の特定の被験体または生物に対する具体的な有効量のレベルは、処置される障害およびその障害の重症度;使用される特定の活性な化合物の活性;使用される特定の組成物;被験体の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用される特定の活性な化合物の投与時間および排出速度;処置の期間;使用される特定の化合物と併用してもしくは同時に使用される薬物および/またはさらなる治療、ならびに医学分野において周知の類似の因子を含む種々の因子に依存し得る。
【0087】
ワクチン接種:本明細書中で使用されるとき、用語「ワクチン接種」とは、例えば疾患を引き起こす因子に対して免疫応答をもたらすことを意図された組成物の投与のことを指す。本発明の目的のために、ワクチン接種は、疾患を引き起こす因子への曝露の前、曝露中および/または曝露の後に、ならびにある特定の実施形態において、その疾患を引き起こす因子への曝露の前、曝露中および/または曝露の直後に、投与され得る。いくつかの実施形態において、ワクチン接種には、適切な時間間隔での、ワクチン接種組成物の複数回の投与が含まれる。
【0088】
ベクター:本明細書中で使用されるとき、「ベクター」とは、会合する別の核酸を輸送することができる核酸分子のことを指す。いくつかの実施形態において、ベクターは、宿主細胞(例えば、真核細胞および/または原核細胞)において、それらが連結されている核酸を染色体外で複製および/または発現することができる。作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができるベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と称される。
【0089】
野生型:本明細書中で使用されるとき、用語「野生型」は、「正常な」(変異体、病的なもの、変化したものなどと対照をなすとき)状態または状況において天然に見られるような構造および/または活性を有する実体のことを指す、当該分野において理解されている意味を有する。当業者は、野生型の遺伝子およびポリペプチドが、しばしば、複数の異なる形態(例えば、対立遺伝子)で存在することを認識するだろう。
【0090】
DV命名法
DV命名法が、代表的に、DVの遺伝子型を表すローマ数字(例えば、「I」、「II」、「III」、「IV」など)およびDVのサブタイプを表す小文字(例えば、「a」、「b」など)を利用することは、当業者に周知である。この命名法の規則は、当該分野において広く受け入れられているが、当業者は、この命名法の規則が、必ずしも、刊行物、発表、会話などにおいて厳密に従われていないことを認識する。したがって、当業者であれば、例えば、「DV Ia」、「DV遺伝子型Ia」および「DVサブタイプIa」が当業者によって交換可能に使用され得ること、ならびにこの3つすべての用語がDV遺伝子型Iのサブタイプaのことを指すと意図されていることが、暗に意味されていることを認識するだろう。
【0091】
本明細書中で使用されるとき、ローマ数字(例えば、「I」、「II」、「III」、「IV」など)は、DVの遺伝子型のことを指すために使用され、小文字(例えば、「a」、「b」など)は、DVのサブタイプのことを指すために使用される。特定の遺伝子型のDVが本明細書中で言及されるとき、それは、命名される遺伝子型のサブタイプのすべてを包含すると意味されていることも理解されるだろう。ただ1つの例を挙げると、「遺伝子型I」は、遺伝子型Iのサブタイプのすべて(例えば、遺伝子型Iのサブタイプa;遺伝子型Iのサブタイプb;など)のことを指すために本明細書中で使用される。
【0092】
本明細書中で使用されるとき、遺伝子型およびサブタイプの指定の後に存在する任意のローマ数字(例えば、「I」、「II」、「III」、「IV」など)は、DVの株のことを指すと理解されるだろう。
【0093】
ある特定の実施形態の詳細な説明
本発明は、特定の構造的特色および/または機能的特色を有する有用な抗DV抗体剤、ならびにそのような抗体剤に関する組成物および方法を提供する。
【0094】
デングウイルス(DV)感染 DV感染は、主要な節足動物媒介性のウイルス性疾患であり、35億人を超える人々が、この疾患のリスクがある地域に居住しており、世界中の症例は2億を超え、1年あたり21,000人が死亡している。著しいことに、デングウイルス感染の年間平均報告数、地理的蔓延および疾患の重症度のすべてが、近年、劇的に増加している。デングウイルスの流行は、有意な罹患率をもたらし得、かなりの経済費用をもたらし、保健医療に影響している(Guzmanら、2010 Nature Reviews Microbiol.8:S7−16)。
【0095】
DV感染は、主にAedes aegyptiの蚊によって伝染する4つの関連ウイルスのいずれかが原因であり、熱帯および亜熱帯の地域に固有である。哺乳動物における感染は、感染したAedes蚊の吸血中のDVの注入によって開始され、それにより、そのDVは、主に血管外組織に沈着する。蚊に刺された後のDVの潜伏期間は、3〜14日間である。樹状細胞、単球およびマクロファージが、DVの最初の標的である。皮膚およびリンパ節(lymphatic ganglia)における最初の複製の後、DVは、急性発熱期の間、通常、3〜5日間、血液中に現れる。
【0096】
デングウイルス感染の日常的な研究室での診断は、DVの単離および/またはDVに特異的な抗体の検出に基づく。感染は、感染個体の年齢および/または免疫学的状況によって影響されるいくつかの異なる症候群を引き起こし得る。初めてのDV感染は、無症候であり得るか、またはデング熱になり得る。デング熱は、概して2相性の高熱および少なくとも1つのさらなる症状(例えば、頭痛(しばしば重度)、種々の身体部分のいずれか(例えば、眼、関節、筋肉、骨、腹部)における疼痛(重度であり得る)、皮膚の皮疹または発疹、軽度の出血の発現(例えば、鼻または歯肉からの出血、点状出血、あざができやすい)、リンパ節腫脹、嘔吐、変色した(黒色)便、気分への影響(例えば、虚脱、眠気または被刺激性)、蒼白色の、冷たいまたはベトベトした皮膚、呼吸困難、低白血球数、生物の組織(例えば、血液、骨髄など)および/もしくは臓器(例えば、肝臓)の1つ以上における循環ウイルス粒子)によって特徴付けられる(例えば、Center for Disease Controlの説明を参照のこと;US2011/0189226も参照のこと)。白血球数および血小板数の減少が、頻繁に生じる。
【0097】
デング出血熱(DHF)は、DV感染の潜在的に致命的な合併症である。DHFは、高熱およびデング熱に関連する他の症状に加えて、極度の嗜眠および眠気によって特徴付けられる。血管透過性の増大および異常なホメオスタシスのせいで、血液量の減少、血圧低下、および重篤な場合は、血液量減少性ショックおよび内出血に至り得る。出血性デング熱の発生において主要な役割を果たすとみられる2つの因子は:高レベルのウイルス血症を伴う急速なウイルス複製;および高レベルの炎症性メディエーターの放出を伴う大きな炎症反応である。処置しないと、出血性デング熱の死亡率は、10%に達し得る。
【0098】
小児は、特に、DV感染の影響を受けやすく、それは、反復曝露によって劇的に高まり得る。初めてのデングウイルス感染では、ほとんどの小児が、不顕性の感染または軽度の未分化型の発熱症候群を経験する。2回目のデングウイルス感染では、この疾患の病態生理学は、劇的に変化することが多い。逐次的な感染は、デングショック症候群(DSS)として知られる急性の血管透過性症候群になり得る。DSSは、通常、DHFの進行であり、致死的であることが多い。DSSは、頻脈および脈拍微弱(rapid and poor volume pulse)、血圧低下、四肢の冷えおよび不安・興奮状態(restlessness)によって特徴づけられる。医学的介入を行わないと、DSSの致命率は、40〜50%に達し得る(Thullierら、1999 Journal of Biotechnology 69:183−190)。DSSの重症度は、年齢依存的であり、低年齢小児では血管漏出が最も重篤である。
【0099】
成人におけるDV感染は、重度の出血に至り得る出血の傾向を伴うことが多い。DV感染は、喘息、糖尿病および/または他の慢性疾患を有する個体に生じるとき、生命を危うくし得る(Guzmanら、2010 Nature Reviews Microbiol.8:S7−16)。
【0100】
2回目のDVの場合における重度の疾患の高リスクを説明するために提唱されている有力な説は、抗体依存性増強(ADE)である。デングウイルス(DV)は、各血清型に特有の抗体エピトープ、ならびに血清型間で共有されるエピトープを提示する。最初のDV感染を経験した(およびそれから回復した)被験体は、すべてのDV血清型(DV1〜4)と交差反応する強い抗体応答を起こし得る。しかしながら、その交差反応性にもかかわらず、抗体は、同じ(相同)血清型による再感染を予防するだけであり、個体は、異なる(異種)血清型によるその後の感染に感受性である。新しい血清型による2回目のデング熱感染を経験している個体は、DHFを発症する一層大きなリスクに直面することから、DVに対する既存の免疫が疾患を悪化させ得ると示唆される。DVのADE説は、最初の感染からの弱い中和抗体が、第2の血清型に結合し、FcγRを有する骨髄性細胞(例えば、単球およびマクロファージ)の感染を増強すると仮定する(Wahalaら、2011 Viruses 3:2374−2395)。
【0101】
少なくとも3つのタイプの機序が、重度の形態のDV感染の発生を説明するために提唱されている:(i)それらが、特に毒性のウイルス株によって引き起こされ得る;(ii)既存の中和未満の(subneutralizing)抗体が、DVの宿主細胞として指定される単球またはマクロファージによるDVの抗体媒介性取り込みを増強し得る(例えば、ADE);および(iii)ウイルスの非構造タンパク質(NS1)に対して指向される抗体が、フィブリノゲン、血小板および内皮細胞と交差反応し得るので、出血が引き起こされ得る。
【0102】
現在、デング熱に特異的な処置は存在しない。推奨されている治療は、症状に対処するものであり、それらとしては、床上安静、解熱薬および/または鎮痛薬による発熱および疼痛の管理、ならびに適切な水分補給が挙げられる。液体喪失の調整、凝固因子の置換およびヘパリンの注入に労力が費やされている。DVの配列変異性および抗原変異性は、有効なワクチンまたは治療薬を開発する努力を困難なものにした(Whiteheadら、2007 Nature Reviews Microbiology 5:518−528)。残念なことに、優れたワクチン候補が、最近、第II相試験においてたった30%の保護効能しか示さなかった(Thomasら、2011 Curr Op Infectious Disease 24:442−450;Sabchareonら、2012 Lancet 380(9853):1559−1567)。ゆえに、改善されたDV治療、ワクチンを開発する必要がある。特に価値があるのは、すべてのDV血清型に適用可能である処置の開発だろう。そのような治療は、ヒトの健康に対して、特に、開発途上国において、極めて大きな影響を与えるだろう。
【0103】
DV抗原
DV感染は、類似の血清学的タイプであるが抗原的に異なる4つのウイルス(DV1〜4)が原因である。DVは、フラビウイルス科のフラビウイルス属に属するプラス鎖一本鎖RNAウイルスである。そのビリオンは、リポ多糖エンベロープを有する直径40〜50nmの球状粒子を構成する。そのRNAゲノムは、およそ11kb長であり、5’タイプI末端を含むが、3’ポリAテイルを欠く。そのゲノムの構成は、以下のエレメントを含む:5’非コード領域(NCR)、構造タンパク質をコードする領域(キャプシド(C)、プレ膜/膜(prM/M)、エンベロープ(E))および非構造タンパク質をコードする領域(NS1−NS2A−NS2B−NS3−NS4A−NS4B−NS5)ならびに3’NCR。
【0104】
そのウイルスゲノムRNAは、キャプシドタンパク質と会合して、ヌクレオカプシドを形成する。フラビウイルスに典型的であるように、デングウイルスゲノムは、単一のポリプロテインに翻訳され、翻訳後にプロセシングされる、中断されていないコード領域をコードする。DVの重要な生物学的特性としては、レセプター結合、赤血球の血球凝集、中和抗体の誘導および防御免疫応答が挙げられ、これらの特性は、Eタンパク質と関連する(Wahalaら、2011 Viruses 3:2374−2395)。
【0105】
約19kDaの糖タンパク質でもあるPrMタンパク質は、3つのジスルフィド架橋を形成する6つの高度に保存されたシステイン残基を含み、成熟中にフューリンまたはフューリン様プロテアーゼによってPrおよびMタンパク質に切断される。
【0106】
約40kDaの糖タンパク質であるNS1タンパク質は、6つのジスルフィド架橋を形成する12個の高度に保存されたシステイン残基を含み、細胞内、細胞表面上および細胞外に存在する(Laiら、2008 Journal of Virology 82(13):6631−43)。
【0107】
およそ55kDaの糖タンパク質であるEタンパク質は、6つのジスルフィド架橋を形成する12個の厳密に保存されたシステイン残基を含み、ビリオンの成熟前は、PrMタンパク質とのヘテロ二量体として存在する。Eタンパク質の外部ドメインのX線結晶学的研究から、らせん状のステムアンカーによってウイルス膜に接続された3つの異なるベータ−バレルドメインおよび2つの逆平行の膜貫通ドメインが明らかになった。ドメインIII(EDIII)は、免疫グロブリン様の折り畳みを採用し、レセプター相互作用において決定的な役割を果たすと示唆された。ドメインII(EDII)は、2つの中指様構造から構成される伸長ドメインであり、その先端に高度に保存された13個のアミノ酸融合ループ(EDII−FL)を含み、Eタンパク質の膜融合および二量体化に関与する。Eの中央のドメイン(ドメインI;EDI)は、EDIIIおよびEDIIにそれぞれ1つおよび4つの可撓性リンカーによって接続された9本鎖β−バレルである。Eタンパク質は、フラビウイルスの生活環において、ウイルス集合、レセプター付着、侵入、ウイルス融合およびおそらく免疫回避にとって重要であり、ゆえに、ウイルス粒子上でいくつかの異なる立体配座および配置を取るために必要とされる動的タンパク質である。さらに、Eタンパク質は、中和抗体と増強抗体の両方の主要な標的である(Laiら、2008 Journal of Virology 82:6631−6643;Piersonら、2008 Cell Host & Microbe 4:229−38)。
【0108】
DVは、小胞体(ER)の膜上で集合し、このウイルスは、未熟なウイルス粒子としてERの内腔に出芽する。滑面を有する成熟したウイルス粒子とは異なり、ERの中に出芽する未熟なウイルス粒子は、ウイルスエンベロープ上に正二十面体の対称性を有する60個の先のとがった突起を形成するE/prMヘテロ二量体の三量体によって形成される粗面を有する(Pereraら、2008 Antivir.Res.80 11−22)。各三量体のEタンパク質は、ビリオンの表面から突出し、融合ループを含むEDIIの遠位末端を介してprMと相互作用する。未熟なビリオン上のPrMは、Eタンパク質が、ウイルス放出中に低pHゴルジ由来の分泌性コンパートメント内でオリゴマー再配列を起こす能力を制限し、ゆえに、成熟前かつ外因性の融合を防ぐ(Guirakhooら、1991 Journal of Virology 72:1323−1329;Heinzら、1994 Journal of Virology 198(1):109−117)。未熟なビリオンは、トランスゴルジネットワーク(TGN)の酸性コンパートメントを通るとき、prMおよびEタンパク質の配向の変化によって、細胞セリンプロテアーゼフューリンに対する部位を露出する。この低pH環境では、未熟なビリオンのEタンパク質は、そのビリオンの表面に対して平らである逆平行の二量体を形成し、T=3準正二十面体の対称性で配置される(Yuら、2009 Journal of Virology 83(23):12101−12107)。prMタンパク質は、フューリンの切断の後に放出され、細胞外空間において中性pHへの遷移が生じるまで、EDIIの融合ループをマスクし続ける。得られた成熟した感染性ウイルスは、90個のEタンパク質二量体および180コピーの約70アミノ酸のMタンパク質から構成される比較的滑らかな粒子である。この構成において、成熟DV上のEタンパク質は、2、3または5回対称軸への近接によって定義される3つの異なる環境に存在する(Kuhnら、2002 Cell 108:717−25)。したがって、Eタンパク質サブユニットのすべてが、ウイルスの表面上の同一の環境に存在するわけではなく、立体的なおよび他の考慮によって、レセプターおよび抗体とのその他の相互作用よりも、いくつかのEサブユニットの優先的な相互作用がもたらされる。
【0109】
Eタンパク質上の高度に保存された融合ループを認識する抗体は、4つすべてのDV血清型に対して広範な反応性を示す;しかしながら、おそらくこのエピトープの大部分が成熟DVでは接近しにくいことに起因して、それらの中和能力は、典型的に限定的である。Eタンパク質ドメインIII(EDIII)の「A」β鎖を認識するいくつかの抗体は、特定のDV株を強力に中和すると示されているが、4つすべての血清型に対して有効であるとは知られていない(Lokら、Nature Structural & Molecular Biol.15:312−317)。この「A」β鎖は、EDIII上の305〜308位(DV3ナンバリング)に中心を置く部分複合体エピトープの一部である。本明細書中に記載されるように、本発明は、E抗原および特にEDIIIドメインが、広いスペクトルの抗DV抗体剤に対する有用な抗原性標的として働き得るという知見を包含する。本発明は特に、E抗原(例えば、EDIIIドメイン)に結合するがすべてのDV血清型を中和しない抗体が、DV血清型1〜4のすべてを中和する改変体および/または他の抗体剤を生成するように合理的に操作され得ることを証明する(例えば、
図3を参照のこと)。さらに、本発明は、E抗原(例えば、EDIIIドメイン)に結合して、いくつかであってすべてではないDV血清型を中和する抗体が、親抗体と比べて、ある特定の他の株および/またはサブタイプに対する活性を有意に枯渇させずに、親抗体と比べて、1つ以上の特定の株および/または血清型に対する中和活性を獲得した改変体および/または他の抗体剤を生成するように合理的に操作され得ることを証明する。
【0110】
4E11抗体
抗体は、その高い生化学的特異性および確立された安全記録に部分的に起因して、有効なクラスの抗ウイルス治療薬であると判明した。さらに、抗体は、デングウイルスを含む急速な大流行を示す感染症にとって特に必要とされる適用である、人において予防的に使用することを可能にする長い血清半減期(約21日間)を有する。
【0111】
フラビウイルス感染から保護する抗体は、(1)レセプター結合の直接的な中和、(2)ウイルスの融合の阻害、(3)Fc−γ−レセプター依存性のウイルスクリアランス、(4)ウイルスまたは感染細胞の補体媒介性溶解、および(5)感染細胞の抗体依存性細胞傷害のうちの1つ以上を含む複数の機序によって作用すると考えられている(Piersonら、2008 Cell Host & Microbe 4:229−38)。フラビウイルスの中和は、複数の抗体による結合を必要とすると考えられている(Dowdら、2011 Virology 411:306−15)。付着後の段階において西ナイルウイルスを中和する、EDIIIに結合するmAbであるE16を用いた研究は、有効な中和のために約30個の抗体が結合する必要があることを示唆している。研究は、抗体結合の親和性と接近可能なエピトープの総数の両方が、抗体の中和能力に寄与することを示唆した。したがって、高親和性で結合する抗体であっても、接近可能なエピトープの数が、中和に必要とされるある特定のレベル未満である場合、その抗体は中和しない。逆に、エピトープの多くが、結合のために接近可能である場合、より低い親和性の抗体でも、中和し得る。
【0112】
すでに述べたように、デングウイルス(DV)は、各血清型に対して独特の抗体エピトープおよび血清型間で共有されるエピトープを提示する。どのようにして抗体がDVを中和するかまたは増強するかを理解するためのほとんどの研究が、マウスモノクローナル抗体(mAb)を用いて行われた。Eタンパク質は、ビリオンの表面上に露出された主要な抗原であるので、Eタンパク質に結合するマウスmAbは、多くの解析の焦点だった。マウスの中和mAbは、3つすべてのドメインにマッピングされたが、最も強く中和するmAbは、血清型特異的であり、ビリオンの表面から突出するEDIIIに結合する。外側隆起部(lateral ridge)エピトープおよびA鎖エピトープと命名された、EDIII上の部分的に重複する2つのエピトープは、DVを中和するマウスmAbの主要な標的である。
【0113】
外側隆起部エピトープは、血清型特異的な強力な中和抗体と相互作用する。例えば、mAb 3H5は、DV血清型2のEDIII−LRにマッピングされ、これらのmAbによって認識されるエピトープは、A鎖(アミノ酸304)とFGループ(残基383および384)の両方に位置する(Sukupolvi−Pettyら、2007 Journal of Virology 81(23):12816−12826)。
【0114】
しかしながら、EDIIIに結合するすべての抗体が、タイプ特異的中和活性を示すわけではない。A鎖エピトープに結合するmAbは、2つ以上の血清型のDVと交差反応し、デングウイルス部分複合体中和mAbと命名される。例えば、部分複合体特異的mAb 1A1D−2は、EDIIIの側面のA鎖に中心を置くエピトープを認識し、DV血清型1〜3(DV1〜3)による感染を中和できるが、DV血清型4(DV4)による感染を中和できない(Lokら、2008 Nature Struct Mol Biol 15(3):312−317;Roehrigら、1998 Virology 246(2):317−328;Sukupolvi−Pettyら、2007 Journal of Virology 81(23):12816−12826)。このmAbの特異性に対する分子基盤は、調査されてきた;1A1D−2エピトープの中心に存在する3つの残基のうちの1つだけが、4つすべてのDV血清型(DV1〜4)の間で保存されている。類似のA鎖エピトープもまた、広く中和する交差反応性のDV mAb 4E11によって認識される(Thullierら、2001 Journal Gen Virol.82(8):1885−1892)。しかしながら、これまでの実験アプローチは、4つすべてのDV血清型を強力に中和できる抗体をもたらさなかった。
【0115】
E糖タンパク質のEDIII内に結合する4E11として知られる1つの特定のマウスモノクローナル抗体は、DV血清型1〜4に対して強力な中和活性を示す。4E11は、E糖タンパク質のDV EDIII上のコンフォメーションエピトープに結合し、4つすべての血清型と交差反応する。4E11は、宿主細胞への付着を干渉することによって、DV1〜3を強力に中和する。しかしながら、4E11は、DV4に対して不十分な親和性しか有しないので、DV4に対して弱い中和活性しか有しない。
