(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のプレス装置では、以下に示すような問題点を有している。
特許文献1のプレス装置を用いて所望のモーションを設定する場合、実際にワークを用いて試験的にプレス加工する必要があるためワークに無駄が生じていた。また、実際にプレス加工を行う場合には、コイルフィーダ等も用意し、プレス装置とコイルフィーダ間の高さ合わせも必要となるため、非常に手間がかかっていた。さらに、所望のモーションが一回のプレスによって得られない場合には、試験的なプレス加工を複数回行う必要があるため使用するワークの数も増え、コストが嵩むことになる。
【0006】
本発明の目的は、上記従来のプレス装置の課題を考慮して、コストを抑え且つ容易にスライドの動作を設定可能なプレス装置、プレス装置の制御方法、およびプレス装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るプレス装置は、上金型および下金型を用いてワークをプレス加工するプレス装置であって、スライドと、ボルスタと、サーボモータと、制御部とを備える。スライドは、上金型が取り付けられる。ボルスタは、下金型が載置される。サーボモータは、スライドを上下方向に往復動作させる。制御部は、下金型に載置したワークへの上金型の接近を検出する検出部によって上金型のワークへの接近が検出されると、スライドの速度を変更するようにサーボモータを制御する。
【0008】
このような構成により、作業者は、ワークを下金型上に載置しなくても、パルスハンドル等でスライドを微速で下方に動かし、ワークの厚みを考慮した上で上金型がワークに接近する位置を目視で確認しながら検出部の位置を調整できる。
これにより、調整の際に用いるワークの使用を低減でき、適切な位置でスライドの速度を変更するようにスライドの動作を設定できる。
【0009】
なお、ワークを下金型上に載置した状態で、スライドを下方に微速で動かして検出部の調整を行っても良く、この場合であってもプレス加工の前に行うため、調整の際に用いるワークの使用を低減できる。
さらに、上記のようにプレス加工前に検出部の位置調整を目視で確認しながら精度よく行えるため、たとえ試験的にプレス加工を行ったとしても従来よりも回数を減らすことが出来、コストを抑制できる。
【0010】
ここで、上金型のワークへの接近とは、上金型がワークに接触する位置よりも所定距離手前の位置のことである。また、所定距離とは、プレスに適切な速度に変更できる距離のことである。すなわち、プレスする際に速度を遅く変更する場合は、ワークに接触するまでに所望の遅い速度に減速することが可能な距離のことであり、速度を速く変更する場合は、ワークに接触するまでに所望の速い速度に加速することが可能な距離のことである。
【0011】
第2の発明に係るプレス装置は、第1の発明に係るプレス装置であって、検出部によって上金型のワークへの接近が検出された際の変更後の速度を設定する検出後速度設定部を更に備えている。
これにより、作業者は、上金型がワークに接近した後の速度を所望の速度に設定できるため、プレス加工の際の速度を適切に設定できる。
【0012】
第3の発明に係るプレス装置は、第2の発明に係るプレス装置であって、検出部は、上金型のワークへの接近後、上金型がワークの近傍に位置している状態も検出する。検出後速度設定部は、検出部によって上金型がワークの近傍に位置していることが検出されている間の速度を設定する。
これにより、上金型が下方に移動しワークに接近してから下死点に到達するまでだけでなく、下死点から上金型が上昇してワークから離間し、ワーク近傍から離れるまでの間の速度も変更できる。このため、ワークの跳ね上がりなどを抑制できる。
【0013】
第4の発明に係るプレス装置は、第3の発明に係るプレス装置であって、検出部によって上金型がワークの近傍に位置しているとの検出が行われていない間のスライドの速度を設定する動作設定部を更に、備えている。制御部は、プレス加工におけるスライドの下方への移動の際、上金型の前記ワークへの接近が検出されるまでは、動作設定部で設定された速度でスライドを下方に移動し、上金型のワークへの接近が検出されると、スライドの速度を検出後速度設定部によって設定された速度に変更して下方に移動する。制御部は、スライドの上方への移動の際、上金型のワーク近傍からの離間が検出されるまでは、検出後速度設定部によって設定された速度でスライドを上方へ移動させ、上金型のワーク近傍からの離間が検出されると、スライドの速度を動作設定部で設定された速度にして上方に移動する。
これにより、スライドが上下移動する際の速度、上昇する際の速度および下降する際の速度を作業者が自由に設定できる。
