特許第6606054号(P6606054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606054
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】工作機械の運動誤差同定方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20191031BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G05B19/404 G
   B23Q17/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-249163(P2016-249163)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-106235(P2018-106235A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】井戸 悠
(72)【発明者】
【氏名】下池 昌広
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/101788(WO,A1)
【文献】 特開平8−152909(JP,A)
【文献】 特開昭61−209857(JP,A)
【文献】 特開2008−269316(JP,A)
【文献】 特開2015−69355(JP,A)
【文献】 米国特許第5678964(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持する主軸及びワークが取り付けられるテーブルを備えるとともに、該主軸の軸線に沿った方向のZ軸、並びに該Z軸に直交し且つ相互に直交するX軸及びY軸の各基準軸に対応したZ軸送り機構、X軸送り機構及びZ軸送り機構を備え、これらX軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構によって前記主軸とテーブルとを3次元空間内で相対的に移動させるように構成された工作機械において、前記3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差を同定する方法であって、
前記X軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構に対してそれぞれ設定された機械原点X、Y、Zを基準とする機械座標系の3次元空間内で、それぞれX軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構を動作させて、該機械座標系における任意の座標位置を基準に、
前記X軸方向の位置決め誤差、
前記Y軸方向の位置決め誤差、
前記Z軸方向の位置決め誤差、
前記X軸、Y軸及びZ軸における真直誤差、
前記X軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Y軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Z軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記X軸,Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差、
をそれぞれ測定し、
測定された実測誤差データを基に、前記機械座標系において予め設定された基準位置X,Y,Zを原点とした設定座標系の3次元空間内における、
前記X軸送り機構のX軸方向の位置決め誤差、
前記Y軸送り機構のY軸方向の位置決め誤差、
前記Z軸送り機構のZ軸方向の位置決め誤差、
前記X軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構の真直誤差、
前記X軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Y軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Z軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記X軸,Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差、
をそれぞれ導出し、
導出された各誤差データを基に、前記設定座標系の3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差を導出するようにしたことを特徴とする工作機械の運動誤差同定方法。
【請求項2】
前記X軸,Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差は、ダブルボールバーを用いて測定されることを特徴とする請求項1記載の工作機械の運動誤差同定方法。
【請求項3】
導出される前記誤差データは、前記主軸の前端部における主軸中心位置に関するものである請求項1又は2記載の工作機械の運動誤差同定方法。
【請求項4】
前記設定座標系の3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差は、前記主軸に装着される工具刃先に関するものである請求項1乃至3記載のいずれかの工作機械の運動誤差同定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を保持する主軸と、ワークが取り付けられるテーブルとを、X軸、Y軸及びZ軸の直交3軸方向に相対的に移動させるように構成された工作機械において、前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の運動誤差要因として、X軸、Y軸及びZ軸の各送り軸(即ち、X軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構)における位置決め誤差、各送り軸の真直度などが考慮されており、このような運動誤差を補償する数値制御装置として、特開平8−152909号公報(下記特許文献1)に開示される数値制御装置が提案されている。
【0003】
この数値制御装置は、特許文献1に開示されるように、座標系を各座標軸方向に一定間隔の格子状領域に分割し、この格子状領域の格子点において予め測定された格子点補正ベクトルを格納する格子点補正ベクトル記憶手段と、移動指令に応じて各送り軸の補間パルスを出力する補間手段と、補間パルスを加算して各送り軸における現在位置を認識する現在位置認識手段と、現在位置における現在位置補正ベクトルを格子点補正ベクトルに基づいて算出する現在位置補正ベクトル算出手段と、現在位置補正ベクトルを、補間前の旧現在位置における始点位置補正ベクトルと比較し、変化量を補正パルスとして出力する補正パルス出力手段と、補正パルスを補間パルスに加算する加算手段とを備えている。
【0004】
