(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のディジタル−アナログ変換器は、並列接続される複数の定電流セルを有し、前記複数の定電流セルのうちで電流を出力するものの個数が前記第1のディジタル積分信号の値に応じて制御可能に構成され、
前記第2のディジタル−アナログ変換器は、並列接続される複数の可変電流セルを有し、前記複数の可変電流セルのうちで電流を出力するものの個数が前記第2のディジタル積分信号の値に応じて制御可能に構成され、
前記複数の可変電流セルのそれぞれが出力する電流は、前記第1の電流が変動により増加した場合には減少し、前記第1の電流が変動により減少した場合には増加するように制御される、
請求項7に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
実施の形態1
実施の形態1にかかる半導体装置について説明する。実施の形態1にかかる半導体装置は、位相同期(Phase Locked Loop:PLL)回路100を有する。以下、PLL回路100について説明する。
図1は、実施の形態1にかかるPLL回路100の基本的構成を模式的に示す図である。PLL回路100は、比例パス103と積分パス104とを有するハイブリッド(hybrid)PLL回路として構成される。
【0012】
PLL回路100は、第1の電源VDD1から電源供給を受ける第1の電源系101と、第2の電源VDD2から電源供給を受ける第2の電源系102と、を含む。以下では、簡略化のため、第1の電源VDD1の電圧をVDD1と表記し、第2の電源VDD2の電圧をVDD2と表記する。以下において、第2の電源VDD2は、第1の電源VDD1よりも出力電圧が小さな電源である(VDD1>VDD2)。本実施の形態では、第1の電源VDD1は、例えばPLL回路100が組み込まれる半導体装置のI/O(入出力部)の電源であり、例えば出力電圧が1.8[V](VDD1=1.8[V])の電源である。また、本実施の形態では、第2の電源VDD2は、例えばPLL回路100が組み込まれる半導体装置のコアの電源であり、例えば出力電圧が0.8[V](VDD2=0.8[V])の電源である。
【0013】
第1の電源系101では、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタが設けられ、これらのMOSトランジスタによって種々の機能ブロックが構成される。同様に、第2の電源系102では、MOSトランジスタが設けられ、これらのMOSトランジスタによって種々の機能ブロックが構成される。第1の電源系101のMOSトランジスタは、第2の電源系102のMOSトランジスタよりも高耐圧なものを使用する。それゆえ、上述の通り、第1の電源系101は第2の電源系102よりも高電圧の電源系とすることができ、ドレイン−ソース間電圧を十分に印加できるため、出力抵抗が大きくなる。
【0014】
PLL回路100は、位相比較器(Phase Frequency Detector:PFD)11、電流制御発振器(Current-Controlled Oscillator:CCO)ドライバ16、電流制御発振器(CCO)17、比例パス103及び積分パス104を有する。CCOドライバ16及び比例パス103は、第1の電源系101に設けられる。位相比較器11、CCO17及び積分パス104は、第2の電源系102に設けられる。
【0015】
位相比較器11は、PLL回路100の外部から与えられる基準信号Frefと、CCO17から帰還された信号との位相差を検出する。位相比較器11は、検出した位相差(検出結果)を検出信号DETとして出力する。この際、例えば、出力信号Foutは分周器(不図示)によって分周され、分周された信号が出力信号Foutを帰還させた信号として位相比較器11に与えられる。
【0016】
比例パス103はアナログパスであり、位相比較器11からの検出信号DETに応じた電流信号であるアナログ比例信号APを出力する。なお、位相比較器11からの検出信号DETは第1の電源系101において生成された信号であるため、第2の電源系102に検出信号DETを供給するにあたり、レベルシフタ等(
図1では不図示)により適宜電圧レベルが調整される。
【0017】
