(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
画像形成装置が備える定着装置に用紙を通紙していくと、用紙エッジにより定着ベルトに傷がつき、その後の用紙の画像にベルト傷による画像不良が生じるという課題がある。例えば、A4サイズの用紙エッジによって定着ベルトに傷がつくと、それより大きなB4やA3サイズ用紙への定着を行ったときに、縦筋の(用紙搬送方向に沿った)画像不良が発生する。
【0003】
定着ベルトにこのようなベルト傷が生じると、従来は、サービスマンが定着ユニットを装置本体から取り外し、定着ユニット又は定着ベルトを交換することで対応していた。しかしながら、ユニットや部品の交換による対応は、サービスマンを呼んで対応する必要があり、サービスマンが来るまでの間は画像形成装置が停止した状態であり、画像形成装置が使用できない状態となる。
【0004】
また、定着ユニットの交換は、交換費用が高くなるといった問題がある。一方、定着ベルト交換の場合は費用が安くてすむが、定着ユニットをばらす必要があり、交換に時間を費やすといった問題がある。
【0005】
ユニットや部品の交換による対応以外では、治具等でベルト傷を研磨し修復させる方法もある。しかしながら、ベルト傷の研磨は、研磨時の当接圧力等を適切に設定する必要があるため、これらの対応はサービスマンしかできず、ユーザでは対応が不可能であった。
【0006】
サービスマンによる対応を不要とする技術として、特許文献1には、定着装置に研磨装置を設け、研磨装置が有する研磨ローラにて定着ベルトのベルト傷を修復する技術が開示されている。特許文献1における摺擦部は、研磨時における研磨ローラと定着ベルトとの当接圧力を適切に調整できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術では、定着ベルトのベルト傷を自動的に研磨することができ、その対応においてサービスマンの手を煩わすことはない。しかしながら、通常の定着動作においては必要のない研磨ローラやモータ等からなる研磨装置を定着装置に配置しなければならない。このことは、定着装置、ひいては画像形成装置の大型化に繋がるといった課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サービスマンによる対応を必要とせずに定着ベルトのメンテナンス(ベルト傷の修復等)ができ、かつ、定着装置の大型化を招くことのない摺擦装置およびメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の摺擦装置は、回転部材と前記回転部材を覆う開閉部材とを有する定着装置に使用され、前記回転部材と摺擦する摺擦装置であって、前記開閉部材に対して着脱可能な保持部と、前記保持部によって保持され、前記開閉部材が閉じられた時に、前記回転部材と接触して前記回転部材に対して該回転部材の表面性を回復させる摺擦部材と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、上記摺擦装置は、定着装置が有する回転部材に対しその表面性を回復させるためのメンテナンスを行うときに、定着装置の開閉部材に取り付けられ、開閉部材が閉じられた時に、摺擦部材が回転部材と接触して回転部材に対する摺擦を行って回転部材の表面性を回復させることができる。このため、摺擦装置の定着装置への装着は、ユーザでも容易に行うことができ、サービスマンによる対応を必要とせずに定着装置のメンテナンスを行うことができる。また、定着装置は、メンテナンスを行う時のみ研磨装置を装着するため、定着装置自体が、常にメンテナンス手段を備えている必要は無く、定着装置の小型化を図ることが可能となる。
【0012】
また、上記摺擦装置では、前記摺擦部材が前記摺擦装置に対して着脱可能に設けられている構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、摺擦部材におけるメンテナンス効果がなくなった場合に、容易に新しい摺擦部材に交換することができる。
【0014】
また、上記摺擦装置では、前記摺擦部材は、前記保持部に設けられた擬似剥離部材に取り付けられる構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、擬似剥離部材によって摺擦部材を回転部材と適切に接触する位置に容易に案内することができる。
【0016】
また、上記摺擦装置では、前記摺擦部材は、前記保持部に設けられた擬似剥離部材に前記回転部材の表面性を回復させる機能を付加した部材である構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、摺擦部材の機能を有する擬似剥離部材を回転部材と適切に接触する位置に容易に案内することができ、かつ、部品点数を削減できる。
【0018】
