(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂(S)を含む樹脂層、アミノ基、アジド基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基(Zα)と、シラノール基、及び加水分解反応によりシラノール基を生成させる基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基(Zβ)とを有する分子接着剤を含む分子接着剤層、及び、保護フィルム、がこの順に直接積層されてなる接着シートであって、
前記樹脂(S)は、前記分子接着剤の反応性基(Zα)と化学結合を形成し得る反応性部分構造(Zγ)を有し、
前記保護フィルムが、分子接着剤層と接する側の面に少なくとも1以上の凸部が存在するエンボス表面を有するものである接着シート。
前記分子接着剤層は、前記分子接着剤が有する反応性基(Zα)と前記樹脂(S)が有する反応性部分構造(Zγ)との化学結合により、前記分子接着剤が、前記樹脂層に化学的に固定されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の接着シート。
前記分子接着剤が有する反応性基(Zα)が、アジド基であって、前記樹脂(S)が有する反応性部分構造(Zγ)が、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、及び炭素−水素単結合からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の接着シート。
前記樹脂層上に前記分子接着剤層を形成し、次いで、形成された分子接着剤層上に前記保護フィルムを重ねる工程を有する接着シートの製造方法により得られる、請求項1〜11のいずれかに記載の接着シート。
請求項1〜12のいずれかに記載の接着シートを構成する保護フィルムを剥離し、露出した分子接着剤層を被着体に圧着することを特徴とする、樹脂層/分子接着剤層/被着体の層構造を有する積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、1)接着シート、及び、2)積層体の製造方法、に項分けして詳細に説明する。
【0015】
1)接着シート
本発明の接着シートは、樹脂(S)を含む樹脂層、アミノ基、アジド基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基(Zα)と、シラノール基、及び加水分解反応によりシラノール基を生成させる基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基(Zβ)とを有する分子接着剤を含む分子接着剤層、及び、保護フィルム、がこの順に直接積層されてなるものである。
前記樹脂(S)は、前記分子接着剤の反応性基(Zα)と化学結合を形成し得る反応性部分構造(Zγ)を有する。
前記保護フィルムは、分子接着剤層と接する側の面に少なくとも1以上の凸部が存在するエンボス表面を有するものである。
本発明において、「分子接着剤を含む分子接着剤層」の「分子接着剤を含む」とは、「分子接着剤及び/又は分子接着剤由来の化合物(例えば、反応を経て、反応性基の構造が変化した化合物)を含む」を意味するものである。
また、「樹脂(S)は、前記分子接着剤の反応性基(Zα)と化学結合を形成し得る反応性部分構造(Zγ)を有する」とは、樹脂層上に分子接着剤層が形成される前の状態を表したものである。分子接着剤層が形成された後の樹脂層においては、樹脂(S)は、反応性部分構造(Zγ)及び/又は反応性部分構造(Zγ)由来の構造を有する。
【0016】
〔樹脂層〕
本発明の接着シートを構成する樹脂層は、樹脂(S)を含有する層である。
本発明の接着シートにおいて、樹脂層は、分子接着剤を固定する役割を担う。
なお、本明細書において、まだ他の層が積層されていない状態(樹脂フィルム等の原材料の状態)であっても、接着シートの製造方法等を説明する中で、それを「樹脂層」と表すことがある。
【0017】
樹脂(S)は、前記分子接着剤の反応性基(Zα)と化学結合を形成し得る反応性部分構造(Zγ)を有する。
樹脂(S)が反応性部分構造(Zγ)を有することで、分子接着剤層を効率よく形成することができる。
【0018】
樹脂(S)が有する反応性部分構造(Zγ)としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アミノ基、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−水素単結合等が挙げられる。これらは、分子接着剤中の反応性基(Zα)に合わせて適宜選択することができる。
例えば、前記分子接着剤が有する反応性基(Zα)が、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である場合、反応性部分構造(Zγ)としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
また、前記分子接着剤が有する反応性基(Zα)が、アジド基である場合、反応性部分構造(Zγ)としては、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、及び炭素−水素単結合からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0019】
