(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アーム部は、屈曲可能に連結された板形状の複数の第1連結コマと、屈曲可能に連結された横断面コ字形状又はロ字形状の複数の第2連結コマと、前記第1、第2連結コマが接合されることにより屈曲が拘束され硬直された柱状体が構成される、前記第1、第2連結コマの分離により前記柱状体が解除され、屈曲状態に復帰されることを特徴とする請求項1記載のロボットアーム機構。
前記アーム部は、背面側において屈曲自在に連結される複数の連結コマを有し、前記連結コマの屈曲が拘束されることにより硬直状態にある柱状体が構成されることを特徴とする請求項1記載のロボットアーム機構。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るロボットアーム機構を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0007】
図1は、本実施形態に係るロボットアーム機構の外観斜視図である。ロボットアーム機構は、略円筒形状の基部10と基部10に接続されるアーム部2とアーム部2の先端に取り付けられる手首部4とを有する。手首部4には図示しないアダプタが設けられている。例えば、アダプタは後述の第6回転軸RA6の回転部に設けられる。手首部4に設けられたアダプタには、用途に応じたロボットハンドが取り付けられる。
【0008】
ロボットアーム機構は、複数、ここでは6つの関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6を有する。複数の関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6は基部10から順番に配設される。一般的に、第1、第2、第3関節部J1,J2,J3は根元3軸と呼ばれ、第4、第5、第6関節部J4,J5,J6はロボットハンドの姿勢を変化させる手首3軸と呼ばれる。手首部4は第4、第5、第6関節部J4,J5,J6を有する。根元3軸を構成する関節部J1,J2,J3の少なくとも一つは直動伸縮関節である。ここでは第3関節部J3が直動伸縮関節部、特に伸縮距離の比較的長い関節部として構成される。アーム部2は直動伸縮関節部J3(第3関節部J3)の伸縮部分を表している。
【0009】
第1関節部J1は基台面に対して例えば垂直に支持される第1回転軸RA1を中心としたねじり関節である。第2関節部J2は第1回転軸RA1に対して垂直に配置される第2回転軸RA2を中心とした曲げ関節である。第3関節部J3は、第2回転軸RA2に対して垂直に配置される第3軸(移動軸)RA3を中心として直線的にアーム部2が伸縮する関節である。
【0010】
第4関節部J4は、第4回転軸RA4を中心としたねじり関節である。第4回転軸RA4は、後述の第7関節部J7が回転していないとき、つまりアーム部2の全体が直線形状にあるとき、第3移動軸RA3と略一致する。第5関節部J5は第4回転軸RA4に対して直交する第5回転軸RA5を中心とした曲げ関節である。第6関節部J6は第4回転軸RA4に対して直交し、第5回転軸RA5に対して垂直に配置される第6回転軸RA6を中心とした曲げ関節である。
【0011】
基部10を成すアーム支持体(第1支持体)11aは、第1関節部J1の第1回転軸RA1を中心に形成される円筒形状の中空構造を有する。第1関節部J1は図示しない固定台に取り付けられる。第1関節部J1が回転するとき、アーム部2は第1支持体11aの軸回転とともに左右に旋回する。なお、第1支持体11aが接地面に固定されていてもよい。その場合、第1支持体11aとは独立してアーム部2が旋回する構造に設けられる。第1支持体11aの上部には第2支持部11bが接続される。
【0012】
