特許第6605910号(P6605910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605910巨大分子を含む細胞透過性ペプチドが導入された薬物送達担体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605910
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】巨大分子を含む細胞透過性ペプチドが導入された薬物送達担体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20191031BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20191031BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20191031BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20191031BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20191031BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   A61K47/42ZNA
   A61K47/36
   A61K47/34
   A61K47/32
   A61K47/28
   A61K47/24
   A61K9/127
   A61K9/107
   A61K8/06
   A61K8/14
   A61K8/64
   A61Q19/00
   C07K7/08
【請求項の数】25
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-203125(P2015-203125)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-79182(P2016-79182A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0139024
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0130127
(32)【優先日】2015年9月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム, ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ノク ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ペ, イル−ホン
(72)【発明者】
【氏名】ゴ, ミョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ジェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】シン, ソン ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジョン フヮン
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0003177(KR,A)
【文献】 国際公開第2007/078060(WO,A1)
【文献】 特開平03−143540(JP,A)
【文献】 特開平06−178930(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/074578(WO,A1)
【文献】 再公表特許第2005/053643(JP,A1)
【文献】 Colloiids and Surfaces A,2007年,Vol.299,p.160-168
【文献】 日薬理誌,2013年,Vol.141,p.220-221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00−47/69
A61K 8/00− 8/99
A61K 9/00− 9/72
A61Q 19/00−19/10
C07K 7/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/WPIDS/DGENE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖と共有結合された脂質構造体含む薬物送達担体であって、
前記脂質構造体、その構造内部に生理活性成分が捕集される構造であり、
前記生理活性成分は、数平均分子量または重量平均分子量が500Da以上である水溶性または水不溶性巨大分子であり、
前記細胞透過ペプチドは、配列番号1(Gly Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Gly Tyr Lys Cys)の配列を持つペプチドであり、
前記脂質構造体は両親媒性高分子を含み、
前記両親媒性高分子は、化学式2で表されるポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート−co−n−アルキルメタクリレート)ランダム共重合体を含む、薬物送達担体。
【化1】
[前記式中、n=7〜22であり、
x:yは、モル比で90:10〜50:50である。]
【請求項2】
前記水溶性または水不溶性巨大分子の数平均分子量または重量平均分子量は5,000Da以上である請求項1に記載の薬物送達担体。
【請求項3】
前記水溶性または水不溶性巨大分子の数平均分子量または重量平均分子量は8,000Da以上である請求項1又は2に記載の薬物送達担体。
【請求項4】
前記細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖は、両親媒性高分子と共有結合された請求項1〜のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項5】
前記両親媒性高分子は、ヒアルロン酸側鎖にアルキル基が付着したアルキル化ヒアルロン酸(alkylated hyaluronic acid)、及び化学式1で表されるポリ(メタクリル酸−co−n−アルキルメタクリレート)ランダム共重合体らなる群から選ばれた一種以上をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【化2】
[前記式中、n=7〜22であり、
x:yは、モル比で90:10〜50:50である。]
【請求項6】
前記脂質構造体前記両親媒性高分子の総重量を基準にして、前記両親媒性高分子を1〜50重量%及び前記脂質構造体50〜99重量%で含有する請求項のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項7】
前記両親媒性高分子は、数平均分子量が5,000〜200,000Daである請求項のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項8】
前記薬物送達担体は、レステロール誘導体をさらに含む請求項1〜のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項9】
前記薬物送達担体において前記脂質構造体は、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−Mal)複合体のうちの一種以上を含むものである請求項1〜のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項10】
前記薬物送達担体は、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン:ホスファチジルコリン:コレステロール誘導体:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−Mal)複合体を1.0〜2.0:1.0〜2.0:1.0〜3.0:0.01〜1.0のモル比で含むものである請求項1〜のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項11】
前記脂質構造体は、リポソームまたはエマルジョンである請求項1〜10のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項12】
前記リポソームまたはエマルジョンの脂質成分は、炭素数12〜24の脂肪酸鎖を持つリン脂質類または窒素脂質である請求項11に記載の薬物送達担体。
【請求項13】
前記リン脂質類は、卵黄レシチン(ホスファチジルコリン)、大豆レシチン、リゾレシチン(lysolecithin)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ジホスファチジルグリセロール、カルジオリピン(cardiolipin)、プラスマロゲンの天然リン脂質、これらのリン脂質から通常の方法にて収得することができる水素添加生成物、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルセリンの合成脂質、及びこれらの加水分解によって収得することができる脂肪酸混合物からなる群から選ばれた一種以上であることを特徴とする請求項12に記載の薬物送達担体。
【請求項14】
前記リン脂質類は、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとの組み合わせ、ホスファチジルコリンとホスファチジルグリセロールとの組み合わせ、ホスファチジルコリンとホスファチジルイノシトールとの組み合わせ、ホスファチジルコリンとホスファチジン酸との組み合わせ、ホスファチジルコリンとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとの組み合わせ、またはホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンの組み合わせであることを特徴とする請求項13に記載の薬物送達担体。
【請求項15】
前記組み合わせ比は、最小成分に対する最大成分の混合比率が1:5以下であることを特徴とする請求項14に記載の薬物送達担体。
【請求項16】
前記組み合わせは、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンであり、前記ホスファチジルコリン:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン:ホスファチジルセリンの組み合わせ比は、1〜4:1〜2:1〜2であることを特徴とする請求項14に記載の薬物送達担体。
【請求項17】
前記脂質成分は、全体リポソーム分散液またはエマルジョン総重量に対し、0.001〜20重量%である請求項12に記載の薬物送達担体。
【請求項18】
前記共有結合は、前記ペプチドまたはペプチドを含むペプチド鎖と前記脂質構造体間に塩基、リンカーまたはマルチリガンド化合物を添加してなる請求項1〜17のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項19】
前記薬物送達担体の平均粒子径は1,000nm以下である請求項1〜18のいずれか一項に記載の薬物送達担体。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の薬物送達担体及び担体内部に捕集された生理活性成分を含む組成物。
【請求項21】
