(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、電力不足等の影響によりあらゆる産業で省エネ製品や省エネ技術の開発が進められている。真空断熱パネルも省エネ対策の1つとして開発された商品であり、現在では冷蔵庫や自動販売機等の断熱材として、断熱性能を高めて消費電力を抑えるために広く採用されている。
また、住宅用の断熱材としての適用検討も進められているが、現行の真空断熱パネルは、グラスウール等の芯材をアルミラミネートフィルムでヒートシールした構造のものが一般的である。
【0003】
アルミラミネートフィルムでヒートシールした構造の真空断熱パネルでは、ヒートシール部から水分が透過して真空度が低下するため、活性炭やゼオライト等の吸着剤を封入しているが、それでも7〜8年で断熱性能が半減するといった問題がある。
このため、長期に亘って断熱性を維持できる真空断熱パネルの開発が望まれている。
そこで、グラスウール等の芯材をステンレス鋼等の薄金属板で包み、真空引きした後、端部を溶接接合して真空断熱パネルを製造することが各種試みられている。そして、真空引き方法として各種方法が提案されている。
【0004】
特許文献1では、芯材を包む金属外包材の一方に空気を案内して排出するための溝と溝に接続された排気口を設けて真空引き行う方法が提案されている。この方法では、予め真空引きを行う前に、シーム溶接やプラズマ溶接等で溝及び排気口周辺の予備封止を行う。次いで、予備封止後に溝部を通して排気口より真空引きを行い、真空引き完了後、溝部周辺をプレス等により平らにする。次いで、先と同じ溶接方法により平らになった溝部上を溶接し完全封止して、封止完了後、余分な材料をカットする。このようにして、真空断熱パネルを製造している。
【0005】
また、特許文献2では、以下の手順により真空断熱パネルを製造している。まず、外周部が溶接接合された上下包材によって形成される略平板状の空間内に、厚肉領域と薄肉領域を兼ね備えたスペーサー(断熱材)を挿入する。次いで、真空引き時に厚肉領域と薄肉領域で発生する段差を利用して上下包材の内面が接触することを防止すると共に、排気通路を確保しながら排気口より真空引きを行う。次いで、排気口を封止し、排気口手前を溶接接合し、その後に溶接箇所の外側をカットして真空断熱パネルを製造している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先述した特許文献はいずれも真空チャンバーを必要とせず、大気中で直接真空ポンプにより真空引きを行いシーム溶接等で真空断熱パネルを製造する方法であるが、これらの方法では10Pa以下の高真空の真空断熱パネルを製造することは難しい。真空断熱パネルは、内部真空度が高いほど断熱性能が向上することは一般的に知られており、断熱性能の優れた真空断熱パネルを製造するためには内部真空度が重要となってくる。しかしながら、先述した方法では、封止の際にパネル内部に大気が侵入し内部真空度が悪化する可能性がある。
また、溶接封止部に欠陥がありリークした場合、ポンプが大気を直接吸引する可能性があるため、ターボポンプのような高真空領域から使用する高性能な真空ポンプは破損の危険性があり使えない。このため、直接大気圧から吸引可能で到達真空度もそれほど高くない真空ポンプが採用されるケースが多く、真空度の高い真空断熱パネルを製造することは難しい。
【0008】
こうした理由等もあり、大気中で真空断熱パネル製造するのではなく真空チャンバー内で真空断熱パネルを製造する方法も検討されている。
真空中での封止により、大気侵入による内部真空度悪化の心配がなく、例えリークした場合でも、周囲が高真空領域のために大気を直接吸引する可能性がなく、高性能な真空ポンプを使用できる利点が挙げられる。このため、高性能な真空ポンプを使ってパネル内部を高真空にした上で封止することにより、大気中で製造した真空断熱パネルよりも高真空・高性能な真空断熱パネルが得られることになる。
【0009】
しかしながら、問題点もある。気密性が必要とされる燃料タンクや容器等の溶接にはシーム溶接が広く採用されているが、このシーム溶接を使って真空チャンバー内で矩形の真空断熱パネルを製造する場合、所定の真空度まで真空引きをした後にパネルの周縁部全てをシーム溶接により封止することになる。
