(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと多価アルコールを含有するジェル状化粧料において、多価アルコールとしてグリセリンを含有し、さらにソルビトール、マルチトール及びジグリセリンから選ばれる一種以上を含有することを特徴とするジェル状化粧料に係るものである。
以下に、本発明の構成成分について詳細に説明する。
<(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー>
本発明で用いる(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとは、ヒドロキシエチルアクリル酸とアクリルジメチルタウリンナトリウムの共重合体であり、市販されているものを使用することができる。例えば、SEPPIC社(フランス)製のSIMULGEL NS、SEPINOV EMT10を使用することができる。SIMULGEL NSは、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー37.5質量%、スクワラン25.5質量%、ポリソルベート60が5.5質量%、水30質量%、イソステアリン酸ソルビタン1.5質量%からなる混合原料である。SEPINOV EMT10は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー100質量%である。
本発明のジェル状化粧料は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを0.75〜1.2質量%、より好ましくは0.9〜1質量%配合することが好ましい。(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーは、この範囲の配合量で、本発明で選択した多価アルコールとにより化粧料として最適な使用感が得られる。したがって、1.2質量%を超えて配合することは不経済であるし、好ましくない使用感が生じる恐れがある。
【0009】
<多価アルコール>
本発明では、ジェル状化粧料を得るため、多価アルコールとしてグリセリンを配合する。さらにソルビトール、マルチトール及びジグリセリンから選ばれる一種以上の多価アルコールを配合する。
(1)グリセリン
グリセリンは3価のアルコールである。グリセリンは化粧品原料として広く普及している。ライオン(株)製の化粧品用濃グリセリン、花王(株)製の濃グリセリン等の市販製品を入手して用いることができる。
【0010】
(2)ジグリセリン
ジグリセリンは、グリセリン2分子を脱水縮合反応させ、蒸留、精製してつくられ、4つの水酸基を持つ多価アルコールである。阪本薬品工業(株)製のジグリセリン801等市販されている化粧料規格の製品を入手して用いることができる。
【0011】
(3)ソルビトール
ソルビトールは、グルコースを還元し、アルデヒド基をヒドロキシ基に変換して得られる糖アルコールの一種である。ソルビットまたはグルシトールともいう。三菱商事フードテック(株)社製のソルビットD−70等の市販されている製品を入手して用いることができる。ソルビットD−70は、ソルビトール70質量%と水30質量%から成る混合原料である。
【0012】
(4)マルチトール
マルチトールは、酵素糖化法によって澱粉からつくられる二糖類のマルトースを原料として高圧下で接触還元して得られる糖アルコールの一種である。三菱商事フードテック(株)製のアマルティシロップ等の市販されている製品を入手して用いることができる。アマルティシロップは、マルチトール75質量%と水25質量%から成る混合原料である。
なお、本発明においては、グリセリンとこれら3成分の他にも、本発明の効果を損なわない範囲であれば任意でその他の多価アルコールを適量含有させることができる。このような多価アルコールとして、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等を例示できる。その他の多価アルコールは抗菌目的で配合してもよい。
【0013】
本発明のジェル状化粧料は、化粧料の全質量に対し多価アルコールを70〜90質量%配合することが好ましく、このうち必須成分であるグリセリンは組成物全量に対し50〜75質量%配合することが好ましい。組成物に抗菌性を付与する目的などで任意で配合する1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールは、この配合量に含める。
「グリセリン」と、「ジグリセリン、ソルビトール及びマルチトールから選ばれる一種以上の多価アルコール」の配合比率が20:1〜4:1であることが好ましい。この比率の範囲だと、多価アルコールを多く含む系において(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの増粘を抑制しつつ(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの含有量を多くすることができ、適正な粘度と、なめらかな伸び、厚み感と密着感のある使用感を実現することができるので好ましい。
【0014】
<シリル化シリカ>
本発明では、さらに、シリル化シリカを配合すると、より密着感が向上するので好ましい。無水ケイ酸をジメチルクロロシランやトリメチルクロロシランで処理することにより得られ、白色の流動性粉体であり、エステル油やシリコーン油を増粘する機能を有している。0.01〜0.5質量%、より好ましくは、0.05〜0.3質量%配合することが好ましい。より具体的には、旭硝子(株)によりSunsphere(登録商標) H33の名称、Dow Corning社によりDow Corning VM-2270 Aerogel Fine Particlesの名称で販売されている製品を例示することができる。
