特許第6605705号(P6605705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605705車両が逆走している場合に他の交通関与者に警告するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605705
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】車両が逆走している場合に他の交通関与者に警告するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20191031BHJP
   G08G 1/056 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G08G1/16 A
   G08G1/056
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-502232(P2018-502232)
(86)(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公表番号】特表2018-522355(P2018-522355A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2016061588
(87)【国際公開番号】WO2017012742
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】102015213517.9
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー ペヒミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス オッフェンホイザー
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−140008(JP,A)
【文献】 特開2007−139531(JP,A)
【文献】 特開2010−129055(JP,A)
【文献】 特開2015−121952(JP,A)
【文献】 特開2012−127790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(102)が逆走している場合に他の交通関与者(204)に警告する(310)ための方法(300)であって、
前記車両(102)の、生じ得る逆走の逆走潜在性を事前検出するステップ(301)と、
前記逆走潜在性が事前警告値よりも大きい場合に、逆走によって危険にさらされる少なくとも1つの交通関与者(204)への通信リンク(200)を確立するステップ(306)と、
前記車両(102)の逆走を検出するステップ(304)と、
前記生じ得る逆走が実際の逆走として検出された場合に、前記確立された通信リンク(200)を介して、逆走運転者情報を、危険にさらされる前記交通関与者(204)のために提供するステップ(310)と、
を含む、方法(300)。
【請求項2】
前記事前検出するステップ(301)における前記逆走潜在性、及び/又は、前記検出するステップ(304)における実際の逆走は、前記車両(102)の特定された車両位置(118)及び/又は運動軌道(100)と、マップデータとの間の比較を用いて特定される、請求項1に記載の方法(300)。
【請求項3】
前記事前検出するステップ(301)及び/又は前記検出するステップ(304)における前記運動軌道(100)は、少なくとも1つのフィルタを用いて将来的に予測される、請求項2に記載の方法(300)。
【請求項4】
前記事前検出するステップ(301)及び/又は前記検出するステップ(304)における前記運動軌道(100)は、前記車両(102)の車両運動モデル及び/又は前記車両(102)の慣性センサシステムを用いて特定される、請求項2又は3に記載の方法(300)。
【請求項5】
前記事前検出するステップ(301)における前記逆走潜在性及び/又は前記検出するステップ(304)における前記実際の逆走は、前記車両(102)の周辺環境センサシステムを用いて特定される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項6】
前記事前検出するステップ(301)における前記逆走潜在性及び前記検出するステップ(304)における前記実際の逆走は、同一の検出方法を用いて特定される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項7】