前記生理活性成分は、合成された水溶性巨大分子物質、天然物の抽出によって収得される巨大分子物質、酵素、EGF、蛋白質、ペプチド、及び多糖類からなる群から選ばれた一種以上である請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記薬物送達担体に捕集された生理活性成分は、前記脂質構造体総重量に対して0.01〜30重量%である請求項20又は21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、皮膚外用剤、経口用製剤及び注射剤からなる群から選ばれる剤形を有する薬剤学的組成物である請求項2022のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファウンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石けん、クレンジングフォーム、クレジングローション、クレンジングクリーム、ボディーローション、及びボディークレンザーからなる群から選ばれたいずれか一つ以上の剤形を有する化粧料組成物である請求項2022のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記生理活性成分は、溶性巨大分子であ請求項2022のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、巨大分子を含む細胞透過性ペプチドが導入された薬物送達担体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、親水性で且つ巨大な物質は、細胞膜というバリアによって細胞内に入ることができない。細胞膜はペプチドや蛋白質、核酸といった巨大分子が細胞内に入ってこないように阻止し、細胞膜受容体によるエンドサイトーシス(endocytosis)という生理的機作によって細胞内に入ってきたとしても細胞のリソソーム(lysosomal compartment)と融合して結局分解されるため、これらを利用した病気の治療や予防において多くの制約が伴う。
【0003】
したがって、生体物質を生体内に効果的に送達でき且つ細胞毒性のない新規な製剤の開発が求められており、切実である。近年、複数の新しい代案が報告されており、それらのうち、細胞膜透過性ペプチド(cell permeable peptide)が、これまでは低い細胞膜透過性及び早い生体内半減期のため、薬品として使用し難かった治療用蛋白質及び遺伝子のような巨大分子の利用価値を高めることができ、多くの脚光を浴びている。
【0004】
このような細胞膜透過機能を持つペプチドは、主に蛋白質から誘導された膜透過性ペプチドであって、大きく三種類に分類できる。第一は、ホメオドメイン(homeodomain)由来のペプチドであるペネトラチン(penetratin)であって、これは配列番号2(Drosophila melanogaster、アミノ酸配列:Arg Gln Ile Lys Ile Trp Phe Gln Asn Arg Arg Met Lys Trp Lys Lys)のアミノ酸配列を持つ。これは、ショウジョウバエ(Drosophila)のホメオ蛋白質(homeoprotein)のアンテナペディア(Antennapedia)のホメオドメインから発見された(A. Joliot et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、(1991) 88、1864)。ここで、ホメオ蛋白質とは、一種の転写因子であってホメオドメインと呼ばれるDNAと結合し得る60個程度のアミノ酸構造を持っている。第二は、後天性免疫欠乏症候群(acquired immune deficiency syndrome、AIDS)を起こす菌株であるヒト免疫欠乏ウイルスのタイプ−1(human immunodeficiency virus、HIV−1)の転写関連蛋白質であるTat蛋白質の49−57番の間に存在するTat49−57ペプチドであって、これは配列番号3(Human immunodeficiency virus type 1、アミノ酸配列:Arg Lys Lys Arg Arg Gln Arg Arg Arg)のアミノ酸配列を持つ(P. A. Wender et al.、PNAS(2000) 97、24、13003−13008)。第三は、膜転移配列(membrane translocating sequence、以下、MTSと称する)または信号配列(signal sequences)に基づくペプチドであって、これはRNAによって新たに合成された蛋白質を生体内の適合した小器官(organelle)の膜に位置させることを助ける受容体蛋白質(acceptor protein)により認識され、核局在シグナル(nuclear localization signal、以下、NLSと称する)と結合されたMTSは、幾つかの種類の細胞において細胞膜を通過して細胞核に蓄積されるということが明らかになった。例えば、核転写要素カッパB(nuclear transcription factor kappa B(NF−κB))、猿ウイルス40T抗原(Simian virus 40(SV40)T−antige)またはカポジ肉腫の線維芽細胞成長因1(Kaposi sarcoma fibroblast growth factor 1(以下、K−FGFと称する))由来のNLSペプチドと結合されたK−FGF、ヒトβ3インテグリン(human beta3 integrin)、HIV−1 gp41等の信号配列の疎水性領域由来のMTSにおいて前記の事実が確認されたことがある(Y. Lin et al.、J. Biol. Chem.(1996) 271、5305;X. Lin et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(1996) 93、11819;M. C. Morris et al. Nucleic Acids Res.(1997) 25、2730;L. Zhang et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(1998) 95、9184;Chaloin et al.、Biochiem. Biochim. Res. Commun.(1998) 243、601;Y. Lin et al.、J. Biol. Chem. (1995) 270、14255)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. Joliot et al.、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、(1991) 88、 1864
【非特許文献2】P. A. Wender et al.、 PNAS(2000) 97、 24、 13003−13008
【非特許文献3】Y. Lin et al.、 J. Biol. Chem.(1996) 271、 5305
【非特許文献4】X. Lin et al.、 Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(1996) 93、 11819
【非特許文献5】M. C. Morris et al. Nucleic Acids Res.(1997) 25、 2730
【非特許文献6】L. Zhang et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(1998) 95、 9184
【非特許文献7】Chaloin et al.、 Biochiem. Biochim. Res. Commun.(1998) 243、 601
【非特許文献8】Y. Lin et al.、 J. Biol. Chem. (1995) 270、 14255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞内に取り込み難い巨大分子物質を細胞内に送達するために、本発明は、細胞透過性ペプチドと生理活性成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、一側面において、AP−GRRペプチドまたはこれを含むペプチド鎖と共有結合された脂質構造体または高分子粒子を含む薬物送達担体と、その担体内部に捕集された生理活性成分を含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面に係る薬物送達担体によれば、分子量が大きい巨大分子物質を、膜透過性機能を効果的に発揮するAP−GRRペプチドが導入されることで送達したい生理活性成分の細胞内への送達量を大きく増大することができる効果を奏する。したがって、本発明の一側面に係る薬物送達担体は、多糖類、酵素、ペプチドあるいは薬品、蛋白質などのような巨大生理活性成分が細胞内に送達され難いという短所を克服した。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明に係る薬物送達担体の比較例を含むリポソーム水溶液を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
図1B】本発明に係る薬物送達担体を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
図2A】本発明の一側面に係る蛍光物質を担持した薬物送達担体を細胞に処理し、細胞内に移入された蛍光物質の量をFACSで分析した結果を示すグラフである。
図2B】本発明の一側面に係る蛍光物質を担持した薬物送達担体を細胞に処理し、細胞内に移入された蛍光物質の量をFACSで分析した結果を示すグラフである。
図2C】本発明の一側面に係る蛍光物質を担持した薬物送達担体を細胞に処理し、細胞内に移入された蛍光物質の量をFACSで分析した結果を示す表である。
図3】本発明の一側面に係るローダミンBを担持した薬物送達担体を細胞に処理し、これを共焦点レーザー顕微鏡(confocal laser scanning microscope、CLSM)で観察したイメージ結果を示す写真である。
図4】本発明の一側面に係るデキストラン−RITCを担持した薬物送達担体を細胞に処理し、これを共焦点レーザー顕微鏡(confocal laser scanning microscope、CLSM)で観察したイメージ結果を示す写真である。
図5】ローダミンBとデキストラン−RITCをそれぞれPBSと一般のリポゾーンに適用したサンプルの皮膚吸収実験結果を示す顕微鏡イメージ結果を示すものである。
図6】ローダミンBとデキストラン−RITCをそれぞれPBSと本発明の一側面に係る薬物送達担体に適用したサンプルの皮膚吸収実験結果を示す顕微鏡イメージ結果を示すものである。
図7A】ローダミンBに対する皮膚吸収実験の定量的な結果を各サンプルに対して示したグラフである。
図7B】ローダミンBに対する皮膚吸収実験の定量的な結果を各サンプルに対して示したグラフである。
図8A】デキストラン−RITCに対する皮膚吸収実験の定量的な結果を各サンプルに対して示したグラフである。
図8B】デキストラン−RITCに対する皮膚吸収実験の定量的な結果を各サンプルに対して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は一側面において、細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖と共有結合された脂質構造体または高分子粒子を含む薬物送達担体に関するものであってよい。
【0011】
本発明の一側面において、脂質構造体または高分子粒子は、その構造内部に生理活性成分が捕集される構造であってよい。
【0012】
本発明の一側面において、脂質構造体は脂質構築物であってよい。
【0013】
本発明の一側面において、高分子粒子は高分子構造体又は高分子構築物であってよい。
【0014】
本発明の一側面において、生理活性成分は、数平均分子量または重量平均分子量が500Da以上である巨大分子であってよく、具体的に生理活性成分は、水不溶性または水溶性巨大分子であってよい。
【0015】
本発明の一側面において、薬物送達担体が脂質構造体を含む場合、生理活性成分は水溶性巨大分子であってよい。
【0016】
