特許第6605752号(P6605752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605752
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】操舵伝動装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20191031BHJP
   F16H 55/24 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H55/24
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-546818(P2018-546818)
(86)(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公表番号】特表2019-509928(P2019-509928A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】EP2017051538
(87)【国際公開番号】WO2017153083
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年9月6日
(31)【優先権主張番号】102016104150.5
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500396654
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ オートモーティブ ステアリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch Automotive Steering GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス−ウーヴェ ハーファーマルツ
(72)【発明者】
【氏名】エッケハート クネーア
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0040699(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0272765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
F16H 1/16,55/24,57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車(2)と、該歯車(2)に噛み合うねじ状ピニオン(3)と、該ねじ状ピニオン(3)を含むねじ状ピニオン軸(4)とを有する操舵伝動装置であって、
前記ねじ状ピニオン軸(4)は、前記ねじ状ピニオン(3)の一方の側では固定側軸受(6)に支持されており、該固定側軸受(6)は、前記ねじ状ピニオン軸(4)が受け入れられたインナベアリングシェルと、旋回リング(14)の内側リング(15)に直接にまたは間接的に結合されたアウタベアリングシェルとを有する回転軸受と、を含み、前記内側リング(15)は、少なくとも1つのねじりウェブ(17)を介して、前記ねじ状ピニオン軸(4)の長手方向(18)に対して横方向に位置する旋回軸線(7)を中心として旋回可能に、前記旋回リング(14)の外側リング(16)と結合されており、該外側リング(16)は、前記操舵伝動装置のハウジング(1)に直接にまたは間接的に支持されている、操舵伝動装置において、
前記ねじりウェブ(17)は、前記ねじ状ピニオン軸(4)の前記長手方向(18)に関して少なくとも一方の側において、支持面(25)に対して間隔をあけて延在しており、該間隔は、前記ねじ状ピニオン軸(4)にトルクが加えられていないときには、前記ねじりウェブ(17)が前記支持面(25)に接触することはなく、前記ねじ状ピニオン軸(4)に作動トルクが加えられているときには、前記ねじりウェブ(17)が前記支持面(25)に少なくとも部分的に接触するように設定されていることを特徴とする、操舵伝動装置。
