特許第6605912号(P6605912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605912
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】スプリンクラーヘッド取付構造
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20191031BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   A62C31/02
   A62C35/68
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-205716(P2015-205716)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-77286(P2017-77286A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−006586(JP,A)
【文献】 特開2005−155087(JP,A)
【文献】 特開平01−131312(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0186310(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管にスプリンクラーヘッドを固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、
前記ソケットは、上側に開口した配管嵌合穴に続いて前記配管嵌合穴より小径の内部流路が設けられると共に前記スプリンクラーヘッドの固定部が設けられ、前記配管嵌合穴から前記内部流路に至る部分に、外側に接着剤を塗布した前記立下り配管の嵌め込みに伴い内部に押し出された前記接着剤を滞留して前記スプリンクラーヘッド側への漏れ出しを抑止する接着剤溜りが形成されたことを特徴とするスプリンクラーヘッド取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、前記ソケットは前記接着剤溜りとして機能する上方又は内周側に開いた環状溝が形成されたことを特徴とするスプリンクラーヘッド取付構造。
【請求項3】
消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管にスプリンクラーヘッドを固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、
前記ソケットは、前記立下り配管側に位置する第1ソケットと前記スプリンクラーヘッド側に位置する第2ソケットに分離され、
前記第1ソケットは、前記立下り配管側に、前記立下り配管を嵌合する配管嵌合穴が上向きに開口して形成されると共に、前記配管嵌合穴の内部に、外周に接着剤を塗布した前記立下り配管を嵌合した場合に内部に押し出された前記接着剤を滞留して前記第2ソケット側への漏れ出しを抑止する接着剤溜りが設けられ、第2ソケット側に、前記第2ソケットを嵌合するソケット嵌合穴が下向きに開口して形成され、
前記第2ソケットは、前記第1ソケット側に、外周に接着剤を塗布して前記ソケット嵌合穴に嵌合した場合に押し出された接着剤を外部に漏出させる嵌合円筒部が上向きに形成されると共に、前記スプリンクラーヘッド側に、前記スプリンクラーヘッドの固定部が下向きに開口して形成されたことを特徴とするスプリンクラーヘッド取付構造。
【請求項4】
請求項3記載のスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、前記第1ソケットは、前記配管嵌合穴に続いて前記配管嵌合穴より小径の内部流路が設けられ、前記配管嵌合穴から前記内部流路に至る段付穴のリング状の段付部分に、前記接着剤溜りとして機能する上方又は内周側に開いた環状溝が形成されたことを特徴とするスプリンクラーヘッド取付構造。
【請求項5】
消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管にスプリンクラーヘッドを固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、