樹脂(S)としては、分子接着剤を固定する樹脂層を形成し得るものであれば特に限定されない。樹脂(S)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド;ポリイミド;ポリアミド;アクリル樹脂;シクロオレフィン樹脂;フッ素樹脂;ウレタン樹脂;等が挙げられる。
樹脂(S)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
これらの中でも、樹脂(S)は、23℃におけるヤング率が1×10
8〜1×10
10Paのものが好ましい。このような樹脂(S)を用いることで、接着性により優れる接着シートが得られ易くなる。
【0021】
樹脂(S)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アミノ基等の官能基を反応性部分構造(Zγ)として有する樹脂(S’)である場合、樹脂(S’)中のこれらの反応性部分構造(Zr’)は、公知の方法により形成することができる。
例えば、重合反応を行う際に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、アミノ基等の官能基を有する単量体を使用したり、重合反応を行って得られた重合体に、無水マレイン酸変性等の変性処理を施したりすることにより、反応性部分構造(Zγ’)を形成することができる。
【0022】
また、樹脂(S’)の前駆体である樹脂を含有する層(s1)に対して、表面処理を施すことにより、その層(s1)の表面に樹脂(S’)を生成させてもよい。
表面処理としては、ヒドロキシ基やカルボキシ基を生じさせるものであれば、特に限定されない。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理、エキシマ紫外線処理、酸処理、及び塩基処理等が挙げられる。
これらの表面処理は、公知の方法に従って行うことができる。
【0023】
樹脂層は、樹脂(S)以外の成分を含有していてもよい。樹脂(S)以外の成分としては、分子接着剤層との密着性を阻害しない成分および含有量であれば適切なものを使用しても良い。そのようなものとして紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。
【0024】
樹脂層中の樹脂(S)の含有量は、樹脂層全体を基準として、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
樹脂層の厚さは、特に限定されない。樹脂層の厚さは、通常、2〜4000μmであり、5〜1000μmが好ましく、10〜600μmがより好ましく、15〜400μmが更に好ましい。
【0026】
樹脂層の形成方法は特に限定されない。
樹脂層に含まれる樹脂(S)が、炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−水素単結合を反応性部分構造(Zγ)として有する樹脂(S”)である場合、通常、市販の樹脂フィルムをそのまま樹脂層として用いることができる。
また、樹脂(S”)を適当な有機溶媒で希釈して塗布液を調製し、これを、支持体、工程シート、剥離シート等の表面に塗布し、得られた塗膜に対して乾燥処理や硬化処理を施すことにより、樹脂層を形成することもできる。
【0027】
樹脂層に含まれる樹脂(S)が、上記の樹脂(S’)である場合、例えば、以下の(a)〜(d)のいずれかの方法により、樹脂層を形成することができる。
(a)樹脂(S’)の前駆体である樹脂を含有する層(s1)として市販の樹脂フィルムや樹脂シートを用い、層(s1)に前述の表面処理を施すことにより、樹脂(S’)を含む樹脂層を形成する。
(b)樹脂(S’)の前駆体である樹脂を適当な有機溶媒で希釈して塗布液を調製し、これを、支持体、工程シート、剥離シート等の表面に塗布し、得られた塗膜に対して乾燥処理や硬化処理を施すことにより、層(s1)を形成する。次いで、この層(s1)に前述の表面処理を施すことにより、樹脂(S’)を含む樹脂層を形成する。
(c)樹脂(S’)を含む市販の樹脂フィルムや樹脂シートをそのまま樹脂層として用いる。
(d)樹脂(S’)を適当な有機溶媒で希釈して塗布液を調製し、これを、支持体、工程シート、剥離シート等の表面に塗布し、得られた塗膜に対して乾燥処理や硬化処理を施すことにより、樹脂層を形成する。
【0028】
〔分子接着剤層〕
本発明の接着シートを構成する分子接着剤層は、アミノ基、アジド基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基(Zα)と、シラノール基、及び加水分解反応によりシラノール基を生成させる基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性基(Zβ)とを有する分子接着剤を含むものである。
【0029】
分子接着剤中の反応性基(Zα)は、樹脂層中の樹脂(S)の反応性部分構造(Zγ)と化学結合を形成し得るものである。
本発明の接着シートにおいては、この化学結合により、分子接着剤は樹脂層表面に化学的に固定されると考えられる。このときの化学結合としては、共有結合、水素結合、イオン結合、分子間力等が挙げられるが、共有結合が好ましい。
