(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、まず、剥離デバイス(dissector3)により、血管とその周辺の組織(脂肪)とを剥離し、次に、切断デバイス(treatment sheeth2)により、生体内に露出させた分岐血管を止血及び切断する。このように、特許文献1のシステムは、血管をその周辺の組織とともに採取できるように構成されていない。また、このシステムは、生体内に露出した分岐血管を捕捉して止血及び切断を行う必要があり、血管採取の作業性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、血管をその周辺組織とともに採取する際の作業性に優れる処理デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る処理デバイスは、血管に沿って生体内に挿入される際に生体内の組織を剥離するように構成されるとともに、前記血管から分岐した分岐血管が進入可能なスリットを有する剥離部本体と、前記スリットに配置され、前記スリットに導入された前記分岐血管を押圧するとともに焼灼する
板バネ状の止血部と、前記スリットに配置され、前記焼灼された前記分岐血管を切断する切断部とを備え
、前記止血部は、前記スリットを形成する互いに対向する第1内面及び第2内面の一方に固定された固定部と、前記固定部よりも基端側の自由端を構成するとともに前記血管を押圧する押圧部とを有することを特徴とする。
【0009】
上記の構成を採用した本発明の処理デバイスによれば、血管に沿って処理デバイスを生体内に挿入して前進させる際に、剥離部本体によって生体内の組織を剥離するとともに、組織中に埋もれた分岐血管を簡単に捕捉することができる。また、剥離部本体を介してスリットに導入された分岐血管を、止血部により押圧しながら焼灼するため、細い分岐血管でも確実に止血を行うことができる。さらに、焼灼された分岐血管を切断部により切断するため、止血した分岐血管を確実に切断することができる。
また、スリット内への分岐血管の導入に伴って板バネ状の止血部が弾性変形するため、分岐血管を適度な押圧力で押圧することができる。また、固定部を支点として押圧部が変位可能である。このため、押圧部により分岐血管を好適に押圧することができる。
【0010】
上記の処理デバイスにおいて、前記止血部の少なくとも一部は、
前記第1内面及び
前記第2内面の離間方向に変位可能に構成されていてもよい。
【0011】
この構成により、分岐血管の太さに関わらず、スリットに導入された分岐血管を効果的に押圧することができる。
【0016】
上記の処理デバイスにおいて、前記止血部は、前記固定部と前記押圧部との間に、前記第1内面及び前記第2内面の一方側に向かって傾斜する傾斜部を有していてもよい。
【0017】
この構成により、傾斜部のガイド作用下に、押圧部へと分岐血管をスムーズに導入することができる。
【0018】
上記の処理デバイスにおいて、前記止血部は、バイポーラ電極を構成する第1電極及び第2電極を有していてもよい。
【0019】
この構成により、第1電極と第2電極との間の分岐血管を通電することで、分岐血管を確実に焼灼することができる。
【0020】
上記の処理デバイスにおいて、前記第1電極と前記第2電極は、前記処理デバイスの軸方向に対して垂直な方向に離間して並設されていてもよい。
【0021】
この構成により、スリットの延在方向と交差する方向に延在する状態でスリット内に導入された分岐血管に確実に通電し焼灼することができる。
【0022】
上記の処理デバイスにおいて、前記第1電極と前記第2電極は、前記第1内面と前記第2内面の同じ側に固定されていてもよい。
【0023】
この構成により、第1電極と第2電極とにより、第1電極及び第2電極が固定された内面に対向する内面に向けて、分岐血管を好適に押圧することができる。
【0024】
上記の処理デバイスにおいて、前記切断部は、前記止血部に突出して設けられていてもよい。
【0025】
この構成により、止血部により止血した分岐血管を好適に切断することができる。
【0026】
上記の処理デバイスにおいて、前記スリットに変位可能に配置され、変位に伴って、前記止血部が前記分岐血管を押圧する方向に前記止血部を押圧する押圧部材をさらに備えてもよい。
【0027】
この構成により、分岐血管を押圧した状態の止血部を押圧部材が押圧することで、分岐血管を径方向に十分に潰すことができる。そして、十分に潰した分岐血管を焼灼することで、分岐血管を確実に止血することができる。
【0028】
上記の処理デバイスにおいて、前記切断部は、前記押圧部材に設けられ、前記押圧部材の変位時に前記押圧部材と一緒に変位してもよい。
【0029】
この構成により、押圧部材と切断部を個別の操作で変位させる必要がなく、押圧部材による止血部の押圧と、切断部による分岐血管の切断とを、一連の操作で簡単に行うことができる。
【0030】
上記の処理デバイスにおいて、前記切断部は、前記止血部に一体成形されていてもよい。
【0031】
この構成により、切断部及び止血部を構成する部品点数を低減することができる。
【0032】
上記の処理デバイスにおいて、前記剥離部本体の先端部には、前記スリットに連通し、基端方向に向かって狭くなる導入部が設けられていてもよい。
【0033】
この構成により、分岐血管をスリットへとスムーズに誘導することができる。
【0034】
上記の処理デバイスにおいて、前記スリットは、前記剥離部本体の厚さ方向に沿う第1スリット要素と、前記第1スリット要素と交差する第2スリット要素とを有していてもよい。
【0035】
この構成により、例えば、一方にスリット状溝が形成された第1部材と第2部材とを重ね合わせて接合することで、分岐血管導入用の上記スリットが形成された剥離部本体を簡単に構築することができる。
【0036】
