特許第6605659号(P6605659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605659被印刷媒体の伸縮量演算方法及び被印刷媒体の伸縮量演算装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6605659
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】被印刷媒体の伸縮量演算方法及び被印刷媒体の伸縮量演算装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/08 20060101AFI20191031BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B41F15/08 301E
   B41F33/00 234
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-112099(P2018-112099)
(22)【出願日】2018年6月12日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】392021344
【氏名又は名称】株式会社桜井グラフィックシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】倉知 昌広
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−298059(JP,A)
【文献】 特開2014−030961(JP,A)
【文献】 特開2016−198991(JP,A)
【文献】 特開2015−047715(JP,A)
【文献】 特開2017−024289(JP,A)
【文献】 特開2016−122714(JP,A)
【文献】 特開2018−176532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/08
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷胴と前記印刷胴の上方に配置されるスクリーンにより、各段で被印刷媒体上に印刷パターンとアライメントマークとが印刷されて、複数段の印刷により重ね刷りされる被印刷媒体の伸縮量演算方法であって、
前段の印刷時に、前記印刷胴を正転して前段の印刷パターンとともに被印刷媒体の搬送方向に前記アライメントマークとしての第1アライメントマークを複数個配列して印刷する第1段階と、
後段の印刷時に、前記印刷胴を正転して後段の印刷パターンとともに被印刷媒体の搬送方向に前記アライメントマークとしての第2アライメントマークを複数個配列して印刷する第2段階と、
前記被印刷媒体上の第1アライメントマークと第2アライメントマークとが同じ印刷位置となるように設定され、両アライメントマークを撮像部により撮像する第3段階と、
前記撮像した画像に基づいて、搬送方向に沿って配置される同じ順番の第1アライメントマークと第2アライメントマークの搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する第4段階とを含む印刷機における被印刷媒体の伸縮量演算方法。
【請求項2】
第3段階では、第2段階が終了後に、前記印刷胴を逆転して前記印刷胴の上流に前記被印刷媒体を戻し、その後前記印刷胴を正転して、第1アライメントマークと第2アライメントマークを撮像部により撮像する請求項1に記載の被印刷媒体の伸縮量演算方法。
【請求項3】
第1段階で使用するスクリーン上の複数の第1アライメントマーク用の印刷パターンは等ピッチで配置され、
第2段階で使用するスクリーン上の複数の第2アライメントマーク用の印刷パターンは前記第1アライメントマークのピッチと同ピッチで配置されている請求項1または請求項2に記載の被印刷媒体の伸縮量演算方法。
【請求項4】
印刷胴と前記印刷胴の上方に配置されたスクリーンとにより、各段で被印刷媒体上に印刷パターンとアライメントマークとが印刷されて、複数段の印刷により重ね刷りされる被印刷媒体の伸縮量演算装置において、
前記アライメントマークが、前段で印刷された第1アライメントマークと後段で印刷された第2アライメントマークを含み、
前記被印刷媒体上の第1アライメントマークと第2アライメントマークとが同じ印刷位置となるように設定され、両アライメントマークを撮像する撮像部と、