本発明の一側面において、薬物送達担体が高分子粒子を含む場合、生理活性成分は水不溶性巨大分子であってよい。
【0017】
本発明の一側面において、細胞透過ペプチドは、Gly(Arg)n Gly Tyr Lys Cysの配列(n=1〜20)を持つAP−GRRペプチドであってよい。
【0018】
本発明の一側面において、細胞透過ペプチドにおいて、nは3〜9であることを特徴とするものであってよい。
【0019】
本発明の一側面において、細胞透過ペプチドは、配列番号1(アミノ酸配列:Gly Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Gly Tyr Lys Cys)の配列を含むものであってよい。
【0020】
具体的に、本発明の一側面において、細胞透過ペプチドは、配列番号1(Gly Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Arg Gly Tyr Lys Cys)の配列であってよい。
【0021】
本発明の一側面において、前記脂質構造体または高分子粒子は、両親媒性高分子を含んでいてよい。
【0022】
本発明の一側面において、高分子粒子が両親媒性高分子をさらに含む場合、前記高分子粒子は、両親媒性高分子であるか、またはそれで製造されたものであってよい。
【0023】
本発明の一側面において、細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖は、両親媒性高分子と共有結合されていてよい。
【0024】
本発明の一側面において、細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖と脂質構造体または高分子粒子との共有結合は、マレイミド(maleimide)基とチオール(thiol)基との結合によって生成される共有結合であってよい。このような共有結合は相当に安定したもので通常の技術者には周知である。
【0025】
本発明の一側面において、細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖を、脂質構造体、高分子粒子、またはこれらに含まれた両親媒性高分子に結合するに際し、マレイミド基とチオール基との結合によって行うことが可能であるが、安定した共有結合であれば、必ずしもこれに制限されるものではない。本発明の一側面に係る細胞透過ペプチドはチオール基を有しているので、脂質構造体、高分子粒子、またはこれらに含まれた両親媒性高分子にマレイミド基を導入することで細胞透過ペプチドとの共有結合を図ることができる。本発明の一側面に係る脂質構造体、高分子粒子、またはこれらに含まれた両親媒性高分子へのマレイミド基の導入は、導入したい脂質構造体などのカルボキシル基にマレイミド基を結合させることによって行うことができる。
【0026】
本発明の一側面において、両親媒性高分子は、ヒアルロン酸側鎖にアルキル基が付着したアルキル化ヒアルロン酸(alkylated hyaluronic acid)、化学式1で表されるポリ(メタクリル酸−co−n−アルキルメタクリレート)ランダム共重合体、及び化学式2で表されるポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート−co−n−アルキルメタクリレート)ランダム共重合体からなる群から選ばれた一種以上であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。本発明の一側面において、両親媒性高分子は、一般のフリーラジカル熱開始反応(free radical thermal initiation)方法で重合して製造される一般のアクリレート系の高分子であってよい。
【0027】
【化1】
【0028】
【化2】
[前記式1及び2中、n=7〜22であり、
x:yは、モル比で90:10〜50:50である。]
【0029】
本発明の一側面において、ポリ(メタクリル酸−co−n−アルキルメタクリレート)ランダム共重合体は、メタクリル酸とn−アルキルメタクリレートの二種の単量体からなるものであってよい。このような高分子は、一般のフリーラジカル熱開始反応(free radical thermal initiation)方法で重合して製造され、分子量の分布を調節するために陰イオンまたは陽イオン重合を用いていてもよい。
【0030】
本発明の一側面において、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート−co−n−アルキルメタクリレート)ランダム共重合体は、ヒドロキシエチルメタクリレートとn−アルキルメタクリレートの二種の単量体からなるものであってよい。このような高分子は、一般のフリーラジカル熱開始反応(free radical thermal initiation)方法で重合して製造され、分子量の分布を調節するために陰イオンまたは陽イオン重合を用いていてもよい。
【0031】
本発明の一側面において、化学式1及び2中、nは、5以上〜30以下の整数であってよく、具体的に、7〜22の間の整数、より具体的には、11〜22の間の整数であってよい。
【0032】
本発明の一側面において、化学式1及び2中、x:yはモル比で50〜90の間の整数:10〜50の間の整数であってよく、具体的に、90:10、85:15、70:30、60:40、または50:50であってよく、好ましくは、85:15〜70:30である。
【0033】
本発明の一側面において、化学式1または2で表される構造を持つ両親媒性高分子の分子量は、高分子−リポソームナノ複合体の構造に影響を及ぼし、本発明の一側面に係る薬物送達担体に用いられた高分子の分子量は、数平均分子量を基準にして、5,000〜100,000であり、好ましくは、10,000〜50,000である。
【0034】
前記本発明の一側面に係る薬物送達担体において、脂質構造体は、両親媒性を持つ高分子によってより安定した構造を持つことができる。
【0035】
脂質−コレステロールを基盤としたリポソームは、化粧品及び皮膚外用剤に用いられるためには、剤形中での安定性が保障される必要があるが、剤形中の各種の界面活性剤によって簡単にその構造をなくすという問題点がある。このようなリポソームに両親媒性を持つ高分子を導入することによって構造的に不安定な短所をある程度克服することができる。両親媒性高分子が導入された高分子−リポソーム複合体は、脂質−コレステロールを基盤としたリポソームと類似の形態を保持し、両親媒性高分子の疎水性の部分が脂質、脂質−コレステロールを基盤とした脂質二重層の間に一緒に会合された構造を持つことになる。その結果、脂質二重層を固くつなぎ合わせて外壁を保護し、水相に存在する各種のリポソーム構造を不安定にする塩または界面活性剤などの要素から安定してリポソームの構造を保持させる役割をすることになる。
【0036】
前記本発明の一側面に係る薬物送達担体において、前記両親媒性高分子として用いられていてよい高分子の分子量の範囲は、数平均分子量を基準にして、5,000Da〜200,000Daで、好ましくは、10,000〜100,000Daであってよい。前記両親媒性高分子の分子量は、1,000Da以上、2,000Da以上、3,000Da以上、4,000Da以上、5,000Da以上、6,000Da以上、7,000Da以上、8,000Da以上、9,000Da以上、10,000Da以上、11,000Da以上、12,000Da以上、13,000Da以上、14,000Da以上、15,000Da以上、20,000Da以上、30,000Da以上、50,000Da以上、または100,000Da以上であるか、200,000Da以下、150,000Da以下、100,000Da以下、90,000Da以下、80,000Da以下、70,000Da以下、60,000Da以下、50,000Da以下、40,000Da以下、30,000Da以下、20,000Da以下、10,000Da以下、5,000Da以下、3,000Da以下、または1,000Da以下であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0037】
本発明の一側面において、両親媒性高分子の疎水性の部分は、親水性の部分に対してモル比10%〜50%であってよい。10%未満であると、高分子が水相に一部独立して存在する可能性があるだけでなく、界面活性剤としての役割をする可能性があり、また、50%を超えると、高分子の疎水性の部分が高すぎてリポソームと複合体をなすときにリポソームの構造を不安定にする要素として働く可能性がある。
【0038】
本発明の一側面において、両親媒性高分子は、一般のフリーラジカル熱開始反応(free radical thermal initiation)方法で重合して製造され、分子量の分布を調節するために陰イオンまたは陽イオン重合を用いていてよい。また、ヒアルロン酸のような天然高分子の場合、疎水性を付加するためにアルキル鎖を側鎖に共有結合させる方法が用いられていてもよい。
【0039】
本発明の一側面において、脂質構造体または高分子粒子:両親媒性高分子の重量比は、これらの混合物総重量を基準にして、50〜99重量%:1〜50重量%であり、好ましくは、70〜90重量%:10〜30重量%であってよく、前記脂質構造体は、コレステロールを含んでいてよい。
【0040】
前記本発明に係る薬物送達担体のリポソームの構造的な安定度を増大させるために、両親媒性高分子をさらに含む場合、このような両親媒性高分子は、脂質構造体または高分子粒子及び両親媒性高分子混合物の総重量に対し、1〜50重量%、好ましくは、10〜30重量%の量で用いられていてよい。これは、前記含有量の場合、最も安定した高分子−リポソーム複合体の製造に容易であるからである。
【0041】
本発明の一側面において、「数平均分子量」とは、分子量の分布を持つ高分子化合物の成分分子種の分子量を数分率またはモル分率で平均して得た平均分子量を意味するものであってよく、「重量平均分子量」とは、分子量の分布がある高分子化合物の成分分子種の分子量を重量分率で平均して得られる平均分子量を意味するものであってよい。このような数平均分子量及び重量平均分子量の計算方法は、本発明の技術分野の通常の技術者に自明な方法で行えばよい。
【0042】
本発明の一側面において、生理活性成分の数平均分子量または重量平均分子量は、1,000Da以上、2,000Da以上、3,000Da以上、4,000Da以上、5,000Da以上、6,000Da以上、7,000Da以上、8,000Da以上、9,000Da以上、10,000Da以上、11,000Da以上、12,000Da以上、13,000Da以上、14,000Da以上、15、000Da以上、20,000Da以上、30,000Da以上、50,000Da以上、100,000Da以上、300,000Da以上、500,000Da、または1,000,000Da以上であるか、5,000,000Da以下、4,000,000Da以下、3,000,000Da以下、2,000,000Da以下、または1,000,000Da以下であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0043】
本発明の一側面において、生理活性成分は、巨大分子として合成された水溶性巨大分子物質、天然物の抽出によって収得される巨大分子物質、酵素、EGF(epidermal growth factor)、蛋白質、ペプチド、及び多糖類からなる群から選ばれた一種以上であってよく、これらの生理活性成分は、皮膚保湿、美白、及び坑酸化効果のような有用な効果を示すものであってよい。
【0044】
本発明の一側面において、生理活性成分は、特に制限されるものではないが、合成、抽出、または天然的に収得されるものを網羅する水溶性巨大分子であって、最も広範囲な概念の水溶性巨大分子であってよく、このような巨大分子は、皮膚に有用な効果をもたらすものであってよい。
【0045】
本発明は、一側面において、本発明の一側面に係る薬物送達担体及び担体内部に捕集された生理活性成分を含む組成物に関するものであってよい。
