(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、セクタをタイヤ径方向に移動させて型閉め及び型開きするタイヤ加硫装置では、セクタとサイドプレートとで形成される金型分割面をタイヤ径方向に平行な面やタイヤ径方向に対して斜めに傾斜する面で構成した場合、次のような問題がある。
すなわち、金型分割面をタイヤ径方向に平行な面で構成したタイヤ加硫装置では、セクタとサイドプレートの金型分割面の間隔が小さいと、セクタを径方向へ移動させたときにセクタとサイドプレートとが擦れ合い摩耗する。一方、セクタとサイドプレートとの金型分割面の間隔が大きいと、加硫成型時にゴムが金型分割面からはみ出し成型不良が発生しやすくなる。つまり、セクタとサイドプレートとの擦れ合い摩耗を抑えつつゴムのはみ出しを防止するために、サイドプレートに対するセクタの位置について高い精度が要求される。
【0009】
また、金型分割面をタイヤ径方向に対して斜めに傾斜する面で構成したタイヤ加硫装置では、型閉め時にセクタとサイドプレートとが傾斜面において接触するテーパ嵌合状態となる。そのため、このようなタイヤ加硫装置でも、セクタのタイヤ径方向の移動により生じるセクタとサイドプレートと擦れ合い摩耗を抑えつつ金型分割面を密着させるためには、サイドプレートに対するセクタの位置について高い精度が要求される。
【0010】
しかしながら、セクタは、周方向で複数に分割され、上下方向及びタイヤ径方向に移動させる機構に接続されている。そのため、型閉め時に全てのセクタが所望位置にくるようにタイヤ加硫装置を構成する各部材の取付位置を管理することは容易ではなく、サイドプレートに対するセクタの位置がばらつきやすい。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、型閉め時に全てのセクタが所望位置にくるようにセクタの位置を調整することができ、サイドプレートに対してセクタを位置精度よく配置することができるタイヤ加硫装置及びタイヤ加硫装置の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るタイヤ加硫装置は、タイヤを加硫成型するタイヤ加硫装置において、タイヤのトレッド部を成型するタイヤ周方向に分割されたセクタと、前記セクタが固定されタイヤ径方向に前記セクタを移動させるセグメントと、タイヤ径方向に前記セグメントを貫通するボルト孔にタイヤ径方向外側から挿入され前記セグメントに前記セクタを固定するボルトと、前記セグメントのタイヤ径方向外側に設けられた環状のジャケットリングと、タイヤのサイドウォール部を成型する上下一対のサイドプレートと、前記セクタと上下一対の前記サイドプレートとで形成される金型分割面とを備え、前記金型分割面は、金型内側端部がトレッド部に配置され、金型内側端部よりタイヤ径方向外方に延び、
前記セグメントに設けられた前記ボルト孔の上下方向の長さが、前記ボルトの軸部の直径より大きく、前記セグメントは、前記セクタの固定位置を上下方向に調整可能に設けられ、前記ジャケットリングは、タイヤ径方向に貫通する貫通孔と、内周面に下方へ行くほどタイヤ径方向外方へ広がるテーパ面とを備え、前記セグメントのタイヤ径方向外側を覆うように前記セグメントに対して下方へ移動すると、前記セグメントをタイヤ径方向内方へ移動させてタイヤ周方向に隣り合う前記セクタを互いに密着させ、かつ、前記貫通孔を前記ボルト孔と連通させるものである。
【0013】
本発明の好ましい態様において、金型分割面が、タイヤ径方向と平行に設けられてもよい。他の好ましい態様において、タイヤ加硫装置は前記貫通孔を閉塞する封止部材を備えてもよい。
【0014】
他の好ましい態様において、タイヤ加硫装置は、上下一対の前記サイドプレートに固定され前記セグメントを摺動可能に支持する上下一対の取付プレートとを備え、前記セグメントは、上下一対の前記取付プレートを摺動する上下一対の摺動面を備え、上下一対の前記摺動面は、タイヤ径方向外側ほどタイヤ幅方向中央部に向かうように傾斜し、前記セグメントは、前記セクタをタイヤ径方向外方へ移動させると、上下一対の前記摺動面が上下一対の前記取付プレートを摺動し、前記金型分割面の間隔を広げてもよい。この場合において、タイヤ径方向に対する上下一対の前記摺動面の角度が5°以上10°以下であることが好ましい。また、この場合において、上下一対の前記摺動面が平面であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るタイヤ加硫装置の組み立て方法は、タイヤを加硫成型するタイヤ加硫装置の組み立て方法において、前記タイヤ加硫装置は、タイヤのトレッド部を成型するタイヤ周方向に分割されたセクタと、前記セクタが固定されタイヤ径方向に前記セクタを移動させるセグメントと、タイヤ径方向に前記セグメントを貫通するボルト孔にタイヤ径方向外側から挿入され前記セグメントに前記セクタを固定するボルトと、前記セグメントのタイヤ径方向外側に設けられた環状のジャケットリングと、タイヤのサイドウォール部を成型する上下一対のサイドプレートと、上下一対の前記サイドプレートに固定され前記セグメントを摺動可能に支持する上下一対の取付プレートと、前記セクタと上下一対の前記サイドプレートとで形成される金型分割面とを備え、前記金型分割面は、金型内側端部がトレッド部に配置され、金型内側端部よりタイヤ径方向外方に延び、