また、本発明の剥離デバイスは、撮像デバイスが挿入可能な挿入ルーメンを有し、ユーザによって把持可能に構成された把持部と、前記把持部の先端部に設けられ、血管に沿って生体内に挿入される際に生体内の組織を剥離する剥離部材と、を備え、前記剥離部材は、第1剥離部と、前記第1剥離部から前記第1剥離部の厚さ方向に延出した第2剥離部とを有し、前記第2剥離部は、上記の処理デバイスにより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明の処理デバイス及び剥離デバイスによれば、血管をその周辺組織とともに採取する際に、組織中に埋もれた分岐血管を簡単に捕捉することができるとともに、分岐血管の止血及び切断処理を簡単に行うことができ、作業性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0040】
[剥離システム10の全体構成]
図1に示す剥離システム10は、血管バイパス術(冠動脈バイパス術:CABG)を行う際のバイパス管として用いられる血管を採取するのに用いられるデバイスであり、血管を周囲の組織(脂肪、結合組織等)に覆われた状態で採取することができる。剥離システム10を用いて採取する血管としては、バイパス管として用いることのできる血管であれば特に限定されず、例えば、内胸動脈、胃大網動脈、橈骨動脈、伏在静脈(大伏在静脈、小伏在静脈)等が挙げられる。
【0041】
採取する血管としてはこれらの中でも伏在静脈であることが好ましい。剥離システム10を用いることで、前述したように、血管を周囲の組織に覆われた状態で採取することが容易となるため、剥離システム10を用いて伏在静脈を採取し、それをバイパス管として用いることで、術後の長期的な開存率が高くなると考えられる。
【0042】
剥離システム10は、2種類の剥離デバイス12、14を備える。以下、説明の便宜上、一方の剥離デバイス12を「第1剥離デバイス12」と呼び、他方の剥離デバイス14を「第2剥離デバイス14」と呼ぶ。第1剥離デバイス12及び第2剥離デバイス14は、いずれも、伏在静脈等の血管に沿って生体内に挿入される長尺状のデバイスである。
【0043】
[第1剥離デバイス12の構成]
第1剥離デバイス12は、ユーザ(手技者)によって把持可能に構成された把持部16と、把持部16の先端部に設けられた剥離部材18と備える。
図3に示すように、把持部16は、撮像デバイス17(例えば、内視鏡)を挿入可能な挿入ルーメン20を有する管状部材である。図示例の把持部16は、直線状に形成されている。把持部16の構成材料としては、例えば硬質樹脂、金属等が挙げられる。
【0044】
挿入ルーメン20は、把持部16の長手方向に沿って延在するとともに、把持部16の先端面及び基端面にて開口する貫通孔である。撮像デバイス17の先端部には、例えば対物レンズ及び照明部が設けられている。
【0045】
図1において、剥離部材18は、把持部16の先端部に固定された中空構造のベース部22(第1剥離部)と、ベース部22の幅方向両側からベース部22の厚さ方向一方側(
図1で下方)に突出した一対のサイド部24(第2剥離部)とを有する。ベース部22は、横断面形状が上下方向に短く幅方向に長い扁平形状を有する。ベース部22の幅は、採取する血管の外径よりも大きく設定されている。
【0046】
図3において、ベース部22は、把持部16の先端部が固定された固定孔26と、固定孔26よりも先端側からベース部22の先端近傍まで延在する空洞28とを有する。空洞28は、挿入ルーメン20と連通している。
【0047】
ベース部22の先端部には、組織を剥離する先端剥離部30が設けられている。組織を剥離しやすいように、先端剥離部30は先端方向に向かって細く形成されている。具体的には、先端剥離部30は、先端剥離部30の横断面形状の短軸方向の長さ及び長軸方向の長さが先端方向に向かって漸減するように形成されている。採取する血管や分岐血管73を先端剥離部30で損傷しないように、先端剥離部30の先端31(頂部)は丸みを帯びた形状に形成されている。また、先端剥離部30は、それよりも基端側の基部から緩やかに反り上がるように湾曲している。
【0048】
ベース部22は、透明性(光透過性)を有する材料(例えば、ガラス、透明樹脂等)により構成されている。そのため、挿入ルーメン20及び空洞28に撮像デバイス17を挿入することで、撮像デバイス17によって、ベース部22の前方及び周囲を撮像し、観察(視認)することができる。なお、ベース部22は、実質的に無色透明であるのが好ましいが、透明性を有していれば、着色されていてもよい。
【0049】
図1において、一対のサイド部24(24a、24b)は、ベース部22の下方両側において組織を剥離するとともに、分岐血管73(
図8参照)を止血及び切断できるように構成されている。一対のサイド部24は、左右対称(剥離部材18の幅方向に関して対称)に構成されている。
【0050】
一対のサイド部24は、ベース部22の両側における基端寄りの部分に設けられている。このため、先端剥離部30を有するベース部22は、一対のサイド部24よりも先端方向に突出している。本実施形態では、ベース部22と一対のサイド部24は一体成形されている。なお、ベース部22と一対のサイド部24は、別々の部材として構成され、適宜の手段(接着剤等)で互いに接合されていてもよい。
【0051】
図2及び
図4において、サイド部24は、分岐血管73が進入可能なスリット90を有する剥離部本体78と、分岐血管73を止血する止血部80と、分岐血管73を切断する切断部84とを備える。なお、
図4では、理解の容易のため、剥離部本体78の一部(後述する第1部材86の一部)を仮想線で示している。
【0052】
剥離部本体78は、血管に沿って生体内に挿入される際に生体内の組織を剥離するように構成されるとともに、第1部材86及び第2部材88を有する。第1部材86及び第2部材88は板状に形成されている。第1部材86と第2部材88との間にスリット90が形成されている。第1部材86及び第2部材88は、ベース部22と同様に、透明性を有する材料により構成されている。
【0053】
