(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単官能スチレン系モノマー(S1)単位に由来する構造単位の割合が、外層を構成する共重合体中、20質量%以上、70質量%以下である請求項1に記載の有機重合体粒子。
前記外層を構成する共重合体中、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位と単官能スチレン系モノマー(S1)単位の質量比((S2)/(S1))が、0.1以上、5以下である請求項1〜5のいずれかに記載の有機重合体粒子。
前記架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位の割合が、外層を構成する共重合体中、3質量%以上、40質量%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の有機重合体粒子。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.有機重合体粒子
本発明の有機重合体粒子は、単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位と架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位とを有する共重合体を含む基部と、この基部の表面を被覆するスチレン系単位含有外層とを有するものであり、前記外層が、単官能スチレン系モノマー(S1)単位と単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位と架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位とを有する共重合体を含む点を特徴とする。前記外層は、特定の樹脂成分との親和性を合わせることを目的に形成される層である。形状は特に限定されず、平滑であっても良く、凹凸や突起を有していても良い。
なお本明細書においてモノマー単位とは、重合体中におけるそのモノマーに由来する構造単位を意味するものとする。
【0015】
単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位と架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位とを有する共重合体を含む基部は、樹脂(特にポリオレフィン樹脂)よりも親水性が高く樹脂との親和性が低いものの、この基部を単官能スチレン系モノマー(S1)単位を含む外層で被覆することで、有機重合体粒子の表面を疎水性にすることができ、樹脂(特にポリオレフィン樹脂)と有機重合体粒子の親和性を高めることができる。そして、外層を、単官能スチレン系モノマー(S1)単位に加えて、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位と架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位を有する共重合体を含むものとすることで、重合率を高め有機重合体粒子における残存モノマーを低減することができ、その結果、有機重合体粒子をマスターバッチ化した際にも、黄変を抑制することができる。さらに、外層が単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位と架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位を含むことで、樹脂(特にポリオレフィン樹脂)との屈折率差を小さくすることができ、この有機重合体粒子を用いて得られるフィルムの外観も良好となる。
【0016】
本発明の有機重合体粒子の外層に用いられるスチレン系モノマー(S1)としては、芳香族環(特にベンゼン)に炭素−炭素二重結合含有基(特に、ビニル基)が結合している化合物が挙げられる。具体的には、スチレン;α−メチルスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;p−フェニルスチレン等のアリールスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン化スチレン;等が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。中でも、スチレン、アルキルスチレン、ハロゲン化スチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0017】
スチレン系モノマー(S1)単位は、外層を構成する共重合体中、75質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。スチレン系モノマー(S1)単位の割合がこの範囲となる共重合体は、重合率が向上したものとなり、残存モノマーを低減することができる。さらに、スチレン系モノマー(S1)単位は、外層を構成する共重合体中、35質量%以下であることが最も好ましい。スチレン系モノマー(S1)単位の割合がこの範囲にあると、樹脂(特にポリオレフィン樹脂)と有機重合体粒子の屈折率差が抑制され、樹脂フィルム用アンチブロッキング剤として用いた場合にも、樹脂フィルムの透明性を確保することができる。またスチレン系モノマー(S1)単位は、樹脂(特にポリオレフィン樹脂)との親和性(疎水性)を確保する観点から、外層を構成する共重合体中、例えば、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。
なお原料モノマー全量における各モノマーの割合は、共重合体における各モノマーに由来する構造単位の割合に近似することができ、本明細書においては、原料モノマー全量における各モノマーの割合について記載した数値範囲は、いずれも共重合体における各モノマーに由来する構造単位の割合に適用できる。
【0018】
外層に用いられる単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)としては、(メタ)アクリル酸のC
1-4アルキルエステルが好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、1種又は2種以上を使用できる。粒子の形成が容易である観点からは、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)は、メタクリル系モノマーであることが好ましい。
【0019】