【0014】
第5の発明に係るプレス装置は、第1の発明に係るプレス装置であって、選択部を更に備えている。選択部は、検出部によって上金型のワークへの接近が検出された際に、スライドの速度を変更する制御を行うか否かを設定する。
これによって、検出部によってスライドの上金型への接近を検出した後に速度の変更を行うか否かを設定できる。すなわち、作業者は、速度変更の有効・無効を切り替えることができる。また、作業者は、ワークの種類等によっては、無効にすることで速度を変更せずにプレス加工を行うことができる。
【0015】
第6の発明に係るプレス装置は、第1の発明に係るプレス装置であって、スライドの往復動作の完了を検出する動作完了検出部を更に備えている。検出部は、スライドの往復動作中に上金型のワークへの接近を検出しない場合に、正常に動作していないと判断される。
これによって、スライドの往復動作中に検出部による検出がされていないことがわかるため、検出部に異常が生じていることが判断できる。
【0016】
第7の発明に係るプレス装置は、第1の発明に係るプレス装置であって、検出部は、近接センサを有している。近接センサは、上金型または下金型に取り付けられている。
これにより、上金型のワークへの接近の検出を行うことができる。
【0017】
第8の発明に係るプレス装置は、第1の発明に係るプレス装置であって、検出部は、下金型に載置されたワークの上方近傍を撮像する撮像部と、撮像された画像を処理することで上金型のワークへの接近が検出する画像処理部と、を有する。
これにより、上金型へのワークへの接近の検出を行うことができる。
また、第8の発明の撮像部は、金型が変わっても画像処理によって上金型がワークに近づいたことを検出できるため、上記近接スイッチと比較して金型ごとに取り付ける必要がない。このように撮像部をプレス装置に一つ設けるだけでよいため、より好ましい。
【0018】
第9の発明に係るプレス装置の制御装置は、ボルスタ上に取り付けられる下金型に載置されるワークに対して、上金型が取り付けられるスライドをサーボモータによって上下方向に動作させてワークをプレス加工するプレス装置の制御装置であって、制御部を備えている。制御部は、スライドに取り付けられた上金型のワークへの接近が検出する検出部によって、上金型のワークへの接近が検出されると、スライドの速度を変更する制御を行う。
これにより、ワークの使用を抑制し、適切な位置でスライドの速度を変更するようにスライドの動作を設定できる。
【0019】
第10の発明のプレス制御方法は、ボルスタ上に取り付けられる下金型に載置されるワークに対して、上金型が取り付けられるスライドをサーボモータによって上下方向に動作させてワークをプレス加工するプレス装置の制御方法であって、検出工程と、変更工程とを備えている。検出工程は、スライドに取り付けられた上金型のワークへの接近を検出する。変更工程は、上金型のワークへの接近が検出されると、スライドの速度を変更する。
【0020】
これにより、ワークの使用を抑制し、適切な位置でスライドの速度を変更するようにスライドの動作を設定できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コストを抑え且つ容易にスライドの動作を設定可能なプレス装置、プレス装置の制御方法、およびプレス装置の制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のプレス装置について図面を参照しながら以下に説明する。
<1.構成>
(1−1.プレス装置の外観構成)
図1は、本発明にかかる実施の形態のプレス装置1の全体概要を示す模式図である。
本実施の形態のプレス装置1は、サーボモータを用いたサーボプレス装置である。
【0024】
図1に示すように、プレス装置1の本体フレーム2の略中央に、スライド3が上下移動可能に支持されている。スライド3の下面3aには、上金型8a(後述する
図3参照)が取り付けられる。
スライド3の下方には、ボルスタ5が設けられており、ベッド4上に固定されている。ボルスタ5の上面5aに下金型8b(後述する
図3参照)が取り付けられる。
サイドフレーム11の側方には、制御装置6が設けられている。制御装置6には、作業者が動作の設定等を行うためのコントロールパネル61などが設けられている。
【0025】
(1−2.プレス装置の内部構成)
図2Aは、プレス装置1の内部構成を示す図である。図に示すように、プレス装置1には、サーボモータ21が設けられている。また、サーボモータ21の動力によってスライド3を上下方向に移動させる構成として、主に、コンロッド9、メインシャフト10、メインギア15と、動力伝達軸16が設けられている。
【0026】