【請求項2】
前記ねじりウェブ(17)の両側に、対応する支持面(25)が設けられている、請求項1記載の操舵伝動装置。
【請求項3】
前記ねじ状ピニオン軸(4)にトルクが加えられていないときには、各前記支持面(25)または前記支持面(25)のうちの少なくとも1つは、前記ねじりウェブ(17)に対して平行に延在している、請求項1または2記載の操舵伝動装置。
【請求項4】
各前記支持面(25)または前記支持面(25)のうちの少なくとも1つは、前記ねじ状ピニオン軸(4)の長手方向軸線(18)に対して半径方向に向けられた方向に関して曲げられたまたは湾曲された延在部を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の操舵伝動装置。
【請求項5】
前記ねじ状ピニオン軸(4)は、その長手方向(18)での荷重に関して、前記旋回リング(14)を介してのみ、前記ハウジング(1)に直接にまたは間接的に支持されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の操舵伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーアシステッド操舵システム用の操舵伝動装置に関する。
【0002】
大抵の自動車には、パワーアシステッド操舵システムが組み付けられている。このパワーアシステッド操舵システムは、操舵時にアシストトルクを発生させ、これにより、運転者によってステアリングコラムに加えられるべき操舵モーメントを減少させる。
【0003】
周知のパワーアシステッド操舵システムは、液圧式または電気式の駆動装置の駆動出力を変換し、例えばステアリングコラムに伝達する操舵伝動装置をベースとしている。このような操舵伝動装置は、通常、ねじ状転動伝動装置の形態で、特にねじ歯車伝動装置またはウォームギヤとして形成されている。すなわち操舵伝動装置には、タイロッドと直接にまたは間接的に結合された歯車と、この歯車に噛み合っていて、駆動装置により軸を介して駆動されるピニオンとが含まれる。
【0004】
このような操舵伝動装置では、構成部材の製造誤差、各伝動装置エレメントの異なる熱膨張、プラスチック製歯車の場合には材料の摩耗や残留歪みに基づき形成される伝動装置遊びが問題であるということが判った。特にいわゆる切替操舵に際して、すなわちステアリングを切る方向を連続して交互に切り替える操舵に際して、前記のような伝動装置遊びは、ピニオンと歯車の、対向して位置する各側面同士が交互に当接することから生じる、望ましくないノイズを発生させる。
【0005】
ピニオン軸が、その長手方向軸線に対して垂直に、かつピニオンと歯車との歯列係合部に対して間隔をあけて延在する軸線を中心として旋回可能に支持されていて、1つまたは複数のばね部材により歯車に向かって押圧されること(ピニオン軸の、いわゆるばね弾性的な接触)により、伝動装置遊びを解消することが知られている。この場合、ピニオン軸の旋回性は、通常、ピニオン軸を端部側で支持する2つの軸受のうちの一方に組み入れられる。この軸受は、「固定側軸受」と呼ばれる。この場合、他方の端部の領域に設けられる軸受は、旋回運動により惹起される変位を可能にするために、遊びを備えて形成されている(いわゆる「可動側軸受」)。固定側軸受は、通常、駆動側に設けられているのに対して、可動側軸受は、ピニオン軸の自由端部に設けられている。この場合、ピニオンを歯車に押し付けるための1つまたは複数のばね部材が、可動側軸受と固定側軸受の両方に組み込まれていてもよい。
【0006】