前記立下り配管は、前記ソケットを嵌合するソケット嵌合穴が下向きに開口して形成され、
前記ソケットは、前記立下り配管側に、外周に接着剤を塗布して前記ソケット嵌合穴に突き当て嵌合した場合に押し出された接着剤を、前記立下り配管の前記ソケット側端面と前記ソケットの前記立下り配管側端面との隙間となる外部に漏出させる嵌合円筒部が上向きに形成されると共に、前記スプリンクラーヘッド側に、前記スプリンクラーヘッドの固定部が下向きに開口して形成されたことを特徴とするスプリンクラーヘッド取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道を供給する配管に、火災による熱気流を受けて作動する閉鎖型のスプリンクラーヘッドを装着した消火設備のスプリンクラーヘッド取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅、共同住宅、グループホームなどでは、上水道と同じ配管に閉鎖型のスプリンクラーヘッドを接続し、火災時に上水道を使用して消火を行う消火設備が知られている。
【0003】
ここで、一般住宅のスプリンクラーヘッドへの水圧は例えば0.05MPaが要求されており、上水道からの0.05MPaを超える給水圧力が確保できることで、火災時に充分な消火性能を得ることができる。
【0004】
図5は従来の上水道直結型の消火設備であり、例えば一般住宅に水道メータ101を介して引き込まれた上水道配管100は一般設備配管100aと消火設備配管100bに分岐される。一般設備配管100aには、手洗102や浴槽104に対する蛇口106が接続される。
【0005】
消火設備配管100bには例えば部屋毎に分けて閉鎖型のスプリンクラーヘッド108が接続され、また配管末端側でトイレ110の給水タンクに接続される。スプリンクラーヘッド108は消火設備配管100bに設けたT型継手112の分岐口からの立下り配管114にソケットを介して接続される。
【0006】
スプリンクラーヘッド108は感熱機構で保持された弁部材によりヘッド開口を閉鎖しており、火災による熱気流を受けて感熱機能が所定温度に達すると熱分解して弁部材を離脱させることでヘッド開口を開き、上水道水を散水させる。
【0007】
ここで、一般設備配管100a、消火設備配管100b、立下り配管114に塩化ビニールで作られた樹脂配管を使用している。
【0008】
図6は従来の上水道を利用した他の消火設備であり、水道メータ101を介して引き込まれた上水道配管100は一般設備配管100aと消火設備配管100bに分岐され、消火設備配管100bは貯水槽116に水道水を給水している。貯水槽116には消火ポンプ118が接続され、消火ポンプ118から引き出された消火設備配管100cにスプリンクラーヘッド108が接続され、通常監視状態で、消火設備配管100cの管内圧力を所定値に保持している。
【0009】
火災によりスプリンクラーヘッド108が作動して散水すると、図示しない圧力スイッチにより管内圧力の低下を検出して消火ポンプ118を起動し、貯水槽116から汲み上げた水道水を加圧供給して作動したスプリンクラーヘッド108からの散水を継続させる。
【0010】
図7図5及び図6の消火設備配管にT型継手により分岐接続されるスプリンクラーヘッドの連結構造を示した説明図であり、図7(A)に断面を示し、図7(B)に組付け前の分解状態を示す。
【0011】
図7(B)に示すように、スプリンクラーヘッド108の取付け作業は、まず、樹脂製のソケット120の下側のねじ穴122に、スプリンクラーヘッド108の取付ねじ部124をねじ込み固定した状態で、T型継手に接続した樹脂製の立下り配管114の先端側外周に液状の接着剤126を塗布し、また、接着を確実にするためにソケット120の嵌合穴128の内面にも接着剤を塗布し、立下り配管114に下側からソケット120の嵌合穴128を嵌め入れ、図6(A)に示すように、接着層126aにより接着固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−213825号公報