コンロッド9は、コンロッド本体80と、ダイハイト調整用のねじ軸70を有している。ねじ軸70の下端には、球体部71が設けられており、スライド3の上部に設けられた球状孔3sに回転自在に挿入されている。このように、球状孔3sと球体部71によって球状継手が構成されている。ねじ軸70の上部は、上方に向かってスライド3から露出しており、ねじ軸70の上部には、ネジ部72が形成されている。ネジ部72は、コンロッド本体80の雌ねじ部81に螺合している。このように、コンロッド9は、ねじ軸70およびコンロッド本体80によって伸縮自在に構成されている。
【0027】
メインシャフト10は、コンロッド9の上部に設けられている。コンロッド9の上部は、メインシャフト10に設けられたクランク状のエキセン部10aに回転自在に連結されている。メインシャフト10は、前後方向に沿って配置されている。メインシャフト10は、本体フレーム2を構成する左右一対の板状のサイドフレーム11間において、前後方向に配置された3つの軸受部12、13、14で支持されている。エキセン部10aは、軸受部12と軸受部13の間に設けられている。
【0028】
メインギア15は、メインシャフト10の軸受部13と軸受部14の間に取り付けられている。
動力伝達軸16は、メインギア15の下方に設けられている。動力伝達軸16は、前後方向に沿って配置されており、前後2箇所に設けられている軸受部17、18で回転可能に支持されている。動力伝達軸16の軸受部17と軸受部18の間には、ギア161が設けられており、ギア161はメインギア15と噛み合っている。また、動力伝達軸16の後端には、プーリ19が設けられている。
【0029】
サーボモータ21は、ブラケット22によってサイドフレーム11の間に支持されている。サーボモータ21の出力軸21aは、前後方向に沿って配置されている。出力軸21aに設けられたプーリ23とプーリ19の間には、ベルト24が巻き回されている。このベルト24によって、サーボモータ21の回転が、メインギア15へと伝達される。
また、プレス装置1には、スライド3の上下位置を検出するための位置検出器26が設けられている。位置検出器26は、ロッド27と、位置センサ28を有している。ロッド27は、スライド3の背面側に設けられている。ロッド27は、スライド3の上下2箇所から後方向に突出した一対のブラケット25に取り付けられている。ロッド27には、スライド3の上下位置を検出するためのスケールが設けられている。ロッド27は、位置センサ28に上下方向に移動可能に嵌挿されている。
【0030】
位置センサ28は、一対のサイドフレーム11のうち一方に設けられた補助フレーム29に固定されている。補助フレーム29は、縦長形状であり、上下方向に沿って配置されている。補助フレーム29の下部は、ボルト31によってサイドフレーム11に固定されており、上部は、ボルト32によってサイドフレーム11に上下動可能に支持されている。ここで、ボルト32は、補助フレーム29に形成された長穴に嵌められているため、補助フレーム29の上部は上下方向に移動可能となっている。これは、補助フレーム29がサイドフレーム11の温湿度による影響を受けないようにするためである。
【0031】
また、プレス装置1には、
図2Bに示すように、スライド3のスライド位置およびダイハイトを調整するためにスライド位置調整機構33が設けられている。スライド位置調整機構33は、スライド3のスライド位置およびダイハイトを調整する機構である。スライド位置調整機構33は、
図2Bに示すように、ウォームホイール34と、ウォームギア35と、入力ギア36と、インダクションモータ38(
図2A参照)とを有する。ウォームホイール34は、ねじ軸70の球体部71の外周にピン73を介して取り付けられている。ウォームホイール34と噛み合っているウォームギア35の端に入力ギア36が設けられており、入力ギア36と、
図2Aに示すインダクションモータ38の出力ギア37が噛み合っている。インダクションモータ38が回転することによって、出力ギア37およびウォームギア35が回転し、ウォームホイール34が駆動されてスライド3の位置が調整される。
【0032】
(1−3.近接センサ)
次に、本実施の形態のプレス装置1に取り付けられる近接センサ100(検出部の一例)について説明する。この近接センサ100は、上金型8aがワークWに接近したことを検出するものであり、この検出によってスライド3の速度が変更されるよう制御が行われる。
【0033】
図3(a)は、本実施の形態のプレス装置1を模式的に示す図である。
図3(b)は、上金型8aの側面を示す模式図である。
図3(a)は、