固定側軸受を介してばね弾性的に接触させるためのばね力が生ぜしめられるような操舵伝動装置は、例えば国際公開第2011073089号から公知である。そこで想定されているのは、固定側軸受の領域でピニオン軸を受容している転がり軸受の外面を、旋回スリーブ内で支持する点である。旋回スリーブは、転がり軸受を概ね遊び無しで受容する軸受スリーブと、操舵伝動装置ハウジングの受容部において概ね遊び無く保持された外側リングとを有しており、この場合、外側リングと軸受スリーブとは、複数のねじりウェブを介して結合されており、これらのねじりウェブは、外側リングが軸受スリーブに対して回動させられるとねじられるようになっている。操舵伝動装置の取付け後には、ねじりウェブはねじられた状態であり、これにより生ぜしめられた弾性的な戻り作用が、ピニオン軸のばね弾性的な接触を生ぜしめるようになっている。
【0007】
前掲の国際公開第2011073089号に類似した操舵伝動装置構成が、独国特許出願公開第102012103146号明細書に記載されている。ただしそこでは、旋回リングが別個の構成部材として形成されている。この場合、旋回リングは内側リングと、2つのねじりウェブを介して内側リングと結合された外側リングとを有している。外側リングは、操舵伝動装置ハウジング内での固定側軸受の支持に用いられるのに対して、内側リングは転がり軸受と、軸受スリーブの半径方向内側に曲げられた端部との間に緊締されている。
【0008】
摩耗や材料残留歪みにもかかわらず、操舵伝動装置の想定使用期間全体にわたって十分に大きな、すなわち伝動装置遊びに基づく望ましくないノイズ発生を十分に回避するばね弾性的な接触を保証するためには、このばね弾性的な接触を、操舵伝動装置の新品状態に関して生じ得る構成部材の製造誤差も考慮して、比較的大きく設定しなければならない。但し、このことは、新品状態もしくはあまり摩耗していない状態での操舵伝動装置に相応に高い摩擦を生ぜしめることになり、これはやはり、基本的には操舵感が悪いと感じられる傾向につながる。よって、ピニオン軸のばね弾性的な接触の設定は、通常、一方では、想定使用期間全体にわたり有利なノイズ発生に合わせ、他方では、特に操舵伝動装置の新品状態での操舵伝動装置における比較的低い摩耗に基づく良好な操舵感に合わせて妥協したものとなる。
【0009】
さらに、操舵伝動装置における高い摩擦は、操舵伝動装置の効率にマイナスの影響を与えてしまう。
【0010】
この先行技術を前提として、本発明の根底にある課題は、自動車のパワーアシステッド操舵システム用の改良された操舵伝動装置を提供することにある。特に使用期間にわたって十分に少ないノイズ発生と同時に可能な限り良好な操舵感を構造的に簡単に達成することができる操舵伝動装置を提供することが望まれる。
【0011】
この課題は、特許請求項1記載の操舵伝動装置により解決される。これに関する有利な構成は、各従属特許請求項に記載されており、本発明の以下の説明から明らかになる。
【0012】
本発明の根底を成す思想は、操舵伝動装置の、ねじ状ピニオン軸として形成されたピニオン軸のばね弾性的な接触の剛性を可変に形成し、これにより一方では、十分に大きなばね弾性的な接触を実現することで、操舵伝動装置の想定使用期間全体にわたって伝動装置遊びを効果的に回避して、結果的に有利なノイズ特性を達成することができるようにし、他方では、良好な操舵感を得るために有利な場合には、伝動装置におけるばね弾性的な接触ひいては摩擦を比較的小さく保つことにある。この場合に利用しようとするのは、操舵感の判断には、特に操舵伝動装置を含む自動車の運転状態において生じる操舵感が重要である一方で、不都合なノイズ発生は、特に停止状態および/または例えば最高20km/hまでの低速走行時の切替操舵において生じる恐れがある、という点である。パワーアシステッド操舵システムひいては操舵伝動装置に結合された駆動装置により生ぜしめられねばならないアシスト出力は、自動車の停止状態と低速走行時に、走行状態におけるよりも高くなるということを考慮すれば、ばね弾性的な接触の可変性を実現するためには、操舵伝動装置を介して伝達される、それぞれ異なるアシスト出力を利用することができる。
【0013】