また、上記摺擦装置では、前記擬似剥離部材は、前記回転部材から画像が形成された用紙を剥離する剥離部材に形状が類似している構成とすることができる。
【0019】
また、上記摺擦装置では、前記擬似剥離部材は、前記回転部材に沿って、所定の間隔を設けて配置された複数の爪形状の部材である構成とすることができる。
【0020】
上記の構成によれば、回転部材のメンテナンス箇所に当接圧力を作用させ易く、好適に回転部材のメンテナンスが行える。
【0021】
また、上記摺擦装置では、前記摺擦部材は、前記回転部材を研磨する研磨材である構成とすることができる。
【0022】
上記の構成によれば、定着ベルト等の回転部材に用紙エッジにより傷がついた場合に、該傷を摺擦装置で研磨し、修復することが可能となる。
【0023】
また、上記摺擦装置では、前記摺擦部材は、前記保持部に対して用紙搬送方向と直交する方向に位置調整可能である構成とすることができる。
【0024】
用紙エッジによって回転部材に生じる傷は、用紙サイズに応じた特定位置に発生するため、その位置に摺擦部材を位置合わせすることで、必要な箇所にのみ研磨を行い、不要な箇所(傷が生じていない箇所)への研磨を防止することができる。
【0025】
また、上記摺擦装置では、前記保持部には、位置調整される前記摺擦部材に対応する用紙サイズ位置を示す指標が形成されている構成とすることができる。
【0026】
上記の構成によれは、上記指標に合わせて摺擦部材を位置合わせすることで、メンテナンス部の位置調整が容易となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の摺擦装置は、定着装置が有する回転部材のメンテナンスを行うときに定着装置の開閉部材に取り付けられ、開閉部材が閉じられた時に回転部材と接触して回転部材に対するメンテナンスを行うことができる。このため、摺擦装置の定着装置への装着は、ユーザでも容易に行うことができ、サービスマンによる対応を必要とせずに定着装置のメンテナンスを行うことができるといった効果を奏する。
【0028】
また、定着装置は、メンテナンスを行う時のみ研磨装置を装着するため、定着装置自体が、常にメンテナンス手段を備えている必要は無く、定着装置の小型化を図ることが可能となるといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。
図2は、画像形成装置100における画像形成プロセスを説明する図である。
【0031】
画像形成装置100は、
図1に示すように、本体部110、原稿読取部120、および原稿搬送装置130を具備して構成されている。本体部110は、記録用紙に画像を印字するための画像形成部を内部に有している。原稿読取部120は、本体部110の上方に配置され、原稿のコピーを行う際に原稿の読取を行う。
【0032】
原稿搬送装置130は、原稿読取部120の上に配置され、装置リア側を支点にして上方に回動し、装置の手前側が開放されるようになっている。また、原稿搬送装置130は、自動読み取りモードでは、原稿セットトレイ上に載置された原稿を原稿読取部120の原稿載置台上に向かって順次搬送する。
【0033】
画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、又は単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。このため、画像形成装置100は、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローに対応付けられた4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdを有しており、各色に応じた4種類のトナー像を形成することができる。画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdのそれぞれは、現像装置12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、及び帯電器15を備えている(
図2参照)。
【0034】
また、光走査装置11は、画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdにおいて共通化されている。具体的には、光走査装置11は、一つのポリゴンミラーと、4つの半導体レーザ(図示せず)を備えている。それぞれの半導体レーザより出射されるレーザ光は、回転するポリゴンミラーによって、それぞれ異なる光路上を主走査方向に走査されると共に、レンズやミラー等の光学部材を介して、各画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdの感光体ドラム13表面に入射する。
【0035】