図2の構成の概略を示しており、サーボモータ21の動力がベルト24によってメインギア15に伝達され、メインギア15の回転がコンロッド9によって上下方向の動作に変換され、スライド3が上下移動される構成を示している。また、
図2では説明していなかったが、メインギア15には、メインギア15の回転角度を検出するための回転エンコーダ110が設けられている。
【0034】
また、図に示すように、スライド3の下面3aに上金型8aが取り付けられ、ボルスタ5の上面5aに下金型8bが取り付けられている。そして、上金型8aに近接センサ100(検出部の一例)が設けられている。下金型8bには、近接センサ100が検出する被検出体101が設けられている。被検出体101は、近接センサ100の種類にもよるが、例えば、金属片を用いればよい。
【0035】
この近接センサ100によって、ワークWに上金型8aが接近したことが検出される。
なお、近接センサ100はブラケット102を介して上金型8aに取り付けられている。また、被検出体101は下金型8bに直接取り付けられている。本実施の形態では、ブラケット102は、上金型8aに対して上下方向に調整出来るように移動可能に固定されている。例えば、
図3(a)に示すように、ブラケット102として、細長い板状の部材を2回L字状に曲げられた略Z形状の部材を用いることができる。
図3(b)に示すように、ブラケット102には上下方向に長穴102aが形成されており、ボルト104で締めることによってブラケット102は上金型8aに固定可能に構成されている。そして、ボルト104を緩めることによってブラケット102を上下方向(
図3(b)の矢印参照)に移動し、近接センサ100の位置を調整できる。また、被検出体101もブラケットなどを介して下金型8bに取り付けられていてもよい。
【0036】
そして、上金型8aが、下金型8bに載置されたワークWに接近した際に、近接センサ100が被検出体101を検出するように、近接センサ100および被検出体101の位置は調整されている。また、上金型8aがワークWに接近してから、上金型8aが下死点に到達するまでの間、常に近接センサ100が被検出体101を検出できるように被検出体101の上下方向に長さが設定されている。
【0037】
この近接センサ100は、複数の金型8(上金型8aおよび下金型8b)が存在する場合には、金型8ごとに取り付けられている。
ここで、近接センサ100は、ワークWの位置から距離d分上方の位置に上金型8aが到達すると検出するように設定されている。詳しくは後述するが、距離dは、近接センサ100によって検出されてからワークWに接触するまでの間に、上金型8aの下降速度を所望の速度に変更可能な距離に設定できる。
【0038】
(1−4.制御装置の構成)
図4は、本実施の形態のプレス装置1の制御装置6の構成を示すブロック図である。
また、制御装置6は、コントロールパネル61と、センサ入力部64、エンコーダ入力部65と、モータ指示部66、動作設定部67と、センサ入力後動作速度設定部68と、記憶部69と、有効・無効設定部90を有している。
【0039】
コントロールパネル61は、表示モニタ62と、入力部63を有している。入力部63は、スライド3の移動速度などのスライドモーションを設定するための各種データが入力される。表示モニタ62は、入力部63によって入力された入力データや設定完了し登録された設定データ等を表示する。表示モニタ62としては、例えば、タッチパネル等が用いられている場合は、入力部63と兼ねられている。
【0040】
センサ入力部64は、近接センサ100からの検出信号を受信する。スライド3が下降することによって近接センサ100が被検出体101を検出すると、その信号がセンサ入力部64へと送信される。
エンコーダ入力部65には、回転エンコーダ110によって検出された角度のデータが入力される。
【0041】
動作設定部67は、コントロールパネル61に入力されたスライド動作(スライドモーションともいう)を設定する。センサ入力後動作速度設定部68は、コントロールパネル61に入力された近接センサ100による検出が行われた後の動作速度を設定する。
記憶部69は、動作設定部67およびセンサ入力後動作速度設定部68によって設定されたスライドの動作を記憶する。
【0042】
モータ指示部66は、記憶部69に記憶されているスライド動作に基づいて、近接センサ100および回転エンコーダ110からの入力によって、サーボモータ21の動作を変更するようにサーボアンプ211を介して指令を送信する。
有効・無効設定部90は、センサ入力後動作速度設定部68によって設定された動作を、近接センサ100による検出の入力後に有効とするか無効とするかを設定する。
【0043】
(1−5.動作設定)
