特許第6605662号(P6605662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6605662
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】光学的表示装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20191031BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20191031BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20191031BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G09F9/00 342
   G02F1/13 101
   G02F1/1335
   G09F9/00 313
   B29C65/48
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-123825(P2018-123825)
(22)【出願日】2018年6月29日
【審査請求日】2019年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誓大
(72)【発明者】
【氏名】大沢 曜彰
(72)【発明者】
【氏名】中村 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】堤 清貴
(72)【発明者】
【氏名】秋山 孝二
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−095889(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/084044(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0190995(US,A1)
【文献】 特開2017−187618(JP,A)
【文献】 特開2017−167298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/13;1/137−1/141
G02B5/30
G02F1/1335−1/13363
B32B1/00−43/00
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムと、該キャリアフィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、該粘着剤層を介して前記キャリアフィルム上に連続的に支持された複数のシート状光学機能フィルムとを含む帯状の光学フィルム積層体の前記キャリアフィルムから、前記粘着剤層と共に前記シート状光学機能フィルムを剥離しながら前記シート状光学機能フィルムの先端部を、パネル貼合位置に送り、該パネル貼合位置に搬送されたパネル部材に重ね、開閉動する一対の貼付ローラで、前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材とを挟持し、かつ、貼り合わせることによって光学的表示装置を製造する方法であって、
前記キャリアフィルム上に支持された前記シート状光学機能フィルムの先端部を、前記パネル貼合位置に対向する位置に配置された頂部を有する剥離体の前記頂部から突出させることなく前記剥離体上の停止位置に停止する工程と、
前記パネル部材を、前記一対の貼付ローラが開放された前記パネル貼合位置に搬送し、停止し、待機する工程と、
前記キャリアフィルムを前記剥離体の前記頂部で折り返しながら搬送することにより、前記粘着剤層と共に前記シート状光学機能フィルムを剥離しながら、前記シート状光学機能フィルムの先端部を、待機する前記パネル部材に停止することなく重ねるように、前記剥離体上の停止位置から前記パネル貼合位置に向けて送る工程と、
停止することなく送られる前記シート状光学機能フィルムの先端部が、前記剥離体上の停止位置から前記パネル貼合位置までの間の所定位置に到達したことを検知することで、前記シート状光学機能フィルムの先端部が前記パネル貼合位置に待機する前記パネル部材に重なるより前に、開状態の前記一対の貼付ローラを切換え閉作動する工程と、閉作動する前記一対の貼付ローラが、前記シート状光学機能フィルムの先端部を前記パネル部材に重ねると同時に、停止することなく送られる前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材とを挟持し、かつ、貼り合わせる工程と、
前記キャリアフィルム上に支持された前記シート状光学機能フィルムの次の先端部が前記剥離体上の前記停止位置に達したときに停止し、停止された前記シート状光学機能フィルムの次の先端部と、閉作動して回転する前記一対の貼付ローラの回転により前記パネル部材に貼り合わされて搬送される前記シート状光学機能フィルムの後端部とを互いに縁切りする工程と、
前記一対の貼付ローラにより、前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材の貼り合わせが完了した後、前記一対の貼付ローラを開作動する工程
を含む光学的表示装置を製造する方法。
【請求項2】
前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材とを挟持し、かつ、貼り合わせる前記一対の貼付ローラは、前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材とを挟持する前に、前記シート状光学機能フィルムの先端部が前記パネル部材に重ねられた時の前記シート状光学機能フィルムの送り速度と同じ速度で回転するようにした請求項1に記載の光学的表示装置を製造する方法。
【請求項3】
前記シート状光学機能フィルムの後端部の送りの距離を監視することによって前記シート状光学機能フィルムの先端部が、前記剥離体上の停止位置から前記パネル貼合位置までの間の所定位置に到達したことを検知する請求項1または2のいずれかに記載の光学的表示装置を製造する方法。
【請求項4】
前記シート状光学機能フィルムの先端部が前記パネル部材に重ねられ、一対の貼付ローラで挟持されると同時に送られる前記シート状光学機能フィルムの貼付開始速度v2は、10mm/sec未満である請求項1から3のいずれかに記載の光学的表示装置を製造する方法。
【請求項5】
前記一対の貼付ローラで挟持され、前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材との貼り合わせが所定長さに達したときに、前記一対の貼付ローラの貼合速度を、前記貼付開始速度v2から貼付開始速度v2より速い貼合運転速度v3に切換え、前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材とをさらに貼り合わせる工程を含む請求項4に記載の光学的表示装置を製造する方法。
【請求項6】