本実施形態において、第1部材86は、サイド部24の本体部分を構成しており、ベース部22からベース部22の厚さ方向一方側に突出した板状体である。第1部材86は、剥離部材18の長手方向(把持部16の軸方向)に沿って延在するスリット状溝92を有する。スリット状溝92は、第1部材86の厚さ方向に貫通し且つ先端方向に開口している。また、第1部材86の先端部には、基端方向に向かってスリット状溝92側に近づくように傾斜した傾斜面93、94が形成されている。
【0054】
図4に示すように、第2部材88は、第1部材86に接合された板状体である。第1部材86と第2部材88とは厚さ方向に接合されている。本実施形態では、第2部材88は、第1部材86の外側に配置されている。
【0055】
また、本実施形態において、第2部材88は、厚肉部96と、厚肉部96から突出した薄肉部98とを有する。厚肉部96が、第1部材86におけるスリット90を挟んだ一方側部分に接合されている。薄肉部98が、第1部材86におけるスリット90を挟んだ他方側部分に隙間を介して対向している。このように、本実施形態では、第1部材86に形成されたスリット状溝92と、第1部材86と第2部材88との間の隙間により、スリット90が形成されている。
【0056】
このようなスリット90は、
図5に示すように、剥離部本体78の横断面においてL字状に屈曲している。すなわち、スリット90は、剥離部本体78の厚さ方向に沿う第1スリット要素90aと、第1スリット要素90aに直交する方向(第1スリット要素90aと交差する方向)に沿う第2スリット要素90bとを有する。従って、スリット90は、剥離部本体78の厚さ方向の一方側(剥離部材18の内側)と、剥離部材18の長手方向及び剥離部本体78の厚さ方向に直交する方向の一方側(薄肉部98の突出端側)とに開口している。また、
図4に示すように、スリット90は、先端側と基端側とにも開口している。
【0057】
図4において、第2部材88の先端部には、基端方向に向かって薄肉部98の突出端側へ近づくように傾斜した傾斜面99が形成されている。
【0058】
剥離部本体78の先端部には、基端方向に向かって開口幅が小さくなり、スリット90と連通する導入部100が設けられている。具体的に、この導入部100は、第1傾斜端縁100aと、第2傾斜端縁100bとにより構成されている。第1傾斜端縁100aは、上述した第1部材86の一方の傾斜面93と、第2部材88の傾斜面99とにより構成されている。第2傾斜端縁100bは、上述した第1部材86の他方の傾斜面94により構成されている。
【0059】
止血部80は、スリット90に導入された分岐血管73を押圧するとともに止血するように構成されている。止血部80は、バイポーラ電極を構成する第1電極104及び第2電極106を有する。第1電極104と第2電極106は、剥離部材18の延在方向に対して垂直な方向(具体的には、剥離部材18の高さ方向、すなわち剥離部本体78の幅方向)に離間して並設されている。また、第1電極104と第2電極106は、スリット90の延在方向に沿って互いに平行に配置されている。バイポーラ電極への通電(高周波電圧の印加)は、手元側のインタフェースによって、第1電極104と第2電極106を同時に通電できる、又は、第1電極104と第2電極106を選択的に通電できる構成となっている。
【0060】
このような第1電極104及び第2電極106間に高周波電圧を印加することで、スリット90に導入された分岐血管73を焼灼(熱凝固)して止血することができる。なお、第1剥離デバイス12の手元側においてユーザが通電操作を行うことによりエネルギ出力動作が行われ、これにより、第1電極104及び第2電極106間に高周波電圧が印加される。
【0061】
剥離部本体78は、スリット90を形成する互いに対向する第1内面86a及び第2内面88aを有する。第1内面86aは第1部材86に形成されている。第2内面88aは第2部材88に形成されている。第1電極104及び第2電極106は、第1内面86a及び第2内面88aの一方(本実施形態では、第2内面88a)に固定されている。
【0062】
止血部80の少なくとも一部は、スリット90を介した第1内面86aと第2内面88aとの離間方向(以下、「スリット厚さ方向」という)に変位可能に構成されている。具体的に、第1電極104及び第2電極106の各々は、板バネ(弾性片)の形態を有する。
【0063】
図4及び
図6Aにおいて、第1電極104及び第2電極106の各々は、第1内面86a及び第2内面88aの一方(本実施形態では、第2内面88a)に固定された固定部108と、固定部108よりも基端側で分岐血管73を押圧する押圧部110とを有する。固定部108は、第1電極104及び第2電極106の先端側領域を構成しており、適宜の固定手段(接合手段)114によって第2部材88に取り付けられている。
【0064】
押圧部110は、スリット厚さ方向に弾性的に変位可能であるとともに、第1内面86a及び第2内面88aの他方(本実施形態では、第1内面86a)に向けて、スリット90に導入された分岐血管73を押圧するように構成されている。押圧部110は、第1部材86及び第2部材88の各々における基端側領域を構成するともに、自由端部を構成している。押圧部110は第1内面86a及び第2内面88aの他方と接触していても良い。その際に、押圧部110は第1内面86a及び第2内面88aの他方を付勢して良い。又は、押圧部110は第1内面86a及び第2内面88aの他方と接触するだけで付勢していなくも良い
。それによって、確実に押圧部110が分岐血管73と接触することができる。
【0065】
第1電極104及び第2電極106の各々はさらに、固定部108と押圧部110との間を構成する傾斜部112を有する。傾斜部112は、基端方向に向かって第1内面86a側に近づくように傾斜している。傾斜部112は、湾曲していても、直線状でも良い。
【0066】