【0015】
本発明のジェル状化粧料を透明なジェル状化粧料とするためには、油剤を含有しないか1質量%未満にすることが好ましい。この透明なジェル状化粧料は、油剤を含まない場合であっても、十分な保湿効果を有する保湿化粧料となる。また、透明性を減らしてもよい場合や使用感のバリエーション化を目的として、任意で1質量%以上油剤を配合しても構わない。
【0016】
本発明において水の配合量は、25質量%以下とすることが好ましい。水の配合量が多いとジェル状化粧料の厚み感や密着感が減じる恐れがある。
【0017】
本発明のジェル状化粧料は、B型粘度計を用い、4号ローター、回転速度6rpm、30秒、25℃の条件で測定するとき、粘度が、48000〜95000mPa・sを示す。この粘度範囲を示すジェル状化粧料は、チューブ容器に充填する化粧料として好ましい。
【0018】
<任意成分>
本発明のジェル状化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、植物油のような油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーンを含有させることができる。アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー以外の水溶性高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、香料、pH調整剤、乾燥剤等を含有させることができる。また、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、抗癌剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0019】
油脂類としては、例えばツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
【0020】
炭化水素類としては、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0021】
高級脂肪酸として、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0022】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0023】
シリコーンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0024】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0025】
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0026】
両性界面活性剤として、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0027】
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0028】
防腐剤として、例えばメチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
【0029】
金属イオン封鎖剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
【0030】
水溶性高分子としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよいが、たとえば、天然高分子としては、トラガントガム、カラヤガム、キサンタンガム、グアガム、カチオン化グアガム、アニオン化グアガム、タラガム、アラビアガム、タマリンドガム、ジュランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、クインスシード、デキストラン、等が例示できる。半合成高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸ナトリウム、ベントナイト、等が例示できる。合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ジアルキルポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド、ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、合成スメクタイト、等を挙げることができる。
【0031】
粉体成分としては、酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、タルク、カオリン、窒化ホウ素、マイカ、結晶セルロース粉体、シルク粉体、ポリアクリル酸アルキル粉体、ナイロン粉体、ポリエチレン粉体、ポリスチレン粉体等を例示できる。また、シリコーン処理やフッ素処理等を施した表面処理粉体を用いてもよい。また、複数種の不溶性粉体からなる複合粉体を用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
【0032】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。
また、プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【0033】
本発明のジェル状化粧料は、保湿ジェル、美白ジェル、パック化粧料、ジェルマスク等の皮膚用化粧料、口唇用化粧料とすることができる。また、医薬品、医薬部外品とすることができる。
【0034】
本発明の化粧料は常法により製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例、比較例を示し本発明について具体的に説明する。