【特許文献2】特開2012−095794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような従来の消火設備にあっては、図7(B)に示すように、立下り配管114の先端外周に接着剤126を塗布して、そこにスプリンクラーヘッド108をねじ込み固定したソケット120を嵌合した場合、図7(A)に示すように、立下り配管114の外周に塗布している接着剤が押し出さて漏出し、矢印で示すようにスプリンクラーヘッド108の流入口に流れ込んで硬化し、スプリンクラーヘッド108の流入口を閉塞する閉塞部130を形成する場合があり、火災によりスプリンクラーヘッド108が作動しても、水道水が散布されない問題がある。
【0014】
この問題を解決するためには、スプリンクラーヘッド108の取付け作業の手順として、まず、T型継手からの立下り配管114の先端外周に接着剤126を均一に薄く塗布した状態でソケット120を嵌合し、接着剤が固着するに十分な養生時間が経過した後に、ソケット120の下側にスプリンクラーヘッド108をねじ込み固定すれば良い。
【0015】
しかしながら、共同住宅やグループホームなどの施設では、多数のスプリンクラーヘッドを消火設備配管に分岐接続する作業を必要とし、立下り配管にソケットを接着剤で固着し、接着剤が固着する養生時間を待ってスプリンクラーヘッドをソケットに接続していると、作業工数が大幅に増加し、また、養生時間を必要とすることから作業時間も長くなり、作業効率が低下して設備コストが増加する問題がある。
【0016】
本発明は、スプリンクラーヘッドを接続したソケットを分岐配管に接着固定しても、接着剤の漏出によるスプリンクラーヘッドの流入口の閉塞を起こすことのない作業性に優れたスプリンクラーヘッド接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(第1発明のスプリンクラーヘッド取付構造)
本発明は、消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管にスプリンクラーヘッドを固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、
ソケットのは、上側に開口した配管嵌合穴に続いて配管嵌合穴より小径の内部流路が設けられると共にスプリンクラーヘッドの固定部が設けられ、配管嵌合穴から内部流路に至る部分に、外側に接着剤を塗布した立下り配管の嵌め込みに伴い内部に押し出された前記接着剤を滞留してスプリンクラーヘッド側への漏れ出しを抑止する接着剤溜りが形成されたことを特徴とする。
【0018】
(接着剤溜りの構造)
ソケットは接着剤溜りとして機能する上方又は内周側に開いた環状溝が形成される。
【0019】
(第2発明のスプリンクラーヘッド構造)
本発明の別の形態にあっては、消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管にスプリンクラーヘッドを固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、
ソケットは、立下り配管側に位置する第1ソケットとスプリンクラーヘッド側に位置する第2ソケットに分離され、
第1ソケットは、立下り配管側に、立下り配管を嵌合する配管嵌合穴が上向きに開口して形成されると共に、配管嵌合穴の内部に、外周に接着剤を塗布した立下り配管を嵌合した場合に内部に押し出された接着剤を滞留して第2ソケット側への漏れ出しを抑止する接着剤溜りが設けられ、第2ソケット側に、第2ソケットを嵌合するソケット嵌合穴が下向きに開口して形成され、
第2ソケットは、第1ソケット側に、外周に接着剤を塗布してソケット嵌合穴に嵌合した場合に押し出された接着剤を外部に漏出させる嵌合円筒部が上向きに形成されると共に、スプリンクラーヘッド側に、スプリンクラーヘッドの固定部が下向きに開口して形成されたことを特徴とする。
【0020】
(接着剤溜りの構造)
第1ソケットは、配管嵌合穴に続いて配管嵌合穴より小径の内部流路が設けられ、配管嵌合穴から内部流路に至る段付穴のリング状の段付部分に、前記接着剤溜りとして機能する上方又は内周側に開いた環状溝が形成される。
【0021】
(第3発明のスプリンクラーヘッド構造)
本発明の別の形態にあっては、消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管にスプリンクラーヘッドを固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、