【0116】
マウスモノクローナル抗体4E11を分泌するハイブリドーマ細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号:HB−9259として寄託されている。野生型(「wt」)の4E11重鎖(HC;配列番号1)および軽鎖(LC;配列番号2)の配列は、公知である。wt 4E11フレームワーク(FR)および相補性決定領域(complement determining regions)(CDR)の配列は、公知である(wt 4E11 HC FR1は、配列番号3であり、wt 4E11 HC FR2は、配列番号4であり、wt 4E11 HC FR3は、配列番号5であり、wt 4E11 HC FR4は、配列番号6であり、wt 4E11 HC CDR1は、配列番号7であり、wt 4E11 HC CDR2は、配列番号8であり、wt 4E11 HC CDR3は、配列番号9であり;wt 4E11 LC FR1は、配列番号10であり、wt 4E11 LC FR2は、配列番号11であり、wt 4E11 LC FR3は、配列番号12であり、wt 4E11 LC FR4は、配列番号13であり、wt 4E11 LC CDR1は、配列番号14であり、wt 4E11 LC CDR2は、配列番号15であり、wt 4E11 LC CDR3は、配列番号16である)。
【0119】
本発明は、wt 4E11の改変体である抗体(または他の抗体剤)を開発することが望ましいだろうという認識を包含する。本発明は特に、そのような抗体および抗体剤を提供する。つまり、本発明は、4E11と有意な構造的同一性を示し、wt 4E11で観察されるものと比べて改善された機能的特色(例えば、DV4の中和)をさらに示す、様々な抗体剤を提供する。
【0120】
本開示は、抗原抗体相互作用をドッキングさせるための新規のスコアリング測定基準(scoring metric)を提供する。スコアリング測定基準のフレームワークは、タンパク質間の界面を、分子間の界面において観察される対アミノ酸相互作用の物理化学的な特徴および傾向に従ってランク付けする。本開示は、このフレームワークを使用して、既存の抗体の特性を改変する。いくつかの実施形態において、抗原に対する抗体の特異性および親和性が、改変される。いくつかの実施形態において、改変される抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、本発明に開示されるフレームワークは、抗DV中和mAbに対するより広い特異性および親和性を操作するために使用される。
【0121】
ドッキングされたモデルを用いて、抗DV抗体がDVの4つすべての血清型(DV1〜4)に結合する様式を調べ、DV4に対するこれらの抗体の親和性が低いことの構造的根拠を特定した。これらの抗体のDV1〜3に対する親和性および中和活性を維持しつつ、DV4に対する親和性、およびそれにより中和活性を改善するために、これらの抗体のパラトープに対して入念に変異を設計した。変異を設計するために、それらのmAbのCDRループ残基を1つずつ入念に調べた。所与のCDRの位置において、「野生型」残基を、グリシン(Gly)およびプロリン(Pro)を除く残りのアミノ酸で系統的に置換し、統計的な対の傾向を用いて、各場合における置換の確率を評価した。骨格の立体配座の変更を回避するために、GlyおよびPro残基は改変しなかった。高い置換能力を有する単一変異をモデル化し、コンピュータで再評価して、(1)phi−psi値を変化させない変異;(2)極性基を埋没させない変異;ならびに(3)水素結合、塩橋、ファンデルワールス、疎水性接触およびパッキングを改善した変異を発見した。コンピュータでのアプローチによって同定された有望な単一変異を、ハイスループット間接的酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法を使用してスクリーニングすることにより、DV1〜3 EDIIIに対する親和性は維持しつつ、DV4 EDIIIに対する親和性を改善する正の変異を同定した。最後に、正の単一変異を組み合わせることにより、高親和性抗体を合理的に設計した。操作された抗体と4つの各血清型由来のEDIIIとの間の親和性を溶液中の平衡時において測定するために、競合ELISA実験を行った。表面プラズモン共鳴(SPR)解析を用いて、結合の測定を検証した。
【0122】
いくつかの実施形態において、A鎖エピトープに対する抗体は、DVの4つすべての血清型に結合するように操作され得る。いくつかの実施形態において、DV1〜3に対する親和性は維持しつつ、wt 4E11抗DV抗体を、DV4に対する親和性、およびそれにより中和活性を改善するように改変する。いくつかの実施形態において、操作された抗体のうちの1つは、DV1およびDV3のEDIIIに対する元の親和性は維持しつつ、DV2およびDV4のEDIIIに対する親和性の、それぞれ約15および約450倍の改善を示す。いくつかの実施形態において、wt mAb 4E11と比べて、操作された抗体は、他の血清型に対する「野生型」活性をなおも維持しつつ、DV4に対して>75倍高い中和能力を示した。本発明に係る操作された4E11抗体は、デング熱疾患を処置する治療用抗体の興味深い候補である。
【0123】
提供される改変体DV抗体剤
提供される抗体剤は、その抗体剤の特色および/または活性を改善するような方法で操作、生成および/または精製され得ることが、認識されるだろう。例えば、提供される抗体剤の改善された特色としては、とりわけ、高い安定性、改善された結合親和性および/またはアビディティー、高い結合特異性、増大された生成、凝集の減少、非特異的結合の減少が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
通常、本明細書中に記載されるように、提供される抗体剤は、例えば、ポリクローナル抗体;モノクローナル抗体もしくはその抗原結合フラグメント;改変された抗体(例えば、キメラ抗体、再形成抗体、ヒト化抗体もしくはそのフラグメント(例えば、Fab’、Fab、F(ab’)
2));または生合成抗体、例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、一本鎖Fv(scFv)などであり得るかまたはそれらを含み得る。
【0125】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製および使用する方法は、例えば、Harlowら、Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol I.Cold Spring Harbor Laboratory(Dec.1,1998)に記載されている。改変された抗体剤(例えば、抗体および抗体フラグメント(例えば、キメラ抗体、再形成抗体、ヒト化抗体もしくはそのフラグメント、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)
2フラグメント));または生合成抗体(例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、一本鎖Fv(scFv)など)を作製するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、Zola,Monoclonal Antibodies:Preparation and Use of Monoclonal Antibodies and Engineered Antibody Derivatives,Springer Verlag(Dec.15,2000;1st edition)に見られる。
【0126】
本発明は、DVの4つすべての血清型(DV1〜4)に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のDV1に対する親和性と比べてより高い親和性でDV1に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のDV2に対する親和性と比べてより高い親和性でDV2に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のDV3に対する親和性と比べてより高い親和性でDV3に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のDV4に対する親和性と比べてより高い親和性でDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のDV1、DV2、DV3およびDV4に対する親和性と比べてより高い親和性でDV1、DV2、DV3およびDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV4に結合し、かつDV1、DV2およびDV3に対する結合親和性を保持する、抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV1およびDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV1およびDV4に結合し、かつDV2およびDV3に対する結合親和性を保持する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV2およびDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV2およびDV4に結合し、かつDV1およびDV3に対する結合親和性を保持する。いくつかの実施形態において、本発明は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV3およびDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、別の抗体のこれらのDV血清型に対する親和性と比べて、より高い親和性でDV3およびDV4に結合し、かつDV1およびDV2に対する結合親和性を保持する。
【0127】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、異なる抗体のDV1〜4の1つ以上に対する親和性と比べて少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれを超える親和性で、DV1〜4の1つ以上に結合する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、異なる抗体のDV1〜4の1つ以上に対する親和性と比べて少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも300倍、少なくとも400倍、少なくとも500倍の親和性またはそれを超える親和性でDV1〜4の1つ以上に結合する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、異なるDV血清型に対して、互いの2倍以内、5倍以内、10倍以内、25倍以内、50倍以内、100倍以内、150倍以内、200倍以内、250倍以内、300倍以内、350倍以内または400倍以内の親和性である結合親和性を示す。
【0128】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、本明細書中に記載および/または例証されるような範囲内の中和IC
50(μg/ml)を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、下界が約0.05μg/mlであり、上界が約10μg/mlである、中和IC
50(μg/ml)を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、下界が、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.3μg/ml、0.4μg/ml、0.5μg/ml、0.6μg/ml、0.7μg/ml、0.8μg/ml、0.9μg/ml、1.0μg/ml、1.1μg/ml、1.2μg/ml、1.3μg/ml、1.4μg/ml、1.5μg/ml、1.6μg/ml、1.7μg/ml、1.8μg/ml、1.9μg/ml、2.0μg/ml、2.5μg/ml、3.0μg/ml、3.5μg/ml、4.0μg/ml、4.5μg/ml、5.0μg/mlまたはそれを超えるものからなる群より選択され、上界が、下界より高く、1.5μg/ml、1.6μg/ml、1.7μg/ml、1.8μg/ml、1.9μg/ml、2.0μg/ml、2.5μg/ml、3.0μg/ml、3.5μg/ml、4.0μg/ml、4.5μg/ml、5.0μg/ml、5.5μg/ml、6.0μg/ml、6.5μg/ml、7.0μg/ml、7.5μg/ml、8.0μg/ml、8.5μg/ml、9.0μg/ml、9.5μg/ml、10.0μg/mlまたはそれを超えるものからなる群より選択される、中和IC
50(μg/ml)を示す。
【0129】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、40000nM未満、30000nM未満、20000nM未満、10000nM未満、5000nM未満、2000nM未満、1500nM未満、1000nM未満、500nM未満、250nM未満、225nM未満、200nM未満、175nM未満、150nM未満、125nM未満、100nM未満、75nM未満、50nM未満、25nM未満、15nM未満、10nM未満、5nM未満、2.5nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満、0.1nM未満のK
D(nM)でのDV1〜4への結合を示す。
【0130】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、下界が約0.01×10
5M
−1s
−1であり、上界が約5.0×10
6M
−1s
−1である、K
on(M
−1s
−1)でのDV1〜4への結合を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体は、下界が、0.01×10
5M
−1s
−1、0.05×10
5M
−1s
−1、0.1×10
5M
−1s
−1、0.5×10
5M
−1s
−1、1.0×10
5M
−1s
−1、2.0×10
5M
−1s
−1、5.0×10
5M
−1s
−1、7.0×10
5M
−1s
−1またはそれを超えるものからなる群より選択され、上界が、下界より高く、1.0×10
6M
−1s
−1、1.5×10
6M
−1s
−1、2.0×10
6M
−1s
−1、2.5×10
6M
−1s
−1、3.0×10
6M
−1s
−1、3.5×10
6M
−1s
−1、4.0×10
6M
−1s
−1、4.5×10
6M
−1s
−1、5.0×10
6M
−1s
−1またはそれを超えるものからなる群より選択される、K
on(M
−1s
−1)でのDV1〜4への結合を示す。
【0131】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、下界が約5×10
−4s
−1であり、上界が約900×10
−4s
−1である、K
off(s
−1)でのDV1〜4への結合を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、下界が、5×10
−4s
−1、10×10
−4s
−1、12×10
−4s
−1、13×10
−4s
−1、14×10
−4s
−1、15×10
−4s
−1、18×10
−4s
−1、20×10
−4s
−1またはそれを超えるものからなる群より選択され、上界が、下界より高く、50×10
−4s
−1、100×10
−4s
−1、120×10
−4s
−1、140×10
−4s
−1、150×10
−4s
−1、200×10
−4s
−1、300×10
−4s
−1、400×10
−4s
−1、500×10
−4s
−1、600×10
−4s
−1、700×10
−4s
−1、800×10
−4s
−1、900×10
−4s
−1またはそれを超えるものからなる群より選択される、K
off(s
−1)でのDV1〜4への結合を示す。
【0132】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、DV1〜4のE糖タンパク質に結合する。ある特定の実施形態において、提供される抗体剤は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)に結合する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、DV1〜4のA鎖に結合する。いくつかの実施形態において、本発明は、より高い親和性でDV4のEDIII(配列番号20)に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、より高い親和性でDV4のA鎖に結合する抗体剤を提供する。
【0134】
いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の305、306、307、308、309、310、311、312、323、325、327、329、360、361、362、363、364、385、387、388、389、390、391位および/またはそれらの組み合わせにおける1つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の305、310、311、323、327、329位および/またはそれらの組み合わせにおける1つ以上のアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の305、310、311、323、327および329位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の305位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の310位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。ある特定の実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の311位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の323位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の327位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。いくつかの実施形態において、本発明は、DV1〜4のEDIII(配列番号17〜20)の中の329位におけるアミノ酸残基に結合する抗体剤を同定する。
【0135】
いくつかの実施形態において、305位におけるセリン、リジンおよび/またはトレオニン残基は、提供される抗体剤への結合に寄与する。いくつかの実施形態において、310位におけるリジン残基は、提供される抗体剤への結合に寄与する。いくつかの実施形態において、311位におけるリジン残基は、提供される抗体剤への結合に寄与する。いくつかの実施形態において、323位におけるアルギニン、リジンおよび/またはグルタミン残基は、提供される抗体剤への結合に寄与する。いくつかの実施形態において、327位におけるセリンおよび/またはグルタミン酸残基は、提供される抗体剤への結合に寄与する。いくつかの実施形態において、329位におけるアルギニン、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸残基は、提供される抗体剤への結合に寄与する。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明は、野生型(「wt」)DV抗体と比べて、より高い親和性でDV1に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、wtまたは親参照DV抗体と比べて、より高い親和性でDV2に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、wt DV抗体などの参照抗体と比べて、より高い親和性でDV3に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、参照DV抗体と比べて、より高い親和性でDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、参照DV抗体と比べて、より高い親和性でDV1、DV2、DV3およびDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、参照DV抗体と比べて、より高い親和性でDV4に結合し、かつDV1、DV2およびDV3に対する結合親和性を保持する、抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、参照(wt)DV抗体と比べて、より高い親和性でDV2およびDV4に結合する抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、参照DV抗体と比べて、より高い親和性でDV2およびDV4に結合し、かつDV1およびDV3に対する結合親和性を保持する。いくつかの実施形態において、wt
DV抗体は、wt 4E11抗体である。
【0137】
本明細書中に記載されるように、本発明は、4E11とある特定の構造的(すなわち、配列)関係性を示し、かつ/または特定の機能的特質(例えば、wt 4E11と比べてある特定の改善された機能的特質を含む)を有する、抗体剤を提供する。
【0138】
いくつかの実施形態において、本発明は、アミノ酸配列が、wt 4E11と指定のレベルの相同性および/または同一性を示す、抗体剤を提供する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、wt 4E11(すなわち、配列番号1〜2)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示す。
【0139】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、配列GFNIKDT(配列番号23)を含む重鎖(HC;配列番号21)CDR1、配列DPENGD(配列番号24)を含むHC CDR2、配列GWEGFAY(配列番号25)を含むHC CDR3、配列RASENVDKYGNSFMH(配列番号26)を含む軽鎖(LC;配列番号22)CDR1、配列RASELQW(配列番号27)を含むLC CDR2領域および配列QRSNEVPWT(配列番号28)を含むLC CDR3領域を有する。