【0046】
本発明の一側面において、組成物は、薬剤学的組成物または化粧料組成物であってよい。
【0047】
本発明の一側面において、化粧料組成物は、剤形が特に限定されず、目的とするところに応じて適宜選択すればよい。例えば、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファウンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石けん、クレンジングフォーム、クレジングローション、クレンジングクリーム、ボディーローション、及びボディークレンザーからなる群から選ばれたいずれか一つ以上の剤形で製造されていてよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0048】
本発明の一側面に係る化粧料組成物の剤形が、ペースト、クリーム、またはゲルである場合は、担体成分として、動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、または酸化亜鉛などが用いられていてよい。
【0049】
本発明の一側面に係る化粧料組成物の剤形が、パウダーまたはスプレーである場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはポリアミドパウダーが用いられていてよく、特にスプレーである場合は、さらに、クロロフルオロハイドロカーボン、プロパン/ブタン、またはジメチルエーテルのような推進剤を含んでいてよい。
【0050】
本発明の一側面に係る化粧料組成物の剤形が、溶液または乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、溶媒和剤、または乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、またはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0051】
本発明の一側面に係る化粧料組成物の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、またはトラガカントなどが用いられていてよい。
【0052】
本発明の一側面に係る化粧料組成物の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホサクシネートモノエステル、イセチオン酸、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステル等が用いられていてよい。
【0053】
本発明の一側面に係る化粧料組成物には、機能性添加物及び一般の化粧料組成物に含まれる成分がさらに含まれていてよい。前記機能性添加物としては、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質、及び海藻エキスからなる群から選ばれた成分を含んでいてよく、このような機能性添加物は生理活性成分にあたり、本発明の一側面に係る薬物送達担体に捕集されていてよい。
【0054】
本発明の一側面において、化粧料組成物には、さらに、前記機能性添加物とともに、必要に応じて一般の化粧料組成物に含まれる成分を配合してもよい。それ以外に含まれる配合成分としては、油脂成分、保湿剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。
【0055】
本明細書の一側面に係る薬学組成物は、経口または非経口の様々な剤形であってよい。製剤化する場合は、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤等の希釈剤又は賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、軟質または硬質カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、少なくとも一つの化合物に少なくとも一つの賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチン等を混ぜて調剤される。なお、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルク等のような潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当し、多用される単純希釈剤の水、リキッドパラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、芳香剤、保存剤等が含まれていてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が用いられていてよい。坐薬の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴ−ル、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が用いられていてよい。
【0056】
本発明の一側面において、組成物の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容され得る塩の形態でも用いられていてよく、また単独で、或いは他の薬学的活性化合物との結合だけでなく適当な集合として用いられていてよい。前記塩としては、薬学的に許容され得るものであれば特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、蟻酸、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等を用いていてよい。
【0057】
本発明の一側面において、組成物は、目的に応じて非経口投与又は経口投与することができ、一日に体重1kg当たり0.1〜500mg、好ましくは、1〜100mgの投与量となるように1回〜複数回に分けて投与していてよい。特定の患者に対する投与用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率、疾患の重症度に応じて変えていてよい。
【0058】
本発明の一側面に係る薬学組成物は、それぞれ通常の方法にて散剤、顆粒剤、錠剤、軟質または硬質カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の経口型剤形、軟膏、クリーム等の皮膚外用剤、坐剤、注射剤及び滅菌注射溶液等を始めとした薬剤学的製剤に適合したいずれの形態に剤形化して使用されていてもよく、好ましくは、注射剤または皮膚外用剤の形態で剤形化して使用されていてよい。
【0059】
本発明の一側面に係る組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒト等の哺乳動物に非経口、経口等の様々な経路から投与されていてよく、投与のあらゆる方式は予想できるが、例えば、経口、経皮、直腸、または静脈、筋肉、皮下、子宮内径膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与されていてよい。
【0060】
本発明の一側面に係る組成物は、通常の技術者が容易に適用することができる様々な経路から投与されていてよい。特に、本発明の一側面に係る薬学組成物は皮膚外用剤であって、皮膚表面に塗布される経路から投与されていてよい。本発明は、細胞透過ペプチドとして、Gly(Arg)n Gly Tyr Lys Cysの配列(n=1〜20)を持つことを特徴とするAP−GRRペプチドを提供する。
【0061】
本発明の一側面において、AP−GRRペプチドにおいて、前記nは3〜9であることを特徴とする。
【0062】
本発明の一側面において、AP−GRRペプチドにおいて前記配列は、配列番号1の配列であることを特徴とする。
【0063】
前記本発明の一側面において、薬物送達担体が脂質構造体を含む場合、薬物送達担体は安定化剤をさらに含んでいてよい。
【0064】
前記本発明の一側面において、前記安定化剤は、コレステロール誘導体であることを特徴とする。具体的に、前記安定化剤はコレステロールであってよい。前記コレステロール誘導体は、コレステロールを母核とする誘導体を意味する。
【0065】
具体的に、本発明の一側面において、薬物送達担体は、細胞透過ペプチドまたはこれを含むペプチド鎖と共有結合された脂質構造体;安定化剤;及び生理活性成分を含んでいてよい。
【0066】
本発明の一側面において、薬物送達担体は、脂質構造体:安定化剤を1〜3:1〜2のモル比で含んでいてよい。具体的に、前記比は1.5〜3.0:1.0〜2.0のモル比であってよい。さらに具体的に、脂質構造体の場合、二種以上の脂質の組み合わせからなるものであってよく、このとき、構成された脂質は1〜2:1〜2の脂質モル比で含まれていてよい。
【0067】
本発明の一側面において、薬物送達担体において脂質構造体は、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−Mal)複合体のうちの一種以上を含んでいてよい。
【0068】
本発明の一側面において、薬物送達担体は、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン:ホスファチジルコリン:コレステロール:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−Mal)複合体を1.0〜2.0:1.0〜2.0:1.0〜3.0:0.01〜1.0のモル比で含んでいてよく、具体的に、前記モル比は、1.0〜1.5:1.0〜1.5:1.5〜2.5:0.1〜0.3であってよい。前記のような脂質の種類とモル比を持つ場合、水溶性巨大分子を細胞内に送達するうえで最も優れた効果を示す薬物送達担体を構成することができる。
【0069】
本発明の一側面において、薬物送達担体の脂質構造体または高分子粒子と共有結合されたAP−GRRペプチドまたはこれを含むペプチド鎖は、脂質構造体または高分子粒子を基準にして、1モル%以上、2モル%以上、4モル%以上、6モル%以上、8モル%以上、または10モル%以上であるか、15モル%以下、10モル%以下、8モル%以下、6モル%以下、4モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、または0.1モル%以下で導入されたものであってよい。
【0070】
前記本発明の一側面において、前記脂質構造体は、リポソームまたはエマルジョンであることを特徴とする。
【0071】
前記本発明の一側面において、前記リポソームまたはエマルジョンの脂質成分は、炭素数12〜24の脂肪酸鎖を持つリン脂質類または窒素脂質であることを特徴とする。
【0072】
前記本発明の一側面において、前記リン脂質類は、卵黄レシチン(ホスファチジルコリン)、大豆レシチン、リゾレシチン(lysolecithin)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ジホスファチジルグリセロール、カルジオリピン(cardiolipin)、プラスマロゲンの天然リン脂質、及びこれらのリン脂質から通常の方法にて収得することができる水素添加生成物、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルセリンの合成脂質、及びこれらの加水分解によって収得することができる脂肪酸混合物からなる群から選ばれた一種以上であることを特徴とする。
【0073】