前記シート状光学機能フィルムの前記先端部を、前記剥離体上の停止位置から前記貼付開始速度v2より速い速度に調整された送出速度v1で前記パネル貼合位置に向けて送り出し、前記剥離体上の停止位置から前記パネル貼合位置までの間の所定位置に到達する前に、前記送出速度v1から貼付開始速度v2に切換え、さらに停止することなく前記先端部を待機する前記パネル部材に重ねる工程を含む請求項4または5のいずれかに記載の光学的表示装置を製造する方法。
【請求項7】
前記シート状光学機能フィルムの前記先端部を、前記剥離体上の停止位置から前記貼付開始速度v2より速い速度に調整された送出速度v1で前記パネル貼合位置に向けて送り出し、前記剥離体上の停止位置から前記パネル貼合位置までの間の所定位置に到達する前に、前記送出速度v1から貼付開始速度v2に切換え、さらに停止することなく前記先端部を待機する前記パネル部材に重ねる工程を含み、
前記先端部を前記剥離体上の停止位置から、前記パネル貼合位置に向けて送り出す前記送出速度v1と、剥離体上の停止位置から前記パネル貼合位置までの間の所定位置に到達する前に前記送出速度v1から切換えられる前記貼付開始速度v2と、前記シート状光学機能フィルムと前記パネル部材との貼り合わせが所定長さに達したときに前記一対の貼付ローラの貼合速度を前記貼付開始速度v2から切換えられる前記貼合運転速度v3とが、
v1≧v2、v3≫v1
の関係を有するようにした請求項に記載の光学的表示装置を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RTP方式の光学的表示装置を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、キャリアフィルムから剥離されたシート状光学機能フィルムの粘着剤層に、剥離前のシート状光学機能フィルムの先端部が頂部を有する剥離体の該頂部から突出しない停止位置に停止し、再開されたキャリアフィルムの巻取りにより、剥離体の頂部でシート状光学機能フィルムをキャリアフィルムから剥離しながら該シート状光学機能フィルムの先端部を、剥離体上の停止位置からパネル貼合位置に送り、停止することなく、該パネル貼合位置に搬送されたパネル部材に重ね、少なくとも開閉動する一対の貼付ローラで、挟持し貼り合わることによって、前記粘着剤層に少なくとも筋状変形が生じないように、光学的表示装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学的表示装置の製造現場において、ロール・トゥ・パネル(RTP)方式の製造装置及び方法が採用されている(例えば、特許文献1)。RTP方式においては、通常、以下のようにして光学的表示装置が製造される。まず、所定幅を有する帯状の光学フィルム積層体がロールから繰り出される。帯状の光学フィルム積層体は、帯状のキャリアフィルムと、該キャリアフィルムの一方の面に形成された粘着剤層と、該粘着剤層を介してキャリアフィルム上に支持された光学機能フィルム(保護フィルム、偏光子、保護フィルム、粘着剤層及び表面保護フィルム)とを含んで構成されている。繰り出された帯状の光学フィルム積層体には、幅方向に連続的に切込線が入れられることにより、隣接する切込線の間にシート状光学機能フィルムが形成され、隣接のシート状光学機能フィルムを引張作用により互いに縁切りすることができる。
【0003】
キャリアフィルム上に連続的に支持されたシート状光学機能フィルムは、通常、欠点の存在しない正常なものが、パネル貼合位置の近くに配置された剥離手段によってキャリアフィルムから粘着剤層と共に剥離され、該パネル貼合位置に送給される。該パネル貼合位置に到達したシート状光学機能フィルムは、例えば開閉する上下一対の貼付ロールなどの貼合手段により、パネル貼合位置に別途搬送されたパネル部材の対応する貼合面に重ね挟持され、貼り合わされる。
【0004】
剥離手段においては、光学フィルム積層体のキャリアフィルム側が、パネル貼合位置に対向する頂部を有する略楔型の剥離手段の該頂部に巻きかけられる。シート状光学機能フィルムは、剥離手段に巻きかけられたキャリアフィルムを、パネル貼合位置に向かうシート状光学機能フィルムの搬送方向とは概ね反対方向に折り返しながら搬送することにより、キャリアフィルムから粘着剤層と共に剥離される。本明細書においては、シート状光学機能フィルムがキャリアフィルムから剥離される箇所である装置上の位置を剥離位置といい、剥離位置は、剥離手段の頂部近傍に存在する。
【0005】
こうしたRTP方式の製造システムにおいては、キャリアフィルム上のシート状光学機能フィルムは、その姿勢が理想的な姿勢からずれた状態でパネル部材との貼合位置に送られる場合がある。この場合には、シート状光学機能フィルムの貼ずれの状態に応じてパネル部材の姿勢を補正(「姿勢調整」ともいう)した後に、パネル部材とシート状光学機能フィルムとを貼り合わせる必要がある。
また、こうしたRTP方式の製造システムにおいては、前記粘着剤層に筋状の変形が発生する場合がある。従来比較的厚い光学機能フィルムの場合には、粘着剤層に筋状の変形が発生したとしても、光学的表示装置の画像上の欠陥となる程の変形とは認識され難かった。しかし、近年求められる光学的表示装置の高精度高品質化の要望により、従来欠陥とは認識されていなかった粘着剤層の筋状の変形も欠陥となり得る場合がある。さらには、光学機能フィルムの薄型化が進むと、これまでの厚い光学機能フィルムの場合と比較して光学機能フィルムの厚みに対する粘着剤層の厚みの割合が大きくなる。このような薄型の光学機能フィルムの普及に伴い、粘着剤層に形成される筋状の変形は、光学的表示装置の画像上の欠陥として放置し得ないものとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6171041号
【特許文献2】特許第5452761号
【特許文献3】特開2004−361741号公報
【特許文献4】特開2012−113060号公報
【特許文献5】特許第5452760号
【特許文献6】特許第5458212号
【特許文献7】特許第5458211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、帯状の光学フィルム積層体のキャリアフィルムから粘着剤層と共に剥離されたシート状光学機能フィルムを該粘着剤層を介してパネル部材に貼り合わせて光学的表示装置を製造するときに、前記粘着剤層に筋状の変形を発生させないようにシート状光学機能フィルムをパネル部材に貼り合わせる方法を提供することにある。
【0008】
シート状光学機能フィルムの粘着剤層に発生する該シート状光学機能フィルムの送りと直行する筋状の変形を解消することは特許文献1に記載されている。具体的には、キャリアフィルムから粘着剤層と共に剥離されたシート状光学機能フィルムが剥離手段の頂部から頭出し状態で停止したときに粘着剤層に発生する筋状の変形を、パネル部材と貼り合わせる貼合ローラの搬送速度を調整しながら、該貼合ローラの押圧力で解消する方法が記載されている。
【0009】
特許文献2には、キャリアフィルムが粘着剤層と共に剥離された1つ先行する光学フィルムシートを1つ先行するパネル部材に貼り合わせる工程が完了したときに、剥離体の頂部から一旦突出した次のキャリアフィルム上の粘着剤層付きの光学フィルムシートの先端部を剥離体の所定位置に正確に戻して待機させる、該剥離体の前後に正逆転フィードローラを配したキャリアフィルム送り装置が記載されている。
【0010】