これに相応して、少なくとも1つの歯車と、この歯車に噛み合うねじ状ピニオンと、このねじ状ピニオンを含むねじ状ピニオン軸とを有する操舵伝動装置が設けられており、ねじ状ピニオン軸は、ねじ状ピニオンの一方の側では固定側軸受に支持されており、固定側軸受には、ねじ状ピニオン軸が受け入れられたインナベアリングシェルと、旋回リングの内側リングに直接にまたは間接的に結合されたアウタベアリングシェルとを有する回転軸受が含まれており、内側リングは、少なくとも1つのねじりウェブを介して、ねじ状ピニオン軸の長手方向(長手方向軸線に沿った延在部)に対して横方向に位置する旋回軸線を中心として旋回可能に、旋回リングの外側リングと結合されており、外側リングは、操舵伝動装置ハウジングに直接にまたは間接的に支持されている(この場合は特にねじ状ピニオン軸の長手方向に関しても支持されている)。このような操舵伝動装置は本発明に基づき、ねじりウェブが、ねじ状ピニオン軸の長手方向に関して少なくとも一方の側において、支持面に対して間隔をあけて延在しており、この間隔は、ねじ状ピニオン軸にトルクが加えられていないときには、ねじりウェブが支持面に接触することはなく、ねじ状ピニオン軸に作動トルク、すなわち操舵伝動装置の想定された作動中に想定トルクが加えられているときには、ねじりウェブは支持面に少なくとも部分的に接触するように設定されていることを特徴とする。この場合、好適には、ねじ状ピニオン軸に作動中に想定される最大の作動トルクが加えられているときに、ねじりウェブは支持面に完全に接触する、ということが想定されていてもよい。
【0014】
ねじ状ピニオンとしてのピニオンの構成に基づき、ねじ状ピニオン軸に加えられたトルクは、ねじ状ピニオン軸の長手方向に荷重を生ぜしめ、この荷重は旋回リングを介してハウジングに伝達される。この時旋回リングのねじりウェブが、その弾性的な構成に基づき相応の方向に変形することで、ねじりウェブは少なくとも部分的に支持面に当接することになる。これにより機能上、ねじりウェブの自由長さ、すなわちねじりウェブの領域の、旋回リングの外側リングと内側リングの各緊締部間の距離が減少させられ、このことはばね弾性的な接触を達成するためにねじ状ピニオン軸が変位させられた旋回角度が変わらないと、より強いねじれひいてはばね弾性的な接触の増大をもたらす。つまり結果的に、ねじ状ピニオン軸に高トルクが加えられると、特に自動車の停止状態および低速走行時に操舵運動が行われると、比較的強力なばね弾性的な接触を達成することができる一方で、ねじ状ピニオン軸に加えられるトルクが比較的低い(またはゼロである)と、特に自動車の走行状態で操舵運動が行われると、相応に低い摩擦ひいては相応に有利な操舵感を伴う比較的弱いばね弾性的な接触が実現されることになる。
【0015】
本発明に係る操舵伝動装置の1つの好適な構成では、ねじ状ピニオン軸の両側に相応の支持面が設けられている、ということが想定されていてもよい。これにより、ねじ状ピニオン軸の両回転方向に関して、ひいてはこれによりアシストされて生ぜしめられる、自動車の被操舵輪の、ステアリングを切る両方向に関して可変のばね弾性的な接触の、有利な効果が達成され得る。
【0016】
本発明に係る操舵伝動装置の特に構造的に有利な構成では、ピニオン軸にトルクが加えられていないときには、複数の支持面またはこれらの支持面のうちの少なくとも1つは、ねじりウェブに対してほぼ平行に延在している、ということが想定されていてもよい。さらにこのようにして、ねじ状ピニオン軸に加えられるトルクの増大にほぼ比例して高まる、ねじ状ピニオン軸のばね弾性的な接触の剛性が実現され得る。
【0017】