積分パス104はディジタルパスであり、位相比較器11からの検出信号DETに応じた電圧信号であるアナログ積分信号AIを出力する。
【0018】
CCOドライバ16は、アナログ比例信号APとアナログ積分信号AIとに応じて、出力する制御電流ICCOを制御する。
【0019】
CCO17は、制御電流ICCOに応じて発振動作を行い、出力信号Foutを出力する。また、出力信号Foutは位相比較器11に帰還される。
【0020】
本実施の形態では、第1の電源系101のMOSトランジスタは、第2の電源系102のMOSトランジスタよりも高耐圧なものを使用する。それゆえ、上述の通り、第1の電源系101は第2の電源系102よりも高電圧の電源系とすることができ、ドレイン−ソース間電圧を十分に印加できるため、出力抵抗が大きくなる。よって、比例パス103とCCOドライバ16とを、出力抵抗が高い第1の電源系101のMOSトランジスタで構成することで、第2の電源系102のMOSトランジスタを用いて構成する場合と比べて、PSRR(Power Supply Rejection Ratio:電源電圧変動除去比)特性を改善できることが理解されるであろう。
【0021】
続いて、PLL回路100の構成についてより詳細に説明する。
図2は、実施の形態1にかかるPLL回路100の構成を模式的に示す図である。
図2では、
図1と比べて、レベルシフタ13と分周器18とが追加されている。
【0022】
レベルシフタ13は、第1の電源系101と第2の電源系102との間の信号の受け渡しのために設けられる。本実施の形態では、レベルシフタ13は、第2の電源系102に設けられた位相比較器11からの検出信号DETを、第1の電源系101に設けられた比例パス103に与えるため、検出信号DETの電圧レベルをシフトさせる。
【0023】
分周器18は、CCO17から帰還された出力信号FoutをM(Mは2以上の整数)分周し、分周した信号FMを位相比較器11に出力する。
【0024】
比例パス103は、チャージポンプ12とフィルタF1とを有する。
【0025】
チャージポンプ12は、検出信号DETに応じたアナログ比例信号APを出力する。換言すれば、チャージポンプ12は、比例パス103におけるアナログ比例信号APを生成する比例信号生成部として機能する。
【0026】
フィルタF1は、チャージポンプ12の出力と、CCOドライバ16のアナログ比例信号APの入力との間に挿入される。フィルタF1により、アナログ比例信号APのスプリアスを抑制することができる。
【0027】
積分パス104は、ディジタル信号処理部(ディジタルシグナルプロセッサ、Digital Signal Processor:DSP)14、粗調整ディジタル−アナログ変換器(Coarse Digital to Analog Converter:CDAC)15A、微調整ディジタル−アナログ変換器(Fine Digital to Analog Converter:FDAC)15B、フィルタF2及びF3を有する。
【0028】
DSP14は、検出信号DETをディジタル信号処理により積分し、積分結果をディジタル積分信号Dc及びDfとして出力する。
【0029】
CDAC15Aは、CCOドライバ16の粗調整を行うためのディジタル積分信号Dcをディジタル−アナログ変換(Digital to Analog Conversion:D/A変換)するディジタル−アナログ変換器(Coarse Digital to Analog Converter:DAC)である。CDAC15Aは、ディジタル積分信号DcをD/A変換した電圧信号であるアナログ積分信号AIc1を出力する。
【0030】
FDAC15Bは、CCOドライバ16の微調整を行うためのディジタル積分信号DfをD/A変換するDACである。FDAC15Aは、ディジタル積分信号DfをD/A変換した電圧信号であるアナログ積分信号AIf1を出力する。
【0031】
フィルタF2及びF3は、リコンストラクションフィルタである。フィルタF2は、CDAC15AとCCOドライバ16のアナログ積分信号AIcの入力との間に挿入される。アナログ積分信号AIc1はフィルタF2でフィルタリングされ、アナログ積分信号AIcとしてCCOドライバ16に出力される。フィルタF3は、FDAC15BとCCOドライバ16のアナログ積分信号AIfの入力との間に挿入される。アナログ積分信号AIf1はフィルタF3でフィルタリングされ、アナログ積分信号AIfとしてCCOドライバ16に出力される。なお、説明の簡略化のため、