しかし、真空中でシーム溶接を行うと、溶接により発生した熱が電極に蓄積され、電極が損耗し溶接不良が発生しやすくなるといった欠点がある。この現象は溶接する長さ・時間が長いほど発生しやすく、真空中でシーム溶接によりパネルの周縁部全てを溶接不良なく安定して溶接することは難しい。
【0010】
従って、本発明は、真空中でのシーム溶接時間を減らして溶接不良の発生を低減できる真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネル製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、断熱性を有する芯材と、前記芯材を挟むように配置される第1の金属板及び第2の金属板と、を備え、内部が真空状態となるように前記第1の金属板及び前記第2の金属板の周縁がシーム溶接により封止された真空断熱パネルの製造方法であって、前記芯材を挟むように前記第1の金属板及び前記第2の金属板を重ね合わせる重ね合わせ工程と、重ね合わせた前記第1の金属板及び前記第2の金属板における対向する2つの辺以外の辺をシーム溶接する第1溶接工程と、前記第1溶接工程により溶接されなかった前記2つの辺から前記第1の金属板及び前記第2の金属板により挟まれた内部を高真空となるように真空引きする真空引き工程と、前記真空引き工程により内部が真空引きされた状態で、前記2つの辺を同時にシーム溶接する第2溶接工程と、を備える真空断熱パネルの製造方法に関する。
【0012】
また、前記第1の金属板及び前記第2の金属板は、矩形形状に形成され、前記第1溶接工程において、対向する2つの辺を同時にシーム溶接することが好ましい。
【0013】
また、前記第1の金属板には、内面側が前記芯材に対応する形状に凹んで外面側に膨出した膨出部が形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記第1の金属板及び前記第2の金属板は、ステンレス鋼板であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、真空チャンバと、前記真空チャンバの内部に配置されるシーム溶接装置と、を備える真空断熱パネル製造装置であって、前記シーム溶接装置は、前記真空チャンバの床面に配置され互いに並行して延びる複数の下側電極と、複数の前記下側電極それぞれの上方に配置される複数の円盤状の上側電極と、複数の前記上側電極を、複数の前記下側電極の延びる方向に回転移動可能に支持する上側電極支持部材と、前記上側電極支持部材を前記下側電極の延びる方向に移動させる上側電極移動機構と、前記下側電極と前記上側電極との間の距離を可変させる第1電極間距離可変機構と、を備える真空断熱パネル製造装置に関する。
【0016】
また、真空断熱パネル製造装置は、前記下側電極と前記真空チャンバの底面との間に配置され、複数の前記下側電極の間の距離及び複数の前記上側電極の間の距離を可変させる第2電極間距離可変機構を更に備えることが好ましい。
【0017】
また、前記複数の下側電極は、2つの下側電極からなり、互いに平行に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、真空中でのシーム溶接時間を減らして溶接不良の発生を低減できる真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネル製造装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネル製造装置の好ましい各実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本発明の真空断熱パネルの製造方法は、
図1に示すように、断熱性を有する板状の芯材10と、この芯材10を挟むように配置される第1の金属板20及び第2の金属板30と、を備え、内部が真空状態となるように第1の金属板20及び第2の金属板30の周縁がシーム溶接により封止されて形成された真空断熱パネル1の製造方法である。
【0021】
まず、真空断熱パネル1の構成につき、
図1を参照しながら説明する。上述のように、真空断熱パネル1は、芯材10と、第1の金属板20及び第2の金属板30と、を備える。