特許文献3には、開放された一対の貼合ユニットに予め搬送された基板に粘着剤層を有する光学フィルムシートが送られ、光学フィルムシートが頭出しされた状態になったときに閉作動して作動する貼合ユニットで基板に粘着剤層によって光学フィルムシートを貼り付ける貼付装置が記載されている。また特許文献4には、キャリアフィルムから粘着剤層と共に剥離されたシート片を液晶パネルに貼り付ける際に、シート片に生じた撓みを解消するように、貼付ローラの貼付速度をキャリアフィルムの搬送速度より早く設定することが記載されている。
【0011】
光学フィルムシートをパネル部材に貼り合わせる装置の頂部を有する剥離体の該頂部を該装置の貼合位置により近く位置付けて貼付精度を高めることは特許文献5に記載されており、そのために、次の光学フィルムシートの先端を貼付所定位置に精度高く位置付けるように、該光学フィルムシートの後端を検出所定位置で読み取ることが記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
しかしながら、本発明者らは鋭意検討を重ね、本発明の課題であるシート状光学機能フィルムの粘着剤層に筋状の変形を発生させることなくシート状光学機能フィルムを貼合位置に送り、貼合位置に待機するパネル部材に筋状の変形のない粘着剤層で貼り合わせることによって光学的表示装置を製造する方法を実現することができた。
【0013】
本発明の実施態様は、以下の通りである。
それは、図1に示されるように、キャリアフィルム2と、キャリアフィルム2の一方の面に形成された粘着剤層4と、粘着剤層4を介してキャリアフィルム2上に連続的に支持された複数のシート状光学機能フィルム3とを含む帯状の光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2から、粘着剤層4と共にシート状光学機能フィルム3を剥離しながらシート状光学機能フィルム3の先端部32を、一対の貼付ローラ51、52が開放されたパネル貼合位置100に向けて送り、パネル貼合位置100に予め搬送されたパネル部材5に停止することなく重ねると同時に、閉作動により閉じられた開閉動する一対の貼付ローラ51,52で、シート状光学機能フィルム3をパネル部材5と挟持し、かつ、貼り合わせることによって光学的表示装置を製造する方法である。
【0014】
本方法は、図2A(a1)と(a2)、図8A(a1)と(a2)、図10A(a1)と(a2)に示されるように、キャリアフィルム2上に支持されたシート状光学機能フィルム3の先端部32を、パネル貼合位置100に対向する位置に配置された頂部61を有する剥離体60の頂部61から突出させることなく剥離体60上の停止位置200に停止する工程Aと、同じく図2A(c1)と(c2)、図8A(c1)と(c2)、図10A(c1)と(c2)に示されるように、パネル部材5を、一対の貼付ローラ51、52が開放されたパネル貼合位置100に搬送し、停止し、待機する工程Bと、を含む。
【0015】
本方法はさらに、図2B(d1)と(d2)、図8B(d1)と(d2)、図10B(d1)と(d2)に示されるように、キャリアフィルム2を剥離体60の頂部61で折り返しながら搬送することにより、粘着剤層4と共にシート状光学機能フィルム3を剥離しながら、シート状光学機能フィルム3の先端部32を、待機するパネル部材5に停止することなく重ねるように、剥離体60上の停止位置200から一対の貼付ローラが開放されたパネル貼合位置100に向けて送る工程Cと、同じく図2B(e1)と(e2)、図8B(e1)と(e2)、図10B(e1)と(e2)に示されるように、停止することなく送られるシート状光学機能フィルム3の先端部32が、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300を到達したことを検知し、それにより、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル貼合位置100に待機するパネル部材5に重なる前に、開放された一対の貼付ローラ51,52を切換えて閉作動する工程Dと、同じく図2B(f1)と(f2)、図8B(f1)と(f2)、図10B(f1)と(f2)に示されるように、閉作動する一対の貼付ローラ51,52が、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5に重ねられると同時に、シート状光学機能フィルム3をパネル部材5と挟持し、かつ、貼り合わせる工程Eと、を含む。
【0016】
本方法はさらにまた、図2C(h1)と(h2)、図8C(h1)と(h2)、図10C(h1)と(h2)に示されるように、キャリアフィルム2上に支持されたシート状光学機能フィルム3の次の先端部32が剥離体60上の停止位置200に達したときに停止し、停止されたシート状光学機能フィルム3の次の先端部32と、閉作動して回転する一対の貼付ローラ51,52によってパネル部材5に貼り合わされ搬送されるシート状光学機能フィルム3の後端部31とを、互いに縁切りする工程Fと、同じく図2C(i1)と(i2)、図8C(i1)と(i2)、図10C(i1)と(i2)に示されるように、閉作動して回転する一対の貼付ローラ51,52によりシート状光学機能フィルム3とパネル部材5の貼り合わせが完了した後、閉作動する一対の貼付ローラ51,52を開作動する工程Gと、を含むものである。
【0017】
本発明の実施態様の1つとして、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5とを挟持し、かつ、貼り合わせる一対の貼付ローラ51,52は、図2B(d1)と(e1)、図8B(d1)と(e1)、図10B(d1)と(e1)に示されるように、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5とを挟持する前に、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5に重ねられたときのシート状光学機能フィルム3の貼付開始速度v2と同じ速度で回転することが好ましい。
【0018】
本発明の実施態様の1つとしてさらに、図2A(b1)と図2B(f1)、図8A(b1)と図8B(f1)、図10A(b1)と図10B(f1)に示されるように、シート状光学機能フィルム3の後端部31の送り長さの距離δを監視することによってシート状光学機能フィルム3の先端部32が、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300に到達したことを検知する工程Hを含むことができる。
【0019】
本発明の実施態様の1つとしてさらにまた、図2B(f1)、図8B(f1)、図10B(f1)に示されるように、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5に重ねられ、閉作動する一対の貼付ローラ51,52で挟持されると同時に停止することなく送られるシート状光学機能フィルム3の貼付開始速度v2は10mm/sec未満であることが好ましい。
【0020】