表1に実施例1〜6の組成、表2に比較例1〜17の組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1、表2に示す実施例及び比較例の組成の化粧料を、常法により調製した。なお、配合量の単位は、組成物全量に対する質量%で表示している。
【0039】
各化粧料の粘度を測定し、専門パネルによる官能評価として「伸び」、「厚み感」、「密着感」について評価した。試験方法ならびに評価基準は以下の通りとした。
[粘度の測定]
化粧料を直径約3cmのガラス容器に充填後25℃に保存して、製造翌日の粘度をB型粘度計(4号ローター、6rpm、30秒)にて測定した。
【0040】
[官能評価]
2名の熟練した専門の官能評価員により評価した。
【0041】
(伸び)
○:なめらかに伸びる
×:なめらかに伸びない
【0042】
(厚み感)
化粧料を前腕内側部に一定量塗布し、塗布中に感じる化粧料の厚みについて、下記の基準により評価した。
○:厚み感がある
△:やや厚み感がある
×:厚み感がない
【0043】
(密着感)
化粧料を前腕内側部に一定量塗布し、塗布後に化粧料が皮膚に密着している感じがするかどうか指腹でタッピングし、下記の基準により評価した。
○:密着感がある
△:やや密着感がある
×:密着感がない
【0044】
2名による官能評価結果はすべて一致した。測定結果及び官能評価結果を上記の表1、表2の下段に記載した。なお官能評価は、一致した評価結果を記載した。
【0045】
[結果]
「伸び」、「厚み感」については、実施例1〜5はどちらも「〇」評価であり、実施例6は厚み感が「△」評価であった。「密着感」は、実施例1、2、6が「△」評価、実施例3〜5は「〇」評価であった。実施例1、2及び6の「△」評価は「やや密着感がある」というものであり、「○」評価(密着感がある)とわずかな差であり、実用上問題はなかった。実施例1〜6の化粧料の粘度は、48800〜91400mPa・sであった。この粘度は、チューブ容器に充填して使用するに適した粘性であった。また、実施例1〜6の化粧料は、いずれも透明な外観の美しいジェル状を呈していた。
【0046】
比較例1〜4は、グリセリンに代えてジグリセリンを48〜80質量%配合し、その他の多価アルコールを含む組成である。これらの組成は、いずれも粘度が100,000mPa・sを超えており、チューブ容器に充填するためには不適であった。また[伸び]の評価も「×」であった。
比較例5は、ジグリセリンを90質量%配合し、その他の多価アルコールを配合しない組成である。この組成では粘度は73300mPa・sであり、「密着感」は「×」評価であった。
比較例6は、比較例5のジグリセリンに代えてマルチトール(75%水溶液)を90質量%配合した組成である。この組成では、粘度は81300mPa・sであり、「伸び」と「密着感」が「×」となった。比較例7は、比較例5のジグリセリンに代えてソルビトール(70%水溶液)を90質量%配合した組成である。この組成では、粘度は51700mPa・sであり、「伸び」が「×」となった。比較例8は、グリセリンを90質量%配合し、それ以外の多価アルコールを含有しない組成である。この組成では、粘度は31300mPa・sと低く、さらに「厚み感」と「密着感」の評価が「×」であった。比較例9は、比較例5のジグリセリンに代えて1,3−ブチレンブリコールを90質量%配合した組成である。この組成では、本発明の目的とするゲル化が起こらなかった。
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を実施例と同程度の0.975質量%とした比較例10〜15、同ポリマーの配合量を1.5質量%に増やした比較例16、17の試験は、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を増やすことによって使用感が改善されるかどうか試験したものであるが、「伸び」、「厚み感」、「密着感」のいずれかに「×」評価があり目的とする使用感の化粧料は得られなかった。
【0047】
(まとめ)
比較例5〜9は、多価アルコールとしてジグリセリン90質量%(比較例5)、マルチトール67.5質量%(比較例6)、ソルビトール63質量%(比較例7)、グリセリン90質量%(比較例8)、1,3−ブチレングリコール90質量%(比較例9)を含む組成であり、組成物の粘度は、73300mPa・s(比較例5)、81300mPa・s(比較例6)、51700mPa・s(比較例7)、31300mPa・s(比較例8)、ゲル化せず(比較例9)であった。
比較例5〜9から、グリセリンを高配合することで(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの増粘が抑えられることが分かった。グリセリン90質量%を含む比較例8は、なめらかな伸びの良さはあったが、厚み感、密着感が不十分であり、また、チューブ容器に充填するには粘度が低かった。伸びの評価が「○」であった比較例8の組成からキサンタンガムを削除し(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を1.5質量%に増やすと、厚み感は「○」と改善したが、密着感は改善せず、伸びは逆に悪くなり「×」と評価された(比較例16)。また、比較例16のグリセリンを水に置き換えると伸びは「○」と評価されたが、厚み感や密着感は「×」と評価された(比較例17)。(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を0.975質量%とした比較例15も同様の結果であった。このことから、なめらかな伸びの良さを維持しながら厚み感や密着感をも良好なものにするためには、多価アルコールとしてグリセリンを選択し、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を多くするだけでは達成できないことが分かった。