前記セグメントに設けられた前記ボルト孔の上下方向の長さが、前記ボルトの軸部の直径より大きく、前記セグメントは、前記セクタの固定位置を上下方向に調整可能に設けられ、前記ジャケットリングは、タイヤ径方向に貫通する貫通孔と、内周面に下方へ行くほどタイヤ径方向外方へ広がるテーパ面とを備え、前記セグメントのタイヤ径方向外側を覆うように前記セグメントに対して下方へ移動すると、前記セグメントをタイヤ径方向内方へ移動させてタイヤ周方向に隣り合う前記セクタを互いに密着させ、かつ、前記貫通孔を前記ボルト孔と連通させるタイヤ加硫装置であって、
前記セクタが外力を受けて上下方向に移動できるように前記セグメントに前記セクタを前記ボルトで仮固定し、上下一対の前記サイドプレートを固定した上下一対の取付プレートに、前記セクタを仮固定した前記セグメントを支持させ、前記ジャケットリングが前記セグメントのタイヤ径方向外側を覆い、タイヤ周方向に隣り合う前記セクタを互いに密着させた状態で
前記セクタを上下一対の前記サイドプレートに接触させて前記セグメントに対する前記セクタの上下方向の位置を調節した後、前記ボルトを締めて前記セクタを前記セグメントに固定する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態のタイヤ加硫装置では、タイヤ周方向に隣り合うセクタが互いに密着する型閉め状態において、セクタとサイドプレートとの金型分割面の間隔を調整した後、セグメントにセクタを固定するボルトを締結することができるため、型閉め時に全てのセクタが所望位置にくるようにセクタの位置を調整することができ、サイドプレートに対してセクタを位置精度よく配置することができる
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
タイヤ加硫装置は、
図1に示すように、加硫金型10と、加硫金型10が取り付けられるコンテナ20と、加硫金型10やコンテナ20を上下動させる第1昇降手段50及び第2昇降手段51と、ブラダー60とを備える。タイヤ加硫装置は、タイヤ軸方向(タイヤ幅方向)が上下になるようにセットされた未加硫のグリーンタイヤを加熱及び加圧により、所定形状に成型しつつ加硫する。
【0020】
加硫金型10は、上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12と、周方向に分割された複数のセクタ13と、上下一対のビードリング14,15とを備え、タイヤTの外表面(意匠面)を形成する成型金型である。
【0021】
加硫金型10の材料としては、アルミニウムやアルミニウム合金や鉄などの金属材料を選択することができるが、加硫温度での熱膨張が小さいことから鉄を選択することが好ましく、加硫金型10に生じる金型分割面の間隔を加硫温度において所望の間隔に設定しやすいことから、加硫金型10を構成する上下一対の上側サイドプレート11、12、複数のセクタ13、及び上下一対のビードリング14、15をすべて鉄で形成することが好ましい。
【0022】
セクタ13は、タイヤTのトレッド部1を成型する金型であり、タイヤ周方向に複数(例えば、9個)に分割され、タイヤ放射方向(タイヤ径方向)に拡縮変位可能に設けられている。各セクタ13を型閉め位置に配置した型閉め状態では、タイヤ周方向に隣り合うセクタ13が、互いに寄り集まって環状をなしている。
【0023】
上側サイドプレート11は、タイヤTの上方に配置されたサイドウォール部2及びビード部3を成型する金型である。下側サイドプレート12は、下方に配置されたサイドウォール部2及びビード部3を成型する金型である。上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12のタイヤ径方向内側にはそれぞれビードリング14,15が設けられている。ビードリング14,15は、タイヤTのビード部3が嵌合可能に構成されている。
【0024】
加硫金型10は、タイヤ幅方向に金型を分割する金型分割面、つまり、セクタ13と上側サイドプレート11とで形成される金型分割面16と、セクタ13と下側サイドプレート12とで形成される金型分割面17とが、セクタ13の移動方向であるタイヤ径方向に対して平行に設けられている。セクタ13と上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12とで形成される金型分割面16,17は、パーティングラインと呼ばれる金型内側端部16a、17aがタイヤTのトレッド部1に位置している。