本発明の実施態様の他の1つとして、図2C(g1)と(h1)、図8C(g1)と(h1)、図10C(g1)と(h1)に示されるように、閉作動する一対の貼付ローラ51、52で挟持され、かつ、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼合動作が所定長さλに達したときに、閉作動する1対の貼付ローラ51,52の貼合速度を、貼付開始速度v2から貼付開始速度v2より高速の貼合運転速度v3に切換え、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5とをさらに貼り合わせる工程を含むことができる。
【0021】
本発明の実施態様の他の1つとしてさらに、図3の[s13]、図9の[s13]、図11の[s13]に示されるように、シート状光学機能フィルム3の先端部32を、剥離体60上の停止位置200から貼付開始速度v2より速い速度に調整された送出速度v1でパネル貼合位置100に向けて送り出し、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300に到達する前に、送出速度v1から貼付開始速度v2に切換え、さらに先端部32を待機するパネル部材5に停止することなく重ねる工程Iをさらに含むことができる。
【0022】
本発明の実施態様の他の1つとしてさらにまた、図2C(g1)、図8C(g1)、図10C(g1)、および、図3の[s10]と[s12]と[s17]、図9の[s10]と[s12]と[s17]、図11の[s10]と[s12]と[s17]に示されるように、先端部32を剥離体60の停止位置200から、パネル貼合位置100に向けて送り出す送出速度v1と、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300に到達する前に送出速度v1から切換えられる貼付開始速度v2と、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼り合わせが所定長さλに達したときに1対の貼付ローラ51、52の貼合速度を貼付開始速度v2から切換えられる貼合運転速度v3とが、
v1≧v2、v3≫v1
の関係を有するようにすることが好ましい。

【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】パネル貼合位置において一対の貼付ローラを用い、シート状光学機能フィルムとパネル部材とを粘着剤層を介して貼り合わせて光学表示装置を製造する装置の拡大模式図を表す。図1には、シート状光学機能フィルムの後端部を読み取る2点移動タイプのカメラ検知装置と頂部を有する断面円錐体の剥離体上の停止位置にシート状光学機能フィルムの先端部が位置し、該先端部の位置をシート状光学機能フィルムの後端部を読み取ることによって検出する2点移動タイプのカメラ検知装置が移動距離δだけ往復動するように現在位置と仮想位置とで示される。
図2A図2A〜Cは、図1に示す、キャリアフィルムからシート状光学機能フィルムを剥がしながらシート状光学機能フィルムの先端部をパネル貼合位置に前進させ、パネル貼合位置に待機するパネル部材に重ね挟持して貼りわせる(a1)と(a2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す模式図である。図2A〜Cには、シート状光学機能フィルムの先端部の移動量を測るためのシート状光学機能フィルムの後端部を読み取る2点移動タイプのカメラ検知装置が示されている。図2Aは、(a1)と(a2)〜(c1)と(c2)の各工程を表す。
図2B図2Aに続いて、(d1)と(d2)〜(f1)と(f2)の各工程を表す。
図2C図2Bに続いて、(g1)と(g2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す。
図3図2A〜Cに示す、貼合動作をすると共に送り方向に対して上下方向に開閉するように構成された一対の貼合ローラを作動させる、光学的表示装置を製造する装置の製造工程の詳細ステップ[s1]から[s20]を表す制御フロー図である。
図4】厚み110μmのシート状光学機能フィルム3と厚み25μmの粘着剤層4(合計厚み135μm)のフィルムをパネル部材5に貼り合わせた実施例および比較例の図あり、図は実施例1〜6と比較例1〜3からなる。図の評価項目には、頭出し停止、フィルムの送り出し速度v1と貼付開始速度v2と貼合運転速度v3、糊スジ、貼ズレ、および、生産性等が示される。
図5図4の比較例1を表す、剥離体の頂部から一定の頭出し状態のシート状光学機能フィルムの先端部を検出し、該先端部の検出位置からパネル貼合位置までシート状光学機能フィルムを送り、パネル部材との正確な位置合わせにより貼り合わせるようにする方式の模式図である。
図6図4の比較例2を示す、先行する貼合工程の終了後における次のシート状光学機能フィルムの先端部をパネル貼合位置で検出し、シート状光学機能フィルムの前後の送りを微調整して、パネル部材とのより正確な位置合わせにより貼り合わせるようにする方式の模式図である。
図7図4の比較例3を示す、先行する貼合工程の終了後における次のシート状光学機能フィルムの先端部を剥離体の頂部より上流側に設けた繰出位置まで巻き戻して該先端部を検出し、繰出位置からパネル貼合位置までシート状光学機能フィルムを送り、パネル部材との正確な位置合わせにより貼り合わせるようにする方式の模式図である。
図8A図8A〜Cは、図2A〜Cと同様に、図1に示す、キャリアフィルムからシート状光学機能フィルムを剥がしながらシート状光学機能フィルムの先端部をパネル貼合位置に前進させ、パネル貼合位置に待機するパネル部材に重ね挟持して貼り合わせる(a1)と(a2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す模式図である。図8A〜Cには、図2A〜Cに配備されたシート状光学機能フィルムの後端部を読み取る2点間移動タイプのカメラ検知装置に代えて、読み取る2点を交互に検出できる広視野タイプの単体固定型カメラ検出装置が配備されている。図8Aは、(a1)と(a2)〜(c1)と(c2)の各工程を表す。
図8B図8Aに続いて、(d1)と(d2)〜(f1)と(f2)の各工程を表す。
図8C図8Bに続いて、(g1)と(g2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す。
図9図8A〜Cに示す、貼合動作をすると共に送り方向に対して上下方向に開閉するように構成された一対の貼合ローラを作動させる、光学的表示装置を製造する装置の製造工程の詳細ステップ[s1]から[s20]を表す制御フロー図である。
図10A図10A〜Cは、図2A〜Cと同様に、図1に示す、キャリアフィルムからシート状光学機能フィルムを剥がしながらシート状光学機能フィルムの先端部をパネル貼合位置に前進させ、パネル貼合位置に待機するパネル部材に重ね挟持して貼り合わせる(a1)と(a2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す模式図である。図10A〜Cには、図2A〜Cに配備されたシート状光学機能フィルムの後端部を読み取る2点間移動タイプのカメラ検知装置に代えて、2点を別々に読み取る2点設置タイプの複合体固定型カメラ検出装置が配備されている。図10Aは、(a1)と(a2)〜(c1)と(c2)の各工程を表す。
図10B図10Aに続いて、(d1)と(d2)〜(f1)と(f2)の各工程を表す。