各画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdのいずれにおいても、感光体ドラム13へのトナー像形成は以下の手順で行われる。まず、ドラムクリーニング装置14により感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去及び回収した後、帯電器15により感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。次に、光走査装置11により感光体ドラム13の表面を露光して、その表面に静電潜像を形成し、現像装置12により該静電潜像を現像する。これにより、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。
【0036】
引き続いて、中間転写ベルト21を周回移動させつつ、ベルトクリーニング装置22により中間転写ベルト21の残留トナーを除去及び回収した後、各感光体ドラム13表面の各色のトナー像を、転写部16(転写ローラ16Aおよび電源16B)によって中間転写ベルト21に順次転写して重ね合わせる。これにより、中間転写ベルト21上にカラーのトナー像を形成する。
【0037】
中間転写ベルト21と2次転写装置23の転写ローラとの間にはニップ域が形成されており、用紙搬送路を通じて搬送されて来た記録用紙をそのニップ域に挟み込んで搬送する。その際、中間転写ベルト21表面のカラーのトナー像が記録用紙上に転写される。そして、定着装置50にて記録用紙を加熱及び加圧し、記録用紙上のカラーのトナー像を定着させる。
【0038】
一方、記録用紙は、給紙カセット18から引出されて、用紙搬送路を通じて搬送され、2次転写装置23や定着装置50を経由し、排紙ローラ32を介して排紙トレイ33へと搬出される。用紙搬送路には、記録用紙を上記ニップ域でのトナー像の転写タイミングに合わせて搬送するレジストローラ31、記録用紙の搬送を促す搬送ローラ、排紙ローラ32等が配置されている。
【0039】
次に、本実施の形態に係る定着装置について、ベルト定着方式の定着装置を例にとって以下に説明する。
【0040】
図3は本実施の形態に係る定着装置50の概略構成を示す断面図である。定着装置50は、加熱ローラ51、定着ローラ52、定着ベルト53、および加圧ローラ54を備えている。定着ベルト53は、加熱ローラ51および定着ローラ52に巻き掛けられた無端状のベルトであり、加熱ローラ51から定着ローラ52へ熱伝達できるようになっている。また、定着ベルト53は、予め定めた所定の厚み(例えば250μm)を有している。加圧ローラ54は、定着ベルト53を間に介して定着ローラに押圧されており、定着ベルト53と加圧ローラ54との間に定着ニップ域を形成するようになっている。
【0041】
加熱ローラ51及び定着ローラ52は、筒状の芯金を備えている。加熱ローラ51の内側には、熱源(ここではハロゲンヒータランプ)51aが設けられている。これにより、加熱ローラ51が熱源51aによって加熱され、加熱ローラ51の熱が定着ベルト53に伝導され、さらに、定着ベルト53を介して定着ローラ52の表面に伝導されて定着ローラ52が加熱される。
【0042】
定着装置50では、未定着のトナー像が形成された記録用紙を受け取り、記録用紙を定着ベルト53と加圧ローラ54との間に挟みこんで搬送する。記録用紙は、定着ベルト53と加圧ローラ54との間に挟まれつつ搬送されて、定着ニップ域で加熱及び加圧される。これにより、記録用紙上における未定着のトナー像が溶融、混合、圧接されて熱定着される。
【0043】
また、定着装置50は、複数の剥離爪55を有している。剥離爪55は、記録用紙を定着装置50における回転部材(定着ベルト53または加圧ローラ54)から剥離する部材であり、定着ニップ域において定着ベルト53および加圧ローラ54の両者間で挟持された記録用紙が上記回転部材(ここでは、加圧ローラ54)に巻き付くことを防止する。
【0044】
次に、定着装置50の筐体構造について説明する。定着装置50には寿命があり、定着装置50の性能は徐々に劣化して行く。このため、例えば定着装置50の稼働時間もしくは定着処理枚数が一定値に達すると、定着装置50の寿命に達したとみなされて、定着装置50が交換される。定着装置50は、この交換作業を容易にするためユニット化されており、筐体内に加熱ローラ51、定着ローラ52、定着ベルト53、および加圧ローラ54を収納している。
【0045】
定着装置50の筐体構造は、メイン筐体60と開閉カバー(開閉部材)61とからなる。メイン筐体60は、加熱ローラ51、定着ローラ52、および加圧ローラ54の回転軸を固定的に支持している。開閉カバー61は、定着装置50内部の加熱ローラ51、定着ローラ52、定着ベルト53、および加圧ローラ54を覆うものであり、メイン筐体60に対してヒンジ部62を介して回動可能に取り付けられており、ヒンジ部62を中心として回動することで開閉できるようになっている。ヒンジ部62の回動軸は、加熱ローラ51、定着ローラ52、および加圧ローラ54の回転軸と平行である。尚、
