(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成形治具は、前記第1管部材よりも大径の仮想円に外接する複数の押し当て部を有し、前記複数の押し当て部を、前記仮想円の周方向に沿って互いに離間して配置する請求項1に記載の管部材のかしめ接合方法。
前記コイルの通電前に、前記成形治具に支持された前記押し当て部を径方向内側に押し込み、前記第1管部材を径方向内側に変形させる請求項3に記載の管部材のかしめ接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、互いに径が異なり、軸方向垂直断面が円形の第1管部材と第2管部材とを成形治具の内側で電磁成形により拡管させ、各部材を相互にかしめて接合する、管部材のかしめ接合方法を説明する。
【0011】
<電磁成形時の各部材の配置>
図1は電磁成形前の第1管部材、第2管部材、電磁成形コイル、及び成形治具の配置を説明する断面図である。図中のZ方向は垂直方向、X,Y方向は水平方向であり、X方向は第1管部材11と第2管部材13の軸方向である。Y方向はX方向とZ方向に直交する方向である。
【0012】
第1管部材11には、一方の軸端21から、第1管部材11よりも小径な第2管部材13の一方の軸端14が挿入される。これにより、第1管部材11と第2管部材13とが径方向に重なり合った重なり部15が形成される。
【0013】
重なり部15の外周には成形治具17が配置される。成形治具17は第1管部材11よりも大径の孔部17aが形成されている。
【0014】
第2管部材13の管内には、電磁成形用のコイル19が配置される。
図1に示すコイル19は、導体が巻き回されたコイル本体である導体巻き回し部を表している。このコイル19は、例えば不図示の支持棒にコイル本体を取り付け、支持棒と共に第2管部材13の管内に挿入することで、第2管部材13の管内で軸方向に位置決めされる。コイル19の配置形態はこれに限らず、成形治具17と軸方向に関して一体に位置決めされる不図示の支持機構を備える構成等、他の形態であってもよい。
【0015】
また、第1管部材11と第2管部材13とは、重なり部15から軸方向に所定距離を隔てた位置に配置された不図示の支持部材によって、それぞれ同心に支持される。
【0016】
<第1管部材>
第1管部材11の成形前の素管は、円管に限らず、断面が正方形又は長方形の四角管、断面が六角形の六角管、断面が八角形の八角管であってもよく、押出や板材の溶接により製造できる。第1管部材11の断面形状が円形である場合には、第2管部材も同様に円形断面にする等、互いに相似形状にして成形することが好ましいが、相似でない異形断面同士を組み合わせてもよい。
【0017】
第1管部材11の材質は、鋼材(普通鋼、高張力鋼)、アルミニウム合金(JIS6000系、7000系等)、樹脂等、適宜選択可能である。
【0018】
<第2管部材>
第2管部材13の成形前の素管は、第1管部材11と同様であり、円管に限らず、断面が正方形又は長方形の四角管、断面が六角形の六角管、断面が八角形の八角管であってもよく、押出や板材の溶接により製造できる。また、押出材の場合は、内径側に突出するリブ等を設けてもよい。第2管部材13の材質は、電磁拡管が可能なアルミニウム合金(JIS6000系、7000系等)が好適な材料として挙げられる。第1管部材と第2管部材とは同じ材質であってもよく、互いに異なる材質であってもよい。
【0019】
<成形治具>
成形治具17は、電磁成形時にコイル19からの励起磁界により第2管部材13にローレンツ力が発生した際の、第1管部材11及び第2管部材13からの押し当て力を受け止める剛性を有する。本構成の成形治部17は板材で構成され、その材質としては、鋼(例えばSS400等)、アルミ押出材、アルミ鋳物、樹脂射出成形材等が好適な材料として挙げられる。
【0020】
<コイル>
コイル19は、絶縁性樹脂に導体素線を巻き回して形成され、導体素線の周りを絶縁性樹脂で更に取り囲んだ構造を有する。コイル19は、不図示の支持体の先端に固着される。支持体の内部には導体が配線され、コイル19が外部の電源部に接続される。コイル19と支持体とを有する棒状のコイルユニットは、手動又は公知のリニア移動機構等により、第2管部材13の管内に挿入され、所望の配置位置に位置決め固定される。