第2支持部11bは第1支持部11aに連続する中空構造を有する。第2支持部11bの一端は第1関節部J1の回転部に取り付けられる。第2支持部11bの他端は開放され、第3支持部11cが第2関節部J2の第2回転軸RA2において回動自在に嵌め込まれる。第3支持部11cは第1支持部11a及び第2支持部に連通する鱗状の外装からなる中空構造を有する。第3支持部11cは、第2関節部J2の曲げ回転に伴ってその後部が第2支持部11bに収容され、また送出される。ロボットアーム機構の直動伸縮関節部J3(第3関節部J3)を構成するアーム部2の後部はその収縮により第1支持部11aと第2支持部11bの連続する中空構造の内部に収納される。
【0013】
第3支持部11cはその後端下部において第2支持部11bの開放端下部に対して第2回転軸RA2を中心として回動自在に嵌め込まれる。それにより第2回転軸RA2を中心とした曲げ関節部としての第2関節部J2が構成される。第2関節部J2が回動するとき、アーム部2は第2回転軸RA2を中心に垂直方向に回動、つまり起伏動作をする。
【0014】
第4関節部J4は、アーム部2の伸縮方向に沿ったアーム中心軸、つまり第3関節部J3の第3移動軸RA3に典型的には接する第4回転軸RA4を有するねじり関節である。第4関節部J4が回転すると、手首部4及び手首部4に取り付けられたロボットハンドは第4回転軸RA4を中心に回転する。第5関節部J5は、第4関節部J4の第4回転軸RA4に対して直交する第5回転軸RA5を有する曲げ関節部である。第5関節部J5が回転すると、第5関節部J5から先端にかけてロボットハンドとともに上下(第5回転軸RA5を中心に垂直方向)に回動する。第6関節部J6は、第4関節部J4の第4回転軸RA4に直交し、第5関節部J5の第5回転軸RA5に垂直な第6回転軸RA6を有する曲げ関節である。第6関節部J6が回転すると、ロボットハンドは左右に旋回する。
【0015】
上記の通り手首部4のアダプタに取り付けられたロボットハンドは、第1、第2、第3関節部J1、J2、J3により任意位置に移動され、第4、第5、第6関節部J4、J5、J6により任意姿勢に配置される。特に第3関節部J3のアーム部2の伸縮距離の長さは、基部10の近接位置から遠隔位置までの広範囲の対象にロボットハンドを到達させることを可能にする。第3関節部J3はそれを構成する直動伸縮機構により実現される直線的な伸縮動作とその伸縮距離の長さとが特徴的である。
【0016】
図2は、
図1のロボットアーム機構の内部構造を示す斜視図である。直動伸縮機構はアーム部2と射出部30とを有する。アーム部2は第1連結コマ列21と第2連結コマ列22とを有する。第1連結コマ列21は複数の第1連結コマ23からなる。第1連結コマ23は略平板形に構成される。前後の第1連結コマ23は、互いの端部箇所においてピンにより屈曲自在に列状に連結される。第1連結コマ列21は内側や外側に自在に屈曲できる。
【0017】
第2連結コマ列22は複数の第2連結コマ24からなる。第2連結コマ24は横断面コ字形状の短溝状体に構成される。前後の第2連結コマ24は、互いの底面端部箇所においてピンにより屈曲自在に列状に連結される。第2連結コマ列22は内側に屈曲できる。第2連結コマ24の断面はコ字形状であるので、第2連結コマ列22は、隣り合う第2連結コマ24の側板同士が衝突して、外側には屈曲しない。なお、第1、第2連結コマ23、24の第2回転軸RA2に向いた面を内面、その反対側の面を外面というものとする。第1連結コマ列21のうち先頭の第1連結コマ23と、第2連結コマ列22のうち先頭の第2連結コマ24とは結合コマ27により接続される。例えば、結合コマ27は第2連結コマ24と第1連結コマ23とを合成した形状を有している。
【0018】
射出部30は、複数のローラを備え、射出部30に誘導された第1、第2連結コマ列21,22を互いに接合し、接合による柱状体を上下左右から支持する。射出部30の詳細説明は後述する。射出部30の後方には、ガイドローラ40とドライブギア50とが第1連結コマ列21を挟んで対向するように設けられる。ドライブギア50は図示しない減速器を介してステッピングモータ55に接続される。第1連結コマ23の内面には連結方向に沿ってリニアギアが形成されている。複数の第1連結コマ23が直線状に整列されたときに互いのリニアギアは直線状につながって、長いリニアギアを構成する。ドライブギア50は、直線状のリニアギアにかみ合わされる。直線状につながったリニアギアはドライブギア50とともにラックアンドピニオン機構を構成する。