立下り配管は、ソケットを嵌合するソケット嵌合穴が下向きに開口して形成され、
ソケットは、立下り配管側に、外周に接着剤を塗布してソケット嵌合穴に突き当て嵌合した場合に押し出された接着剤を、立下り配管のソケット側端面とソケットの立下り配管側端面との隙間となる外部に漏出させる嵌合円筒部が上向きに形成されると共に、スプリンクラーヘッド側に、スプリンクラーヘッドをの固定部が下向きに開口して形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
(第1発明のスプリンクラーヘッド取付構造による効果)
本発明は、消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管に、閉鎖型のスプリンクラーヘッドをねじ込み固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、ソケットの内部に、外側に接着剤を塗布した立下り配管の嵌め込みに伴い内部に押し出された前記接着剤を滞留してスプリンクラーヘッド側への漏れ出しを抑止する接着剤溜りが形成されるようにしたため、分岐された立下り配管の下端外周に接着剤を塗布し、そこにスプリンクラーヘッドをねじ込み固定したソケットを嵌合することで、接着剤が押し出されて内部に漏出しても、ソケット内に設けた接着剤溜りに入って滞留し、接着剤溜りの中で硬化することとなり、漏出した接着剤がスプリンクラーヘッドの流入口に入って閉塞することを確実に防止できる。
【0023】
また、スプリンクラーヘッドをねじ込み固定したソケットを、先端外周に接着剤を塗布した立下り配管に嵌合して接着固定することから、立下り配管にソケットを接着固定し、接着剤が固着する養生時間後に、ソケットにスプリンクラーヘッドをねじ込み固定するといった煩雑で時間のかかる作業を必要とせず、スプリンクラーヘッドの流入口を漏出した接着剤で閉塞させることなく、1回の作業でスプリンクラーヘッドを、ソケットを介して分岐した立下り配管に固定する作業を効率良く行うことを可能とする。
【0024】
(ソケットの接着剤溜り構造による効果)
また、ソケットは、上側に開口した配管嵌合穴に続いて前記配管嵌合穴より小径の内部流路が設けられると共に内部流路に続いてスプリンクラーヘッドをねじ込み固定するねじ穴が設けられ、配管嵌合穴から内部流路に至る段付穴のリング状の段付部分に、前記接着剤溜りとして機能する上方又は内周側に開いた環状溝が形成されるようにしたため、内部に漏出した接着剤を滞留させるに十分な容積の環状溝が確保され、立下り配管の先端外周に接着剤を均一に薄く塗ることで接着剤の漏出量を可能な限り低減させるといった緻密な作業を必要とすることなく、接着剤をムラなく十分に塗布して接着固定すれば良く、作業効率を高めることを可能とする。
【0025】
(第2発明のスプリンクラーヘッド取付構造による効果)
本発明の別の形態にあっては、消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管に、閉鎖型のスプリンクラーヘッドをねじ込み固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、ソケットは、立下り配管側に位置する第1ソケットとスプリンクラーヘッド側に位置する第2ソケットに分離され、第1ソケットは、立下り配管側に、立下り配管を嵌合する配管嵌合穴が上向きに開口して形成されると共に、配管嵌合穴の内部に、外周に接着剤を塗布した立下り配管を嵌合した場合に内部に押し出された接着剤を滞留して第2ソケット側への漏れ出しを抑止する接着剤溜りが設けられ、第2ソケット側に、第2ソケットを嵌合するソケット嵌合穴が下向きに開口して形成され、第2ソケットは、第1ソケット側に、外周に接着剤を塗布してソケット嵌合穴に嵌合した場合に押し出された接着剤を外部に漏出させる嵌合円筒部が上向きに形成されると共に、スプリンクラーヘッド側に、スプリンクラーヘッドをねじ込み固定するねじ穴が下向きに開口して形成されるようにしたため、立下り配管と第1ソケットの配管嵌合穴の接着固定は、第1ソケット内に接着剤溜りを形成したことで、内部に漏出した接着剤は接着剤溜りに入ってスプリンクラーヘッド側(下側)に漏れ出して閉塞することはない。
【0026】
