特許第6605967号(P6605967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605967自動釣銭入出金機用の硬貨収納装置および自動釣銭入出金機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605967
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】自動釣銭入出金機用の硬貨収納装置および自動釣銭入出金機
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20191031BHJP
【FI】
   G07D11/10 101
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-8070(P2016-8070)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-129978(P2017-129978A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】村岡 至紘
(72)【発明者】
【氏名】秋田 基晴
(72)【発明者】
【氏名】前西 和之
(72)【発明者】
【氏名】中谷 信幸
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−320961(JP,A)
【文献】 特開2016−042333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00−11/60
G07D 1/00− 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を搬送する硬貨搬送路と、前記硬貨搬送路に設けられた連通口と、前記連通口を開閉する開閉体と、硬貨を導入する硬貨導入口を備えた少なくとも1つの硬貨収納室と、前記開閉体を制御する制御部とを備え、
前記連通口は前記硬貨搬送路の下部に設けられ、前記硬貨導入口は前記連通口に対向する位置に設けられ、
前記開閉体が閉じたとき、前記開閉体は前記硬貨搬送路の搬送面を構成し、
前記制御部は、前記開閉体を制御して硬貨の種類に対応した前記硬貨収納室に硬貨を振り分け
第1および第2の硬貨収納室を備え、
前記第1および第2の硬貨収納室の前記硬貨導入口は、前記連通口に対向する位置に並設され、
前記開閉体は、第1および第2の開閉体からなり、
前記第1および第2の開閉体が両方とも閉じているとき、前記第1および第2の開閉体は前記硬貨搬送路の搬送面を構成し、
前記第1の開閉体のみが開いているとき、搬送されてきた硬貨を前記連通口から前記第1の硬貨導入口に導入し、
前記第2の開閉体のみが開いているとき、搬送されてきた硬貨を前記連通口から前記第2の硬貨導入口に導入するように、前記第1および第2の開閉体を並設し、
前記制御部は、前記第1および第2の開閉体を制御して硬貨の種類に対応した前記硬貨収納室に硬貨を振り分け、
前記第1および第2の開閉体を硬貨の搬送方向に対し略左右対称となるように並設し、
前記第1の開閉体のみが開いているとき、硬貨の下面が前記第2の開閉体の縁に当接し、かつ、前記硬貨の重心が前記第1の硬貨導入口上に位置し、
前記第2の開閉体のみが開いているとき、硬貨の下面が前記第1の開閉体の縁に当接し、かつ、前記硬貨の重心が前記第2の硬貨導入口上に位置するように並設することを特徴とする自動釣銭入出金用の硬貨収納装置。
【請求項2】
前記開閉体が閉じたとき、前記開閉体の縁と、前記開閉体の縁に対向する前記搬送面の縁との間に予め定められた長さの隙間を有する請求項1に記載の自動釣銭入出金用の硬貨収納装置。
【請求項3】
前記第1および第2の開閉体は、前記硬貨搬送路の両側のそれぞれに支軸を有し、上方または下方に開く請求項またはに記載の自動釣銭入出金用の硬貨収納装置。
【請求項4】
前記硬貨搬送路は、上方に設けられたエンドレスベルトにより硬貨を摺動して搬送する請求項1〜のいずれか1つに記載の自動釣銭入出金用の硬貨収納装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1つに記載の硬貨収納装置を備えた自動釣銭入出金機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動釣銭入出金機用の硬貨収納装置およびそれを備えた自動釣銭入出金機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機、自動券売機、セルフ式ガソリンスタンドやスーパーマーケット等に設置された自動精算機などには自動釣銭入出金機が内蔵されており、この自動釣銭入出金機には硬貨を金種別に収納する複数の硬貨収納部を有する硬貨収納出金装置が備えられている(例えば特許文献1および2参照)。