【0019】
アーム伸長時、モータ55が駆動し、ドライブギア50が順方向に回転すると、第1連結コマ列21はガイドローラ40により、アーム中心軸と平行な姿勢となって、射出部30に誘導される。第1連結コマ列21の移動に伴い、第2連結コマ列22は射出部30の後方に配置された図示しないガイドレールにより射出部30に誘導される。射出部30は第1、第2連結コマ列21,22を互いに押圧することで接合し、接合による柱状体を上下左右に支持する。第1、第2連結コマ列21,22の接合状態は、射出部30により柱状体が堅持されることで保持される。第1、第2連結コマ列21、22の接合状態が保持されているとき、第1、第2連結コマ列21,22の屈曲は互いに拘束される。それにより第1、第2連結コマ列21、22は、一定の剛性を備えた柱状体を構成する。柱状体とは、第2連結コマ列22に第1連結コマ列21が接合されてなる柱状の棒体を言う。この柱状体は第2連結コマ24が第1連結コマ23とともに全体として様々な断面形状の筒状体に構成される。筒状体とは上下左右が天板、底板及び両側板で囲まれ、前端部と後端部とが開放された形状として定義される。第1、第2連結コマ列21、22の接合による柱状体は、結合コマ27が始端となって、第3移動軸RA3に沿って直線的に第3支持部11cの開口から前方に向かって送り出される。
【0020】
アーム収縮時、モータ55が駆動し、ドライブギア50が逆方向に回転されると、ドライブギア50と係合している第1連結コマ列21が第1支持体11a内に引き戻される。第1連結コマ列21の移動に伴って、柱状体が第3支持体11c内に引き戻される。引き戻された柱状体は射出部30の後方で分離される。例えば、柱状体を構成する第1連結コマ列21はガイドローラ40とドライブギア50とに挟まれ、柱状体を構成する第2連結コマ列22は重力により下方に引かれ、それにより第2連結コマ列22と第1連結コマ列21とは互いに離反される。離反された第1、第2連結コマ列21,22はそれぞれ屈曲可能な状態に復帰する。収納に際しては、射出部30から、第1支持体11a(基部10)の内部の収納部に第2連結コマ列22は内側に屈曲されて搬送され、第1連結コマ列21も第2連結コマ列22と同じ方向(内側)に屈曲されて搬送される。第1連結コマ列21は第2連結コマ列22に略平行な状態で格納される。
【0021】
図3は、
図1のロボットアーム機構を図記号表現により示す図である。ロボットアーム機構において、根元3軸を構成する第1関節部J1と第2関節部J2と第3関節部J3とにより3つの位置自由度が実現される。また、手首3軸を構成する第4関節部J4と第5関節部J5と第6関節部J6とにより3つの姿勢自由度が実現される。
【0022】
ロボット座標系Σbは第1関節部J1の第1回転軸RA1上の任意位置を原点とした座標系である。ロボット座標系Σbにおいて、直交3軸(Xb、Yb,Zb)が規定されている。Zb軸は第1回転軸RA1に平行な軸である。Xb軸とYb軸とは互いに直交し、且つZb軸に直交する軸である。手先座標系Σhは、手首部4に取り付けられたロボットハンド5の任意位置(手先基準点)を原点とした座標系である。例えば、ロボットハンド5が2指ハンドのとき、手先基準点(以下、単に手先という。)の位置は2指先間中央位置に規定される。手先座標系Σhにおいて、直交3軸(Xh、Yh,Zh)が規定されている。Zh軸は第6回転軸RA6に平行な軸である。Xh軸とYh軸とは互いに直交し、且つZh軸に直交する軸である。例えば、Xh軸は、ロボットハンド5の前後方向に平行な軸である。手先姿勢とは、手先座標系Σhのロボット座標系Σbに対する直交3軸各々周りの回転角(Xh軸周りの回転角(ヨウ角)α、Yh軸周りの回転角(ピッチ角)β、Zh軸周りの回転角(ロール角)γとして与えられる。
【0023】
第1関節部J1は、第1支持部11aと第2支持部11bとの間に配設されており、回転軸RA1を中心としたねじり関節として構成されている。回転軸RA1は第1関節部J1の固定部が設置される基台の基準面BPに垂直に配置される。