そして、この数値制御装置によれば、補間パルスが出力されるごとに、現在位置における3次元補正ベクトルを求め、これを補正パルスとして補間パルスに加算するようにしているので、機械系に起因した3次元空間上の位置誤差を、一つの補間形の誤差補正機能で補正することができる。
【0005】
尚、上記格子状領域の各格子点における格子点補正ベクトルは、前記各送り軸についてこれらを一定間隔で位置決め制御したときの、主軸の軸線上に適宜設定された基準点の3次元空間内における位置決め誤差を測定することによって得られる。また、測定は、一般的には、レーザ干渉計、レーザ測長器やオートコリメータなどを用いて行われる。また、前記基準点は、一般的には、例えば、主軸の軸線と主軸前端面とが交差する位置や、主軸軸線において主軸前端面から所定距離だけ前方の位置に設定され、測定方法によって適宜決定される。
【0006】
ところで、近年では、工作機械の3次元空間内における運動誤差(位置決め誤差)は、図4に示すように、各送り軸の並進運動の誤差、各送り軸の角度誤差、及び各送り軸相互間の直角度に関する誤差が相互に影響し合った状態で発現されるものと考えられている。したがって、このような各誤差を求めることによって、正確な前記運動誤差を同定することができる。尚、図4に示した各誤差の定義は以下の通りである。
XXは、X軸送り機構のX軸方向における位置決め誤差、
YYは、Y軸送り機構のY軸方向における位置決め誤差、
ZZは、Z軸送り機構のZ軸方向における位置決め誤差、
YXは、X軸送り機構のX軸−Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
ZXは、X軸送り機構のX軸−Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
XYは、Y軸送り機構のY軸−X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
ZYは、Y軸送り機構のY軸−Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
XZは、Z軸送り機構のZ軸−X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
YZは、Z軸送り機構のZ軸−Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
AXは、X軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
AYは、Y軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
AZは、Z軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
BXは、X軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
BYは、Y軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
BZは、Z軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
CXは、X軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
CYは、Y軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
CZは、Z軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
Zは、Z軸送り機構と理想のZ軸とのX軸回りの角度誤差、
Zは、Z軸送り機構と理想のZ軸とのY軸回りの角度誤差、
Yは、Y軸送り機構と理想のY軸とのZ軸回りの角度誤差である。
尚、この他の誤差要因として、Y軸送り機構と理想のY軸とのX軸回りの角度誤差であるAY、X軸送り機構と理想のX軸とのY軸回りの角度誤差であるBX、X軸送り機構と理想のX軸とのZ軸回りの角度誤差であるCXが考えられる。
【0007】
そして、従来、このような誤差を測定する測定方法として、図5に示すような測定装置を用いた測定方法が提案されている。尚、図5に示した一例としての工作機械50は、上面がワーク載置面(所謂テーブル)となったベッド51と、門形をしたフレーム52と、サドル53とから構成される。フレーム52は、その水平部がベッド51の上方に位置するように配設されるとともに、その2つ垂直部がそれぞれベッド51の側部に係合して、全体としてY軸方向に移動可能になっている。また、サドル53は、フレーム52の水平部に係合し、この水平部に沿ってX軸方向に移動可能となっており、このサドル53には、主軸54がZ軸方向に移動可能に、且つ、Z軸と平行な軸線を中心に回転可能に保持されている。前記X軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する基準軸であり、この基準軸に対応した各送り軸がX軸送り機構(図示せず)、Y軸送り機構(図示せず)及びZ軸送り機構(図示せず)によって構成されている。
【0008】
上記各誤差は、ベッド51上に設置されたレーザ測長器101及び主軸54に装着されたミラー102を用いて測定される。具体的には、まず、レーザ測長器101を、所定位置、例えば、図5において実線で示す位置に設置し、ミラー102を主軸54に装着した後、前記X軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構をそれぞれ一定間隔毎に位置決め制御することにより、3次元空間内を前記一定間隔で格子状に分割した各格子点に前記ミラー102を位置決めし、各格子点において、レーザ測長器101からミラー102にレーザ光を照射するとともに、その反射光をレーザ測長器101に受光することによって、当該レーザ測長器101によりミラー102との間の距離を測長する。
【0009】
ついで、レーザ測長器101の設置位置を上記とは異なる他の3点の位置(例えば、図5において破線で示した位置)に順次移動させながら、また、ミラー102の高さ方向の位置についても、少なくとも1ヶ所のレーザ測長器101に対して、上記の位置とは異なる位置に設置して、上記と同様にして、3次元空間内の各格子点に前記ミラー102を位置決めしながら、各格子点において、レーザ測長器101によりミラー102との間の距離を測長する。
【0010】
そして、以上のようにして得られた測定データを基に、3辺測量法の原理に従って、3次元空間内の前記各格子点におけるミラー102の位置を算出し、算出された位置データ及び当該位置データを解析することによって、上記各誤差が算出される。
【0011】
ところが、このようなレーザ測長器101を用いた測定方法では、レーザ測長器101そのものが高価であるという問題の他、レーザ測長器101を4カ所に設置し、その各位置においてミラー102を3次元空間内の各格子点に位置決めしながら測定する必要があるため、測定に長時間を要し、また、その作業が煩雑で面倒であるという問題があった。
【0012】