前記逆走潜在性が前記事前警告値よりも小さい場合、及び/又は、前記実際の逆走が検出されない場合に、前記通信リンク(200)を解除する解除のステップ(311)を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項8】
前記確立するステップ(306)において、前記逆走潜在性が前記事前警告値よりも大きい場合に、さらに記録が開始される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(300)。
【請求項9】
コンピュータ上で実行されるときに、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法(300)を実施するために構成されたコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項に記載のコンピュータプログラム実行するように構成されたシステム(400)。
【請求項11】
請求項に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念による装置又は方法に関する。また、本発明の対象は、コンピュータプログラムでもある。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ゴーストドライバーとも称される逆走運転者が、事故を起こした場合には、死亡、負傷及び著しい物的損害を引き起こす。逆走のうちの半分以上は、高速自動車国道(BAB)又は分離された進路車道を有する道路への接続箇所から始まっている。特に、高速道路上での逆走の場合には、事故が大きな衝突速度のもとで発生し、そのため多くの場合、致死率の高い傷害が伴う。
【0003】
逆走運転者は、様々な方法で検出可能である。例えば、ビデオセンサシステムは、「車両進入禁止」の標識のある領域の通過を検出するために使用することができる。同様に、デジタルマップは、ナビゲーションシステムと併せて一方向のみ走行可能な区間における逆走方向を検出するために使用することができる。さらに、例えば車道内か又は車道縁部のビーコンのようなインフラストラクチャを用いて逆走運転者を検出するワイヤレス方式も使用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
このような背景から、ここに記載する取り組みでは、車両が逆走している場合に他の交通関与者に警告するための方法、及び、この方法を使用する装置、並びに、最終的には、主要請求項に従って対応するコンピュータプログラムが提示される。従属請求項に記載された手段によれば、独立請求項に記載された装置の好ましい発展形態及び改善形態が可能である。
【0005】
逆走の確実な検出には時間を要する。しかしながら、その間に、既に逆走している車両は走行方向と逆方向で移動しており、他の交通関与者と重大な事態を招く衝突を引き起こす可能性が高い。他の交通関与者との通信の確立にもさらなる時間が必要とされ、その間にも、逆走している車両は、走行方向と逆方向で移動している。即ち、これまでは他の交通関与者に警告されるまでに、時間がかかりすぎる傾向にあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
警告までの時間を短縮するために、ここに提示される取り組みでは、逆走の可能性があるときには既に通信の確立が開始されている。その際には、実際に逆走が起きているかどうかがまだ定かでないにもかかわらず、通信は確立される。従って、高い確率で逆走が識別されたときには、既に確立されている通信を介して、警告が最小遅延時間で逆走運転者に対して伝達可能である。
【0007】
ここでは、車両が逆走している場合に他の交通関与者に警告するための方法が提示され、この方法は、以下のステップを含む。即ち、
車両の、生じ得る逆走の逆走潜在性を事前検出するステップと、
逆走潜在性が事前警告値よりも大きい場合に、逆走によって危険にさらされる少なくとも1つの交通関与者への通信リンクを確立するステップと、
車両の逆走を検出するステップと、
生じ得る逆走が実際の逆走として検出された場合に、確立された通信リンクを介して、逆走運転者情報を、危険にさらされる交通関与者のために提供するステップと、
を含む。
【0008】
逆走とは、分離された進路車道を有する道路上において、想定されている走行方向と逆方向の車両の走行と理解することができる。同様に、逆走は、一方通行道路と逆方向で、又は、出口ランプの走行方向と逆方向で、又は、環状交通路の走行方向と逆方向で起こり得る。他の交通関与者は、他の車両の運転者であってもよい。逆走潜在性(逆走が潜在的に起こり得る可能性)は、例えば、それまでは一緒に誘導されていた2つの進路車線が相反する走行方向に空間的に分離される箇所に存在する。逆走潜在性は、例えば、車両がそのような箇所の直前で、対向車線への車線変更を行った場合などに高まるものとして識別される。その際には、自己の進路車線上にある障害物に対する回避操作と、意図的にもたらされる車線変更とを区別することが可能である。