【0141】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、wt 4E11の対応するCDRまたはFR(すなわち、配列番号7〜9、14〜16または3〜6、10〜13のうちの1つ以上)と配列が同一である1つ以上のCDRおよび/または1つ以上のFRを有する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、下記で考察されるようなwt 4E11の対応するCDRおよび/またはFRと指定の程度の相同性および/または同一性を示す1つ以上のCDRおよび/またはFRを有する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のCDRおよびFRのすべてが、少なくとも指定のレベルの相同性および/または同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤は、wt 4E11と比べて、合わせて18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個以下の置換を含むCDRおよびFR配列を有する。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤の相補性決定領域(CDR)1は、wt 4E11(配列番号7および配列番号14)と少なくとも65%、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供されるCDR1は、wt 4E11のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ/またはwt 4E11のCDR1(配列番号7および配列番号14)と比べていかなるアミノ酸置換も含まない。いくつかの実施形態において、提供されるCDR1は、wt 4E11(配列番号7および配列番号14)と比べて、1つ以上のアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、提供されるCDR1は、wt 4E11(配列番号7および配列番号14)と比べて、2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるCDRは、wt 4E11と比べて、1、2、3、4または5個の置換、いくつかの実施形態では1、2または3個の置換を有する。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤のCDR2は、wt 4E11(配列番号8および配列番号15)と少なくとも65%、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供されるCDR2は、wt 4E11のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ/またはwt 4E11のCDR2(配列番号8および配列番号15)と比べていかなるアミノ酸置換も含まない。いくつかの実施形態において、提供されるCDR2は、wt 4E11(配列番号8および配列番号15)と比べて、1つ以上のアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、提供されるCDR2は、wt 4E11(配列番号8および配列番号15)と比べて、2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるCDRは、wt 4E11と比べて、1、2、3、4または5個の置換、いくつかの実施形態では1、2または3個の置換を有する。
【0144】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤のCDR3は、wt 4E11(配列番号9および配列番号16)と少なくとも65%、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供されるCDR3は、wt 4E11のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ/またはwt 4E11のCDR3(配列番号9および配列番号16)と比べていかなるアミノ酸置換も含まない。いくつかの実施形態において、提供されるCDR3は、wt 4E11(配列番号9および配列番号16)と比べて、1つ以上のアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、提供されるCDR3は、wt 4E11(配列番号9および配列番号16)と比べて、2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるCDRは、wt 4E11と比べて、1、2、3、4または5個の置換、いくつかの実施形態では1、2または3個の置換を有する。
【0145】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤の提供されるフレームワーク領域1(FR1)は、wt 4E11(配列番号(SEQ ID ID NO.)3および配列番号10)と65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性パーセントを共有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR1は、wt 4E11(配列番号3および配列番号10)と比べてアミノ酸置換を有しないだろう。いくつかの実施形態において、提供されるFR1は、wt 4E11(配列番号3および配列番号10)と比べて1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR1は、wt 4E11(配列番号3および配列番号10)と比べて2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤の提供されるフレームワーク領域2(FR2)は、wt 4E11(配列番号4および配列番号11)と65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性パーセントを共有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR2は、wt 4E11(配列番号4および配列番号11)と比べてアミノ酸置換を有しないだろう。いくつかの実施形態において、提供されるFR2は、wt 4E11(配列番号4および配列番号11)と比べて1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR2は、wt 4E11(配列番号4および配列番号11)と比べて2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤の提供されるフレームワーク領域3(FR3)は、wt 4E11(配列番号5および配列番号12)と65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性パーセントを共有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR3は、wt 4E11(配列番号5および配列番号12)と比べてアミノ酸置換を有しないだろう。いくつかの実施形態において、提供されるFR3は、wt 4E11(配列番号5および配列番号12)と比べて1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR3は、wt 4E11(配列番号5および配列番号12)と比べて2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体剤の提供されるフレームワーク領域4(FR4)は、wt 4E11(配列番号6および配列番号13)と65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超または99%超の同一性パーセントを共有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR4は、wt 4E11(配列番号6および配列番号13)と比べてアミノ酸置換を有しないだろう。いくつかの実施形態において、提供されるFR4は、wt 4E11(配列番号6および配列番号13)と比べて1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態において、提供されるFR3は、wt 4E11(配列番号6および配列番号13)と比べて2つ以上のアミノ酸置換を有し得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVH CDRは、wt 4E11(配列番号7〜9)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVH CDRは、wt 4E11(配列番号7〜9)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示すが、そのCDR内の少なくとも1つのアミノ酸置換の置換によって異なる。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVH CDRは、wt 4E11抗体の55位に、対応するアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、55位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、55位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸である。いくつかの実施形態において、wt 4E11の55位のアミノ酸残基に対応する、提供される抗体のVH CDR内のアミノ酸残基は、アラニンではない。
【0150】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11(配列番号14〜16)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11(配列番号14〜16)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示すが、そのCDR内の少なくとも1つのアミノ酸置換の置換によって異なる。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11抗体の31、57、59、60位および/またはそれらの組み合わせに、対応するアミノ酸残基の1つ以上の置換を有する。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11抗体の31位に、対応するアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、31位における代わりのアミノ酸残基は、リジンである。いくつかの実施形態において、wt 4E11の55位のアミノ酸残基に対応する、提供される抗体剤のVL CDR内のアミノ酸残基は、アルギニンではない。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11抗体の57位に、対応するアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、57位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸およびセリンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、57位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸である。いくつかの実施形態において、wt 4E11の57位のアミノ酸残基に対応する、提供される抗体剤のVL CDR内のアミノ酸残基は、アスパラギンではない。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11抗体の59位に、対応するアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、59位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミンおよびアスパラギンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、59位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミンである。いくつかの実施形態において、wt 4E11の59位のアミノ酸残基に対応する、提供される抗体剤のVL CDR内のアミノ酸残基は、グルタミン酸ではない。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11抗体の60位に、対応するアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、60位における代わりのアミノ酸残基は、トリプトファン、チロシンおよびアルギニンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、60位における代わりのアミノ酸残基は、トリプトファンである。いくつかの実施形態において、wt 4E11の60位のアミノ酸残基に対応する、提供される抗体剤のVL CDR内のアミノ酸残基は、セリンではない。
【0151】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVHおよびVL CDRは、wt 4E11(それぞれ配列番号7〜9および14〜16)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示す。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVHおよびVL CDRは、wt 4E11(それぞれ配列番号7〜9および14〜16)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を示すが、それらのCDR内の少なくとも1つのアミノ酸置換の置換によって異なる。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のVH CDRは、wt 4E11抗体の55位に、対応するアミノ酸残基の置換を有し、提供される抗体剤のVL CDRは、wt 4E11抗体の31、57、59および60位に、対応するアミノ酸残基の置換を有する。いくつかの実施形態において、55位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸である。いくつかの実施形態において、31位における代わりのアミノ酸残基は、リジンである。いくつかの実施形態において、57位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミン酸である。いくつかの実施形態において、59位における代わりのアミノ酸残基は、グルタミンである。いくつかの実施形態において、60位における代わりのアミノ酸残基は、トリプトファンである。
【0152】
いくつかの実施形態において、本発明は、40000nM未満、30000nM未満、20000nM未満、15000nM未満、10000nM未満、8000nM未満、5000nM未満、4000nM未満、3000nM未満、2000nM未満、1500nM未満、1000nM未満、500nM未満、250nM未満、225nM未満、200nM未満、175nM未満、150nM未満、125nM未満、100nM未満、75nM未満または50nM未満のK
D(nM)でのEDIII−DV4(配列番号20)への結合を示す抗体剤を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態において、本発明は、3nM未満、2.5nM未満、2nM未満、1.5nM未満、1.0nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満、0.1nM未満または0.05nM未満のK
D(nM)でのEDIII−DV1(配列番号17)への結合を示す抗体剤を提供する。
【0154】
いくつかの実施形態において、本発明は、15nM未満、12nM未満、10nM未満、8nM未満、7nM未満、5nM未満、2.5nM未満、2nM未満、1.5nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満または0.1nM未満のK
D(nM)でのEDIII−DV2(配列番号18)への結合を示す抗体剤を提供する。
【0155】
いくつかの実施形態において、本発明は、120nM未満、100nM未満、50nM未満、40nM未満、35nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、10nM未満、5nM未満、2.5nM未満または1.0nM未満のK
D(nM)でのEDIII−DV3(配列番号19)への結合を示す抗体剤を提供する。
【0156】
いくつかの実施形態において、本発明は、EDIII−DV4に対する結合について、wt 4E11と比べて少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれを超える親和性を有する抗体剤を提供する。
【0157】
いくつかの実施形態において、本発明は、EDIII−DV2への結合について、wt 4E11と比べて少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍またはそれを超える親和性を有する抗体剤を提供する。
【0158】
いくつかの実施形態において、本発明は、EDIII−DV1および/またはEDIII−DV3への結合について、wt 4E11と比べて少なくとも1倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍またはそれを超える親和性を有する抗体剤を提供する。
【0159】
いくつかの実施形態において、本発明は、60μg/ml以下、50μg/ml以下、40μg/ml以下、30μg/ml以下、20μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下という、EDIII−DV4(配列番号20)の中和IC
50(μg/ml)を示す抗体剤を提供する。
【0160】
いくつかの実施形態において、本発明は、7.0μg/ml以下、6.0μg/ml以下、5.0μg/ml以下、4.0μg/ml以下、3.0μg/ml以下、2.0μg/ml以下、1.5μg/ml以下、1.0μg/ml以下、0.90μg/ml以下、0.80μg/ml以下、0.70μg/ml以下、0.60μg/ml以下、0.50μg/ml以下という、EDIII−DV3(配列番号19)の中和IC
50(μg/ml)を示す抗体剤を提供する。
【0161】
いくつかの実施形態において、本発明は、0.2μg/ml以下、0.19μg/ml以下、0.18μg/ml以下、0.17μg/ml以下、0.16μg/ml以下、0.15μg/ml以下、0.14μg/ml以下、0.13μg/ml以下、0.12μg/ml以下、0.11μg/ml以下、0.10μg/ml以下、0.09μg/ml以下、0.07μg/ml以下、0.06μg/ml以下、0.05μg/ml以下、0.04μg/ml以下、0.03μg/ml以下、0.02μg/ml以下、0.01μg/ml以下という、EDIII−DV2(配列番号18)の中和IC
50(μg/ml)を示す抗体剤を提供する。
【0162】
いくつかの実施形態において、本発明は、5.0μg/ml以下、4.0μg/ml以下、3.0μg/ml以下、2.5μg/ml以下、2.0μg/ml以下、1.5μg/ml以下、1.0μg/ml以下、0.90μg/ml以下、0.70μg/ml以下、0.50μg/ml以下、0.40μg/ml以下、0.30μg/ml以下、0.20μg/ml以下、0.10μg/ml以下という、EDIII−DV1(配列番号17)の中和IC
50(μg/ml)を示す抗体剤を提供する。
【0163】
いくつかの実施形態において、本発明は、EDIII−DV4の中和に対するIC
50がwt 4E11と比べて少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、400倍、500倍またはそれ以上減少した抗体剤を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、本発明は、EDIII−DV2の中和に対するIC
50がwt 4E11と比べて少なくとも1倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍またはそれ以上減少した抗体剤を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態において、本発明は、EDIII−DV1および/またはEDIII−DV3の中和に対するIC
50がwt 4E11と比べて少なくとも1倍、1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍またはそれ以上減少した抗体剤を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態において、提供される抗体剤における1つ以上の配列は、当該分野で公知であるように、1つ以上の特色または活性を改善するために(例えば、安定性を高めるため、凝集を減少させるため、免疫原性を低下させるためなど)操作されている(例えば、親和性成熟または他の最適化アプローチによって)。
【0167】
いくつかの実施形態において、抗体剤は、PEG化、メチル化、シアリル化、アミノ化または硫酸化によって修飾される。いくつかの実施形態において、抗体剤は、両親媒性のコア/シェルに結合体化されることにより、ポリマーミセルを生成する。いくつかの実施形態において、抗体剤は、超分岐高分子(すなわち、デンドリマー)に結合体化される。いくつかの実施形態において、抗体剤は、アルブミン、キトサン、ヘパリン、パクリタキセル、ポリ−(L−グルタメート)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ポリ−(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、フォレート(folate)および/またはそれらの組み合わせからなる群より選択される天然のポリマーに結合体化される。いくつかの実施形態において、抗体剤は、親水性アミノ酸(rPEG)の1つ以上の組織化されていない長いテイルを含む。いくつかの実施形態において、抗体結合部位を変化させない反応条件を用いて免疫グロブリンのFc領域にスルフヒドリル基を選択的に導入することによる免疫グロブリンの誘導体化が、企図される。この方法に従って生成された抗体結合体は、改善された長寿命、特異性および感度を示し得る(参照により本明細書中に援用される米国特許第5,196,066号)。エフェクターまたはレポーター分子の部位特異的付着(ここで、そのレポーターまたはエフェクター分子は、Fc領域における炭水化物残基に結合体化されている)もまた、文献(O’Shannessyら、1987)に開示されている。