その一方、前記各送り軸の並進運動誤差及び各送り軸の角度誤差については、JIS B 6190−2、JIS B 6336−1、及びJIS B 6336−2等に規定される通り、既に確立された測定方法に従って測定することができる。また、X軸、Y軸及びZ軸相互間の直角度についての誤差であるAZ、BZ、CY等についても、下記非特許文献1に開示されるようなダブルボールバーを用いた測定方法が提案されている。
【0013】
したがって、上述したレーザ測長器101及びミラー102を用いた測定法に依るまでもなく、これらの方法を用いることによって、上記誤差を測定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−152909号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】垣野義明、井原之敏、中津義夫著 「NC工作機械の運動精度に関する研究(第2報)」 精密工学会誌 52/10/1986 第73頁〜第79頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上述した3次元空間内における前記主軸(具体的には前記基準点)の運動誤差は、最終的にはこれを補正する必要があるため、制御上の理由から、一般的には、所謂機械原点を基準とした機械座標系の3次元空間内における運動誤差を同定する必要がある。
【0017】
ところが、前記ダブルボールバーを用いて、前記X軸、Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差を測定する場合、機械原点を基準とした誤差を測定することができないという問題があった。即ち、前記ダブルボールバーを用いて、機械原点を基準とした直角度誤差を測定するには、ダブルボールバーが装着された状態の主軸を、機械原点を中心に、バーの長さを旋回半径として旋回移動させる必要があるが、各送り軸は機械原点を越えてマイナス方向に移動させることはできないため、このような旋回動作を行うことができないのである。
【0018】
そして、上述した誤差EXX、EYY、EZZ、EYX、EZX、EXY、EZY、EXZ、EYZ、EAX、EAY、EAZ、EBX、EBY、EBZ、ECX、ECY、ECZは、理論的には、直角度誤差AZ、BZ、CY等の影響を受けると考えられるため、これらの誤差についても、機械原点を基準にした誤差を同定することができないものと考えられる。
【0019】
このように、JISに規定される測定方法、及び非特許文献1に開示される方法では、これらの測定値を用いて、直ちに、機械座標系の3次元空間内における運動誤差を同定することができない。しかしながら、このような測定方法によって測定された測定値を用いて、機械座標系の3次元空間内における運動誤差を同定することができれば、図5に示すような高価なレーザ測長器101を用いる必要が無いため費用的な面でのメリットがあり、また、機械座標系の3次元空間内に設定される各格子点における位置誤差を測定する必要がないため、レーザ測長器101を用いた測定作業に比べて、その作業を容易に行うことができるというメリットがある。
【0020】
また、JISに規定される測定方法及び非特許文献1に開示される方法によって測定された測定値を用いて、任意の基準位置を原点とした座標系の3次元空間内における運動誤差を同定することができれば、データ利用の自由度が増して便利である。
【0021】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、従来の一般的な測定方法により測定された誤差データを用いて、工作機械の任意の位置を原点とした座標系における、当該工作機械の運動誤差を同定する方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するための本発明は、
工具を保持する主軸及びワークが取り付けられるテーブルを備えるとともに、該主軸の軸線に沿った方向のZ軸、並びに該Z軸に直交し且つ相互に直交するX軸及びY軸の各基準軸に対応したZ軸送り機構、X軸送り機構及びZ軸送り機構を備え、これらX軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構によって前記主軸とテーブルとを3次元空間内で相対的に移動させるように構成された工作機械において、前記3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差を同定する方法であって、
前記X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構に対してそれぞれ設定された機械原点X,Y,Zを基準とする機械座標系の3次元空間内で、それぞれX軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構を動作させて、該機械座標系における任意の座標位置を基準に、
前記X軸方向の位置決め誤差、
前記Y軸方向の位置決め誤差、
前記Z軸方向の位置決め誤差、
前記X軸、Y軸及びZ軸における真直誤差、
前記X軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Y軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Z軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記X軸,Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差、
をそれぞれ測定し、
測定された実測誤差データを基に、前記機械座標系において予め設定された基準位置X,Y,Zを原点とした設定座標系の3次元空間内における、
前記X軸送り機構のX軸方向の位置決め誤差、
前記Y軸送り機構のY軸方向の位置決め誤差、
前記Z軸送り機構のZ軸方向の位置決め誤差、
前記X軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構の真直誤差、
前記X軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Y軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記Z軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、
前記X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構相互間の直角度誤差、
をそれぞれ導出し、
導出された各誤差データを基に、前記設定座標系の3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差を導出するようにした工作機械の運動誤差同定方法に係る。
【0023】