【0025】
また、セクタ13は、上側サイドプレート11との間で形成される金型分割面16から上方へ突出する上側フランジ部13aと、下側サイドプレート12との間で形成される金型分割面17から下方へ突出する下側フランジ部13bとを備える。タイヤ周方向に隣り合うセクタ13が密着した型閉め状態では、上側フランジ部13aが上側サイドプレート11に設けられたタイヤ径方向外側の端面11bに当接し、下側フランジ部13bが下側サイドプレート12に設けられたタイヤ径方向外側の端面12bに当接する。
【0026】
好ましくは、上下一対の上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bが上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に接触する前に、タイヤ周方向に隣り合うセクタ13が接触し、その後、上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bが上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に接触するように、金型分割面16,17における上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bの突出位置を設定する。
【0027】
一例を挙げると、タイヤ周方向に隣り合うセクタ13が接触した時に、上側フランジ部13aと上側サイドプレート11の間隔や、下側フランジ部13bと下側サイドプレート12の間隔が、0.03mm〜0.2mmになるように上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bの突出位置を設定することができる。
【0028】
上側フランジ部13a及びこれとタイヤ径方向に対向する上側サイドプレート11の端面11bのいずれか一方(この例では、上側フランジ部13a)には、他方(この例では、上側サイドプレート11の端面11b)へ向けて突出する第1突出ピン18が設けられ、他方には、タイヤ加硫装置の型閉め状態において第1突出ピン18が嵌まり込む第1凹部19が設けられている。
【0029】
下側フランジ部13b及びこれとタイヤ径方向に対向する下側サイドプレート12の端面12bのいずれか一方(この例では、下側フランジ部13b)にも、他方(この例では、下側サイドプレート12の端面12b)へ向けて突出する第1突出ピン18が設けられ、他方には、タイヤ加硫装置の型閉め状態に第1突出ピン18が嵌まり込む第1凹部19が設けられている。
【0030】
上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bに設けられた第1突出ピン18は、複数のセクタ13にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられている。この例では、第1突出ピン18は、上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bのタイヤ周方向中央部に設けられている。
【0031】
第1凹部19は、加硫金型10の型閉め時に第1突出ピン18が嵌まり込むことで、セクタ13と上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12とのタイヤ周方向における相対位置を調整し、セクタ13を位置決めする。
【0032】
なお、上側サイドプレート11の端面11b及び下側サイドプレート12の端面12bに第1突出ピン18を設け、上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bに第1凹部19を設けても良い。
【0033】
セクタ13は、上側サイドプレート11との間で形成される金型分割面16に後述する保持治具70を固定するためのボルト穴16bが設けられている(
図7参照)。
【0034】
加硫金型10には、トレッド部1にタイヤ周方向に延びる主溝を成型するための主溝成型用リブ(不図示)と、トレッド部1にタイヤ幅方向に延びる横溝4を形成するための横溝成型用リブ13cとがセクタ13に設けられ、サイドウォール部2にトレッド部1の横溝4に連続する凹部5を形成するための凹部成型用リブ11a,12aが、上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に設けられている。
【0035】