【0030】
加水分解反応によりシラノール基を生成させる基としては、Si−X
1で表される部分構造を有する基が挙げられる。X
1としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;が挙げられる。
【0031】
分子接着剤中の反応性基(Zβ)は、主に、本発明の接着シートを被着体に接着する際に、被着体との間で化学結合を形成する際に利用される。したがって、本発明の接着シートは、これらの基との反応性が高い基を表面に有する被着体に対して好ましく用いられる。
【0032】
分子接着剤としては、下記式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0034】
(R
1は、反応性基(Zα)、又は、反応性基(Zα)を1以上有する1価の基(ただし、反応性基(Zα)そのものを除く。)を表し、Aは2価の有機基を表し、Xは、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Yは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。aは、1〜3の整数を表す。)
【0035】
R
1の反応性基(Zα)を1以上有する1価の基としては、例えば、下記式(2)〜(4)で表される基が挙げられる。
【0037】
式(2)〜(4)中、*は、Aとの結合手を表す。
R
2は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、好ましくは炭素数2〜6の2価の炭化水素基を表す。R
2の2価の炭化水素基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基等のアリーレン基;が挙げられる。
【0038】
R
3、R
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
R
3、R
4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基等のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。
【0039】
Zは、単結合、又は、−N(R
7)−、で表される2価の基を表す。R
7は、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R
7の炭化水素基としては、R
3、R
4の炭化水素基として示したものと同様のものが挙げられる。
R
5、R
6は、それぞれ独立に、反応性基(Zα)又は前記式(2)で示される基を表す。
【0040】
Aの2価の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニレン基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基;等が挙げられる。
【0041】
Aの炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
Aの炭素数2〜20のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。
Aの炭素数2〜20のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等が挙げられる。
Aの炭素数6〜20のアリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基等が挙げられる。
【0042】
前記アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
【0043】
前記アリーレン基の置換基としては、シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;等が挙げられる。
これらの置換基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の基において任意の位置に結合していてよく、同一若しくは相異なって複数個が結合していてもよい。
【0044】
Xの炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
Yの炭素数1〜20の炭化水素基としては、R
3、R
4の炭化水素基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0045】
R
1がアミノ基である分子接着剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、トリメチル[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、トリメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0046】
R
1がアジド基である分子接着剤としては、(11−アジドウンデシル)トリメトキシシラン、(11−アジドウンデシル)トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
R
1がメルカプト基である分子接着剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等が挙げられる。