図10C図10Bに続いて、(g1)と(g2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す。
図11図10A〜Cに示す、貼合動作をすると共に送り方向に対して上下方向に開閉するように構成された一対の貼合ローラを作動させる、光学的表示装置を製造する装置の製造工程の詳細ステップ[s1]から[s20]を表す制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的は、RTP方式による光学的表示装置を製造する方法を提供することにある。
【0025】
それは、より具体的には、拡大模式図1に示す、キャリアフィルム2と、キャリアフィルム2の一方の面に形成された粘着剤層4と、粘着剤層4を介してキャリアフィルム2上に連続的に支持された複数のシート状光学機能フィルム3とを含む帯状の光学フィルム積層体1のキャリアフィルム2から、粘着剤層4と共にシート状光学機能フィルム3を剥離しながらシート状光学機能フィルム3の先端部32を、パネル貼合位置100に向けて送り、予めパネル貼合位置100に搬送されたパネル部材5に重ね、開閉動する一対の貼付ローラ51、52の閉作動で、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5とを挟持し、かつ、貼り合わせることによって光学的表示装置を製造するときに、粘着剤層4に筋状の変形を発生させないようにシート状光学機能フィルム3をパネル部材5に貼り合わせる方法を提供することである。
【0026】
本発明に実施態様の実施例1〜実施例6において、図4に示される「頭出し停止」および「糊スジ」項目から明らかなことは、パネル貼合位置100に対抗する位置に配置された頂部61を有する剥離体60の頂部61からシート状光学機能フィルム3の先端部32が頭出しない状態で停止し、頭出し後に停止しない「なし」の表示、また「目視で糊スジを確認できない」という〇印に示されるように、粘着剤層4に「糊スジ」は発生していないことを実験によって確認したことである。
【0027】
本発明に実施態様の実施例1〜実施例6と対比される比較例1〜比較例3において、図4に示される「頭出し停止」および「糊スジ」項目から明らかなことは、パネル貼合位置100に対抗する位置に配置された頂部61を有する剥離体60の頂部61からシート状光学機能フィルム3の先端部32が頭出し後に停止する「あり」の表示、また「目視で糊スジを確認できる」という×印に示されるように、粘着剤層4に「糊スジ」が発生していることを実験によって確認したことである。
【0028】
但し、図4の比較例1〜比較例3は、「糊スジ」の発生防止を技術的課題としたものではない。これらは、図4の「貼ズレ」項目から明らかなように、「工程能力指数C」のC>1.67(n=100)の〇印に示されるシート状光学機能フィルムとパネル部材との要求される貼ズレ精度を実現した発明に関するものである。
【0029】
因みに、C≦1.67の場合には、貼ズレ精度が×印で示されているように、要求される貼ズレ精度が実現できない事例を表す。本発明の実施例3は、本発明の技術的課題である「糊スジ」問題は克服している一方で、「貼ズレ」の×印で示されるように、要求される貼ズレ精度が達成できていないことが理解される。
【0030】
なお、貼ズレ精度に関する技術的問題は、本発明の構成要素にはならないが、シート状光学機能フィルム3の先端部32を剥離体60の頂部61から頭出しする前の停止位置から繰り出されるシート状光学機能フィルム3の速度に関連付けられるので、本発明の実施例3に関する記載において詳細に説明する。
【0031】
本発明の実施例1〜6の態様を含む実施態様について、図1の拡大模式図、図2A〜Cと図8A〜Cと図10A〜Cのそれぞれの(a1)と(a2)〜(i1)と(i2)の各工程を表す模式図、および、図3図9図11のそれぞれの光学的表示装置を製造する装置10の製造工程の詳細ステップ[s1]〜[s20]を表す制御フロー図を用いて、以下で説明する。
【0032】
図1は、RTP方式による光学的表示装置を製造する装置10のパネル貼合位置100を含む拡大模式図である。図1において、シート状光学機能フィルム3の送り装置8は、剥離体60の頂部61で他方の面が内側に折り返され剥離体60に巻き掛けられた状態のキャリアフィルム2を弛めることなく巻き取るか又は巻き戻すように連動して作動する、キャリアフィルム送り装置を含む。
【0033】
シート状光学機能フィルム3の送り装置8は、剥離体60の頂部61を挟んで少なくとも前後に配置される正逆転フィードローラ80、81を含むことができる。その場合において、シート状光学機能フィルム3の送り装置8は、正逆転フィードローラ80と正逆転フィードローラ80および剥離体60の間に配置されたダンサーローラ82と、キャリアフィルム送り装置になるもう一方の正逆転フィードローラ81とから構成し、それらを、例えば図3図9図11に示す制御装置800によって連動させることによって、キャリアフィルム2を弛めることなく巻き取るか又は巻き戻すようにすることができる。それにより、カメラ検出装置70,71、または、72aと72bがシート状光学機能フィルム3の後端部31を読み取りシート状光学機能フィルム3の先端部32の位置を計測することによって、シート状光学機能フィルム3の正確なストロークが確保される。
【0034】
次に、図2A〜Cと図8A〜Cと図10A〜Cに共通する工程、および、図3図9図11に共通する各工程の詳細ステップ[s1]〜[s20]の各々について、共通する工程および詳細ステップを、図2A〜Cおよび図3で詳細にみると、以下の通りである。
【0035】
図2A(a1)と(a2)は、キャリアフィルム2上に支持されたシート状光学機能フィルム3の先端部32が、パネル貼合位置100に対向する位置に配置された頂部61を有する剥離体60の頂部61から頭出しすることなく剥離体60上の停止位置200に停止しており、停止位置200におけるシート状光学機能フィルム3の先端部32の位置および角度を、シート状光学機能フィルム3の後端部31を読み取ることによって確認する工程Aを表す。
【0036】
これは、図2A(a1)に示す2点移動タイプのカメラ検出装置70によって検出されたシート状光学機能フィルム3の先端部32の頭出し前の位置情報x1を図3の[s1]で計測し、さらに図3の[s2]で位置情報x1を制御装置800の記憶装置802に記録するステップとして、示される。
【0037】
図2A(b1)と(b2)は、特に図2A(b2)または図3の[s3]から明らかなように、パネル部材5の貼付前位置、すなわちパネル貼合位置100に向けてパネル部材5を搬送するために準備する貼付前位置600において、パネル部材5を吸着搬送手段90で吸着保持した状態を表す。
【0038】
これは、図1に示す検出手段91によって検出される吸着搬送手段90に保持されたパネル部材5の先端位置500を位置情報x2として、図3の[s4]で読み取り、さらに図3の[s5]で位置情報x2を制御装置800の記憶装置802に記録するステップとして、示される。
【0039】