図3は、開閉カバー61を閉じた状態を示している。
【0046】
また、開閉カバー61におけるヒンジ部62と反対側の端部には、剥離爪保持部材63が固定的に取付可能となっている。剥離爪保持部材63は、複数の剥離爪55を保持している板状部材であり、開閉カバー61に対して複数のビス64を用いて着脱可能に取り付けられる。各剥離爪55は、剥離爪保持部材63における一方の端部(開閉カバー61との取付側と反対側の端部)において、ヒンジ部56を介して所定範囲での回動が可能となるように取り付けられている。そして、開閉カバー61を閉じた時に、各剥離爪55は、定着ベルト53と加圧ローラ54との定着ニップ域に誘導され、上述した用紙剥離機能を発揮する。
【0047】
背景技術にて説明したように、定着装置50では、定着ニップ域に記録用紙を通紙していくと、用紙エッジにより定着ベルト53に傷がつくといった課題がある。このベルト傷は、記録用紙の画像に縦筋を生じさせる画像不良の要因となるため、この画像不良を防止するためには定着ベルト53に対するメンテナンスが必要となる。具体的には、本実施の形態に係る定着装置50では、定着ベルト53におけるベルト傷を研磨して修復する。尚、本発明の摺擦装置が行うメンテナンスとは、回転部材の表面を摺擦して、その表面性を回復させるための動作全般を指すものであり、ベルト傷の研磨修復はメンテナンスの一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
定着装置50では、定着ベルト53のベルト傷の研磨に、
図4および
図5に示す研磨装置(摺擦装置)70を用いる。尚、本発明の摺擦装置がメンテナンスを施すのは定着ベルトに限定されるものではなく、他の回転部材、すなわち、加熱ローラや加圧ローラ等に対してメンテナンスを行うものであっても良い。
【0049】
研磨装置70は、開閉カバー61から剥離爪保持部材63を取り外し、剥離爪保持部材63の代わりに開閉カバー61に取り付け可能となっている。
図4は、剥離爪保持部材63の代わりに研磨装置70を取り付けた定着装置50の断面図である。
図5は、定着装置50から取り外した状態の研磨装置70の斜視図である。
【0050】
研磨装置70は、研磨用保持部材(保持部)71と複数の研磨手段72とを備えている。研磨用保持部材71は、複数の研磨手段72を保持している板状部材であり、剥離爪保持部材63と同様に、開閉カバー61に対して複数のビス64を用いて着脱可能に取り付けられるようになっている。このため、研磨用保持部材71は、開閉カバー61との取付側の1辺に沿って複数のビス穴71aを有している。各研磨手段72は、研磨用保持部材71における一方の端部(開閉カバー61との取付側と反対側の端部)において、ヒンジ部73を介して所定範囲での回動が可能となるように取り付けられている。
【0051】
図6は、研磨手段72の分解斜視図である。各研磨手段72は、
図6に示すように、剥離爪55と類似した形状の擬似爪(擬似剥離部材)721と、研磨部材(摺擦部材)722と、バネ723とから構成されている。すなわち、研磨手段72では、擬似爪721がヒンジ部73を介して研磨用保持部材71に取り付けられており、研磨部材722は擬似爪721の先端側に着脱可能に取り付けられる構成とされている。また、バネ723は、擬似爪721と研磨部材722との間に挿入され、定着ベルト53のメンテナンス時に研磨部材722を定着ベルト53に向けて付勢する。
【0052】
研磨部材722は、開閉カバー61を閉じた時に、定着ベルト53と加圧ローラ54との定着ニップ域に誘導され、定着ベルト53に対するメンテナンス機能(すなわち研磨機能)を発生させる。すなわち、研磨部材722は、定着ベルト53との摺擦面において、酸化アルミニウム等の研磨剤が塗布されている。あるいは、研磨部材722は、定着ベルト53との摺擦面に研磨シートを両面テープ等で貼り付けたものであっても良い。また、研磨部材722は、バネ723によって定着ベルト53との適切な当接圧力が得られるようになっている。
【0053】
擬似爪721は、定着ベルト53に対して回転軸に平行な方向の狭い幅で当接する爪形状の部材であり、より具体的には、定着ベルト53の回転軸方向から見た形状が、研磨用保持部材71への取付側から部材の先端側に向けて先細りする形状である点で剥離爪55と類似している。このような擬似爪721を用いると定着ベルト53の傷発生箇所に当接圧力を作用させ易く、好適にベルト傷の研磨が行える。
【0054】