同様に、複数の支持面またはこれらの支持面のうちの少なくとも1つは、ねじ状ピニオン軸の長手方向軸線に対して半径方向に向けられた方向に関して曲げられたまたは湾曲された延在部を有している、ということが想定されていてもよい。湾曲された構成の場合、さらに好適には、ピニオン軸に所定の、特に最大の作動トルクが加えられているときには、1つまたは複数の曲率半径は、ねじりウェブの、対応する支持面との接触用に設けられた側の曲率半径よりも大きくなっており、この曲率半径は、対応する支持面とねじりウェブとの間の最大距離と、ねじりウェブの、支持面に隣接して延びている部分の長さとから、計算により得られる、ということが想定されていることが望ましい。このようにして、特にねじ状ピニオン軸に加えられるトルクの増大に応じて比例はしない、ねじ状ピニオン軸のばね弾性的な接触の剛性の増大を達成することができ、これにより、一方では望ましくないノイズ発生の回避に関する有利な効果と、他方では可能な限り有利な操舵感に関する有利な効果とを、さらに良好に調整することができる。
【0018】
本発明が目標とする効果は、本発明に係る操舵伝動装置の1つの好適な構成において想定されているように、ねじ状ピニオン軸がその長手方向での荷重に関して、専ら旋回リングを介してのみ、ハウジングに直接にまたは間接的に支持されている場合に、特に大きくなる。なぜならば、これにより支持面に対するねじりウェブの可変の当接に利用される、ねじ状ピニオン軸の前記長手方向でのねじりウェブの弾性変形が、特に顕著になり得るからである。
【0019】
本発明は更に、本発明による操舵システムを備えたパワーアシステッド操舵システムならびにこのようなパワーアシステッド操舵システムを備えた自動車に関する。
【0020】
特に特許請求項および特許請求項全般を説明する明細書における不定冠詞(″ein″, ″eine″, ″einer″および″eines″)について、それ自体は数詞を意味するものではない。これに相応して、不定冠詞が付されたコンポーネントに関しては、これらのコンポーネントが少なくとも1つ設けられていると共に、複数設けられていてもよいことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下に、本発明を複数の図面に示した1つの実施例につき、より詳しく説明する。
図1】本発明に係る操舵伝動装置の側面図である。
図2図1に示した断面II−IIに沿った、操舵伝動装置の縦断面図である。
図3図1に示した断面III−IIIに沿った、操舵伝動装置の拡大部分縦断面図である。
図4図3に示した部分IVの拡大図である。
図5】操舵伝動装置の旋回リングを個別に示す平面図である。
【0022】
図1図5には、自動車のパワーアシステッド操舵システム用の本発明に係る操舵伝動装置の構成の主要な構成部材が示されている。本発明に係る操舵伝動装置はハウジング1を有しており、ハウジング1の内部には、歯車2と、この歯車2に噛み合うねじ状ピニオン3とが支持されている。ねじ状ピニオン3と、このねじ状ピニオン3を含むねじ状ピニオン軸4とは、ウォームの形態で一体に形成されている。
【0023】
歯車2は、操舵伝動装置の被駆動軸5(図1参照)に固く取り付けられている。図示の実施例では歯列を有している被駆動軸5は、例えば少なくとも一部がラックとして形成されたタイロッドに噛み合っていてもよく、これによりタイロッドは、公知の形式でホイールステアリングレバー(図示せず)を介して自動車の操舵輪(図示せず)の旋回運動に変換可能な並進運動を実施するようになっている。ただし被駆動軸5は、ステアリングホイールに結合されていて、ステアリングピニオンを介してタイロッドに作用する、パワーアシステッド操舵システムのステアリングコラムであってもよい。
【0024】
ねじ状ピニオン軸4は、駆動側の端部を有しており、この駆動側の端部を介して、(例えば電動モータである)駆動装置(図示せず)の被駆動軸と結合可能である。この駆動側の端部の領域においてねじ状ピニオン軸4は、第1の支持部を介してハウジング1内に支持されている。この支持部は、固定側軸受6として形成されており、固定側軸受6は、旋回軸線7(図1および図5参照)を中心としたねじ状ピニオン軸4の旋回を可能にする。
【0025】
この旋回は、ねじ状ピニオン軸4の駆動側の端部とは反対の側に位置する自由端部の変位を生ぜしめ、ねじ状ピニオン軸4は、そこで可動側軸受8を介してハウジング1の相応の受容部に支持されている。この可動側軸受8は、ねじ状ピニオン軸4の旋回から生じる前記自由端部の変位を可能にするように形成されている。