【0024】
第2関節部J2は回転軸RA2を中心とした曲げ関節として構成される。第2関節部J2の回転軸RA2は空間座標系上のXb軸に平行に設けられる。第2関節部J2の回転軸RA2は第1関節部J1の回転軸RA1に対して垂直な向きに設けられる。さらに第2関節部J2は、第1関節部J1に対して、第1回転軸RA1の方向(Zb軸方向)と第1回転軸RA1に垂直なYb軸方向との2方向に関してオフセットされる。第2関節部J2が第1関節部J1に対して上記2方向にオフセットされるように、第2支持体11bは第1支持体11aに取り付けられる。第1関節部J1に第2関節部J2を接続する仮想的なアームロッド部分(リンク部分)は、先端が直角に曲がった2つの鈎形状体が組み合わされたクランク形状を有している。この仮想的なアームロッド部分は、中空構造を有する第1、第2支持体11a、11bにより構成される。
【0025】
第3関節部J3は移動軸RA3を中心とした直動伸縮関節として構成される。第3関節部J3の移動軸RA3は第2関節部J2の回転軸RA2に対して垂直な向きに設けられる。第2関節部J2の回転角がゼロ度、つまりアーム部2の起伏角がゼロ度であってアーム部2が水平な基準姿勢においては、第3関節部J3の移動軸RA3は、第2関節部J2の回転軸RA2とともに第1関節部J1の回転軸RA1にも垂直な方向に設けられる。空間座標系上では、第3関節部J3の移動軸RA3はXb軸及びZb軸に対して垂直なYb軸に平行に設けられる。さらに、第3関節部J3は、第2関節部J2に対して、その回転軸RA2の方向(Yb軸方向)と、移動軸RA3に直交するZb軸の方向との2方向に関してオフセットされる。第3関節部J3が第2関節部J2に対して上記2方向にオフセットされるように、第3支持体11cは第2支持体11bに取り付けられる。第2関節部J2に第3関節部J3を接続する仮想的なアームロッド部分(リンク部分)は、先端が垂直に曲がった鈎形状体を有している。この仮想的なアームロッド部分は、第2、第3支持体11b、11cにより構成される。
【0026】
第4関節部J4は回転軸RA4を中心としたねじり関節として構成される。第4関節部J4の回転軸RA4は第3関節部J3の移動軸RA3に略一致するよう配置される。
第5関節部J5は回転軸RA5を中心とした曲げ関節として構成される。第5関節部J5の回転軸RA5は第3関節部J3の移動軸RA3及び第4関節部J4の回転軸RA4に略直交するよう配置される。
第6関節部J6は回転軸RA6を中心としたねじり関節として構成される。第6関節部J6の回転軸RA6は第4関節部J4の回転軸RA4及び第5関節部J5の回転軸RA5に略直交するよう配置される。第6関節部J6は手先効果器としてのロボットハンド5を左右に旋回するために設けられている。なお、第6関節部J6は、その回転軸RA6が第4関節部J4の回転軸RA4及び第5関節部J5の回転軸RA5に略直交する曲げ関節として構成されてもよい。
【0027】
このように複数の関節部J1−J6の根元3軸のうちの一つの曲げ関節部を直動伸縮関節部に換装し、第1関節部J1に対して第2関節部J2を2方向にオフセットさせ、第2関節部J2に対して第3関節部J3を2方向にオフセットさせることにより、本実施形態に係るロボットアーム機構は、特異点姿勢を構造上解消している。
【0028】
(射出部30の構造)
射出部30は、第1、第2連結コマ列21,22の接合による柱状体を支持するための構造を備える。以下、射出部30の典型的な構造について
図4、
図5、
図6を参照して説明する。
図4は、
図2の射出部30を示す斜視図である。
図4に示すように射出部30は、略角筒形状のフレーム35に構成される。射出部30は、第3支持体11cの先端の射出口39の後方近傍に配置される。以下、略角筒形状の射出部30の中心軸を射出中心軸と称す。射出中心軸はアーム中心軸(第3移動軸RA3)と一致する。アーム中心軸は射出部30により支持されている柱状体の中心軸である。
【0029】
図5は、
図4のA−A断面図である。