単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位の割合は、外層を構成する共重合体中、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、89質量%以下であることが好ましく、より好ましくは77質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位の割合がこの範囲にあると、外層における重合率が高められ、残存モノマーを低減することができる。
【0020】
また、外層を構成する共重合体中、前記単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位と単官能スチレン系モノマー(S1)単位の質量比((S2)/(S1))は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは1以上であり、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下であり、特に好ましくは2以下である。前記質量比((S2)/(S1))がこの範囲にあると、外層における重合率が高められやすくなる。
【0021】
外層に用いられる架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)は、一分子中に、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を意味する。前記2個以上の(メタ)アクリロイル基は、アルキレングリコール等のジオール化合物;トリオール化合物;テトラオール化合物等のポリオール化合物を介して結合していることが好ましく、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール等のアルキレングリコール(特にエチレングリコール)とエステル結合を形成して結合していることがより好ましい。
【0022】
前記架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)のうち、2官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等のアルケンジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコール単位の繰り返し数は、例えば2〜150);等が挙げられる。また、3官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられ、4官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ、6官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を使用できる。
【0023】
中でも、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)としては、2〜6官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、より好ましくは2〜4官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーであり、さらに好ましくは2官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーであり、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、(メタ)アクリロイル基としては、メタクリロイル基が好ましい。
【0024】
前記架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位の割合は、外層を構成する共重合体中、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0025】
外層を構成する共重合体は、上記単官能スチレン系モノマー(S1)単位、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位以外に他のモノマー(S4)に由来する構造単位を含んでいてもよい。他のモノマー(S4)としては、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC
5-12アルキルエステル;シクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の単環又は多環の脂環式炭化水素基(特に飽和環式炭化水素基)を含有する(メタ)アクリル系モノマー;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系モノマー;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系モノマー;アクリロニトリル等のニトリル系モノマー;(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;N−ビニルピロリドン;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のモノ環状エーテル含有アクリレート;m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤;ポリブタジエン;特公昭57−56507号公報、特開昭59−221304号公報、特開昭59−221305号公報、特開昭59−221306号公報、特開昭59−221307号公報等に記載される反応性重合体;等が挙げられる。
【0026】
他のモノマー(S4)単位の割合は、外層を構成する共重合体中、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、0質量%であることが特に好ましい。また、特に、芳香族ジビニル化合物単位の割合は、外層を構成する共重合体中、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、0質量%であることが特に好ましい。
【0027】
上記単官能スチレン系モノマー(S1)単位、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)単位、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)単位、及び必要に応じて他のモノマー(S4)単位を有する共重合体の割合は、外層中、90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0028】