芯材10は、ガラス繊維やロックウール等の無機繊維や、合成繊維や天然繊維等の有機繊維が所定の厚みを有するように積層されて構成される。本実施形態では、芯材10は、平面視矩形の板状に形成される。
【0022】
第1の金属板20及び第2の金属板30は、芯材10よりも大きな形状に形成され、芯材10の上面及び下面を覆うように配置される。第1の金属板20及び第2の金属板30としては、アルミニウム合金板及びステンレス鋼板等の各種金属板を用いることができるが、耐変形性や長期に亘っての外観維持の観点から、強度及び耐食性に優れたステンレス鋼板を用いることが好ましい。第1の金属板20及び第2の金属板30の厚さは、真空断熱パネル1の内部の真空状態を好適に保ちつつ、真空断熱パネル1を軽量化する観点から、0.1mm〜0.3mmであることが好ましい。
【0023】
第1の金属板20には、
図1に示すように、膨出部21が形成される。膨出部21は、第1の金属板20の内面側が芯材10に対応する形状に凹んで外面側に膨出した形状に形成される。膨出部21が形成された第1の金属板20は、平板状の金属板をプレス成形することで製造できる。
【0024】
本実施形態では、第1の金属板20及び第2の金属板30は、平面視において芯材10よりも一回り大きな矩形形状に形成される。そして、真空断熱パネル1は、第1の金属板20の膨出部21の内面側の凹部に芯材10を収容した状態で、第1の金属板20と第2の金属板30とを重ね合わせ、内部が真空状態となるように、この重ねあわせた第1の金属板20及び第2の金属板30の周縁(4辺)をシーム溶接することで製造される。
【0025】
次に、真空断熱パネル1の製造方法について説明する。
本実施形態の真空断熱パネル1の製造方法は、重ね合わせ工程と、第1溶接工程と、真空引き工程と、第2溶接工程と、を備える。
【0026】
重ね合わせ工程では、芯材10を挟むように第1の金属板20及び第2の金属板30が重ね合わされる(
図1参照)。より具体的には、重ね合わせ工程では、まず、膨出部21が下方を向くように配置された第1の金属板20の上面の凹部に芯材10が収容される。次いで、芯材10が第1の金属板20の上面に、第2の金属板30が重ね合わせられる。
【0027】
第1溶接工程では、重ね合わせられた第1の金属板20及び第2の金属板30における対向する2つの辺以外の辺がシーム溶接される。この第1溶接工程は、大気中で行われる。本実施形態では、第1溶接工程では、
図2に示すように、矩形形状の第1の金属板20及び第2の金属板30における対向して配置される一対の側縁(2辺L1)がシーム溶接により溶接される。第1溶接工程における2辺L1のシーム溶接は、後述する構成を備えるシーム溶接装置(
図6参照)により、同時に行うことができる。
【0028】
真空引き工程では、第1溶接工程において溶接されなかった2つの辺L2から第1の金属板20及び第2の金属板30により挟まれた内部が高真空(例えば、10Pa以下)に真空引きされる。真空引き工程は、第1溶接工程により2辺L1がシーム溶接された第1の金属板20、芯材10及び第2の金属板30の積層体を真空チャンバの内部に収容し、この真空チャンバの内部を真空引きすることで行われる。これにより、芯材10が第1の金属板20及び第2の金属板30に挟まれて厚さ方向に圧縮される。
【0029】
ここで、第1溶接工程において2辺L1がシーム溶接された状態では、シーム溶接されなかった2つの辺L2において、第1の金属板20と第2の金属板30との間にはそれぞれ開口部40が形成されている(
図2参照)。真空引き工程では、これら2つの開口部40から第1の金属板20と第2の金属板30との間の空間の真空引きが行われる。これにより、第1の金属板20と第2の金属板30との間の空間の真空引きに要する時間を短縮できる。
【0030】
第2溶接工程では、
図3に示すように、真空引き工程により内部が真空引きされた状態で、対向する2つの辺L2が同時にシーム溶接される。より具体的には、第2溶接工程では、真空引き工程において内部が真空引きされた状態の第1の金属板20、芯材10及び第2の金属板30の積層体において開口部40を形成している2つの辺L2がそれぞれ異なる電極を用いて同時にシーム溶接される。即ち、第2溶接工程においてシーム溶接される2つの辺L2は、対向して配置されている。これにより、一方の辺をシーム溶接する電極と、他方の辺をシーム溶接する電極とを、互いに干渉することなく移動させて同時に2辺のシーム溶接を行える。よって、2つの開口部40を同時にシーム溶接できるので、真空引きにかかる時間を短縮するために開口部を多く確保した場合であっても、真空中でのシーム溶接時間を減らして溶接不良の発生を低減できる。