【0021】
<各部の寸法>
第1管部材11の外径をφDout、内径をφdout、第2管部材13の外径をφDin、内径をφdinとし、成形治具17の孔部17aの内径をφdpとし、コイル19の外径をφDcとする。各径は、φdp>φDout、φdout>φDin、φdin>φDcの関係を有する。また、各部材はそれぞれ同心に配置され、それぞれ周方向に沿って略一定の径方向隙間を有する。
【0022】
また、コイル19のコイル軸方向(X方向)長さをLc、重なり部15の軸方向長さをLk、成形治具17の軸方向幅(板厚)をWとする。第1管部材11の重なり部15側の管端21は、成形治具17の孔部17aから軸方向外側に突出させている。管端21が、成形治具17の端面(開口面17b)から軸方向外側に向けた突出長さをSとする。各寸法はLc>Lk>W+S>Wの関係を有する。成形治具17の軸方向幅Wは、第1管部材11,第2管部材13の径にもよるが、例えば30〜50mm程度に設定される。また、管端21の突出長さSは、成形治具17の軸方向幅Wが40mmの場合で、5mm程度に設定される。
【0023】
コイル19の導体巻き回し部の軸方向長さLcと、成形治具17の軸方向幅Wと、の比Lc/Wの下限値は、好ましくは1.0、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.5である。また、比Lc/Wの上限値は、好ましくは3、より好ましくは2.8、更に好ましくは2.5である。これによれば、コイル19(導体巻き回し部)が、成形治具17の軸方向幅W以上の範囲に配置されるため、第1管部材11と第2管部材13の成形治具17の両脇側で、確実に膨張部(
図4の27,29参照)を形成できる。
【0024】
コイル19の巻き回し部の軸方向中心位置Ocと、重なり部15の軸方向長さLkの中心位置と、成形治具17の軸方向幅Wの中心位置とは、それぞれX方向に関して同じ位置に配置される。
【0025】
[第1構成例]
第1構成例の成形治具17のように、成形治具17が一枚の板材である場合は、電磁成形後に第1管部材11と第2管部材13と一体になる。
【0026】
<成形治具の形状>
図2は第1構成例の成形治具17の外観斜視図である。
本構成の成形治具17は孔部17aが形成された板状部材であって、孔部17aの開口面17b,17cに、水平断面で円弧状に窪んだ一対の凹部23a,26bが形成されていることが好ましい。凹部23a,23bは、孔部17aの少なくとも一部を含んで形成され、
図2にはZ方向に連続する円弧溝として示している。各凹部23a,23bの円弧の曲率中心は、
図2に示すように孔部17aの中心軸と一致していてもよく、一致していなくてもよい。また、各凹部23a,23bが互いにY方向にずれて形成されていてもよい。
【0027】
成形治具17に凹部23a,23bを形成した場合、孔部17aの内周面においては、成形治具17の軸方向幅Wが、孔部17aの円周位置に応じて異なる幅となる。即ち、孔部17aのY方向両端の内周面における軸方向幅W1よりも、孔部17aのZ方向両端の内周面における軸方向幅W2が小さい(W1>W2)。この場合、孔部17aの内周面では、周方向に沿って軸方向幅がW1〜W2の間で連続的に変化する。
【0028】
<電磁成形方法>
図3は
図1に示す第1管部材11と第2管部材13の重なり部15を電磁成形した様子を示す平面図である。
【0029】
第2管部材13の管内にコイル19を挿入し、コイル19の通電により第2管部材13を電磁拡管する。コイル19には、不図示の電源部から、例えば16kJ程度のエネルギーが瞬間的に投入され、コイル19に対面する第2管部材13に渦電流が励起される。この渦電流によって第2管部材13に径方向外側へ向かうローレンツ力が発生し、このローレンツ力によって第2管部材13が拡管される。
【0030】
第2管部材13が拡管すると、第2管部材13の拡管変形に追従して第2管部材13の外周に配置される第1管部材11が径方向外側に向けて拡管する。第1管部材11の外周面は、成形治具17の孔部17aの内周面に当接して拡管が抑制され、第1管部材11の両脇部では更に拡管が進む。これにより、第1管部材11と第2管部材13の重なり部15には、成形治具17の孔部17aを挟んだ両脇側の、コイル19の軸方向長さLcと重なる領域において、径方向外側に膨出した膨張部27,29が形成される。