また、第1ソケットの下側のソケット嵌合穴と第2ソケットの上側の嵌合円筒部の接着固定は、下側に位置する第2ソケットの嵌合円筒部の外周に接着剤を塗布し、これを上側に位置する第1ソケットのソケット嵌合穴に嵌合することから、この嵌合で押し出された接着剤は外部に漏出し、内部に漏出することはないから、スプリンクラーヘッドの流入口を閉塞することはない。
【0027】
更に、第1ソケット内に形成した接着剤溜りから第2ソケットの下端にねじ込み固定したスプリンクラーヘッドの流入口までの距離が、第2ソケットが介在しているぶん長くなり、万一、接着剤溜りを超えて接着剤が漏出したとしても、流入口までの距離が長いことから、途中の内壁への付着により漏出が途中で止まり、スプリンクラーヘッドの流入口を閉塞させることを確実に防止可能とする。
【0028】
(第1ソケットの接着剤溜り構造による効果)
また、第1ソケットは、配管嵌合穴に続いて配管嵌合穴より小径の内部流路が設けられ、配管嵌合穴から内部流路に至る段付穴のリング状の段付部分に、前記接着剤溜りとして機能する上方又は内周側に開いた環状溝が形成されるようにしたため、内部に漏出した接着剤を滞留させるに十分な容積の環状溝が確保され、立下り配管の先端外周に接着剤を均一に薄く塗ることで接着剤の漏出量を可能な限り低減させるといった緻密な作業を必要とすることなく、接着剤を十分に塗布して接着固定すれば良く、作業効率を高めることを可能とする。
【0029】
(第3発明のスプリンクラーヘッド取付構造による効果)
本発明の別の形態にあっては、消火用水を供給する配管から分岐された立下り配管に、閉鎖型のスプリンクラーヘッドをねじ込み固定したソケットを嵌め込んで接着剤により固定されたスプリンクラーヘッド取付構造に於いて、立下り配管は、ソケットを嵌合するソケット嵌合穴が下向きに開口して形成され、ソケットは、立下り配管側に、外周に接着剤を塗布してソケット嵌合穴に嵌合した場合に押し出された接着剤を外部に漏出させる嵌合円筒部が上向きに形成されると共に、スプリンクラーヘッド側に、スプリンクラーヘッドをねじ込み固定するねじ穴が下向きに開口して形成されるようにしたため、立下り配管の下側のソケット嵌合穴とソケットの上側の嵌合円筒部の接着固定は、下側に位置するソケットの嵌合円筒部の外周に接着剤を塗布し、これを上側に位置する立下り配管のソケット嵌合穴に嵌合することから、この嵌合で押し出された接着剤は外部に漏出し、内部に漏出することはないから、スプリンクラーヘッドの流入口の閉塞を確実に防止可能とする。
【0030】
また、スプリンクラーヘッドをねじ込み固定したソケットの上側に形成した嵌合円筒部の外周に接着剤を塗布した立下り配管のソケット嵌合穴に嵌合して接着固定することから、立下り配管にソケットを接着固定し、接着剤が固着する養生時間後に、ソケットにスプリンクラーヘッドをねじ込み固定するといった煩雑で時間のかかる作業を必要とせず、スプリンクラーヘッドの流入口を漏出した接着剤で閉塞させることなく、1回の作業でスプリンクラーヘッドをソケットを介して分岐した立下り配管に固定する作業を効率良く行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】スプリンクラーヘッド取付構造の第1実施形態を示した断面図
図2】スプリンクラーヘッド取付構造の第1実施形態の変形例を示した断面図
図3】スプリンクラーヘッド取付構造の第2実施形態を示した断面図
図4】スプリンクラーヘッド取付構造の第3実施形態を示した断面図
図5】上水道直結型となる従来の消火設備を示した説明図
図6】上水道を水源とする消火ポンプを設けた従来の消火設備を示した説明図
図7】従来のスプリンクラーヘッド取付構造を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
[スプリンクラーヘッド取付構造の第1実施形態]
図1はスプリンクラーヘッド取付構造の第1実施形態を示した断面図であり、図1(A)に断面を示し、図1(B)の組立て前の分解状態を示す。
【0033】
図1(A)に示すように、本実施形態のスプリンクラーヘッド取付構造10は、図4及び図5に示したように、消火設備配管に設けたT型継手の分岐口に接続された樹脂製の立下り配管12の先端に、樹脂製のソケット14を介して閉鎖型のスプリンクラーヘッド16を接続している。
【0034】