図5に示すように、フレーム35には、第1、第2連結コマ列21,22の接合による柱状体を上下左右の4方位から強固に且つ移動自在に支持するために複数のローラが設けられている。ローラが破損したときに破損ローラだけを交換できように、フレーム35にはこれら複数のローラを個々に着脱できる構造、つまりローラのシャフトを個々にフレームに固定する構造が設けられている。以下、説明の便宜上、アーム部2を第1連結コマ21の表面側から支持するローラを上部ローラ、アーム部2を第2連結コマ21の底面側から支持するローラを下部ローラ、アーム部2を左側方から支持するローラを左側部ローラ,アーム部2を右側方から支持するローラを右側部ローラと称す。
【0030】
図6(a)は
図5の射出部30のA矢視図(平面図)である。
図6(b)は
図5の射出部30のB矢視図(左側面図)である。
図6(c)は
図5の射出部30のC矢視図(底面図)である。
図6(d)は
図5の射出部30のD矢視図(右側面図)である。フレーム35の上部には前方から順に上部ローラ31−1、31−2、31−3,31−4,31−5が射出中心軸に沿って等間隔に配列されている。5つの上部ローラ31−1〜31−5は、それらの回転中心軸が互いに平行であって、射出中心軸に直角な方向に配設される。典型的には複数の上部ローラ31−1〜31−5が配列される回転中心線間距離(間隔)は、第1連結コマ23の長さよりも短く設定される。
【0031】
フレーム35の下部には前方から順に、上部ローラ31−1〜31−5と同本数の下部ローラ32−1、32−2、32−3,32−4,32−5が射出中心軸に沿って等間隔に配列されている。5つの下部ローラ32−1〜32−5は、それらの回転中心軸が互いに平行であって、射出中心軸に直角な方向に配設される。典型的には複数の下部ローラ32−1〜32−5が配列される回転中心線間距離(間隔)は、複数の上部ローラ31−1〜31−5が配列される回転中心線間距離(間隔)と等価であり、第2連結コマ24の長さよりも短く設定される。最前の下部ローラ32−1は最前の上部ローラ31−1と射出中心軸に沿って同位置に配置される。複数の下部ローラ32−1〜32−5は柱状体を挟んで複数の上部ローラ31−1〜31−5にそれぞれ対向する。
【0032】
フレーム35の左側部には、前方から順に左側部ローラ33−1,33−2,33−3が射出中心軸に沿って等間隔に配列されている。左側部ローラ33−1,33−2,33−3の本数は、上部ローラ31−1〜31−5、下部ローラ32−1〜32−5それぞれの本数よりも少ない。3つの左側部ローラ33−1〜33−3は、それらの回転中心軸が互いに平行であって、射出中心軸に直角な方向に配設される。左側部ローラ33−1,33−2,33−3は、最前の上部ローラ31−1と最後尾の上部ローラ31−5の範囲内に配置される。複数の左側部ローラ33−1〜33−3の配列間隔は、最前の上部ローラ31−1と最後尾の上部ローラ31−5の間隔の1/4に設定される。
【0033】
フレーム35の右側部には前方から順に右側部ローラ34−1,34−2,34−3が射出中心軸に沿って等間隔に配列されている。右側部ローラ34−1,34−2,34−3の本数は、左側部ローラ33−1,33−2,33−3の本数と同じである。3つの右側部ローラ34−1〜34−3は、それらの回転中心軸が互いに平行であって、射出中心軸に直角な方向に配設される。右側部ローラ34−1,34−2,34−3は、最前の上部ローラ31−1と最後尾の上部ローラ31−5の範囲内に配置される。複数の右側部ローラ34−1〜34−3は、複数の左側部ローラ33−1〜33−3の配列間隔と等価な配列間隔で設けられている。最前の右側部ローラ34−1は、最前の左側部ローラ33−1と射出中心軸に沿って同じ位置に配置される。複数の右側部ローラ34−1〜34−3は柱状体を挟んで複数の左側部ローラ33−1〜33−3とそれぞれ対向する。
【0034】