次に、比較例5〜9では(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量は0.6質量%でありキサンタンガムも0.1質量%含んでいるが、キサンタンガムを含まず(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を0.975質量%と増やして多価アルコールの純分量が70〜75質量%範囲に収まるようにした組成を組み、比較例10〜13とした。多価アルコールの純分量を70〜75質量%範囲に収まるようにしたのは、汎用される市販品が70%水溶液(ソルビトール)や75%水溶液(マルチトール)であり、これを用いて比較試験を行った為である。比較例10〜13は、多価アルコールとしてジグリセリン75質量%(比較例10)、マルチトール73.05質量%(比較例11)、ソルビトール68.18質量%(比較例12)、グリセリン75質量%(比較例13)を含む組成であるが、組成物の粘度は、78500mPa・s(比較例10)、231000mPa・s(比較例11)、138900mPa・s(比較例12)、81200mPa・s(比較例13)であった。この試験でも、グリセリンを高配合することで(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの増粘が抑えられることが確認できた(比較例13)が、ジグリセンにも(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの増粘を抑える傾向が見られた(比較例10)。そして、比較例10、比較例13ともに厚み感、密着感が「×」の評価であった。比較例11は比較例6に近い組成であるが、使用感(厚み感)評価は△から×となり悪くなった。比較例12は比較例7に近い組成であるが、使用感(厚み感)評価は△から○となり改善した。
これらの結果を踏まえ、ジグリセリン、グリセリンを高配合した組成に、ソルビトールやマルチトールを組み合わせた組成を検討したのが、比較例1〜4、実施例1〜6である。ジグリセリンを高配合した組成が比較例1〜4であり、グリセリンを高配合した組成が実施例1〜6である。
まず、ジグリセリンを高配合して、ソルビトールやマルチトールを複数組み合わせて比較例1〜4を作成したところ、厚み感や密着感が改善したものが認められたが、いずれの組成でも著しく増粘してしまい、伸びが悪くなってしまった。比較例1〜4の組成物の粘度は、148000mPa・s(比較例1)、128400mPa・s(比較例2)、115700mPa・s(比較例3)、133000mPa・s(比較例4)であり、この粘度はチューブ容器への充填にも不適であった。
これに対して、グリセリンを主として配合し、さらに、ソルビトールやマルチトール、ジグリセリンを一種以上組み合わせて配合した実施例1〜6の組成物は、粘度が48800〜91400mPa・sであり、なめらかな伸びの良さと、良好な厚み感、良好な密着感が実現した。このなめらかな伸びと良好な厚み感は、粘度の増加を抑制しつつ(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの配合量を比較例の組成と比較して約1.5倍量も含有させたことと、組み合わせたソルビトールやマルチトール、ジグリセリンの性質が効果的に作用しているからと考えられる。さらに、シリル化シリカを組み合わせて配合した実施例3、4の組成物は、実施例1、2より良好な密着感が感じられたと評価されたことから、本発明の構成にさらにシリル化シリカを配合することは、ジェル状化粧料の密着感の改善に効果を示すものと考えられた。
【0048】
以上の結果から、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーとグリセリンと、ソルビトール、マルチトール及びジグリセリンから選ばれる一種以上とを組み合わせると、なめらかな伸びと、厚み感、密着感のある使用感が良好なジェル状化粧料になることがわかった。また、チューブに充填して使いやすい粘性になることがわかった。
【0049】
本発明の構成をとることにより、なめらかな伸びと、皮膚や唇に塗布した時に厚み感、密着感が感じられるジェル状化粧料が得られる。
本発明の構成のジェル状化粧料は、良好な使用感と、グリセリンの高配合によって高い保湿効果を有するので、特に口唇用途の化粧料として最適である。
さらに、本発明のジェル状化粧料の粘度は、チューブ容器に充填する化粧料として最適なものであった。
【0050】
処方例1
口唇用保湿ジェル
(配合成分) (質量%)
1.SEPINOV EMT10(SEPPIC社) 1.2
2.グリセリン 70
3.マルチトール(75%水溶液) 5
4.1,2−ペンタンジオール 1
5.ソルビトール(70%水溶液) 5
6.グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
7.精製水 残余
1〜7の成分を混合し口唇用保湿ジェルを得た。チューブ容器に充填した処方例1の口唇用保湿ジェルは、なめらかな伸びと、厚み感、密着感に優れ、さらに長時間しっとり感が持続する優れた使用感であった。
【0051】
処方例2
口唇用保湿ジェル
(配合成分) (質量%)
1.SIMULGEL NS(SEPPIC社) 3
2.グリセリン 60
3.ジグリセリン 10
4.1,2−ペンタンジオール 1
5.マルチトール(75%水溶液) 5
6.ジプロピレングリコール 2
7.キサンタンガム 0.2
8.ユーカリ油 0.01
9.精製水 残余
1〜9の成分を混合し口唇用保湿ジェルを得た。チューブ容器に充填した処方例2の口唇用保湿ジェルは、なめらかな伸びと、厚み感、密着感に優れ、長時間しっとり感が持続する優れた使用感であった。