ソケット14は、上側に開口した立下り配管12を嵌合する配管嵌合穴18に続いて配管嵌合穴18より小径の内部流路25を設け、内部流路25に続いてスプリンクラーヘッド16のねじ部24をねじ込み固定するねじ穴22を設け、配管嵌合穴18から内部流路25に至る段付穴のリング状の段付面に環状溝からなる接着剤溜り20を形成している。
【0035】
本実施形態のスプリンクラーヘッド取付構造の組立作業は、次のようになる。図1(B)に示すように、まず、ソケット14の下側のねじ穴22にスプリンクラーヘッド16の流入口26を内部に備えたねじ部24をねじ込み固定して準備する。
【0036】
続いて、T型継手により分岐している立下り配管12の先端側外周の嵌め込み部分に、想像線で示すように液状の接着剤28をムラなく塗布する。なお、接着剤は、更に、ソケット14の配管嵌合穴18の内壁部分に塗布してもよい。
【0037】
この状態で、スプリンクラーヘッド16を接続したソケット14の配管嵌合穴18を、接着剤28を塗布している立下り配管12に下側から嵌合すると、接着剤28が内部に押し出され、図1(A)の矢印で示すように、下側へ漏出するが、内部流路25の開口位置となる段付き穴の段付面に形成している接着剤溜り20に漏出した接着剤が入り込む。
【0038】
接着剤溜り20は段付き穴の段付面に環状溝を形成していることから、漏出した接着剤の量に対し、十分に大きな収納容積をもっており、接着剤溜り20に入り込んだ接着剤は、接着剤溜り20から溢れることなく留まり、時間の経過に伴って硬化して固着接着剤30として残る。
【0039】
また、立下り配管12とソケット14の配管嵌合穴18の間に残っている接着剤は、養生時間が経過すると硬化して接着層28aを形成し、立下り配管12にソケット14を接着固定する。
【0040】
このため立下り配管12の先端外周に接着剤28を塗布し、スプリンクラーヘッド16をねじ込み固定したソケット14を嵌合することで、接着剤が押し出されて内部に漏出しても、ソケット14内に設けた接着剤溜り20により滞留硬化させ、漏出した接着剤がスプリンクラーヘッド16の流入口26に入って閉塞することを確実に防止できる。
【0041】
また、スプリンクラーヘッド16をねじ込み固定したソケット14を準備し、これを先端外周に接着剤28を塗布した立下り配管12に嵌合して接着固定していることから、立下り配管にソケットを接着固定し、接着剤が固着する養生時間後に、ソケットにスプリンクラーヘッドをねじ込み固定するといった煩雑で時間のかかる作業を必要とせず、スプリンクラーヘッド16の流入口26を漏出した接着剤で閉塞させることなく、1回の作業でスプリンクラーヘッド16を、ソケット14を介してT型継手により分岐した立下り配管12に固定する作業を効率良く行うことを可能とする。
【0042】
また、ソケット14の内部に設けた接着剤溜り20として、内部に漏出した接着剤を滞留させるに十分な容積の環状溝を確保することで、立下り配管12の先端外周に接着剤を均一に薄く塗ることで接着剤の漏出量を可能な限り低減させるといった緻密な作業を必要とすることなく、接着剤28をムラなく十分に塗布して接着固定すれば良く、作業効率を高めることを可能とする。
【0043】
[スプリンクラーヘッド取付構造の第1実施形態]
図2は、スプリンクラーヘッド取付構造の第1実施形態の変形例を示した断面図である。本実施形態にあっては、ソケット14に形成した配管嵌合穴18から内部流路25に至る段付穴の底部内周となるリング状の段付部分に、接着剤溜り20として機能する内周側に開いた環状溝を形成した点を特徴とする。それ以外の構造は図1の第1実施形態と同じになる。
【0044】
本実施形態にあっても、スプリンクラーヘッド16を接続したソケット14の配管嵌合穴18を、接着剤28を塗布している立下り配管12に下側から嵌合すると、接着剤28が内部に押し出され、配管嵌合穴18の底部内周に形成している接着剤溜り20に漏出した接着剤が入り込み、時間の経過に伴って硬化して固着接着剤30として残り、漏出した接着剤がスプリンクラーヘッド16の流入口26に入って閉塞することを確実に防止できる。
【0045】
[スプリンクラーヘッド取付構造の第2実施形態]
図3はスプリンクラーヘッド取付構造の第2実施形態を示した断面図である。図3に示すように、本実施形態のスプリンクラーヘッド取付構造10は、消火設備配管に設けたT型継手の分岐口に接続された立下り配管12の先端に、ソケットを分離した第1ソケット14aと第2ソケット14bを介して閉鎖型のスプリンクラーヘッド16を接続している。