図1では、アナログ積分信号AIc及びアナログ積分信号AIfを、まとめてアナログ積分信号AIと表記している。
【0032】
以下、CDAC15Aを第1のディジタル−アナログ変換器(DAC)とも称し、FDAC15Bを第2のディジタル−アナログ変換器(DAC)とも称する。この場合、ディジタル積分信号Dcを第1のディジタル積分信号とも称し、ディジタル積分信号Dfを第2のディジタル積分信号とも称する。フィルタF2を第1のフィルタとも称し、フィルタF3を第2のフィルタとも称する。また、FDAC15Bを第1のディジタル−アナログ変換器(DAC)とも称し、CDAC15Aを第2のディジタル−アナログ変換器(DAC)とも称してもよい。この場合、ディジタル積分信号Dfを第1のディジタル積分信号とも称し、ディジタル積分信号Dcを第2のディジタル積分信号とも称する。フィルタF3を第1のフィルタとも称し、フィルタF2を第2のフィルタとも称する。
【0033】
図3は、DSP14、CDAC15A、FDAC15B、CCOドライバ16、CCO17及びフィルタF2及びF3の接続関係を示す図である。
【0034】
DSP14は、CDAC15Aにディジタル積分信号Dcを出力し、FDAC15Bにディジタル積分信号Dfを出力する。
【0035】
PMOS(P-channel Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタMP1〜MP5のソースは、第1の電源VDD1と接続される。本構成では、PMOSトランジスタMP2及びMP3がCCOドライバ16を構成する。PMOSトランジスタMP1のドレインは、NMOS(N-channel Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタMN1のドレインと接続される。PMOSトランジスタMP2のドレインは、CCOドライバ16と接続される。PMOSトランジスタMP1のゲートは、PMOSトランジスタMP1のドレインと接続され、かつ、フィルタF2を介してPMOSトランジスタMP2のゲートと接続される。すなわち、PMOSトランジスタMP1とPMOSトランジスタMP2とは、カレントミラー(第1のカレントミラーとも称する)を構成している。これにより、PMOSトランジスタMP1のゲートには、PMOSトランジスタMP1に流れる電流Ic1によって決定される電圧を有するアナログ積分信号AIc1が現れる。そして、アナログ積分信号AIc1は、フィルタF2を介して、CCOドライバ16のアナログ積分信号AIcの入力端子であるPMOSトランジスタMP2のゲートに、アナログ積分信号AIcとして印加される。
【0036】
NMOSトランジスタMN1のソースは、CDAC15Aと接続される。NMOSトランジスタMN1のゲートは、CDAC15Aを構成する第2の電源系102の低耐圧のMOSトランジスタの耐圧が確保できるように、適切な電位にバイアスされる。
【0037】
CDAC15Aは、複数の定電流セルCCが並列に配置され、ディジタル積分信号Dcの値に応じて複数の定電流セルCCのうちで電流を供給するものの数を制御可能に構成される。この例では、複数の定電流セルCCの一端のそれぞれとNMOSトランジスタMN1のソースとの間にはスイッチが挿入され、複数の定電流セルCCの他端は接地される。そして、スイッチがディジタル積分信号Dcに応じて開閉することにより、複数の定電流セルCCのうちで電流を供給するものの数が制御される。
【0038】
PMOSトランジスタMP3のドレインは、CCOドライバ16と接続される。PMOSトランジスタMP4のドレインは、NMOSトランジスタMN2のドレインと接続される。PMOSトランジスタMP4のゲートは、PMOSトランジスタMP4のドレインと接続され、かつ、フィルタF3を介してPMOSトランジスタMP3のゲートと接続される。すなわち、PMOSトランジスタMP3とPMOSトランジスタMP4とは、カレントミラー(第2のカレントミラーとも称する)を構成している。これにより、PMOSトランジスタMP4のゲートには、PMOSトランジスタMP4に流れる電流If1によって決定される電圧を有するアナログ積分信号AIf1が現れる。そして、アナログ積分信号AIf1は、フィルタF3を介して、CCOドライバ16のアナログ積分信号AIfの入力端子であるPMOSトランジスタMP3のゲートに、アナログ積分信号AIfとして印加される。