【0003】
例えば、1円、5円、10円、50円、100円および500円硬貨を個別に収納することができる硬貨収納出金装置には6つの硬貨収納部が設けられており、特許文献1では、1円および5円硬貨を除く4種類の硬貨を金種別に収納する場合が例示されている。
【0004】
硬貨収納出金装置において、複数の硬貨収納部は、収納する硬貨の金種に応じた内径を有する円筒形にそれぞれ形成され、複数枚の硬貨を平積みした状態で収納するよう構成されている。
また、硬貨収納出金装置には、通常、複数の硬貨収納部のうち少なくとも1つが満杯となった時点の硬貨を収納する不特定硬貨収納部や、硬貨以外のものを収納する非硬貨収納部が設けられている。
【0005】
このような自動釣銭入出金機は、投入口に投入された硬貨の金種を識別し、硬貨収納出金装置の金種に応じた硬貨収納部へ硬貨を搬送して収納するように構成されている。
【0006】
また、特許文献2では、非硬貨収納部としてのリジェクト庫に硬貨を振り分けるリジェクトゲートおよび特定の硬貨を収納する収納ゲートを搬送ベルト上に配置して、搬送ベルトに搬送されてきた硬貨の搬送路がリジェクトゲートによって遮られたとき、硬貨の搬送方向はリジェクト庫の側に方向転換され、一方、当該搬送路が収納ゲートによって遮られたとき、硬貨の搬送方向は収納部の側に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−54231号公報
【特許文献2】特開2000−187755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の硬貨収納装置において、収納ゲートの構造上、収納部は搬送路の左右両側に設けられ、また、収納ゲートの切り換え時に収納ゲートを上下移動させる空間が必要であるが、装置のさらなる小型化が求められていた。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、コンパクトな構造で装置の小型化を図りつつ、硬貨の種類に対応した硬貨収納室への硬貨の振り分けを行うことが可能な自動釣銭入出金用の硬貨収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明によれば、硬貨を搬送する硬貨搬送路と、前記硬貨搬送路に設けられた連通口と、前記連通口を開閉する開閉体と、硬貨を導入する硬貨導入口を備えた少なくとも1つの硬貨収納室と、前記開閉体を制御する制御部とを備え、前記連通口は前記硬貨搬送路の下部に設けられ、前記硬貨導入口は前記連通口に対向する位置に設けられ、前記制御部は、前記開閉体を制御して硬貨の種類に対応した前記硬貨収納室に硬貨を振り分けることを特徴とする自動釣銭入出金用の硬貨収納装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動釣銭入出金用の硬貨収納装置によれば、開閉体が閉じたとき、開閉体が硬貨搬送路の搬送面の一部を構成し、また、搬送路の左右両側に硬貨収納室を設ける必要もない。それゆえ、コンパクトな構造で装置の小型化を図りつつ、硬貨の種類に対応した硬貨収納室への硬貨の振り分けを行うことが可能な自動釣銭入出金用の硬貨収納装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の自動釣銭入出金機の実施形態1を示すブロック図である。
図2】実施形態1の自動釣銭入出金機における硬貨搬送部を示す平断面図である。
図3】実施形態1の自動釣銭入出金機における硬貨移動機構を示す説明図である。
図4(A)】実施形態1の搬送通路切換機構のシャッターの閉じたときの状態を示す説明図である。
図4(B)】実施形態1の搬送通路切換機構のシャッターの開いたときの状態を示す説明図である。
図5】本発明の自動釣銭入出金機の実施形態2を示すブロック図である。
図6】実施形態2の自動釣銭入出金機における硬貨搬送部を示す平断面図である。
図7(A)】実施形態2の搬送通路切換機構の2枚のシャッターを両方とも閉じたときの状態を示す説明図である。
図7(B)】実施形態2の搬送通路切換機構の一方のシャッターのみを開いた状態を示す説明図である。