上記外層の共重合体は、単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位と架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位を有する共重合体である基部の表面に形成されている。このような基部を用いることで、フィルム用の樹脂(特にポリオレフィン樹脂)との屈折率差を小さくすることができ、さらに外層が上記モノマーの共重合体を含むことで、外層の屈折率をフィルム用の樹脂(特に、ポリオレフィン樹脂)と同等に調節することができる。その結果、本発明の有機重合体粒子を用いた樹脂フィルムの透明性を確保することが容易となる。
【0029】
前記基部に用いられる単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)としては、上記外層に用いられる単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)に用いられるモノマーとして例示したモノマーと同様のモノマーを用いることができ、(メタ)アクリル酸のC
1-4アルキルエステルが好ましい。単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)は、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)と同一であっても異なっていてもよい。また、単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)は、メタクリル系モノマーであることが好ましい。
【0030】
単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位の割合は、基部を構成する共重合体中、70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは88質量%以上であり、97質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは93質量%以下である。単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位の割合がこの範囲にあると、樹脂フィルム用アンチブロッキング剤に適した光学的特性が得られやすくなる。
【0031】
前記基部に用いられる架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)としては、上記外層に用いられる架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)として例示した架橋性(メタ)アクリル系モノマーと同様のモノマーを用いることができる。架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)は、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)と同一であっても異なっていてもよい。中でも、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)としては、2〜6官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、より好ましくは2〜4官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーであり、さらに好ましくは2官能架橋性(メタ)アクリル系モノマーであり、アルカンジオールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。また、(メタ)アクリロイル基としては、メタクリロイル基が好ましい。
【0032】
架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位の割合は、基部を構成する共重合体中、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、12質量%以下であることが特に好ましい。架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位の割合が前記範囲にあると、樹脂フィルム用アンチブロッキング剤に適した機械的特性が得られやすくなる。
【0033】
基部を構成する共重合体は、上記単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位以外に他のモノマー(C3)に由来する構造単位を含んでいてもよい。他のモノマー(C3)としては、上記外層に用いられるモノマーに含まれていてもよい他のモノマー(S4)として例示したモノマー、及び外層に用いられる単官能スチレン系モノマー(S1)として例示したモノマーが挙げられる。
【0034】
前記他のモノマー(C3)単位の割合は、基部を構成する共重合体中、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、0質量%であることが特に好ましい。特に、上記芳香族ジビニル化合物、単官能スチレン系モノマー(S1)として例示したモノマー等のビニル基含有芳香族系モノマーに由来する構造単位は、基部を構成する共重合体中、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは0質量%である。ビニル基含有芳香族系モノマー単位の割合が前記範囲にあると、有機重合体粒子の屈折率を抑制し有機重合体粒子と樹脂(特にポリオレフィン樹脂)との屈折率差を小さくできるため、この有機重合体粒子を用いて得られるフィルムの外観(透明性)が良好である。
【0035】
上記単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)単位、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)単位、及び必要に応じて他のモノマー(C3)単位を有する共重合体の割合は、基部中、90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0036】