このような加硫金型10は、金型内部に開口する不図示のベントホールがセクタ13及び上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に設けられている。ベントホールには排気管を介して真空ポンプ等の吸引装置に接続されている。吸引装置は加硫成型時にベントホールから金型内部の空気を排気することでゴム欠損の原因となるエア溜まりを防止する。
【0036】
コンテナ20は、セクタ13を保持する複数のセグメント21と、セグメント21をタイヤ径方向に移動させるジャケットリング22と、上側サイドプレート11及び上側のビードリング14を支持するとともにセグメント21の上側に配置された上側取付プレート23と、下側サイドプレート12及び下側のビードリング15を支持するとともにセグメント21の下側に配置された下側取付プレート24とを備える。
【0037】
セグメント21は、セクタ13のタイヤ径方向外側に分割されたセクタ13ごとに設けられている(
図8参照)。セグメント21のタイヤ径方向内側には、セクタ13のタイヤ径方向外側と面接触する取付面21aが設けられている。取付面21aは、水平方向に対して垂直な鉛直面からなり、取付面21aに沿ってセクタ13を移動させてセクタ13の取付位置を上下方向に変更できるようになっている。
【0038】
セグメント21はタイヤ径方向に貫通するボルト孔25が設けられており、タイヤ径方向外側からボルト孔25に挿入されたボルト26によってセグメント21の取付面21aにセクタ13が固定される。セグメント21に設けられたボルト孔25の上下方向の長さは、ボルト26の軸部の直径より所定量大きく設けられ、取付面21aに対するセクタ13の取付位置が上下方向で異なっていてもセクタ13をボルト26によって固定できるようになっている。
【0039】
セグメント21の上面には、タイヤ径方向外側ほどタイヤ幅方向中央部(つまり、下方へ)に向かうように傾斜する上側摺動面27が設けられている。上側摺動面27は、上側取付プレート23に設けられた上側スライド28を摺動する。
【0040】
セグメント21の下面には、タイヤ径方向外側ほどタイヤ幅方向中央部(つまり、上方へ)に向かうように傾斜する下側摺動面29が設けられている。下側摺動面29は下側取付プレート24に設けられた下側スライド30を摺動する。
【0041】
セグメント21に設けられた上側摺動面27及び下側摺動面29の傾斜角度は、特に制限が無いが、タイヤ径方向に対して5°以上10°以下であることが好ましい。また、セグメント21に設けられた上側摺動面27及び下側摺動面29は、好ましくは、湾曲することのない平面からなり、上側スライド28及び下側スライド30に対して面接触状態で摺動する。
【0042】
また、セグメント21は、セクタ13が取り付けられた側面と反対側(タイヤ径方向外側)の側面が、下方に向かってタイヤ径方向外方に傾斜する傾斜面31をなしている。
【0043】
ジャケットリング22は、複数のセグメント21の径方向外側に設けられた環状の部材で、セグメント21に設けられたボルト孔25に対応させてタイヤ径方向に貫通する貫通孔36が設けられている。貫通孔36は、ジャケットリング22に着脱可能な封止部材37によって気密状態で閉塞されている。
【0044】
ジャケットリング22の内周面は、セグメント21のタイヤ径方向外側に設けられた傾斜面31に沿って傾斜するテーパ面22aをなしている。ジャケットリング22に設けられたテーパ面22aはセグメント21の傾斜面31に摺動可能に連結されている。ジャケットリング22は下側取付プレート24から上方に離れた状態においてセグメント21を支持する(
図6参照)。また、
図1,2,及び5に示すようにセグメント21が下側取付プレート24の下側スライド30に載置された状態において、ジャケットリング22は、セグメント21に対して相対的に上下動することでセグメント21に設けられた傾斜面31を摺動しながらセグメント21をタイヤ径方向に移動させる。これにより、セグメント21に保持されたセクタ13がタイヤ径方向に拡縮変位可能に構成されている。
【0045】
ジャケットリング22がセグメント21のタイヤ径方向外側全体を覆う位置まで降下すると、周方向に隣り合うセクタ13が互いに密着する型閉め状態となる。この状態において、ジャケットリング22に設けられた貫通孔36は、セグメント21に設けられたボルト孔25と連通する。これにより、タイヤ加硫装置の型閉め状態において、セクタ13をセグメント21に固定するボルト26を着脱することができるようになっている。
【0046】
上側取付プレート23の下面には、上側サイドプレート11と上側スライド28が不図示のボルトによって固定されている。
【0047】