【0168】
抗体および/または抗体フラグメント
いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、抗体またはそのフラグメントであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、モノクローナル抗体またはそのフラグメントであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、ポリクローナル抗体またはそのフラグメントであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、DV抗体剤は、それが、天然に生成される抗体で生じているような、必要に応じてジスルフィド結合によって会合される2本の重鎖および2本の軽鎖を含むという点において、「完全長」抗体であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、DV抗体剤は、完全長抗体に見られる配列の全部ではないが一部を含むという点において、完全長抗体のフラグメントであるかまたはそれを含む。例えば、いくつかの実施形態において、DV抗体剤は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディおよびFdフラグメントを含むがこれらに限定されない抗体フラグメントであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEからなる群より選択される抗体クラスのメンバーである抗体またはそのフラグメントであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、化学合成によって生成された抗体であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、細胞によって産生された抗体であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、組換え細胞培養系を用いて生成された抗体であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、ヒト定常および/または可変領域ドメインを有する、例えば、マウス、ラット、ウマ、ブタまたは他の種由来のキメラ抗体であるかまたはそれを含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、DV抗体剤は、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(一本鎖Fv)、抗体CDRを有するポリペプチド、CDRを提示する骨格ドメイン(例えば、アンチカリン(anticalins))またはナノボディを含むがこれらに限定されない1つ以上の抗体フラグメントを含む。例えば、提供される抗体は、重鎖だけを含むVHH(すなわち、抗原特異的VHH)抗体であり得る。そのような抗体分子は、ラマもしくは他のラクダ科動物の抗体(例えば、ラクダ科動物のIgG2もしくはIgG3またはそのようなラクダ科動物のIg由来のCDR提示フレーム)またはサメ抗体に由来し得る。いくつかの実施形態において、DV抗体剤は、アビボディ(avibody)(ダイアボディ、トリボディ(tribody)、テトラボディ)であるかまたはそれを含む。様々な抗体ベースの構築物およびフラグメントを調製および使用するための手法は、当該分野で周知である。抗体を調製するためおよび特徴付けるための手段もまた、当該分野で周知である(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと;参照により本明細書中に援用される)。
【0170】
いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、1つ以上の「ミニ抗体(Mini−antibody)」または「ミニボディ(minibody)」を含む。ミニボディは、ヒンジ領域によってsFvから隔てられたオリゴマー形成ドメインをC末端に含むsFvポリペプチド鎖である(Packら(1992)Biochem 31:1579−1584)。オリゴマー形成ドメインは、さらなるジスルフィド結合によってさらに安定化され得る、自己会合性α−ヘリックス、例えば、ロイシンジッパーを含む。オリゴマー形成ドメインは、そのポリペプチドがインビボにおいて機能的結合タンパク質に折り畳まれるのを容易にすると考えられるプロセスである、膜を横断する指向性の折り畳み(vectorial folding)と適合するように設計される。一般に、ミニボディは、当該分野で周知の組換え法を用いて生成される。例えば、Packら(1992)Biochem 31:1579−1584;Cumberら(1992)J Immunology 149B:120−126を参照のこと。
【0171】
抗体剤結合体
いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、抗体部分が、結合体化される部分とともに抗体またはその機能的部分を含むかまたはそれらからなる、結合体であるかまたはそれを含む。いくつかの特定の実施形態において、本明細書中に記載されるようなDV抗体剤は、治療剤または検出剤などの1つ以上の活性な作用物質または「ペイロード(payload)」と会合された状態で提供および/または利用される。そのようないくつかの実施形態において、DV抗体剤と活性な作用物質および/またはペイロードとの会合は、DV抗体結合体が提供されるように少なくとも1つの共有結合性の相互作用を含む。
【0172】
いくつかの実施形態において、抗体剤は、所望の活性、例えば、抗ウイルス活性、抗炎症活性、細胞傷害活性などを有するエフェクター体である、治療用ペイロード剤である。治療薬は、任意のクラスの化学的実体(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸、有機小分子、非生物学的ポリマー、金属、イオン、放射性同位体などを含む)であり得るかまたはそれらを含み得る。いくつかの実施形態において、本発明に従って使用するための治療薬は、DV感染の1つ以上の症状または原因の処置に関連する生物学的活性(例えば、例えば、抗ウイルス活性、疼痛緩和活性、抗炎症活性、免疫調節活性、睡眠誘発活性など)を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明に従って使用するための治療薬は、1つ以上の他の活性を有する。
【0173】
いくつかの実施形態において、抗体剤は、例えば、その特異的な機能特性および/または化学的特色に起因して、アッセイを用いて検出され得る任意の部分であるかまたはそれを含むペイロード検出剤である。そのような作用物質の非限定的な例としては、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、光親和性分子、有色粒子、またはビオチンなどのリガンドが挙げられる。
【0174】
多くの適切なペイロード検出剤は、当該分野で公知であり、抗体に付着するための系も当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,021,236号;同第4,938,948号;および同第4,472,509号(各々が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと)。そのようなペイロード検出剤の例としては、とりわけ、常磁性イオン、放射性同位体、蛍光色素、NMR検出可能物質、X線イメージング剤が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、常磁性イオンは、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)および/またはビスマス(III)のうちの1つ以上である。
【0175】
いくつかの実施形態において、放射性同位体は、アスタチン211、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67、152Eu、ガリウム67、3水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム111、59鉄、32リン、ラジウム223、レニウム186、レニウム188、75セレン、35硫黄、テクネチウム(technicium)99m、トリウム227および/またはイットリウム90のうちの1つ以上である。放射性に標識された抗体剤は、当該分野で周知の方法に従って生成され得る。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウムおよび/もしくはヨウ化カリウム、ならびに化学的酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)または酵素的酸化剤(例えば、ラクトペルオキシダーゼ)との接触によって、ヨウ素化され得る。提供される抗体剤は、配位子交換プロセスによって、例えば、ペルテクネテート(pertechnate)を第一スズ溶液で還元し、還元されたテクネチウムをSephadexカラム上にキレート化し、このカラムに抗体を適用することによって、テクネチウム99mで標識され得る。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、直接標識法を用いて、例えば、ペルテクネテート、SNCl
2などの還元剤、フタル酸ナトリウム−カリウム溶液などの緩衝液、および抗体をインキュベートすることによって、標識される。金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合するために使用されることが多い中間官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(ethylene diaminetetracetic acid)(EDTA)である。
【0176】
いくつかの実施形態において、蛍光標識は、とりわけ、Alexa350、Alexa430、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、カスケードブルー(Cascade Blue)、Cy3、Cy5、6−FAM、フルオレセインイソチオシアネート(Fluorescein Isothiocyanate)、HEX、6−JOE、オレゴングリーン(Oregon Green)488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー(Pacific Blue)、REG、ローダミングリーン(Rhodamine Green)、ローダミンレッド(Rhodamine Red)、レノグラフィン(Renographin)、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン(Tetramethylrhodamine)および/またはテキサスレッド(Texas Red)のうちの1つ以上であるかまたはそれらを含む。
【0177】
抗体剤をペイロードに付着または結合体化するためのいくつかの方法が、当該分野で公知である。いくつかの付着方法は、例えば、抗体に付着された、有機キレート剤、例えば(such a)、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド;および/またはテトラクロロ−3α−6α−ジフェニルグリコウリル−3を使用する、金属キレート錯体の使用を含む(米国特許第4,472,509号および同第4,938,948号、各々が参照により本明細書中に援用される)。提供されるDV抗体剤は、グルタルアルデヒドまたはペルヨーデートなどのカップリング剤の存在下において酵素とも反応し得る。フルオレセインマーカーとの結合体は、これらのカップリング剤の存在下において、またはイソチオシアネートとの反応によって、調製される。
【0178】
抗体の作製
抗体および/もしくはその特徴的な部分を含む提供される抗体剤またはそれらをコードする核酸が、任意の利用可能な手段によって作製され得る。抗体(例えば、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体)を作製するための方法は、当該分野で周知である。ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモットまたはヤギを含む広範囲の動物種が抗血清の生成のために使用され得ることが認識されるだろう。動物の選択は、当業者に公知であり得るように、操作の容易さ、コストまたは血清の所望量によって決定され得る。抗体剤が、目的の免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列についてトランスジェニックである哺乳動物または植物の作出ならびにそれらからの回収可能な形態での抗体の産生を通じて、遺伝子組換え的にも作製され得ることが認識されるだろう。哺乳動物におけるトランスジェニックでの生成に関連して、抗体は、ヤギ、ウシまたは他の哺乳動物の乳汁中に産生され得、そこから回収され得る。例えば、米国特許第5,827,690号、同第5,756,687号、同第5,750,172号および同第5,741,957号を参照のこと。
【0179】
提供される抗体剤(抗体および/または特徴的な部分を含む)は、例えば、本発明の抗体をコードする核酸を発現するように操作された宿主細胞系を利用することによって、作製され得る。代替的または付加的に、提供される抗体剤は、化学合成によって(例えば、自動ペプチド合成装置を用いて)部分的または全体的に調製され得る。
【0180】
本発明に適した抗体剤の調製に対する例示的な供給源としては、目的のタンパクを発現する組換え細胞株の培養から得られる馴化培養培地、または、例えば、抗体産生細胞、細菌、真菌細胞、昆虫細胞、トランスジェニック植物もしくはトランスジェニック植物細胞、トランスジェニック動物もしくはトランスジェニック動物細胞の細胞抽出物、あるいは動物の血清、腹水、ハイブリドーマまたはミエローマ上清が挙げられるが、これらに限定されない。好適な細菌細胞としては、大腸菌細胞が挙げられるが、これに限定されない。好適な大腸菌株の例としては:HB101、DH5α、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539および外来DNAを切断しない任意の大腸菌株が挙げられる。使用され得る好適な真菌宿主細胞としては、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastorisおよびAspergillus属の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好適な昆虫細胞としては、S2 Schneider細胞、D.Mel−2細胞、SF9、SF21、High−5
TM、Mimic
TM−SF9、MG1およびKC1細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好適な例示的な組換え細胞株としては、BALB/cマウスミエローマ株、ヒト網膜芽細胞腫(retinoblasts)(PER.C6)、サル腎臓細胞、ヒト胎児腎株(293)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウスセルトリ細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌腫細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞、バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝臓細胞、マウス乳腺腫瘍細胞、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞およびヒトヘパトーム株(HepG2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
目的の抗体剤は、当該分野で公知の様々なベクター(例えば、ウイルスベクター)を用いて発現され得、細胞は、当該分野で公知の様々な条件下(例えば、流加培養)で培養され得る。抗体を産生するように細胞を遺伝的に操作する様々な方法が、当該分野で周知である。例えば、Ausabelら、eds.(1990),Current Protocols in Molecular Biology(Wiley,New York)を参照のこと。
【0182】
提供される抗体剤は、所望であれば、濾過、遠心分離および/またはHPLCもしくはアフィニティークロマトグラフィーなどの様々なクロマトグラフィー法を用いて、精製され得る。いくつかの実施形態において、提供される抗体剤のフラグメントは、ペプシンもしくはパパインなどの酵素による消化および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断を含む方法によって得られる。
【0183】
核酸
ある特定の実施形態において、本発明は、抗体剤をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、抗体剤をコードする核酸に相補的な核酸を提供する。
【0184】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗体剤をコードする核酸にハイブリダイズする核酸分子を提供する。そのような核酸は、例えば、プライマーまたはプローブとして使用され得る。ほんの少しの例を挙げると、そのような核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるプライマー、ハイブリダイゼーション(インサイチュハイブリダイゼーションを含む)のためのプローブおよび/または逆転写PCR(RT−PCR)のためのプライマーとして使用され得る。
【0185】
ある特定の実施形態において、核酸は、DNAまたはRNAであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上の非天然ヌクレオチドを含み得;いくつかの実施形態において、核酸は、天然のヌクレオチドだけを含む。
【0186】
DVに関連する作用物質の特徴付けおよび/または同定
いくつかの実施形態において、本発明は、DVエピトープもしくはDV作用物質を模倣するおよび/またはDVに対して強い抗体応答を誘導する1つ以上の作用物質を同定するおよび/または特徴付けるために使用され得る抗体剤を提供する。
【0187】
いくつかの実施形態において、そのような作用物質には、1つ以上の抗体様結合ペプチド模倣物が含まれる。Liuら、Cell Mol Biol(Noisy−le−grand).2003 Mar;49(2):209−16には、切り詰められた抗体として作用し、より長い血清半減期ならびにより煩雑でない合成方法というある特定の利点を有するペプチドである、「抗体様結合ペプチド模倣物」(ABiP)が記載されている。同様に、いくつかの態様において、抗体様分子は、環式または二環式ペプチドである。例えば、抗原に結合する二環式ペプチドを単離するため(例えば、ファージディスプレイによって)の方法およびそのようなペプチドを使用するための方法は、参照により本明細書中に援用される米国特許公開番号20100317547に提供されている。
【0188】
いくつかの実施形態において、そのような作用物質には、1つ以上の抗体様結合足場タンパク質が含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、抗体から生じる1つ以上のCDRが、タンパク質骨格上に移植され得る。一般に、タンパク質骨格は、以下の基準:(Skerra A.,J.Mol.Recogn.,2000,13:167−187):良好な系統的保存;3次元構造が公知である(例えば、結晶学、NMR分光法または当業者に公知の他の任意の手法によるもの);サイズが小さい;転写後修飾がほとんどもしくはまったくない;ならびに/または生成、発現および精製が容易であることの最大数を満たし得る。そのようなタンパク質骨格の起源は、フィブロネクチン(例えば、フィブロネクチンタイプIIIドメイン10)、リポカリン、アンチカリン(Skerra A.,J.Biotechnol.,2001,74(4):257−75)、Staphylococcus aureusのプロテインAのドメインBから生じるプロテインZ、チオレドキシンA、または反復モチーフ(例えば、「アンキリンリピート」(Kohlら、PNAS,2003,vol.100,No.4,1700−1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」および「テトラトリコペプチドリピート」)を有するタンパク質であり得るが、これらに限定されない。例えば、アンチカリンまたはリポカリン誘導体は、参照により本明細書中に援用される、米国特許公開番号20100285564、20060058510、20060088908、20050106660およびPCT公開番号WO2006/056464に記載されている。トキシン(例えば、サソリ、昆虫、植物、軟体動物など由来のトキシン)および神経型NOシンターゼのタンパク質阻害剤(PIN)に由来する骨格もまた、本発明に従って使用され得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、そのような作用物質は、インフルエンザウイルスとHAポリペプチドレセプターとの相互作用を妨害するために使用され得るミモトープを含む。いくつかの実施形態において、ミモトープは、その対応する標的エピトープによって誘発される抗体応答と同一または類似の抗体応答を誘発するために使用される。いくつかの実施形態において、標的エピトープは、2種以上のDV血清型にわたって保存された配列である。いくつかの実施形態において、保存されたエピトープは、DV血清型1〜4にわたって保存された配列である。いくつかの実施形態において、エピトープは、E糖タンパク質のA鎖領域内に位置する保存された配列である。いくつかの実施形態において、ミモトープは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、ミモトープは、小分子、炭水化物、脂質または核酸である。いくつかの実施形態において、ミモトープは、保存されたインフルエンザエピトープのペプチドミモトープまたは非ペプチドミモトープである。いくつかの実施形態において、規定のウイルスエピトープの構造を模倣することによって、ミモトープは、例えば、天然の結合パートナー自体に結合することによって、DV粒子がその天然の結合パートナーに結合する能力を干渉する。
【0190】