【0048】
R
1がイソシアネート基である分子接着剤としては、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
R
1がウレイド基である分子接着剤としては、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
R
1がエポキシ基である分子接着剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
R
1が反応性基(Zα)を1以上有する1価の基である分子接着剤としては、例えば、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、下記式(5)〜(13)で示される化合物が挙げられる。
【0053】
これらの化合物の中で、式(1)で示される化合物としては、R
1が式(4)で示される基である化合物が好ましく、式(5)〜(13)で示される化合物がより好ましく、式(5)〜(10)で示される化合物がさらに好ましい。
これらの化合物においては、R
1にトリアジン環を有する。トリアジン環を有する分子接着剤は、樹脂層上により効率よく固定される傾向がある。
【0054】
これらの分子接着剤の多くは、シランカップリング剤として公知の化合物である。また、R
1が式(4)で示される基である化合物は、WO2012/046651号、WO2012/043631号、WO2013/186941号等に記載の方法に従って合成することができる。
【0055】
用いる分子接着剤は、その反応性基(Zα)と、樹脂(S)の反応性部分構造(Zγ)との組み合わせを考慮して、適宜選択することができる。
例えば、反応性基(Zα)が、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である場合、反応性部分構造(Zγ)としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルデヒド基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
なかでも反応性基(Zα)と反応性部分構造(Zγ)の好ましい組み合わせ〔反応性基(Zα)/反応性部分構造(Zγ)〕としては、(アミノ基/ヒドロキシ基)、(アミノ基/カルボキシ基)、(イソシアネート基/ヒドロキシ基)、(イソシアネート基/カルボキシ基)、(ヒドロキシ基/カルボキシ基)等が挙げられる。
【0056】
また、分子接着剤が、反応性基(Zα)としてアジド基を有するものである場合、後述するように光が照射されることによりアジド基が活性化される。この場合、反応中間体であるナイトレンは炭素−炭素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−水素単結合と反応し得るため、アジド基を有する分子接着剤を用いる場合、樹脂(S)の種類は特に限定されない。
【0057】
分子接着剤層の形成方法は特に限定されない。例えば、分子接着剤を含有する分子接着剤溶液を調製し、この溶液を用いて公知の方法により、樹脂層上に分子接着剤層を形成することができる。
【0058】
分子接着剤溶液を調製する際に用いる溶媒は特に限定されない。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン等の含ハロゲン化合物系溶媒;ブタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン等のアミド系溶媒;水;等が挙げられる。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
分子接着剤溶液中の分子接着剤の濃度は、特に限定されない。その濃度は、好ましくは0.005〜1.000mol/L、より好ましくは0.050〜0.500mol/Lである。分子接着剤の濃度を0.005mol/L以上とすることで、分子接着剤を被塗布体に効率的に形成することができる。また1.000mol/L以下とすることで分子接着剤溶液の意図しない反応を抑制することができ、溶液の安定性に優れる。
【0060】
分子接着剤層の形成方法としては、浸漬法、塗布法、噴霧法等が挙げられるが、これらの中でも、生産性の観点から塗布法が好ましい。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ディップコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられるが、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法が好ましい。
【0061】
塗布方法を選択した場合は、自然乾燥や乾燥機構への投入による乾燥処理が必要となるが、乾燥機構への投入による乾燥処理を行うことが生産性の向上の観点から好ましい。当該乾燥機構としては、例えば、エアーオーブンといったバッチ式の乾燥機構、並びにヒートロール、ホットエアースルー機構(開放式の乾燥炉内を被乾燥体が移動、通過しながら、送風を受けつつ加熱・乾燥される設備等)といった連続式の乾燥機構等が挙げられる。