前記撮像した画像に基づいて、搬送方向に沿って配置される同じ順番の第1アライメントマークと第2アライメントマークの搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する演算部とを有する被印刷媒体の伸縮量演算装置。
【請求項5】
後段での印刷が終了後、印刷時の回転とは逆転させて前記被印刷媒体を印刷胴の上流へ戻し、前記印刷胴の上流に戻した後は、前記印刷胴を正転させて前記被印刷媒体を搬送する駆動部を備え、
前記撮像部は、前記駆動部により、前記印刷胴の下流に戻した後に前記被印刷媒体を搬送しているときに、前段で印刷された第1アライメントマークと後段で印刷された第2アライメントマークを撮像するものである請求項4に記載の被印刷媒体の伸縮量演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷媒体の伸縮量演算方法及び被印刷媒体の伸縮量演算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続用紙などの被印刷媒体に対して印刷パターンを重ね刷りする場合には、前段の印刷パターンと後段の印刷パターンとの間の位置関係がずれることなく、所定の位置関係を成立させることが要求される。このためには、印刷された印刷パターンの位置を確認のために検出する必要がある。
【0003】
特許文献1には、被印刷媒体に印刷された複数のアライメントマークをアライメントカメラによって撮影して、アライメントマークの位置がずれている場合は、版や印刷対象の位置を補正するようにした技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、被印刷基材を支持する支持機構が透明材料によって構成され、アライメントカメラが透明材料を通して被印刷基材のアライメントマークを撮影し、アライメントマークの位置がずれている場合は、支持機構の位置を補正するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−161810号公報
【特許文献2】特開2012−71506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロールツーロール式スクリーン印刷機では、フィルム状の被印刷媒体に対して印刷パターンを重ね刷りする場合、印刷胴と、印刷胴の上方に配置したスクリーンとにより、複数段の印刷が行われる。前段の印刷時に印刷方向(被印刷媒体の搬送方向と一致する方向)の刷り伸びまたは刷り縮みが発生した場合、後段ではその刷り伸びまたは刷り縮みを補正して前段の印刷パターンに対して後段の印刷パターンを合わせる必要がある。
【0007】
従来は、後段で実際に印刷した印刷パターンを手作業で演算し、そのときに得た補正すべき補正位置、及び補正量を後段では印刷機の制御部に設定することが行われているが、機械の性質上、印刷後、4〜5ショット動作させないと、印刷状態が確認できない。
【0008】
なお、特許文献1は、オフセット印刷に関するものであり、特許文献1で提案されている方法では、ロールツーロール式スクリーン印刷機には対応できない。
【0009】
また、特許文献2は、反転オフセット印刷、或いはマイクロコンタクト印刷におけるものであり、特許文献2で提案されている方法ではロールツーロール式スクリーン印刷機には対応できない。
【0010】
本発明の目的は、ロールツーロール式スクリーン印刷機で重ね刷りが行われる際、後段で被印刷媒体の刷り伸びまたは刷り縮みがある場合、その伸縮量を容易に演算できる被印刷媒体の伸縮量演算方法及び被印刷媒体の伸縮量演算装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、被印刷媒体の伸縮量演算方法では、印刷胴と前記印刷胴の上方に配置されるスクリーンにより、各段で被印刷媒体上に印刷パターンとアライメントマークとが印刷されて、複数段の印刷により重ね刷りされる被印刷媒体の伸縮量演算方法であって、前段の印刷時に、前記印刷胴を正転して前段の印刷パターンとともに被印刷媒体の搬送方向に前記アライメントマークとしての第1アライメントマークを複数個配列して印刷する第1段階と、後段の印刷時に、前記印刷胴を正転して後段の印刷パターンとともに被印刷媒体の搬送方向に前記アライメントマークとしての第2アライメントマークを複数個配列して印刷する第2段階と、前記被印刷媒体上の第1アライメントマークと第2アライメントマークとが同じ印刷位置となるように設定され、両アライメントマークを撮像部により撮像する第3段階と、前記撮像した画像に基づいて、搬送方向に沿って配置される同じ順番の第1アライメントマークと第2アライメントマークの搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する第4段階とを含むものである。