上側サイドプレート11及び上側取付プレート23のいずれか一方(この例では、上側取付プレート23)には、他方(この例では、上側サイドプレート11)へ向けて突出する先細形状の第2突出ピン32が設けられ、他方には、第2突出ピン32が嵌まり込む第2凹部33が設けられている。第2凹部33は、第2突出ピン32の形状に対応する底へ向かって狭くなる円錐形状をなしており、第2突出ピン32が嵌まり込むことで、上側サイドプレート11と上側取付プレート23との相対位置を調整し、上側サイドプレート11を位置決めする。なお、上側サイドプレート11に第2突出ピン32を設け、上側取付プレート23に第2凹部33を設けても良い。
【0048】
上側スライド28は、上側サイドプレート11のタイヤ径方向外側であって、セグメント21の上面に設けられた上側摺動面27と対向する位置に配置されている。上側スライド28は、セグメント21がタイヤ径方向に摺動可能に連結され、
図6に示すように下側取付プレート24から上方に離れた状態でセグメント21を支持するとともに、セグメント21がタイヤ径方向に移動する際にその移動を案内する。
【0049】
下側取付プレート24の上面には、下側サイドプレート12と下側スライド30が不図示のボルトによって固定されている。
【0050】
下側サイドプレート12及び下側取付プレート24のいずれか一方(この例では、下側取付プレート24)には、他方(この例では、下側サイドプレート12)へ向けて突出する先細形状の第2突出ピン34が設けられ、他方には、第2突出ピン34が嵌まり込む第2凹部35が設けられている。第2凹部35は、第2突出ピン34の形状に対応する底へ向かって狭くなる円錐形状をなしており、第2突出ピン34が嵌まり込むことで、下側サイドプレート12と下側取付プレート24との相対位置を調整し、下側サイドプレート12を位置決めする。なお、下側サイドプレート12に第2突出ピン34を設け、下側取付プレート24に第2凹部35を設けても良い。
【0051】
下側スライド30は、下側サイドプレート12のタイヤ径方向外側であって、セグメント21の下面に設けられた下側摺動面29と対向する位置に配置される。下側スライド30は、セグメント21をタイヤ径方向に摺動可能に支持し、セグメント21がタイヤ径方向に移動する際にその移動を案内する。
【0052】
また、下側取付プレート24やジャケットリング22等には、不図示の加熱装置が設けられている。加熱装置は、例えば、熱媒体とこれが流通するパイプから構成され、加硫金型10全体を加熱する。
【0053】
第1昇降手段50は、下側取付プレート24に対して上側取付プレート23を相対的に上下動させる。第2昇降手段51は、上側取付プレート23に支持されたセグメント21と別個にジャケットリング22を上下動させる。
【0054】
ブラダー60は、軸方向中央部が外側に膨出したトロイダル状をなした拡縮可能なゴム弾性体からなり、グリーンタイヤの内面側に配置されて加圧気体(例えば、蒸気や窒素ガス)の供給によって膨らみグリーンタイヤを内側から加圧する。ブラダー60は、その軸方向両端部である上端部と下端部が伸縮支持部61により支持されており、不図示の流体ポートを介して、内部に加圧気体を供給し、また排出されるように構成されている。伸縮支持部61は、ブラダー60の上端部と下端部の間隔を伸縮可能に支持する部材であり、ブラダー60の上端部を固定する上側クランプリング62と、ブラダー60の下端部を固定する下側クランプリング63と、伸縮可能な伸縮軸部64とを備えてなる。
【0055】
次に、加硫金型10をコンテナ20に取り付けてタイヤ加硫装置を組み立てる方法について説明する。
【0056】
まず、
図7に示すように、タイヤのトレッド部1を成型する型面が内側を向くように複数のセクタ13を周方向に並べて配置する。本実施形態では、セクタ13の下面を構成する金型分割面17から下方へ突出するフランジ部13bが設けられており、セクタ13のみで直立することができない。そのような場合、
図7に示すように、周方向に並べた複数のセクタ13をリング状の保持治具70にボルト71で固定し、この状態を保持する。
【0057】
次いで、周方向に並べて配置した複数のセクタ13の上方より、セグメント21を取り付けたジャケットリング22を下降させ、セクタ13のタイヤ径方向外側にセグメント21を配置する。その後、
図8に示すように、セグメント21の傾斜面31に設けられたボルト孔25にボルト26を挿通してセグメント21にセクタ13を仮固定する。また、セクタ13に取り付けた保持治具70を取り外す。なお、
図8では、ジャケットリング22を省略して図示している。
【0058】
次いで、上側取付プレート23に設けられた上側スライド28に、セクタ13を仮固定したセグメント21をタイヤ径方向に摺動可能に連結する。また、下側サイドプレート12及び下側スライド30が固定された下側取付プレート24の上方よりセクタ13を仮固定したセグメント21を下降させ、セグメント21の下側摺動面29を下側スライド30上に載置し、セグメント21を下側スライド30に支持させる。なお、セグメント21の下側摺動面29が下側スライド30上に載置された直後は、