基部に用いられる全モノマーと、外層に用いられる全モノマーの質量比(基部/外層)は、4以上であることが好ましく、より好ましくは6以上であり、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。前記質量比が前記範囲にあることで、基部を構成する共重合体の機械的・光学的特性を反映しつつ、外層を構成する共重合体の表面特性を有機重合体粒子に適用することが容易となる。
【0037】
本発明の有機重合体粒子は、基部及び外層が上記モノマーの共重合体を含むため、モノマーの残存量が抑制されている。
中でも、単官能スチレン系モノマーの残存量は、有機重合体粒子中、質量基準で2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1200ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、よりいっそう好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下であり、25ppm以下であることが最も好ましい。有機重合体粒子中の単官能スチレン系モノマーの残存量は、質量基準で0ppmであることが最も好ましいが、例えば1ppm以上、さらには3ppm以上であってもよい。またスチレン系モノマーの残存量が前記範囲にあれば、食品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム等への使用が可能である。
さらに、有機重合体粒子中の単官能スチレン系モノマーの残存量は、単官能スチレン系モノマーの合計使用量に対して、2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.07質量%以下であり、0質量%であることが最も好ましいが、例えば0.01質量%以上であってもよい。
【0038】
単官能(メタ)アクリル系モノマーの残存量は、有機重合体粒子中、質量基準で2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは1200ppm以下であり、0ppmであることが最も好ましいが、例えば10ppm以上、さらには100ppm以上であってもよい。
また単官能(メタ)アクリル系モノマーの残存量は、単官能(メタ)アクリル系モノマーの合計使用量に対して、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、また単官能(メタ)アクリル系モノマーの残存量は0質量%であることが最も好ましいが、例えば0.01質量%以上、さらには0.03質量%以上であってもよい。
【0039】
また、モノマーの残存量の合計は、有機重合体粒子中、質量基準で2500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは1200ppm以下である。また、有機重合体粒子中のモノマー残存量の合計は、質量基準で0ppmであることが最も好ましいが、例えば10ppm以上、さらには100ppm以上であってもよい。
【0040】
また、本発明の有機重合体粒子は、基部及び外層が特定の共重合組成を有する共重合体を含むものであるため、各共重合体の重合率が高められている結果、モノマー残存量が低減されており、本発明の有機重合体粒子は、高温(例えば180〜240℃、好ましくは200〜220℃)で加熱した場合でも、黄変が抑制されたものとなる。
【0041】
また本発明の有機重合体粒子の水分量は、有機重合体粒子中、2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。水分量は、有機重合体粒子の乾燥時間及び乾燥温度により調整でき、80〜90℃(好ましくは85〜90℃)で、10時間以上(好ましくは12時間以上)乾燥させることにより上記範囲に水分量を低減することができる。
【0042】
本発明の有機重合体粒子の熱分解開始温度は、250℃以上であることが好ましく、より好ましくは260℃以上、さらに好ましくは270℃以上であり、例えば320℃以下であり、300℃以下であってもよい。
熱分解開始温度は、熱分析装置を用い、実施例で後述する方法により求めることができる。
【0043】
本発明の有機重合体粒子の質量平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、よりいっそう好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
また、有機重合体粒子の粒子径の変動係数は、50%以下であることが好ましく、より好ましくは45%以下であり、5%以上であってもよく、10%以上であってもよい。
前記粒子径の変動係数は、下記式で求められる。式中、σはコールターカウンター法を用いた精密粒度分布測定装置により求められる質量基準の粒子径の標準偏差を表し、d50は、質量基準の平均粒子径を表す。
粒子径の変動係数(%)=(σ/d50)×100
【0044】
上記本発明の有機重合体粒子は、上記単官能(メタ)アクリル系モノマー(C1)、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(C2)、及び必要に応じて他のモノマー(C3)(以下これらのモノマーをまとめて、「基部形成用モノマー」という場合がある)を、重合開始剤の存在下、液中で重合することにより基部を調製し、次いで、基部の表面に上記単官能スチレン系モノマー(S1)、単官能(メタ)アクリル系モノマー(S2)、架橋性(メタ)アクリル系モノマー(S3)、及び必要に応じて他のモノマー(S4)(以下、これらのモノマーをまとめて「外層形成用モノマー」という場合がある)を重合して外層を形成することで製造することができる。
【0045】
基部を調製する際に用いる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤(特に熱重合開始剤)が好ましい。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、オルトクロロベンゾイルパーオキシド、オルトメトキシベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、クメンヒドロパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等の過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物系重合開始剤が挙げられる。
中でも、過酸化物系重合開始剤が好ましい。
【0046】