前記本発明の一側面において、前記リン脂質類の組み合わせは、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとの組み合わせ、ホスファチジルコリンとホスファチジルグリセロールとの組み合わせ、ホスファチジルコリンとホスファチジルイノシトールとの組み合わせ、ホスファチジルコリンとホスファチジン酸との組み合わせ、ホスファチジルコリンとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとの組み合わせ、またはホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンの組み合わせであることを特徴とする。
【0074】
具体的に、本発明の一側面において、前記リポソームは、ホスファチジルコリンとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとの組み合わせであってよい。
【0075】
前記本発明の一側面において、前記組み合わせ比は、最小成分に対する最大成分の混合比が1:5以下であることを特徴とする。
【0076】
前記本発明の一側面において、前記組み合わせは、ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジルセリンであってよく、前記ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジルセリンの組み合わせの組み合わせ比は、1〜4:1〜2:1〜2であってよい。
【0077】
前記本発明の一側面において、前記脂質成分は、全体リポソーム分散液またはエマルジョンの総重量に対し、0.001〜20重量%であることを特徴とする。
【0078】
前記本発明の一側面において、前記高分子粒子は生体に適合し且つ炎症や免疫反応を誘発することなく生体内で分解され、その分解産物もまた、生体内で無害であることを特徴とする。
【0079】
前記本発明の一側面において、前記高分子粒子は、両親媒性高分子または生分解性脂肪族ポリエステル系高分子を含むことを特徴とする。
【0080】
前記本発明の一側面において、前記高分子粒子は、乳酸とグリコール酸を基にする生分解性脂肪族ポリエステル系高分子を含むことを特徴とする。
【0081】
前記本発明の一側面において、前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子は、下記の化学式3で表されるポリ(D,L−乳酸)(poly(D,L−lactic acid))、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、下記の化学式4で表されるポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(poly(D,L−lactic acid−co−glycolic acid))、ポリ(D−乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)ポリ(カプロラクトン)(poly(caprolactone))、ポリ(バレロラクトン)(poly(valerolactone))、ポリ(ヒース録市(詩)ブーティーレート)(poly(hydroxy butyrate))、ポリ(ヒドロキシバリレート)(poly(hydroxy valerate))、ポリ(1,4−ジオキサン−2−オン)(poly(1,4−dioxane−2−one))、ポリ(オルトエステル)(poly(ortho ester))、及びこれらの単量体から製造された共重合体からなる群から選ばれた一種以上であることを特徴とする。
【0082】
【化3】
(前記式中、nは2以上の整数である。)
【0083】
【化4】
(前記式中、mとnは、互いに同一であっても異なってもよい2以上の整数である。)
【0084】
前記本発明の一側面において、前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子の分子量は、平均500Da〜100,000Daであることを特徴とする。
【0085】
前記本発明の一側面において、前記AP−GRRペプチド(A)と前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子(B)は、A−B型またはA−B−A型で共有結合されて構成されることを特徴とする。
【0086】
前記本発明の一側面において、前記共有結合は、AP−GRRペプチドまたはAP−GRRペプチドを含むペプチド鎖と前記脂質構造体または高分子粒子の間に塩基、リンカーまたはマルチリガンド化合物を添加してなることを特徴とする。
【0087】
前記本発明の一側面において、前記薬物送達担体の平均粒子径は1,000nm以下であってよい。本発明の一側面において、薬物送達担体の平均粒子径は、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上、900nm以上、1,000nm以上、または2,000nm以上であるか、3,000nm以下、2,000nm以下、1,000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、または100nm以下であってよい。
【0088】
本発明は一側面において、前記薬物送達担体を、脂質構造体、リポソーム分散液、エマルジョン、又は高分子粒子の総重量に対し、0.01〜30重量%の生理活性有効性分と共に含有することを特徴とする薬剤学的組成物を提供する。
【0089】
本発明の一側面において、薬物送達担体に捕集された生理活性成分は、脂質構造体、リポソーム分散液、エマルジョン、または高分子粒子の総重量に対し、0.01〜30重量%であってよい。具体的に、本発明の一側面において、生理活性成分は、脂質構造体、リポソーム分散液、エマルジョン、または高分子粒子の総重量に対し、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、または30重量%以上であるか、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、または0.01重量%以下であってよい。
【0090】
本発明の一側面において、前記組成物は、皮膚外用剤、経口用製剤及び注射剤からなる群から選ばれる剤形を有することを特徴とする。
【0091】
本発明は、新規に考案された優れた生体膜透過性を持つGRRペプチドであって、アルギニンが豊富で且つ両末端にそれぞれGlycine(Gly)アミノ酸とGlycine(Gly)−Tyrosine(Tyr)−Lysine(Lys)−Cystein(Cys)アミノ酸鎖を含むペプチドを、薬品、遺伝子、オリゴペプチド、蛋白質などの水不溶性または水溶性巨大分子を捕集する構造を持つリポソーム、高分子ナノ粒子、リン脂質−高分子複合体、エマルジョンなどの送達担体の表面に改質化して、送達したい物質を経皮、経口、注射剤などの様々な経路から送達した場合の生物学的利用能(bioavailability)を高めるためである。AP−GRRペプチドにおいて、Gly(Arg)n Gly Tyr Lys Cysの配列においてArgの個数は1〜20個、好ましくは、3〜9個を含む。これは、高い送達効率を持ち且つ薬物送達担体と結合して製造するうえで容易であるからである。
【0092】
本発明の一側面において、前記AP−GRRペプチドまたはAP−GRRを含むペプチド鎖は、特に制限されるものではないが、例えば、アミド4−メチルベンジドリルアミンヒドロクロリド(MBHA)樹脂とABI 433合成機器を利用して、Fmoc(N−(9−フルレニル)メトキシカルボニル)/t−ブチル法に従ってペプチド固相合成法(solid phase peptide synthesis;SPPS)で合成してもよい(M. Bodansky、A. Bodansky、The Practice of Peptide Synthesis;Springer:Berlin、Heidelberg、1984、J.M. Stewart、J.D. Young、Solid Phase Peptide Synthesis、2nd ed;Pierce Chemical Co:Rockford. IL、1984)。
【0093】
本発明の一側面において、薬物送達担体は、脂質構造体、リポソーム、エマルジョン、または高分子粒子などの構造体を用いていてよい。本発明の一側面において、リポソームまたはエマルジョンの製造の際、脂質構造体の脂質成分としては、炭素数が12〜24個の脂肪酸鎖を持つリン脂質類や窒素脂質が用いられていてよい。これらは、皮膚外用剤、経口用製剤、注射剤などの薬剤学的組成物に用いることができる脂質基盤の薬物送達担体の構成成分として活用するのに容易であるからである。
【0094】
本発明の一側面において、脂質構造体の脂質成分として、一般には、リン脂質がより好ましいが、例えば、卵黄レシチン(ホスファチジルコリン)、大豆レシチン、リゾレシチン(lysolecithin)、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ジホスファチジルグリセロール、カルジオリピン(cardiolipin)、プラスマロゲンなどの天然リン脂質、これらのリン脂質から通常の方法にて収得することができる水素添加生成物及びジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジル−エタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルセリンなどの合成脂質、及びこれらの加水分解によって収得することができる脂肪酸混合物が好ましい。
【0095】
本発明の一側面において、脂質は単独で用いていてよく、二種以上を併用していてもよい。二種のリン脂質類を混合して用いる場合、好ましくは、例えば、ホスファチジルコリン:ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン:ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン:ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン:ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなどの組み合わせを用いていてよい。混合比は、混合される成分の構成により異なるが、最小成分に対する最大成分の混合比は1:5以下であることが好ましい。この場合、二種以上のリン脂質類を混合して脂質基盤の薬物送達担体を製造する際に容易であるからである。例えば、ホスファチジルコリン:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンの場合、それぞれ1:1あるいは2:1、3:1、4:1、5:1、1:5、1:4、1:3、1:2等のモル比と多様にして製造することができる。また、三種のリン脂質類を混合して用いる場合でも、例えば、ホスファチジルコリン:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン:ホスファチジルセリンをそれぞれ1:1:1あるいは2:1:1、3:1:2、3:2:1.3:2:2.4:1:1、4:2:1等のモル比と多様な混合比で製造することができる。
【0096】
本発明の一側面において、薬物送達担体の脂質成分は、全体脂質構造体、リポソーム分散液またはエマルジョン総重量に対し、0.001〜20重量%、好ましくは、0.2〜10重量%の量で用いる。これは、前記含有量の場合、薬物送達担体の製造に容易であるからである。
【0097】