なお、これら乾燥機構の一部としても用いることができる装置、例えば、高周波加熱、オイルヒーター等の熱媒循環式ヒーター、及び遠赤外線式ヒーター等のヒーター自体も乾燥機構として用いることができる。これらの中でも生産性の向上の観点からホットエアースルー機構が好ましい。
当該乾燥機構で調整される乾燥温度は、通常、20〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは65〜150℃、特に好ましくは80〜120℃である。乾燥時間は、通常、1秒から120分、好ましくは5秒から10分、より好ましくは10秒から5分、特に好ましくは20秒から3分である。
【0062】
分子接着剤層においては、分子接着剤の反応性基(Zα)と樹脂(S)の反応性部分構造(Zγ)との化学結合により、分子接着剤が樹脂層に固定されていると考えられる。
したがって、分子接着剤層を形成する際は、通常、分子接着剤を樹脂層に固定する処理(以下、固定処理ということがある。)が行われる。固定処理は、分子接着剤の反応性基(Zα)の特性に応じて適宜選択することができる。通常は、分子接着剤を樹脂層上に塗布することにより化学結合が生成し、加熱することにより化学結合の生成が促進するため、加熱処理を行うことが生産性の向上の観点から好ましい。加熱温度は、通常、40〜250℃、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜120℃である。加熱時間は、通常、1秒から120分、好ましくは1〜60分、より好ましくは1〜30分である。
加熱方法としては、特に限定されず上述の乾燥機構と同様の機構及び装置を用いることができる。
【0063】
アジド基のように、反応性基(Zα)が光反応性を有する場合、固定処理としては光照射処理が行われる。照射する光としては、通常、紫外線が用いられる。この場合は、乾燥処理の後に固定処理を行うことが、(Zα)と(Zγ)との反応性を向上させる観点から好ましい。
紫外線の照射は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED、無電極ランプ等の光源を使用した紫外線照射装置を用いて行うことができる。
【0064】
分子接着剤層の形成時において、塗布と乾燥処理と固定処理とを複数回繰り返し行ってもよい。
【0065】
分子接着剤層は、後述する各性能を損なわない程度の量で、分子接着剤以外の成分を含有するものであってもよい。分子接着剤以外の成分としては、触媒等が挙げられる。
【0066】
分子接着剤層中の分子接着剤の含有量は、接着に関与しない成分が含まれると、接着力が低下することから分子接着剤層全体を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0067】
分子接着剤層の厚さは、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。また分子接着剤層の厚さは、1nm以上が好ましい。
【0068】
〔保護フィルム〕
本発明の接着シートを構成する保護フィルムは、分子接着剤層上に設けられるものである。保護フィルムは、本発明の接着シートの製造後、使用されるまでの間、分子接着剤層を保護する役割を有する。
【0069】
本発明に用いる保護フィルムは、分子接着剤層と接する側の面に少なくとも1以上の凸部が存在するエンボス表面を有するものである。
このようなエンボス表面を有しない、平滑な保護フィルム(以下、「平滑保護フィルム」ということがある。)を有する接着シートにおいては、平滑保護フィルムと分子接着剤層の接触が全体的に起こり得るため、分子接着剤の反応性基(Zβ)は平滑保護フィルムを構成する化合物と反応し易い状態にあり、接着シートの保管中に多くの反応性基(Zβ)が失活し、分子接着剤層の接着力が低下することがあった。
【0070】
一方、保護フィルムとして、上記のエンボス表面を有するものを用いると、保護フィルムと分子接着剤層の接触を一部のみにすることができ、多くの部分で、保護フィルムと分子接着剤層の間に隙間を生じさせることができる。この結果、接着シートの保管中に失活する反応性基(Zβ)の量を低減することができ、分子接着剤層の接着力の低下を抑制することができる。
【0071】
目的のエンボス表面を有する保護フィルムは公知の方法により形成することができる。
例えば、保護フィルムの材料となるフィルム(以下、「フィルム(A)」ということがある。)をエンボスロールと弾性ロールの間を通過させ、エンボスロール周面の形状をフィルム(A)に反映させることにより、目的のエンボス表面を有する保護フィルムを製造することができる。
また、スクリーン印刷法等の印刷技術を利用してフィルム(A)上に、フィルム(A)と同じ材質もしくは異なる材質からなる凸部を設けることにより、目的のエンボス表面を有する保護フィルムを製造することができる。
【0072】
凸部が存在するエンボス表面としては、平面上に、半球状、円柱状、三角柱状、四角柱状、円錐状、三角錐状、四角錘状、縞状等の突起が多数形成されたものが挙げられる。
凸部の高さは特に限定されないが、通常、10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。
凸部の面積の合計の保護フィルム全体に対する割合は特に限定されないが、通常、3〜50%、好ましくは5〜30%である。
【0073】