【0012】
また、第3段階では、第2段階が終了後に、前記印刷胴を逆転して前記印刷胴の上流に前記被印刷媒体を戻し、その後前記印刷胴を正転して、第1アライメントマークと第2アライメントマークを撮像部により撮像するとよい。
【0013】
また、第1段階で使用するスクリーン上の複数の第1アライメントマーク用の印刷パターンは等ピッチで配置され、第2段階で使用するスクリーン上の複数の第2アライメントマーク用の印刷パターンは前記第1アライメントマークのピッチと同ピッチで配置されているとよい。
【0014】
本発明の被印刷媒体の伸縮量演算装置は、印刷胴と前記印刷胴の上方に配置されたスクリーンとにより、各段で被印刷媒体上に印刷パターンとアライメントマークとが印刷されて、複数段の印刷により重ね刷りされる被印刷媒体の伸縮量演算装置において、前記アライメントマークが、前段で印刷された第1アライメントマークと後段で印刷された第2アライメントマークを含み、前記被印刷媒体上の第1アライメントマークと第2アライメントマークとが同じ印刷位置となるように設定され、両アライメントマークを撮像する撮像部と、前記撮像した画像に基づいて、搬送方向に沿って配置される同じ順番の第1アライメントマークと第2アライメントマークの搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する演算部とを有するものである。
【0015】
また、後段での印刷が終了後、印刷時の回転とは逆転させて前記被印刷媒体を印刷胴の上流へ戻し、前記印刷胴の上流に戻した後は、前記印刷胴を正転させて前記被印刷媒体を搬送する駆動部を備え、前記撮像部は、前記駆動部により、前記印刷胴の下流に戻した後に前記被印刷媒体を搬送しているときに、前段で印刷された第1アライメントマークと後段で印刷された第2アライメントマークを撮像するものであるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、ロールツーロール式スクリーン印刷機で重ね刷りが行われる際、後段で被印刷媒体の刷り伸びまたは刷り縮みがある場合、その伸縮量を容易に演算できる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の印刷機の簡略図。
図2】スクリーン枠及びその関連機構を示す平面図。
図3】実施形態の被印刷媒体の伸縮量演算装置の電気的構成を示すブロック図。
図4】(a)は前段で印刷パターン及び第1アライメントマークが被印刷媒体に印刷された状態の説明図、(b)は前段で第1アライメントマークとカメラとの関係を簡略化して示す模式図。
図5】(a)及び(b)は制御装置の中央処理装置が実行するフローチャート。
図6】(a)は、後段で印刷パターン及び第2アライメントマークが被印刷媒体に印刷された状態の説明図、(b)は、第1アライメントマークがカメラに撮像されるときの説明図、(c)は後段で第2アライメントマークが被印刷媒体に印刷された状態のときの第2アライメントマークとカメラとの関係を示す模式図、(d)は第2アライメントマークがカメラの読取り可能な搬送位置まで印刷胴が逆転したときの第2アライメントマークとカメラとの関係を示す模式図、(e)は印刷胴が正転して第2アライメントマークがカメラに撮像されるときの模式図。
図7】第1アライメントマークの処理状況を示す説明図。
図8】第2アライメントマークの処理状況を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本発明の被印刷媒体の伸縮量演算装置を具備する印刷機及び被印刷媒体の伸縮量演算方法の実施形態を図1図8を参照して説明する。
【0019】
図1には本実施形態のロールツーロール式スクリーン印刷機の要部が図示されている。ロールツーロール式スクリーン印刷機では、被印刷媒体としての帯状の連続用紙100に対してスクリーン印刷が実行される。
【0020】
連続用紙100は、印刷前の状態ではロール巻きされており、図1の右側から左側へ向かうX軸方向(以下、搬送方向という)に向かう搬送経路にて搬送される。搬送経路は、連続用紙100を案内するための複数の案内ローラ12,連続用紙100を周回支持するための印刷胴13等が設けられ、印刷胴13の下流側に搬送された連続用紙100は、再びロール巻きされる。
【0021】
前記案内ローラ12は自由回転可能である。前記印刷胴13は、サーボモータ21によって連続用紙100の搬送方向に間欠的に積極回転される。サーボモータ21は、駆動部に相当する。印刷胴13の上方には、スクリーン19を張設するスクリーン枠17が配置されている。このスクリーン枠17は、印刷胴13とともに印刷部を構成する。18は、スキージ及びドクターよりなるインク処理ユニットを示す。