以上の第2溶接工程により、第1の金属板20及び第2の金属板30の全周がシーム溶接され、芯材10が収容された内部が真空引きされた真空断熱パネル1が製造される。
【0031】
切断工程では、第2溶接工程を経て全周がシーム溶接された真空断熱パネル1における余剰部分が切断され、真空断熱パネル1が完成する。より具体的には、切断工程では、
図4に示すように、第1の金属板20及び第2の金属板30における溶接部分より外側の余剰部分が切断される。
【0032】
以上説明した本実施形態の真空断熱パネル1の製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
真空断熱パネル1の製造方法を、重ね合わせた第1の金属板20及び第2の金属板30における対向する2つの辺L2以外の辺をシーム溶接する第1溶接工程と、第1溶接工程により溶接されなかった2つの辺L2から第1の金属板20及び第2の金属板30により挟まれた内部を真空引きする真空引き工程と、真空引き工程により内部が真空引きされた状態で、対向する2つの辺L2を同時にシーム溶接する第2溶接工程と、を含んで構成した。これにより、真空引き工程において、2つの辺L2(開口部40)から第1の金属板20と第2の金属板30との間の空間の真空引きを行えるので、第1の金属板20と第2の金属板30との間の空間の真空引きにかかる時間を短縮できる。また、第2溶接工程において、シーム溶接を行う2つの辺L2が対向して配置されているので、一方の辺をシーム溶接する電極と、他方の辺をシーム溶接する電極とを、互いに干渉することなく移動させて同時に2辺のシーム溶接を行える。よって、2つの開口部40を同時にシーム溶接できるので、真空引きにかかる時間を短縮するために開口部を多く確保した場合であっても、真空中でのシーム溶接時間を減らして溶接不良の発生を低減できる。
【0033】
次に、上述した真空断熱パネル1の製造方法に用いることができる真空断熱パネル製造装置100について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
本実施形態の真空断熱パネル製造装置100は、
図5に示すように、真空チャンバ110と、この真空チャンバ110の内部に配置されるシーム溶接装置120と、を備える。
【0034】
真空チャンバ110は、一の側面に開口部111が形成された箱状のチャンバ本体112と、この開口部111を開閉可能にチャンバ本体112に取り付けられる開閉扉(図示せず)と、を備える。真空チャンバ110は、開閉扉を閉めた状態で、真空ポンプ(図示せず)等を用いて真空引きすることで、チャンバ本体112の内部空間が真空引きされる。
【0035】
シーム溶接装置120は、複数の下側電極130と、複数の上側電極140と、これら複数の上側電極140を支持する複数の上側電極支持部材150と、上側電極移動機構160と、第1電極間距離可変機構170と、第2電極間距離可変機構180と、を備える。本実施形態では、下側電極130、上側電極140、上側電極支持部材150、上側電極移動機構160、及び第1電極間距離可変機構170は、それぞれ、2つずつ設けられている。
【0036】
下側電極130は、
図5及び
図6に示すように、レール状(ブロック状)に形成され、真空チャンバ110(チャンバ本体112)の床面に配置される。複数の下側電極130は、互いに並行して延びる。本実施形態では、2つの下側電極130は、互いに平行に延びるように配置される。本実施形態では、下側電極130は、チャンバ本体112の床面に配置された後述の第2電極間距離可変機構180を介して床面に配置される。
【0037】
上側電極140は、下側電極130それぞれの上方に配置される。上側電極140は、円盤状に形成され、円盤の周方向(回転方向)が下側電極130の延びる方向に沿うように配置される。
上側電極支持部材150は、上側電極140を、下側電極130の延びる方向に回転可能に支持する。本実施形態では、上側電極支持部材150は、上側電極140の側方にそれぞれ配置され、上側電極140の回転中心に連結され水平方向に延びる軸部材151と、この軸部材151を回転可能に支持する本体部152と、を備える。