【0031】
膨張部27,29は、電磁成形により第1管部材11と第2管部材13とが同時に変形して形成され、互いの接合面が密着した状態で成形治具17にかしめられる。これにより、第1管部材11と、第2管部材13と、成形治具17とが一体にされた接合構造体が得られる。
【0032】
なお、成形治具17が、複数の金型をボルト等の締結部材により分解可能な割り型である場合には、成形治具17を電磁成形後に第1管部材11と第2管部材13から取り外しすることができる。その場合、電磁成形後に複数の金型を分解することで、第1管部材11と第2管部材13とが一体に接合された接合構造体が得られる。このような割り型としては、複数の金型を組み合わせた際に、第1管部材11より大径の孔部が形成されるものであればよい。また、複数の金型同士の間には、周方向隙間が設けられていてもよい。その場合、各金型の第1管部材11と対面する部位が、第1管部材11よりも大径の仮想円に外接するように配置されていればよい。
【0033】
図4は電磁成形後に成形治具17を除去した第1管部材11と第2管部材13との接合体を示す概略斜視図である。
図示例のように、第1管部材11と第2管部材13との接合体には、膨張部27,29が形成され、各膨張部27,29の内側で第1管部材11と第2管部材13とがかしめ固定される。
【0034】
<電磁成形の効果>
次に、上記した第1管部材11と第2管部材13との電磁成形による効果を説明する。
図5の(A)〜(C)は電磁成形によって第1管部材11と第2管部材13が成形治具17の孔部17aの端部において、径方向外側に向けて変形する様子を段階的に示す工程説明図である。
【0035】
図5の(A)に示すように、電磁成形の開始直後には、第2管部材13に作用するローレンツ力によって、第2管部材13が拡管して第1管部材11の内周面に衝突し、更に第2管部材13の拡管によって、第1管部材11の外周面が成形治具17の孔部17aの内周面に押し当てられる。
【0036】
さらに、
図5の(B)に示すように、第2管部材13は、成形治具17に支持されない部分((B)の右側部分)がローレンツ力によって拡管される。これに伴い、第1管部材11の管端21から成形治具17までの間の突出部31は、第2管部材13の拡管によって、第2管部材13に密着しながら径方向外側に押し広げられる。このとき、第1管部材11の管端21は、膨張部39の最大径部よりも成形治具17側で第2管部材13の斜面33の途中に位置し、斜面33に沿って変形する。
【0037】
そして、電磁成形の完了後には、
図5の(C)に示すように、第1管部材11の突出部31と第2管部材13のスプリングバック量Δθ1,Δθ2は、略等しくなり、第1管部材11と第2管部材13との間に隙間が生じることがない。具体的には、管端21は、突出部31の弾性復元力によって第2管部材13側(径方向内側)に付勢され、管端21と斜面33とは常に密着するようになる。
【0038】
図6は第1管部材11の管端21を成形治具17の孔部17aから突出させない従来の第1管部材11Aの電磁拡管の様子を示す参考図である。
図6に示す場合には、第2管部材13の電磁成形後のスプリングバック量Δθが、
図5の(C)に示すスプリングバック量Δθ2よりも大きい。これは、第1管部材11Aの突出部31が存在しない分、第2管部材13の曲げ剛性が小さくなり、第2管部材13の電磁拡管時の変形量が大きくなることで、スプリングバック量Δθも大きくなるためである。
【0039】
図6に示す場合には、スプリングバック後の第1管部材11Aの管端21部分で、第1管部材11Aと第2管部材13との間に隙間が生じやすくなり、この隙間は、周方向にもバラつきを生じる。その結果、ガタつきや、かしめ不良の発生を招くことになる。
【0040】
一方、
図5の(C)に示すように、成形治具17の角部となる第1管部材11の内周面と第2管部材13の外周面との間に、スプリングバック差による隙間が生じにくく、管端21での密着性が全周にわたって向上して、良好なかしめ接合形態となる。
【0041】
また、
図2,
図3に示すように、成形治具17の孔部17aの周方向に沿った少なくとも一部に、成形治具17の板厚が変化する部位を設けた場合、拡管時における第1管部材11と成形治具17の孔部17aとの当接領域は、