【0022】
図2に示すように、スクリーン枠17内には、パターンを印刷するためのパターン印刷部22,27を有する版23,25のうちの一方が設置される。
【0023】
図4(a)及び図6(a)に示すように、印刷胴13上において、連続用紙100に対して一方の版23のパターン印刷部22により後述の第1印刷パターン101がスクリーン印刷され、第1印刷パターン101が印刷された後、他方の版25のパターン印刷部27により第2印刷パターン111が重ねてスクリーン印刷されて重ね刷りが行われる。以後、第1印刷パターンを第1パターンと称し、第2印刷パターンを第2パターンと称する。
【0024】
両版23,25におけるパターン印刷部22,27の両側には、それぞれマーク印刷部24,26が設けられ、第1パターン101及び第2パターン111の左右両側にそれぞれ第1アライメントマーク102及び第2アライメントマーク106がパターン101,111と同時にスクリーン印刷される。
【0025】
第1アライメントマーク102は、第1パターン101の印刷方向(被印刷媒体の搬送方向と一致する方向)に沿って複数個等ピッチで設けられている。印刷方向に沿って配置される複数個の第1アライメントマーク102のうち、最初にスクリーン印刷される第1アライメントマーク102は、第1パターン101の印刷が開始されると同時に印刷される位置に設定されている。
【0026】
また、印刷方向に沿って配置される複数個の第1アライメントマーク102のうち、最後にスクリーン印刷される第1アライメントマーク102は、第1パターン101のスクリーン印刷が終了すると同時に終了する位置に設定されている。すなわち、印刷方向に沿って配置される複数個の第1アライメントマーク102のうち、前記最初と最後にスクリーン印刷がされる第1アライメントマーク102の印刷方向の範囲内に、第1パターン101の印刷方向の範囲が収まるようにされている。
【0027】
第2アライメントマーク106は、第2パターン111の印刷方向(被印刷媒体の搬送方向と一致する方向)に沿って複数個等ピッチで設けられている。なお、印刷方向に沿って配置される第2アライメントマーク106の数は、印刷方向に沿って配置される第1アライメントマーク102の数と同じであって、印刷方向に沿って配置される各第2アライメントマーク106は、印刷方向に沿って配置される同じ順番の第1アライメントマークの印刷位置とそれぞれ同じ印刷位置となるように設定されている。
【0028】
また、前記最初と最後にスクリーン印刷がされる第2アライメントマーク106の印刷方向の範囲内に、第2パターン111の印刷方向の範囲が収まるように設定されている。
【0029】
詳述すると、マーク印刷部24、26にて連続用紙100に両アライメントマーク102、106がそれぞれ印刷された際、連続用紙100の搬送方向(印刷方向)において、伸び縮みがない場合、同じ順番の両アライメントマーク102、106の中心点が相互に合致するように形成されている。すなわち、第1パターン101毎及び第2パターン111毎に両側のそれぞれにnr個の両アライメントマーク102、106が印刷された際、連続用紙100の搬送方向(印刷方向)において、連続用紙100に伸び縮みがない場合には、下流側から1、2、…、n番目の両アライメントマーク102、106の中心点同士が合致する。
【0030】
図6(c)〜図6(e)では、第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106とが重ね刷りされた状態で描かれている。
【0031】
前記印刷胴13の上端よりも、連続用紙100の搬送経路の上流側において印刷胴13の近傍には、左右一対のカメラ45が配置されている。この両カメラ45は、撮像部に相当し、前記両アライメントマーク102,106をそれぞれ撮影する。
【0032】
図3に示す制御装置56には、前記カメラ44,45が接続されるとともに、サーボモータ21が接続されている。制御装置56の図示しない中央処理装置は、前記カメラ45が撮像した画像に基づいて、サーボモータ21の駆動制御を行うとともに、各サーボモータ21を制御する。前記カメラ45及び制御装置56により、伸縮量演算装置が構成されている。制御装置56は、演算部に相当する。
【0033】
(作用)
次に、以上のように構成された印刷機の作用を説明する。
連続用紙100は、図1の矢印方向に搬送されて、印刷胴13上において図4(a)に示すように第1パターン101及び第1アライメントマーク102がスクリーン印刷される(図4(b)参照)。