また、重合開始剤の10時間半減期温度は、重合反応の制御や、昇温による重合開始剤の除去の観点から、40〜80℃(好ましくは50〜70℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0047】
重合開始剤は、基部形成用モノマーの合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0048】
基部の調製は、通常、水系溶媒中、界面活性剤の存在下で実施され、例えば、懸濁重合、エマルション重合など(好ましくは懸濁重合)によって調製される。これらの重合法によれば、基部を球形にでき、また粒径のそろった基部を得ることができる。例えば懸濁重合法では、基部形成用モノマー、重合開始剤、界面活性剤、及び水系溶媒を含む基部組成溶液を調製し強制撹拌した後、重合温度に加熱して重合反応を開始する。
【0049】
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらは単独で用いても、適宜組み合わせて用いてもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩;等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアルキルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
両性界面活性剤は、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド等である。
中でも、重合安定性、懸濁安定性が良好である観点から、アニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
【0050】
界面活性剤は、基部形成用モノマー100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。界面活性剤が多いほど、懸濁安定性が良好となる。
【0051】
前記基部を形成する際の水系溶媒は、水単独であってもよく、水と非水溶媒との組合せであってもよい。水は、水系溶媒100質量部中、例えば、80質量部以上、好ましくは90質量部以上、さらに好ましくは95質量部以上、特に好ましくは99質量部以上である。
非水溶媒を使用する場合、その使用量は、基部形成用モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。非水溶媒がこの範囲にあると、懸濁安定性が良好である。
また水系溶媒は、基部形成用モノマー100質量部に対して、200質量部以上であることが好ましく、より好ましくは300質量部以上、さらに好ましくは350質量部以上であり、1000質量部以下であることが好ましく、より好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0052】
上記基部形成用モノマー、重合開始剤、界面活性剤、及び水系溶媒を含む基部組成溶液を強制撹拌する際は、公知の乳化分散装置を用いることができる。乳化分散装置としては、例えば、マイルダー(荏原製作所製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)等の高速せん断タービン型分散機;ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等の高圧ジェットホモジナイザー;超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等の超音波式乳化分散機;アトライター(三井鉱山社製)等の媒体撹拌分散機;コロイドミル(日本精機製作所製)等の強制間隙通過型分散機等を用いることができる。なお、上記強制撹拌の前に、通常のパドル翼等で予備撹拌しておいてもよい。
【0053】
撹拌速度は、例えば、3000rpm以上が好ましく、4000rpm以上がより好ましい。撹拌速度が大きいほど、得られる基部の粒子径を小さくすることができる。また、撹拌時間は、通常10〜60分であることが好ましい。撹拌時間が長いほど、基部の粒子径を小さくすることができ、粒子径分布を狭くすることができる。また、撹拌時間が前記範囲にあると、液温の上昇を防ぐことができ、重合反応の制御が容易となる。
【0054】
上記強制撹拌後の基部組成溶液を重合する際、重合温度は40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。重合温度は、例えば、用いる重合開始剤の10時間半減期温度より2〜4℃高い温度とすることが好ましい。重合温度が前記範囲にあると、重合開始剤の分解が適度に進行し、得られる有機重合体粒子における重合開始剤の残存量が低減されると同時に、重合安定性も良好である。具体的に、使用する重合開始剤がラウリルパーオキシドの場合、ラウリルパーオキシドの10時間半減期温度が62℃であることから、重合温度は64〜66℃とすることが好ましい。
【0055】
また、重合時間は、5〜600分であることが好ましく、10〜300分であることがより好ましい。重合時間が前記範囲にあると、重合度を適度に高め、粒子の機械的特性を向上できる。重合雰囲気は、窒素雰囲気、希ガス雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。
【0056】
上記のように基部形成用モノマーを重合して得られた基部には、重合開始剤が残存しているため、基部と外層形成用モノマーとを接触させると、基部中に残存する重合開始剤によって外層形成用モノマーの重合反応が進行し、基部表面に外層が形成される。このため外層形成時には、重合開始剤をさらに添加する必要はない。むしろ重合開始剤を加えると、外層形成用モノマーが単独で重合して外層を形成しない恐れが高まるため、重合開始剤添加は好ましくないが、発明を阻害しない範囲で少量の重合開始剤を加えることは許容される。外層形成の際の重合開始剤の添加量は、例えば、外層形成用モノマー100質量部に対して、1質量部以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量部以下である。
【0057】
本工程において、基部と外層形成用モノマーとを接触するためには、基部含有反応液と外層形成用モノマーを混合すればよく、そのタイミングは、基部形成用モノマーの重合がほぼ完了した段階であることが好ましい。基部形成用モノマーの重合がほぼ完了した段階で、基部含有反応液に外層形成用モノマーを混合することにより、基部形成用モノマーと外層形成用モノマーの共重合が抑制され、基部形成用モノマーから形成された基部の表面に、外層形成用モノマーから形成された外層とを有する有機重合体粒子が得られる。