本発明の一側面に係る高分子粒子を製造するに際し、これは、生体に適合し、且つ炎症や免疫反応などを誘発することなく生体内で分解されるだけでなく、その分解産物もまた、生体内で無害な高分子である必要がある。このような条件を満たす高分子としての乳酸とグリコール酸を基本単位とする生分解性脂肪族ポリエステル系高分子が、米国食品医薬局(FDA)により承認を受けた高分子として最も広く用いられている。その代表的な例として、前記化学式3で表されるポリ(D,L−乳酸)(poly(D,L−lactic acid))、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)と前記化学式4で表されるポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(poly(D,L−lactic acid−co−glycolic acid))、ポリ(D−乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)、及びポリ(カプロラクトン)(poly(caprolactone))、ポリ(バレロラクトン)(poly(valerolactone))、ポリ(ヒドロキシブチレート)(poly(hydroxy butyrate))、ポリ(ヒドロキシバリレート)(poly(hydroxy valerate))、ポリ(1,4−ジオキサン−2−オン)(poly(1,4−dioxane−2−one))、ポリ(オルトエステル)(poly(ortho ester))、及びこれらの単量体から製造された共重合体などが挙げられる。
【0098】
本発明の一側面において、前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子の分子量は、特に制限されないが、500未満であるか、または100,000を超えると、薬物送達担体としての構造不安定性が増加するおそれがあるため、重量平均分子量が500〜100,000、好ましくは、5、000〜50,000であってよい。
本発明の一側面において、前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子の分子量は、1,000Da以上、2,000Da以上、3,000Da以上、4,000Da以上、5,000Da以上、6,000Da以上、7,000Da以上、8,000Da以上、9,000Da以上、10,000Da以上、11,000Da以上、12,000Da以上、13,000Da以上、14,000Da以上、15,000Da以上、20,000Da以上、30,000Da以上、50,000Da以上、または100,000Da以上であるか、200,000Da以下、150,000Da以下、100,000Da以下、90,000Da以下、80,000Da以下、70,000Da以下、60,000Da以下、50,000Da以下、40,000Da以下、30,000Da以下、20,000Da以下、10,000Da以下、5,000Da以下、3,000Da以下、または1,000Da以下であってもよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0099】
本発明の一側面において、前記化学式4で表されるポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)の場合は、乳酸とグリコール酸単量体の比率を調節したり、高分子合成過程を変更したりすることによって種々の分解寿命を持つ生分解性高分子を得ることができる。このような生分解性脂肪族ポリエステル系高分子は、薬物送達担体または手術用縫合糸として長い間使用されてきており、その生体適合性がすでに証明済みである。
【0100】
本発明の一側面において、前記AP−GRRペプチド(A)と前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子(B)は特に制限されるものではないが、A−B型またはA−B−A型で構成されていてよい。これは、前記生分解性脂肪族ポリエステル系高分子の両末端に存在するカルボキシル基及び水酸化基を共有結合に容易となるよう他の官能基(functional group)で置換させ、高分子の置換された末端をこれと反応が容易な基を持つAP−GRRペプチドの末端基またはAP−GRRペプチドを含むペプチド鎖の末端基と反応させて得ることができる。例えば、前記AP−GRRペプチドまたはAP−GRRペプチドを含むペプチド鎖とポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)との共有結合体は、マレイミドで置換されたポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)と末端基をチオールで置換したAP−GRRペプチドとの共有結合によって合成されていてよい。
【0101】
本発明の一側面において、前記共有結合は特に制限されるものではないが、AP−GRRペプチドまたはAP−GRRペプチドを含むペプチド鎖と前記脂質構造体、リポソーム、エマルジョン、または高分子の間に別途の塩基、リンカーまたはマルチリガンド化合物を添加してなるものであってよい。
【0102】
本発明の一側面において、薬物送達担体の内部構造に捕集される生理活性成分は、生体に適用できるものであれば水溶性または水不溶性など、その種類に制限がない。例えば、単一成分や動物または植物や菌抽出物、及びこれらの二種以上が含まれた混合物であってよく、これは目的と場合に応じて調節して用いていてよい。美白増進またはシワ及び老化防止と治療の効能を持つ成分などが用いられていてよい。これらの生理活性成分は、脂質構造体、リポソーム分散液、エマルジョン、または高分子粒子の総重量に対し、0.01〜30重量%、好ましくは、0.1〜20重量%の量で取り込まれていてよい。これは、組成物の皮膚外用剤、経口用製剤、注射剤など、剤形化に容易な含有量であるからである。
【0103】
本発明の一側面に係るAP−GRRペプチドを利用して製造された薬物送達担体の平均粒子径は小さいほど好ましく、コロイドの安定性を考慮するとき、少なくとも1、000nm以下、好ましくは、500nm以下である。
【0104】
本発明で提示するリポソーム、エマルジョン高分子粒子などを製造する方法は特に制限されるものではないが、例えば、次のような方法によって製造されていてよい。
【0105】
本発明で提示する脂質成分を利用して生理活性成分が取り込まれた薬物送達担体を形成する方法としては、前記リン脂質類と安定化剤を有機溶媒に溶解させた後、溶媒を蒸発、減圧させ、脂質フィルムを形成させ、水溶液を加えた後に超音波を加える方法、有機溶媒に溶けたリン脂質類と安定化剤を水溶液に分散させた後に超音波を加える方法、リン脂質類と安定化剤を有機溶媒に分散または溶解させた後、過量の水で有機溶媒を抽出または蒸発させる方法、リン脂質類と安定化剤を有機溶媒に分散または溶解させた後、均質機または高圧乳化機を利用して強く攪拌し溶媒を蒸発させる方法、リン脂質類と安定化剤を有機溶媒に分散または溶解させた後、過量の水で透析する方法、リン脂質類と安定化剤を有機溶媒に分散または溶解させた後、徐々に水を添加する方法などがあるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0106】
前記製造方法に関連して、リン脂質類と安定化剤を有機溶媒に溶解させるために、機械的力を加えるか、または20〜100℃、好ましくは70℃以下で加熱すればよい。
【0107】
生理活性成分が水溶性である場合、生理活性成分を水に溶かすか、または水溶液に溶かして、前記水溶液または水を添加する段階で一緒に投与される。生理活性成分が水不溶性である場合は、生理活性成分を有機溶媒に溶解させた後、脂質成分がある有機溶媒上に含ませて前記のような方法にて製造することができる。
【0108】
前記方法においてリン脂質類と安定化剤または水不溶性生理活性成分を溶解させるために用いることができる有機溶媒としては、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸、エチルアセテート、アセトニトリル、メチルエチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、メタノール、エタノール、エチルエーテル、ジエチルエーテル、ヘキサン、及び石油エーテルから選ばれた一種またはこれらを混合した溶媒を用いていてよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0109】
また、本発明で提示する高分子粒子の製造方法としては、高分子をそのまま水溶液に分散させた後に超音波を加える方法、高分子を有機溶媒に分散または溶解させた後に過量の水で有機溶媒を抽出または蒸発させる方法、高分子を有機溶媒に分散または溶解させた後に均質機または高圧乳化機を利用して強く攪拌し溶媒を蒸発させる方法、高分子を有機溶媒に分散または溶解させた後に過量の水で透析する方法、高分子を有機溶媒に分散または溶解させた後に徐々に水を添加する方法、超臨界流体を利用して製造する方法などが挙げられる(T. Niwa et al.、J. Pharm. Sci.(1994) 83、5、727−732;C. S. Cho et al.、Biomaterials(1997) 18、323−326;T. Govender et al.、J. Control. Rel.(1999) 57、171−185;M. F. Zambaux et al.、J. Control. Rel.(1998) 50、31−40)。
【0110】
本発明の高分子粒子の製造に用いられてよい有機溶媒としては、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチレンクロライド、クロロホルム、メタノール、エタノール、エチルエーテル、ジエチルエーテル、ヘキサン、またはペトロリウムエーテルを含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。このとき、前記溶媒を単独で用いても、または2以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0111】
本明細書で用いられるジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−Mal)複合体は、下記の化学式5で表される構造を有するものであってよい。
【0112】
【化5】
【0113】
以下、実施例、比較例及び実験例を挙げて本発明をより一層具体的に説明する。以下の例に示される材料、試薬、費用、操作などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。よって、本発明の範囲は、以下に示す具体例によって制限されるものではない。
【0114】
[実施例及び比較例]薬物送達担体の製造
AP−GRRペプチドを含むペプチド鎖は、アミド4−メチルベンジドリルアミンヒドロクロリド(MBHA)樹脂とABI 433合成機器を利用して、Fmoc(N−(9−フルレニル)メトキシカルボニル)/t−ブチル法に従ってペプチド固相合成法(solid phase peptide synthesis;SPPS)で合成し、高性能逆相液体クロマトグラフィ(Reverse High Performance Liquid Chromatography)を利用して純度90%以上に精製した。これを質量分析器(Agilent 1100シリーズ)で分析した結果分子量を測定することで合成の成功の有無が確認された。これで、AP−GRR配列番号1のアミノ酸配列を持つペプチドが合成されたことを確認した。前記AP−GRRを表面に導入した脂質構造体製造過程は下記のとおりである。
【0115】
表1の脂質組成に記載されている脂質をその脂質のモル比に応じて混ぜ合わせた後、クロロホルム:メタノール(95:5、体積/体積)混合有機溶媒に溶かした後、減圧し溶媒を蒸発させてフィルムを形成した。例えば、実施例2の場合、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン:ホスファチジルコリン:コレステロール:ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド複合体を1.5:1.1:2:0.4のモル比で混合した後、クロロホルム:メタルオール(95:5、体積/体積)混合有機溶媒に溶かした後、減圧し溶媒を蒸発させ、フィルムを形成した。
【0116】