【0009】
通信リンクの確立のために、例えば、車両の通信機器から、通信リンクのための要求を、現在接続されている移動無線網のセルに送信することができる。同様に、逆走潜在性は、固定的に設置された検出装置によって特定することができる。また、検出装置からの要求もセルに送信することができる。このセルに端を発して、当該セル及び/又は隣接するセルに接続された、他の車両における他の通信機器は、静的な通信確立を要求することが可能である。そのため、逆走の最終的な検出時点までの間に、さらなる通信機器からさらなる車両の運転者に、別の情報が送出されていないにもかかわらず、通信機器又は検出装置と、セルと、少なくとも1つの他の通信機器との間で通信リンクが開通される。
【0010】
逆走が検出されると、既に確立された通信リンクを介して迅速に警告情報を提供することができる。この通信リンクは、通信チャネルとみなすことができる。さらに代替的に、通信を確立するステップにおいて、通信リンクを介して導かれる通信チャネルを確立することも可能である。
【0011】
逆走潜在性及び/又は実際の逆走は、車両の特定された車両位置と、付加的又は代替的な車両の運動軌道と、マップデータとの間の比較を用いて特定することができる。車両位置及び/又は運動軌道は、例えば、位置特定システムを用いて特定することができる。この比較を実施するために、多くの車両には既に必要な装備が存在している。従って、ここに提示された取り組みは、容易に後付けすることが可能である。
【0012】
運動軌道は、少なくとも1つのフィルタを用いて、将来的に予測することが可能である。予測により、逆走潜在性が事前検出された際に、又は、実際の逆走が検出された際に、短い反応時間を達成することができる。
【0013】
運動軌道は、車両の車両運動モデルと、車両の付加的又は代替的な慣性センサシステムとを用いて特定することができる。慣性センサシステムに基づく運動軌道により、逆走潜在性又は逆走の正確な識別を実施することができる。それにより、位置特定システムの信号の保全が可能になる。
【0014】
逆走潜在性及び/又は実際の逆走は、車両の周辺環境センサシステムを用いて特定することができる。周辺環境センサシステムは、例えば、交通標識及び/又は路面標示を検出して評価するカメラシステムであってもよい。それにより、少なくとも1つの交通標識及び/又は路面標示の近傍を通過する際に逆走を直接識別することができる。
【0015】
逆走潜在性及び実際の逆走は、同一の検出方法を用いて特定することが可能である。これにより、プロセッサ容量を節約することができる。
【0016】
この方法は、逆走潜在性が事前警告値よりも小さい場合、及び/又は、実際の逆走が検出されない場合に、通信リンクを解除する解除のステップを含み得る。それにより、通信網への負荷を低減することができ、ひいてはコストを節約することができる。
【0017】
確立するステップにおいて、逆走潜在性が事前警告値よりも大きい場合には、さらに記録を開始することができる。車両に関連するデータの記録及び/又はビデオ記録により、簡単な証拠保全を行うことが可能である。
【0018】
この方法は、例えば、ソフトウェア若しくはハードウェアによって、又は、ソフトウェアとハードウェアとのハイブリッド方式によって、例えば制御装置において実現されてもよい。
【0019】
逆走運転者を検出してその近傍の他の交通関与者に警告するための方法は、逆走運転者の検出が、比較的高速ではあるが確実性は比較的低い事前検出と、それよりもさらに確実性の高い最終的な検出とから構成されており、この場合は、事前検出の後で、逆走運転者近傍の車両に対する「予防的」通信が確立され、最終的な検出の後で、警告メッセージがこの予防的通信を介して伝送されることを特徴とし得る。
【0020】
事前検出及び最終的な検出は、同一の検出方法に基づくようにすることが可能である。
【0021】
事前検出及び最終的な検出は、運動軌道とデジタルマップからの一部との比較に基づくようにすることが可能である。
【0022】
事前検出及び最終的な検出は、異なる方法に基づくようにすることが可能であり、例えば、交通標識識別及び運動軌道とデジタルマップからの一部との比較に基づくようにすることも可能である。
【0023】
慣性センサシステムは、時間的に高い分解能の運動軌道を表すために、車両運動モデルと併せて使用することができる。
【0024】