図5は、動作設定を行う画面の一例を示す図である。図に示すように、表示モニタ62には、動作設定画面D1と、有効無効選択画面D2と、センサ入力後動作設定画面D3が表示される。なお、この表示は別々に表示されてもよいし、同一の画面に表示されてもよい。この動作設定画面D1と、有効無効選択画面D2と、センサ入力後動作設定画面D3は、金型8の種類ごとに設けられている。
図5では、2種類の金型8(1)、8(2)について表示されている。
【0044】
動作設定画面D1には、回転エンコーダ110における目標角度と、目標角度に達するまでの速度(%)が入力される。ここで、金型8(1)の動作設定画面D1において、No.1として、目標角度が180°、速度100%と入力されているため、スライド3の上死点から下死点まで100%の速度で下降するように設定される。100%の速度とは予め設定された速度である。また、No.2として、目標角度が360°、速度100%と入力されているため、スライド3の下死点から上死点まで100%の速度で上昇するように設定される。ここで、入力されたデータに基づいて、動作設定部67がスライド3の動作設定を行い、その設定が記憶部69に記憶される。
【0045】
有効無効選択画面D2は、センサ入力後動作設定画面D3による設定を有効とするか無効とするかを選択するための画面である。この有効無効選択画面D2への入力によって、上述した有効・無効設定部90が、センサ入力後の動作を有効とするか無効とするかを設定する。
センサ入力後動作設定画面D3は、近接センサ100が被検出体101を検出した後に変更する速度を設定する画面である。D3では、種別として「モーメンタリ」と記載されており、これは近接センサ100が被検出体101を検出している間は、変更した速度を維持することを示している。また、速度オーバライドとして、50%が入力されている。すなわち、近接センサ100が被検出体101を検出している間、スライド3の速度が、100%の速度から50%の速度に変更されるように設定される。センサ入力後動作設定画面D3で入力されたデータに基づいて、動作設定部67がスライド3の動作設定を行い、その設定が記憶部69に記憶される。
なお、金型8(2)では、速度オーバライドは40%に設定されており、金型8(1)と異なっているが、同じ値であってもよい。
【0046】
<2.動作>
(2−1.近接センサ設定動作)
次に、近接センサ100の位置調整について説明する。
図6(a)および
図6(b)は、近接センサ100の調整を説明するための図である。
【0047】
図6(a)に示すように、上金型8aおよび下金型8bがプレス装置1に取り付けられる。そして、プレス装置1の電源をいれて、作業者が、スライド3をパルスハンドル等で下方に微速で動かす。なお、
図6(a)及び
図6(b)では、ワークWは載置されていないため仮想線として2点鎖線で示されている。
そして、下金型8bに載置されるワークWに上金型8aが接近する位置で、近接センサ100が被検出体101を検出するように、近接センサ100の位置が調整される。詳細には、
図6(b)に示すように、ワークWが載置されていると仮定して、下金型8bの上面からワークWの厚み+距離d分上方で近接センサ100が被検出体101を検出するように調整される。距離dは、変更前の速度と、変更後の速度と、速度変更の際の時定数等から、ワークWに接触するときに上金型8aの速度が所望の速度に変更し終わる距離として予め算出できる。なお、この距離dは、厳密なものでなくてもよく、所望の速度に変更し終わるために十分な距離に設定されてもよく、経験則から設定されてもよい。
【0048】
なお、近接センサ100の位置調整は、上述したブラケット102の位置を上金型8aに対して移動することで行われる。
このように近接センサ100の位置調整を行い、上金型8aがワークWに接近することを検出できる。
なお、上記
図6(a)および
図6(b)ではワークWを載置せずに、近接センサ100の位置調整を行っているが、ワークWを載置して行っても良い。
【0049】
(2−2.プレス動作)
次に、本実施の形態のプレス装置1の制御方法について、
図7〜
図9を参照しながら説明する。
図7は、本実施の形態のプレス装置1の制御方法を示すフロー図である。
図8(a)〜
図8(f)は、プレス加工時の動作を説明するための図である。
図9は、スライド3の位置と、センサ入力と、サーボモータ速度の関係を示す図である。なお、以下の動作では、
図5で示した金型8(1)で入力された動作設定に基づいてスライド3の動作が行われる。
【0050】
図8(a)に示すように、下金型8b上にワークWが載置されて、プレス運転が開始されると、制御装置6は、近接センサ100による検出が行われるかの監視を行う(ステップS10)。
スライド3が、