以上のように、定着装置50におけるベルト傷の研磨は、開閉カバー61から剥離爪保持部材63を取り外し、代わりに研磨装置70を取り付けた状態で行われる。剥離爪保持部材63と研磨装置70との交換作業は、定着装置50を画像形成装置100から取り外し、開閉カバー61を開いた状態で行う。また、上記交換作業は、実質的にビス64の締結のみであり、研磨装置70の位置調整等は不要である。したがって、上記交換作業はユーザでも容易に行うことができ、サービスマンによる対応を必要とせずに定着ベルト53のメンテナンスを行うことができる。また、定着装置50は、定着ベルト53のメンテナンスを行う時のみ研磨装置70を装着するため、定着装置50自体が、常にメンテナンス手段を備えている必要は無く、定着装置50の小型化が可能となる。
【0055】
尚、研磨装置70において、研磨手段72はベルト傷の発生する箇所、すなわち、用紙のエッジ位置に対応して設けられている。また、定着装置50を通紙される用紙サイズは1種類ではないため、ベルト傷が発生する可能性のある箇所(以下、傷発生箇所)も複数存在し、研磨装置70が備える研磨手段72も傷発生箇所に対応して複数となる。但し、定着ベルト53のメンテナンス時において、全ての傷発生箇所においてベルト傷が発生している訳ではない。このため、研磨装置70が備える全ての研磨手段72によって定着ベルト53の研磨を行うと、不要な箇所(ベルト傷が発生していない箇所)まで研磨が実施され、定着ベルト53において必要以上の磨耗が生じる。これを防止するためには、ベルト傷が発生している箇所の研磨手段72にのみ、擬似爪721に研磨部材722を取り付けるようにすれば良い。
【0056】
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、定着装置50のメンテナンスを行うためのメンテナンスモードを有している。メンテナンスモードは、定着装置50に研磨装置70を装着した状態で実行される動作モードであり、加熱ローラ51における熱源をオフしたままで、定着装置50における定着ベルト53を所定時間回転させる。画像形成装置100は、メンテナンスモードを実行するための制御プログラムを有しており、該メンテナンスモードは、例えば、ユーザが画像形成装置100の操作パネルでメンテナンスモードを選択し、スタートボタンを押すことで開始される。
【0057】
上記説明の研磨装置70では、各研磨手段72は、擬似爪721、研磨部材722、およびバネ723から構成されている。この構成は、バネ723を用いることによって研磨部材722と定着ベルト53との適切な当接圧力を得るための設計が容易になるといったメリットがある。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、研磨部材722を定着装置50が本来備える剥離爪55に対して着脱可能な構成とし、剥離爪55に研磨部材722を取り付けることで定着ベルト53を研磨するものであっても良い。この構成では、剥離爪保持部材63と研磨装置70との交換は必要なく、剥離爪55に研磨部材722を取り付けることのみで定着ベルト53の研磨が行える。また、この構成では、剥離爪保持部材63が特許請求の範囲に記載の保持部材に相当し、剥離爪55が特許請求の範囲に記載の擬似剥離部材に相当する。すなわち、研磨部材722を取り付けることによって、剥離爪保持部材63、剥離爪55および研磨部材722が本発明の摺擦装置を構成する。尚、この構成では、剥離爪55は、摺擦装置の一部として研磨部材722を保持する機能を有するものであり、用紙剥離の動作を行うものではないため、擬似剥離部材に見なされる。また、剥離爪55は、ベルト傷が発生する可能性のある用紙サイズの対応箇所に予め配置されている必要がある。
【0058】
また、上記説明の研磨装置70では、擬似爪721と研磨部材722とは別部材であり、擬似爪721に対して研磨部材722を着脱可能な構成としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各研磨手段72は、擬似爪と研磨部材とを一体にした単一部材として形成されていても良い。擬似爪と研磨部材とを単一部材とする構成としては、例えば、擬似爪の先端に研磨剤を塗布し、擬似爪の先端を研磨部材として機能させる構成が考えられる。この場合は、研磨装置70における部材点数を削減できるといったメリットがある。
【0059】
〔実施の形態2〕
実施の形態2に係る研磨装置について図面を参照して説明する。
図7は、実施の形態2に係る研磨装置(摺擦装置)80の斜視図である。研磨装置80は、研磨用保持部材(保持部)81と少なくとも一つ(
図7では2つ)の研磨手段82とを備えており、研磨用保持部材81に対して研磨手段82の位置調整を可能としている点で研磨装置70とは異なっている。
【0060】
研磨用保持部材81は、研磨装置70における研磨用保持部材71と同様に、開閉カバー61に対して複数のビス64を用いて着脱可能に取り付けられるようになっている。このため、研磨用保持部材81は、開閉カバー61との取付側の1辺に沿って複数のビス穴81aを有している。
【0061】