図9に示すように、セグメント21が自重によってジャケットリング22の下端部に位置し、セグメント21に固定されたセクタ13が上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12よりタイヤ径方向外方に離れた位置にある。
【0059】
次いで、
図10に示すように、セグメント21のタイヤ径方向外側全体を覆う位置までジャケットリング22を降下させ、型閉め状態となるまで(周方向に隣り合うセクタ13が互いに密着するまで)セグメント21をタイヤ径方向内方へ移動させる。
【0060】
次いで、型閉め状態において、ジャケットリング22に設けられた貫通孔36からセクタ13をセグメント21に固定するボルト26を緩める。その後、セクタ13が上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に接触するようにセグメント21に対するセクタ13の上下方向の取付位置を調整する。
【0061】
セグメント21に対するセクタ13の上下方向の取付位置を調整が完了すると、再び貫通孔36からボルト26を締めてセクタ13をセグメント21に固定する。そして、封止部材37を貫通孔36に取り付けてタイヤ加硫装置の組み立てが完了する。
【0062】
なお、本実施形態では、型閉め状態となるまでセクタ13をタイヤ径方向内方へ移動させてからボルト26を緩めてセクタ13の上下方向の取付位置を調整する場合について説明したが、次のような方法で上下方向の取付位置を調整してもよい。
【0063】
例えば、セクタ13をボルト26でセグメント21に仮固定する際に、セクタ13が外力を受けて上下方向に移動できるが、セグメント21からセクタ13が脱落したり、セクタ13ががたついたりすることがない程度の締結力でセクタ13をセグメント21に固定する。その後、セグメント21のタイヤ径方向外側全体を覆う位置までジャケットリング22を降下させ、型閉め状態となるまでセグメント21をタイヤ径方向内方へ移動させる。その際、セクタ13が外力を受けて上下方向に移動できるようにセグメント21に固定されているため、セクタ13は上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に上下に押され、金型分割面16,17において上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に接触する位置に配置される。そして、この状態でジャケットリング22に設けられた貫通孔36からボルト26を増し締めしてセクタ13をセグメント21に固定してもよい。
【0064】
あるいは、型閉め状態になる直前においてボルト26を緩め、セクタ13と上側サイドプレート11による金型分割面16の間隔と、セクタ13と下側サイドプレート12による金型分割面17の間隔とが、所定範囲内になるようにセクタ13の上下方向の位置を調整する。その後、ボルト26を締めてセクタ13をセグメント21に固定してもよい。
【0065】
以上のような構成を備えたタイヤ加硫装置を用いてグリーンタイヤの加硫成型を行い、空気入りタイヤを製造する。
【0066】
詳細には、公知の方法により成形されたグリーンタイヤが、型開き状態のタイヤ加硫装置の加硫金型10に装着されるとともに、グリーンタイヤの内面側にブラダー60が装着された後、加硫金型10を
図1に示すような型閉め状態にする。
【0067】
加硫金型10を型開き状態から型閉め状態にするには、第1昇降手段50が上側取付プレート23に設けられた上側サイドプレート11及びセグメント21を下降させるとともに、第2昇降手段51がジャケットリング22とこれに取り付けられたセグメント21を下降させる。
【0068】
第1昇降手段50が上側サイドプレート11及びセグメント21を下降させる速度は、第2昇降手段51がジャケットリング22を下降させる速度と同じ速度に設定されている。そのため、セグメント21及びセクタ13はタイヤ径方向に移動することなく、上側サイドプレート11、セクタ13、セグメント21及びジャケットリング22が下方に移動し、下側取付プレート24に設けられた下側サイドプレート12に接近する。
【0069】
そして、セグメント21の下側摺動面29が下側取付プレート24の下側スライド30に載置されると、第2昇降手段51は、ジャケットリング22を更に降下させる。これにより、セグメント21は、下側摺動面29が下側取付プレート24の下側スライド30を摺動し、上側摺動面27が上側取付プレート23の上側スライド28を摺動して、タイヤ径方向内方へ移動する。その際、セグメント21に設けられた上側摺動面27及び下側摺動面29がタイヤ径方向外側ほどタイヤ幅方向中央部に向かうように傾斜しているため、セグメント21とともにセクタ13がタイヤ径方向内方へ移動すると、上側摺動面27の傾斜によって上側サイドプレート11が降下し、下側摺動面29の傾斜によってセグメント21及びセクタ13が下降する。つまり、セグメント21及びセクタ13のタイヤ径方向内方への移動に伴って、セクタ13と上側サイドプレート11とで形成される金型分割面16の間隔が漸次狭くなるとともに、セクタ13と下側サイドプレート12とで形成される金型分割面17の間隔が漸次狭くなる。