図5の動作設定画面D1での入力に従って、100%の速度で下降する。
【0051】
図8(b)に示すように、スライド3の下降により、近接センサ100が、被検出体101に接近してON状態(
図8参照)となり、上金型8aのワークWへの接近が検出される(ステップS11)。ここで、ワークWよりも距離d分上方の位置において、上金型8aのワークWへの接近が検出される。
近接センサ100からの検出の入力があると、オーバライド値が算出される(ステップS12)。詳細には、センサ入力部64への入力に従ってモータ指示部66が記憶部69に記憶されているセンサ入力後動作(
図5のセンサ入力後動作設定画面D3参照)の設定値を読み出す。ここでは、速度オーバライドは50%と設定されており、この値から変更する速度を算出する。この場合は、変更前の速度の2分の1であるため、現行の速度に2分の1をかけることで、変更する速度を算出できる。
【0052】
続いて、モータ指示部66は、サーボアンプ211にオーバライド指令を送り、サーボモータ21の速度を変更し、スライド3を50%の速度にする(ステップS13、
図9のポイントP1参照)。
続いて、スライド3が下降し、
図8(c)に示すように、上金型8aがワークWに接触するが、ワークWに接触するより所定距離d手前の位置で検出されている。そのため、接触する前には100%の速度から50%の速度に減速が完了しており、上金型8aのワークWへのスロータッチを実現できる。
【0053】
そして、
図8(d)に示すように、スライド3が下死点まで下降し、所定時間維持される(
図9の期間T参照)。
次に、
図8(e)に示すように、下死点からスライド3が上昇し、上金型8aがワークWから離間して、ワークWの上面から距離d分離れると、近接センサ100が被検出体101を検出しなくなる。なお、
図8(b)に示す状態から
図8(e)に示す状態まで近接センサ100は被検出体101を検出し続けている(ON状態である)ため、スライド3の速度は50%に保たれている。
【0054】
近接センサ100が被検出体101を検出しなくなると、近接センサ100はオフ状態となり、その旨の信号がセンサ入力部64に入力される(ステップS14)。ここで、上金型8aがワークWから離間する際も速度を遅く設定することにより、ワークWの跳ね上がりによるミスフィード防止に効果がある。
信号がセンサ入力部64に入力されると、モータ指示部66は、センサ入力後動作設定画面D3によって入力された指令を解除する(ステップS15)。解除後、動作設定画面D1によって入力された指令(No2:目標角度360°速度100%)に基づいて、スライド3の上昇速度が速くなるように変更してスライド3を上昇させる(
図8(f)参照、
図9のポイントP2参照)。
【0055】
なお、有効無効選択画面D2において、無効を選択した場合には、近接センサ100からの入力があった場合であっても、速度の変更(速度オーバライド)を行わないため、動作設定画面D1で入力された動作に従ってスライド3が上下移動する。すなわち、スライド3は上死点から下死点まで速度100%で下降し、下死点から上死点まで速度100%で上昇する。この時のスライドの移動状態が、
図9に点線で示されている。
【0056】
以上のように、ワークWをプレスする際の速度を遅くすることで、ワークの加工品質を向上させるとともに、加工する領域以外の速度を低速にしないことにより、生産効率の低下を抑制できる。
また、ワークWを載置せずに近接センサ100の位置調整を行うことができるため、調整の際のワークWの使用を低減できる。なお、ワークWを載置して近接センサ100の位置調整を行ってもよく、その場合であっても試し打ちを行う必要がないため、無駄なワークWの消費を防ぐことができる。
【0057】
なお、スライド3の速度変化時の加減速の時定数は、あらかじめ制御装置6の記憶部69内にパラメータテーブルとして格納されている。この時定数は、急減速による能力不足や振動などによって装置に負担がかからないように設定されている。
また、
図5で説明した有効無効選択画面D2において有効を選択しているにもかかわらず、回転エンコーダ110が0°〜360°まで検出しても、近接センサ100からの入力がない場合には、制御装置6は、近接センサ100が正常に動作していないと判断できる。これは、回転エンコーダ110が0°〜360°まで検出することによってスライドの一往復が検出されるため、その間に近接センサ100からの入力がない場合は、近接センサ100の故障を想定できるためである。
【0058】
<3.特徴>
(3−1)