上部ローラ31−1〜31−5と下部ローラ32−1〜32−5との間の距離は、柱状体の厚みよりもわずかに薄くなるように設計されている。具体的には、フレーム35において、複数の上部ローラ31−1〜31−5の取り付け位置と複数の下部ローラ32−1〜32−5の取り付け位置とが、射出部30の厚みが柱状体の厚みよりもわずかに薄くなるように調整される。それにより複数の上部ローラ31−1〜31−5と複数の下部ローラ32−1〜32−5とは、柱状体との間に予圧をかけられた状態で柱状体を強固に支持する。
【0035】
左側部ローラ33−1〜33−3と右側部ローラ34−1〜34−3との距離は、柱状体の幅よりもわずかに狭くなるように設計されている。具体的には、フレーム35において、複数の左側部ローラ33−1〜33−3の取り付け位置と複数の右側部ローラ34−1〜34−3の取り付け位置とが、射出部30の幅が柱状体の幅よりもわずかに狭くなるように調整される。それにより複数の左側部ローラ33−1〜33−3と複数の右側部ローラ34−1〜34−3とは、柱状体との間に予圧をかけられた状態で柱状体を強固に支持する。射出部30と柱状体との間に適切な予圧がかかるように複数のローラの位置を調整することで、アーム伸縮時のローラと柱状体との間のガタツキが減り、これにより射出部30の剛性を高めることができる。
【0036】
(ローラの構造)
ローラの構造について
図7、
図8を参照して説明する。ここでは、最前の上部ローラ31−1を例に説明する。他の上部ローラ31−2〜31−5、下部ローラ32−1〜32−5は、最前の上部ローラ31−1と同じ材料、同じ形状、同じサイズで構成される。左側部ローラ33−1〜33−3及び右側部ローラ34−1〜34−3は最前の上部ローラ31−1と材料及び形状は同じであるが、最前の上部ローラ31−1よりも大きな径で構成される。右側部ローラ34−1〜34−3及び左側部ローラ33−1〜33−3は同じ材料、同じ形状、同じサイズで構成される。
【0037】
図7は、
図6のローラの斜視図である。
図8は、
図7のローラの縦断面図である。
図7に示すように、上部ローラ31−1は、ローラシャフト315とローラ本体316とからなる。ローラシャフト315は、金属により円柱状に構成され、フレーム35に例えばねじにより着脱自在に取り付けられる。ローラシャフト315は、ローラ本体316のシャフト孔317に挿入され、ローラ本体316を直接軸支する。これにより、ローラ本体316は、ローラシャフト315を回転軸として回転することができる。
図8に示すように、ローラ本体316には、ローラシャフト315の径より若干短い径で円筒状のシャフト孔317が形成されている。そのため、ローラシャフト315にはシャフト孔317の内壁との接触による摩擦力が発生する。この摩擦力が大きいと、ローラ本体316がローラシャフト315を中心にスムーズに回転できない場合がある。そのため、シャフト孔317の内壁には、ローラシャフト315とシャフト孔317の内壁との間の摩擦力を低減するための加工が施されていてもよい。
【0038】
図9は、
図7のローラの他の構造を示す縦断面図である。
図9に示すように、ローラシャフト315とシャフト孔317との間の摩擦力低減のために、ローラ本体316のシャフト孔317の内壁にはその中央付近に溝320を形成して、ローラシャフト315とシャフト孔317との接触面積を減少させてもよい。ローラシャフト315とシャフト孔317の内壁との間の要求される摩擦力に応じて、溝320の幅は調整される。溝の幅を広くすることで、ローラシャフト315とシャフト孔317との接触面積をより減少させて、ローラシャフト315とシャフト孔317の内壁との間の摩擦力をより低減させることができる。
図9に示すように、溝320はシャフト孔317の中央部に形成される。しかしながら、溝320は、シャフト孔317の中心部からシャフト孔317の軸方向にオフセットした位置に施されていてもよいし、シャフト孔317の軸方向に沿って複数の位置に溝320を形成していてもよい。
【0039】
図10は、