保護フィルムの厚さは特に限定されない。保護フィルムの厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜60μm、特に好ましくは10〜45μmである。
【0074】
〔接着シート〕
本発明の接着シートは、前記樹脂層、前記分子接着剤層、及び、前記保護フィルム、がこの順に直接積層されてなるものである。
本発明の接着シートは、前記樹脂層の片側のみに、分子接着剤層を有するものであってもよいし、前記樹脂層の両側に、分子接着剤層を有するものであってもよい。
【0075】
本発明の接着シートは、樹脂層、分子接着剤層、保護フィルム以外の層を有するものであってもよい。
樹脂層、分子接着剤層、保護フィルム以外の層としては、支持体が挙げられる。
すなわち、樹脂層がある程度の厚さを有する場合は、樹脂層は支持体としての機能も有するが、樹脂層が薄すぎる場合は、別途支持体を設けることが好ましい。
【0076】
支持体としては、上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、グラシン紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートして得られるラミネート基材;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の樹脂製基材;金属箔;等が挙げられる。
【0077】
本発明の接着シートとしては、例えば、下記の層構造を有するものが挙げられる。
樹脂層/分子接着剤層/保護フィルム
支持体/樹脂層/分子接着剤層/保護フィルム
支持体/分子接着剤層/樹脂層/分子接着剤層/保護フィルム
分子接着剤層/樹脂層/支持体/樹脂層/分子接着剤層/保護フィルム
【0078】
本発明の接着シートの製造方法は特に限定されない。なかでも、上記方法に従って、樹脂層上に分子接着剤層を形成し、次いで、形成された分子接着剤層上に保護フィルムを、分子接着剤層と保護フィルムのエンボス表面を有する面とが対向するように重ねることにより製造することが好ましい。
【0079】
2.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、本発明の接着シートを構成する保護フィルムを剥離し、露出した分子接着剤層を被着体に圧着することを特徴とする、樹脂層/分子接着剤層/被着体の層構造を有する積層体の製造方法である。
【0080】
分子接着剤層と被着体との間の接着は、通常、分子接着剤中の反応性基(Zβ)が、被着体を構成する化合物中の官能基と反応し、化学結合が形成することにより行われる。
したがって、通常、被着体としては、反応性基(Zβ)との反応性を有する基をその表面に有するものが用いられる。
そのような被着体としては、ガラス、無機酸化物、シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、表面にこれらの成分を含有しないものであっても、表面処理を施して、反応性基(Zβ)との反応性を有する基を含む層を表面に設けることにより、被着体として用いることができる。
【0081】
本発明の積層体の製造方法においては、分子接着剤層と被着体とを十分に密着させることが好ましい。分子接着剤層を被着体に圧着する際の温度T
p(℃)は特に限定されないが、下記式(I)を満たすことが好ましい。
【0083】
T
gは、樹脂層のガラス転移温度(℃)を表し、T
sは、樹脂層の軟化点(℃)を表す。Hは40である。
【0084】
上記式(I)において、Hの値は、好ましくは30、より好ましくは20、さらに好ましくは0である。
【0085】
圧着する際の圧力は、通常、0.1〜3.0MPa、好ましくは0.5〜1.5MPaである。
また、樹脂層、又は被着体の少なくとも一方の、圧着する際の温度T
p(℃)におけるヤング率は、好ましくは1×10
6〜1×10
9Pa、より好ましくは1×10
7〜9×10
8Pa、更に好ましくは1×10
8〜8×10
8Paである。
【0086】
これらの要件を満たす条件下で分子接着剤層を被着体に圧着することで、分子接着剤層と被着体とを十分に密着させることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0088】
〔製造例1〕
無延伸ポリエチレンテレフタレートシート(帝人株式会社製、厚さ280μm)に対して、コロナ処理機(信光電気計測株式会社製、製品名「コロナ・スキャナー ASA−4」、出力電圧;9kV(表面電圧)、発振周波数:20kHz)にてコロナ照射を行い、樹脂層(1)を得た。
【0089】
〔製造例2〕
WO2012/046651号に記載の方法に従って、6−(3−トリエトキシシリルプロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアジド(前記式(10)で示される化合物)を含有する分子接着剤溶液(1)(溶媒:エタノール、濃度0.1g/L)を得た。
【0090】
〔製造例3〕
ポリイソブチレン系樹脂(BASF社製、製品名「OppanolB50」、質量平均分子量34万)100部と、ポリイソブチレン系樹脂(BASF社製、製品名「OppanolB30」、質量平均分子量20万)10部と、水素化石油樹脂(荒川化学工業株式会社、製品名「アルコンP−125」、軟化点125℃)20部と、トルエンを混合してポリイソブチレン系樹脂溶液(溶媒:トルエン、濃度20%)を調製した。