事前検出のために、慣性センサシステムを用いてフィルタの使用のもとで将来的に予測される、GPSに基づく運動軌道が使用可能である。
【0025】
スマートフォンの慣性センサシステムが使用可能であり、これらのセンサは、サーバによるスマートフォンの連続的な観察によって較正することができる。
【0026】
予防的通信に対しては付加的に、例えば事故カメラのようなさらなる機能性を活用させることもできる。
【0027】
ここで提示する取り組みは、さらに、ここで提示している方法の変化例のステップを、対応する装置において実施、駆動制御又は置換するように構成されたシステムを実現する。また、本発明のこのようなシステムの形態での変形実施形態によっても、本発明の基礎をなす課題を迅速かつ効率的に解決することができる。
【0028】
システムとは、本願では、複数のセンサ信号を処理し、これに応じて制御信号及び/又はデータ信号を出力する電子機器であると理解することができる。このシステムは、ハードウェア方式及び/又はソフトウェア方式によって構成され得るインタフェースを有することができる。ハードウェア方式による構成では、インタフェースは、例えば、当該システムの種々の機能を含む、いわゆるASICシステムの一部であってもよい。しかしながら、また、インタフェースは、固有の集積回路であってもよいし、あるいは、少なくとも部分的に個別の構成要素からなっていてもよい。ソフトウェア方式の構成では、インタフェースは、例えば、マイクロコントローラ上に他のソフトウェアモジュールと隣接して存在する複数のソフトウェアモジュールであってもよい。
【0029】
有利には、プログラムコードを含むコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムも使用される。当該プログラムコードは、機械可読担体上、即ち、半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光学メモリなどの記憶媒体上に記憶可能であり、特に、当該プログラム製品又は当該プログラムが、コンピュータ又は装置上で実行される場合に、上述した実施形態のうちの1つによる方法のステップを、実施、置換及び/又は駆動制御するために使用される。
【0030】
本発明の実施形態は図面に示されており、以下の明細書でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】高速道路の接続箇所における逆走運転者の運動軌道を示す図。
図2】一実施形態による、生じ得る逆走の事前検出、及び、通信リンクの確立を示す図。
図3】一実施形態による、他の交通関与者に警告するための方法を示すフローチャート。
図4】一実施形態による、他の交通関与者に警告するためのシステムを示すブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明においては、異なる図面に示された類似的に作用する要素に対しては、同一又は類似の参照符号が用いられるが、これらの要素の説明の繰り返しは省く。
【0033】
図1は、高速道路106の接続箇所104における逆走車両102の運動軌道100の図面を示す。高速道路106は、走行方向毎に2つの走行車線を有する2つの分離された進路車道を有している。接続箇所104は、ここでは部分的にのみ示されている。減速車線110を備えた出口ランプ108、及び、加速車線114を備えた入口ランプ112が示されている。これらの出口ランプ108及び入口ランプ112は、連絡用領域116において相互に平行に延在し、そこから2つの対向する進路車線を有する1つの共通の車道を形成している。連絡用領域116は、高速道路106に対して横方向に配向されている。連絡用領域116の外側においては、これらのランプ108,112の進路車線は分岐しており、それらは、減速車線110又は加速車線114において高速道路106に対してほぼ接線方向に移行するまで、高速道路106に向かって湾曲して延在している。
【0034】
車両102が連絡用領域116に示されており、高速道路106の方向に走行している。運動軌道100は、車両102が進む経路を示している。その際に運動軌道100は、複数の点118を相互に接続した直線部分から構成される。これらの点118は、それぞれ所定の時点において検出された車両102の位置を表す。これらの位置は、例えばGPSなどの位置特定システムによって特定され得る。ここで使用される位置特定システムは、検出周波数を有する。それにより、複数の点118の間の間隔は、車両102の速度に依存している。車両102の移動が速ければ速いほど、これらの点118の間の間隔は大きくなる。
【0035】