図7(C)】実施形態2の搬送通路切換機構のもう一方のシャッターのみを開いたときの状態を示す説明図である。
図8】実施形態5の自動釣銭入出金機における硬貨移動機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自動釣銭入出金用の硬貨収納装置は、硬貨を搬送する硬貨搬送路と、前記硬貨搬送路に設けられた連通口と、前記連通口を開閉する開閉体と、硬貨を導入する硬貨導入口を備えた少なくとも1つの硬貨収納室と、前記開閉体を制御する制御部とを備え、前記連通口は前記硬貨搬送路の下部に設けられ、前記硬貨導入口は前記連通口に対向する位置に設けられ、前記開閉体が閉じたとき、前記開閉体は前記硬貨搬送路の搬送面を構成し、前記制御部は、前記開閉体を制御して硬貨の種類に対応した前記硬貨収納室に硬貨を振り分けることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の走行装置は、次のように構成されてもよく、それらが適宜組み合わされてもよい。
【0015】
「硬貨」は、硬貨に限られず、硬貨以外のものを含んでいてもよい。硬貨以外のものを含む場合、硬貨収納室は、硬貨以外のものを収納する非硬貨収納室となる。
「硬貨搬送路」は複数の連通口を備えていてもよい。例えば、硬貨搬送路が第1〜3の3つの連通口を備え、第1の連通口から第1の硬貨収納室に硬貨を収納し、第2の連通口から第2の硬貨収納室に硬貨を収納し、第3の連通口から第3および第4の硬貨収納室に別々の硬貨を収納するように構成してもよい。
「開閉体」は、例えば、スライド式のシャッターや上下方向に開閉する開閉板などである。
【0016】
この発明の「硬貨搬送路」は、搬送通路103aによって実現され、また、この発明の「開閉体」は、シャッター103b2によって実現され、また、この発明の「硬貨収納室」は、第1室1Aa,1Ba,1Caおよび第2室1Ab,1Bb,1Cbによって実現される。
【0017】
(1)前記開閉体が閉じたとき、前記開閉体の縁と、前記開閉体の縁に対向する前記搬送面の縁との間に予め定められた長さの隙間を有するものであってもよい。
このようにすれば、開閉体が上下に開閉する開閉板の場合、連通口から硬貨を落下させるために要する開閉板の上下方向の移動距離が短くて済むため、装置の小型化が実現できる。また、短時間の動作で硬貨を落下させるための十分な隙間を形成できるため、素早い動作が可能となる。
【0018】
(2)第1および第2の硬貨収納室を備え、前記第1および第2の硬貨収納室の前記硬貨導入口は、前記連通口に対向する位置に並設され、前記開閉体は、第1および第2の開閉体からなり、前記第1および第2の開閉体が両方とも閉じているとき、前記第1および第2の開閉体は前記硬貨搬送路の搬送面を構成し、前記第1の開閉体のみが開いているとき、搬送されてきた硬貨を前記連通口から前記第1の硬貨導入口に導入し、前記第2の開閉体のみが開いているとき、搬送されてきた硬貨を前記連通口から前記第2の硬貨導入口に導入するように、前記第1および第2の開閉体を並設し、前記制御部は、前記第1および第2の開閉体を制御して硬貨の種類に対応した前記硬貨収納室に硬貨を振り分けるものであってもよい。
このようにすれば、装置の小型化を図りつつ、硬貨の種類に対応した2つの硬貨収納室への硬貨の振り分けを行うことが可能な自動釣銭入出金用の硬貨収納装置を実現することができる。
また、2つの開閉体が閉じたとき、当該2つの開閉体が硬貨搬送路の一部を構成するため、ゲートを用いる場合と違って、余分なスペースを必要としない。
【0019】
(3)前記第1および第2の開閉体を硬貨の搬送方向に対し略左右対称となるように並設し、前記第1の開閉体のみが開いているとき、硬貨の下面が前記第2の開閉体の縁に当接し、かつ、前記硬貨の重心が前記第1の硬貨導入口上に位置し、前記第2の開閉体のみが開いているとき、硬貨の下面が前記第1の開閉体の縁に当接し、かつ、前記硬貨の重心が前記第2の硬貨導入口上に位置するように並設するものであってもよい。
このようにすれば、単純な機構で2種類の硬貨の振り分けが可能な自動釣銭入出金用の硬貨収納装置を実現できる。
【0020】
(4)前記第1および第2の開閉体は、前記硬貨搬送路の両側のそれぞれに支軸を有し、上方または下方に開くものであってもよい。
このようにすれば、開閉体を上下にわずかに開閉するだけで、硬貨を下方に素早く落下させることが可能となる。
【0021】
(5)前記硬貨搬送路は、上方に設けられたエンドレスベルトにより硬貨を摺動して搬送するものであってもよい。
このようにすれば、硬貨搬送路の下部に設けられた連通口を塞ぐことなく、硬貨を搬送させることが可能となる。