【0034】
第1パターン101及び第1アライメントマーク102を印刷する場合、制御装置56は印刷胴13の回転速度を、予め設定された一定速度でサーボモータ21を制御する。
【0035】
連続用紙100の第1パターン101及び第1アライメントマーク102の印刷が終了した部分は、下流に搬送されてロール巻きされる。
【0036】
なお、図4(a)、図4(b)、図6(a)〜図6(e)をはじめとして図1図8の図面は、説明のために簡略化して示すものであって、各部材の位置関係などの構成の多くは、実際のものとは異なって描かれている。
【0037】
その後、第1パターン101が印刷された連続用紙100は、印刷機に再度セットされる。一方、スクリーン枠17内の版は、第2パターン111及び第2アライメントマーク106を印刷する版25に変更される。
この第2パターンの印刷に際しては、図5(a)及び図5(b)のフローチャートに示す処理が実行される。この処理は、制御装置56内の図示しない中央処理装置により制御装置56が備えている図示しない記憶部に格納されたプログラムに基づいて、実行される。
【0038】
まず、印刷機に再度セットされるとともに第1パターン101及び第1アライメントマーク102が印刷された連続用紙100が、X軸方向に搬送される(S1)。ついで、図6(b)に示すように、連続用紙100の先頭部分における第1パターン101の両側の一対の第1アライメントマーク102が一対のカメラ45にそれぞれ対向したところで、連続用紙100の搬送が停止される(S2)。そして、最初の一対の第1アライメントマーク102が一対のカメラ45によって、それぞれ撮像される(S3)。
【0039】
ここで、図7に示すように制御装置56は、各カメラ45により得られた各撮像エリア内の中心に設定された撮像原点103と第1アライメントマーク102との位置データからそれらの位置関係を認識する。
すなわち、両撮像エリアにおける撮像原点103の座標間のX軸方向の位置の差(変位量)と、両撮像エリアにおける第1アライメントマーク102の座標間とのX軸方向の位置の差(変位量)を、制御装置56はそれぞれ演算する(S4)。なお、本実施形態の印刷機では、連続用紙100は、X軸に直交するとともに水平面に含まれY軸方向にはずれがないように図示しない搬送経路に設けられた図示しないガイドによりガイドされている。
【0040】
そして、制御装置56は、左右の撮像原点103に対する左右の第1アライメントマーク102のX軸方向における位置の差(すなわち、変位量)を平均化して算出する。ついで、制御装置56は、左右の第1アライメントマーク102間の中間位置において、平均化された変位量の値に基づいて、仮想アライメントマーク104(図7参照)を設定する(S5)。
【0041】
そして、制御装置56は、左右の撮像原点103間に設定された仮想原点105の位置の座標と、前記仮想アライメントマーク104との間のX軸方向における位置の座標とを比較して、仮想原点105と仮想アライメントマーク104との間における位置の差を演算する(S6)。
ついで、制御装置56は、X軸方向において、前記差が生じているか否かを判定する(S7)。そして、X軸方向において、差が生じている場合は、前記サーボモータ21を作動させて、印刷胴13を動作させる(S8)。
【0042】
前記差が生じている場合は、印刷胴13を前記差分だけ正転量を可変させることにより回転位相を調整する。このようにして第1アライメントマーク102の位置が、所定の位置から変位している場合には、連続用紙100に対する印刷位置が、X軸方向において調整されて補正される。
ついで、連続用紙100が搬送されながら、連続用紙100の始端部における先頭位置の第1パターン101上に、第2パターン111が重ね印刷されるとともに図6(a)及び図6(c)に示すように、第2アライメントマーク106が該第2パターン111の外側における左右両端部に同時印刷される(S10)。
【0043】
第2パターン111及び複数の第2アライメントマーク106におけるワンショットの印刷終了後、図6(d)に示すように、最初の左右の第1アライメントマーク102が一対のカメラ45に対向する位置まで、連続用紙100が逆送した後、停止される(S11)。
そして、この後、S10で行われた第1パターン101と第2パターン111が重ね印刷された領域を撮像して刷り伸び演算が行われる(S12)。
【0044】
図5(b)を参照して、以下、S12で行われる刷り伸び演算処理を詳説する。まず、n番目(最初は、n=1とする)の左右一対の第1アライメントマーク102が一対のカメラ45によって、それぞれ撮像される(S20)。