本発明によれば、前記X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構に対してそれぞれ設定された機械原点X、Y、Zを基準とする機械座標系の3次元空間内で、それぞれX軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構を動作させて、該機械座標系における任意の座標位置を基準に、前記X軸方向の位置決め誤差、前記Y軸方向の位置決め誤差、前記Z軸方向の位置決め誤差、前記X軸,Y軸及びZ軸における真直誤差、前記X軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、前記Y軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、前記Z軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、前記X軸,Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差が測定される。
【0024】
前記X軸方向の位置決め誤差、前記Y軸方向の位置決め誤差、前記Z軸方向の位置決め誤差、前記X軸,Y軸及びZ軸における真直誤差、前記X軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、前記Y軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、及び前記Z軸におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差は、例えば、JIS B 6190−2、JIS B 6336−1、JIS B 6336−2等の規定に準拠して測定することができる。また、前記X軸,Y軸及びZ軸相互間の直角度誤差は、例えば、前記非特許文献1に開示されるダブルボールバー法によって測定することができる。
【0025】
そして、測定された実測誤差データを基に、前記機械座標系において予め設定された基準位置X,Y,Zを原点とした設定座標系の3次元空間内における、前記X軸送り機構のX軸方向の位置決め誤差、前記Y軸送り機構のY軸方向の位置決め誤差、前記Z軸送り機構のZ軸方向の位置決め誤差、前記X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構の真直誤差、前記X軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、前記Y軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、前記Z軸送り機構におけるX軸,Y軸及びZ軸まわりの各角度誤差、X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構相互間の直角度誤差をそれぞれ導出する。
【0026】
ついで、導出された各誤差データを基に、前記設定座標系の3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差、即ち、主軸のテーブルに対する位置決め誤差を導出する。
【0027】
このように、本発明によれば、既存の一般的な測定方法によって測定された実測誤差データを基に、前記機械座標系において予め設定された基準位置X,Y,Zを原点とした設定座標系の3次元空間内における、前記X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構に係る各誤差データが導出され、導出された誤差データを基に、前記設定座標系の3次元空間内における工作機械の運動誤差が導出される。尚、前記基準位置X,Y,Zは、これを任意の位置に設定することができ、例えば、機械原点X、Y、Zに設定することもできる。
【0028】
斯くして、本発明によれば、上述した高価なレーザ測長器を用いることなく、また、これを用いた測定作業に比べて、その作業が簡単な既存の一般的な測定方法によって測定された実測誤差データを基に、機械座標系の3次元空間内における工作機械の運動誤差を同定することができる。したがって、かかる運動誤差の同定を廉価に、しかも簡単な作業で行うことができる。
【0029】
また、前記基準位置X,Y,Zを任意の位置に設定した設定座標系における運動誤差を同定するようにすれば、当該誤差データの利用の自由度を高めることができる。
【0030】
尚、導出される前記誤差データは、前記主軸の前端部における主軸中心位置に関するものとすることができる。このようにすれば、誤差を実測する際の測定器の突き出し等の変動要素をキャンセルすることができる。
【0031】
また、前記設定座標系の3次元空間内における前記主軸とテーブルとの相対的な運動誤差は、前記主軸に装着される工具の刃先に関するものであることができる。このようにすれば、得られた運動誤差量を用いて、その補正を行う際に、当該工具を用いた実際の加工に即した適正な補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、機械座標系の3次元空間内における工作機械の運動誤差を、上述した高価なレーザ測長器を用いることなく、また、これを用いた測定作業に比べてその作業が簡単な、既存の一般的な測定方法により測定された実測誤差データを基に同定することができ、かかる運動誤差の同定を廉価に、しかも簡単な作業で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係る運動誤差同定方法を説明するための説明図である。
図2】本実施形態に係る運動誤差同定方法を説明するための説明図である。
図3】ダブルボールバー用いて、X−Y平面内におけるX軸送り機構とY軸送り機構との直角度を測定した結果を示す説明図である。
図4】運動誤差を生じさせる誤差パラメータを示した説明図である。
図5】運動誤差を同定する従来の方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
本例では、図1及び図2に示す横形のマシニングセンタ1の運動誤差を同定する方法について説明する。尚、このマシニングセンタ1は、平面視T字形状をしたベッド2と、このベッド2上にX軸方向に移動可能に設けられたコラム3と、コラム3にY軸方向に移動可能に保持された主軸頭4と、主軸頭4に回転自在に支持された主軸5と、ベッド2上にZ軸に沿って移動可能に設けられたテーブル6とを備える。
【0036】
そして、X軸送り機構(図示せず)によってコラム3がX軸方向に移動し、Y軸送り機構(図示せず)によって主軸頭4がY軸方向に移動し、Z軸送り機構(図示せず)によってテーブル6がZ軸方向に移動する。斯くして、これらX軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構によって、主軸5とテーブル6とがX軸,Y軸及びZ軸の直交3軸で形成される3次元空間内で相対的に移動する。
【0037】
1.運動誤差算出式
上記構造のマシニングセンタ1に関し、機械座標系の3次元空間内における、前記主軸5の前端中心位置(基準点)の運動誤差(位置決め誤差)は、以下の算出式によって算出できることが知られている。尚、α,β,γは、それぞれX,Y,Z座標の指令値であり、E(α,β,γ)はX軸方向の位置決め誤差、E(α,β,γ)はY軸方向の位置決め誤差、E(α,β,γ)はZ軸方向の位置決め誤差である。