いくつかの実施形態において、そのような作用物質は、ステープルドペプチドである。いくつかの実施形態において、ステープルドペプチドは、抗DV抗体(例えば、4E11)の対応するCDRおよび/またはFRと少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%超の相同性および/または同一性を含む1つ以上のCDRおよび/またはFRをコードするアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ステープルドペプチドは、抗DV抗体(例えば、4E11)の対応するVHおよびVL鎖と少なくとも65、70、75、80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%超の相同性および/または同一性を含む1つ以上のVHおよび/またはVL鎖配列をコードするアミノ酸配列を含む。
【0191】
ある特定の実施形態において、そのような作用物質は、DNAまたはRNAなどの核酸であるかまたはそれを含む。ある特定の実施形態において、核酸は、DNAまたはRNAであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上の非天然ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、核酸は、天然のヌクレオチドだけを含む。いくつかの実施形態において、核酸は、DVポリペプチド内のエピトープを模倣するように設計されている。いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上のDV血清型内の保存されたエピトープを模倣するように設計されている。いくつかの実施形態において、そのような作用物質は、1つ以上のオリゴヌクレオチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、そのような作用物質は、二次構造(例えば、ループ、ヘアピン、折り畳みまたはそれらの組み合わせ)を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、そのような作用物質は、より高次の(三次または四次)構造を含む1つ以上のオリゴヌクレオチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、そのような作用物質は、アプタマーであるかまたはそれを含む。
【0192】
いくつかの実施形態において、ワクチンは、患者において欠いていると見出された抗体の産生を誘導するように設計され得る。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物が、天然の立体配座を有する、防御応答(例えば、補体の活性化、ウイルスの中和など)を媒介する、および/または強い抗体応答を誘導し得る抗原を含むことが望ましい。いくつかの実施形態において、ワクチンは、その個体では抗体を天然に産生させていないエピトープまたはそのミモトープを含む。例えば、DV抗体(例えば、複数の血清型を認識するDV抗体)を用いて単離される合成ペプチドミモトープは、ミモトープの最初の単離において使用された抗体と類似の強力な免疫応答を誘導する潜在能力を有する。そのようなワクチンの投与は、投与されたエピトープに対する抗体セットを患者の免疫系が産生し始めるように誘導し得る。本発明に係るミモトープ(またはエピトープ)は、単独で、または組換えタンパク質、不活性化されたDVウイルス、殺滅されたDVウイルスと組み合わせておよび/もしくはいくつかの異なるミモトープのカクテルとして、使用され得ることが認識されるだろう。
【0193】
いくつかの実施形態において、DVに対するワクチンは、能動免疫法(すなわち、微生物、タンパク質、ペプチド、エピトープ、ミモトープなどが被験体に投与される免疫化)のために利用され得る。いくつかの実施形態において、DVに対するワクチンは、DVエンベロープ糖タンパク質のDV A鎖領域の少なくとも1つのコンフォメーションエピトープを模倣する任意の作用物質を含み得、使用され得る。例えば、その作用物質は、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、小分子、ミモトープ、有機化合物、脂質、サッカリド、有機金属化合物、無機化合物などであり得る。いくつかの実施形態において、ワクチンにおいて提示されるエピトープには、感染を予防すると知られている抗体を誘導するエピトープが含まれる。いくつかの実施形態において、本発明に係るワクチンにおいて提示されるエピトープには、そのウイルスの異なる遺伝子型および/もしくはサブタイプの間または異なるウイルス株の間で保存されているエピトープが含まれる。いくつかの実施形態において、DVのA鎖領域のコンフォメーション的に定義されたエピトープを含むペプチドまたはタンパク質が、DVによる感染を予防する、その発生を遅延させる、処置する、その症状を回復させる、および/またはその重症度を低下させるワクチンの製剤化において使用される。いくつかの実施形態において、DV A鎖領域エピトープは、線状エピトープであり得る。いくつかの実施形態において、A鎖領域エピトープは、線状エピトープとコンフォメーションエピトープとの混合物であり得る。いくつかの実施形態において、A鎖領域エピトープは、コンフォメーションエピトープであり得る。いくつかの実施形態において、ペプチドエピトープは、100アミノ酸長未満である。ある特定の実施形態において、ペプチドエピトープは、50未満、40未満、30未満、20未満または10未満のアミノ酸長である。いくつかの実施形態において、ワクチンの製剤化において使用されるペプチドは、DVのA鎖領域タンパク質のペプチドフラグメントである。代表的には、天然のA鎖領域タンパク質におけるその3次元の折り畳みと類似の様式で折り畳まれ、ゆえに、そのコンフォメーションエピトープの3次元構造が保存されたペプチドが、使用される。
【0194】
DV結合剤を同定するためおよび/または特徴付けるための系
本発明は、DV抗体剤を試験するため、特徴付けるため、および/または同定するための種々の系を提供する。いくつかの実施形態において、提供されるDV抗体剤は、他のDV結合剤(例えば、抗体、ポリペプチド、小分子など)を同定するためおよび/または特徴付けるために使用される。
【0195】
いくつかの実施形態において、提供されるDV結合剤は、DV結合剤を1つ以上の候補基質(例えば、DVポリペプチド、DVポリペプチド上のN−グリカン、DVレセプター、シアル化されたDVレセプターおよび/またはシアル化されたDVレセプター上のグリカンの領域)と接触させることを含む、そのような系および方法によって特徴付けられる。
【0196】
いくつかの実施形態において、DV結合剤(例えば、交差反応性抗体)は、コンピュータによるアプローチを用いて試験され得、特徴付けられ得、かつ/または同定され得る。いくつかの実施形態において、コンピュータによるアプローチは、タンパク質間の(例えば、抗体−抗原)相互作用に共通の物理化学的特徴を使用して、タンパク質間相互作用および親和性増大変異を予測する工程を含む。例えば、DVの中和においてこのアプローチを使用して作製された抗体の力価は、当該分野で公知の様々なアッセイ(例えば、プラーク減少中和試験、ELISA、血球凝集アッセイおよびウエスタンブロット)によって予測され得る。
【0197】
いくつかの実施形態において、DV結合剤および/または候補基質は、溶液中に遊離し得る、支持体に固定され得る、ならびに/または、細胞内でおよび/もしくは細胞の表面上に発現され得る。その候補基質および/または作用物質は、標識され得、それにより、結合の検出が可能になる。DV結合剤または候補基質のいずれかが、標識される種である。それらの物質のうちの一方を標識し、遊離標識 対 結合標識の量を測定することにより、結合に対する影響が測定され得る競合的結合の形式が行われ得る。
【0198】
いくつかの実施形態において、結合アッセイは、例えば、候補基質をDV結合剤に曝露する工程、および候補基質とそのDV結合剤との結合を検出する工程を含む。結合アッセイは、インビトロにおいて(例えば、実質的に述べられた構成要素だけを含む候補チューブにおいて;無細胞抽出物において;および/または実質的に精製された構成要素において)行われ得る。代替的または付加的に、結合アッセイは、細胞内(in cyto)および/またはインビボ(例えば、細胞、組織、臓器および/または生物内;下記でさらに詳細に記載される)で行われ得る。
【0199】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのDV結合剤を、少なくとも1つの候補基質と接触させ、効果を検出する。いくつかの実施形態では、例えば、DV結合剤を候補基質と接触させ、それら2つの実体間の結合をモニターする。いくつかの実施形態において、アッセイは、候補基質をある作用物質の特徴的な部分と接触させる工程を含み得る。その候補基質へのDV剤の結合が検出される。DV結合剤のフラグメント、一部、ホモログ、改変体および/または誘導体が1つ以上の候補基質と結合する能力を含むという条件で、それらが使用され得ることが認識されるだろう。
【0200】
候補基質へのDV剤の結合は、当該分野で周知の種々の方法によって測定され得る。いくつかの実施形態において、結合の測定は、SPR解析を用いて行われ得る。いくつかの実施形態において、SPR解析は、DV結合剤の親和性パラメータおよび結合動態(kinetic binding)パラメータを測定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、固相に結合したDV剤を必要とするアッセイ、および1つ以上の候補基質とのそれらの相互作用を検出するアッセイが、使用され得る。したがって、DV結合剤は、検出可能なマーカー(例えば、放射性、蛍光および/または発光標識)を含み得る。さらに、候補基質は、間接的な検出(例えば、発色基質を用いる酵素の使用によって、および/または検出可能な抗体の結合によって)を可能にする物質に結合され得る。候補基質との相互作用の結果としてのDV結合剤の立体配座の変化は、例えば、検出可能なマーカーの放射の変化によって検出され得る。代替的または付加的に、固相に結合したタンパク質複合体が、質量分析を用いて解析され得る。
【0201】
いくつかの実施形態において、DV結合剤は、固定化され得ない。いくつかの実施形態において、固定化されていない構成要素が、標識され得る(例えば、放射性標識、エピトープタグ、酵素−抗体結合体などで)。代替的または付加的に、結合は、免疫学的検出法によって測定され得る。例えば、反応混合物をウエスタンブロッティングに供し、そのブロットを、固定化されていない構成要素を検出する抗体でプロービングし得る。代替的または付加的に、ELISAを利用することにより、結合についてアッセイされ得る。いくつかの実施形態において、候補基質へのDV剤の結合親和性は、ハイスループット間接ELISAアッセイを使用することによって測定され得る。
【0202】
いくつかの実施形態において、DV結合剤の活性または中和能力を測定するために、フォーカス減少中和試験(FRNT)アッセイが利用され得る。いくつかの実施形態において、抗DV活性をインビボで測定するために、動物宿主が使用され得る。
【0203】
ある特定の実施形態では、DV剤と候補基質との結合について細胞を直接アッセイし得る。結合を評価する免疫組織化学的な手法、共焦点の手法および/または他の手法は、当業者に周知である。この目的のために特異的に操作された細胞を含む様々な細胞株が、そのようなスクリーニングアッセイのために利用され得る。スクリーニングアッセイにおいて使用される細胞の例としては、哺乳動物細胞、真菌細胞、細菌細胞またはウイルス細胞が挙げられる。細胞は、刺激された細胞(例えば、成長因子で刺激された細胞)であり得る。当業者は、本明細書中に開示される本発明が、DV結合剤が候補基質に結合する能力を測定するための多種多様の細胞内アッセイを企図することを理解するだろう。
【0204】
アッセイに応じて、細胞培養および/または組織培養が必要になり得る。細胞は、いくつかの異なる生理学的アッセイのいずれかを用いて調べられ得る。代替的または付加的に、タンパク質発現をモニターするおよび/またはタンパク質間相互作用について試験するウエスタンブロッティング;他の化学修飾をモニターする質量分析などを含むがこれらに限定されない分子解析が行われ得る。
【0205】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される結合アッセイは、一連の濃度のDV結合剤および/または候補基質を用いて行われ得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される結合アッセイは、ある範囲の抗体濃度(例えば、約100μg/ml超、約100μg/ml、約50μg/ml、約40μg/ml、約30μg/ml、約20μg/ml、約10μg/ml、約5μg/ml、約4μg/ml、約3μg/ml、約2μg/ml、約1.75μg/ml、約1.5μg/ml、約1.25μg/ml、約1.0μg/ml、約0.9μg/ml、約0.8μg/ml、約0.7μg/ml、約0.6μg/ml、約0.5μg/ml、約0.4μg/ml、約0.3μg/ml、約0.2μg/ml、約0.1μg/ml、約0.05μg/ml、約0.01μg/mlおよび/または約0.01μg/ml未満)にわたって候補基質がDV剤に結合する能力を評価するために使用される。
【0206】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される任意の結合研究が、ハイスループット形式で実行され得る。ハイスループットアッセイを使用すると、最大数千個の作用物質を1日でスクリーニングすることができる。いくつかの実施形態において、マイクロタイタープレートの各ウェルを使用することにより、選択された候補基質に対して別個のアッセイを行うことができるか、または、濃度および/もしくはインキュベーション時間の効果を観察する場合、5〜10ウェルごとに単一の候補基質を試験することができる。したがって、1枚の標準的なマイクロタイタープレートで、最大96個の、作用物質と候補基質との間の結合相互作用をアッセイすることができる;1536ウェルのプレートを使用する場合、1枚のプレートで、最大1536個の、作用物質と候補基質との間の結合相互作用をアッセイすることができる;など。1日あたり多くのプレートをアッセイすることができる。例えば、本発明に係るハイスループットの系を用いると、最大約6,000、約20,000、約50,000個または約100,000個超のアッセイスクリーニングを、抗体と候補基質との間の結合相互作用に対して行うことができる。
【0207】
いくつかの実施形態において、そのような方法は、動物宿主を利用する。本明細書中で使用されるとき、「動物宿主」には、インフルエンザ研究に適した任意の動物モデルが含まれる。例えば、本発明に適した動物宿主は、霊長類、フェレット、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、げっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、ウサギおよびラットを含む、任意の哺乳動物宿主であり得る。ある特定の実施形態において、本発明のために使用される動物宿主は、フェレットである。特に、いくつかの実施形態において、動物宿主は、作用物質(必要に応じて、本発明の組成物中の)の投与前は、ウイルス曝露または感染に対してナイーブである。いくつかの実施形態において、動物宿主は、作用物質の投与前または投与と同時に、ウイルスを接種されるか、感染されるか、または別途曝露される。本発明の実施において使用される動物宿主は、当該分野で公知の任意の方法によって、ウイルスに接種され得るか、感染され得るか、または別途曝露され得る。いくつかの実施形態において、動物宿主は、ウイルスを鼻腔内に、接種され得るか、感染され得るか、または曝露され得る。
【0208】
ナイーブな動物および/または接種された動物が、種々の任意の研究のために使用され得る。例えば、そのような動物モデルは、当該分野で公知であるようなウイルス伝染研究のために使用され得る。ウイルス伝染研究におけるフェレットの使用は、ヒトにおけるウイルス伝染に対する信頼できる予測因子として働き得ることが企図される。ウイルス伝染研究を使用して、作用物質が試験され得る。例えば、ウイルス結合の阻止におけるDV結合剤の有効性および/または動物宿主における感染性を測定するために、前記DV結合剤が、ウイルス伝染研究の前、研究中または研究後に、好適な動物宿主に投与され得る。動物宿主におけるウイルス伝染研究から集められた情報を使用すると、ウイルス結合の阻止における作用物質の有効性および/またはヒト宿主における感染性が予測され得る。
【0209】
薬学的組成物
本発明は、1つ以上の提供される抗体剤を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも1つの抗体および少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を提供する。そのような薬学的組成物は、必要に応じて、1つ以上のさらなる治療的に活性な物質を含み得、かつ/またはそれらと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、提供される薬学的組成物は、医薬において有用である。いくつかの実施形態において、提供される薬学的組成物は、DV感染またはDV感染に関連するかもしくは相関する負の副次的影響(negative ramification)の処置または予防における予防薬(すなわち、ワクチン)として有用である。いくつかの実施形態において、提供される薬学的組成物は、治療的な適用、例えば、DV感染に罹患しているかまたは感受性である個体において有用である。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、ヒトへの投与のために製剤化される。
【0210】
例えば、本明細書中に提供される薬学的組成物は、滅菌された注射可能な形態(例えば、皮下注射または静脈内注入に適した形態)で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、注射に適した液体の剤形で提供される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、注射の前に水性希釈剤(例えば、水、緩衝液、塩溶液など)で再構成される、粉末(例えば、凍結乾燥されたおよび/または滅菌された粉末)として必要に応じて真空下において提供される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、水、塩化ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、ベンジルアルコール溶液、リン酸緩衝食塩水などに希釈および/または再構成される。いくつかの実施形態において、粉末は、水性希釈剤と静かに混合されるべきである(例えば、振盪されない)。
【0211】
いくつかの実施形態において、提供される薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤(例えば、保存剤、不活性な希釈剤、分散剤、界面活性剤および/または乳化剤、緩衝剤など)を含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、1つ以上の保存剤を含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、保存剤を含まない。
【0212】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、冷蔵され得るおよび/または冷凍され得る形態で提供される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、冷蔵され得ないおよび/または冷凍され得ない形態で提供される。いくつかの実施形態において、再構成された溶液および/または液体剤形は、再構成後、ある特定の期間(例えば、2時間、12時間、24時間、2日間、5日間、7日間、10日間、2週間、1ヶ月、2ヶ月またはそれ以上)にわたって保管され得る。
【0213】
液体の剤形および/または再構成された溶液は、投与前に粒子状物質および/または変色を含み得る。いくつかの実施形態において、溶液は、変色しているかもしくは濁っている場合および/または濾過後に粒子状物質が残留している場合、使用されるべきでない。
【0214】
本明細書中に記載される薬学的組成物の製剤は、薬理学の分野において公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。いくつかの実施形態において、そのような調製方法は、活性成分を1つ以上の賦形剤および/または1つ以上の他の副成分と合わせる工程、ならびに次いで、必要であるおよび/または望ましい場合、生成物を所望の単一用量または複数回用量の単位に成形するおよび/または包装する工程を含む。
【0215】
本発明に係る薬学的組成物は、バルクで、単一単位用量として、および/または複数の単一単位用量として、調製され得、包装され得、かつ/または販売され得る。本明細書中で使用されるとき、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む薬学的組成物の分離した量である。活性成分の量は、通常、被験体に投与され得る用量および/またはそのような用量の好都合な一部分、例えば、そのような用量の2分の1または3分の1に等しい。
【0216】
本発明に係る薬学的組成物中の活性成分、薬学的に許容され得る賦形剤および/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される被験体の正体、サイズおよび/もしくは状態に応じて、ならびに/または組成物が投与される経路に応じて、変動し得る。例としては、組成物は、0.1%〜100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0217】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含み得、本明細書中で使用されるとき、その賦形剤は、所望の特定の剤形に適しているような、溶媒、分散媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などであり得るかまたはそれらを含み得る。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,(Lippincott,Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)には、薬学的組成物を製剤化する際に使用される様々な賦形剤およびそれらの調製のための公知の手法が開示されている。任意の従来の賦形剤の媒質が、任意の望ましくない生物学的作用をもたらすこと、または別途、その薬学的組成物の他の任意の構成要素と有害な様式で相互作用することなどによって、物質またはその誘導体と不適合である場合を除いては、その使用は、本発明の範囲内であると企図される。
【0218】
ワクチン