【0039】
NMOSトランジスタMN2のソースは、FDAC15Bと接続される。NMOSトランジスタMN2のゲートは、DAC15Bを構成する第2の電源系102の低耐圧のMOSトランジスタの耐圧が確保できるように、適切な電位にバイアスされる。
【0040】
FDAC15Bは、複数の可変電流セルVCが並列に配置され、ディジタル積分信号Dfの値に応じて複数の可変電流セルVCのうちで電流を供給するものの数を制御可能に構成される。この例では、複数の可変電流セルVCの一端のそれぞれとNMOSトランジスタMN2のソースとの間にはスイッチが挿入され、複数の可 変電流セルVCの他端は接地される。そして、スイッチがディジタル積分信号Dfに応じて開閉することにより、複数の可変電流セルVCのうちで電流を供給するものの数が制御される。また、複数の可変電流セルVCの制御端子は、NMOSトランジスタMN3のゲートと接続され、印加される制御信号CON(バイアス電圧)に応じて出力電流が変化するように構成される。
【0041】
PMOSトランジスタMP5とNMOSトランジスタMN3とは、FDAC15Bの複数の可変電流セルVCの電流を制御する制御信号CONを生成する制御電圧生成回路を構成する。PMOSトランジスタMP5のドレインは、NMOSトランジスタMN3のドレインと接続される。PMOSトランジスタMP5のゲートは、PMOSトランジスタMP2のゲートと接続される。NMOSトランジスタMN3のソースは第2の電源系のグランドGND2に接地される。NMOSトランジスタMN3のゲートは、NMOSトランジスタMN3のドレインとFDAC15Bの可変電流セルVCの制御端子とに接続される。これにより、FDAC15Bの可変電流セルVCに制御信号CONが与えられる。
【0042】
図3の例では、上述したPMOSトランジスタMP1及びNMOSトランジスタMN1に流れる電流はIc1(第1の電流とも称する)、PMOSトランジスタMP4及びNMOSトランジスタMN2に流れる電流はIf1(第2の電流とも称する)である。また、PMOSトランジスタMP2に流れる電流をIc2(第3の電流とも称する)、PMOSトランジスタMP3流れる電流をIf2(第4の電流とも称する)、NMOSトランジスタMN3に流れる電流をIc3(第5の電流とも称する)とする。よって、CCOドライバ16に入力される制御電流ICCOは、ICCO=Ic2+If2となる。
【0043】
また、制御電流ICCOの粗調整を担う粗調整パス(すなわち、PMOSトランジスタMP2を含むパス)の電流Ic2は、CDAC15A及びFDAC15Bに流れる単位電流IのN(Nは、1よりも大きな値)倍であり(Ic2=NI)、電流Ic1と電流Ic2とのミラー比は1:Nである。本実施の形態では、一例としてミラー比は1:10である(N=10、Ic2=10I)。
【0044】
制御電流ICCOの微調整を担う微調整パス(すなわち、PMOSトランジスタMP3を含むパス)の電流If2は、CDAC15A及びFDAC15Bに流れる単位電流Iと等しい(If2=If1=I)。但し、電流If1と電流Ic2とのミラー比は、1:1に限定されるものではない。
【0045】
以上より、粗調整パスの電流Ic2と微調整パスの電流If2との比は、10:1となることができる。但し、この比は一例であり、粗調整パスの電流Ic2が微調整パスの電流If2よりも大きい限り、任意の比とすることができる。
【0046】
上述のように、本構成では、電流Ic1を所定のミラー比で複製した電流Ic3に基づいた制御信号CONによって、FDAC15Bの可変電流セルVCの電流を制御する。この際、電流が以下の比率となるように制御される。
Ic1:Ic3:If1=1:A:A/B×Df
ここで、Aは電流Ic1に対する電流Ic3の比(ミラー比)であり、Bは可変電流セルVCの単位電流に対する電流Ic3の比である。
【0047】