【0022】
(6)前記硬貨収納装置を備えた自動釣銭入出金機であってもよい。
このようにすれば、コンパクトな構造で装置の小型化を図りつつ、硬貨収納室への硬貨の振り分けを行うことが可能な自動釣銭入出金機を実現できる。
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の自動釣銭入出金機用の硬貨収納装置および自動釣銭入出金機の実施形態について詳説する。なお、以下の実施例の記載によって、この発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は本発明の自動釣銭入出金機100の実施形態1を示すブロック図であり、図2は実施形態1の自動釣銭入出金機100における硬貨搬送部103を示す平断面図であり、図3は実施形態1の自動釣銭入出金機100における硬貨移動機構を示す説明図であり、図4(A)は実施形態1の搬送通路切換機構103bのシャッター103b2の閉じたときの状態を示す説明図であり、図4(B)は実施形態1の搬送通路切換機構103bのシャッター103b2の開いたときの状態を示す説明図である。
【0025】
<自動釣銭入出金機100の全体構成について>
本発明の実施形態1の自動釣銭入出金機100は、ボックス形の3つの硬貨収納出金装置1(1A、1B、1C)を備えると共に、硬貨投入口101と、この硬貨投入口101に投入された硬貨(貨幣)Kの金種を識別する硬貨識別部102と、金種を識別された硬貨Kをいずれかの硬貨収納出金装置1に搬送する搬送通路103aを有する硬貨搬送部103と、各硬貨収納出金装置1に対応するモータMと、硬貨収納出金装置1内の硬貨Kを釣銭として払い出す硬貨払出口104と、硬貨識別部102、硬貨搬送部103および硬貨収納出金装置1と電気的に接続される制御部105とを備える。
【0026】
詳しく説明すると、この自動釣銭入出金機100は、1円および5円硬貨を個別に収納する硬貨収納出金装置1Aと、10円および50円硬貨を個別に収納する硬貨収納出金装置1Bと、100円および500円硬貨を個別に収納する硬貨収納出金装置1Cとを備え、さらに、硬貨K以外の非硬貨Nを収納する非硬貨収納室2aを備えている。
【0027】
硬貨収納出金装置1は、釣銭使用頻度の高い硬貨(1円、10円または100円硬貨)を収納する容積が大きい第1室と、釣銭使用頻度が低い硬貨(5円、50円または500円硬貨)を収納する容積が小さい第2室とを有する。
実施形態1の場合、硬貨収納出金装置1Aの第1室1Aaと第2室1Abには1円硬貨と5円硬貨が収納され、硬貨収納出金装置1Bの第1室1Baと第2室1Bbには10円硬貨と50円硬貨が収納され、硬貨収納出金装置1Cの第1室1Caと第2室1Cbには100円硬貨と500円硬貨が収納される。
なお、1つの硬貨収納出金装置1内に収納する使用頻度の高い硬貨と低い硬貨の組み合わせは自由であり、例えば、1円硬貨と50円または500円硬貨の組み合わせ、10円硬貨と5円または500円硬貨の組み合わせ、100円硬貨と5円または50円硬貨の組み合わせであってもよい。
【0028】
また、第1室1Aa,1Ba,1Caおよび第2室1Ab,1Bb,1Cbのいずれかが満杯になったときは、アラーム等を鳴らして対応する種類の硬貨Kがオーバーフローしたことを報知する。
【0029】
また、図示省略するが、この自動釣銭入出金機100は、複数種類の紙幣(例えば、千円、五千円および一万円札)を種類別に収納出金可能な紙幣収納出金装置と、紙幣導入口と、この紙幣導入口に導入された紙幣の金種を識別する紙幣識別部と、金種を識別された紙幣を紙幣収納出金装置に搬送する搬送通路を有する紙幣搬送部と、紙幣収納出金装置内の紙幣を釣銭として払い出す紙幣払出口とを備えてもよい。この場合、制御部105は、紙幣識別部、紙幣搬送部および紙幣収納出金装置とも電気的に接続される。
【0030】
硬貨識別部102は、従来公知の方法、例えば硬貨の大きさ(厚みを含む)、重量、材質等から金種を識別し、硬貨識別信号を制御部105へ送信する。また、紙幣識別部は、従来公知の方法、例えば紙幣の印刷パターン(透かしを含む)、印刷インクの材質、縦横寸法等から金種を識別し、紙幣識別信号を制御部105へ送信する。
【0031】
硬貨搬送部103は、搬送通路103a上に設けられた硬貨移動機構と、所定の硬貨収納出金装置1の後述する第1室1Aaまたは第2室1Abへ硬貨が搬送されるように搬送通路103aを切り換える複数の搬送通路切換機構103bを有している。
【0032】