【0046】
第1ソケット14aは、立下り配管12側に、立下り配管12を嵌合する配管嵌合穴18を上向きに開口して形成すると共に、配管嵌合穴18の内部に、外周に接着剤を塗布した立下り配管12に嵌合した場合に内部に押し出された接着剤を滞留して第2ソケット14b側への漏れ出しを抑止する接着剤溜り20を設けている。即ち、第1ソケット14aは、配管嵌合穴18に続いてそれより小径の内部流路25aを設けており、配管嵌合穴18から内部流路25aに至る段付穴のリング状の段付面に環状溝による接着剤溜り20を形成している。
【0047】
また、第1ソケット14aは、第2ソケット14bを嵌合するソケット嵌合穴32を下向きに開口して形成している。
【0048】
第2ソケット14bは、第1ソケット14a側に、外周に接着剤を塗布してソケット嵌合穴32に嵌合した場合に押し出された接着剤を外部に漏出させる嵌合円筒部34を上向きに形成している。第2ソケット14bの嵌合円筒部34は、第1ソケット14aのソケット嵌合穴32に嵌め込み可能な外径をもち、外周に接着剤を塗布した嵌合円筒部34を第1ソケット14aのソケット嵌合穴32に嵌合した場合に、両者の隙間から押し出された接着剤を外部に漏出させる構造を実現する。
【0049】
また、第2ソケット14bは、スプリンクラーヘッド16側に、スプリンクラーヘッド16のねじ部24をねじ込み固定するねじ穴22を下向きに開口して形成している。
【0050】
このような第2実施形態によるスプリンクラーヘッドの取付け作業は次のようになる。まず、第2ソケット14bのねじ穴22にスプリンクラーヘッド16のねじ部24をねじ込み固定して準備する。
【0051】
続いて、T型継手により分岐接続している立下り配管12の先端外周に液状の接着剤をムラなく塗布し、下側から第1ソケット14aの配管嵌合穴18を嵌め入れる。このとき立下り配管12と第1ソケット14aの配管嵌合穴18の隙間から接着剤が押し出され、下側へ漏出するが、内部流路25aの開口位置となる段付き穴の段付面に形成している接着剤溜り20に漏出した接着剤が入り込む。
【0052】
この場合、接着剤溜り20は段付き穴の段付面に環状溝をリング状に形成していることから、漏出した接着剤の量に対し、十分に大きな収納容積をもっており、接着剤溜り20に入り込んだ接着剤は、接着剤溜り20から溢れることなく留まり、時間の経過に伴って硬化して固着接着剤30aとして残る。また、立下り配管12と第1ソケット14aの配管嵌合穴18の間に残っている接着剤は、養生時間が経過すると硬化して接着層28aを形成し、立下り配管12に第1ソケット14aを接着固定する。
【0053】
続いて、スプリンクラーヘッド16をねじ込み固定した第2ソケット14bの上側の嵌合円筒部34の外周に液状の接着剤をムラなく塗布し、第1ソケット14aの下側に開口したソケット嵌合穴32に嵌め入れる。このとき、このとき第2ソケット14bの嵌合円筒部34と第1ソケット14aのソケット嵌合穴32の隙間から接着剤が押し出されて外側に漏出し、時間がたつと硬化して固着接着剤30bとなる。
【0054】
このように図2の第2実施形態にあっては、立下り配管12に対する第1ソケット14aの配管嵌合穴18の嵌め込みで内部に漏出した接着剤は、第1ソケット14a内の接着剤溜り20に入り込んで硬化され、漏出した接着剤がスプリンクラーヘッド16の流入口26に入って閉塞することを確実に防止できる。
【0055】
また、第1ソケット14aの下側のソケット嵌合穴32に対する第2ソケット14bの上側に形成した嵌合円筒部34の嵌め込みにより押し出された接着剤は、外側に漏出し、内部には漏出しないことから、スプリンクラーヘッド16の流入口26を閉塞することはない。
【0056】
更に、第1ソケット14a内に形成した接着剤溜り20から第2ソケット14bの下端にねじ込み固定したスプリンクラーヘッド16の流入口26までの距離が、第2ソケット14bを介在しているぶん長くなり、万一、接着剤溜り20を超えて接着剤が漏出したとしても、流入口26までの距離が長いことから、途中の内部流路25a,25bの内壁への接着剤の付着により漏出が途中で止まり、スプリンクラーヘッド16の流入口26を閉塞させることを確実に防止可能とする。
【0057】