本実施の形態にかかるPLL回路100は、上記の粗調整パスの電流Ic2と微調整パスの電流If2とのミラー比を維持するように制御される。すなわち、上記の例において、粗調整パスの電流Ic2と微調整パスの電流If2とのミラー比は10:1に維持される。例えば、温度変動や電源変動などが生じると、CDACの定電流セルの電流にも変動が生じる。そのため、電流Ic1が変動するが、PLL回路100は電流Ic1の変動を解消するように制御される。以下、具体例について説明する。
【0048】
図4は、ロック状態のPLL回路100における電流を示す図である。この場合、ICCO=Ic2+If2=11Iである。
図4においては、電流Ic1に対する電流Ic3の比Aを0.8、FDAC15Bの可変電流セルVCの単位電流と電流Ic3との比Bを12とし、ディジタル積分信号Dfの平均値(所望値、第1の値とも称する)を15とする。この場合、FDAC15Bでは15個の可変電流セルVCが使用され、1個の可変電流セルVCに流れる電流はI/15となる。
【0049】
図4に示すロック状態で、温度変動や電源変動によってCDAC15Aの定電流セルCCの単位電流が変動し、PMOSトランジスタMP1に流れる電流Ic1が変動(ドリフト)する場合について考察する。なお、説明の簡略化のため、温度変動や電源変動によってはCCO17の特性は変化しないものとする。
【0050】
図5は、PLL回路100において電流がドリフトした場合を示す図である。CDAC15Aの電流If1に現れるドリフト量はΔI(ΔI>0)である場合、If1=I+ΔIとなる。PMOSトランジスタMP1とPMOSトランジスタMP2とのミラー比は1:10であるので、If2=10I+10ΔIとなる。PLL回路100はロックされており、CCO17の制御電流ICCOは11Iのままであるので、PMOSトランジスタMP3に流れる電流は、If2=I−10ΔIとなる。
【0051】
PLL回路100では、CCO17の制御電流ICCOを11Iのままで保つため、CDAC15Aの電流If1が増加したために、その増加分を相殺するため、DSP14はFDAC15Bの電流If1を減少させるようにフィードバック制御を行う。その結果、DSP14は、ディジタル積分信号Dfの値を減少させる。よって、ディジタル積分信号Dfは、電流ドリフトがない状態でのディジタル積分信号Dfの中心値(この例では15)からβだけ減少して、Df−β(第2の値とも称する)することとなる。なお、このとき、PMOSトランジスタMP2のゲート電圧は、PMOSトランジスタMP3のゲート電圧と異なる。
【0052】
ディジタル積分信号Dfの値を制御するのはDSP14であるため、DSP14は原理的にβを観測することが可能である。DSP14は、βが0になるように、CDAC15Aに与えるディジタル積分信号Dcの値を制御する。この例では、DSP14は、βが0になるように、CDAC15Aに与えるディジタル積分信号Dcの値を減少させる。その結果、CDAC15Aにおいて使用される定電流セルCCの数が少なくなり、電流ドリフトΔIが解消され、
図4に示す状態に復帰することができる。
【0053】
その結果、温度変動や電源変動が生じた場合でも、粗調整パスの電流Ic2と微調整パスの電流If2との比を一定(この例では、Ic2:If2=10:1)に保つことができる。
【0054】
以上、まとめると、温度変動や電源変動によってCDAC15Aの定電流セルCCの単位電流が変動した場合、電流Ic1がドリフトにより増加(又は減少)する。よって、DSP14は、ディジタル積分信号Dfの値を減少(又は増加)させて、電流If1を減少(又は増加)させる。そしてDSP14は、ディジタル積分信号Dcの値を減少(又は増加)させて、電流Ic1のドリフトを解消する。その後、ディジタル積分信号Dfの値を増加(又は減少)させて元の所望値に復帰させる。これにより、電流IC1にドリフトが生じた場合でも、粗調整パスの電流Ic2と微調整パスの電流If2との比を一定に保つことができる。
【0055】
以上、本構成によれば、温度変動や電源変動が生じても、PLL回路100での電流比を一定に維持することができるので、電流変動に伴う特性変動を防止することができる。また、電流比を一定に保つことで、例えば電流比に依存しない他の特性変動を容易に観測することができ、PLL回路の特性解析を行う上で有利であることが理解できる。