なお、第2部材88は、第1部材86の内側に配置されてもよい。第1電極104及び第2電極106は、第1内面86aに固定されていてもよい。第1電極104及び第2電極106の一方は、第1内面86a及び第2内面88aの一方に固定され、第1電極104及び第2電極106の他方は、第1内面86a及び第2内面88aの他方に固定されていてもよい。
【0067】
切断部84は、鋭利な刃を有し、止血部80によって止血(熱凝固)した分岐血管73を切断するように構成されている。切断部84は、止血部80の基端部(具体的には、押圧部110の基端部)に設けられている。これにより、スリット90に導入された分岐血管73は、押圧部110によって押圧されつつ焼灼されることで止血された後に、切断部84に到達し、切断部84で止血箇所(焼灼箇所)が切断される。また、切断部84は押圧部110と一体でも良い。それによって、切断部84が第1電極104及び第2電極106で形成されているため、切断部84で分岐血管73の止血箇所(焼灼箇所)を焼き切ることができる。また、分岐血管73を切断しやすいように、切断部84は、それぞれ第1電極104及び第2電極106から、第1内面86a及び第2内面88aのうち第1電極104及び第2電極106が固定されていない側(本実施形態では、第1内面86a側)に突出している。
【0068】
図4に示すように、切断部84は、2つのカッタ片85を有する。一方のカッタ片85は第1電極104に設けられ、他方のカッタ片85は第2電極106に設けられている。2つのカッタ片85は、それぞれ第1電極104及び第2電極106から、第1内面86a及び第2内面88aのうち第1電極104及び第2電極106が固定されていない側(本実施形態では、第1内面86a側)に突出している。
【0069】
2つのカッタ片85は、第1電極104及び第2電極106にそれぞれ一体成形されている。すなわち、第1電極104と一方のカッタ片85は、一体成形された1つの部材である。同様に、第2電極106と他方のカッタ片85は、一体成形された1つの部材である。なお、2つのカッタ片85は、それぞれ第1電極104及び第2電極106に接合された別部材であってもよい。切断部84は、1つのカッタ片85のみを有していてもよい(2つのカッタ片85のうち一方をなくしてもよい)。
【0070】
図6Aにおいて、第1内面86a及び第2内面88aのうち止血部80が固定されていない方(第1内面86a)には、切断部84を収容する収容溝116が設けられている。このような収容溝116が設けられていることにより、第1内面86aと切断部84との干渉が防止され、スリット90に導入された分岐血管73を押圧部110により確実に押圧することができる。
【0071】
[第2剥離デバイス14の構成]
図1において、第2剥離デバイス14は、ユーザによって把持可能に構成された把持部44と、把持部44の先端部に設けられた剥離部材46と備える。
図7に示すように、把持部44は、撮像デバイス17を挿入可能な挿入ルーメン45を有する管状部材である。図示例の把持部44は、直線状に形成されている。把持部44の構成材料としては、例えば硬質樹脂、金属等が挙げられる。挿入ルーメン45は、把持部44の長手方向に沿って延在するとともに、把持部44の先端面及び基端面にて開口する貫通孔である。
【0072】
剥離部材46は、把持部44の先端部に固定された基部48と、基部48の先端から先端方向に延出した剥離部50とを備える。基部48は、剥離部材46の長手方向に沿って延在する内腔49を有する中空状に形成されている。内腔49の先端は、基部48の先端壁48aによって閉じられている。内腔49の基端は、基部48の基端面にて開口している。内腔49の基端側領域に、把持部44の先端部が挿入され固定されている。内腔49において、把持部44よりも先端側には、撮像デバイス17の先端部が進入可能な空洞49aが形成されている。
【0073】
図示例の基部48において、基部48の横断面輪郭形状は、四角形状である。なお、基部48の横断面輪郭形状は、円形、楕円形、台形等の他の形状であってもよい。
【0074】
剥離部材46(特に、基部48)は、透明性(光透過性)を有する。剥離部材46の構成材料としては、例えば、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。このように基部48が透明性を有するため、挿入ルーメン45に撮像デバイス17を挿入することで、撮像デバイス17によって、基部48の前方及び周囲を撮像し、観察することができる。
【0075】
なお、剥離部材46は、実質的に無色透明であるのが好ましいが、透明性を有していれば、着色されていてもよい。剥離部材46は、全体が透明性を有している必要はなく、基部48だけ(特に、観察窓として機能する先端壁48aだけ)が、透明性を有していてもよい。また、剥離部材46では、先端壁48aが他の部分の一体成形された部分である必要はなく、空洞49aの先端開口が透明性を有する別の部材で閉じられていてもよい。
【0076】
図1に示すように、剥離部50は、剥離部材46が血管72に沿って前進する際に組織(脂肪74等)を剥離する一対の剥離部51からなる。一対の剥離部51は、剥離部材46の幅方向に離間している。血管72と剥離部材46との並び方向に組織を剥離しやすいように、各剥離部51の厚さ(剥離部材46の高さ方向に沿った寸法)は、基端方向に向かって漸増している。
【0077】
剥離部材46の先端部には、さらに、分岐血管73を受け入れて基部48側へ案内する血管誘導路54が設けられている。血管誘導路54は、上述した一対の剥離部51の間に形成されている。
図7に示すように、血管誘導路54は、血管誘導路54の先端側領域を構成する第1溝部56(導入部100)と、血管誘導路54の基端側領域を構成する第2溝部58とを有する。
【0078】
第1溝部56は、基端方向に向かって幅が小さくなるように形成されている。第2溝部58は、第1溝部56と連通し、第1溝部56よりも幅が小さく、剥離部材46の長手方向に沿って延在する直線状の溝である。
【0079】