【0058】
このため、基部と外層形成用モノマーとを接触するタイミングは、例えば、基部形成用モノマーの重合率が80〜99質量%、より好ましくは85〜98質量%となったタイミングであることが好ましい。また、基部形成用モノマーの重合率が80〜99質量%(好ましくは85〜98質量%)の範囲にある間に、外層形成用モノマーの混合を開始し、かつ全量を混合し終えることが好ましい。ここで、基部形成用モノマーの重合率は、(仕込みモノマー量−残存モノマー量)/(仕込みモノマー量)で表される。前記残存モノマー量は、ガスクロマトグラフィを用いて測定できる。
【0059】
前記基部形成用モノマーの重合率は、反応液温度の変化から推測することができる。例えば、実施例に記載の方法では、反応液温度が極大値を取るときの重合率がおよそ94質量%前後であるため、この付近で外層形成用モノマーの添加を開始することが好ましい。
【0060】
外層形成用モノマーを重合させる際、重合温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。重合温度は、用いる重合開始剤の種類によって、適宜変更できる。また、重合時間は、5〜600分であることが好ましく、10〜300分であることが好ましい。重合時間が前記範囲にあると、重合度を適度に高め、粒子の機械的特性を向上できる。重合温度及び重合時間が前記範囲にあると、重合開始剤の分解が進行して、有機重合体粒子に残留する重合開始剤の量を低減できる。重合雰囲気は、窒素雰囲気、希ガス雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。
【0061】
基部と外層形成用モノマーとを混合するに際して、予め外層形成用モノマー、界面活性剤、及び、水系溶媒を含む外層組成溶液を調製して強制撹拌し、プレエマルションとしておくことが好ましい。これにより、外層形成用モノマーが反応液中に均一に分散するため、基部表面に均一な外層を形成することが容易となる。添加方法は一括添加、逐次添加のいずれでもよく、逐次添加する方法としては、例えば、滴下により添加する方法が好ましい。
【0062】
プレエマルション化に用いる界面活性剤としては、上記基部組成溶液における界面活性剤と同様の界面活性剤を用いることができ、アニオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩がより好ましい。
プレエマルション化に用いる界面活性剤は、プレエマルションの安定性の観点から、外層形成用モノマー100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であり、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下である。
【0063】
プレエマルション化に用いる水系溶媒としては、上記基部組成溶液における水系溶媒と同様の水系溶媒を用いることができる。
プレエマルション化に用いる水系溶媒は、外層形成用モノマー100質量部に対して、200質量部以上であることが好ましく、より好ましくは300質量部以上、さらに好ましくは350質量部以上であり、1000質量部以下であることが好ましく、より好ましくは700質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0064】
前記強制撹拌する方法としては、基部組成溶液の強制撹拌法と同様の方法を使用できる。撹拌速度は、例えば、3000rpm以上が好ましく、4000rpm以上がより好ましい。また、撹拌時間は、通常5〜30分であることが好ましい。
【0065】
得られた有機重合体粒子を含む反応液を、必要に応じて濃縮又は固液分離し、溶媒を除去(予備乾燥)しておいてもよい。濃縮又は固液分離する方法としては、例えば、沈降濃縮、ろ過、遠心分離(デカンタ)、湿式ふるい分け、液体サイクロン等が挙げられ、遠心分離(デカンタ)が好ましい。適宜乾燥させておくことが好ましい。乾燥の際には、乾燥温度80〜90℃(好ましくは85〜90℃)で、10時間以上(好ましくは12時間以上)乾燥させることにより水分量を低減することができる。
【0066】
なお有機重合体粒子を製造する際、重合反応に影響を及ぼさない範囲で、沈降防止剤、防カビ剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を共存させてもよい。
【0067】
2.マスターバッチ
上述のように本発明の有機重合体粒子は、残存モノマー量が低減され、加熱しても黄変が少ないため樹脂用添加剤として有用であり、本発明の有機重合体粒子と樹脂とを含むマスターバッチも本発明の範囲に含まれる。また本発明の有機重合体粒子は、樹脂との親和性が維持されているため、得られる樹脂組成物(マスターバッチ)や樹脂フィルム中における有機重合体粒子の配合量の調整が容易となり、有機重合体粒子の分散状態をより均一にして偏析を抑制することができる。
【0068】
マスターバッチに用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂に分類される樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂が好ましい。前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)等が挙げられ、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレン樹脂には主に、ポリプロピレンのみからなるホモポリマー、プロピレン(好ましくは95質量%以上)と少量(好ましくは5質量%以下)のエチレンを共重合させたランダムポリマーがある。本発明についてポリプロピレン樹脂という場合において、この2種類、もしくはその他プロピレン等と共重合させて物性を改良したポリプロピレン樹脂全般を示すこととする。中でも、プロピレンに由来する単位の割合が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であるポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0069】
樹脂は、マスターバッチ中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上であり、99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下である。
【0070】