図3の[s6]は、記憶装置802に記録されたシート状光学機能フィルムの先端部32の頭出し前の位置情報x1と、パネル部材5の先端位置500の位置情報x2とから、貼付前位置600において吸着搬送手段90に保持されたパネル部材5をシート状光学機能フィルム3の先端部32に対して事前に位置調整するように、例えば長手方向のズレ幅およびズレ角度(y、θ)を演算し算出するステップであり、図3の[s7]は、それに基づいて、吸着搬送手段90に保持されたパネル部材5を、貼付前位置600において、位置調整するステップである。
【0040】
図2A(c1)と(c2)は、パネル部材5を、一対の貼付ローラ51、52が開放されたパネル貼合位置100に搬送し、停止し、待機する工程Bを表す。これは、図3の[s8]で、事前に位置調整されたパネル部材5をパネル貼合位置100に搬送し、開放された一対の貼付ローラ51、52のパネル貼合位置100に停止させるステップとして、示される。
【0041】
図3の[s9]は、停止位置200とパネル貼合位置100との間に位置する所定位置300に達するシート状光学機能フィルム3の先端部32を検出するために、図2A(b1)に示すように、シート状光学機能フィルム3の後端部31を読み取るようにするための2点移動タイプのカメラ検出装置70を、該シート状光学機能フィルム3の先端部32の停止位置200に対応した後端部31を読み取る位置から、該シート状光学機能フィルム3の先端部32が所定位置300に達したときに対応した後端部31を読み取る位置へと移動させるステップであり、その移動距離はδである。
【0042】
ここで、図2A〜Cに示された2点移動タイプのカメラ検出装置70に代わる、1台で2点を交互に読み取る広視野タイプの単体固定型カメラ検出装置71を用いた図8A〜Cの各工程、および、図9のフロー図について説明する。
【0043】
図9の詳細ステップには、停止位置200とパネル貼合位置100との間に位置する所定位置300に達するシート状光学機能フィルム3の先端部32を検出するために、図3の[s9]のように2点移動タイプのカメラ検出装置70を移動させるステップは必要としない。図9に示す詳細ステップの場合、広視野で2点を交互に読み取る単体の固定型カメラ検出装置71によって、停止位置200に停止するシート状光学機能フィルム3の先端部32を確認するための後端部31の読取と、所定位置300に達した先端部32を確認するための後端部31の読取との間で、撮影を切換えて検出することになる。したがって、図8A〜Cの各工程には、図3の[s9]に相当する単体固定型カメラ検出装置71を移動する工程は含まれない。
【0044】
さらにここで、図2A〜Cに示された2点移動タイプのカメラ検出装置70に代えて、距離δだけ離して設置された2台の複合体の固定型カメラ検出装置72a、72bによって2点の位置を別々に読み取るようにした図10A〜Cの各工程、および、図11のフロー図について説明する。
【0045】
図11の詳細ステップには、停止位置200とパネル貼合位置100との間に位置する所定位置300に達するシート状光学機能フィルム3の先端部32を検出するために、図3の[s9]示す2点移動タイプのカメラ検出装置70を移動させるように、複合体の固定型カメラ検出装置72a、72bを移動させるステップは必要としない。図11に示すステップは、2点を別々に読み取る複合体固定型カメラ検出装置72a、72bを用い、まず図11の[s1]で固定型カメラ検出装置72bによって停止位置200に停止するシート状光学機能フィルム3の先端部32を確認するために後端部31を読み取り、次に図11の[s11]で固定型カメラ検出装置72aによって、所定位置300に達したシート状光学機能フィルム3の先端部32を確認するために該シート状光学機能フィルム3の後端部31を読み取り、先端部32のそれぞれの位置を検出することになる。そのため、図10A〜Cの各工程には、図3の[s9]のように、複合体固定型カメラ検出装置72a、72bを移動させる工程は含まれない。
【0046】
図2A〜Cの工程または図3のフロー図に戻り、2点移動タイプのカメラ検出装置70、広視野タイプの単体固定型カメラ検出装置71、および、2台の複合体固定型カメラ検出装置72a、72bなどの異なるカメラ検出装置による、本発明の実施例1〜実施例6について、以下、図2A〜Cおよび図3を用いて説明する。
【0047】
図2B(d1)と(d2)は、いずれも、キャリアフィルム2を剥離体60の頂部61で折り返しながら搬送することにより、粘着剤層4と共にシート状光学機能フィルム3を剥離しながら、シート状光学機能フィルム3の先端部32を、待機するパネル部材5に停止することなく重ねるように、剥離体60上の停止位置200から一対の貼付ローラ51,52が開放されたパネル貼合位置100に向けて送る工程Cを表す。
【0048】
図3の[s10]は、シート状光学機能フィルム3の先端部32を、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100に待機するパネル部材5に向けて送り出すステップである。シート状光学機能フィルム3を送り出すシート状光学機能フィルム3の送出速度v1は、図4に示すように、5mm/s〜10mm/sであることが好ましい。送り出されたシート状光学機能フィルム3の先端部32は、待機するパネル部材5に停止することなく重ねられることになる。
【0049】
図2B(e1)と(e2)は、シート状光学機能フィルム3の後端部31の送り長さの距離δを監視することによってシート状光学機能フィルム3の先端部32が、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300に到達したことを検知する工程Hを表す。それは、図3の[s13]で、シート状光学機能フィルム3の先端部32が所定位置300に達するステップとして、示される。図2B(e1)または図3の[s14]はまた、開放された開閉動する一対の貼付ローラ51、52の閉作動を開始する工程を表す。
【0050】
図3の[s11]と[s12]に示すように、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル貼合位置手前の所定位置300に到達するまでに、光学機能フィルム3の搬送速度を送出速度v1からパネル部材5との貼付開始速度v2に切換える技術的意図は、前記シート状光学機能フィルム3の先端部32が所定位置300で検出されたことを合図に貼付ローラ51、52の閉動作が開始するため、前記シート状光学機能フィルム3の先端部32が所定位置300で検出された後の速度切り替えを無くすることで、確実に安定してシート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5に停止することなく重ねられると同時に、当該シート状光学機能フィルム3の先端部32とパネル部材5を貼付ローラ51、52で挟持するためである。
【0051】
貼付開始速度v2は、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5に重ねられたときのシート状光学機能フィルム3の送り速度であり、図4の実施例3または実施例5に示されるように、送出速度v1と同じ速度にすることができる一方、好ましくはシート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル貼合位置手前の所定位置300に到達するまでに実施例1、実施例2、実施例4または実施例6のように、貼付開始速度v2は送出速度v1より遅くすること、すなわち、v2<v1の状態にすることである。