【0038】
上側電極移動機構160は、上側電極支持部材150を下側電極130の延びる方向に移動させる。上側電極移動機構160は、例えば、上側電極支持部材150の上方に配置されて下側電極130の延びる方向と同じ方向に延びると共に上側電極支持部材150を支持するレール部材により構成される。
【0039】
第1電極間距離可変機構170は、下側電極130と上側電極140との間の距離を可変させる。第1電極間距離可変機構170は、例えば、下端側が上側電極支持部材150に連結され上端側が上側電極移動機構160に連結されるピストンロッド171と、このピストンロッド171を上下方向に進退させるシリンダ(図示せず)と、により構成される。
【0040】
第2電極間距離可変機構180は、下側電極130と真空チャンバ110(チャンバ本体112)の底面との間に介在して配置され、複数の下側電極130の間の距離W及び複数の上側電極140の間の距離Wを可変させる。第2電極間距離可変機構180は、チャンバ本体112の床面に設置される基台181と、この基台181の上面に配置される固定テーブル182及び可動テーブル183と、を備える。
【0041】
基台181は、チャンバ本体112の床面に固定される。固定テーブル182は、基台181の上面に固定される。可動テーブル183は、基台181に対してスライド移動可能に設置される。
本実施形態では、上述の2つの下側電極130のうちの一方は、固定テーブル182の上面に固定され、他方は可動テーブル183の上面に固定される。また、2つの上側電極移動機構160及び第1電極間距離可変機構170のうちの一方は、支持フレーム190を介して固定テーブル182の上面に固定され、他方は支持フレーム190を介して可動テーブル183の上面に固定される。
可動テーブル183は、下側電極130の延びる方向に直交する方向Xにスライド移動する。これにより、2つの下側電極130の間の距離W及び2つの上側電極の間の距離Wを変更させられる。
【0042】
以上の真空断熱パネル製造装置100では、上述の真空断熱パネル1の製造方法における真空引き工程及び第2溶接工程が実施される。
真空断熱パネル製造装置100を用いた真空引き工程及び第2溶接工程について説明する。
【0043】
まず、第1溶接工程により一対の側縁(対向する2つの辺L)がシーム溶接された第1の金属板20、芯材10及び第2の金属板30の積層体をシーム溶接装置120にセットする。具体的には、まず、可動テーブル183をスライド移動させて、2つの下側電極130の間の距離を、第2溶接工程においてシーム溶接する2つの辺L2の間に距離に一致させておく。次いで、第1の金属板20、芯材10及び第2の金属板30の積層体を、第1の金属板20が下面となるように、かつ、シーム溶接する2つの辺L2が下側電極130の上面に位置するように配置する。
この状態で、真空チャンバ110の開閉扉を閉めて真空引きを行い、第1の金属板20と第2の金属板30との間の空間を真空引きする(真空引き工程)。
【0044】
次いで、真空チャンバ110の内部の真空状態を保ったまま、シーム溶接装置120により2つの辺L2をシーム溶接する。具体的には、まず、第1電極間距離可変機構170により2つの上側電極140を下降させてそれぞれ下側電極130との間に第1の金属板20及び第2の金属板30を挟み込む。次いで、上側電極移動機構160により2つの上側電極140をそれぞれ下側電極130の延びる方向に同時に回転移動させつつ、第1の金属板20と第2の金属板30とをシーム溶接する(第2溶接工程)。
これにより、第1の金属板20及び第2の金属板30の2つの辺L2が同時にシーム溶接される。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に示す実施例及び比較例の真空断熱パネルの製造方法によりそれぞれ真空断熱パネルを製造し、真空引き工程に要する時間を測定した。
【0046】
[実施例]
真空断熱パネルを構成する第1の金属板及び第2の金属板として、220mm×220mm×0.1mmのSUS304の鋼板を用いた。第1の金属板には、190mm×190mm×5.0mmの膨出部を張り出し成形により作製した。芯材は、約1200g/m