(数式1)
(α,β,γ)=EXX(α)+EXY(β)+EXZ(γ)−(ECX(α)+ECZ(γ)+CY)×β
(数式2)
(α,β,γ)=EYX(α)+EYY(β)+EYZ(γ)+ECZ(γ)×α
(数式3)
(α,β,γ)=EZX(α)+EZY(β)+EZZ(γ)+(EAX(α)+EAZ(γ)+AY)×β−(EBZ(γ)+BX)×α
但し、上記各誤差パラメータは、それぞれ以下の通り定義される。
XXは、X軸送り機構のX軸方向の位置決め誤差、
YYは、Y軸送り機構のY軸方向の位置決め誤差、
ZZは、Z軸送り機構のZ軸方向の位置決め誤差、
YXは、X軸送り機構のX軸−Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
ZXは、X軸送り機構のX軸−Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
XYは、Y軸送り機構のY軸−X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
ZYは、Y軸送り機構のY軸−Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
XZは、Z軸送り機構のZ軸−X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
YZは、Z軸送り機構のZ軸−Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
AXは、X軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
AYは、Y軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
AZは、Z軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
BXは、X軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
BYは、Y軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
BZは、Z軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
CXは、X軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
CYは、Y軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
CZは、Z軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
Yは、Y軸送り機構と理想Y軸とのX軸まわりの角度誤差、
Xは、X軸送り機構と理想X軸とのY軸まわりの角度誤差、
Yは、Y軸送り機構と理想Y軸とのZ軸まわりの角度誤差である。
【0038】
尚、上記以外の誤差パラメータとして、以下のものが考えられる。即ち、
Z軸送り機構と理想Z軸とのX軸まわりの角度誤差であるAZ、
Z軸送り機構と理想Z軸とのY軸まわりの角度誤差であるBZ、
X軸送り機構と理想X軸とのZ軸まわりの角度誤差であるCX。
【0039】
また、主軸5に装着された工具の位置決め誤差は、以下の算出式によって算出することができる。但し、主軸5の前端中心位置(基準点)を基準にした工具刃先のX軸方向の偏位をT、Y軸方向の偏位をT、Z軸方向の偏位をTとする。
(数式4)
(α,β,γ,TX,TY,TZ)=EXX(α)+EXY(β)+EXZ(γ)−(ECX(α)+ECZ(γ)+CY)×β+(EBX(α)+EBY(β)+EBZ(γ))×T−(ECX(α)+ECY(β)+ECZ(γ))×T
(数式5)
(α,β,γ,TX,TY,TZ)=EYX(α)+EYY(β)+EYZ(γ)+ECZ(γ)×α+(ECX(α)+ECY(β)+ECZ(γ))×T−(EAX(α)+EAY(β)+EAZ(γ))×T
(数式6)
(α,β,γ,TX,TY,TZ)=EZX(α)+EZY(β)+EZZ(γ)+(EAX(α)+EAZ(γ)+AY)×β−(EBZ(γ)+BX)×α+(EAX(α)+EAY(β)+EAZ(γ))×T−(EBX(α)+EBY(β)+EBZ(γ))×T
【0040】
そして、機械座標系における任意の位置であるX,Y,Zを原点とした設定座標系における上記位置決め誤差は、それぞれ以下の数式によって算出することができる。
(数式7)
(α,β,γ)=EXX(α)+EXY(β)+EXZ(γ)−(ECX(α)+ECZ(γ)+CY)×(β−Y)
(数式8)
(α,β,γ)=EYX(α)+EYY(β)+EYZ(γ)+(ECZ(γ)×(α−X)
(数式9)
(α,β,γ)=EZX(α)+EZY(β)+EZZ(γ)+(EAX(α)+EAZ(γ)+AY)×(β−Y)−(EBZ(γ)+BX)×(α−X)
(数式10)
(α,β,γ,TX,TY,TZ)=EXX(α)+EXY(β)+EXZ(γ)−(ECX(α)+ECZ(γ)+CY)×(β−Y)+(EBX(α)+EBY(β)+EBZ(γ))×T−(ECX(α)+ECY(β)+ECZ(γ))×T
(数式11)
(α,β,γ,TX,TY,TZ)=EYX(α)+EYY(β)+EYZ(γ)+ECZ(γ)×(α−X)+(ECX(α)+ECY(β)+ECZ(γ))×T−(EAX(α)+EAY(β)+EAZ(γ))×T
(数式12)
(α,β,γ,TX,TY,TZ)=EZX(α)+EZY(β)+EZZ(γ)+(EAX(α)+EAZ(γ)+AY)×(β−Y)−(EBZ(γ)+BX)×(α−X)+(EAX(α)+EAY(β)+EAZ(γ))×T−(EBX(α)+EBY(β)+EBZ(γ))×T
【0041】
2.運動誤差の測定
まず、本例では、JIS B 6190−2、JIS B 6336−1に準拠し、以下の項目について誤差を測定する。尚、以下において、位置を表すときのX,Y,Zは、機械座標系における主軸5の前端中心(基準点)の位置を表しており、それぞれX軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構における機械原点からの前記基準点の位置を表す。
【0042】
[X軸について]
前記X軸送り機構(図示せず)を駆動し、所定ピッチ間隔でX,X・・・Xの指令位置に前記基準点を移動させながら、以下のI〜Iの測定項目について各誤差MI1(X)〜MI6(X)を測定する。但し、kは1〜nの整数である。また、各項目について測定する際の前記Y軸送り機構(図示せず)及びZ軸送り機構(図示せず)における指令位置は任意の位置YIm、ZImである。mは測定項目の添え字に対応する。
:X軸位置決め誤差MI1(X)を測定(JIS B 6190−2)
:X軸真直度誤差MI2(X)を測定(Y軸方向)(JIS B 6336−1)
:X軸真直度誤差MI3(X)を測定(Z軸方向)(JIS B 6336−1)
:X軸角度誤差MI4(X)を測定(X軸まわり)(JIS B 6336−1)