【0026】
固定側軸受6と可動側軸受8とは両方共、それぞれ転がり軸受9,10、例えば転がり玉軸受の形態の回転軸受を有している。これらの転がり軸受9,10のインナベアリングシェル内には、ねじ状ピニオン軸4の対応する部分が支持されている一方で、転がり軸受9,10のアウタベアリングシェルは、それぞれ軸受装置11,12内に支持されており、軸受装置11,12もやはり、ハウジング1の相応の受容部に支持されている。軸受装置11,12は構造的に、‐固定側軸受6の場合には‐旋回軸線7を中心としたねじ状ピニオン軸4の旋回を可能にし、かつ‐可動側軸受8の場合には‐ねじ状ピニオン軸4の自由端部の変位を可能にするように形成されている。
【0027】
このために固定側軸受6の軸受装置11は、円形横断面を備えた軸受スリーブ13を有しており、軸受スリーブ13は内側において第1の長手方向部分に転がり軸受9を収容しており、かつ第2の長手方向部分に旋回リング14の内側リング15を収容している。旋回リング14の内側リング15は、支持ディスク19を介在させた状態で回動不能に、かつ軸方向で位置固定されて軸受スリーブ13内で支持されており、この場合、内側リング15は中間ディスク20を介在させた状態で、転がり軸受9のアウタベアリングシェルに支持されている。旋回リング14は内側リング15の他に、さらに外側リング16を有している。外側リング16は、2つのねじりウェブ17(図1および図3図5参照)を介して内側リング15と結合されている。このため外側リング16と内側リング15とねじりウェブ17とは、例えばばね鋼から例えば一体的に形成されている。
【0028】
ねじ状ピニオン軸4における転がり軸受9の軸方向での位置固定は、押圧部材21を介在させた状態で、ねじ22を介して行われており、ねじ22は、ねじ状ピニオン軸4の対応する端部に設けられた雌ねじ山に螺合している。ハウジング1内での旋回リング14の外側リング16の軸方向の位置固定は、ねじリング23を介して行われており、ねじリング23は、ハウジング1の対応する雌ねじ山に螺合させられた雄ねじ山を有している。
【0029】
2つのねじりウェブ17は旋回軸線7を形成しており、この旋回軸線7を中心として、外側リング16が内側リング15に対して相対的に旋回することができるようになっている。ただしこの場合、ねじりウェブ17ひいては旋回軸線7は、旋回リング14ひいてはねじ状ピニオン軸4の横断面の中心を通って延在しているのではなく、この中心に対して半径方向にずらされて延在している(図5参照)。つまり旋回軸線7は、ねじ状ピニオン軸4の長手方向軸線18とは交差していない。
【0030】
旋回リング14の中心に対するねじりウェブ17の半径方向のずれに基づき、旋回軸線7はねじ状ピニオン軸4の外周付近へ移動させられ、これにより、ねじ状ピニオン3と歯車2の歯が噛み合った時に生じる歯列力に基づき、この歯列力の作用線の、旋回軸線7からの距離に関連して生じる、もしくは生じると考えられる反作用モーメントの形成を減少させるまたは回避することができるようになっている。反作用モーメントを可能な限り完全に回避するために、旋回軸線7は、歯車2とねじ状ピニオン3の2つのピッチ円もしくは転動円の接触点に形成された接平面内に位置している、ということが想定されている。
【0031】
旋回リング14のねじりウェブ17は、内側リング15に対する外側リング16の旋回ひいては歯車2もしくはハウジング1に対して相対的なねじ状ピニオン軸4の旋回を可能にするだけでなく、同時にねじ状ピニオン軸4のねじ状ピニオン3を歯車2の歯列に押し込むばね力をも生ぜしめ、これにより、最小限の伝動装置遊びひいては操舵伝動装置の作動中の相応に少ないノイズ発生を、特にいわゆる切替操舵に際して達成することができる。このばね力は、操舵伝動装置の取付け時に、ねじ状ピニオン軸4が歯車2と接触することにより変位させられ、これによりねじりウェブ17が十分にねじられることに基づき生じ、ねじりウェブ17がねじられた結果生じる弾性的な戻しモーメントが、ねじ状ピニオン軸4の前記変位に抗して作用し、ひいてはねじ状ピニオン軸4を歯車2に対して押圧することになる。