図3に示されるように、硬貨移動機構は、搬送通路103aの上に設けられたゴム製のエンドレスベルト103c2と、エンドレスベルト103c2を張架しかつ回転させる複数のプーリー103c1および図示しないモータ等を備えてなり、搬送通路103aの搬送面103a1上に寝た硬貨Kの平坦面にエンドレスベルト103c2が接触しながら搬送方向(矢印A方向)へ摺動することにより、硬貨Kを搬送面103a1上で滑らせて搬送するよう構成されている。
【0033】
そして、後述する搬送通路切換機構103bにより、搬送通路103aの搬送面103a1に設けられた連通口に設けられたシャッター103b2が開いたとき、当該連通口を通じて硬貨Kが落下し、硬貨収納出金装置1Aの第1室1Aa等に収納される。
【0034】
<搬送通路切換機構103bの説明>
図4(A)(B)に示されるように、実施形態1の搬送通路切換機構103bは、ソレノイド103b1と、ソレノイド103b1によって所定の硬貨収納出金装置1Aの第1室1Aa等に通じる搬送通路103aの搬送面103a1に設けられた連通口を開閉するシャッター103b2とを有してなる。
【0035】
制御部105は、硬貨識別部102からの硬貨識別信号を受信し、硬貨識別信号に応じて所定の硬貨収納出金装置1の第1室または第2室へ硬貨を搬送する搬送指令信号を搬送通路切換機構103bへ送信するように構成されている。
例えば、制御部105は、硬貨識別部102からの1円硬貨の硬貨識別信号を受信すると、硬貨収納出金装置1Aの第1室1Aaへ硬貨を搬送する搬送指令信号を搬送通路切換機構103bのソレノイド103b1へ送信する。これにより、硬貨収納出金装置1Aの第1室1Aaに対応するソレノイド103b1が作動してシャッター103b2を開くため、搬送通路103a上を移動する1円硬貨が硬貨収納出金装置1Aの第1室1Aaに落下して収納される。
【0036】
図4(A)に示されるように、搬送通路切換機構103bにおいて、シャッター103b2は、ソレノイド103b1の可動鉄芯(プランジャー)1034にスプリングピン1032等で固定され、通常時は、スプリング1031により下方に付勢された構造をとる。
このとき、硬貨Kは、シャッター103b2および搬送通路103aの搬送面103a1上を通過するため、硬貨Kが落下することはない。
【0037】
一方、シャッター103b2を開く際は、制御部105は、搬送指令信号を搬送通路切換機構103bのソレノイド103b1へ送信し、ソレノイド103b1内のコイルに通電して発生した磁力により、可動鉄心1034を上方に引き上げる。
【0038】
図4(B)に示されるように、可動鉄心1034は、スプリング1031を介してシャッター103b2を上方に引き上げる。シャッター103b2の上方への運動は、シャッター103b2の片側に配置されたガイド板1033を支点とした回転運動に変換される。
このとき、シャッター103b2は、斜めに傾斜し、搬送通路103aの搬送面103a1との間に間隙を生ずるため、硬貨Kは通過時に下方に落下する。
【0039】
硬貨Kの落下後、制御部105は、ソレノイド103b1内のコイルへの通電をやめる。このとき、コイルの磁力が消失し、可動鉄心1034がスプリング1031により付勢されて元の位置に戻され、シャッター103b2が閉じる。
【0040】
このように、制御部105は、硬貨Kの通過時に、当該硬貨Kに対応するシャッター103b2を開閉することにより、対応する硬貨収納室に硬貨Kを収納することが可能となる。
【0041】
(実施形態2)
<搬送通路切換機構103bによる2以上の硬貨収納室への硬貨Kの振り分け動作の説明>
次に、図5〜7に基づき、実施形態2の搬送通路切換機構103bによる2以上の硬貨収納室への硬貨Kの振り分け動作について説明する。
【0042】
図5は、本発明の自動釣銭入出金機100の実施形態2を示すブロック図であり、図6は、実施形態2の自動釣銭入出金機100における硬貨搬送部103を示す平断面図であり、図7(A)は、実施形態2の搬送通路切換機構103bの2枚のシャッター103b2を両方とも閉じたときの状態を示す説明図であり、図7(B)は、実施形態2の搬送通路切換機構103bの一方のシャッター103b2のみを開いた状態を示す説明図であり、図7(C)は、実施形態2の搬送通路切換機構103bのもう一方のシャッター103b2のみを開いたときの状態を示す説明図である。
【0043】
なお、実施形態1と対応する部分については、同一の符号をつけて説明を省略する。
ここでは、実施形態1と異なる非硬貨収納室2aおよび予備硬貨収納室2bの構成について説明する。