【0056】
続いて、チャージポンプ12、CCO17及びフィルタF1の構成例について説明する。
図6は、実施の形態1にかかるチャージポンプ12及びCCO17の構成を模式的に示す図である。チャージポンプ12は、例えば、定電流セル12A及び12B、スイッチSW1及びSW2を有する。定電流セル12Aと定電流セル12Bとは、第1の電源VDD1と第2の電源系のグランドGND1との間に縦続接続される。定電流セル12Aと定電流セル12Bとの間には、スイッチSW1とSW2とが縦続接続される。スイッチSW1とスイッチSW2との間の出力ノードからは、電流信号であるアナログ比例信号APが出力される。スイッチSW1とSW2は、検出信号DETに応じて相補的にオン/オフすることで、電流信号であるアナログ比例信号APの電流方向を反転させる。
【0057】
チャージポンプ12とCCO17との間には、フィルタF1が設けられる。フィルタF1は、抵抗Rと容量Cとで構成される。容量Cは、スイッチSW1とスイッチSW2との間の出力ノードと第1の電源系のグランドGND1との間に接続される。抵抗Rは、スイッチSW1とスイッチSW2との間の出力ノードとCCO17との間に接続される。
【0058】
以上の通り、チャージポンプ12、CCO17及びフィルタF1を構成できるが、上記の構成例は一例にすぎず、チャージポンプ12、CCO17及びフィルタF1の一部又は全部を他の構成とできることは言うまでもない。
【0059】
実施の形態2
実施の形態2にかかるPLL回路200について説明する。
図7は、実施の形態2にかかるPLL回路200の構成を模式的に示す図である。PLL回路200は、実施の形態1にかかるPLL回路100の変形例であり、PLL回路100のレベルシフタ13を除去し、位相比較器21とレベルシフタ22とを追加した構成を有する。以下、位相比較器11を第1の位相比較器とも称し、位相比較器21を第2の位相比較器とも称する。
【0060】
レベルシフタ22は、第1の電源系101と第2の電源系102との間の信号の受け渡しのために設けられる。本実施の形態では、レベルシフタ22は、第2の電源系102において供給される基準信号Fref、及び、分周器18を経て帰還した信号FMの電圧レベルをシフトさせて、第1の電源系101に設けられた位相比較器21に供給する。
【0061】
位相比較器21は、第1の電源系101に設けられ、レベルシフタ22でレベルシフトされた基準信号Frefと分周器18からの信号FMとの位相差を検出する。位相比較器21は、検出した検相差(検出結果)を検出信号DET2として出力する。
【0062】
PLL回路200のその他の構成は、PLL回路100と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
実施の形態1にかかるPLL回路100では、位相比較器11が出力した検出信号DETをレベルシフタ13でレベルシフトさせた信号を、第1の電源系101のチャージポンプ12に供給していた。だが、基準信号Frefと分周器18からの信号FMとの位相差が小さいときには、検出信号DETは狭い幅のパルス信号となる場合がある。パルス幅が狭くなると、レベルシフタでは波形を保ったまま狭い幅のパルス信号のレベルをシフトさせることができない現象が生じるおそれがある。つまり、パルス信号の幅が狭い場合には、正常な波形の検出信号をチャージポンプ12に供給することができない。このため、チャージポンプ12に与える検出信号とDSP14に与える検出信号との間の同一性が保てず、PLL回路のロック状態に悪影響を及ぼす。
【0064】
これに対し、本実施の形態にかかるPLL回路200では、位相比較器11が検出信号DET1(PLL回路100における検出信号DETに対応)を生成して積分パス103に与える一方で、レベルシフタ22で基準信号Frefと分周器18からの信号FMとをレベルシフトさせた後に、第1の電源系101に設けられた位相比較器21で検出信号DET2を生成して比例パス103に与える。基準信号Frefと分周器18からの信号FMは、レベルシフタで正常にレベルシフトできないほど狭いパルス信号になることはないので、検出信号DET1と検出信号DET2との間の同一性を保つことがでる。よって、本構成によれば、実施の形態1にかかるPLL回路100と比較して、PLL回路のロック状態を所望の状態をとすることが可能となる。