【0032】
この場合、このばね弾性的な接触の剛性は、ねじりウェブ17の有効長さに直接に左右される。それというのも、ハウジング1内に固定された外側リング16に対する、ねじ状ピニオン軸4ひいては旋回リング14の内側リング15の(例えば0.7°に過ぎない)所定の角度の旋回は、ねじりウェブ17の長さが減少するに連れて増大するねじれにつながるからである。
【0033】
ねじりウェブ17の最大有効長さは、ハウジング1とねじリング23との対応する各部分の間の外側リング16の緊締部の端部と、支持ディスク19と中間ディスク20との間の内側リング15の緊締部の端部との間に形成される距離に基づいて得られ、このことは、図4に点線で示した境界線24によって表されている。
【0034】
旋回リング14の外側リング16との接触用に設けられたハウジング1の接触面と、ねじリング23の相応する接触面とは両方共、これらによって形成された緊締部に付属する境界線24から出発してさらに所定の区間だけ、ねじ状ピニオン軸4の長手方向軸線に向かって、ひいては付属するねじりウェブ17の、ねじ状ピニオン軸4の長手方向に関して互いに離間された各側に隣接するように延在しており、この場合、前記各接触面に形成された段部に基づき、この段部の領域で各接触面がそれぞれ本発明に基づく支持面25を形成しており、ねじ状ピニオン軸4にトルクが加えられていないか、または比較的小さなトルクしか加えられていない限りは、各支持面25と、各ねじりウェブ17の隣接する側との間に所定の間隔が形成されることになる。例えば約0.05mmであってもよいこの間隔に基づき、ねじりウェブ17の有効長さは、最大長さひいては付属する2つの境界線24の間のそのときどきの間隔に相当することになる。ねじりウェブ17の、この比較的大きな有効長さに基づき、歯車2と接触した結果、ねじ状ピニオン3の変位に基づき幾何学形状的に生じるねじ状ピニオン軸4のばね弾性的な接触の剛性は、操舵伝動装置のこの状態では比較的低くなっている。
【0035】
これに対してねじ状ピニオン軸4が、ねじ状ピニオン軸4に結合された駆動装置(図示せず)を介して(比較的大きな)トルクを加えられると、ねじ状ピニオン3のねじ山状の歯列に基づき、ねじ状ピニオン軸4の長手方向に作用する力も生ぜしめられ、この力は実質的に、専ら旋回リング14を介してのみ、ハウジング1に支持される。なぜならば、ねじ状ピニオン軸4とハウジング1の固定側軸受6の領域との間の結合は、専ら旋回リング14を介してのみ生ぜしめられている一方で、可動側軸受8の軸受装置12は、ねじ状ピニオン軸4の長手方向に関してハウジング1の内部で可動に支持されているからである。この場合、ねじ状ピニオン軸4の長手方向に作用する力の向きは、ねじ状ピニオン軸4が駆動装置により回転させられる回転方向に関連しており、したがって、想定された、自動車のステアリングを切る方向に左右される。
【0036】
ねじ状ピニオン軸4に作用する長手方向力をハウジング1に伝達するねじりウェブ17の変形に基づき、この変形は、ねじ状ピニオン軸4の小さな長手方向移動を相応の方向に生ぜしめ、この小さな長手方向移動は、ねじ状ピニオン軸4に作用するトルクの高さひいてはこのトルクにより生ぜしめられる長手方向力に応じて、付属の支持面25に対するねじりウェブ17の対応する側の、支持面25に隣接する部分の部分的または完全な当接を生ぜしめ、これにより、ねじ状ピニオン軸4のばね弾性的な接触に基づくねじれを達成するために供与されるねじれウェブ17の有効長さは減少することになる。その結果、ねじ状ピニオン軸4の変位が変化させられないと、ねじりウェブ17のより小さくなった前記有効長さは、ねじりウェブ17の、相応してより大きくなったねじれひいてはねじ状ピニオン軸4のばね弾性的な接触の、比較的高い剛性を生ぜしめることになる。
【0037】