:X軸角度誤差MI5(X)を測定(Y軸まわり)(JIS B 6336−1)
:X軸角度誤差MI6(X)を測定(Z軸まわり)(JIS B 6336−1)
【0043】
[Y軸について]
前記Y軸送り機構(図示せず)を駆動し、所定ピッチ間隔でY,Y・・・Yの指令位置に前記基準点を移動させながら、以下のI〜I12の測定項目について各誤差MI7(Y)〜MI12(Y)を測定する。但し、kは1〜nの整数である。また、各項目について測定する際の前記X軸送り機構(図示せず)及びZ軸送り機構(図示せず)における指令位置は任意の位置XIm、ZImである。mは測定項目の添え字に対応する。
:Y軸位置決め誤差MI7(Y)を測定(JIS B 6190−2)
:Y軸真直度誤差MI8(Y)を測定(X軸方向)(JIS B 6336−1)
:Y軸真直度誤差MI9(Y)を測定(Z軸方向)(JIS B 6336−1)
10:Y軸角度誤差MI10(Y)を測定(X軸まわり)(JIS B 6336−1)
11:Y軸角度誤差MI11(Y)を測定(Y軸まわり)(JIS B 6336−1)
12:Y軸角度誤差MI12(Y)を測定(Z軸まわり)(JIS B 6336−1)
【0044】
[Z軸について]
前記Z軸送り機構(図示せず)を駆動し、所定ピッチ間隔でZ,Z・・・Zの指令位置に前記基準点を移動させながら、以下のI13〜I18の測定項目について各誤差MI13(Z)〜MI18(Z)を測定する。但し、kは1〜nの整数である。また、各項目について測定する際の前記X軸送り機構(図示せず)及びY軸送り機構(図示せず)における指令位置は任意の位置XIm、YImである。mは測定項目の添え字に対応する。
13:Z軸位置決め誤差MI13(Z)を測定(JIS B 6190−2)
14:Z軸真直度誤差MI14(Z)を測定(X軸方向)(JIS B 6336−1)
15:Z軸真直度誤差MI15(Z)を測定(Y軸方向)(JIS B 6336−1)
16:Z軸角度誤差MI16(Z)を測定(X軸まわり)(JIS B 6336−1)
17:Z軸角度誤差MI17(Z)を測定(Y軸まわり)(JIS B 6336−1)
18:Z軸角度誤差MI18(Z)を測定(Z軸まわり)(JIS B 6336−1)
【0045】
[直角度について]
上記非特許文献1に従い、ダブルボールバーを用い、テーブル側のボールの中心位置を任意の位置X,Y,Zに設定して、主軸5の前記基準点を、X−Y平面、X−Z平面及びY−Z平面内で、それぞれバーの長さを回転半径として円弧移動させ、当該バーの伸縮量からバーの長さMAij(Y−Z平面)、MBij(X−Z平面)及びMCij(X−Y平面)を測定する。MAijは、主軸5の基準点を、Xを定位置とするY−Z平面内において円弧移動させたときの、位置YAij,ZAijにおけるバーの長さであり、MBijは、主軸5の基準点を、Yを定位置とするX−Z平面内において円弧移動させたときの、位置XBij,ZBijにおけるバーの長さであり、MCijは、主軸5の基準点を、Zを定位置とするX−Y平面内において円弧移動させたときの、位置XCij,YCijにおけるバーの長さである。但し、iは1〜gの整数であり、直角度の測定回数を意味する。jは1〜hの整数であり、主軸5の位置のサンプリング個数を意味する。
【0046】
ダブルボールバーを用いて、X−Y平面内におけるX軸送り機構とY軸送り機構との直角度を測定した測定データ(バーの伸縮量)の一例を図3に示す。図3において、実線による線図が2つ示されているが、一方が主軸5の基準点を正転させた場合で、他方が逆転させた場合を示している。また、太い一点鎖線の円は基準円を示しており、細い一点鎖線の円は目盛りを表している。
【0047】
そして、得られた測定値MAij,MBij,MCijを基に、非特許文献1に従い、テーブル側のボールの中心位置がX,Y,ZにあるときのX軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構についての直角度PAi,PBi,PCi,及び直角度誤差A,B,Cを算出する。
但し、PAiは、Y軸送り機構と理想Z軸との直角度、
Biは、X軸送り機構と理想Z軸との直角度、
Ciは、Y軸送り機構と理想X軸との直角度、
は、Y軸送り機構と理想Y軸とのX軸まわりの角度誤差、
は、X軸送り機構と理想X軸とのY軸まわりの角度誤差、
は、Y軸送り機構と理想Y軸とのZ軸まわりの角度誤差である。
【0048】
尚、直角度PAi,PBi,PCiは、それぞれ測定値MAij,MBij,MCijの関数として表され、jが1〜hであるときの、測定値MAijの総データをMAiとし、測定値MBijの総データをMBiとし、測定値MCijの総データをMCiとすると、
(MAi)=PAi
(MBi)=PBi
(MCi)=PCi
となる。
【0049】
3.X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構における誤差パラメータの同定
次に、上記のようにして測定した各誤差データMI1(X)〜MI6(X)、MI7(Y)〜MI12(Y)及びMI13(Z)〜MI18(Z)を基に、X軸送り機構,Y軸送り機構及びZ軸送り機構における上記誤差パラメータEXX,EYY,EZZ,EYX,EZX,EXY,EZY,EXZ,EYZ,EAX,EAY,EAZ,EBX,EBY,EBZ,ECX,ECY,ECZをそれぞれ同定する。
【0050】
一例として、X軸の真直度誤差MI3(X)(Z軸方向)について検討すると、図1及び図2に示すように、MI3(X)は、X軸、Y軸及びZ軸の各指令位置において、インジケータ(例えば、ダイアルゲージ)が突き出した状態で測定が行われるため、これらが誤差要因と見做される。そして、測定対象であるX軸以外のY軸の指令値YI3及びZ軸の指令値ZI3、並びにインジケータの3方向突き出し量LI3,LI3,LI3はそれぞれ一定であるので、MI3(X)は下式で表わされる。
I3(X)=E(X,YI3,ZI3,LI3,LI3,LI3)+ConstI3
但し、ConstI3は、定数項である
【0051】
そして、機械座標系における任意の位置であるX,Y,Zを原点とした設定座標系における誤差として、前記E(X,YI3,ZI3,L,L,L)を展開すると、前記数式12から、
I3(X)=EZX(X)+EZY(YI3)+EZZ(ZI3)+(EAX(X)+EAZ(ZI3)+AY)×(YI3−Y)−(EBZ(ZI3)+BX)×(X−X)+(EAX(X)+EAY(YI3)+EAZ(ZI3))×LI3−(EBX(X)+EBY(YI3)+EBZ(ZI3))×LI3+ConstI3
となり、更に、定数項をConstI3に集約すると、
I3(X)=EZX(X)+EAX(X)×(YI3−Y)+(EBZ(ZI3)+BX)×X+EAX(X)×LI3−EBX(X)×LI3+ConstI3
となる。そして、
E’ZX(X)=EZX(X)+(EBZ(ZI3)+BX)×X
と置くと、
I3(X)=E'ZX(X)+EAX(X)×(YI3−Y)+EAX(X)×LI3−EBX(X)×LI3+ConstI3