また、剥離部材46には、分岐血管73を止血及び切断するための処理部60が設けられている。処理部60は、分岐血管73を止血する止血部62と、分岐血管73を切断する切断部64(刃部)とを有する。止血部62は、一対の電極63を有するバイポーラ構造となっている。一対の電極63は、第2溝部58の幅方向の両側に設けられている。図示例において、一対の電極63は剥離部材46の底面に取り付けられている。なお、一対の電極63は、剥離部材46に埋め込まれるように配置されてもよい。
【0080】
このような一対の電極63間に高周波電圧を印加することで、第2溝部58に案内された分岐血管73を焼灼(熱凝固)して止血することができる。切断部64は、第2溝部58の最奥部(基端部)に設けられているとともに、一対の電極63の先端よりも基端側に設けられている。これにより、焼灼した血管72を切断部64により切断することができる。
【0081】
また、処理部60は、電極63を一方の電極(以下、「第1電極63」という)とし、切断部84を他方の電極(以下、「第2電極84」という)とするバイポーラ構造となっていてもよい。第2電極84は、刃部ないし薄板構造であり、焼灼された分岐血管73を切断する切断機能も有する。第1電極63は、第2溝部58の幅方向の両側ないし基端部側に設けられている。
図7において、第1電極63は、剥離部材46の底面に取り付けられている。第1電極63は、剥離部材46に埋め込まれるように配置されてもよい。
【0082】
図1において、剥離部材46は、さらに、剥離部50の両側に形成された一対のガイドプレート68を有する。このような一対のガイドプレート68が設けられていることにより、第2剥離デバイス14を生体内で先端側へ押し進める際、剥離部材18のサイド部24によって先行して形成された剥離箇所にガイドプレート68が挿入されることにより、第2剥離デバイス14を容易に血管72に沿わせて押し進めることができる。
【0083】
[血管採取方法]
次に、上記のように構成された剥離システム10を用いた血管採取方法について説明する。当該血管採取方法は、剥離システム10を用いて血管72を周囲の脂肪74(組織)に覆われた状態で剥離する剥離ステップ(第1ステップ)と、血管72を結紮した後に切断する切断ステップ(第2ステップ)と、血管72を周囲の脂肪74に覆われた状態で生体から摘出する摘出ステップ(第3ステップ)とを含む。なお、本例では、下肢にある伏在静脈を採取する場合を説明する。
【0084】
剥離ステップでは、まず、採取する血管72の位置を確認し、その位置に基づいて例えば
図8のように患者の皮膚70を切開する。皮膚70を切開したら、血管72が見えるまで(血管72又は伏在筋膜が露出するまで)組織を剥離する。次に、撮像デバイス17を挿入した第1剥離デバイス12を用意する。なお、第1剥離デバイス12は、その構成要素として予め撮像デバイス17を備えていてもよい。
【0085】
そして、撮像デバイス17で生体内を観察しながら、切開部71から第1剥離デバイス12を血管72に沿って挿入する。この場合、皮膚70と血管72との間に剥離部材18のベース部22が配置され、且つベース部22の厚さ方向がベース部22と血管72との並び方向と一致するように、第1剥離デバイス12を挿入する。
【0086】
そして、生体内で第1剥離デバイス12を血管72に沿って、必要長さ(採取したい長さ)だけ押し進める。この際、第1剥離デバイス12は、
図9のように、剥離部材18によって血管72の周囲の脂肪74を剥離しながら前進する。具体的には、ベース部22の先端剥離部30は、血管72の上方(皮膚70側)の脂肪74をベース部22の厚さ方向に剥離する。
図10のように、一対のサイド部24は、血管72の側方の脂肪74をサイド部24の厚さ方向に剥離する。
【0087】
また、
図9のように第1剥離デバイス12が生体内で血管72に沿って前進する際、第1剥離デバイス12は、血管72から分岐した分岐血管73を導入部100によってスリット90へと案内するとともに、スリット90に設けられた止血部80及び切断部84によって分岐血管73の止血及び切断を行う。具体的には、
図11Aのように、生体内で第1剥離デバイス12が前進する過程でサイド部24が分岐血管73に接触した際、分岐血管73は、基端方向に向かって開口幅が小さくなる導入部100のガイド作用によって、スリット90側へとスムーズに案内される。
【0088】
そして、第1剥離デバイス12がさらに前進することに伴って、分岐血管73は、
図11Bのように、スリット90内に導入される。第2剥離デバイス14Bがさらに前進すると、
図12Aのように、分岐血管73は、傾斜部112を介して第1電極104及び第2電極106の押圧部110へと到達する。この際、分岐血管73は、傾斜部112のガイド作用により、押圧部110へとスムーズに案内される。
【0089】
押圧部110に到達した分岐血管73は、押圧部110によって、押圧部110の押圧面と対向する壁面(本実施形態は、第1内面86a)に押圧される。すなわち、分岐血管73は、押圧部110と第1内面86aとの間に挟まれて径方向に潰される。この際、第1電極104及び第2電極106は、弾性片によって構成されているため、分岐血管73の外径に応じて第2内面88a側へと弾性変形する。これにより、分岐血管73を効果的に押圧することができる。
【0090】
また、
図6B及び
図6Cのように、第1電極104及び第2電極106は、分岐血管73の外径に応じて弾性変形量(たわみ量)を変え、自動的に押圧力を調整する。これにより、
図6Bのように細い分岐血管73の場合には、第1電極104及び第2電極106の弾性変形量は小さく、押圧力は小さい。一方、
図6Cのように太い分岐血管73の場合には、第1電極104及び第2電極106の弾性変形量は大きく、押圧力は大きい。
【0091】
このように第1電極104及び第2電極106の押圧部110により分岐血管73を押圧状態としたら、第1電極104と第2電極106間に高周波電圧を印加することにより、押圧部110間の分岐血管73を焼灼する。これにより、分岐血管73が止血される。第2剥離デバイス14Bがさらに前進すると、