【0065】
実施の形態3
実施の形態3にかかるPLL回路について説明する。PLL回路300は、PLL回路100のCCOドライバ16をCCOドライバ36に置換した構成を有する。
図8は、実施の形態3にかかるCCOドライバ36の構成を模式的に示す図である。CCOドライバ36は、実施の形態1にかかるCCOドライバ16にディジェネレーション抵抗R12及びR22を追加した構成を有する。
【0066】
ディジェネレーション抵抗R11(第1のディジェネレーション抵抗とも称する)は、PMOSトランジスタMP2のソースと第1の電源VDD1との間に接続される。ディジェネレーション抵抗R12(第2のディジェネレーション抵抗とも称する)は、PMOSトランジスタMP3のソースと第1の電源VDD1との間に接続される。
【0067】
なお、この場合には、ディジェネレーション抵抗R11及びR12の導入との平仄を保つため、PMOSトランジスタMP1のソースと第1の電源VDD1との間には抵抗R1が接続され、PMOSトランジスタMP4のソースと第1の電源VDD1との間には抵抗R2とが接続される。
【0068】
本構成によれば、実施の形態1と比較して、ディジェネレーション抵抗の導入により、CCOドライバの線形性を向上させることができる。また、ディジェネレーション抵抗R11及びR12の抵抗値を適宜選択することで、PLL回路のループ特性のゼロ点を調整することも可能である。
【0069】
実施の形態4
実施の形態4にかかるPLL回路について説明する。PLL回路400は、PLL回路100に、CDAC15Aの定電流セルにバイアスを供給するバイアス生成回路を追加した構成を有する。
【0070】
図9は、バイアス生成回路の一例であるバイアス生成回路41の構成を模式的に示す図である。バイアス生成回路41は、PMOSトランジスタMP11及びMP12、NMOSトランジスタMN11、抵抗R41を有する。
【0071】
本構成では、PMOSトランジスタMP11及びMP12は、カレントミラーを構成する。PMOSトランジスタMP11及びMP12のソースは、第2の電源VDD2(VDD2<VDD1)に接続される。なお、PMOSトランジスタMP11及びMP12のソースは、第1の電源VDD1に接続されてもよい。PMOSトランジスタMP11のドレインは、NMOSトランジスタMN11のドレインと接続される。PMOSトランジスタMP12のドレインと第2の電源系のグランドGND2との間には、抵抗R41が挿入される。PMOSトランジスタMP12のゲートは、PMOSトランジスタMP12のドレインと、PMOSトランジスタMP11のゲートとに接続される。
【0072】
NMOSトランジスタMN11のソースは、第2の電源系のグランドGND2と接続される。NMOSトランジスタMN11のゲートは、NMOSトランジスタMN11のドレインと、CDAC15Aの定電流セルCCのバイアス端子とに接続される。
【0073】
これにより、PMOSトランジスタMP12を流れる電流を所定のミラー比で複製した電流がPMOSトランジスタMP11に流れる。その結果、PMOSトランジスタMP11に流れる電流に応じたバイアス電圧Vbiasが、CDAC15Aの定電流セルCCのバイアス端子に入力される。
【0074】
以上、本構成によれば、簡易な回路構成のバイアス生成回路により、定電流セルにバイアス電圧を与えることができる。
【0075】
また、バイアス生成回路は、他の構成とすることもできる。
図10は、バイアス生成回路の他の一例であるバイアス生成回路42の構成を模式的に示す図である。バイアス生成回路42は、PMOSトランジスタMP21及びMP22、NMOSトランジスタMN21及びMN22、抵抗R42、スタートアップ回路42Aを有する。
【0076】
PMOSトランジスタMP21のソースは、第2の電源VDD2と接続される。なお、PMOSトランジスタMP21のソースは、第1の電源VDD1に接続されてもよい。PMOSトランジスタMP21のドレインは、NMOSトランジスタMN21のドレインと接続される。PMOSトランジスタMP22のソースと第2の電源VDD2との間には、抵抗R42が挿入される。PMOSトランジスタMP22のドレインは、NMOSトランジスタMN22のドレインと接続される。PMOSトランジスタMP21のゲートは、PMOSトランジスタMP22のゲートとPMOSトランジスタMP21のドレインとに接続される。