【0044】
図5および図6に示されるように、実施形態2の自動釣銭入出金機100は、非硬貨収納室2aの他に、硬貨収納出金装置1がオーバーフローしてそれ以上収納できなくなったときに収納できなくなった硬貨Kを収納する予備硬貨収納室2bを備えている。
【0045】
図6および図7(A)〜(C)に示されるように、非硬貨収納室2aおよび予備硬貨収納室2bを搬送通路103aの硬貨侵入方向に対して左右に隣接して設ける。
【0046】
図7(A)に示されるように、非硬貨収納室2aおよび予備硬貨収納室2bの上方にそれぞれ対応する搬送通路切換機構103bが設けられる。1円〜500円の硬貨Kをそれぞれ入金する場合は、非硬貨収納室2aおよび予備硬貨収納室2b上のシャッター103b2を両方とも閉じた状態にすることで、硬貨Kが搬送通路103a上を通過する。
【0047】
非硬貨Nを非硬貨収納室2aに収納する場合、図7(B)に示されるように、非硬貨収納室2a上のシャッター103b2のみを開き、非硬貨Nを非硬貨収納室2aに収納する。
【0048】
一方、オーバーフローした硬貨Kを予備硬貨収納室2bに収納する場合、図6(C)に示されるように、予備硬貨収納室2b上のシャッター103b2のみを開き、オーバーフローした硬貨Kを予備硬貨収納室2bに収納する。
【0049】
このようにして、コンパクトな構造で装置の小型化を図りつつ、硬貨Kの種類に対応した2つの硬貨収納室への硬貨Kの振り分けを行うことが可能な自動釣銭入出金用の硬貨収納装置を実現することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
1.実施形態1および2において、硬貨Kの通過時にシャッター103b2を上方に開閉する代わりに、シャッター103b2を下方に開閉するようにしてもよい。(実施形態3)
【0051】
このようにすることで、シャッター103b2を開く際に、シャッター103b2がエンドレスベルト103c2に当たらないので、シャッター103b2が開く角度を自由に調節できる。
【0052】
また、スライド式のシャッター103b2を用いてもよい。
【0053】
2.実施形態1〜3において、2つのシャッター103b2の縁の間に予め定められた長さの隙間を有するものであってもよい。(実施形態4)
【0054】
このようにすれば、シャッター103b2を開く際に上下方向の移動距離が短くて済むため、装置の小型化が実現できる。また、短時間の動作で硬貨Kを落下させるための十分な隙間を形成できるため、素早い動作が可能となる。
【0055】
3.実施形態2において、第1のシャッター103b2のみが開いているとき、硬貨Kの下面が第2のシャッター103b2の縁に当接し、かつ、硬貨Kの重心が非硬貨収納室2aの開口部(導入口)上に位置し、第2のシャッター103b2のみが開いているとき、硬貨Kの下面が第1のシャッター103b2の縁に当接し、かつ、硬貨Kの重心が予備硬貨収納室2bの開口部(導入口)上に位置するように並設してもよい。(実施形態5)
【0056】
このようにすれば、単純な機構で硬貨Kの迅速な振り分けが可能な自動釣銭入出金用の硬貨収納装置を実現できる。
【0057】
4.実施形態1〜5において、図8に示されるように、2以上のエンドレスベルト103c2が互いに上下組み合わさるように構成してもよい。(実施形態6)
【0058】
このようにすれば、エンドレスベルト103c2が下側にあるとき、上側に設けられたエンドレスベルト103c2を取り外すことによって、硬貨搬送部103のメンテナンス等が容易にできる。
【0059】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,1C:硬貨出納出金装置、 1Aa,1Ba,1Ca:第1室、 1Ab,1Bb,1Cb:第2室、 2a:非硬貨収納室、 2b:予備硬貨収納室、 100:自動釣銭入出金機、 101:硬貨投入口、 102:硬貨識別部、 103:硬貨搬送部、 103a:搬送通路、 103a1:搬送面、 103b:搬送通路切換機構、 103b1:ソレノイド、 103b2:シャッター、 103c1:プーリー、 103c2:エンドレスベルト、 104:硬貨払出口、 105:制御部、 1031:スプリング、 1032:スプリングピン、 1033:ガイド板、 1034:可動鉄心、 A:矢印、 K:硬貨、 M:モータ、 N:非硬貨
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図5
図6
図7(A)】
図7(B)】
図7(C)】
図8