図12Bのように、分岐血管73は、切断部84によって切断される。
【0092】
この場合、スリット90内に導入された分岐血管73は、剥離部材18の内側から、透明性を有する剥離部本体78(本実施形態では、第1部材86)を通して、ベース部22の空洞28に挿入された撮像デバイス17(
図3参照)により観察(視認)することができる。従って、分岐血管73を観察しながら、分岐血管73の止血及び切断を簡単に行うことができる。
【0093】
なお、第1剥離デバイス12が生体内で前進する際に、サイド部24に接触することがなく、そのため導入部100によってスリット90へと誘導されなかった分岐血管73については、一対のサイド部24の間を通るため、止血部80による止血及び切断部84による切断は行われない。
【0094】
このように、サイド部24(処理デバイス)を備えた第1剥離デバイス12によれば、血管に沿って第1剥離デバイス12を生体内に挿入して前進させる際に、剥離部本体78によって生体内の組織を剥離するとともに、組織中に埋もれた分岐血管73を簡単に捕捉することができる。また、剥離部本体78を介してスリット90に導入された分岐血管73を、止血部80により押圧しながら焼灼するため、細い分岐血管73でも確実に止血を行うことができる。さらに、焼灼された分岐血管73を切断部84により切断するため、止血した分岐血管73を確実に切断することができる。
【0095】
止血部80の少なくとも一部は、第1内面86aと第2内面88aとの離間方向に変位可能に構成されているため、血管の太さに関わらず、スリット90に導入された血管を効果的に押圧することができる。特に、板バネの形態を有する止血部80は、スリット90内への血管の導入に伴って弾性変形するため、血管を適度な押圧力で押圧することができる。
【0096】
また、止血部80は、固定部108と、自由端側の押圧部110とを有するため、固定部108を支点として押圧部110が変位可能である。このため、押圧部110により血管を好適に押圧することができる。しかも、止血部80は、固定部108と押圧部110との間に、第1内面86a及び第2内面88aの一方側に向かって傾斜する傾斜部112を有するため、傾斜部112のガイド作用下に、押圧部110へと血管をスムーズに導入することができる。
【0097】
加えて、第1電極104と第2電極106は、サイド部24の前後方向に対して垂直な方向に離間して並設されているため、スリット90の延在方向と交差する方向に延在する状態でスリット90内に導入された分岐血管73に確実に通電し焼灼することができる。
【0098】
第1電極104と第2電極106は、第1内面86aと第2内面88aの同じ側に固定されているため、第1電極104と第2電極106とにより、第1電極104及び第2電極106が固定された内面に対向する内面に向けて、分岐血管73を好適に押圧することができる。
【0099】
切断部84は、止血部80に突出して設けられているため、止血部80により止血した分岐血管73を好適に切断することができる。また、切断部84は、止血部80に一体成形されているため、切断部84及び止血部80を構成する部品点数を低減することができる。
【0100】
剥離部本体78の先端部には、スリット90に連通し、基端方向に向かって狭くなる導入部100が設けられているため、分岐血管73をスリット90へとスムーズに誘導することができる
【0101】
スリット90は、剥離部本体78の厚さ方向に沿う第1スリット要素90aと、第1スリット要素90aと交差する第2スリット要素90bとを有する。このため、例えば、一方にスリット状細溝が形成された第1部材86と第2部材88とを重ね合わせて接合することで、分岐血管導入用の上記スリット90が形成された剥離部本体78を簡単に構築することができる。
【0102】
第1剥離デバイス12を必要長さだけ前進させたら、
図8に示した切開部71を介して、第1剥離デバイス12を生体内から抜去する。
【0103】
次に、切開部71によって露出させた血管72の下側(筋膜76側)の脂肪74を剥離する。この場合、手技者の手で、あるいは適宜のデバイスを使って、脂肪74を剥離する。次に、撮像デバイス17を挿入した第2剥離デバイス14を切開部71から挿入し、第2剥離デバイス14を血管72の下側に配置する。なお、第2剥離デバイス14は、その構成要素として予め撮像デバイス17を備えていてもよい。
【0104】
そして、生体内で第2剥離デバイス14を血管72に沿って、必要長さ(採取したい長さ)だけ押し進める。この際、第2剥離デバイス14は、
図13のように、剥離部材46の剥離部50によって血管72の下方の脂肪74を剥離しながら前進する。具体的には、剥離部50は、血管72の下方の脂肪74を剥離部材46の厚さ方向(剥離部材46と血管72との並び方向)に剥離する。これにより、血管72の全周を囲むように剥離箇所が形成される。すなわち、血管72の周囲の全周範囲において脂肪74を剥離することができる。
【0105】
また、第2剥離デバイス14が生体内で血管72に沿って前進する際、
図13のように、第2剥離デバイス14は、血管誘導路54によって分岐血管73を処理部60に案内するとともに、処理部60によって分岐血管73の止血及び切断を行う。具体的には、血管誘導路54の第1溝部56によって、血管72から下方に分岐する分岐血管73を引き寄せる。また、第2溝部58によって、分岐血管73を処理部60へと案内する。そして、処理部60へと案内された分岐血管73は、止血部62にて止血(焼灼)された後、切断部64によって切断される。
【0106】
第2剥離デバイス14を必要長さだけ前進させたら、切開部71を介して、第2剥離デバイス14を生体内から抜去する。
【0107】
以上により、血管72を周囲の脂肪74(組織)に覆われた状態で剥離する剥離ステップが完了する。
【0108】