【0077】
NMOSトランジスタMN21及びMN22のソースは、第2の電源系のグランドGND2と接続される。NMOSトランジスタMN22のゲートは、NMOSトランジスタMN22のドレインと、NMOSトランジスタMN21のゲートと、CDAC15Aの定電流セルCCのバイアス端子とに接続される。
【0078】
スタートアップ回路42Aは、PMOSトランジスタMP22のドレインとNMOSトランジスタMN22のドレインとの間のノードにスタートアップ信号SUを出力する。
【0079】
本構成では、バイアス生成回路42を起動するために、まずスタートアップ回路42Aがスタートアップ信号SUとして、HIGHレベルのパルス信号を出力する。これにより、NMOSトランジスタMN21及びMN22のゲートがHIGHレベルとなり、NMOSトランジスタMN21及びMN22がオンとなる。よって、PMOSトランジスタMP21及びMP22のゲートはLOWレベルとなり、PMOSトランジスタMP21及びMP22がオンとなり、PMOSトランジスタMP21及びMP22に電流が流れ始める。
【0080】
その後、時間の経過とともにPMOSトランジスタMP21及びNMOSトランジスタMN21に流れる電流と、PMOSトランジスタMP22及びNMOSトランジスタMN22に流れる電流と、が安定する。その結果、NMOSトランジスタMN21に流れる電流によって生じるNMOSトランジスタMN21のゲート電圧が、バイアス電圧Vbiasとして、CDAC15Aの定電流セルCCのバイアス端子に入力される。
【0081】
以上、本構成によれば、バイアス生成回路41と同様に、簡易な回路構成のバイアス生成回路により定電流セルにバイアス電圧を与えることができる。
【0082】
以上では、簡易な構成を有するバイアス生成回路について説明したが、よりバイアス電圧Vbiasを精密に制御できる構成としてもよい。具体的には、第2の電源系102にバンドギャップリファレンス回路を設け、バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を、バイアス電圧Vbiasとして定電流セルのバイアス端子に入力してもよい。
【0083】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、CCOドライバ、フィルタ及びバイアス生成回路はNMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタを用いて構成しているが、適宜NMOSトランジスタをPMOSトランジスタに置換し、PMOSトランジスタをNMOSトランジスタに置換して、同様の機能を有するCCOドライバ、フィルタ及びバイアス生成回路を構成できることは言うまでもない。
【0084】
実施の形態2にかかるPLL回路200においても、CCOドライバ16をCCOドライバ36に置換できることはいうまでもない。また、実施の形態2にかかるPLL回路200に、実施の形態4にかかるバイアス生成回路を追加できることは言うまでもない。
【0085】
上述の実施の形態では、基準信号Frefは第2の電源系102における信号であるものとして説明したが、基準信号Frefは第1の電源系101における信号であってもよい。この場合、PLL回路100では、位相比較器を第1の電源系101に設け、位相比較器に、基準信号Frefと、CCO17から帰還した信号をレベルシフタでレベルシフトさせた信号と、を与えればよい。そして、位相比較器が出力する検出信号DETをレベルシフタでレベルシフトさせて、積分パス104に与えればよい。PLL回路200では、基準信号Frefをレベルシフトさせることなく位相比較器22に与え、基準信号Frefをレベルシフタでレベルシフトさせて位相比較器11に与えればよい。
【0086】
上述の実施の形態では、フィルタF2及びF3を第1の電源系101に設けるものとして説明したが、第2の電源系102に設けてもよい。
【0087】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。