上記実施の形態1のプレス装置1は、上金型8aおよび下金型8bを用いてワークWをプレス加工するプレス装置1であって、スライド3と、ボルスタ5と、サーボモータ21と、モータ指示部66(制御部の一例)とを備える。スライド3は、上金型8aが取り付けられる。ボルスタ5は、下金型8bが載置される。サーボモータ21は、スライド3を上下方向に往復動作させる。モータ指示部66は、下金型4bに載置したワークWへの上金型8aの接近を検出する近接センサ100(検出部の一例)によって上金型8aのワークWへの接近が検出されると、スライド3の速度を変更するようにサーボモータ21を制御する。
【0059】
このように、近接センサ100は、下金型8bに載置したワークWへの上金型8aの接近を検出する。このため、作業者は、ワークWを試験でプレス加工しなくても、スライド3を微速で下方に動かし、上金型8aがワークWに接近する位置を目視で確認しながら、当該位置で近接センサ100による検出が行われるように近接センサ100の位置を設定できる。
【0060】
これにより、ワークWの使用を低減でき、適切な位置でスライド3の速度を変更するようにスライド3の動作を設定できる。
ここで、上記実施の形態では、上金型8aがワークWに接触するより所定距離手前の位置で検出されるように近接センサ100を設置しているが、所定距離とは、例えば上記実施の形態では100%の速度から50%の速度に減速することが可能な距離のことである。これにより、上金型8aのワークWへのスロータッチを実現できる。
【0061】
なお、一般に、サーボモータを用いたプレス装置は、あらかじめ制御装置にプログラムされたモーションを読み出して、作成されたモーション通りの動きを行う。そのため、プログラムの実行がはじまった後で、異なるプログラムに切り替えて運転を継続することが困難である。
しかしながら、プレスラインにおける同期制御装置などの上位機器から制御するために設けられている速度オーバライド機構(実行プログラムに対して速度オーバライドをかけて速度をかえる手段)を活用することで、近接センサ100からの検出に基づいて、運転中に速度変化の要求を受け入れて急遽モーションを変更させることができる。
【0062】
(3−2)
また、上記実施の形態のプレス装置1は、近接センサ100(検出部の一例)によって上金型8aのワークWへの接近が検出された際の変更後の速度を設定するセンサ入力後動作速度設定部68(検出後速度設定部の一例)を更に備えている。
これにより、作業者は、上金型8aがワークWに接近した後の速度を所望の速度に設定できるため、プレス加工の際の速度を適切に設定できる。
【0063】
(3−3)
また、上記実施の形態のプレス装置1では、近接センサ100は、上金型8aのワークWへの接近後、上金型8aがワークWの近傍に位置していることも検出する。センサ入力後動作速度設定部68は、近接センサ100によって上金型8aがワークWの近傍に位置していることが検出されている間の速度を設定する。
これにより、上金型8aが下方に移動しワークWに接近してから下死点に到達するまでだけでなく、下死点から上金型8aが上昇してワークWから離間し、ワークW近傍から離れるまでの間の速度も変更できる。このため、ワークの跳ね上がりなどを抑制でき、ミスフィード等を低減できる。
【0064】
(3−4)
また、上記実施の形態のプレス装置1では、近接センサ100によって上金型8aがワークWの近傍に位置しているとの検出が行われていない間のスライド3の速度を設定する動作設定部67を更に、備えている。モータ指示部66(制御部の一例)は、プレス加工におけるスライド3の下方への移動の際、上金型8aのワークWへの接近が検出されるまでは、動作設定部67で設定された速度でスライド3を下方に移動し、上金型8aのワークWへの接近が検出されると、スライド3の速度をセンサ入力後動作速度設定部68によって設定された速度に変更して下方に移動する。モータ指示部66は、スライド3の上方への移動の際、上金型8aのワークW近傍からの離間が検出されるまでは、センサ入力後動作速度設定部68によって設定された速度でスライド3を上方へ移動させ、上金型8aのワークW近傍からの離間が検出されると、スライド3の速度を動作設定部67で設定された速度にして上方に移動する。
これにより、スライド3が下降する際の速度、上昇する際の速度、および加工する際の速度を作業者が自由に設定できる。
【0065】
(3−5)
また、上記実施の形態のプレス装置1は、有効・無効設定部90(選択部の一例)を更に備えている。有効・無効設定部90は、近接センサ100によって上金型8aのワークWへの接近が検出された際に、スライド3の速度を変更する制御を行うか否かを設定する。
これによって、近接センサ100によってスライド3の上金型8aへの接近を検出した後に速度の変更を行うか否かを設定できる。すなわち、作業者は、速度変更の有効・無効を切り替えることができる。また、作業者は、ワークWの種類等によっては、速度を変更せずにプレス加工を行うことができる。