図4にドットパターンで示す当接領域Aとなる。この当接領域Aは、円周方向に異なる軸方向幅(
図2に示すW1,W2(W1<W2)参照)を有する。したがって、当接領域Aの幅広の部分と幅狭の部分とでは、第1管部材11と第2管部材13の拡径の変形パターンが異なり、周方向に沿って拡径する度合いが変化する。つまり、この場合の電磁成形では、真円のまま拡管するのではなく、楕円状等の周方向に局部的に大きく拡管する変形が生じる。
図4に示す場合は、軸方向幅W1を含む周方向領域では、軸方向幅W2を含む周方向領域よりも大径に拡管する。
【0042】
このように、拡管後の第1管部材11と第2管部材13との重なり部15において、周方向に拡管径が大径となる部位と小径となる部位が混在すると、この大径と小径になった部材がアンカーとなって、第1管部材11と第2管部材13との間の、周方向の耐荷重性を向上させる。よって、この電磁成形によれば、かしめ接合形態を良好に保ちつつ、ねじり強度も向上できる。
【0043】
図7はコイルへの入力エネルギーと、電磁成形により得られた接合構造体の強度との関係を、電磁拡管時の成形治具の軸方向幅W毎に示したグラフである。
【0044】
図7によると、成形治具の軸方向幅Wが40mmの場合、最大引張強度が9kN程度であるが、軸方向幅Wを30mm、20mmと狭くするほど、最大引張強度が向上する。特に、軸方向幅Wを40mmから30mmに変更した際に顕著な強度向上が認められた。
【0045】
[第2構成例]
図8は第2構成例の成形治具17Aの概略断面図である。
第2構成例の成形治具17Aは、第1管部材11の径方向外側に配置される複数(本構成では4つ)の押し当て部51と、複数の押し当て部51を第1管部材11の径方向に移動自在に支持するブロック支持体53と、を備える割り型構造の治具である。
【0046】
ブロック支持体53は、不図示のベースに固定される基台部55と、基台部55と一体に形成された下側支持部57と、下側支持部57に不図示のボルト等の締結部材によって固定される上側支持部59とを有する。ブロック支持体53には、下側支持部57に上側支持部59を固定した際に、下側支持部57の凹部57aと上側支持部59の凹部59aによって孔部53aが形成される。第1管部材11及び第2管部材13は、この孔部53aの径方向内側に配置され、不図示の管部材支持機構によって互いに同心となるように、径方向位置が調整される。
【0047】
押し当て部51は、支持軸61と、接触ブロック63とを備える。支持軸61は、下側支持部57と上側支持部59に、それぞれ孔部53aの径方向に沿って移動自在に支持される。接触ブロック63の径方向内側には、第1管部材11の外周面に対峙する当接面63aを有する。当接面63aは、軸方向(第1管部材11の軸方向)の垂直断面が第1管部材11の外周面に沿った円弧状に形成されることが好ましいが、平面や他の曲率の曲面であってもよい。
【0048】
下側支持部57及び上側支持部59の接触ブロック63の両脇側には、それぞれ一対のピン穴65,67が形成される。各ピン穴65,67には、ピン67が挿入される。ピン67は、接触ブロック63の径方向移動をガイドする。
【0049】
支持軸61は、不図示の押し込み機構に接続され、押し込み機構の駆動によって径方向への進退動作が可能になっている。この押し込み機構としては、油圧シリンダ、ねじ等を用いた機械式の加圧機構等、適宜のものを使用できる。押し込み機構は、接触ブロック63を径方向に駆動して、接触ブロック63の当接面63aが第1管部材11の外周面と同芯になるように配置させる。
【0050】
図8には、押し当て部51が、第1管部材11の中心軸Oを中心として、円周方向に90°間隔で配置されているが、これに限らない。例えば、押し当て部51を円周方向に120°間隔で配置した構成、180°間隔で配置した構成等、他の構成であってもよい。
【0051】
<電磁成形方法>
上記構成の成形治具17Aを用いて電磁成形を実施する場合、前述した第1構成例と同様に、第2管部材13の管内にコイル19(
図1参照)を挿入し、コイル19の通電により第2管部材13を電磁拡管する。第2管部材13が拡管されると、第2管部材13の拡管変形に追従して第1管部材11が径方向外側に向けて拡径される。これにより、第1管部材11と第2管部材13とが共に径方向外側に膨出した膨張部が形成される。