【0052】
閉作動する一対の貼付ローラ51,52で挟持されると同時に送られるシート状光学機能フィルム3の貼付開始速度v2は、より具体的には、図2B(f1)に示されるように、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5に停止することなく重ねられるため、より好ましくは、10mm/sec未満である。
また、一対の貼付ローラ51,52は、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5とを挟持する前に、シート状光学機能フィルム3の貼付開始速度v2と同じ速度で回転することが好ましい。挟持する前から同じ速度v2で回転することで、貼付ローラ51,52がシート状光学機能フィルム3とパネル部材5に接触した瞬間の速度差が生じ難く、より貼付精度を向上することができる。
【0053】
図2B(f1)と(f2)は、シート状光学機能フィルム3の先端部32を、剥離体60上の停止位置200から貼付開始速度v2より速い速度に調整された送出速度v1でパネル貼合位置5に向けて送り出し、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300に達する前に、送出速度v1から貼付開始速度v2に切換え、さらに待機するパネル部材5に停止することなく重ねる工程Iを表す。
【0054】
図2B(f1)はさらに、図2A(b1)に示す2点移動タイプのカメラ検出装置70を、シート状光学機能フィルム3の先端部32が所定位置300に達したときに対応した後端部31を読み取る位置から、シート状光学機能フィルム3の先端部32の停止位置200に対応した後端部31を読み取る位置へと、δだけ後退移動させ、図2A(a1)に示す位置に戻す工程を表す。これは、図3の[s15]に示されるステップである。
【0055】
図2C(g1)と(g2)は、シート状光学機能フィルム3の先端部32がパネル部材5の貼合面に停止することなく重ねられると同時に閉作動して回転する一対の貼付ローラ51、52によってシート状光学機能フィルム3とパネル部材とが挟持され、貼付開始速度v2でさらに貼り合わされる工程を表す。
【0056】
シート状光学機能フィルム3の先端部32が、図2C(g1)と(h1)に示されるように、閉作動する一対の貼付ローラ51、52で挟持され、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼り合わせが所定長さλに達したときに、閉作動する1対の貼付ローラ51,52の貼合速度は、貼付開始速度v2から、該貼付開始速度v2より高速の貼合運転速度v3へと切換えられる。それによって、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼合工程の生産性はより高められる。これは、図3の[s17]に示されるステップである。
【0057】
本発明の実施態様において、送出速度v1と貼付開始速度v2と貼合運転速度v3との関係は、以下の通りである。
【0058】
シート状光学機能フィルム3の先端部32が剥離体60の停止位置200からパネル貼合位置100に向けて送り出される送出速度は、v1である。好ましくは、シート状光学機能フィルム3の送出速度v1は、先端部32が剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300に達する前まで維持され、所定位置300の直前で貼付開始速度v2に切換えられる。さらに好ましくは、閉作動する1対の貼付ローラ51、52の貼合速度に相当する貼付開始速度v2は、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼り合わせの距離が所定長さλに達するまで維持され、所定長さλに達したときに、さらに貼合運転速度v3に切換えられる。
【0059】
したがって、v1〜v3の速度は、図4の実施例1〜実施例6に示めされるように、
v1≧v2、v3≫v1
の関係を有しており、生産性の観点から
v1>v2、v3≫v1
の関係を有するようにすることが好ましい。
【0060】
図2C(h1)と(h2)は、次のパネル部材5に貼り合わされるキャリアフィルム2上に支持されたシート状光学機能フィルム3の次の先端部32が剥離体60上の停止位置200に達したときに、図1に示す送り装置8によって送りが停止されるシート状光学機能フィルム3の次の先端部32と、閉作動して回転する一対の貼付ローラ51,52によって貼合運転速度v3でパネル部材5に貼り合わされて搬送される先行するシート状光学機能フィルム3の後端部31とを互いに縁切りする工程Fを表す。
【0061】
これは、図3の[s18]で、閉作動して回転する一対の貼付ローラ51,52によるシート状光学機能フィルム3とパネル部材5の貼合動作を継続する一方で、図1に示す送り装置8によってキャリアフィルム2の巻取動作を止めてシート状光学機能フィルム3の次の先端部32を剥離体60上の停止位置200に停止させ、それによる逆向きの張力によって、先行する後端部31と次の先端部32とを縁切りするステップとして、示される。
【0062】
図2C(i1)と(i2)は、本発明の実施態様の最終工程であり、図3の[s19]および[s20]のステップとして示されており、それは、閉作動して回転する一対の貼付ローラ51,52が貼合運転速度v3で作動し、先行するシート状光学機能フィルム付パネル部材としてシート状光学機能フィルム3とパネル部材5の貼り合わせが完了したときに、閉作動する一対の貼付ローラ51,52を開作動に切換える最終工程Gを表す。
【0063】
したがって、最終工程Gは、図2A(a1)と(a2)の表した状態になる。すなわち、停止位置200に停止している次のシート状光学機能フィルム3の先端部32の位置および角度を2点移動タイプのカメラ検出装置70によって確認する一方、パネル貼合位置100に位置する一対の貼付ローラ51,52は開放されており、次のパネル部材5は貼付前位置600で待機し、開放された一対の貼付ローラ51,52のパネル貼合位置100に搬送される準備工程にあって、次のシート状光学機能フィルム3と次のパネル部材5との貼り合わせの各工程が、それに続き開始される。
また、本発明の[s1]から[s20]のステップで得られた、パネル部材5の一方面にシート状光学機能フィルム3を貼り合せたシート状光学機能フィルム付パネル部材の他方面にも同様に本発明の[s1]から[s20]のステップを行うことで、パネル部材5の両面にシート状光学機能フィルム3を貼り合せた光学的表示装置を製造することができる。
【0064】
ここで再び、図4に実施例および比較例について整理すると、実施例1〜実施例6に示される本発明の技術的課題は、シート状光学機能フィルム3の粘着剤層4に糊スジの変形を発生させないことであり、それを実現する技術的解決手段は、まずシート状光学機能フィルム3の先端部32を剥離体60の頂部61から突出させないように、すなわち、頭出しさせない状態で剥離体60上の停止位置200に停止させておくことである。
【0065】