別途用意したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、製品名「ルミラー」、厚さ75μm)に対して、コロナ処理機(信光電気計測株式会社製、製品名「コロナ・スキャナー ASA−4」、出力電圧;9kV(表面電圧)、発振周波数:20kHz)にてコロナ照射を行った。
次いで、このポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ照射を行った面に、上記のポリイソブチレン系樹脂溶液を、直径500μm、高さ50μmの円柱状の凸部が複数形成するようにスクリーン印刷機にて塗布し、次いで、このものを100℃で2分間乾燥して、凸部の総面積が全体の10%である保護フィルム(1)を得た。
【0091】
〔製造例4〕
製造例3において、円柱状の凸部の密度を変えたことを除き、製造例3と同様にして、凸部の総面積が全体の20%である保護フィルム(2)を得た。
【0092】
〔製造例5〕
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、製品名「ルミラー」、厚さ75μm)の片面に、ピッチが200μm、線幅が40μm、高さが50μmの縞状のエンボス加工を幅方向と平行となる方向に施した。
次いで、このポリエチレンテレフタレートフィルムのエンボス加工を行った面に、シリコーン系剥離剤を塗布し、得られた塗膜を100℃で30秒乾燥し、さらに紫外線照射装置(ヘレウス株式会社製、製品名「ライトハンマー 10 MARK II」、光源:水銀ランプ)を用いて、下記の条件で紫外線照射を行い、厚さが0.1μmの剥離剤層を形成して、保護フィルム(3)を得た。保護フィルム(3)において、凸部の総面積は全体の15%である。
(紫外線照射条件)
紫外線照射条件は、照度84mW/cm
2、光量100mJ/cm
2とし、当該照度及び光量は照度・光量計(EIT社製、製品名「UV Power Puck II」)を用いてUVCの領域の照度および光量を測定した。
【0093】
〔製造例6〕
製造例3において、ポリエチレンテレフタレートフィルムの全面にポリイソブチレン系樹脂溶液を塗布したことを除き、製造例3と同様にして保護フィルム(4)を得た。
【0094】
各実施例及び比較例において、各層の形成材料として以下の製品等を使用した。
<樹脂層>
樹脂層(1):製造例1で得た表面処理済み樹脂フィルム
<分子接着剤溶液>
分子接着剤溶液(1):製造例2で調製した溶液
<保護フィルム>
保護フィルム(1):製造例3で得た保護フィルム
保護フィルム(2):製造例4で得た保護フィルム
保護フィルム(3):製造例5で得た保護フィルム
保護フィルム(4):製造例6で得た保護フィルム
保護フィルム(5):剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381130」、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン系剥離剤を積層したもの)
【0095】
〔実施例1〕
樹脂層(1)に、分子接着剤溶液(1)をディッピング法にて5秒間浸漬塗布し、得られた塗膜を100℃で30秒乾燥させた。
次いで、紫外線照射装置(ヘレウス株式会社製、製品名「ライトハンマー 10 MARK II」、光源:水銀ランプ)を用いて、この塗膜に紫外線を照射することにより固定処理を行い、樹脂層(1)と分子接着剤層からなる積層体を得た。
なお、紫外線照射条件は、照度84mW/cm
2、光量29mJ/cm
2とし、当該照度及び光量は照度・光量計(EIT社製、製品名「UV Power Puck II」)を用いてUVCの領域の照度および光量を測定した。
次いで、得られた積層体の分子接着剤層上に、保護フィルム(1)を重ね、接着シートを得た。
【0096】
〔実施例2〜3、比較例1〜2〕
樹脂層、分子接着剤溶液、保護フィルムとして、第1表に記載のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0097】
〔残留接着強度評価〕
実施例及び比較例で作製した接着シートに、0.5MPaの圧力を面方向にかけて3日間静置した。次いで、接着シートを縦25mm×横300mmの大きさに切断した後、その保護フィルムを取り除き、露出した分子接着剤層をガラスと接触させ、このものを160℃、0.85MPaで10分間プレスし、残留接着強度測定用のサンプルを作製した。
このサンプルを23℃、50%RH(相対湿度)の環境下24時間静置後、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、各接着シートの接着力を測定した。
保護フィルムを設けることなく、分子接着剤層を形成した後そのままガラスと接触させプレスして得られたサンプルの接着力を100とした時の、実施例及び比較例の接着力を残留接着強度として算出した。結果を第1表に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
第1表から、以下のことが分かる。
実施例1〜3で得られた接着シートにおいては、製造から24時間経過後においても十分な接着力を有している。
一方、分子接着剤層と接する側の面に凸部を有しない保護フィルムを用いた比較例1、2では、接着力が大きく低下している。