いくつかの実施形態において、本発明は、DV感染に罹患しているまたは感受性である被験体の受動免疫法(すなわち、被験体に抗体を投与する免疫化)において使用するためおよび/または受動免疫法を調べるためのワクチン組成物を提供する。いくつかの実施形態において、受動免疫法は、抗体が、妊娠中に母体から胎児に移動するときに生じる。いくつかの実施形態において、受動免疫法は、個体に直接(例えば、注射によって、経口的に、経鼻的になど)抗体剤を投与することを含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、予防的適用は、ワクチンの投与を含み得る。いくつかの実施形態において、ワクチン接種は、個々の患者に合わせて調整される。例えば、下記に記載されるように、血清を、患者から回収して、DVの存在、およびいくつかの実施形態では、1つ以上の特定のDV血清型について試験し得る。いくつかの実施形態において、提供されるワクチンの適切なレシピエントは、提供される抗体に結合されるかつ/または中和される1つ以上のDV血清型への感染に罹患しているかまたは感受性である個体である。
【0220】
いくつかの実施形態において、ワクチンは、経口的に、鼻腔内に、皮下に、筋肉内に、皮内に、または他の任意の医学的に適切な投与経路を介して、投与される。各投与経路は、異なる製剤または送達機序を必要とし得、そのような可変のパラメータは、本発明の範囲内と企図されることが認識されるだろう。いくつかの実施形態において、投与経路および/または製剤は、被験体の年齢および/または状態によって部分的に定められ得る。例えば、乳児へのワクチンの投与は、大きな筋肉量に起因して大腿の前外側面への注射を介して行われ得る。いくつかの実施形態において、被験体が、小児または成人である場合、三角筋へのワクチンの投与が、好ましい場合がある。適切な(sounds)医学的判断が、特定の被験体への投与にとって妥当な経路および/または製剤を決定するために使用されるべきであることが理解される。
【0221】
いくつかの実施形態において、ワクチン組成物は、少なくとも1つのアジュバントを含む。任意のアジュバントが、本発明に従って使用され得る。多数のアジュバントが、公知であり;多くのそのような化合物の有用な概論が、National Institutes of Healthによって作成されており、www.niaid.nih.gov/daids/vaccine/pdf/compendium.pdfで見ることができる;Allison(1998,Dev.Biol.Stand.,92:3−11;参照により本明細書中に援用される)、Unkelessら(1998,Annu.Rev.Immunol.,6:251−281;参照により本明細書中に援用される)およびPhillipsら(1992,Vaccine,10:151−158;参照により本明細書中に援用される)も参照のこと。数百個の異なるアジュバントが、当該分野で公知であり、本発明の実施において使用され得る。本発明に従って利用され得る例示的なアジュバントとしては、サイトカイン、ゲルタイプのアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウムなど);微生物アジュバント(例えば、CpGモチーフを含む免疫調節性DNA配列);エンドトキシン(例えば、モノホスホリルリピドA);外毒素(例えば、コレラ毒素、大腸菌易熱性トキシンおよび百日咳毒素);ムラミルジペプチドなど);オイルエマルジョンおよび乳化剤ベースのアジュバント(例えば、フロイントアジュバント、MF59[Novartis]、SAFなど);粒子アジュバント(例えば、リポソーム、生分解性ミクロスフェア、サポニンなど);合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロック共重合体、ムラミルペプチドアナログ、ポリホスファゼン、合成ポリヌクレオチドなど);および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なアジュバントとしては、いくつかのポリマー(例えば、ポリホスファゼン;参照により本明細書中に援用される米国特許第5,500,161号に記載されている)、Q57、QS21、スクアレン、テトラクロロデカオキシドなどが挙げられる。薬学的に許容され得る賦形剤は、先の「薬学的組成物」と題された上記の項にさらに詳細に記載された。
【0222】
併用療法
本発明に係るDV抗体剤および/またはその薬学的組成物は、併用療法において使用され得ることが認識されるだろう。「〜と併用して」は、作用物質が、同時に投与されなければならないことおよび/または一緒に送達されるように製剤化されなければならないことを意味すると意図されていないが、これらの送達方法は、本発明の範囲内である。組成物は、1つ以上の他の所望の治療薬または医学的手技と同時に、それらの前に、またはそれらの後に、投与され得る。併用して利用される治療的に活性な作用物質が、単一の組成物として一緒に投与され得るか、または異なる組成物として別々に投与され得ることが認識されるであろう。通常、各作用物質は、その作用物質に対して決定された用量および/または時間スケジュールで投与され得る。
【0223】
併用レジメンにおいて使用される治療(例えば、治療薬または手技)の特定の併用は、所望の治療薬および/または手技の適合性ならびに達成されるべき所望の治療効果を考慮し得る。本発明の薬学的組成物は、併用療法(例えば、併用ワクチン療法)において使用され得、つまり、その薬学的組成物は、1つ以上の他の所望の治療薬および/またはワクチン接種手順と同時、それらの前、またはそれらの後に、投与され得ることも認識されるだろう。
【0224】
治療有効量の本発明に係る抗体剤が、提供される薬学的組成物および少なくとも1つの他の活性成分との併用での使用のために組み合わされる。いくつかの実施形態において、活性成分は、抗ウイルス剤(例えば、インターフェロン(例えば、インターフェロンα−2b、インターフェロン−γなど)であるがこれらに限定されない)、抗DVモノクローナル抗体、抗DVポリクローナル抗体、RNAポリメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、免疫調節物質、アンチセンス化合物、低分子干渉RNA、短ヘアピンRNA、マイクロRNA、RNAアプタマー、リボザイムおよびそれらの組み合わせである。併用レジメンにおいて使用する治療の特定の組み合わせは、通常、所望の治療薬および/または手技の適合性ならびに達成されるべき所望の治療効果を考慮し得る。使用される治療および/もしくはワクチンが、同じ障害に対して所望の効果を達成し得るか(例えば、本発明の抗原は、別のDVワクチンと同時に投与され得る)、またはそれらが、異なる効果を達成し得ることも認識されるだろう。
【0225】
使用される治療は、同じ目的のために所望の効果を達成し得る(例えば、DV感染の処置、予防および/またはその発生の遅延に有用なDV抗体は、DV感染の処置、予防および/またはその発生の遅延に有用な別の作用物質と同時に投与され得る)か、または異なる効果(例えば、任意の有害作用の制御)を達成し得ることが認識されるだろう。本発明は、薬学的組成物のバイオアベイラビリティを改善し得、その代謝を低下および/もしくは改変し得、その排出を阻害し得、ならびに/またはその体内分布を改変し得る作用物質と併用される薬学的組成物の送達を包含する。
【0226】
いくつかの実施形態において、併用して使用される作用物質は、それらが個々に使用されるレベルを超えないレベルで利用されるだろう(with)。いくつかの実施形態において、併用して使用されるレベルは、個々に使用されるレベルより低いだろう。
【0227】
いくつかの実施形態において、本発明に係るDV抗体は、インターフェロン、RNAポリメラーゼ阻害剤またはインターフェロンとRNAポリメラーゼ阻害剤の両方とともに投与され得る。
【0228】
いくつかの実施形態において、併用療法は、単一のエピトープ(例えば、単一のコンフォメーションエピトープ)に指向される複数の抗体剤の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、併用療法は、異なるエピトープ(例えば、同じウイルスのエンベロープタンパク質上または異なるウイルスのエンベロープタンパク質上のエピトープであって、そのエピトープは、コンフォメーション性でもよいし、そうでなくてもよい)を認識する複数の抗体剤を含むことにより、例えば、感染プロセスにおける複数の機序が同時に干渉され得る。
【0229】
ある特定の実施形態において、本発明に係る組成物は、A鎖領域に対する厳密に1つの抗体剤を含む。ある特定の実施形態において、組成物は、厳密に2つのDV A鎖領域抗体剤を含み、かつ/または併用療法は、厳密に2つのDV A鎖領域抗体剤を利用する。
【0230】
本発明に係る抗体剤の任意の順列または組み合わせが、他の任意の抗体剤と組み合されることにより、複数の異なる抗体剤を含む組成物および/または併用療法レジメンが製剤化され得ることが、当業者によって認識されるだろう。
【0231】
投与方法
本発明に係るDV抗体剤および本発明に係るその薬学的組成物は、任意の適切な経路およびレジメンに従って投与され得る。いくつかの実施形態において、経路またはレジメンは、正の治療的利益と相関したものである。いくつかの実施形態において、経路またはレジメンは、FDAおよび/またはEPによって承認されたものである。
【0232】
いくつかの実施形態において、投与される正確な量は、医学分野において周知であるような1つ以上の要因に応じて被験体ごとに変動し得る。そのような要因としては、例えば、被験体の種、年齢、全般的な状態、感染の重症度、具体的な組成、その投与様式、活性の様式、処置される障害およびその障害の重症度;使用される特定のDV抗体剤の活性;投与される特定の薬学的組成物;投与後の組成物の半減期;被験体の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用される特定の化合物の投与時間、投与経路および排出速度;処置期間;使用される特定の化合物と併用されるまたは同時に使用される薬物などのうちの1つ以上が挙げられ得る。薬学的組成物は、投与を容易にするためおよび投与量を均一にするために投薬単位形態(dosage unit form)で製剤化され得る。しかしながら、本発明の組成物の総1日使用量は、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されるだろう。
【0233】
本発明の薬学的組成物は、当業者によって認識されるように、任意の経路によって投与され得る。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、経口(PO)、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、動脈内、髄内(intramedullary)、髄腔内、皮下(SQ)、脳室内/心室内(intraventricular)、経皮的、皮膚間(interdermal)、皮内、直腸(PR)、膣、腹腔内(IP)、胃内(IG)、局所的(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローションおよび/または液滴によって)、粘膜、鼻腔内、頬側、経腸的、硝子体、舌下によって;気管内滴注、気管支滴注および/または吸入によって;経口スプレー、点鼻薬および/もしくはエアロゾルとして、ならびに/または門脈カテーテルを通じて、投与される。
【0234】
特定の実施形態において、本発明に係るDV抗体剤および/またはその薬学的組成物は、静脈内に、例えば、静脈内注入によって、投与され得る。特定の実施形態において、本発明に係るDV抗体剤および/またはその薬学的組成物は、筋肉内注射によって投与され得る。特定の実施形態において、本発明に係るDV抗体剤および/またはその薬学的組成物は、皮下注射によって投与され得る。特定の実施形態において、本発明に係るDV抗体剤および/またはその薬学的組成物は、門脈カテーテルを介して投与され得る。しかしながら、本発明は、薬物送達科学のありうる進歩を考慮して、任意の適切な経路による本発明に係るDV抗体剤および/またはその薬学的組成物の送達を包含する。
【0235】
ある特定の実施形態において、本発明に係るDV抗体剤および/または本発明に係るその薬学的組成物は、所望の治療効果を得るために、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたは約1mg/kg〜約25mg/kg被験体体重/日を送達するのに十分な投与量レベルで投与され得る。所望の投与量は、1日あたり3回より多く、1日あたり3回、1日あたり2回、1日あたり1回、1日おき、2日おき、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎、2ヶ月毎、6ヶ月毎または12ヶ月毎に送達され得る。ある特定の実施形態において、所望の投与量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回またはそれ以上の投与)を用いて送達され得る。
【0236】
予防的適用
いくつかの実施形態において、本発明に係るDV抗体剤は、予防的適用のために利用され得る。いくつかの実施形態において、予防的適用は、DV感染に感受性であるおよび/またはその症状を示している個体におけるDV感染および/または他の任意のDV関連状態を予防するため、その進行を阻害するためおよび/またはその発生を遅延させるための系および方法を含む。いくつかの実施形態において、予防的適用は、脳の感染を予防するため、その進行を阻害するためおよび/またはその発生を遅延させるための系および方法を含む。いくつかの実施形態において、予防的適用は、生命の維持にとって重要な臓器(例えば、肝臓)の機能障害を予防するため、その進行を阻害するためおよび/または遅延させるための系および方法を含む。
【0237】
診断的適用
いくつかの実施形態において、本発明に係るDV抗体剤は、診断的適用のために使用される。例えば、DV抗体剤の結合プロファイルの多様性のおかげで、サブトラクティブ解析によって個々の血清型を同時に精査することができながら、汎用的(pan)DV抗体剤を提供するために複数のDV血清型を検出する診断アッセイが使用され得る。
【0238】
診断目的のために、抗体剤は、エンベロープ糖タンパク質のA鎖領域を検出するため、DV血清型を識別するため、ビリオンおよび抗体を検出するための多種多様の形式で使用され得る(例えば、米国特許第5,695,390号を参照のこと;参照により本明細書中に援用される)。抗体剤は、個々に、または対象の群の他の抗体もしくは他の抗体と組み合わせて、あるいはDVエンベロープタンパク質上のグリコシル基に結合するレクチンとともに、使用され得る。診断目的のために、先に述べた多種多様の標識が大部分に対して使用され得る。これらとしては、フルオロフォア、化学発光部分、放射性同位体、酵素、粒子(例えば、コロイド炭素粒子、金粒子、ラテックス粒子など)、高親和性レセプターが存在するリガンド、および活性化されると検出可能なシグナルを提供し得るプロラベル(prolabel)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0239】
いくつかの実施形態において、ある表面が、遊離タンパク質(例えば、循環タンパク質)として、またはインタクトなもしくは部分的にインタクトなビリオンの一部として、DV抗原に結合し得るタンパク質でコートされる。複数のDV血清型またはレクチン(例えば、Galanthus nivalisレクチン;「GNA」)に結合する本発明の抗体が使用され得る。
【0240】
いくつかの実施形態において、アッセイは、遊離タンパク質またはDVと会合したタンパク質を含み得る媒質と表面を接触させる工程を含み得、ここで、その媒質は、サンプル、または1つ以上の血清型の公知のA鎖領域の溶液であり得る。インキュベートし、洗浄して、非特異的に結合したタンパク質を除去した後、そのアッセイは、何がアッセイされているかに応じて、様々な様式で進められ得る。血清陽性であると疑われる血液サンプルがアッセイされている場合、そのサンプルは、A鎖領域タンパク質の層に適用され、インキュベートされ、洗浄され、そのタンパク質層に結合したヒト抗体の存在が測定され得る。標識されたα−ヒト抗体が使用され得る(最初に使用された対象抗体のアイソタイプに対するもの以外)。血清陽性の被験体における抗体に対するアッセイでは、対象抗体は、そのような被験体の血清中の任意のヒト抗DV抗体を検出するために使用される同じ試薬とともに、コントロールとして使用され得る。そのサンプル中の抗体の特異性は、抗ヒト抗体と差次的に標識された対象抗体を使用することによって確かめることができ、かつサンプル中の抗体によってその対象抗体が阻止されるか否かを決定することができる。
【0241】
サンプルが、DV A鎖領域タンパク質についてアッセイされる場合、検出では、標識された対象抗体が使用され、その選択は、ジェノタイピングが注目されているのかまたはA鎖領域タンパク質の検出が注目されているのかに依存する。非特異的に結合した抗体を洗浄した後、公知の手法に従って標識の存在を検出することによって、標識された抗体の存在が測定される。代替的または付加的に、対象抗体が、表面に結合している場合、A鎖領域に対する標識されたレクチンが、A鎖領域タンパク質の存在を検出するために使用され得る。
【0242】
本発明に係る抗体剤は、血清中の抗体、モノクローナル抗体、遺伝子操作の結果として発現された抗体などを含む他の抗体の反応性を測定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、インタクトなビリオンが、使用される。いくつかの実施形態において、コンフォメーション的に保存されたエンベロープタンパク質が、使用される。ビリオンの捕捉については、例えば、Kimuraら、1998,J.Med.Virology,56:25−32;Moritaら、1996,Hapato−Gastroenterology,43:582−585;Sataら、1993,Virology,196:354−357;およびHijikataら、1993,J.Virol.,67:1953−1958を参照のこと;これらのすべてが、参照により本明細書中に援用される。1つのプロトコルは、固体支持体をレクチン(例えば、GNA)でコーティングし、次いで、その表面を、インタクトなDVビリオンを含む媒質(例えば、血清陽性の患者の血清)と接触させる工程を含む。通常、ビリオンを破壊し得る添加物は、回避されるべきである(例えば、洗浄剤)。媒質をインキュベートし、洗浄して、その媒質の非特異的に結合した構成要素を除去した後、ビリオンを、本発明に係る抗体およびサンプルの抗体と接触させ得る。これは、同時に、または連続的に(最初にサンプルが加えられる)行われ得る。別の抗体で置換されやすい量の対象抗体が使用される。そのような量は、経験的に決定され得、種々の量の対象抗体を一連の試験において使用することが望まれ得る。サンプルの非存在下および存在下において得られるシグナルを知ることによって、サンプル中の抗体の反応性または結合親和性が測定され得る。様々な手法が、ビリオンに結合した対象抗体の量を測定するために使用され得る。対象抗体が、例えば、ビオチンまたはジゴキシゲニンで標識される場合、基質が検出可能なシグナルを生成する酵素またはフルオロフォアで標識された、ストレプトアビジンまたは抗ジゴキシゲニンが、対象抗体の量を測定するために役立ち得る。
【0243】
標識された対象抗体剤は、生検材料のDVの存在についてアッセイする際に使用され得る。標識された抗体は、標識された対象抗体の1つ以上の溶液を用いて、固定化された生検材料(例えば、肝臓切片)とともにインキュベートされ得る。非特異的に結合した抗体を洗浄した後、生検組織の細胞に結合した抗体の存在は、その標識の性質に従って検出され得る。
【0244】
いくつかの実施形態において、本発明に係るDV抗体剤は、DVレセプターを同定するために使用され得る。当業者は、これを達成できる数多くの方法を認識するだろう(Sambrook J.,Fritsch E.and Maniatis T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989;およびAusubelら、eds.,Current Protocols in Molecular Biology,1987;両方が参照により本明細書中に援用される)。代表的には、DVエンベロープ糖タンパク質のA鎖領域に対する抗体が、DV感染に感受性である細胞へのDVビリオンの付着を阻害し得るか否かを決定することによって、タンパク質レセプターおよびペプチドレセプターは、同定され得る。したがって、DV A鎖領域タンパク質およびペプチドに対するレセプターは、この様式で同定され得る。感受性である細胞が、DVおよび抗DV A鎖領域抗体の存在下においてインキュベートされ得、細胞結合アッセイを利用することにより、その抗体の存在下において付着が減少するか否かが決定され得る。
【0245】
DVに対する推定レセプターおよび/またはDVに対する推定レセプターのライブラリーを発現する細胞は、DVに結合する能力についてスクリーニングされ得る。例えば、推定DVレセプター(例えば、DV A鎖領域に対するレセプター)を発現する細胞が、細胞の表面上の推定レセプターへのDVタンパク質またはペプチドの結合を可能にするのに十分な時間にわたっておよびそのような十分な条件下において、抗体の存在下でDVタンパク質またはペプチドと接触され得る。代替的または付加的に、DVタンパク質、ペプチドまたはビリオンは、細胞表面上の推定レセプターを接触させる前に、抗体とともにプレインキュベートされ得る。結合は、当該分野で公知の任意の手段、例えば、フローサイトメトリーなどによって検出され得る(AusubelらまたはSambrookら、前出を参照のこと)。抗体の非存在下の細胞の非存在下における結合と比べて、抗体の存在下における細胞表面への結合の減少は、DVレセプターの同定を示す。
【0246】
いくつかの実施形態において、DVレセプターを同定する方法は、ビーズ、カラムなどの固体支持体の使用を含む。例えば、DVタンパク質およびペプチド(例えば、A鎖領域タンパク質および/またはそのフラグメント)ならびに/またはDVビリオンに対するレセプターは、DV抗体を固体支持体に付着させ、次いで、DVタンパク質またはペプチドがその抗体に結合するのに十分な時間にわたってその抗体をそのDVタンパク質またはペプチドと接触させることによって、同定され得る。これにより、DVタンパク質またはペプチドへのレセプターの結合を可能にするのに十分な時間にわたっておよびそのような十分な条件下において、固体支持体上の抗体:リガンド複合体と接触し得る推定DVレセプターに対するDVタンパク質リガンドが提供される。タンパク質は、ライブラリーから発現され得るか、または天然の細胞もしくは組換え細胞からの細胞抽出物もしくは精製されたタンパク質調製物として提供され得る。いったん、DVタンパク質ペプチド間の特異的結合複合体が形成されたら、未結合のDVタンパク質またはペプチド、例えば、DVタンパク質またはペプチドに特異的に結合しなかったライブラリータンパク質またはペプチドが、例えば、標準的な洗浄工程によって、除去される。次いで、結合したタンパク質は、溶出され、例えば、ゲル電気泳動によって、同定される。
【0247】
キット