また、立下り配管12に対する第1ソケット14aの接着固定と、これに続く第1ソケット14aに対する第2ソケット14bの接着固定は、接着剤の内部への漏れ出しによるスプリンクラーヘッド16の流入口26を閉塞する問題が起きないため、1回の作業で行うことができ、第1及び第2ソケット14a,14bを介してT型継手により分岐した立下り配管12に固定する作業を効率良く行うことを可能とする。
【0058】
また、図3の第2実施形態についても、図2に示した第1実施形態の変形例と同様に、第1ソケット14aに形成した配管嵌合穴18から内部流路25aに至る段付穴の底部内周となるリング状の段付部分に、接着剤溜り20として機能する内周側に開いた環状溝を形成するようにしても良い。
【0059】
[スプリンクラーヘッド取付構造の第3実施形態]
図4はスプリンクラーヘッド取付構造の第3実施形態を示した断面図である。図4に示すように、本実施形態のスプリンクラーヘッド取付構造10は、消火設備配管に設けたT型継手の分岐口に接続された立下り配管12の先端に、スプリンクラーヘッド16をねじ込み固定したソケット14cを接着固定している。立下り配管12は先端の径を大きくし、その中にソケット嵌合穴36を下向きに開口して形成している。
【0060】
ソケット14cは、下側のねじ穴22にスプリンラーヘッド16のねじ部24をねじ込み固定している。また、ソケット14cは、上側に嵌合円筒部38を形成している。ソケット14cの嵌合円筒部38は、立下り配管12のソケット嵌合穴36に嵌め込み可能な外径をもち、外周に接着剤を塗布した嵌合円筒部38を立下り配管12のソケット嵌合穴36に嵌合した場合に、両者の隙間から押し出された接着剤を外部に漏出させる構造を実現する。
【0061】
このような第3実施形態によるスプリンクラーヘッド取付構造10の組立作業は次のようになる。ます、ソケット14cのねじ穴22にスプリンクラーヘッド16のねじ部24をねじ込み固定して準備する。
【0062】
続いて、スプリンクラーヘッド16をねじ込み固定したソケット14cの上側の嵌合円筒部38の外周に、液状の接着剤をムラなく塗布し、立下り配管12の下側に開口したソケット嵌合穴36に嵌め入れる。このとき、このときソケット14cの嵌合円筒部38と立下り配管12のソケット嵌合穴36の隙間から接着剤が押し出されて外側に漏出し、時間がたつと硬化して固着接着剤30cとなる。
【0063】
このように図3の第3実施形態にあっては、立下り配管12のソケット嵌合穴36に対するソケット14cの嵌め込みで押し出された接着剤は外側に漏出し、内部には漏出しないことから、スプリンクラーヘッド16の流入口26を閉塞することはない。
【0064】
また、立下り配管12に対するソケット14cの接着固定は、接着剤の内部への漏れ出しによるスプリンクラーヘッド16の流入口26を閉塞する問題が起きないため、1回の作業で行うことができ、ソケット14cを介してT型継手により分岐した立下り配管12に固定する作業を効率良く行うことを可能とする。
【0065】
また、本実施形態は、図1及び図2に示した第1及び第2実施形態のように、内部に接着剤溜り20を設ける必要がなく、そのぶん構造が簡単でコストを低減できる。
【0066】
[本発明の変形例]
上記の第1乃至第3実施形態のスプリンクラーヘッド取付構造は、2つの管部材の連結部分の下側に嵌合穴を形成した場合は、接着固定により接着剤が内部に漏出されることから、内部に接着剤溜りを設けた取付構造とし、一方、2つの管部材の連結部分の上側に嵌合穴を形成し、下側に嵌合円筒部を形成した場合は、接着固定により接着剤が外部に漏出される取付構造とすることができ、何れか一方又は両者を含む取付構造であれば、適宜の取付構造の形態を含むものである。
【0067】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0068】
10:スプリンクラーヘッド取付構造
12:立下り配管
14,14c:ソケット
14a:第1ソケット
14b:第2ソケット
16:スプリンクラーヘッド
18:配管嵌合穴
20:接着剤溜り
22:ねじ穴
24:ねじ部
26:流入口
28:接着剤
28a:接着層
30,30a〜30c:固着接着剤
32,36:ソケット嵌合穴
34,38:嵌合円筒部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7