次に切断ステップを行う。切断ステップでは、
図14Aのように、採取する血管72の長さ分だけ切開部71から離れた位置で皮膚70を切開して切開部79を形成し、その切開部79にて血管72を露出させる。そして、2つの切開部71、78を介して、血管72の採取部分の両端を結紮した後に、血管72を切断する。
【0109】
切断ステップが完了したら、次に、摘出ステップを行う。摘出ステップでは、
図14Bのように、切開部71又は切開部79を介して、脂肪74付きの血管72を生体外に取り出す。
【0110】
以上のような剥離ステップ、切断ステップ及び摘出ステップによって、脂肪74付きの血管72を生体から採取することができる。このようは方法では、スムーズ且つ低侵襲で血管72を採取することができる。加えて、血管72を切断せずに剥離ステップを行うことができるため、血管72になるべく長く血を通わせることができる。よって、虚血状態がより短く、損傷の少ない血管72を採取することできる。
【0111】
また、血管72は、脂肪74で覆われていることで、膨張や折れ曲がりによる血流の低下を抑えることができるとともに、内皮細胞、平滑筋、栄養血管(小血管網)等の損傷が低減され、血管壁の肥厚を抑えることができる。従って、脂肪74に覆われた血管72をバイパス管として用いることで、優れた長期開存率を発揮することができる。特に、採取した脂肪74付きの血管72には、血管壁や脂肪74に栄養血管が残存しているため、バイパス後も、バイパス管としての血管72に栄養が供給され、上記効果の向上が図られると考えられる。
【0112】
第1剥離デバイス12及び第2剥離デバイス14を使用する順序は、上記説明とは逆であってもよい。すなわち、先に第2剥離デバイス14を生体内に挿入して血管72に沿って押し進め、次に、第2剥離デバイス14を生体内から抜去し、次に、第1剥離デバイス12を生体内に挿入して血管72に沿って押し進めてもよい。
【0113】
2つ目の切開部79は、1つ目の切開部71と同時に形成してもよく、あるいは、1つめのデバイス(第1剥離デバイス12、第2剥離デバイス14の順で使う場合には、第1剥離デバイス12)を生体内に挿入した後(2つめの剥離デバイスを生体内に挿入するまでの間)に形成してもよい。
【0114】
剥離ステップでは、1つ目のデバイスを2つ目の切開部79から取り出してもよい。また、2つ目のデバイス(第1剥離デバイス12、第2剥離デバイス14の順で使う場合には、第2剥離デバイス14)を2つ目の切開部79から挿入してもよい。
【0115】
上述した剥離部材18において、サイド部24に代えて、
図15〜
図16Bに示す変形例に係るサイド部120が採用されてもよい。このサイド部120において、切断部84は、止血部80ではなく、剥離部本体78(具体的には、第2内面88a)に固定されている。すなわち、切断部84と止血部80は、別々の部品として構成されている。この構成において、切断部84は、1つのカッタ片85からなり、互いに平行に離間して並ぶ第1電極104及び第2電極106の押圧部110間に配置されている。
【0116】
切断部84は、スリット90内において押圧部110よりも基端側に配置されていてもよい。切断部84は、第1内面86aに固定されていてもよく、あるいは、第1内面86aと第2内面88aの両方に固定されていてもよい。
【0117】
上述したサイド部24、120は、ベース部22を有する剥離部材18の一部として構成されているが、サイド部24は、組織を剥離するとともに分岐血管73を止血及び切断できる構成を有するため、ベース部22から分離した形態の処理デバイスとして構成されてもよい。この場合、剥離部本体78の基端部に把持部16が接続されるとよい。このような処理デバイスを複数回、生体内に挿入して前進させ、血管の周囲方向の異なる領域を順次剥離することにより、血管の周囲の全周範囲において脂肪74を剥離することができる。
【0118】
上述した剥離部材18において、サイド部24に代えて、
図17〜
図20に示すサイド部122が採用されてもよい。なお、理解の容易のため、
図17及び
図20では、第1部材86の一部を仮想線で描いている。
【0119】
図17及び
図18において、サイド部122は、スリット90に導入された分岐血管73を処理する処理機構として、止血部80及び切断部84に加え、さらに押圧部材124を備える。この押圧部材124は、スリット90に変位可能に配置されており、変位に伴って、止血部80が分岐血管73を押圧する方向に止血部80を押圧するように構成されている。
【0120】
具体的に、図示例のサイド部122では、押圧部材124は、サイド部24の軸方向(剥離部材18の軸方向)に沿って変位可能であり、軸方向への変位に伴って、止血部80(第1電極104及び第2電極106の押圧部110)を第1内面86a側に押圧する。押圧部材124は、第1電極104及び第2電極106との接触時にこれらの電極間を短絡しないように、絶縁材料からなる。押圧部材124の先端部の第1内面86a側には、押圧部材124の可動方向に対して傾斜したテーパ面125が形成されている。
【0121】
押圧部材124には、ガイド突起126が設けられている。ガイド突起126は、第2部材側(押圧部材124が止血部80を押圧する方向と反対側)に押圧部材124から突出している。第2部材88の第2内面88aにはサイド部122の軸方向に沿って延在するガイド溝128が形成されている。ガイド突起126は、ガイド溝128に摺動可能に挿入されている。これにより、押圧部材124は、ガイド突起126とガイド溝128とによるガイド作用下に、スリット90内で軸方向に変位可能である。
【0122】
押圧部材124には、押圧部材124を軸方向に移動させるための駆動部材132が接続されている。駆動部材132は、剥離デバイス12の手元側(把持部16の基端部)にて図示しない操作部材に接続されている。ユーザは、操作部材を操作することにより、駆動部材132に接続された押圧部材124を軸方向に移動させることができる。
【0123】