【0052】
そして、成形治部17Aの場合、接触ブロック63同士の間で、周方向に隙間が形成されるため、この隙間に第1管部材11及び第2管部材13が径方向外側に突出した膨張部が形成される。これにより、管部材同士のねじり強度を向上できる。
【実施例】
【0053】
第2構成例の成形治具17Aを用いて第1管部材と第2管部材とを電磁成形した結果を以下に説明する。
【0054】
図9は
図8に示す接触ブロック63、第1管部材11、第2管部材13の配置位置を模式的に示す説明図である。
ここで、接触ブロック63の当接面63aと第1管部材11の外周面との間の径方向距離をL1とし、第1管部材11の内周面と第2管部材13の外周面との間の径方向距離をL2とする。
【0055】
径方向距離L1,L2と、電磁拡管する際の入力エネルギーを変更した実験例1〜6の成形条件を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
使用した第1管部材、第2管部材の諸元は次のとおりである。
・第1管部材
材質:A6063−T5
形状:円管パイプ状
厚さ:2.0 [mm]
・第2管部材
材質:A6063−T5
形状:円管パイプ状
厚さ:2.0 [mm]
【0058】
表1に示すように、実験例1では、電磁成形前の径方向距離L1を1.0[mm]、径方向距離L2を1.5[mm]とし、入力エネルギーを12.8[kJ]、14.5[kJ]、16.2[kJ]の3種類として、それぞれ電磁成形を実施した。これにより、第1管部材と第2管部材に膨張部を形成した接合体を得た。なお、接触ブロックの第1管部材と当接する当接面の軸方向幅Wは30[mm]とした。同様に、実験例2〜6の各条件でも電磁成形を実施して膨張部を有する接合体を得た。
【0059】
ここで、実験例1〜4では、電磁成形前に接触ブロックと第1管部材との間に隙間を設けている。実験例5では、電磁成形前に接触ブロックによって第1管部材を径方向内側へ変形させており、接触ブロックと第1管部材との当接位置において、第1管部材と第2管部材との間の隙間を無くしている。また、実験例6では、電磁成形前に接触ブロックによって第1管部材及び第2管部材を共に、径方向内側へ変形させている。
【0060】
次に、第1管部材と第2管部材とに膨張部を形成した接合体を、軸方向に引張る引張試験を実施し、得られる応力―ひずみ線図から引張ピーク荷重を求めた。その結果を
図10と表1に示す。
【0061】
実験例1〜4の引張ピーク荷重は、最大でも実験例3の24.780[kJ]であったが、実験例5,6では、いずれも27[kJ]を超える引張ピーク荷重が得られた。特に、第1管部材と第2管部材との間の径方向距離L2を小さくすることで、顕著な引張ピーク荷重の増加が認められた。
【0062】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0063】
以上のとおり、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 第1管部材と該第1管部材よりも小径の第2管部材を準備する工程と、
前記第1管部材よりも大径の孔部が形成された成形治具を準備する工程と、
前記第1管部材の管内に前記第2管部材を挿入して、前記第1管部材と前記第2管部材との重なり部を形成し、前記成形治具の前記孔部の径方向内側に前記重なり部を配置して、前記第1管部材の前記重なり部側の管端を前記孔部から軸方向外側に突出させる工程と、
軸方向長さが前記重なり部よりも長い導体巻き回し部を有するコイルを、前記第2管部材の管内における前記重なり部の軸方向位置に挿入する工程と、
前記コイルに通電して前記第2管部材を電磁拡管させ、前記第1管部材と前記第2管部材を同時に拡径させた膨張部を形成し、且つ前記膨張部の最大径部よりも前記成形治具側で、前記第1管部材の管端を前記第2管部材の斜面に沿って拡径させる工程と、
を備える管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、電磁成形により第2管部材を電磁拡管し、第1管部材を拡径させた際に、第1管部材の管端が第2管部材の膨張部の斜面に沿って形成される。これにより、第1管部材と第2管部材との間に隙間が生じず、ガタつきやかしめ不良の発生を防止でき、管部材同士の接合強度が向上する。