マスターバッチにおける有機重合体粒子の含有量は、マスターバッチ中の樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、一層好ましくは15質量部以下である。
【0071】
本発明のマスターバッチは、さらに酸化防止剤を含んでいることが好ましい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。特に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の合計は、酸化防止剤中80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、酸化防止剤中20〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。
さらに酸化防止剤は、マスターバッチ中の樹脂100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上であり、7質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。
【0072】
前記マスターバッチのYellow Index(ASTM E313)は、6.3以下であることが好ましく、より好ましくは6.2以下、さらに好ましくは6.1以下である。
【0073】
マスターバッチを調製する方法としては、例えば、樹脂を合成する重合段階に重合体粒子を添加混合する方法;重合後の樹脂に対してエクストルーダー等を用いて溶融混合する方法;樹脂を溶剤に溶解した状態で重合体粒子を添加混合する方法;等が挙げられる。これらの中でも、有機重合体粒子が高濃度に分散含有された樹脂組成物を製造しやすいため、溶融混合する方法が好ましい。この際、溶融温度は、180〜240℃が好ましく、200〜220℃がより好ましい。
調製されたマスターバッチは、通常、粉末状あるいはペレット状に加工される。
【0074】
3.樹脂フィルム
本発明の有機重合体粒子は、樹脂フィルム用のアンチブロッキング剤として有用である。樹脂フィルムに用いる樹脂(以下、「マトリックス樹脂」ともいう。)としては、前記マスターバッチに用いる樹脂として例示した範囲から選択できる。なおマスターバッチに加工してから樹脂フィルムを製造する場合、マトリックス樹脂は、マスターバッチに用いる樹脂と同じであっても異なっていてもよい。
【0075】
また、有機重合体粒子をアンチブロッキング剤として用いる場合、有機重合体粒子は、有機重合体粒子と樹脂フィルムの合計100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であり、2質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
【0076】
また前記樹脂フィルムの厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上であり、1mm以下であることが好ましく、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。
【0077】
有機重合体粒子をアンチブロッキング剤として使用した樹脂フィルムを製造する際には、有機重合体粒子を直接、あるいは前記マスターバッチに加工した後、上記割合となるようにフィルム用の樹脂と混合(好ましくは溶融混合)して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を成形することにより微粒子含有樹脂フィルムを製造することができる。樹脂組成物を成形する際には、樹脂組成物を溶融押出することが好ましく、さらに延伸することが好ましい。溶融押出しにより未延伸フィルム(キャストフィルム)を得ることができ、この未延伸フィルム(キャストフィルム)を延伸することにより延伸フィルムを製造することができる。この際用いる樹脂としては、上記マスターバッチに用いる樹脂と同じであっても異なっていてもよい。特に、生産性、加工性の観点から、ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、より好ましくはポリプロピレン樹脂であり、さらに好ましくはプロピレンに由来する単位が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上のポリプロピレン樹脂であり、特に好ましくはポリプロピレンのみからなるホモポリマーである。マスターバッチを用いることで、有機重合体粒子の分散性が良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0078】
特に、前記マスターバッチには、有機重合体粒子が高濃度に含まれており、さらに樹脂と混合し、希釈することで、有機重合体粒子がより均一に分散している樹脂組成物を得ることができる。マスターバッチを用いる場合、希釈に用いられる樹脂は、マスターバッチ1質量部に対して、2質量部以上、200質量部以下となることが好ましく、より好ましくは3質量部以上、150質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上、100質量部以下である。
【0079】
有機重合体粒子と樹脂とを混合し、樹脂組成物を成形する方法としては、Tダイ法等の溶融押出成形法が好ましい。微粒子含有樹脂フィルムと基材フィルムとを積層して積層フィルムを製造する場合には、共押出すればよい。この際、溶融温度は、180〜240℃が好ましく、200〜220℃がより好ましい。
【0080】
本発明の有機重合体粒子はモノマー残存量が抑制されており、かつ加熱に際しても黄変が抑制されている。したがって、樹脂フィルム用のアンチブロッキング剤として有用である。また、本発明の有機重合体粒子を含む樹脂フィルムは、一般包装資材、食品包装フィルム等の食品包装資材、或いは、医薬品包装フィルム等の医薬品包装資材として好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0082】
実施例で用いた測定方法は、以下の通りである。
[粒子径、変動係数の測定]
有機重合体粒子0.025gを、界面活性剤(「ハイテノール(登録商標)N−08」、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、第一工業製薬(株)製)の濃度を1%に調製したイオン交換水8gに分散させて有機重合体粒子分散液を調整し、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター(株)製の「コールターマルチサイザーIII」、アパーチャ50μm)を使用して、30,000個の有機重合体粒子の粒子径を測定し、質量基準の平均粒径および粒子径の変動係数を求めた。