本発明は、本発明に係る方法を好都合におよび/または効率的に行うための種々のキットを提供する。キットは、代表的には、本発明に係る1つ以上のDV抗体剤を備える。いくつかの実施形態において、キットは、異なる目的(例えば、診断、処置および/または予防)のために使用される種々のDV抗体剤のコレクションを備える。代表的には、キットは、使用者が被験体への複数回の投与を行うことおよび/または複数の実験を行うことを可能にするのに十分な量のDV抗体剤を備え得る。いくつかの実施形態において、キットは、購入者が指定した1つ以上のDV抗体剤とともに供給されるか、またはそのようなDV抗体剤を備える。
【0248】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用するためのキットは、1つ以上の参照サンプル;指示書(例えば、サンプルを処理するため、試験を行うため、結果を解釈するため、DV抗体剤を可溶化するため、DV抗体剤の貯蔵のためなど);緩衝剤;および/または試験を行うために必要な他の試薬を備え得る。ある特定の実施形態において、キットは、抗体のパネルを備え得る。キットの他の構成要素としては、細胞、細胞培養培地、組織および/または組織培養培地が挙げられ得る。
【0249】
キットは、使用のための指示書を備え得る。例えば、指示書は、DV抗体剤を含む薬学的組成物を調製する適切な手順および/または被験体に薬学的組成物を投与するために適切な手順を使用者に通知し得る。
【0250】
いくつかの実施形態において、キットは、いくつかの単位投与量の、DV抗体剤を含む薬学的組成物を備える。記憶補助物(memory aid)が、例えば、投薬が施され得る処置スケジュールにおける日/時間を指定する、数字、文字および/もしくは他のしるしの形態で、ならびに/またはカレンダー挿入物として、提供され得る。薬学的組成物の製剤(dosage)と類似のまたは異なる形態の、プラセボ製剤および/またはカルシウム栄養補助食品が、製剤が毎日摂取されるキットを提供するように含められ得る。
【0251】
キットは、ある特定の個々の構成要素または試薬が別々に収容され得るように、1つ以上の器または容器を備え得る。キットは、商業的販売のために比較的厳重に閉じ込めた状態で個々の容器を同封するための手段(例えば、指示書、発泡スチロールのような包装材料などが同封され得るプラスチックの箱)を備え得る。
【0252】
いくつかの実施形態において、キットは、DVに罹患しているおよび/またはDVに感受性である被験体の処置、診断および/または予防において使用される。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、(i)少なくとも1つのDV抗体剤;(ii)その少なくとも1つのDV抗体剤を被験体に投与するための注射器、針、アプリケーターなど;および(iii)使用のための指示書を備える。
【0253】
いくつかの実施形態において、キットは、DVに罹患しているおよび/またはDVに感受性である被験体の処置、診断および/または予防において使用される。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、(i)凍結乾燥された粉末として提供される少なくとも1つのDV抗体剤;および(ii)その凍結乾燥された粉末を再構成するための希釈剤を備える。そのようなキットは、必要に応じて、少なくとも1つのDV抗体剤を被験体に投与するための、注射器、針、アプリケーターなど;および/または使用のための指示書を備え得る。
【0254】
本発明は、少なくとも1つのDV抗体剤を含むワクチンを生成するための試薬を備えるキットを提供する。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、DV抗体、その特徴的な部分および/またはその生物学的に活性な一部を発現する細胞;(ii)それらの細胞を生育するための培地;ならびに(iii)カラム、樹脂、緩衝剤、チューブ、および抗体精製に有用な他のツールを備え得る。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、(i)DV抗体、その特徴的な部分および/またはその生物学的に活性な部分をコードするヌクレオチドを含むプラスミド;(ii)それらのプラスミドで形質転換されることができる細胞(例えば、VeroおよびMDCK細胞株を含むがこれらに限定されない哺乳動物細胞株);(iii)それらの細胞を生育するための培地;(iv)ネガティブコントロールとして、DV抗体をコードするヌクレオチドを含まない発現プラスミド;(v)カラム、樹脂、緩衝剤、チューブおよび抗体精製に有用な他のツール;ならびに(vi)使用のための指示書を備え得る。
【0255】
いくつかの実施形態において、キットは、1つ以上のサンプル中のDVの存在を検出するために使用される。そのようなサンプルは、血液、血清/血漿、末梢血単核球/末梢血リンパ球(PBMC/PBL)、痰、尿、便、咽頭スワブ、皮膚病変スワブ、脳脊髄液、子宮頸部スミア、膿サンプル、食品マトリックス、および身体の様々な部分(例えば、脳、脾臓および肝臓)由来の組織を含むがこれらに限定されない病理学的サンプルであり得る。そのようなサンプルは、土壌、水および微生物叢を含むがこれらに限定されない環境サンプルであり得る。列挙されていない他のサンプルにも、適用可能であり得る。いくつかの実施形態において、そのようなキットは、(i)少なくとも1つのDV抗体;(ii)ポジティブコントロールとして、DVを含むことが既知であるサンプル;および(iii)ネガティブコントロールとして、DVを含まないことが既知であるサンプル;および(iv)使用のための指示書を備える。
【0256】
いくつかの実施形態において、キットは、1つ以上のサンプル中のDVを中和するために使用される。そのようなキットは、DV含有サンプルを少なくとも1つのDV抗体剤で処理するために必要な材料、およびその処理されたサンプルが、未処理のサンプルと比べて、培養された細胞に感染する能力を試験するために必要な材料を提供し得る。そのようなキットは、(i)少なくとも1つのDV抗体剤;(ii)DVとともに培養されることおよびDVに感染することができる細胞;(iii)ネガティブコントロールとして、DVに結合することおよびDVを中和することができない抗体;(iv)ポジティブコントロールとして、DVに結合して中和することができる抗体;(v)ネガティブコントロールとして、DVを含まないことが既知であるサンプル;(vi)ポジティブコントロールとして、DVを含むことが既知であるサンプル;および(vii)使用のための指示書を備え得る。
【実施例】
【0257】
本発明は、以下の実施例に関してよりよく理解されるだろう。しかしながら、これらの実施例は、単に例証的な目的であって、本発明の範囲を限定すると意味しないことが理解されるべきである。開示される実施形態に対する様々な変更および改変が、当業者に明らかになるだろうし、本発明の製剤化および/または方法に関するものを含むがこれらに限定されないそのような変更および改変は、本発明の精神および添付の請求項の範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0258】
実施例1:相互作用の物理化学的特徴を解析することによるタンパク質−タンパク質複合体の構造の予測
この実施例における研究は、タンパク質間の(例えば、抗原−抗体)相互作用をモデル化する重要な物理化学的特徴の開発および使用を例証する。この実施例における解析は、抗原−抗体相互作用に対する正確な天然様の構造と不正確な構造とを区別するのを助け、ゆえに、コンピュータによるドッキングモデルを使用してタンパク質間相互作用をモデル化する際に行われるように、ポーズをランク付けするためにエネルギー関数だけしか使用しないという限界を克服するのに有用である。さらに、この実施例において解析された9つの試験例の天然のポーズを同定できなかったことは、現行の探索アルゴリズムの限界および抗原−抗体複合体に対する親和性増大変異の設計に関連する問題を強調する。
【0259】
分子認識の基礎を形成する多くの幾何学的特性および化学的特性を捉えるために、13個の原子レベルの特徴:7つの化学的特徴および6つの物理的特徴(表1)を使用して、抗原−抗体の界面を記載した。さらに、77個の抗原−抗体複合体の非冗長3D構造を含むデータセットをアセンブルし(方法の項を参照のこと)、2つ、つまり、40個の構造からなる学習用セットおよび残りの37個の構造からなる検査用セットに分けた。各構造に対応して、コンピュータによるドッキング(方法の項を参照のこと)を用いて100個のデコイモデルを構築して、合計7,777個の構造(7,700個のデコイ+77個のX線)を得た。学習段階では、多変量ロジスティック回帰分析(MLR)を使用して、各特徴(説明変数)と、それがX線ポーズとデコイポーズ(結果変数)との判別に成功し得る程度との関係性を決定した。この解析は、結果変数の値を予測するために組み合され得るすべての説明変数のサブセットを得るのを助けた。各PDBファイル(およびそのデコイ)から生成されたインプット特徴は、有意性の過大(または過小)評価をもたらし得る不均一な学習を防ぐために、標準化されたZ−スコアとして表された。予測段階のために、事前に計算された有意な特徴を使用して、検査用データセットにおける構造が天然様である確率を予測した。
【0260】
MLR解析の結果は、天然構造とデコイ構造とを正確に判別する確率に影響する個々の特徴の相対的優位性が、ZEPII>主鎖−主鎖水素結合>水素結合の密度>荷電基のパーセンテージ>カチオン−π相互作用の密度>埋もれた表面積>中性極性基のパーセンテージ>イオン結合の密度の順であることを示唆した。上記の特徴の各々が、0.05のアルファレベルで有意であると見出された。ロジスティック回帰係数に基づくと、水素結合およびイオン結合の密度、主鎖−主鎖水素結合ならびに埋もれた表面積は、ドッキングされたモデルにおいて過大評価されるとみられる。これは、上記の特徴の値が上昇すると、スコア化関数を最大にする傾向があるので、予想される。逆に、ZEPII、カチオン−π相互作用、荷電基および中性極性基のパーセンテージは、ドッキングされたモデルにおいて過小表示されると見られる。カチオン−π相互作用、荷電基および中性極性基のパーセンテージは、エネルギースコア化関数に有意に寄与しない;ゆえに、これらの特徴は、ドッキングされた界面において最適化されなかった。さらに、ドッキングされたモデルの評価は、ドッキング手順が、解離できる抗原抗体複合体に共通した対相互作用を忠実に要約しないことを示す;ゆえに、その模擬界面は、低いZEPII値を有すると見出された。
【0261】
次に、MLRを使用し、事前に計算された有意な特徴を用いて、検査用データセットにおける37個の抗原−抗体相互作用のX線構造を予測し、次いで、MLRに基づく予測の感度を、ドッキングされたモデルにおいて使用されたZRANKエネルギー関数と比較した(方法の項を参照のこと)。全体的に見て、MLRは、ZRANKエネルギー関数よりもX線構造の予測においてより良いことが示されたことから(
図1)、MLRアプローチは、天然様の結合ポーズの予測においてZRANKよりも改善をもたらすことが示唆された。デコイモデル、それらのZRANKスコアおよびMLRに基づく予測確率のより詳しい検査は、興味深い見識を明らかにした(
図2)。ZDOCKは、37個のうち29個の構造に対して天然様の構造を同定したことから、コンピュータによる探索アルゴリズムが非常に正確であると示唆される。しかしながら(1)ZRANKスコアは、構造的に類似したポーズ間でさえ有意に異なっていた(
図2A);(2)非常に種々の構造が、正確な解と不正確な解とを判別しにくくするほぼ同じスコアを受け取り得る(
図2A);(3)より悪い不正確な解が、天然様の構造よりも良いスコアを受け取ることが多かった(
図2A);(4)MLRに基づく予測確率もまた、構造的に類似したポーズ間で異なるが、非天然のポーズが、高い予測確率を受け取ることはまれであることから、偽陽性の構造予測の可能性は、それらのポーズが予測確率に従ってランク付けられるときよりも低いことが示唆される。したがって、予測確率は、ZRANKスコアと比べてRMSDとより良く相関することが判明した(
図2Bおよび2Cを参照のこと)。
【0262】
実施例2:親和性増大変異を予測するための物理化学的特徴の使用
この実施例における研究は、タンパク質間(例えば、抗原−抗体)相互作用に対する親和性増大変異を設計するためのスコアリングスキームの開発を示す。
【0263】
詳細には、この実施例では、対アミノ酸相互作用の傾向を数量化するために開発された数学的モデルを説明する(方法の項を参照のこと)。これらの統計的傾向は、可能性のある各アミノ酸対に重みを割り当てる相互作用行列として公式化された。アミノ酸界面適応度(AIF)とも呼ばれる、CDRの位置における残基の適応度は、その残基を含むタンパク質間の対接触(互いのある特定の距離内の2つのアミノ酸として定義される)のすべての組み合わされた傾向だった。いかなる構造的影響もなくAIF値を改善させる置換は、親和性増大に対する候補と考えられた。それらの傾向は、公知のタンパク質構造のデータベースにおけるアミノ酸接触に対して統計学を使用して測定された(方法の項を参照のこと)。複数の距離カットオフおよびエネルギー最小化工程を回避することにより、原子座標に大きく依存しなくなった。
【0264】
以前の研究によってもたらされた観察結果と一致して、傾向データは、パラトープでは他の残基よりもチロシン、トリプトファン、セリンおよびフェニルアラニンが優勢であることを示した(表2)。次いで、AIF測定基準を使用して、発表されたデータがそれらの予測を確証した3つの異なる系にわたって抗体の親和性増大変異を予測した。その試験例の1つは、抗EGFR抗体薬のセツキシマブ(Erbitux)であり、ここで、52pMまでの10倍の親和性改善が、軽鎖上の3つの変異によって作出された。これらの予測される変異のうちの2つであるS26DおよびT31Eは、セツキシマブにおける単一変異として結合親和性を改善すると示され、第3の変異(N93A)のより詳しい調査から、Alaが、全体的に弱い接触の傾向を有する残基のセットに含まれていることが明らかになった。別の試験例は、抗リゾチームモデル抗体D44.1であり、ここで、18個の変異が、親和性増大に適すると予測された。重鎖上の予測された変異のうちの4つであるT28D、T58D、E35S、G99Dは、D44.1の発表された高親和性改変体の一部だった。別の試験例は、癌関連セリンプロテアーゼMT−SP1を標的にする抗体E2だった。AIF測定基準は、T98Rを含む8つの変異を予測し、抗体親和性を340pMまで14倍改善するための単一変異T98Rを同定した以前のインシリコでの親和性増大研究が確かめられた。
【0265】
実施例3:デング抗体における親和性増大変異の設計
この実施例における解析は、DVの4つすべての血清型の活性を強力に中和する改変体が生成されるように、DVのある特定の血清型だけに結合する抗DV抗体が操作によって改変され得ることを例証する。詳細には、この実施例における研究は、デングmAb 4E11における合理的に設計された変異が、DV血清型4(DV4)に対する親和性を増強し、かつDV血清型1〜3(DV1〜3)への結合に対して有意に悪影響を及ぼさないことを示す。
【0266】
mAb 4E11の結合プロファイルおよび中和活性プロファイルは、DV1〜3に対して高い親和性および阻害能力を示すが、DV4に対しては低い親和性および中和活性しか示さない(
図3)。4つすべての血清型に対する強力な中和活性のために4E11を操作するために、設計アプローチ(
図4)は、3つの重要な要因:(1)4E11−EDIII相互作用の正確なモデルを生成すること、(2)血清型特異的な構造エレメントを理解し、親和性および特異性の決定基を再度捉えること、ならびに(3)DV4との好ましい相互作用、ゆえに、改善された親和性をもたらす置換を設計することに依存した。
【0267】
抗体の結晶構造が無い場合、Fv領域の構造モデルを構築し、モデル化されたFvを、ZDOCKソフトウェアを使用してDV1のEDIIIに対してドッキングさせ、エピトープおよびCDR H3パラトープに対する以前に発表された機能データ(Watanabeら、2012 Trends in Microbiology 20:11−20)を結合界面に特定の残基として含めることにより、天然の複合体から有意に逸脱しないドッキングポーズを確かなものにした(方法の項を参照のこと)。ZDOCKを、異なる組み合わせのインプット界面残基で5回実行し、各回の最善のランキングモデル(
図5)を、MLR確率を用いて再度ランク付けした(表3)。MLRアプローチによって予測された上位のモデルは、ZRANK法の予測とマッチしなかった。
【0268】
MLRアプローチによって予測された上位のモデルを、ウェブサーバーANCHOR[Dosztanyiら、2009 Bioinformatics 25:2745−2746]によってコンピュータ的に予測されたパラトープホットスポットと、ED−III(DV1)の間接ELISAによる結合評価とともに、4E11の全CDRループにおける各位置のAlaスキャニングによって実験的に決定されたホットスポットとの間で行われた比較によって検証した。選択されたモデルのホットスポット予測は、実験的に決定されたホットスポットの61%を正確に同定したのに対し、残りのポーズは、<45%(28〜44%の範囲)のホットスポット予測精度を有したことから、選択されたポーズは、真の4E11/ED−III結合配置を反映する可能性が高いと示された。
【0269】
上位の4E11−ED−III(DV1)モデルを使用して、4E11と他の3つの各血清型由来の代表的なEDIII系統との相互作用のモデル化を導いた(方法の項を参照のこと)。4つの構造モデルを使用して、各血清型への抗体結合の様式を調べ、DV4血清型に対する不十分な親和性の分子基盤を、配列とED−IIIドメイン−レベル構造解析との組み合わせを用いて同定した。解析から、4E11結合界面内および結合界面付近において、DV4と他の血清型との間に複数のアミノ酸の差異が明らかになった。特に、近くのβ鎖に対するA鎖(残基305〜308)の配向が、307位に差異が局在するせいでDV4において異なっていた(
図6)。DV4に対する低い親和性および中和能力と一致して、4E11−EDIII(DV4)界面は、より小さいBSA、より少ない水素結合および塩橋接触を有した。
【0270】
次に、DV4結合に対する親和性を高める変異を設計するためにAIFインデックスを適用した。これにより、23個のCDR位置に及ぶ87個の変異セットがもたらされた。予測された変異は、すべてのタイプのアミノ酸を含んだ。アミノ酸置換の選択は、必ずしも直観的でなかった(例えば、パラトープCDR位置の周りのエピトープ領域が、負に荷電していた場合、ArgおよびLysは、そのCDR位置において必ずしも統計的に好ましくなかった)。エネルギー論(energetics)を改善する残基が好まれるが、親和性の獲得は、静電気的相補性、充填および疎水性表面積の改善によって生じ得る。DV4血清型特異的残基に最も近いCDR位置に親和性増大変異を設計することに意識的な努力がなされた(
図6)。DV4への親和性を改善する潜在能力を有するが他の血清型に対しては有害でない変異に、より高い優先度を与えた。結合親和性に対する点変異の影響について知る試みにおいて、変異体は、最も高い成功確率を有する残基に限定されなかった。
【0271】
実施例4:操作されたデング抗体の実験的特徴付け
この実施例における実験は、抗体における特定の操作された部位特異的変異が、DV1〜3のEDIIIに対する結合親和性および/または結合能力を低下させることなく、または最小限の低下だけで、DV4のEDIIIに対する親和性および/または効力を高めることを解明する。この実施例における実験は、操作された抗体の結合特性も正確に定量され得ることも実証する。この研究における実験は、さらに、特定の成功した単一変異を組み合わせることによって設計された操作されたデング抗体が、その抗体の親和性を最大に増加させることを示す。さらに、この実施例における実験は、この研究において設計された操作された抗体が、DVの4つすべての血清型に対して強い阻害活性を示すだけでなく、インビボにおいて強力な抗ウイルス活性も有することを確かめる。
【0272】
コーティングされる抗原として、DV1〜4の精製された組換えEDIIIを使用する間接ELISAによる実験的試験のために、合計87個の変異を選択した。変異体を、部位特異的突然変異誘発によって生成し、配列を確かめ、一過性のトランスフェクションによって293細胞から発現させた。DV1〜3のEDIIIへの結合の減少が無くまたは最小限であり、かつEDIII−DV4親和性を高めた10個の変異が、同定された(表3)。これらの10個の変異は、5つのCDR位置に及び、4つがVLに存在し(R31、N57、E59およびS60)、1つがVHに存在した(A55)。10個のうち8個の変異が、VLに存在し、7つが、L2だけに存在した。首尾よい変異は、大半は荷電されたまたは極性の性質であり、抗体−抗原界面領域の周囲に存在すると見出された(
図7)。構造解析は、高度に保存されたエピトープ残基との接触をもたらす変異体の側鎖を示したことから、なぜそれらがDV1〜3の結合に対して有害でないかが示唆された(
図6および表5)。
【0273】
上で考察されたこれらの10個の単一変異体の結合特性のさらなる正確な定量のために、溶液中の平衡時において親和性を測定する競合ELISA実験を行った。表6は、5つの単一変異体抗体からの親和性の結果を概説しており、これらは、DV1〜3のEDIIIに対する親和性を維持しつつ、最も大きなEDIII−DV4親和性増大を示した変異だった。DV4の親和性増大の程度は、1.1倍(VL−R31K)から9.2倍(VH−A55E)の範囲だった。驚いたことに、2つの変異は、他の血清型に対して高い親和性を与えた;VH−A55Eは、ED−III−DV2およびED−III−DV3に対してそれぞれ16倍および7倍の親和性増加をもたらし、VL−N57Eは、ED−III−DV2に対して3倍の親和性増加を示した。血清型1〜3に対して測定された15個のうちの3つの親和性だけが(上記の5つの単一変異体抗体とともに)、2倍超の減少を示し、ただ1つの抗体−EDIII親和性(EDIII−DV3に対するVL−E59Q)が、3倍超の親和性減少をもたらした。
【0274】
構造的に、親和性を高める上記5つの位置が、パラトープの空間的に異なる領域にマップされることから(
図7)、さらなる増大が、成功した単一変異を組み合わせることによって達成され得ると示唆される。複数の3、4および5変異体組み合わせを試験し、4E5Aと呼ばれる五重変異体抗体が、最も大きい親和性増加を示した。驚いたことに、4E5Aは、単一変異体としてのEDIII−DV4に最も大きな親和性改善を与える各位置におけるアミノ酸変化である5つの置換から構成された。親mAbと比べて、4E5Aは、DV1およびDV3のEDIIIへの親和性を維持しつつ、EDIII−DV4に対して450倍の親和性改善(K