【0064】
(2) 前記孔部の周方向に沿った少なくとも一部に、前記孔部の内周面における軸方向幅が変化する部位を設ける(1)に記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、電磁拡管した拡管部は、周方向に拡管径が大径となる部位と小径となる部位が混在し、第1管部材と第2管部材との間で周方向の耐荷重性を高められる。これにより、管部材同士のねじり強度が向上する。
【0065】
(3) 前記成形治具は、前記第1管部材よりも大径の仮想円に外接する複数の押し当て部を有し、前記複数の押し当て部を、前記仮想円の周方向に沿って互いに離間して配置する(1)に記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、第2管部材の電磁拡管時に、周方向に隙間を有する分割ブロックに第1管部材が押し当てられる。すると、第1管部材の分割ブロックと当接する位置では、当接後の拡管が抑制され、第1部材の分割ブロックに当接しない位置では、分割ブロックの内周面よりも径方向外側に向けて拡管される。よって、第1管部材と第2管部材には、周方向に沿って、拡管量が小さい部位(分割ブロック配置位置)と拡管量が大きい部位(分割ブロック非配置位置)とが交互に形成される。これにより、第1管部材と第2管部材との間で周方向の耐荷重性が高められる。これにより、管部材同士のねじり強度が向上する。
【0066】
(4)前記コイルの通電前に、前記成形治具に支持された前記押し当て部を径方向内側に押し込み、前記第1管部材を径方向内側に変形させる(3)に記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、電磁成形前に第1管部材を径方向内側に変形させることで、第1管部材と第2管部材と間の距離が短くなり、第2管部材の電磁拡管による第1管部材の変形代が増加して、双方の接合強度が更に向上する。
【0067】
(5) 前記コイルの通電前に、前記押し当て部を、前記第2管部材が径方向内側に変形するまで更に押し込む(4)に記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、第2管部材の電磁拡管による拡管力が第1管部材に直接伝播されるため、第1管部材と第2管部材の膨出量が増大し、双方の接合強度が更に向上する。
【0068】
(6) 前記コイルの前記導体巻き回し部の軸方向長さLcと、前記孔部の内周面における軸方向幅Wとの比Lc/Wを1〜3にする(1)に記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、コイルが、成形治具の軸方向幅以上の範囲に配置されるため、第1管部材と第2管部材の成形治具の両脇側で、確実に膨張部を形成できる。
【0069】
(7) 前記第1管部材と前記第2管部材の少なくとも一方は、T1調質されたアルミニウム合金である(1)〜(6)のいずれか1つに記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、管部材の高温加工から冷却後、自然時効させることで、強度を向上できる。
【0070】
(8) 前記第1管部材と前記第2管部材は、熱処理型のアルミニウム合金であり、
前記電磁拡管後にT5調質を行う(1)〜(6)のいずれか1つに記載の管部材のかしめ接合方法。
この管部材のかしめ接合方法によれば、溶体化処理後に自然時効させることで、残留応力が低減され、接合強度が向上した管部材が得られる。
【解決手段】第1管部材11の管内に第2管部材13を挿入して形成される重なり部15の径方向外側に、成形治具17の孔部17aを配置する。第1管部材11の重なり部15側の管端21を孔部16aから軸方向外側に突出させる。軸方向長さが重なり部15よりも長い導体巻き回し部を有するコイル19を第2管部材13の管内に挿入し、第2管部材13を電磁拡管して、第1管部材11と第2管部材13を同時に変形させた膨張部を形成する。これにより、膨張部の最大径部よりも成形治具17側で、第1管部材11の管端を第2管部材13の斜面に沿って拡径させる。