位置決めシステムは、不正確さを有しているので、複数の点118は車両102の推定位置を表す。車両102の実際の位置は、各検出時点で、多かれ少なかれ、推定位置から大きくずれている可能性がある。
【0036】
運動軌道100は、車両102が連絡用領域116において、入口ランプ112の走行車線を離れ、出口ランプ108の走行車線に変更していることを示している。連絡用領域116の外側においては、車両102は、走行方向120と逆方向に出口ランプ108に沿って、高速道路106方向へ走行しており、そのため逆走運転者102となる。
【0037】
逆走を識別するために、運動軌道100は、接続箇所104のモデル又は格納されたマップデータと比較される。検出された位置118が、想定された走行方向120と逆方向に車両102が走行していることを示すときには、他の交通関与者に警告することができる。
【0038】
運動軌道100は不確実性を含んでいるので、逆走を確実に識別するために、複数の検出時点を待っていると、その間にも車両102は既に走行方向120と逆方向に走行する。車両102は、この期間の間に既に遠くまで、走行方向120と逆方向に走行してしまう。
【0039】
出口ランプ108に隣接して、「車両進入禁止」標識122が両側に設置されており、これらは接続箇所104の一方通行規制を指示している。これらの標識122は、それらが走行方向120と逆方向の走行の際にはっきりと見えるように配向されている。車両102及び/又は接続箇所における光学的検出システムによっても同様に逆走を識別することができる。
【0040】
逆走運転者102の検出の際には、逆走運転者102自体への警告を、例えばディスプレイ表示又は音響的指示を介して行うことができる。同様に、逆走運転者102近傍の他の運転者にも、例えば、車車間通信を介して、又は、移動無線を用いて警告することができる。さらに、他の交通関与者に、路傍に設置された変更交通標識を介して警告することができる。また、逆走している車両102のエンジン制御部又はブレーキに介入することも可能である。
【0041】
逆走運転者102の分析では、多くの逆走が、ほぼ500メートルの区間内で終了することが示されている。逆走運転者102が検出され、近傍の他の交通関与者にまだ間に合ううちに警告をなすべき場合には、残された時間は非常に僅かしかない。特に、移動無線を用いて中央サーバを介して通信する場合には、残された時間が少ないことは危機的状況である。なぜなら、その場合には、検出するステップ、識別するステップ、要求するステップ、取り出しするステップ、及び、提示するステップが、連続して実行されるからである。
【0042】
検出するステップにおいては、逆走運転者102が検出される。この逆走運転者102の検出は、方法に応じて数秒を要する可能性がある。特に、デジタルマップ及びGPSを用いて支援されている車両位置118の検出には十分な時間が必要である。
【0043】
識別するステップにおいては、逆走運転者102の近傍の、警告すべき車両が識別される。
【0044】
要求するステップにおいては、警告すべき車両は、中央サーバとの通信を確立するように要求される。安全上の理由から、通常は、サーバから車両への直接的な通信の確立ができないのではなく、警告すべき車両がこれを行う必要がある。
【0045】
取り出し及び提示するステップにおいては、サーバからの警告メッセージが、警告すべき車両によって取り出され、この警告メッセージがHMI(ヒューマンマシンインタフェース、例えばディスプレイ)上に提示される。
【0046】
逆走運転者102の確実な検出は、特に、検出がデジタルマップ及び衛星支援下の測位システムを用いて行われる場合には、非常に時間がかかることがある。図1は、高速道路106に沿った典型的なシナリオを示している。この高速道路106においては、入口112及び出口108の領域が示されている。車両102は、高速道路106への進入を試みようとしている。しかしながら、この運転者は間違った進入路108をとる。この運転者の運動軌道100が示されている。この運動軌道は、車両内の衛星測位システム(GPS)によって特定することができる。典型的なGPS受信機は、毎秒1回、車両102の位置118を特定し、複数の点118によって示す。これらの点は、例えば直線で結ぶことによって運動軌道100に処理することができる。この運動軌道100は、ここで、高速道路ランプ108,112及びそこで許可された走行方向120が記録されているデジタルマップと比較することができる。特定された運動軌道100とデジタルマップとの比較により、許可された走行が行われているかどうか又は逆走かどうかを特定することができる。
【0047】