有機溶媒が除去されたフィルムに、PBS(WELGENE社製、以下、同一)に溶かした蛍光標識物質であるローダミン(rhodamine)B(Sigma-Aldrich社製、CAS NO. 81−88−9)やデキストラン(dextran)−RITC(数平均分子量が約10,000Da)(Sigma-Aldrich社製)を加えた後、超音波を加えて、リポソーム脂質分散液を製造した。このようにして製造されたリポソーム脂質分散液に、AP−GRRペプチドをPBSに溶解させて投入した後、室温(約25℃)で攪拌して反応させた。このような反応によってAP−GRRのチオール(thiol)基とリポソームの表面に導出されたマレイミド(maleimide)官能基と数分間反応させてAP−GRRが導入されたリポソームを製造し、このような結合反応は極めて安定したものと知られている。脂質の最終水溶液中の濃度は0.2wt%である。
【0117】
前記方法に従い、下記の表1のような脂質組成及び脂質のモル比に応じて実施例及び比較例を製造した。下記の表における実施例1〜6は、AP−GRRが導入されたリポソームであって、但し、実施例1は蛍光物質を担持しなかったものである。比較例1は、AP−GRRが導入さていないリポソームであって蛍光物質を担持しなかったものであり、比較例2及び4は、蛍光物質を溶かしたPBS溶液に該当し、比較例3及び5は、AP−GRRが導入されていないリポソームであって蛍光物質を含有したものである。実施例1〜5の脂質のモル比においてDSPE−PEG−Malは、PEGとMalの分子量を引いたDSPEの分子量を基準にして計算し、脂質比率だけで計算して、AP−GRRを、リポソームを構成する脂質中に4モル%及び8モル%で導入するものとした。また、両親媒性高分子の導入に伴う実験を行うために、実施例6として、実施例5の組成に両親媒性高分子だけをさらに追加した実施例を設定した。実施例6で用いられたポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート−co−ステアリルメタクリレート)共重合体は、数平均分子量が47、552(PDI 2.20)に該当するものである。
【0118】
このような両親媒性高分子の重合方法は、エタノール150gにヒドロキシエチルメタクリレート(Sigma-Aldrich社から購入)とステアリルメタクリレート(Sigma-Aldrich社から購入)単量体を0.0995654:0.232315のモル比で投入し、ラジカル重合開始剤であるAIBN(Azobisisobutyronitrile)(JUNSEI社から購入)を0.003319モル添加し、75℃で一晩中攪拌して高分子重合を行った。重合後、加温を中断し、温度が室温に落ちるまで放置する。しかる後、エタノール溶液を基準にして5倍〜10倍のエーテルをゆっくり添加しながら攪拌し、溶媒をフィルターで除去して、攪拌で生成された沈殿物を収得した。このようにして収得された沈殿物を真空乾燥して、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート−co−ステアリルメタクリレート)共重合体パウダー40gを収得した。
【0119】
実施例6の製造に際し、両親媒性高分子は、脂質を有機溶媒に溶かすときに一緒に添加することを除いては、同一の過程で製造した。
【0120】
【表1】
【0121】
* DOPE:ホスファチジルエタノールアミン(斗山バイオテック社から入手)、PC:ホスファチジルコリン(LIPOID社製)、Chol:コレステロール(Sigma-Aldrich社製)、DSPE−PEG−Mal(分子量2941.605)(NOF社製):ジステアリルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド複合体(N−[(3−Maleimide−1−oxopropyl)aminopropyl polyethyleneglycol−carbamyl]distearoylphosphatidyl−ethanolamine)
【0122】
[o/wナノエマルジョンと混合した実施例の製造]
両親媒性高分子の導入に伴う薬物送達担体において、o/wナノエマルジョンと混合したときの皮膚に対する吸収能力及び粒度分析を比較実施するために、実施例5及び実施例6の薬物送達担体をo/wナノエマルジョンと混合した実験サンプルとして、実施例7及び8を製造した。
【0123】
具体的に、下記の表2のように水相及び油相を準備した。
【0124】
【表2】
【0125】
前記組成により製造された水相及び油相をそれぞれ別に70℃で加温溶解し、水相に油相をゆっくり投入しながら、7、000rpmでホモミキサー(T.K. Homomixer Mark II、Takushu Kika Kogyo Ltd.、Japan)で3分間乳化(ホモミキシング)を行った。このように乳化して収得したo/wエマルジョンを高圧乳化機(Microfluidics Corp.、USA)にて1000barで3サイクル間さらに処理して、平均粒度150nm程度のナノエマルジョンを収得した。このようにして製造されたナノエマルジョンに対し、実施例5及び実施例6のナノエマルジョンを重量比1:1にてアジミキシングで混合した。このようにそれぞれ実施例5及び実施例6の薬物送達担体とナノエマルジョンが混ざり合った組成物を製造し、これらを実施例7及び実施例8と設定した。
【0126】
[試験例1]薬物送達担体の粒度分析及び表面電位の測定
前記実施例1〜8及び比較例1、3、及び5のリポソーム溶液に対し、マルバーン社製のゼータサイザーで粒度分析及び表面電位を測定し、その結果は下記の表3のとおりである。
【0127】
【表3】
【0128】
前記表3の結果によれば、比較例と実施例ともに、平均粒度が100nm程度と比較的に均一なサンプルが製造されたことを確認することができた。
【0129】
また、AP−GRRを導入した場合、そうではない脂質構造体に比べて、表面電位が負の値から正の値に変わることを確認することができた。また、AP−GRRの導入量が8モル%と多い実施例2及び4では、AP−GRR導入量が4モル%である実施例3及び5に比べて、より高い正の表面電位を有することを確認することができた。このような結果から、本発明の薬物送達担体は、AP−GRRが導入され、その物理的な性質が変化したことを確認することができた。
【0130】
また、ナノエマルジョン状態での粒度分析の結果を見ると、両親媒性高分子が導入された実施例8が、そうではない実施例7に比べて、平均粒度が小さく且つ粒度安定性が高いという事実を確認することができる。このような結果は、実施例7では細胞透過性ペプチドを含むリポソームとナノエマルジョンの間で新しいエマルジョンの組み換えが起こりながら粒度が大きくなり、PDI値が高くなったものと判断される。これは、間接的にリポソーム製剤の短所の一つである乳化剤形中での構造的な不安定性に起因すると判断される。しかし、実施例8の場合、両親媒性高分子がリポソームの二重脂質層を支えながら保護コロイドの役割をすると判断され、その結果、粒度結果が脂質構造体で製造した実施例6と類似し、新しい高い粒度の粒子が観察されなかった。
【0131】
[試験例2]薬物送達担体のTEM構造分析の実験
前記比較例1及び実施例1に対し、透過電子顕微鏡(Libra 120、Carl Zeiss、加速電圧120kV)を利用してその構造を確認し、その結果は図1に示した。
図1に示すように、AP−GRRを導入したリポソームに該当する薬物送達担体である実施例1のリポソーム構造がAP−GRRを導入していない比較例1に比べてやや大きめになったことを確認することができた。また、AP−GRRを導入したにも係らず、比較例1と実施例1とはリポソームの構造が類似していることが確認でき、このことから、本発明の巨大分子を担持することができる構造を持つ薬物送達担体は、一般のリポソームと構造的に類似していることを確認することができた。しかし、下記の実験例によれば、本発明の薬物送達担体は、構造的に一般のリポソームと類似しているものの、水溶性巨大分子を細胞内に容易に移入させる効果を奏する。
【0132】
[試験例3]有細胞分析による薬物送達担体の細胞内送達能の評価
前記実施例2〜5と比較例2〜5に対し、薬物送達担体の細胞内送達能を確認するためにFACS分析を実施した。前記実施例及び比較例のリポソームシステムを予め培養されたHaCaT細胞(CLS cell line serviceから入手)に添加し、摂氏37で4時間培養してから各サンプル群の細胞を回収してPBS液に分散させた後に、FACS分析を実施した。FACS分析は、BD FACSCalibur装備(Beckton Dickinson Bioscience、San Jose、CA)を利用し、実験群毎に10、000個のHaCaT細胞内の赤い蛍光強度(red fluorescence)を測定し、CellQuest softwareで試料を分析した。これにより、細胞内に取り込まれたローダミンBの量を定量的に比較分析し、その結果は図2に示した。図2Aは、ローダミンBに対する結果であって、実施例2及び3と比較例2及び3に対するFACS分析グラフの結果であり、図2Bはデキストラン−RITCに対する結果であって、実施例4及び5と比較例4及び5に対する結果を示すものである。図2Cの場合、グラフの結果を数値的に示したものであって、平均値(mean values: Mean)と標準偏差(standard deviations: SD)を示したものに該当する。グラフにおけるy軸は細胞の数を意味し、x軸は細胞内に送達された量を意味する。
【0133】
図2A図2Cによれば、グラフは右側から平均値が大きい順に実施例3、実施例2、比較例3、及び比較例2のグラフに該当し、AP−GRRを導入した実施例の場合、そうではない比較例に比べて、細胞内に送達される量の平均が大きいことを確認することができた。したがって、細胞内送達能の場合、PBS溶液よりはリポソームで処理したほうが高く、単一のリポソームよりはリポソームにAP−GRRを導入した本発明の薬物送達担体のほうが、送達能に優れていることを確認することができた。このことから、本発明に係る薬物送達担体の場合、ローダミンBのような水溶性低分子物質を細胞内に送達し易くすることを確認することができた。また、AP−GRR導入量が異なる実施例2及び3を比較すると、リポソームを構成する脂質中に8モル%で導入した実施例2の場合が、4モル%を導入した実施例3よりも平均値が小さいことを確認することができた。薬物送達担体を構成するに際し、有意な差はないが、AP−GRRの導入量は4モル%がより好適であると判断される。
【0134】
図2B図2Cによれば、グラフは右側から平均値が大きい順に実施例5、実施例4、比較例5、及び比較例4のグラフに該当し、AP−GRRを導入した実施例の場合、そうではない比較例に比べて、細胞内に送達された量の平均が大きいことを確認することができた。したがって、細胞内送達能の場合、PBS溶液よりはリポソームで処理したほうが高く、単一のリポソームよりはリポソームにAP−GRRを導入した本発明の薬物送達担体のほうが送達能に優れていることを確認することができた。また、このような実施例4及び5の場合、前記実施例2及び3に捕集されたものとは異なり、デキストラン−RITCであって分子量が約20倍も違う高分子であるにも係らず、細胞内に送達された傾向はローダミンBを使用した際の結果と類似している。このことから、本発明の薬物送達担体は、水溶性巨大分子の場合でも同様に細胞内送達能に優れていることを確認することができた。また、AP−GRR導入量が異なる実施例4と5を比較すると、ローダミンBに対する実験と同様、4モル%を導入した実施例5の場合のほうが、その平均値が大きいことを確認することができた。
【0135】
[試験例4]免疫蛍光染色と共焦点レーザー顕微鏡を利用した細胞移入率の評価