つまり結果的に、ねじ状ピニオン軸4に加えられるトルクがゼロであるか、または比較的低い場合には、特に操舵伝動装置を含む自動車が運転中といった場合であっても、ねじ状ピニオン3と歯車2との間の歯車対において、比較的小さなばね弾性的な接触ひいては摩擦をも達成することができる。このようにして達成された比較的低い摩擦は、操舵伝動装置の比較的高い効率だけでなく、特に快適に感じられる操舵感にもつながる。
【0038】
これに対して、パワーアシステッド操舵システムの駆動装置により比較的大きなアシスト出力がもたらされねばならない、特に自動車の停止状態や低速走行での操舵に当てはまるような場合には、ねじ状ピニオン軸4に加えられるトルクも相応に高く、これにより、支持面25に対するねじりウェブ17の対応する側の部分的な当接に基づき、ねじりウェブ17の有効長さが減少することで、ねじりウェブ17のねじれが増大した結果、比較的大きな剛性を有するばね弾性的な接触が実現されることになり、このことはねじ状ピニオン3と歯車2との間の歯車対における摩擦の相応の増大に伴って生じるが、通常、問題はないと見なされる。むしろ同時に、伝動装置遊びと、これに基づき生じる、欠点であると感じられるノイズ発生も、適宜有効に回避または減少されることになる。
【0039】
ねじ状ピニオン軸4に加えられるトルクに応じた、ねじりウェブ17の有効長さの変化の効果をさらに強めることができるようにするためには、対応する支持面25が、旋回リング14の外側リング16の緊締部の領域のみならず、旋回リング14の内側リング15の緊締部の領域にも設けられていてもよい。この場合、支持面25は内側リング15の緊締部の領域に、外側リング16の緊締部の領域の支持面25に相応して形成されていてもよく、したがって、ねじ状ピニオン軸4にトルクが加えられていない限りは、例えばねじりウェブ17の対応する側に付属する部分に対して実質的に一定の間隔をおいてひいては平行に延在していてもよい。
【0040】
これに対して図面には、個々のねじりウェブ17の一方の側だけに設けられているに過ぎない支持面25の、1つの択一的な構成が示されている。支持面25は、ねじ状ピニオン軸4に荷重が加えられていない状態では、ねじりウェブ17の対応する側に対して斜めに延在しており、さらに湾曲した延在部を有していてもよく、ピニオン軸4に想定される最大の作動トルク加えられている場合には、前記支持面25により形成される曲率半径は、好適には対応する支持面25とねじりウェブ17との間の最大間隔aと、ねじりウェブ17の、前記支持面25に隣接して延在している部分の長さbとから計算により得られる、付属するねじりウェブ17の曲率半径よりも大幅に大きくなっている。このようにして、個々のねじりウェブ17の有効長さは、ねじ状ピニオン軸4に作用するトルクの増大にほぼ比例しては減少しない、ということが達成され得る。
【0041】
ねじ状ピニオン軸4に作用するトルクの増大に際する、ねじりウェブ17の有効長さの減少と共に生じる別のポジティブな効果は、前記のように実質的に専ら、ねじ状ピニオン軸4に作用するトルクに基づき生じた長手方向力の支持だけを担っているねじりウェブ17の改良された耐久性にある。それというのも、有効長さの減少に伴って、ねじ状ピニオン軸4の長手方向でのねじりウェブ17の変位も減少するからであり、このことは特に、ねじりウェブ17に加えられる交番荷重に基づき、有利な影響を及ぼすことになる。
【符号の説明】
【0042】
1 ハウジング
2 歯車
3 ねじ状ピニオン
4 ねじ状ピニオン軸
5 被駆動軸
6 固定側軸受
7 旋回軸線
8 可動側軸受
9 固定側軸受の転がり軸受
10 可動側軸受の転がり軸受
11 固定側軸受の軸受装置
12 可動側軸受の軸受装置
13 軸受スリーブ
14 旋回リング
15 旋回リングの内側リング
16 旋回リングの外側リング
17 ねじりウェブ
18 ねじ状ピニオン軸/軸受スリーブの長手方向軸線
19 支持ディスク
20 中間ディスク
21 押圧部材
22 ねじ
23 ねじリング
24 ねじりウェブの境界線
25 支持面
図1
図2
図3
図4
図5