逆走運転者を特定するこの方法において、取り組まなければならないことは、逆走が存在するかどうかを疑いなく特定することにある。この場合は、入力信号又は車両位置118が、例えば、マルチパス受信又は大気の障害によって妨害される可能性がある。また、入口112と出口108との間の道路の幾何学的形状が非常に長く平行又はほぼ平行に続いている可能性もあり、そのため、逆走が存在するかどうかは、遅れた時点ではじめて疑いなく特定可能となる。逆走が存在するかどうかを疑いなく特定可能にするまでに、6つ、7つ又はそれ以上のGPS位置点118を連続して分析する必要性は十分にあり得る。その際、1HzによるGPS位置提供の場合、6秒、7秒又はさらなる秒数の貴重な時間が過ぎ去り、これらの時間は、これまでは、他の交通関与者への警告のために使用することができなかった。
【0048】
これまでは、他の交通関与者への警告は、車両102が「逆走」を行っていることを確実に検出した段階で行われていた。その後でこの車両は、例えば移動無線を介して、中央サーバと接触を開始する。中央サーバは、逆走運転者102の近傍にさらなる車両が存在するかどうかを確定する。存在する場合には、さらなる車両は、サーバとの接続の確立と、そこからの逆走運転者102の位置に関する情報又は整った警告メッセージの取り出しとを要求される。その後でこのことは、好適な操作面を介して車両の運転者に表示することが可能になる。逆走運転者102の近傍の車両を識別するステップ、及び、当該車両への通信確立にも、数秒を要する可能性があり、個々のケースにおいては、さらに多くの秒数が必要になり得る。これらのすべての時間を加算すれば、運転者が適時にかつ有効に逆走運転者102に対する警告をなされないまま、逆走自体が既に終了しかねない。
【0049】
図2は、一実施形態による、生じ得る逆走の事前検出と、通信リンク200の確立とを示す。この逆走は、ここでも図1に示されるように、接続箇所104において示される。ここでも、接続箇所104の出口ランプ108の走行方向と逆方向の車両102の運動軌道100が示されている。
【0050】
ここでは、車両102が逆走する可能性があるのかどうかが監視される。その際、逆走の可能性は、既に、車両102が短い時間で出口ランプ108の車線に到達する場合に識別される。但し、この時点ではまだ、実際に逆走が続くかどうかは定かではない。
【0051】
逆走の可能性が存在する場合、通信リンク200は、通信インフラストラクチャ202を介して確立されるが、まだ使用されていない。通信リンク200は、この場合、潜在的な逆走の可能性によって危険にさらされそうな交通関与者204に対して確立される。図示のケースにおいては、高速道路106上を接続箇所104の方向に走行している他の車両204が差し迫る危険にさらされている。通信リンク200は、逆走の可能性が消滅するまで、開通されたまま維持される。
【0052】
車両102が、複数の検出時点118にわたって走行方向と逆方向に出口ランプ108上を走行する場合には、逆走が確実に識別される。そのときには、危険にさらされる交通関与者204に警告するために、既に予防的に確立された通信リンク200を介して、逆走情報が、危険にさらされる交通関与者204のために提供される。
【0053】
それは、逆走運転者102の検出が完了する前の警告すべきクライアント204への平行した通信確立を提示している。
【0054】
ここに提示される取り組みによれば、逆走運転者検出から、近傍車両204での警告メッセージ提示までの完全な「一周時間」を最小にする効率的な方法が示される。
【0055】
ここに提示される取り組みの利点は、図1で説明した検出、識別、要求及び取り出しの方法ステップが部分的に平行処理されることにある。それにより、時間を要する識別及び要求のステップを、既に、潜在的な逆走運転者102の検出がまだ進行している間に平行して実行することができる。検出の実行中に、まだ逆走は存在していないことが判明した場合には、平行して開始されていた識別及び要求のステップは再び中断され、それによって、他の交通関与者204への警告は、当該交通関与者との通信200が既に確立されていた場合でも行われない。
【0056】
ここに提示される取り組みにおいては、時間を要するステップはできるだけ平行処理される。この目的のために、検出がまだ確実には起こり得ない場合でも、可能な限り早期に、例えば、車両102の第1のGPS位置118通過の1秒乃至2秒後に、逆走運転者102を検出する「事前検出」が想定される。
【0057】
図3は、一実施形態による、他の交通関与者に警告するための方法300のフローチャートを示す。この方法300によれば、車両が逆走している場合に他の交通関与者に警告がなされる。
【0058】