次に一旦停止位置200から送り出されたシート状光学機能フィルム3の先端部32は、パネル貼合位置100に待機するパネル部材5に停止することなく重ねられ、連動して閉作動する一対の貼付ローラ51,52によって挟持され、かつ、貼り合わされ、シート状光学機能フィルム3の後端部31が次のシート状光学機能フィルム3の先端部32と縁切りされるまで、停止することなく送り動作を継続するようにしたことである。
【0066】
さらには、剥離体60上の停止位置200から送り出されたシート状光学機能フィルム3の先端部32は、好ましくは、3段階の異なる速度で停止することなく連続的に送られるようにすることである。第1の速度は、剥離体60上の停止位置200からパネル貼合位置100までの間の所定位置300までの第1ストローク間、すなわち距離δ間の速度である送出速度v1である。
【0067】
次に所定位置300からシート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼り合わせが所定長さλに至るまでの第2ストローク間の第2の速度は、好ましくは、送出速度v1よりは遅い貼付開始速度v2が選択される。その技術的意図は、開放された一対の貼付ローラ51,52の位置するパネル貼合位置100に予め搬送されたパネル部材5に、シート状光学機能フィルム3の先端部32が停止することなく重ねられると同時に、それまでに閉作動するように閉じられた一対の貼付ローラ51,52によってシート状光学機能フィルム3とパネル部材5とが挟持され、かつ、シート状光学機能フィルム3の送りを止めることなく貼付開始速度v2で貼り合わされるように調整することにある。貼付開始速度v2が速すぎると、調整が益々困難になるためである。
【0068】
さらに、シート状光学機能フィルム3とパネル部材5との貼り合わせが所定長さλにまで到達すると、それから先の速度は、通常の高速度の貼合運転速度v3に切換えることができる。それは、図4に示すように、そのことによる「貼ズレ」現象は生じないためである。
【0069】
因みに、第1ストロークの長さδは15〜25mm程度、第2ストロークの長さηは、所定位置300からパネル貼合位置100までの長さγと所定長さλとからなり、(γ+λ)は、3〜15mm程度であり、γは1〜5mm程度、λは1〜10mm程度である。
【0070】
各実施例についてみると、実施例1は、送出速度v1を10mm/sを所定位置300の直前で貼付開始速度v2の速度を3分の1程度の3mm/sに切換える一方、貼合動作の開始からシート状光学機能フィルム3の先端部32がλに達したとき、すなわち、第2ストロークの長さηに至ると、貼合運転速度v3の200mm/sの高速度に切換えて対応している。
【0071】
実施例2もほぼ同様の対応であり、違いは貼付開始速度v2の速度の3mm/sをわずかに早い5mm/sに設定したことである。また実施例4もこれらと大きな違いはない。実施例1との違いは、送出速度v1の10mm/sを7mm/sで若干遅く、貼付開始速度v2の3mm/sを5mm/sで若干早く設定してあることである。
【0072】
これらはいずれも、糊スジの発生はなく、かつ、貼ズレの基準値を達成し、さらに、生産性も良好という結果である。これらに対し、実施例3は、貼付開始速度v2が10mm/sと速すぎにため、待機しているパネル部材5にシート状光学機能フィルム3の先端部32がv2の速度で重ねられと同時に一対の貼付ローラ51、52で挟持された瞬間に貼ズレが生じ易く、糊スジは発生しないが、貼ズレに影響を与えるものである。
【0073】
実施例5は、送出速度v1が5mm/sと遅くした分だけ、生産性に多少の影響を与えるものであることを確認している。また実施例6は、糊スジは発生していないが、他の実施例が採用した高速度の貼合運転速度v3の200mm/sに対し、40分の1の低速5mm/sを採用しているので、生産性に影響が生じる。
【0074】
図4に提示した比較例1〜比較例3は、RTP方式の光学表示装置を製造する方法において、要求される貼合精度を実現するためにシート状光学機能フィルム3の先端部32をパネル部材5に対していかに正確に位置合せにするかに技術的課題があるため、図5図7に示されるように、シート状光学機能フィルム3の先端部32を剥離体60の頂部61から頭出した状態で停止することになる。
【0075】
具体的には、図5は、剥離体60の頂部61から一定の頭出し状態で停止したシート状光学機能フィルム3の先端部を検出し、該先端部の検出位置からパネル貼合位置100までシート状光学機能フィルム3を送り、パネル部材5との正確な位置合わせにより貼り合わせるようにする方式を表すものである。また図6は、先行する貼合工程の終了後における次のシート状光学機能フィルム3の先端部をパネル貼合位置100で頭出し状態で停止して検出し、シート状光学機能フィルム3の前後の送りを微調整して、パネル部材5とのより正確な位置合わせにより貼り合わせるようにする方式を表すものである。さらに図7は、先行する貼合工程の終了後における次のシート状光学機能フィルム3の先端部を剥離体60の頂部61より上流側に設けた繰出位置まで巻き戻して該先端部を検出し、繰出位置からパネル貼合位置100までシート状光学機能フィルム3を送り、頭出し状態で停止した後パネル部材5との正確な位置合わせにより貼り合わせるようにする方式を表すものである。
【0076】
図5図7に示される比較例の場合、図4に示されるように、貼ズレの精度はクリアしているが、いずれも頭出し後に停止するため、粘着剤層に糊スジの変形が生じることは避けがたいものである。
【符号の説明】
【0077】
2 キャリアフィルム
3 シート状光学機能フィルム
31 シート状光学機能フィルムの後端部
32 シート状光学機能フィルムの先端部
4 粘着剤層
5 パネル部材

10 RTP方式による光学的表示装置を製造する装置
51 貼付ローラ
52 貼付ローラ
60 剥離体
61 剥離体の頂部
70 カメラ検出装置
71 カメラ検出装置
72a カメラ検出装置
72b カメラ検出装置
8 シート状光学機能フィルムの送り装置
80 正逆転フィードローラ
81 正逆転フィードローラ
82 ダンサーローラ
90 吸着搬送手段
91 検出手段

100 パネル貼合位置
200 停止位置
300 所定位置
500 先端位置
600 貼付前位置

800 制御装置
802 記憶装置


【要約】      (修正有)
【課題】粘着剤層に筋状変形を発生させることなくパネル部材にシート状光学機能フィルムを貼り合わせることによって光学的表示装置を製造する方法。
【解決手段】キャリアフィルムから剥離されたシート状光学機能フィルムの粘着剤層に、剥離前のシート状光学機能フィルムの先端部が頂部を有する剥離体の該頂部から突出しない停止位置に停止し、キャリアフィルムの巻取りにより、剥離体の頂部でシート状光学機能フィルムをキャリアフィルムから剥離しながら該シート状光学機能フィルムの先端部を、剥離体の停止位置からパネル貼合位置に送り、該パネル貼合位置に予め搬送されたパネル部材に重なると同時に、停止することなく、開状態の一対の貼付ローラを閉作動して回転する一対の貼付ローラで、シート状光学機能フィルムとパネル部材に挟持し、かつ、貼り合わることによって、前記粘着剤層に筋状変形を発生させることなく、光学的表示装置を製造する方法。
【選択図】図3
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図11