粒子径の変動係数(%)=(σ/d50)×100
ここで、σは粒子径の標準偏差、d50は、質量基準の平均粒子径を示す。
【0083】
[熱分解開始温度の測定]
有機重合体粒子の熱分解開始温度は、熱分析装置(DTG−50M、(株)島津製作所製)を使用して、試料量15mg、昇温速度10℃/分(最高到達温度500℃)、空気中、流量20mL/分の条件で測定した。まず、精密天秤を使用して、規定のアルミカップに15mgの試料を計り取り、このアルミカップを熱分析装置の所定の位置にセットし、空気が規定流量(20mL/分)流れるように調整し、装置が安定した後、昇温を開始した。このとき得られたTG(温度−重量)曲線のベースライン(水平線部)の延長線と、質量減少部分(右下がりの斜線部)の接線との交点を有機重合体粒子の熱分解開始温度とした。
【0084】
[残存モノマーの測定]
有機重合体粒子の残存モノマーの測定は、ガスクロマトグラフを用い、カラムはDB−1(J&W Scientific製)長さ30m、カラム径0.53mmを使用した。気化室温度280℃、検出器温度280℃とし、50℃で3分保持後、10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温し、260℃到達後は15分間260℃を保持するカラム温度プログラムで測定した。ブチルベンゼンを内部標準として使用し、使用したモノマーについて検量線を作成し、有機重合体粒子中の残存モノマー量を定量した。
【0085】
[黄色度評価]
上記で得られた有機重合体粒子10部とポリプロピレンペレット(ノバテック FY4 日本ポリプロ製)90部、酸化防止剤irganox1010を0.5部、irgafos168を0.5部混合し、同方向回転二軸混練押出機(「HK−25D」、(株)パーカーコーポレーション製)を用いて212℃で溶融混練をし、水冷しストランドを得た。適宜切断することで有機重合体粒子が10%入ったポリプロピレンマスターバッチを作成した。
【0086】
ユニパックA−8((株)生産日本製 低密度ポリエチレン袋(厚さ0.08mm、寸法70mm×50mm))に上記で得られたポリプロピレンマスターバッチを約7g入れ、分光色差計SE−6000(日本電色工業(株)製)を用いて、反射モードで色目を測定した。Yellow Index(ASTM E313)値を黄色度評価とした。
この数値が小さいほど、白色に近いことを意味する。
【0087】
<実施例1>
基部組成溶液の調製
フラスコ(1)にポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名「ハイテノール(登録商標)NF−08」、第一工業製薬(株)製)3.6部を溶解した脱イオン水523部を仕込んだ。それとは別に、フラスコ(2)に基部形成用モノマーとしてのメタクリル酸メチル(MMA)327.6部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)32.4部を入れ、ラウリルパーオキシド(LPO)7.2部(モノマー質量に対し2質量%)を溶解させた。
フラスコ(1)とフラスコ(2)を混合し、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)により4000rpmで10分間撹拌して均一な懸濁液とした。
【0088】
外層組成溶液の調製
フラスコ(3)に外層形成用モノマーとしてのメタクリル酸メチル(MMA)32.3部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)5.4部、スチレン(St)16.1部を仕込んだ。それとは別にフラスコ(4)に前記「ハイテノール(登録商標)NF−08」0.54部を溶解した脱イオン水213.4部を仕込んだ。
フラスコ(3)とフラスコ(4)を混合し、T.K.ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)により4000rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液とした。
【0089】
粒子合成
前記基部組成溶液を、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水を900部追加し、次いで窒素ガスを吹き込みながら反応溶液が65℃になるまで加熱し、65℃で反応容器を保温し、自己発熱により温度上昇が75℃を超えピークに達した直後に外層組成溶液を滴下ロートから滴下した。滴下終了後に重合溶液の内温を75℃に調整、この温度で1.5時間撹拌を続けた後、重合液をさらに85℃まで昇温させて1時間撹拌し、1.5重量%過硫酸アンモニウム水溶液を74.5部添加してさらに1時間撹拌した後に重合反応を完了させた。その後反応液(懸濁液)を冷却し、濾過して重合生成物を濾取し、これを熱風乾燥機(ヤマト科学(株)製)で85℃ 15時間乾燥して有機重合体粒子を得た。得られた有機重合体粒子は質量平均粒子径が4.5μm、変動係数が37%であった。
得られた乾燥有機重合体粒子は乾燥により凝集しているので、スーパージェットミルSJ−500(日清エンジニアリング(株)製)を使用し常温下で粉砕圧0.3MPaにて粉砕した。これにより凝集のない有機重合体粒子を得た。
【0090】
<実施例2〜4、比較例1〜2、4>
実施例1記載の外層組成溶液において、外層形成用モノマーをメタクリル酸メチル(MMA)32.3部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)5.4部、スチレン(St)16.1部とする代わりに、表1に示す外層形成用モノマーを用いたこと以外は実施例1記載の方法で有機重合体粒子を作製した。
なお、表1中、DVBはジビニルベンゼン(DVB 57%)を表すものとする。
【0091】
<比較例3>
比較例1記載の有機重合体粒子の乾燥条件を、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)中で、真空度50Torr、ジャケット温度80℃に設定し、撹拌しながら72時間乾燥とした。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、外層が所定のモノマー単位を有する共重合体を含む有機重合体粒子では、残存モノマーが低減されており、マスターバッチ化した際の黄変も抑制されていることがわかる。