機能ブロック301においては、逆走運転者の事前検出が行われる。この事前検出301に続く特定ブロック302においては、事前検出301の結果が、逆走が可能であるかどうかについて評価される。
【0059】
逆走が可能でない場合には、改めて事前検出301が実行される。逆走が可能である場合には、特定ブロック302に続く機能ブロック303において、近傍の車両が探索される。同様に、それと平行して、特定ブロック302に続く機能ブロック304においても、最終的な逆走運転者検出が実施される。車両探索303に続く特定ブロック305においては、車両探索303の結果が、車両が存在するかどうかについて評価される。
【0060】
車両が存在しない場合には、改めて事前検出301が実行される。少なくとも1つの車両が存在する場合、特定ブロック305に続く機能ブロック306において、サーバとの通信が確立される。この通信確立306に続く特定ブロック307においては、通信が確立されているかどうかの検査が行われる。通信が確立されていない場合には、改めて通信確立306が直接実施される。
【0061】
最終的な逆走運転者検出304に続く特定ブロック308においては、最終的な逆走運転者検出304の結果が、逆走運転者が実際に存在するかどうかについて検査される。逆走運転者が存在し、かつ、通信が確立されている場合には、結合ブロック309において、複数の結果が、ここではAND結合を用いて論理結合され、機能ブロック310において、警告が運転者に出力される。続いて機能ブロック311においては、サーバとの通信が解除される。同様に、実際の逆走が検出されなかった場合にも通信解除311が実施される。通信解除311の後においては、再び事前検出301が実施される。
【0062】
一実施形態においては、この方法300は、事前検出のステップ301、検出のステップ304、確立のステップ306、及び、提供のステップ310だけを含む。事前検出のステップ301においては、車両の、生じ得る逆走の逆走潜在性が事前検出される。逆走潜在性が事前警告値よりも大きい場合には、確立のステップ306において、逆走によって危険にさらされる少なくとも1つの交通関与者への通信リンクが確立される。その間に、検出のステップ304においては、車両の逆走が検出される。生じ得る逆走が、実際の逆走として検出された場合には、提供のステップ310において、確立された通信リンクを介して、逆走運転者情報が、危険にさらされる交通関与者のために提供される。それにより、ステップ306における通信リンクは、時間的に既に、ステップ304において行われる逆走の実際の検出前に確立することができる。このことには、逆走が検出されたときには既に通信リンクが確立されているという利点がある。
【0063】
事前検出のステップ301は周期的に行われる。逆走潜在性が事前警告値よりも小さい場合、事前検出のステップ301が改めて実行される。
【0064】
確立のステップ306において、探索のサブステップ303においては、生じ得る逆走によって危険にさらされる交通関与者が探索される。危険にさらされる交通関与者が見つかった場合、これらの交通関与者への通信リンクが確立される。この確立306は、この場合、周期的に行われる。通信リンクが確実に確立されていない場合、確立306は改めて開始される。
【0065】
検出のステップ304において、逆走が全く検出されない場合、解除のステップ311において、通信リンクが再び解除される。
【0066】
通信リンクが確立され、逆走が検出された場合、他の交通関与者は、当該通信リンクを介して警告される。それに続いて、解除のステップ311においては、通信リンクが再び解除される。
【0067】
ここで提示する方法300のフローチャートにおいては、関与するすべての車両の「事前検出」301が絶えず行われる。この事前検出301が、生じ得る逆走が存在するという結論(この結論は、許容し得る不確実性を伴ってはいるがより短い時間の後でも得ることが可能である)に達すると、特定ブロック302は、近傍の車両の探索303を開始する。この場合、最終的な逆走運転者検出304は、逆走が存在するかどうかが確信されるまで継続する。潜在的な逆走運転者の近傍に車両が存在する限り、平行して、さらなる特定ブロック305を介して近傍に存在する車両とサーバとの通信確立306が導入される。この通信確立306が行われると、通信は、最終的な逆走運転者特定がなされるまで維持される。この逆走運転者特定が肯定される場合、警告310が近傍の車両又はその運転者に提供される。その後、通信は再び解除されて、当該方法は終了する。逆走が全く検出されない場合、近傍の運転者は警告を受けず、当該運転者とサーバとの通信も解除され、潜在的な逆走のための事前検出301が新たに開始される。
【0068】