2の目付のグラスウール製芯材を用いた。そして、第1の金属板の膨出部の内面側に芯材をすき間なく充填し、第1の金属板と第2の金属板とを重ね合わせた。
【0047】
〔第1溶接工程〕
重ね合わせた第1の金属板、芯材及び第2の金属板の積層体を加圧保持した状態で、この積層体の対向する2辺をシーム溶接により接合した(
図2参照)。この第1溶接工程は、大気中で行った。シーム溶接装置として、
図5に示す真空断熱パネル製造装置のシーム溶接装置と同様のものを用いた。上側電極は、直径100mmで厚さ4mmの電極先端部がフラットの円盤状のものを用いた。下側電極は、厚さ4mm、高さ50mm、長さ250mmで電極先端部の曲率が20Rのブロック状のものを用いた。溶接条件は、加圧力150N、溶接速度1m/min、溶接電流1.6kA、通電時間のON/OFF比は、3ms/2msとした。第1溶接工程における2辺のシーム溶接は、電極間の距離が195mmとなるようにして行った。
【0048】
〔真空引き工程〕
第1溶接工程により対向する2辺がシーム溶接された積層体を、
図5示す真空断熱パネル製造装置のシーム溶接装置にセットした、シーム溶接装置における2つの電極間の距離は、195mmとなるように調整した。この状態で、真空チャンバの開閉扉を閉め、真空チャンバの内部の圧力が1Pa以下になるまで真空引きを行った。真空チャンバの内部の圧力が1Pa以下になるまでに要した時間は、6分であった。
【0049】
〔第2溶接工程〕
真空チャンバの内部の圧力が1Pa以下とされた状態で、第1溶接工程において溶接されなかった対向する2辺の溶接を行った。溶接条件は、第1溶接工程と同じ条件で行った。第2溶接工程においては、電極の損耗及び溶接不良は見られなかった。
【0050】
[比較例]
〔第1溶接工程〕
比較例では、実施例と同様の芯材、第1の金属板及び第2の金属板を用い、4辺のうちの3辺のシーム溶接を行った。
【0051】
〔真空引き工程〕
第1溶接工程により3辺がシーム溶接された積層体を、
図5示す真空断熱パネル製造装置のシーム溶接装置にセットし、実施例と同様に真空引きを行った。真空チャンバの内部の圧力が1Pa以下になるまでに要した時間は、10分であった。
【0052】
〔第2溶接工程〕
真空チャンバの内部の圧力が1Pa以下とされた状態で、第1溶接工程において溶接されなかった1辺の溶接を行った。溶接条件は、第1溶接工程と同じ条件で行った。第2溶接工程においては、電極の損耗及び溶接不良は見られなかった。
【0053】
実施例及び比較例の結果から、真空引き工程において対向する2辺に開口部が形成されていた実施例の真空断熱パネルの製造方法では、開口部が1辺のみに形成されていた比較例の真空断熱パネルの製造方法に比して、真空引きに要する時間が短縮されたことが示された。
【0054】
以上、本発明の真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネル製造装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、本発明を、平面視矩形の真空断熱パネル1の製造方法に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、平面視五角形以上の多角形の真空断熱パネルの製造方法に適用してもよい。この場合、第1溶接工程において、対向する2辺を除く3辺以上の辺をシーム溶接することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1溶接工程において、2辺を同時にシーム溶接したが、これに限らない。即ち、第1溶接工程における複数の辺のシーム溶接を、複数回に分けて行ってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、第2溶接工程において対向する平行な2辺をシーム溶接したが、これに限らない。対向する2辺は、間隔を有しながら並行して配置されていればよい。
【0057】
また、本実施形態では、真空断熱パネル製造装置100のシーム溶接装置120における第1電極間距離可変機構170を、上側電極140の位置を上下方向に移動させるように構成したが、これに限らない。即ち、第1電極間距離可変機構を、下側電極の位置を上下方向に移動させるように構成してもよい。