【0070】
そして、セグメント21及びセクタ13がタイヤ径方向内方に所定量移動すると、上下一対の上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bが上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に接触する前に、タイヤ周方向に隣り合うセクタ13が接触する。
【0071】
タイヤ周方向に隣り合うセクタ13が接触した後、更に、セクタ13は、タイヤ径方向内方へ移動することでタイヤ周方向に隣り合うセクタ13同士が密着する型閉め位置に到達する。セクタ13が型閉め位置に到達すると、上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bが上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に接触する。これにより、セクタ13は、タイヤ径方向内方への移動が規制され、型閉め位置(タイヤ周方向に隣接するセクタ13同士が密着する位置)よりタイヤ径方向内方へ移動することがない。
【0072】
また、タイヤ加硫装置の組み立て時にセクタ13の上下方向の位置を調整しているため、セクタ13が型閉め位置に到達した状態では、セクタ13と上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12とで形成される金型分割面16,17が密着し、加硫金型10が
図1に示すような型閉め状態となる。
【0073】
なお、上記のようにセクタ13が型閉め位置までタイヤ径方向内方へ移動すると、上側フランジ部13a及び下側フランジ部13bに設けられた第1突出ピン18が、上側サイドプレート11の端面11b及び下側サイドプレート12の端面12bに設けられた第1凹部19に嵌まり込み、上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12に対してセクタ13をタイヤ周方向に位置決めする。
【0074】
上記のように加硫金型10を型閉めした後、ブラダー60内に加圧気体を供給して膨張させることにより、加硫金型10とブラダー60との間でグリーンタイヤを加圧及び加熱し、この状態を所定時間維持することにより、タイヤTを加硫成型する。
【0075】
グリーンタイヤを加硫した後、加硫金型10を型開き状態にして、加硫済みのタイヤTをタイヤ加硫装置から取り出す取り出し工程を行う。
【0076】
加硫金型10を型閉め状態から型開き状態にするには、まず、第2昇降手段51によりジャケットリング22を上昇させることにより、セグメント21に保持されたセクタ13をタイヤ径方向外方に移動させ、セクタ13を拡径させる。この時、第1昇降手段50は停止しているが、上側取付プレート23や下側取付プレート24が上下方向の外力を受けると、当該外力に応じて上側取付プレート23が上方へ移動するようになっている。
【0077】
上記のように本実施形態のタイヤ成型装置では、セグメント21に設けられた上側摺動面27及び下側摺動面29がタイヤ径方向外側ほどタイヤ幅方向中央部に向かうように傾斜している。そのため、
図2に示すようにセグメント21がタイヤ径方向外方へ移動すると、上側摺動面27は、上側取付プレート23を上方へ押し上げながら上側取付プレート23の上側スライド28をタイヤ径方向外方へ摺動し、下側摺動面29は、下側取付プレート24を下方へ押し下げながら下側取付プレート24の下側スライド30をタイヤ径方向外方へ摺動する。
【0078】
上側摺動面27より上方へ押し上げられた上側取付プレート23は、セグメント21に対して上方へ移動するため、セグメント21が径方向外方へ移動を開始すると、
図3に示すように、上側取付プレート23に固定された上側サイドプレート11もセグメント21に対して上方へ移動し、セクタ13と上側サイドプレート11とで形成される金型分割面16の間隔が広がる。
【0079】
また、下側摺動面29より下方へ押し下げられた下側取付プレート24は、セグメント21に対して下方へ移動するため、セグメント21が径方向外方へ移動を開始すると、