となる。E'ZX(X)はEZX(X)と同一視できるので、最終的に、
I3(X)=EZX(X)+EAX(X)×(YI3−Y)+EAX(X)×LI3−EBX(X)×LI3+ConstI3
となる。
このように、X軸の真直度誤差MI3(X)は、X軸送り機構の直角度(BX)及びY軸送り機構の直角度(AY)を用いない式として表現することができる。
【0052】
また、X軸のZ軸まわりの角度誤差MI6(X)について見ると、角度誤差の場合には、他の誤差要因は無いため、角度誤差MI6(X)は下式で表わされる。
I6(X)=ECX(X)+ConstI6
但し、ConstI6は、定数項である
【0053】
以上の検討から、上記各誤差は、X軸送り機構の直角度(BX)、Y軸送り機構の直角度(AY)及びZ軸送り機構の直角度(CY)を用いない式として、以下ように表される。
I1(X)=EXX(X)−ECX(X)×(YI1−Y)+EBX(X)×LI1−ECX(X)×LI1+ConstI1
I2(X)=EYX(X)+ECX(X)×LI2−EAX(X)×LI2+ConstI2
I3(X)=EZX(X)+EAX(X)×(YI3−Y)+EAX(X)×LI3−EBX(X)×LI3+ConstI3
I4(X)=EAX(X)+ConstI4
I5(X)=EBX(X)+ConstI5
I6(X)=ECX(X)+ConstI6
I7(Y)=EYY(Y)+ECY(Y)×LI7−EAY(Y)×LI7+ConstI7
I8(Y)=EXY(Y)+EBY(Y)×LI8−ECY(Y)×LI8+ConstI8
I9(Y)=EZY(Y)+EAY(Y)×LI9−EBY(Y)×LI9+ConstI9
I10(Y)=EAY(Y)+ConstI10
I11(Y)=EBY(Y)+ConstI11
I12(Y)=ECY(Y)+ConstI12
I13(Z)=EZZ(Z)+EAZ(Z)×(YI13−Y)−EBZ(Z)×(XI13−X)+EAZ(Z)×LI13−EBZ(Z)×LI13+ConstI13
I14(Z)=EXZ(Z)−ECZ(Z)×(YI14−Y)+EBZ(Z)×LI14−ECZ(Z)×LI14+ConstI2
I15(Z)=EYZ(Z)+ECZ(Z)×(XI3−X)+ECZ(Z)×LI15−EAZ(Z)×LI15+ConstI15
I16(Z)=EAZ(Z)+ConstI16
I17(Z)=EBY(Z)+ConstI17
I18(Z)=ECY(Z)+ConstI18
【0054】
そして、以上から、各誤差パラメータは、
XX(X)=MI1(X)+ECX(X)×(YI1−Y)−EBX(X)×LI1+ECX(X)×LI1−ConstI1
YX(X)=MI2(X)−ECX(X)×LI2+EAX(X)×LI2−ConstI2
ZX(X)=MI3(X)−EAX(X)×(YI3−Y)−EAX(X)×LI3+EBX(X)×LI3−ConstI3
AX(X)=MI4(X)−ConstI4
BX(X)=MI5(X)−ConstI5
CX(X)=MI6(X)−ConstI6
YY(Y)=MI7(Y)−ECY(Y)×LI7+EAY(Y)×LI7−ConstI7
XY(Y)=MI8(Y)−EBY(Y)×LI8+ECY(Y)×LI8−ConstI8
ZY(Y)=MI9(Y)−EAY(Y)×LI9+EBY(Y)×LI9−ConstI9
AY(Y)=MI10(Y)−ConstI10
BY(Y)=MI11(Y)−ConstI11
CY(Y)=MI12(Y)−ConstI12
ZZ(Z)=MI13(Z)−EAZ(Z)×(YI13−Y)+EBZ(Z)×(XI13−X)−EAZ(Z)×LI13+EBZ(Z)×LI13−ConstI13
XZ(Z)=MI14(Z)+ECZ(Z)×(YI14−Y)−EBZ(Z)×LI14+ECZ(Z)×LI14−ConstI2
YZ(Z)=MI15(Z)−ECZ(Z)×(XI15−X)−ECZ(Z)×LI15+EAZ(Z)×LI15−ConstI15
AZ(Z)=MI16(Z)−ConstI16
BY(Z)=MI17(Z)−ConstI17
CY(Z)=MI18(Z)−ConstI18
となる。
【0055】
斯くして、上式により、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における各誤差パラメータを同定することができる。尚、定数項であるConstI1〜ConstI18は各誤差のゼロ点の取り方を変更するための自由度と考えることができる。
4.直角度誤差パラメータの同定
次に、上記のようにして測定した直角度に関する測定値MAij,MBij,MCij、これらから算出される直角度PAi,PBi,PCi,並びに直角度誤差A,B,Cを基に、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における直角度誤差AY,BX,CYを同定する。
【0056】
この直角度誤差AY,BX,CYの同定に先立ち、その算出根拠について、説明する。上述したように、直角度PAi,PBi,PCiは、それぞれ測定値MAij,MBij,MCijの関数として表され、測定値MAijの総データをMAiとし、測定値MBijの総データをMBiとし、測定値MCijの総データをMCiとすると、
(数式13)
(RAij)=PAi
(数式14)
(RBij)=PBi
(数式15)
(RCij)=PCi
となる。
【0057】
一方、ダブルボールバーを用いて主軸5を円弧移動させる場合、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における主軸5の指令値に対する位置決め誤差は、上述した数式10〜12を用いて算出することができる。したがって、テーブル側に配置される球体の機械座標系における位置をX,Y,Zとし、このX,Y,Zを中心としてX−Y平面内で円弧移動する主軸5の前記基準点の位置をXik,Yik,Zとすると、バーの長さSCikは、以下の式によって算出することができる。
(数式16)
Cik=((Xik+EXik−X)+(Yik+EYik−Y)+(Z+EZik−Z))1/2
尚、EXik、EYik及びEZikは、上述した数式10〜12により算出される主軸5の位置決め誤差である。ここで、数式10中のCY、数式12中のAY及びBXは、それぞれ仮定の値として、任意の値であるCY’、AY’及びBX’を用いて算出する。
Xik=E(Xik,Yik,Z,tX,tY,tZ)
Yik=E(Xik,Yik,Z,tX,tY,tZ)
Zik=E(Xik,Yik,Z,tX,tY,tZ)
、t、tは、主軸側の球体が、主軸5の前記基準点からそれぞれX軸、Y軸、Z軸方向に偏位した距離である。
【0058】
また、数式16において、EXik,EYik及びEZikはそれぞれ微小な値であるので、その2乗項をゼロに近似すれば、SCikは下式で表わされる。
(数式17)
Cik=((Xik−X)+(Yik−Y)+2EXik(Xik−X)+2EYik(Yik−Y))1/2
【0059】
そして、算出されるバーの長さSCikの総データをSCiとすると、このSCiから算出される直角度P'Ciは、以下の関係式となる。
(数式18)
f(SCi)=P'Ci