【0066】
(3−6)
また、上記実施の形態のプレス装置1は、スライド3の往復動作の完了を検出する回転エンコーダ110(動作完了検出部の一例)を更に備えている。スライド3の往復動作中に近接センサ100によって上金型8aのワークWへの接近が検出されない場合に、近接センサ100が正常に動作していないとされる。
これによって、スライドの往復動作中に近接センサ100による検出がなされていないことがわかるため、近接センサ100に異常が生じていることを判断できる。
【0067】
(3−7)
また、上記実施の形態のプレス装置1の制御装置6は、ボルスタ5上に取り付けられる下金型8bに載置されるワークWに対して、上金型8aが取り付けられるスライド3をサーボモータ21によって上下方向に動作させてプレス加工するプレス装置の制御装置であって、モータ指示部66(制御部の一例)を備えている。モータ指示部66は、スライド3に取り付けられた上金型8aのワークWへの接近が検出する近接センサ100(検出部の一例)によって、上金型8aのワークWへの接近が検出されると、スライド3の速度を変更する制御を行う。
これにより、調整におけるワークWの使用を低減し、適切な位置でスライド3の速度を変更するようにスライド3の動作を設定できる。
【0068】
(3−8)
また、上記実施の形態のプレス装置の制御方法は、ボルスタ5上に取り付けられる下金型8bに載置されるワークWに対して、上金型8aが取り付けられるスライド3をサーボモータ21によって上下方向に動作させてプレス加工するプレス装置の制御方法であって、ステップS12(検出工程の一例)と、ステップS14(変更工程の一例)とを備えている。ステップS12では、スライド3に取り付けられた上金型8aのワークWへの接近を検出する。ステップS14では、上金型8aのワークWへの接近が検出されると、スライド3の速度を変更する。
これにより、調整におけるワークWの使用を低減し、適切な位置でスライドの速度を変更するようにスライドの動作を設定できる。
【0069】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
(A)
上記実施の形態では、近接センサ100が被検出体101を検出している間、すなわち、上金型8aがワークWを加工している間、速度が遅く設定されていたが、これに限られるものではない。例えば、近接センサ100が被検出体101を検出している間、速度が速くなるように設定されてもよい。また、例えば、スライド3が下降するときのみ、速度が変更されてもよいし、逆に、スライド3が上昇するときにのみ速度が変更されるようにしてもよい。
【0071】
(B)
上記実施の形態では、下金型8bに被検出体101が設けられていたが、近接センサ100が金属を検出する場合、特に被検出体101を設けず、下金型8b自体を検出してもよい。
【0072】
(C)
また、上記実施の形態では、上金型4aのワークWへの接近を検出する検出部の一例として、近接センサ100を用いたが、これに限られるものではなく、フォトセンサ等であってもよい。さらに、カメラ(撮像手段の一例)が設けられていてもよい。
図10は、カメラ200が設けられたプレス装置1´を模式的に示す図である。カメラ200は、プレス装置1のサイドフレーム11またはボルスタ5等に設けられており、金型8に設けられていない。カメラ200は、下金型8bの上側近傍を撮像する。
図11は、プレス装置1´の制御装置6´の構成を示すブロック図である。
図11に示すプレス装置1´では、カメラ200と、カメラ200の画像処理を行う画像処理部201と、画像処理の結果が入力される検出結果入力部202が設けられている。
【0073】
図12(a)、(b)は、カメラ200によって撮影されている画面220を示す図である。
図12(a)に示すように、画面220上に、ワークWの上方近傍に位置するラインSが設定されている。そして、カメラ200によって撮像された画像から、画像処理部201が、上金型8aの下端8aeのエッジ検出を行う。上方から近付いてきた下端8aeが、
図12(b)に示すように、ラインSに重なった時点で、画像処理部201は、上金型8aがワークWに接近したとして検出結果入力部202に第1検出結果を送信する。また、上金型8aの下端8aeが、下方からラインSに近づいてきてラインSに重なった時点で、画像処理部201は、上金型8aがワークWの近傍から離間したと判断し、第2検出結果を検出結果入力部202へと送信する。この第1検出結果と第2検出結果の間の速度を、オーバライドして遅くすることによって、上記実施の形態と同様の制御を実現できる。