ここで、図8に示すように制御装置56は、各カメラ45により得られた各撮像エリア内の中心に設定された第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106との位置データからそれらの位置関係を認識する。
すなわち、両撮像エリアにおける第1アライメントマーク102の座標間とのX軸方向の位置の差(変位量)と、両撮像エリアにおける第2アライメントマーク106の座標間とのX軸方向の位置の差(変位量)を、制御装置56はそれぞれ演算する(S21)。
【0045】
そして、制御装置56は、左右の第1アライメントマーク102間の中間位置において、平均化された変位量の値に基づいて、仮想第1アライメントマーク107(図8参照)を設定する。ついで、制御装置56は、左右の第2アライメントマーク106間の中間位置において、平均化された変位量の値に基づいて、仮想第2アライメントマーク112(図8参照)を設定する(S22)。
【0046】
そして、制御装置56は、左右の撮像原点103間に設定された仮想第1アライメント107の位置と、前記仮想第2アライメントマーク112との間のX軸方向における位置の差を演算(S23)する。
制御装置56は、n番目における第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106間における搬送方向の位置の差、すなわちずれ量を、伸縮量として、前記図示しない記憶部に格納する(S24)。
【0047】
つぎに、制御装置56は、図示しないカウンターのカウント値nを、n+1にインクリメントし(S25)、インクリメント後のカウント値nがアライメントマーク数nrに達したか否かを判定する(S26)。
制御装置56は、カウント値nがアライメントマーク数nrに達していない場合は、次の左右一対の第1アライメントマーク102が一対のカメラ45に対向する位置まで、サーボモータ21を正転作動させて連続用紙100を搬送して停止する(S27)。
【0048】
制御装置56は、次の第1アライメントマーク102が一対のカメラ45に対向する位置へ搬送した後、以後同様にS20〜S27の処理を行う。
S26において、インクリメント後のカウント値nがアライメントマーク数nrに達した場合、制御装置56は、図5(a)に示す印刷処理(S13)を行う。S13の印刷処理では、下記のことが制御装置56により実行される。
【0049】
制御装置56は、両パターン101、111両側の両アライメントマーク102、106のn番目(n=1〜nr)のそれぞれの伸縮量に基づいて補正量を演算する。この補正量は、例えば、最初の第1パターン101の印刷時における印刷胴13の回転速度を基準として、n番目の伸縮量に応じて、この伸縮量を解消するための補正値である。この補正値に基づいて、制御装置56は、第2パターン111を印刷するときの印刷胴13の回転距離である送り量を決定する。
【0050】
そして、送り量を決定した際に、基準とした第1アライメントマーク102が印刷されている部分を補正位置とし、前記補正量及び補正位置を関連づけて図示しない記憶部に格納する。
【0051】
次に、制御装置56は、補正量及び補正位置が得られた結果に基づいて、未だ重ね刷りがされていない上流側に位置する第1パターン101が印刷されている連続用紙100を搬送させるべく印刷胴13を正転させるようにサーボモータ21を制御する。
【0052】
そして、制御装置56は、n番目の第1アライメントマーク102が、印刷胴13の最上端にくる毎に印刷胴の送り量を調整する。すなわち、補正量が、伸びに相当する場合は、当該補正位置(当該第1アライメントマーク106)からの単位時間当たりの送り量を小さくすべく、前記補正量で補正された指令値に基づいてサーボモータ21が駆動されて前段での印刷時の印刷胴13の送り量よりも短くする。このことにより、第1アライメントマーク102からの第2アライメントマーク106の伸び、言い換えれば、第2アライメントマーク106との「ずれ」がないようにする。
【0053】
また、補正量が、縮みに相当する場合は、当該補正位置(当該第1アライメントマーク102)からの単位時間当たりの送り量を多くすべく、前記補正量で補正された指令値に基づいて前段での印刷時の印刷胴13の送り量よりも長くする。このことにより、第1アライメントマーク102からの縮み、言い換えれば、第2アライメントマーク106との「ずれ」がないようにする。
【0054】
以後、制御装置56は連続用紙100において、後続の第1印刷パターン101の領域に対して第2印刷パターン111を同様にして重ね刷りを行う。