D=91nM)およびDV2に対して15倍の親和性増加を示した(表7および表8)。著しいことに、これらの結果は、抗体の親和性が、マイクロモル濃度からナノモル濃度付近の親和性に増加し得ることを例証した。表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、親和性測定を検証し、ならびに結合動態パラメータを得た(表9および
図8)。SPRからの親和性値は、EDIII−DV4に対する4E11 WTの特異的結合が検出できなかったこと(非常に低い親和性を示唆する)(競合ELISAの結果と概して一致した(K
D=41μM))を除いては、競合ELISAによって得られた親和性値と定量的に良好に一致した。
【0275】
EDIII−DV4に対する4E5Aの親和性の増大が、活性の増大に解釈される至るか否かを決定するために、フォーカス減少中和試験(FRNT)アッセイを使用した。WT 4E11と比べて、4E5Aは、DV4に対する中和能力の>75倍増加を示し、DV1〜3に対する効力を維持した(
図9)。4E5Aは、DV1〜4に対してそれぞれ0.19、0.028、0.77および4.0μg/mlというFRNT
50値で、4つすべての血清型に対して強い阻害活性を示した。4E5Aの活性をさらに解明するために、感染後3日目にウイルス血症のピークを示すDV2チャレンジのAG129マウスモデルにおいて抗体を評価した。1mg/kgと5mg/kgの両方において、4E5Aは、ウイルス血症の有意な減少を示し、5mg/kgでの処置は、検出限界未満のウイルス力価レベルをもたらした(
図10)。まとめると、これらの結果は、操作されたmAb 4E5Aが、DVの4つすべての血清型に対して強い阻害活性を示し、インビボにおいて強力な抗ウイルス活性を有することを示した。
【0276】
この研究に基づいて設計され得る操作された抗体(例えば、4E5A)は、重要な薬物候補であり、さらに、当該分野で公知であるような、さらなる親和性成熟およびヒト化の段階のために採用され得る。4E11/ED−III複合体の結晶構造は、本特許出願の提出の前に発表されており、それにより、発表された複合体構造とこの研究において考察された構造モデルとの比較が可能になり、実際に、1.4オングストロームのC−アルファRMSD値でのその2つの構造間の優れた対応が観察され、この研究の有意性がさらに確認された。
【0277】
考察
治療目的の抗体を発見するための従来のアプローチは、ファージディスプレイ法などの実験的方法に依存する。しかしながら、これらのアプローチは、費用がかかり、技術的に難しく、かつ時間もかかる。例えば、クレード1および2ウイルスを中和するインフルエンザFI6 mAbは、104,000個のB細胞をスクリーニングすることによって同定された。代替のストラテジーは、合理的な操作によって既存の抗体の特性を改変するものであり得る。本研究では、アブイニシオモデリングおよび抗体の再設計のためのコンピュータによる方法を提供した。試験運用において、(いくつかのデコイモデルから)X線構造を選び出す際のMLR予測法の感度は、ZRANKより優れていると見られた。さらに、AIF測定基準は、複数の系にわたって、公知の親和性増大変異を捉えることができることが示された。次いで、このフレームワークを、抗デング中和mAbに対するより広い特異性および親和性を操作するために適用した。本研究によって得られた結果は、(1)ほんの少しの研究しか、抗体の交差反応性を改善しようと試みていなかった;(2)これは、抗体再設計および親和性増大に対して経験的なアプローチを使用した最初の研究である;および(3)抗体−抗原複合体の結晶構造なしで、親和性増大変異を予測した(ブラインド予測としても知られる)ので、重要だった。本研究は、コンピュータによるアプローチの適用によって、抗体の親和性が約400倍超改善されたことを初めて示した(表10)。これらのコンピュータによる方法の単純さを考慮すれば、これらの方法は、抗体工学に広く使用され得るものであり、物理学に基づくエネルギーアプローチとは違って、開始構造の原子座標の正確な位置によって影響されない。
【0278】
ZRANKによる上位のドッキングの解は、天然構造と構造的に非常に異なったことから、上位のZRANKモデルに従う任意の親和性増大の試みは、有益な結果をもたらさないであろうことが示された。親和性増大変異は、エネルギー論アプローチによってX線構造を用いても予測されたが、結果は、安定化変異と中性変異との判別が難しいことを強調した(表11)。より顕著なことに、親和性増大変異N57E、N57SおよびE59Nは、不安定化として分類された(表11)。ZRANKは、CAPRI実験において広く使用されて、かなりの成功を収めているので、本研究において提供される方法は、他のドッキングアルゴリズムに対して積み重ねられると、匹敵して良好に機能するだろう。ZEPIIが有意に現れたという事実は、アミノ酸組成および残基間接触が判別力を含むことを示した。興味深いことに、いくつかの幾何学的特徴もまた、天然の界面をデコイと判別する予測力を有する。これは、抗原−抗体界面が、より平面であり、有意に秩序立っていたかまたは充填されていたという、以前の研究によってもたらされた観察結果と相関した。5つの異なるモデルを生成するために使用された界面残基の種々の組み合わせの間で、より多くの状況を付加することにより、探索空間が狭くなり、ゆえに天然に近い複合体の構造を発見する機会を増大させたように、公知のエピトープ界面残基およびパラトープ界面残基のすべてを使用することによって正確なモデルが生成された。
【0279】
CDRループ、特に、VH−CDRループが、安定化接触の大部分を占めるので、ファージディスプレイ法および指向進化法は、選択されたそれらのループをランダム化した。4E11に対する結果は、多様化ストラテジーが、合理的なアプローチを使用しなければならないこと、および標的化された多様化のためにVL−ループを含めなければならないことを示した。親和性増大変異が、主に極性の性質であり、結合界面の周囲に存在したという観察結果は、公知のデータと一致した。これらの変異は、衝突の効率を上げることによって会合速度を高めた可能性がある。目標とされた活性を有する変異の予測の成功率は、12%(10/87)である。設計の問題の複雑さ(すなわち、複数の抗原の関与)を考慮し、ランダム変異が、平均して、結合親和性に対して有害な影響を及ぼし得ることを考慮すると、これらの結果は、有望だった。
【0280】
研究から、マウス生殖細胞系列が、EDIIIドメインへの高親和性結合のための固有の能力を有する遺伝子セグメントを有することが示されてきた(Ref 24、32)。上記5つの変異の有益な効果にもかかわらず、これらの変異は、インビボにおいて共進化してこなかった。コドンレベルの解析によって、N57EおよびS60Wにおけるアミノ酸置換が、少なくとも2つの塩基の変更を必要とすることが示されたことから、ゲノムレベルでの限界が強調された。以前の研究は、抗DV抗体によって認識されるエピトープが、3つの異なる領域:(1)ED−III上の外側隆起部エピトープ(血清型特異的な強力な中和剤);(2)DIIIのA鎖(部分複合体特異的中和剤);ならびに(3)他のDIIおよびDIIIエピトープ(複合体特異的なまたはフラビウイルス交差反応性の、中程度に強力な中和剤)に入ることを示した。本研究では、A鎖エピトープに対する抗体が、インビトロにおいて良好な力価で、4つすべての血清型に結合するように操作され得ることが初めて示された。まとめると、4E5Aは、興味深い広域性の中和プロファイルを示し、デング熱疾患を処置するための潜在的な治療薬開発のための目的の抗体であり得る。ヒトのDVに対するmAb治療薬は、抗体依存性増強に起因して、調節のハードルに直面し得る。しかしながら、最近の研究は、組換え抗DV抗体のFc領域への改変によって、インビボにおいてADEが妨げられたことを示し、ゆえに、これらのより新しい補完的なアプローチの機会がもたらされた。mAbエピトープの保存の程度は、中和スペクトルおよびインビボでの保護を決定する際の重要な因子であり得る。DV4ウイルスの系統発生解析は、4つの異なる遺伝子型:I(東南アジア)、II(インドネシア)、IIIおよびIV(森林(Sylvatic)またはマレーシア)の存在を明らかにした。遺伝子型IIの中で、ウイルスは、以前はIIaおよびIIbと定義されていた2つの異なるクレードにクラスター形成する。4E11−5Aのエピトープ領域の配列解析から、遺伝子型Iにおける保存は比較的低かったが、遺伝子型IIa、IIbおよび4における高い保存の程度が明らかになったことから、本発明者らには、操作された抗体が、DV4ウイルスの大部分に対しておそらく有効であるだろうということが示唆された。
【0281】
【表1-3】
【0282】
【表2】
【0283】
【表3】
【0284】
【表4】
【0285】
【表5】
【0286】
【表6】
【0287】
【表7】
【0288】
【表8】
【0289】
【表9】
【0290】
【表10】
【0291】
【表11-1】
【0292】
【表11-2】
【0293】
方法
抗原−抗体界面におけるアミノ酸の接触の傾向を推定するための数学的モデル
簡潔には、抗原−抗体界面において、残基が、好ましい相互作用のエネルギー論を有する場合、その残基の対は、おそらく相互作用するか、または偶然、相互作用する。アミノ酸相互作用の傾向を、偶然によって期待される相互作用の数、すなわち期待度数(expected frequency)をコンピュータで計算し、この数で観察度数(observed frequency)を除算することによって、計算した。
【0294】
2つのアミノ酸(抗原−抗体界面の各側に由来するもの)が、互いから4.5Å以内に存在する(すなわち、最も短い非H原子の距離が4.5Å未満である)場合、それらを対残基として定義した。界面における残基x(抗原)とy(抗体)との間の対相互作用の総数が、N(x,y)である場合、それらの同時出現(concurrence)度数F(x,y)は、以下の通り定義された:
【0295】
【化5】
【0296】
上記の方程式の分母は、界面におけるすべての残基対の対相互作用の総和を示す。
【0297】
パラトープおよびエピトープにおけるすべてのアミノ酸の出現度数を計算しなければならない。エピトープにおける特定のアミノ酸xの度数F
エピトープ(x)を、以下のとおり定義した:
【0298】
【化6】
【0299】
上記方程式において、N(x)は、エピトープにおけるアミノ酸xの数を示す。分母は、エピトープにおけるすべてのアミノ酸の総数である。
【0300】
同様に、パラトープにおけるアミノ酸yの出現度数F
パラトープ(y)を、以下のとおり定義した:
【0301】
【化7】
【0302】
上記方程式において、N(y)は、パラトープにおけるアミノ酸yの数を示す。分母は、パラトープにおけるすべてのアミノ酸の総数を示す。
【0303】
パラメータF(x,y)、F
エピトープ(x)およびF
パラトープ(y)を、データセットにおける77個すべてのベンチマークテストされた抗原−抗体構造を使用して決定した。以前の研究によってもたらされた観察結果と一致して、チロシン、セリン、グリシンおよびアスパラギンが、最も多いパラトープ残基だったのに対し、リジン、アルギニン、ロイシンおよびグリシンが、最も多いエピトープ残基だった(
図11)。アミノ酸xおよびyの出現が独立している場合、下記の方程式において定義されるEF
エピトープ−パラトープ(x,y)は、アミノ酸xおよびyが同時に現れる期待度数率だった
EF(x,y)=F
エピトープ(x)F
パラトープ(y) 。
【0304】
抗原に対する界面におけるアミノ酸xおよびyの同時出現率が、期待される率より高い場合、以下の比RA
a(x,y)は、1より大きくなる。
【0305】
【化8】
【0306】
RA
S(x,y)は、20×20行列だった。RA
S(x,y)の例示的な適用は、下記に示唆される。
【0307】
RA(x,y)を使用して、CDR残基のAIFを求める。界面におけるCDR残基のAIFを、その近隣のものとRA(x,y)の総和と定義した。近隣のものを、距離の判定基準(4.5Å)によって定義した。
【0308】
ある界面位置におけるアミノ酸の最適な選択を決定する(パラトープの再操作)。抗原−抗体複合体を考慮して、CDR位置におけるアミノ酸の優先度を、接触可能性スコアを使用してコンピュータで計算した。詳細には、所与のCDR位置において、野生型(WT)残基を、グリシンおよびプロリンを除く(骨格の立体配座の変化を回避するために)残りのアミノ酸で系統的に置換し、AIF測定基準を用いて、各場合における置換の確率を評価した。野生型残基より高い置換能力を有する単一変異をコンピュータで再評価して、(a)極性基を埋没させない変異および(b)立体障害を引き起こさない変異を発見した。
【0309】
RA(x,y)を使用して、抗原−抗体界面の相互作用の強度を定量する(エピトープ−パラトープ界面インデックス)。抗原と抗体との相互作用は、数多くの非共有結合の形成によって生じる。ゆえに、相互作用の親和性は、引力と斥力との総和に直接関連した(ファンデルワールス相互作用、水素結合、塩橋および疎水性力)。本明細書中では、抗体−抗原界面の相互作用の強度を、アミノ酸対の組み合わせのすべてに対するRAの線形結合によって定量的に調査した。抗原−抗体界面の強度を表すインデックス「i」(エピトープ−パラトープ界面インデックス(EPII)とも呼ばれる)は、以下によって定義された:
【0310】
【化9】
【0311】
上記の方程式においてF
i(x,y)は、界面iにおけるアミノ酸x(xは、二次構造群(secondary structural group)に属する)とyとの同時出現度数を表す。
【0312】
EPIIを使用して、真の抗原−抗体相互作用をドッキングデコイと判別する。最も高いポテンシャルを有する界面を、コンピュータによるドッキングによって生成された他のデコイ界面と区別するために、EPII値は、そのタンパク質におけるすべての界面によって正規化されるべきである。この目的のために、Zスコア化EPIIを使用した。M個の界面が、あるタンパク質に見られる場合、界面iに対するZスコア化EPIIは、以下のとおり計算された:
【0313】
【化10】
【0314】
デコイモデルを生成するための、非冗長抗原−抗体構造複合体およびコンピュータによるドッキングのデータセット
Protein Data Bankからの合計568個の抗原−抗体複合体を解析した。幾何学的な界面の特徴(平面性、埋もれた表面積など)の妥当な数え上げを確実にするために、抗原の長さが20アミノ酸未満の構造を排除した。さらに、多くの構造が、同じまたは類似の抗原を含んだことから(これにより、この研究は偏り得る)、多重表示されたタンパク質抗原から得られた因子に対してより大きい重みを与えた。データセットから冗長な構造を除去するために、相同な抗原(BLAST_ENREF_40 P値10e27によって定義される)を有しかつ50%のエピトープ残基を共有する構造を、同じ群の下に分類し、最も高い解像度を有する構造を代表として選択した。これにより、77個の非冗長抗原−抗体複合体構造が得られた。
【0315】
ZDOCKを使用して、抗原−抗体相互作用のコンピュータによるデコイモデルを生成した。デコイモデルを生成するためのプロトコルは、77個のすべての構造的複合体に対して同じだった。抗体の可変ドメインだけをドッキングに使用した。2つの分子のうちの大きいほうをレセプターと見なし、小さい分子をリガンドとみなした。様々な立体配座をサンプリングするために、リガンドの配向を各工程において6度回転させた。最初のドッキング手順は、比較的大きな面積を探索するので、エピトープおよびパラトープ上の推定ホットスポット残基間の距離の制約を、生成されたモデルが天然のポーズから有意に変化しないことを確実にするように設定した。構造予測で直面する課題が4E11のシナリオと等価であることを確実にするために、いずれかの側において2つのホットスポット残基を選択した。すべてのデコイモデルにおいて、推定エピトープホットスポットおよび推定パラトープホットスポットは、互いから10オングストローム以内だった。ウェブサーバーANCHORを使用して、ホットスポットを同定した。最初のドッキング手順は、2,000個のポーズを生成し、次いでそれらを、先に記載された総当たりの(all−versus−all)RMSD行列に基づいてクラスター化した。2つのドッキングされたポーズ間のRMSDを、結合界面の7オングストローム以内のリガンド残基に基づいて計算した。クラスターの中心に相当するドッキングされたタンパク質のポーズをデコイモデルとみなした。ZDOCKは、ドッキングされたポーズをランク付けする脱溶媒和および静電気的エネルギーの用語(「ZRANK」)とともに形状相補性(shape complementarity)を使用する。これらのデコイの各々をさらに、CHARMm最小化を使用して洗練させた。
【0316】
予測方法の感度を評価するために、X線構造をデコイモデルと組み合わせた。
【0317】
4E11 Fvの相同性モデリング
4E11 Fvの構造モデルを、SIWW−MODEL相同性モデリングサーバーを使用して構築した。研究は、(1)標的と鋳型との間の配列類似性の程度が高かったとき、(2)CDRループL1、L2、L3、H1、H2の主鎖の立体配座が「正準の構造」に従うとき、および(3)重鎖CDR3(H3)が、異常に長くなかったとき、超可変CDRのモデリングの全体的な精度が適切であることを示した。
【0318】
4E11−EDIII(DV1〜4)ポーズを生成するためのコンピュータによるドッキング
モデル化されたFvを、ZDOCKを使用して、選択されたDV1系統のEDIIIに対してドッキングさせた。DV1ウイルスに感染したマウスからmAb 4E11を最初に単離したので、DV1抗原を使用した。DV1抗原の構造を、鋳型として、DV1 EDIII(PDB:3IRC)の解かれた結晶構造を維持しているSWISS MODEL相同性モデリングサーバーを使用してモデル化した。ZDOCKは、ドッキングされたポーズをランク付けする脱溶媒和および静電気的エネルギーの用語(「ZRANK」)とともに形状相補性を使用する。ドッキングされたポーズが天然の複合体から有意に逸脱しないことを確実にするために、文献に見られるマッピングされたエピトープ残基およびパラトープ残基を結合界面に含めざるを得なかった。界面に含められた残基は、307K、389Lおよび391W(エピトープ;3IRCにおけるようなDV1のナンバリング)および101W、102E(パラトープ;配列位置に基づくナンバリング)だった。
【0319】
DV2、3、4との複合体における4E11の構造(EDIII)を、鋳型として4E11−DV1 EDIII構造モデルを使用してモデル化した。
【0320】
等価物および範囲
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を、認識し得るか、またはただの通例のものにすぎない実験法を使用して確かめることができるだろう。本発明の範囲は、上記の明細書に限定されると意図されておらず、むしろ、添付の請求項に示されるとおりである。
【0321】
請求項において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、反対のことが示されていないかまたは別途文脈から明らかでない限り、1つまたは1つより多いことを意味し得る。反対のことが示されていないかまたは別段文脈から明らかでない限り、ある群の1つ以上のメンバーの間に「または」を含む請求項または明細書は、1つの、1つより多いまたはすべての群メンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または別途関連していることを満たすとみなされる。本発明は、その群の厳密に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または別途関連している実施形態を含む。本発明は、1つより多いまたはすべての群メンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、使用されているか、または別途関連している実施形態を含む。さらに、本発明は、列挙される請求項の1つ以上からの1つ以上の制限、エレメント、節および記述用語などが別の請求項に導入されているすべてのバリエーション、組み合わせおよび順列を包含すると理解されるべきである。例えば、別の請求項に従属している任意の請求項は、同じ基本請求項に従属している他の任意の請求項に見られる1つ以上の制限を含むように改変され得る。さらに、請求項が、組成物を述べる場合、別段示されないか、または矛盾もしくは不一致が生じ得ることが当業者に明らかでない限り、本明細書中に開示される任意の目的のためにその組成物を使用する方法が含まれ、本明細書中に開示される任意の生成方法または当該分野で公知の他の方法に従ってその組成物を生成する方法が含まれる。
【0322】
エレメントが、リストとして、例えば、マーカッシュ群の形式で提示される場合、それらのエレメントの各部分群もまた開示され、任意のエレメントがその群から除かれ得ることが、理解されるべきである。通常、本発明または本発明の態様が、特定のエレメント、特徴などを含むと言及される場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、そのようなエレメント、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になることが理解されるべきである。単純化するために、それらの実施形態は、本明細書中においてこの通りの言葉で具体的に示されてこなかった。用語「含む(comprising)」は、オープンであると意図されており、さらなるエレメントまたは工程の包含を許容することに注意する。
【0323】
範囲が与えられる場合、終点は含まれる。さらに、別段示されないかまたは別段文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現された値は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、本発明の種々の実施形態において述べられた範囲内の任意の特定の値または部分範囲をその範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得る。
【0324】
さらに、従来技術の範囲内に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つ以上から明白に除外され得ると理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に公知であるとみなされるので、それらは、その除外が本明細書中に明示的に示されなかったとしても、除外され得る。
【0325】
上でおよび本文全体を通して述べられた刊行物は、単に、本願の出願日より前にそれらの開示のために提供されただけである。先行開示を理由に本発明者らがそのような開示に先行する権利がないことを自認するものとして、本明細書中のいかなる記載も解釈されるべきでない。
【0326】
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を、認識し得るか、またはただの通例のものにすぎない実験法を使用して確かめることができるだろう。本発明の範囲は、上記の明細書に限定されると意図されておらず、むしろ、以下の請求項に示されるとおりである。