10重量% FBS(GIBCO社製)、100IUのペニシリンG(LONZA社製)を添加したDMEM培地(LONZA社製)に、HaCaT細胞(CLS cell line serviceから入手)を8ウェルチャンバースライド(well chamber slide)に25,000細胞/ウェルとなるように分注した。次いで、PBS(phosphate buffered saline)を利用してウェルを洗浄した後、何も入れていない対照群と前記実施例及び比較例を培地に希釈して3時間処理した。処理された細胞にて免疫蛍光染色(Immunofluorescence;IF)を実施した。1mMのCaClと1mMのMgClが取り込まれたPBS(以下、本試験例におけるPBSを同一のものとする)を利用して各ウェルを洗浄してウェルに含まれた細胞を洗浄した。3.5重量%のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)を利用して前記細胞を室温で10分間反応して固定させた。固定された細胞を、PBSを利用して再度10分間3回洗浄した。しかる後、0.1%のTritonX−100を5分間処理した。処理後、再度PBSで10分間3回洗浄した。核を染色するために、ヨウ化プロピジウム(Propidium iodide(PI))を利用して細胞を約3分間染色した。再度PBST(PBSに0.05重量%のTween20を混合して製造し、Tween20の場合、SIGMA社から入手した。PBSTの製造のためのPBSには塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが含まれていない。)を利用して3回洗浄した後、マウンティング(mounting)溶液を入れてカバーグラス(coverglass)を覆った。このようにして染色されたスライドを共焦点レーザー走査顕微鏡(Confocal microscopy、Ziess)を利用して撮影した。このような結果を図3及び図4に示した。図3は、水溶性低分子のローダミン−Bを蛍光物質として含むリポソームに対する結果であり、図4は、水溶性巨大分子であるデキストラン−RITCを蛍光物質として含むリポソームに対する結果を示すものである。写真で赤く染色された部分がローダミン−Bまたはデキストラン−RITCを示し、青く染色された部分が核を示す。
【0136】
図3によれば、PBS溶液である比較例2に比べて、単一リポソームである比較例3のほうがやや細胞移入率が高く、このようなリポソームに比べて、AP−GRRが導入された本発明の薬物送達担体の場合のほうが、細胞移入率が顕著に高いことを確認することができた。
【0137】
図4によれば、分子量が約20倍も大きいデキストラン−RITCの場合でもローダミン−Bと類似した結果を確認することができた。比較例4及び5の写真を見れば、細胞内にデキストラン−RITCがほとんど取り込まれていないことが確認でき、これに対し、実施例4及び5の結果写真を見れば、赤い色の蛍光物質が細胞内に多量取り込まれたことが確認でき、このことから、本発明の薬物送達担体は、水溶性巨大分子を細胞内に送達するうえで顕著な効果を示すことを確認することができた。
【0138】
[試験例5]皮膚安定性の評価
前記実施例1〜5及び比較例1〜5の皮膚安定性を確認するために、成人の女性18名及び男性12名を対象(平均年齢32.5才)にして、実施例及び比較例のリポソームが含まれた製品を塗布するパッチテストを実施し、本発明の組成物に係る皮膚安定性を評価した。測定方法は、パッチを付着してから28時間経過後、パッチを除去して、30分後に第1回目の観察を行い、96時間が経過した後に第2回目の観察を行った。組成物の皮膚刺激に係る強度を調べるために、皮膚の陽性反応程度に応じて重みを付け、皮膚平均反応度を求めて組成物の皮膚刺激を目視で判定した。その結果を下記の表4に表す。
【0139】
【表4】
【0140】
前記表4の結果によれば、実施例及び比較例はいずれも、組成物に含まれて製造されたときに皮膚に刺激を与えないことを確認することができた。したがって、本発明のリポソームを含む化粧料組成物は、皮膚に対する安定性に優れているものと判断することができた。
【0141】
[試験例6]皮膚吸収実験による薬物送達担体の定性的効果の評価
比較例2〜5と実施例3、実施例5、実施例7及び実施例8に対し、皮膚吸収実験を行った。皮膚吸収実験のために屠殺用豚の副産物である耳(屠殺場で除毛されていない豚の耳を収得して実験に使用)の裏部分から摘出した皮膚を利用し、摘出した皮膚を洗浄し、フランツセル(Franz−cell)機器(Franz−type vertical diffusion cell system (Microette Plus Auto Sampling System、Hanson Research、USA))にてそれぞれ4時間及び18時間にかけて前記比較例及び実施例に含まれている蛍光物質の皮膚吸収実験を行った。
【0142】
フランツセルにて吸収済みの豚耳の皮膚をモルドに入れ、OCT compound(#4583、SAKURA Tissue−Tek、USA)で気泡が生じないように覆った。しかる後、−196℃で液体窒素を利用して急速凍結させた。急速凍結された豚耳の皮膚を凍結切片機(CM1950 cryostat、Leica、Germany)を利用して6μmの厚さで薄切りし、それをシラン(silane)がコーティングされたスライドグラスに張り付けた。このようなスライドグラスを室温(25℃)の遮光された場所で10分間乾燥した後、蛍光顕微鏡(BX53、Olympus、Japan)を利用して観察した。同じ蛍光強さと露出時間下において観察し、代表イメージは冷却デジタルカラーカメラ(DP72、Olympus、Japan)を利用して撮影し、このような結果を図5及び6に示した。図5及び6中の白色で示したスケールバーは500μmに該当する。図5の場合、露出時間を256msに設定したものであり、図6の場合、露出時間を64msに設定したものである。また、蛍光強さの場合、光源(light source)として水銀ランプ(U−HGLGPS、olympus、japan)を使用し、蛍光強さの場合、当該機械で設定できる値(0、3、6、12、25、50、及び100)のうちの6に合わせておいて分析を行った。
【0143】
図5によれば、ローダミンBの場合、分子量が相対的に小さい物質であって、比較例2のようにPBSに溶かした場合でも18時間吸収させた場合は一定量以上経皮に吸収され、比較例3のように一般のリポソームに適用された場合は、4時間吸収の場合から経皮吸収が生じることを確認することができる。これは、リポソームによる角質層細胞間脂質の撹乱効果によって水溶性成分の吸収が増大したものと判断される。なお、高分子物質に該当するデキストラン−RITCの場合は、比較例4及び5のいずれでも、経皮への吸収がほとんど生じないことが確認された。
【0144】
図6によれば、ローダミンBの場合、本発明の一側面に係る薬物送達担体の場合にPBSに溶かしたものに比べて、4時間の吸収でもローダミンBの吸収が顕著に示されることを確認することができる。図5の比較例3としての一般のリポソームと比較しても、実施例3である薬物送達担体に適用されたローダミンBの吸収のほうが、蛍光範囲が広く且つ厚く形成されたことからして、より優れた効果を示すことを確認することができる。このような効果は、リポソームの基本的な角質層脂質の撹乱効果と細胞透過ペプチドのポリアルギニン基による正電荷効果が、より効果的な皮膚への吸収に有効に働くためであると判断される。
【0145】
さらに、比較例4及び5の場合は、経皮への吸収がほとんど生じないデキストラン−RITCの場合でも本発明の一側面に係る薬物送達担体に適用された実施例5の場合、経皮への吸収が生じたことを確認することができた。このような結果から本発明の一側面に係る薬物送達担体は、分子量が10,000Da水準に達する高分子物質の場合でも皮膚内部に送達するという、異質的且つ顕著な効果を示すことを確認することができる。
【0146】
[試験例7]皮膚吸収実験による薬物送達担体の定量的効果の評価
試験例6でフランツセル機器にてそれぞれの比較例及び実施例を4時間吸収させた豚耳の皮膚に対し、角質層、角質層を除く皮膚組織、そして受容体(receptor)サンプルを下記のようにそれぞれ準備した。角質層サンプル(SC)の場合、吸収させた豚耳の皮膚に対し6mm biopsy後に皮膚組織の表面を、3Mテープストリッピング(3M tape stripping)を3回行い、テープを水とメタノールを1:1の割合で混合した溶媒6mlで抽出した。角質層を除く皮膚組織サンプル(Skin without SC)の場合、前記テープストリッピングを行った後に得た組織サンプルであって、水とメタノールを1:1の割合で混合した溶媒2mlで抽出した。受容体サンプルの場合、吸収実験を行った後に受容体の部分(receptor part)にあるPBS溶液1mlを分注して得たものである。
【0147】
このようにして収得された各サンプルを、分光光度計(Spectrophotometer、F4500、HITACHI)で分析し、分析条件は下記のとおりである。
【0148】
分析条件:
−ex slit(excitation slit): 2.5/emi slit(emission slit): 2.5
−exi(wavelength of light for excitation): 554nm/emi(wavelength of light for excitation): 579nm
【0149】
本分析は、544nm波長の光を照射した後の蛍光物質の放出(emission)結果を得、それより579nmに該当する強度(intensity)の値を検出して計算した結果に該当する。このような分析条件で収得した蛍光物質の吸収量の定量的な結果を、図7及び8と下記の表5に表した。分析の結果、受容体の部分からは蛍光が検出されなかった。
【0150】
【表5】
【0151】
図7、8及び表5の結果によれば、ローダミンBが含まれた比較例2、比較例3及び実施例3の場合、角質層と角質層を除く皮膚組織において、比較例2<比較例3<実施例3の順に吸収されたローダミンBの濃度が高くなっていくことを確認することができた。このことから、分子量が低い物質の場合のリポソーム構造体による皮膚吸収増進効果の程度を確認することができる。
【0152】
デキストラン−RITCが含まれた比較例4、比較例5及び実施例5の場合、ローダミンBとはやや異なる様相を示した。角質層に吸収された蛍光物質の場合、比較例4ではほとんど吸収されておらず、一般のリポソームに適用した比較例5でも吸収された蛍光物質が見られなかった。これに対し、本発明の一側面に係る薬物送達担体に適用した実施例5の場合、比較例4及び5よりも顕著に高い吸収効果を確認することができた。角質層を除く皮膚組織でも実施例5の場合、顕著に高い蛍光物質吸収を確認でき、これに対し、比較例4及び5では、目立つ皮膚吸収効果が見られなかった。したがって、このような結果によれば、本発明の一側面に係る薬物送達担体の場合、分子量が大きい物質に対しても角質層及び皮膚組織に対して高い吸収効果を示すことが確認でき、このような効果は、既存のリポソームに比べて顕著且つ異質的な効果にあたる。
【0153】
また、ナノエマルジョン形態の乳化剤形と混合した場合においては、本発明の一側面に係る薬物送達担体が両親媒性高分子を含む場合に、そうではない場合に比べて、顕著に高い皮膚吸収率を示すことを実施例7及び実施例8の結果から確認することができた。具体的に、ナノエマルジョン(乳化剤形)に両親媒性高分子を含む薬物送達担体である実施例6とこれを含まない実施例5を混合した場合に、両親媒性高分子を含む実施例8のほうが、実施例7に比べて巨大分子生理活性成分であるデキストラン−RITCの皮膚吸収量が7倍以上も高いことを確認することができた。これは、リポソームの構造的な安定度の増大に伴う皮膚吸収の増大と判断され、このような実験結果から、両親媒性高分子が導入された薬物送達担体は、その構造的安定性が増大され、化粧品で用いられる乳化剤形内でも巨大分子である生理活性成分を皮膚に送達し易くする効果を奏するという点を確認することができた。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]