図7のローラのさらに他の構造を示す縦断面図である。ローラ本体316のシャフト孔317の内壁にはねじ溝321,322が施されていてもよい。ねじ溝321はシャフト孔317にその前方から切られ、ねじ溝322はシャフト孔317にその後方から切られる。ねじ溝322はねじ溝321と逆ねじに切られる。ねじ溝322はねじ溝321とねじピッチ、溝数ともに同じに形成される。ローラシャフト315とシャフト孔317の内壁との間の要求される摩擦力に応じて、ねじ溝321,322の間隔は調整される。ねじ溝321,322の間隔を広くすることで、ローラシャフト315とシャフト孔317の内壁との間の接触面積を減少させて、当該ローラシャフト315とシャフト孔317の内壁との間の摩擦力を低減させることができる。ねじ溝322はねじ溝321と逆ねじに切られ、ねじピッチ、溝数ともに同じに形成されているので、ローラ本体316はその回転に伴ってローラシャフト315の一端側に移動することなく、同じ位置に留まることができる。
【0040】
図7〜
図10で説明したローラは、ローラシャフト315によりローラ本体316が直接軸支される。しかしながら、ローラの構造はこれに限定されない、ローラの他の構造について、
図11、
図12を参照して説明する。ここでも、最前の上部ローラ31−1を例に説明する。他の上部ローラ31−2〜31−5、下部ローラ32−1〜32−5は、最前の上部ローラ31−1と同じ材料、同じ形状、同じサイズで構成される。左側部ローラ33−1〜33−3及び右側部ローラ34−1〜34−3は上部ローラ31−1〜31−5及び下部ローラ32−1〜32−5と材料及び形状は同じであるが、上部ローラ31−1よりも大きな径で構成される。右側部ローラ34−1〜34−3と左側部ローラ33−1〜33−3とは同じ材料、同じ形状、同じサイズで構成される。
【0041】
図11は、
図6のローラの他の構造を示す斜視図である。
図12は、
図11のローラの縦断面図である。
図11に示すように、上部ローラ31−1は、ローラシャフト315とローラ本体316とベアリング318とからなる。ローラシャフト315は、ローラ本体316のシャフト孔317に挿入され、ベアリング318を介してローラ本体316と接続されている。これによりローラ本体316はローラシャフト315を回転軸として回転することができる。
【0042】
以下、ローラを形成する材料(ローラ材)とアーム部2を構成する第1、第2連結コマ23,24の材料(コマ材)との組み合わせについて説明する。ローラは、アーム部2を構成する第1、第2連結コマ23,24に対して表面硬度と強度との少なくとも一方が同じ又は低い。この条件を満たす限りにおいて、第1、第2連結コマ23,24よりローラが早期に表面削れや割れ、亀裂等の破損が発生する。その理由は、アーム部2の前後移動に伴って第1、複数の第2連結コマ23,24は順番にローラを通過するが、ローラはアーム部2の前後移動に関わらずアーム部2を押圧した状態が継続することにある。
【0043】
上記条件を満たすために、アーム部2を構成する第1、第2連結コマ23,24は金属製であり、一方、複数のローラは第1、第2連結コマ23,24と同じ金属製、樹脂製又は硬質ゴム製である。金属としては、典型的にはアルミニウムである。第1、第2連結コマ23,24が金属製である場合、好ましくは表面処理により表面硬度を高めることが好ましい。例えば第1、第2連結コマ23,24がアルミニウム製である場合、表面処理としてハードアルマイト処理が施される。樹脂としては、自己潤滑性樹脂が好ましい。自己潤滑性樹脂としては、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;ふっ素樹脂)、又はその他の樹脂が採用される。その中で自己潤滑性、機械的性質、成形性の観点から、ポリアセタール(POM)が最良といえる。硬質ゴムとしては例えばクロロプレンゴム、ニトリルゴム又はエボナイトが採用される。
【0044】
また上記条件を満たすために、アーム部2を構成する第1、第2連結コマ23,24は樹脂製であってもよい。この場合、複数のローラは第1、第2連結コマ23,24と樹脂製又は硬質ゴム製である。
【0045】
複数のローラが自己潤滑性樹脂製であることが好ましく、この場合、アーム部は金属製又は樹脂製である。アーム部が樹脂製である場合、好ましくは自己潤滑性樹脂製である。