図4に示すように、下側取付プレート24に固定された下側サイドプレート12もセグメント21に対して下方へ移動し、セクタ13と下側サイドプレート12とで形成される金型分割面17の間隔が広がる。なお、下側取付プレート24が固定されている場合、セグメント21が径方向外方へ移動を開始すると、セグメント21が上方へ移動し、セクタ13と下側サイドプレート12とで形成される金型分割面17の間隔が広がる。
【0080】
そして、
図5に示すようにセクタ13の拡径が完了した後、第1昇降手段50を上昇させて、
図6に示すように上側取付プレート23に設けられた上側サイドプレート11及びセクタ13を上昇させ、すなわち下側サイドプレート12に対して離間移動させて、上側サイドプレート11と下側サイドプレート12の型開き動作を行う。そして、型開き状態になったタイヤ加硫装置から加硫済みのタイヤTを取り出す。なお、上側サイドプレート11及びセクタ13が上方に移動している間、ジャケットリング22は、セクタ13を拡径した状態のまま、第2昇降手段51によって上側サイドプレート11に同期して上昇する。
【0081】
本実施形態のタイヤ加硫装置によれば、セグメント21に対するセクタ13の取付位置が上下方向に変更できることに加え、周方向に隣り合うセクタ13が互いに密着する型閉め状態において、ジャケットリング22に設けられた貫通孔36がセグメント21に設けられたボルト孔25に連通しボルト26を着脱することができる。そのため、セクタ13と上下一対の上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12とで形成される金型分割面16,17を所望の間隔になるようにセグメント21に対するセクタ13の上下方向の取付位置を簡単に調整することができる。
【0082】
また、本実施形態では、ジャケットリング22に設けられた貫通孔36が、封止部材37によって気密状態で閉塞されているため、加硫成型時に吸引装置によって金型内部が減圧されやすくなり、ゴム欠損の原因となるエア溜まりが発生しにくくなる。
【0083】
また、本実施形態のタイヤ加硫装置では、上側取付プレート23及び下側取付プレート24を摺動する上側摺動面27及び下側摺動面29が、タイヤ径方向外側ほどタイヤ幅方向中央部に向かうように傾斜しているため、セグメント21がタイヤ径方向内方へ移動すると、金型分割面16、17の間隔が漸次狭くなり、セグメント21が径方向外方へ移動すると、金型分割面16、17の間隔が漸次広がる。つまり、セクタ13が型閉め位置にあると、セクタ13と上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12とで形成される金型分割面16,17が密着するが、セクタ13が型閉め位置よりタイヤ径方向外方に位置すると金型分割面16,17に隙間が形成される。そのため、タイヤ加硫装置の開閉を繰り返しても、金型分割面16,17が擦れ合うことがなく、タイヤ加硫装置の耐久性を向上させることができる
しかも、セグメント21が径方向外方へ移動を開始した直後に上側取付プレート23とともに上側サイドプレート11が加硫成型後のタイヤTから離れる方向へ移動するため、タイヤTを脱型しやすくなる。
【0084】
また、本実施形態のタイヤ加硫装置において、セグメント21に設けられた上側摺動面27及び下側摺動面29が、上側スライド28及び下側スライド30に対して面接触状態で摺動する平面であると、セグメント21ががたつくこと無く位置精度良く移動させることができ、型閉め状態におけるセクタ13の位置ずれを抑えることができる。
(変更例)
図11に基づいて本発明の変更例について説明する。なお、上記の実施形態と同一の構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0085】
上記した実施形態では、セクタ13と上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12で形成される金型分割面16,17がタイヤ径方向に平行な場合について説明したが、本発明はこのような場合に限られず、タイヤのトレッド部1に配置された金型分割面の金型内側端部からタイヤ径方向外方に延びる金型分割面であればよい。
【0086】
例えば、本変更例のタイヤ加硫装置は、
図11に示すように、セクタ13と上側サイドプレート11及び下側サイドプレート12で形成される金型分割面160,170が、タイヤ径方向内側(つまり、金型内側端部160a,170a側)に行くほどタイヤ幅方向中央部に向かうようにタイヤ径方向に対して斜めに傾斜している。
【0087】
このようなタイヤ加硫装置においても上記の実施形態と同様の作用効果が奏される。なお、その他の構成は上記の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0088】
以上の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。