また、押圧部材124には、切断部84(カッタ)が設けられている。切断部84は、第1部材86側(押圧部材124が止血部80を押圧する方向)に押圧部材124から突出している。第1部材86の第1内面86aにはサイド部122の軸方向に沿って延在する溝部130が形成されている。切断部84の一部(切断部84の押圧部材124からの突出側の端部)は溝部130に挿入されている。切断部84の他の部分(切断部84における押圧部材124と第1内面86aとの間の部分)は、スリット90内に露出している。
【0124】
上記のように構成されたサイド部122を備えた第1剥離デバイス12が生体内で血管72に沿って前進する際、第1剥離デバイス12は、血管72から分岐した分岐血管73を導入部100によってスリット90へと案内するとともに、スリット90に設けられた止血部80、切断部84及び押圧部材124によって、分岐血管73の止血及び切断を行う。
【0125】
具体的には、まず、
図19Aのように、生体内でのサイド部122の前進に伴って分岐血管73がスリット90内へと導入される。そして、サイド部122がさらに前進すると、
図19Bのように、分岐血管73は、第1電極104及び第2電極106の押圧部110へと到達する。押圧部110に到達した分岐血管73は、板バネの形態を有する押圧部110によって、2つの押圧部110の押圧面と対向する壁面(本実施形態は、第1内面86a)に押圧される。これにより、分岐血管73は、2つの押圧部110と第1内面86aとの間に挟まれて径方向に潰される。
【0126】
次に、ユーザは、
図19Cのように駆動部材132を介して押圧部材124を先端方向に移動させる。押圧部材124は、先端方向への移動に伴って、切断部84(第1電極104及び第2電極106)を第1内面86a側に向かって押圧する。これにより、切断部84と第1内面86aとの間に挟まれた分岐血管73はさらに径方向に潰される。この結果、分岐血管73は十分に潰された状態になる。
【0127】
そして、第1電極104と第2電極106間に高周波電圧を印加することにより、押圧部110間の分岐血管73を焼灼する。これにより、分岐血管73が止血される。次に、
図20のように、ユーザは、押圧部材124をさらに先端方向に前進させることにより、焼灼された分岐血管73を切断部84により切断する。すなわち、切断部84は押圧部材124に設けられているため、押圧部材124の先端方向への移動に伴って切断も先端方向に移動する。この際、切断部84は、第1電極104と第2電極106との間に入り込み、焼灼された分岐血管73を切断する。このように分岐血管73を切断したら、押圧部材124を基端方向に移動(後退)させ、押圧部材124を元の位置に復帰させる。なお、分岐血管73を焼灼しながら、切断部84で分岐血管73を切断してもよい。
【0128】
上記のように構成されたサイド部122(処理デバイス)によれば、分岐血管73を押圧した状態の止血部80を押圧部材124が押圧することで、分岐血管73を径方向に十分に潰すことができる。そして、十分に潰した分岐血管73を焼灼することで、分岐血管73を確実に止血することができる。
【0129】
また、サイド部122において、切断部84は、押圧部材124に設けられ、押圧部材124の変位時に押圧部材124と一緒に変位する。この構成により、押圧部材124と切断部84を個別の操作で変位させる必要がなく、押圧部材124による止血部80の押圧と、切断部84による分岐血管73の切断とを、一連の操作で簡単に行うことができる。
【0130】
上述した剥離部材18において、サイド部24に代えて、
図21及び
図22に示すサイド部140が採用されてもよい。なお、理解の容易のため、
図21では、第1部材86の一部を仮想線で描いている。
【0131】
上述したサイド部122と同様に、サイド部140は、スリット90に導入された分岐血管73を処理する処理機構として、止血部142及び切断部84に加え、さらに押圧部材124を備える。このサイド部140において、止血部142は、第1バイポーラ電極部144と第2バイポーラ電極部146とを有する。第1バイポーラ電極部144と第2バイポーラ電極部146とは、サイド部140の軸方向に対し垂直方向(
図21で上下方向)に離間して配置されている。
【0132】
第1バイポーラ電極部144と第2バイポーラ電極部146の各々は、スリット90内で少なくとも一部が弾性変形して変位可能なバネ電極148と、バネ電極148に対向して配置された対向電極150とを有する。バネ電極148は、上述した第1電極104及び第2電極106と同様に構成されており、図示例では第2部材88に固定されている。対向電極150は、バネ電極148の対極を構成する電極であり、図示例では、第1部材86に固定されている。なお、対向電極150は、溝部130(
図22参照)と異なる位置に配置されている。
【0133】
上記のように構成されたサイド部140を備えた第1剥離デバイス12が生体内で血管72に沿って前進する際、分岐血管73はスリット90内に導入される。サイド部140がさらに前進すると、分岐血管73は、第1バイポーラ電極部144と第2バイポーラ電極部146の各々において、バネ電極148と対向電極150との間に挟まれて径方向に潰される。そして、ユーザが押圧部材124を先端方向に移動させると、押圧部材124は第1バイポーラ電極部144と第2バイポーラ電極部146のバネ電極148を分岐血管73側に押圧する。これにより、分岐血管73はさらに径方向に潰される。そして、第1バイポーラ電極部144と第2バイポーラ電極部146の各々において、バネ電極148と対向電極150との間に高周波電圧を印加することにより、バネ電極148と対向電極150との間に挟まれた分岐血管73を焼灼する。これにより、分岐血管73が止血される。その後の動作は上述したサイド部122と同様である。
【0134】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。