【0046】
このようにローラの表面硬度と強度との少なくとも一方が第1、第2連結コマ23,24(アーム部2)の表面硬度よりも低くなるよう設計されていることにより第1、第2連結コマ23,24よりもローラの破損は早期に発生する。第1、第2連結コマ23,24の単価よりもローラの単価は安価である。第1、第2連結コマ23,24の交換作業工数よりもローラの交換作業工数は少ない。従ってメンテナンス性を向上させることができる。
【0047】
典型的には、第1、第2連結コマ23,24(アーム部2)は全て同じ材料で構成され、複数のローラは全て同一の材料で構成される。最も好ましくは、複数のローラは摺動特性の高い自己潤滑性を有する樹脂で形成され、第1、第2連結コマ23,24は金属、典型的には硬度と成形性とが両立しているアルミニウムで形成される。
【0048】
他の組み合わせも様々に考えられる。ローラと第1、第2連結コマ23,24はアルミニウムで形成され、第1、第2連結コマ23,24にだけ表面硬度を高めるための表面処理、例えばハードアルマイト処理がなされていてもよい。またローラと第1、第2連結コマ23,24ともに樹脂製であり、第1、第2連結コマ23,24はローラよりも硬度の高い樹脂で形成してもよい。
【0049】
ここでは、複数のローラは全て同一のローラ材で形成されているとしたが、ローラの表面硬度と強度との少なくとも一方が第1、第2連結コマ23,24のそれよりも低くなるのであれば、複数のローラには、表面硬度と強度との少なくとも一方が異なる複数種類のローラが混在していてもよい。例えば、第1、第2連結コマ23,24はハードアルマイト処理がなされたアルミニウムで形成され、複数のローラにはアルミニウム製ローラと樹脂製ローラとが混在していてもよい。例えば、複数のローラのうち、柱状体の上方最後尾に配置された上部ローラ31−5と柱状体の下方最前に配置された下部ローラ32−1とは、他のローラよりも表面硬度が高いローラ材で形成されている。上部ローラ31−5と下部ローラ32−1とには、アーム部2の自重による負荷トルクが他のローラよりも大きくかかる。そのため、上部ローラ31−5と下部ローラ32−1とを、他のローラよりも表面硬度が高いローラ材で形成することにより、射出部30の剛性を高めることができる。
【0050】
以上説明したロボットアーム機構によれば、射出部30を構成する複数のローラは、第1、第2連結コマ23,24の表面硬度と強度との少なくとも一方が低い。これにより、経年劣化、アーム部2の自重による負荷、第3関節部(直動伸縮関節部)J3のアーム部2の伸縮動作の不具合等により、複数のローラにアーム部2全体から想定していない大きな荷重がかかった場合でも、アーム部2よりも早期にローラが破損する。第1、第2連結コマ23,24が破損した場合、射出部30からアーム部2が落下する可能性がある。一方、ローラが破損した場合、破損していない他のローラでアーム部2を支持することができるため、第1、第2連結コマ23,24が破損した場合に比べて、アーム部2が射出部30から落下するリスクを低減することができる。また、複数のローラのうち、柱状体の上方最後尾に配置された上部ローラ31−5と柱状体の下方最前に配置された下部ローラ32−1とにはアーム部2の自重による荷重が他のローラよりも大きくかかる。そのため、これらローラ31−5,32−1は他のローラよりも破損する可能性が高い。そこで、これらローラ31−5,32−1に他のローラよりも表面硬度と強度との少なくとも一方が高いローラを適用することで、ローラの破損する可能性を低減することができる。
【0051】
万が一、ローラが破損した場合でも、複数のローラは個々に交換可能であり、破損したローラだけを交換すればいいため、第1、第2連結コマ23,24が破損した場合に比べて部品交換のコストを低減することができる。したがって、本実施形態に係るロボットアーム機構は、アーム部2全体から荷重がかかる射出部30の破損に対するメンテナンス性を向上することにある。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。