研磨手段82は、研磨装置70における研磨手段72と同様の構成を有しており、擬似爪(擬似剥離部材)821と、研磨部材(摺擦部材)822と、バネ(図示せず)とから構成されている。また、研磨手段82は、ヒンジ部83を介して所定範囲での回動が可能となるように研磨用保持部材81に取り付けられている。
【0062】
実施の形態1に係る研磨装置70では、ヒンジ部73が研磨用保持部材71に対して常に固定されている。一方、本実施の形態2に係る研磨装置80では、ヒンジ部83は研磨用保持部材81に対して位置調整可能とされている。尚、ヒンジ部83が調整されるのは、定着ベルトの回転軸方向に沿った位置である。
【0063】
このため、研磨装置80では、ヒンジ部83を調整可能とするために、ヒンジ部83の土台部83aを研磨用保持部材81に設けられた長孔81bに沿って移動可能としている。また、ヒンジ部83の軸部83bは、移動可能範囲の全体をカバーできる長さとなっている。すなわち、土台部83aは、長孔81bおよび軸部83bに沿って移動することで、その位置が調整可能となっている。位置調整された土台部83aは、ビス84によって研磨用保持部材81に固定可能となっている。
【0064】
このように、研磨装置80では、ヒンジ部83の位置調整によって、研磨用保持部材81に対する研磨手段82の位置調整が可能とされている。したがって、研磨装置80を用いて定着ベルト53のメンテナンスを行う時には、ベルト傷が発生している箇所に研磨手段82を位置合わせすればよい。これにより、不要な箇所(ベルト傷が発生していない箇所)まで研磨が実施され、定着ベルト53において必要以上の磨耗が生じることを防止できる。尚、位置調整を容易にするため、研磨用保持部材81の裏面(ヒンジ部83が取り付けられる側の面)には、位置合わせ用に用紙サイズ(例えば、B5,A4,A4R等)を示す指標81cが設けられていることが好ましい。
【0065】
〔実施の形態3〕
実施の形態3に係るクリーニング装置について図面を参照して説明する。
図8は、実施の形態3に係るクリーニング装置(摺擦装置)90の斜視図である。
図9は、クリーニング装置90を取り付けた定着装置50の断面図である。クリーニング装置90は、クリーニング用保持部材(保持部)91と一つのクリーニング手段92とを備えている。実施の形態1及び2に係る研磨装置70,80は、定着装置50のメンテナンスとして定着ベルト53のベルト傷研磨を行うものである。これに対し、本実施の形態3に係るクリーニング装置90は、定着装置50のメンテナンスとして定着ベルト53または加圧ローラ54のクリーニングを行うものである。
【0066】
クリーニング用保持部材91は、研磨装置70,80における研磨用保持部材71,81と同様に、開閉カバー61に対して複数のビス64を用いて着脱可能に取り付けられるようになっている。このため、クリーニング用保持部材91は、開閉カバー61との取付側の1辺に沿って複数のビス穴91aを有している。
【0067】
クリーニング手段92は、擬似爪(擬似剥離部材)921と、クリーニング部材(摺擦部材)922とから構成されている。クリーニング用保持部材91における一方の端部(開閉カバー61との取付側と反対側の端部)において、ヒンジ部93を介して所定範囲での回動が可能となるように取り付けられている。
【0068】
クリーニング手段92における擬似爪921は、研磨装置70,80における擬似爪721,821とは異なり、定着ベルトの回転軸方向に沿って幅広とされている。また、クリーニング部材922は、擬似爪921の先端側に取り付けられており、定着装置50のメンテナンス時には、定着ベルト53または加圧ローラ54を摺擦し、これらのクリーニングを行う。クリーニング部材922も、定着ベルトの回転軸方向に沿って幅広とされており、定着ベルト53および加圧ローラ54の通紙領域の全体をクリーニングできるようになっている。
【0069】
このように、本実施の形態3に係る定着装置50では、クリーニング装置90を用いて、定着装置50のメンテナンスとして定着ベルト53または加圧ローラ54のクリーニングを行うことができる。これにより、定着装置50は、従来では定着装置50の内部に配置されていたクリーニング部を省略することができ、定着装置50の更なる小型化を図ることが可能となる。
【0070】
尚、上記各実施の形態では、ベルト定着方式の定着装置が例示されており、本発明の摺擦装置は定着ベルトを摺擦するものとなっている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、定着ローラ(加熱ローラ)と加圧ローラとの間で定着を行う構成の定着装置に本発明を適用することも可能であり、この場合、本発明の摺擦装置は、定着ローラや加圧ローラを摺擦するものであっても良い。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。