ここで、上述した仮定の直角度誤差CY’が、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における真の直角度誤差CYと等しいならば、以下の関係式が成立する。
Y−PCi=CY’−P'Ci
そして、この式を変形すると以下の通りとなる。
(数式19)
Y=CY’−P'Ci+PCi
【0060】
斯くして、上記のように仮定したCY’、数式15によって算出される直角度PCi、及び数式18によって算出される直角度P'Ciから、数式19を用いて、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における真の直角度誤差CYを同定することができる。
【0061】
同様にして、直角度誤差BXについては、X−Z平面内で円弧移動する主軸5の基準点をXik,Y,Zikとすると、バーの長さSBikは、
Bik=((Xik+EXik−X)+(Y+EYik−Y)+(Zik+EZik−Z))1/2
となり、微小な値であるEXik,EYik及びEZikの2乗項をゼロに近似すると、
(数式20)
Bik=((Xik−X)+(Zik−Z)+2EXik(Xik−X)+2EZik(Zik−Z))1/2
となる。
【0062】
そして、算出されるバーの長さSBikの総データをSBiとすると、このSBiから算出される直角度P'Biは、以下の関係式となる。
(数式21)
f(SBi)=P'Bi
よって、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした座標系における真の直角度誤差BXは、上記のように仮定したBX’、上記数式14によって算出される直角度PBi及び上記数式21によって算出される直角度P'Biから、下記数式22によって、これを同定することができる。
(数式22)
X=BX’−P'Bi+PBi
【0063】
また、直角度誤差AYについては、Y−Z平面内で円弧移動する主軸5の位置をX,Yik,Zikとすると、バーの長さSAikは、
Aik=((X+EXik−X)+(Yik+EYik−Y)+(Zik+EZik−Z))1/2
となり、微小な値であるEXik,EYik及びEZikの2乗項をゼロに近似すると、
(数式23)
Aik=((Yik−Y)+(Zik−Z)+2EYik(Yik−Y)+2EZik(Zik−Z))1/2
となる。
【0064】
そして、算出されるバーの長さSAikの総データをSAiとすると、このSAiから算出される直角度P'Aiは、以下の関係式となる。
(数式24)
f(SAi)=P'Ai
よって、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした座標系における真の直角度誤差AYは、上記のように仮定したAY’、上記数式13によって算出される直角度PAi及び上記数式24によって算出される直角度P'Aiから、下記数式25によって、これを同定することができる。
(数式25)
Y=AY’−P'Ai+PAi
【0065】
以上のようにして、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における直角度誤差AY,BX,CYを同定する。尚、機械原点を基準にした機械座標系における直角度誤差AY,BX,CYを同定する場合には、X=0、Y=0、Z=0として算出したEXik、EYik、EZikの値を用いて、それぞれ直角度誤差AY,BX,CYを同定する。
【0066】
5.運動誤差の同定
上記のようにして同定した各誤差パラメータを用い、機械座標系の3次元空間内における、主軸5の基準点の位置決め誤差E(α,β,γ)、E(α,β,γ)及びE(α,β,γ)は、上述した数式1〜3によって同定され、同じく機械座標系の3次元空間内における、主軸5に装着された工具の刃先の位置決め誤差E(α,β,γ,TX,TY,TZ)、E(α,β,γ,TX,TY,TZ)及びE(α,β,γ,TX,TY,TZ)は、それぞれ上述した数式4〜6によって同定される。
【0067】
また、機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における主軸5の基準点の位置決め誤差E(α,β,γ)、E(α,β,γ)及びE(α,β,γ)は、上述した数式7〜9によって同定され、主軸5に装着された工具の刃先の位置決め誤差E(α,β,γ,TX,TY,TZ)、E(α,β,γ,TX,TY,TZ)及びE(α,β,γ,TX,TY,TZ)は、それぞれ上述した数式10〜12によって同定される。
【0068】
斯くして、本例では、以上のようにして機械座標系の任意の位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における、前記主軸5の基準点についての運動誤差(位置決め誤差)E(α,β,γ)、E(α,β,γ)及びE(α,β,γ)、並びに工具刃先についての位置決め誤差E(α,β,γ,TX,TY,TZ)、E(α,β,γ,TX,TY,TZ)及びE(α,β,γ,TX,TY,TZ)を算出することができる。また、X=0、Y=0、Z=0とすれば、機械座標系における運動誤差E(α,β,γ)、E(α,β,γ)、E(α,β,γ)、並びにE(α,β,γ,TX,TY,TZ)、E(α,β,γ,TX,TY,TZ)、E(α,β,γ,TX,TY,TZ)を算出することができる。
【0069】
このように、本例によれば、JISの規定に準拠する一般的な測定方法によって測定された実測誤差データを基に、前記機械座標系、及び任意の基準位置X,Y,Zを原点とした設定座標系についての、当該3次元空間内における、前記基準点の運動誤差及び工具の刃先の運動誤差を同定することができる。したがって、かかる運動誤差の同定を廉価に、しかも簡単な作業で行うことができる。
【0070】
また、任意の基準位置X,Y,Zを原点とした設定座標系における運動誤差を同定することができるので、当該誤差データの利用の自由度を高めることができる。
【0071】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、上例では、前記各誤差の測定をJISの規定に準拠したものとしたが、前記各誤差を、JISの規定と同等に、或いはこれ以上に正確にしかも容易に行うことができれば、他の方法によって測定するようにしても良い。
【0073】
また、上記各誤差パラメータEXX,EYY,EZZ,EYX,EZX,EXY,EZY,EXZ,EYZ,EAX,EAY,EAZ,EBX,EBY,EBZ,ECX,ECY,ECZの算出式は、一例を示したものであって、これに限られるものではなく、これらを他の算出式によって算出するようにしても良い。直角度誤差AY,BX,CYの同定についても同様に、上述した例に限られるものではなく、他の方法によってこれらを同定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 工作機械
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 主軸
6 テーブル
図1
図2
図3
図4
図5