従って、本実施形態においては、以下の特徴がある。
【0055】
(1)本実施形態の伸縮量演算方法では、第1段階では、前段の印刷時に、印刷胴13を正転して前段の第1印刷パターンとともに連続用紙100(被印刷媒体)の搬送方向に第1アライメントマーク102を複数個配列して印刷する。
【0056】
第2段階では、後段の印刷時に、印刷胴13を正転して後段の第2印刷パターン111とともに連続用紙100(被印刷媒体)の搬送方向に第2アライメントマーク106を複数個配列して印刷する。第3段階では、連続用紙100(被印刷媒体)上の第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106を前記カメラ45(撮像部)により撮像する。第4段階では、撮像した画像に基づいて、相互に対応する第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106の搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する。
【0057】
この結果、本実施形態によれば、ロールツーロール式スクリーン印刷機で重ね刷りが行われる際、後段で被印刷媒体の刷り伸びまたは刷り縮みがある場合、その伸縮量を容易に演算できる。
【0058】
また、従来とは、異なり、設定にかかる被印刷媒体等の資材を多く使用することがなくなり、資材の削減をすることができる。また、作業者の補正量の演算作業及び粗補正量の設定作業がなくなるため、作業者の負担を軽減できる。
【0059】
(2)本実施形態の伸縮量演算方法では、第3段階では、第2段階が終了後に、印刷胴13を逆転して印刷胴13の上流に連続用紙100(被印刷媒体)を戻し、その後、印刷胴13を正転して、第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106を前記カメラ45(撮像部)により撮像する。
【0060】
この結果、連続用紙100(被印刷媒体)を印刷胴13の上流側に戻した後、印刷胴13を正転して、第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106を前記カメラ45(撮像部)により撮像する。ここで、第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106とが重ね刷りされた状態を撮像する場合、印刷胴の下流側に新たに撮像カメラを配置して、この撮像カメラで撮像することも考えられるが、この場合は、新たに撮像カメラを用意する必要がありコスト高となる。本実施形態では、印刷胴を逆転して、印刷胴の上流側に配置したカメラ45(撮像部)で撮像することができるため、コスト高となることはない。
【0061】
(3)本実施形態伸縮量演算方法では、第1段階で使用するスクリーン上の複数の第1アライメントマーク102用の印刷パターンは等ピッチで配置される。
【0062】
また、第2段階で使用するスクリーン上の複数の第2アライメントマーク106用の印刷パターンは第1アライメントマーク102のピッチと同ピッチで配置されている。
【0063】
この結果、本実施形態によれば、両アライメントマークともに、等ピッチであり、かつ同ピッチであるため、補正位置の設定がし易くなる。
【0064】
(4)本実施形態の伸縮量演算装置は、前段で印刷された第1アライメントマークと後段で印刷された第2アライメントマークを撮像するカメラ45(撮像部)と、撮像した画像に基づいて、相互に対応する第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106の搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する制御装置56(演算部)とを有する。この結果、本実施形態の装置によれば、ロールツーロール式スクリーン印刷機で重ね刷りが行われる際、後段で被印刷媒体の刷り伸びまたは刷り縮みがある場合、その伸縮量を容易に演算できる。
【0065】
(5)本実施形態では、後段での印刷が終了後、印刷時の回転とは逆転させて連続用紙100(被印刷媒体)を印刷胴13の上流へ戻し、印刷胴13の上流に戻した後は、印刷胴13を正転させて連続用紙100(被印刷媒体)を搬送するサーボモータ21(駆動部)を備えている。また、カメラ45(撮像部)は、サーボモータ21(駆動部)により、印刷胴13の下流に戻した後に連続用紙100(被印刷媒体)を搬送しているときに、前段で印刷された第1アライメントマーク102と後段で印刷された第2アライメントマーク106を撮像する。