一実施形態によれば、潜在的な逆走運転者の事前検出301の最終的な検出304からの分離は、近傍の車両への即時通信確立306に関連して行われる。それに対して最終的な検出304は、まだ終了していない。
【0069】
この方法300によれば、場合によっては、警告が行われていないにもかかわらず、潜在的な逆走運転者の近傍の運転者との通信を確立することができる。但し、ここでの利点は、通常は著しく早期の警告にある。なぜなら、逆走運転者の近傍の運転者との通信チャネルは、逆走が最終的に検出されたときには既に完全に確立され得るからである。移動通信は今日では通常は非常に安価であるため、逆走運転者に対する著しく早期の警告の利点は、早期に確立される通信リンクに基づき生じ得る通信コストの増加にも勝る。
【0070】
一実施形態においては、事前検出301と最終的な逆走運転者検出304の2つが潜在的な逆走運転者の車両内でそれぞれ行われる。
【0071】
一実施形態においては、2つのタスク301,304が中央サーバ上で実行される。
【0072】
さらなる態様においては、2つのタスク301,304のうちの一方が車両内で実行され、それぞれ他方は中央サーバ上で実行される。
【0073】
事前検出301及び最終的な検出304は、同一の方法に基づくことができ、例えばGPS運動軌道とデジタルマップとの比較に基づくことができる。この場合、事前検出301は、ほんの数点までのGPS位置点しか含まないが、最終的な検出304は、多数のGPS位置点を含む。
【0074】
事前検出301及び最終的な検出304は、異なる検出方法に基づくことができ、例えば、「車両進入禁止」交通標識のビデオベースの識別及びGPS軌道とデジタルマップとの比較に基づくことができる。
【0075】
GPSベースの位置特定は、通常は1Hzの周波数によってのみ可能であるので、この位置特定は、一実施形態においては、慣性センサシステムを用いて補足される。この目的のために、加速度センサ及び/又はヨーレートセンサが追加される。さらに車両運動モデルを、例えば個々のGPS位置点間での運動軌道をさらにより高解像度化するために、例えば10Hz又は100Hzの周波数でさえカルマンフィルタと組み合わせて使用することが可能である。この高解像度の運動軌道は、事前検出301のためにも、最終的な検出304のためにも使用することが可能である。
【0076】
一実施形態においては、GPSベースの運動軌道は、例えばローパスフィルタリングによってフィルタリングされ、慣性センサシステムを用いて将来的に予測され、事前検出301のために使用される。それにより、潜在的な逆走運転者の非常に早期の事前検出301が行われ得る。
【0077】
逆走運転者の検出304のためにスマートフォンが使用される場合、サーバは、その慣性センサを、複数のセンサの連続的な観察によって較正することができる。
【0078】
拡張された一実施形態においては、逆走運転者に対する他の運転者への警告310が行われるだけでなく、自動化されたさらなる車両機能性が活用される。例えば、逆走運転者の車両においても、警告すべき運転者の車両においても、証拠カメラの活用が行われる。サーバとの通信が予防的に確立できるとすぐに、過程を記録するための事故カメラなどの機能性を予防的に活用させることもできる。
【0079】
図4は、一実施形態による他の交通関与者に警告するためのシステム400のブロック回路図を示す。システム400においては、例えば図3に記載されているような、車両が逆走している場合の他の交通関与者に警告するための方法が実行可能である。このシステム400は、事前検出のためのコンポーネント402、確立のためのコンポーネント404、検出のためのコンポーネント406、及び、提供のためのコンポーネント408を含む。事前検出のためのコンポーネント402は、車両の、生じ得る逆走の逆走潜在性を事前検出するように構成されている。確立のためのコンポーネント404は、逆走潜在性が事前警告値よりも大きい場合に、逆走によって危険にさらされる少なくとも1つの交通関与者への通信リンクを確立するように構成されている。検出のためのコンポーネント406は、車両の逆走を検出するように構成されている。提供のためのコンポーネント408は、生じ得る逆走が実際の逆走として検出された場合に、確立された通信リンクを介して、逆走運転者情報を、危険にさらされる交通関与者のために提供するように構成されている。
【0080】
1つの実施形態が、第1の特徴と第2の特徴との間で「及び/又は」の接続を含む場合には、このことは、この実施形態が、1つの実施形態においては、第1の特徴及び第2の特徴のいずれも有し、他の実施形態においては、第1の特徴及び第2の特徴のいずれか一方のみを有することを意味するものと読み取られるべきである。
図1
図2
図3
図4