【0066】
ここで、第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106とが重ね刷りされた状態を撮像する場合、印刷胴の下流側に新たに撮像カメラを配置して、この撮像カメラで撮像する装置とすることも考えられるが、この場合は、新たに撮像カメラを用意する必要がありコスト高となる。本実施形態では、印刷胴を逆転して、印刷胴の上流側に配置したカメラ45(撮像部)で撮像することができるため、安価な装置とすることができる。
【0067】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化してもよい。
【0068】
・前記実施形態では、最初に重ね印刷されたショットのパターン101,111に対応する第1アライメントマーク102及び第2アライメントマーク106の搬送方向のずれ量を伸縮量とし、これに基づいて補正量を決定したが、補正量の決定は最初に重ね印刷されたショットに限定するものではない。例えば、次のショットでパターン101,111が重ね印刷されたときに同時に重ね印刷された第1アライメントマーク102及び第2アライメントマーク106の搬送方向のずれ量を演算するようにしてもよい。
【0069】
・印刷パターンを3段以上の重ね刷りする印刷機に具備する伸縮量演算装置において本発明を具体化してもよい。
・第1アライメントマーク及び第2アライメントマークを第1印刷パターン及び第2印刷パターンの片側にのみ印刷してもよい。
【0070】
・アライメントマークを印刷パターンの片側または両側に印刷することなく、パターンの図、記号、文字などの図柄の一部をアライメントマークとして利用してもよい。
・被印刷媒体は、紙に限定するものではなく、紙以外の材質からなるフィルム、シート等であってもよい。
【0071】
・前記実施形態においては、両側のアライメントマーク102,106のずれ量を平均して伸縮量としたが、平均ではなく、両側のアライメントマーク102,106のいずれか一方のずれ量を伸縮量としてもよい。
【0072】
・前記実施形態では、複数個の第1アライメントマーク102を等ピッチとし、それに合わせて、複数個の第2アライメントマーク106の等ピッチとした。これに代えて、第1アライメントマーク102を不等ピッチとし、それに合わせて複数個の第2アライメントマーク106を不等ピッチとしてもよい。
【0073】
・前記実施形態では、第2アライメントマーク106を印刷後、印刷胴13を逆転して、カメラ45にて撮像可能なところまで逆転した。これに代えて、印刷胴13の下流側に撮像部としてのカメラを配置し、連続用紙100の第2アライメントマーク106が重ね刷りされた部位を印刷胴13から下流側に移動させ、このカメラで、重ね刷りされた第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106を撮像する。この後、印刷胴13を逆転して、連続用紙100の重ね刷りされていない第1印刷パターン101の部位を、印刷胴13の上流に配置した後、印刷胴13を正転して、重ね刷りしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
13…印刷胴、17…スクリーン枠、21…サーボモータ(駆動部)、
23…版、25…版、45…カメラ、56…制御装置(演算部)、
101…第1印刷パターン、102…第1アライメントマーク、
104…仮想アライメントマーク、106…第2アライメントマーク、
107…仮想第1アライメント、111…第2印刷パターン、
112…仮想第2アライメントマーク。
【要約】
【課題】ロールツーロール式スクリーン印刷機で重ね刷りが行われる際、後段で被印刷媒体の刷り伸びまたは刷り縮みがある場合、その伸縮量を容易に演算できる被印刷媒体の伸縮量演算方法及び被印刷媒体の伸縮量演算装置を提供する。
【解決手段】第1段階では前段の印刷時に前段の第1印刷パターンとともに連続用紙100の搬送方向に第1アライメントマーク102を複数個配列して印刷する。第2段階で後段の印刷時に後段の第2印刷パターン111とともに連続用紙100の搬送方向に第2アライメントマーク106を複数個配列して印刷する。第3段階で連続用紙100上の両アライメントマーク102、106をカメラ45により撮像する。第4段階で撮像した画像に基づいて、相互に対応する第1アライメントマーク102と第2アライメントマーク106の搬送方向のずれ量を伸縮量として演算する。
【選択図】図6
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