特許第6606061号(P6606061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606061
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】弾性繊維用処理剤及び弾性繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20191031BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20191031BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20191031BHJP
   D06M 13/325 20060101ALI20191031BHJP
   D06M 13/44 20060101ALI20191031BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20191031BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20191031BHJP
   D06M 15/647 20060101ALI20191031BHJP
   C09K 3/16 20060101ALN20191031BHJP
   D06M 101/38 20060101ALN20191031BHJP
【FI】
   D06M13/292
   D06M13/02
   D06M13/224
   D06M13/325
   D06M13/44
   D06M13/256
   D06M15/643
   D06M15/647
   !C09K3/16 103A
   !C09K3/16 107A
   !C09K3/16 107D
   !C09K3/16 107E
   D06M101:38
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-504094(P2016-504094)
(86)(22)【出願日】2015年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2015054202
(87)【国際公開番号】WO2015125753
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-31655(P2014-31655)
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 智大
(72)【発明者】
【氏名】橘木 智裕
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−269765(JP,A)
【文献】 特開2006−161253(JP,A)
【文献】 特開2004−339669(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105386(WO,A1)
【文献】 特開2002−013070(JP,A)
【文献】 特開平11−061651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C09K 3/16
D06M 101/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン油、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1種のベース成分(A)と、有機リン酸エステル(B1)、有機アミン(B2)及び有機リン酸エステルアミン塩(B3)から選ばれる少なくとも1種である成分(B)と、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)とを含有し、
前記成分(B)100重量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の重量割合が75〜1000重量部である弾性繊維用処理剤であって、
前記有機リン酸エステル(B1)が下記一般式(1)で表され、
【化1】
(式中、mは1〜2の数である。Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。aは0〜30の数である。分子内にR、(AO)が2つある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記有機アミン(B2)が下記一般式(2)で表され、
【化2】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。bは1〜30の数である。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。cは1〜30の数である。)
前記有機リン酸エステルアミン塩(B3)が下記一般式(3)で表され、
【化3】
(式中、nは1〜2の数である。Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。dは0〜30の数である。分子内にR、(AO)が2つある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。Mは、HNRで表される。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。eは1〜30の数である。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。fは1〜30の数である。)
前記R及びRが、分岐数が2以上の分岐鎖のアルキル基であり、前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)が、前記ベース成分(A)100重量部に対して0.01〜20重量部である、弾性繊維用処理剤。
【請求項2】
前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)が下記一般式(4)で表される、請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【化4】
(式中、R、R10はそれぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基を表す。Mは、1価若しくは2価の金属イオン及びR11NR121314から選ばれる1種を表す。R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。gは1〜30の数である。qはMの価数を表す。)
【請求項3】
アミノ変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンをさらに含有する、請求項1又は2に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の処理剤が弾性繊維本体に対して付与された、弾性繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性繊維用処理剤及び該処理剤が付与された弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、伸縮性に富んだ性質を有しているために、製糸工程、後加工工程において、ガイド等の摩擦体との接触時に発生する繊維/金属間摩擦が大きく、糸切れが発生する場合がある。
そのため、弾性繊維には、シリコーン油、鉱物油及びエステル油等の平滑剤をベース成分とした弾性繊維用処理剤が用いられている。
前記平滑剤は、制電性が悪いため、制電剤が併用されることが通常であり、制電剤として、アルキルホスフェート金属塩を添加する方法が提案されている(特許文献1)。
また、弾性繊維は、粘弾性を有するために膠着し易い繊維である。特に捲糸体(以下、チーズという場合もある)の内層部においては、巻き取り時にかかる圧力により膠着が経時的に進行する。そのため、弾性繊維捲糸体を使用する際、解舒不良となり糸切れを引き起こす。この解舒不良を改良するために、種々の弾性繊維用処理剤が開発されている。
例えば、特許文献2には、シリコーンレジン(MQレジン)を含有する弾性繊維用処理剤が記載されている。
しかし、従来の制電剤や解舒性向上剤では弾性繊維を紡糸した直後の糸捲体を使用した際は静電気や解舒性に問題が見られないものの、夏場などに高温下で糸捲体が保管された後に使用した際、静電気発生量の増大や膠着の進行による解舒性不足を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特公昭41−21956号公報
【特許文献2】日本国特開平09−078460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高温保管後も良好な制電性及び解舒性を有する弾性繊維用処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ベース成分(A)と、特定成分(B)及びジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)を特定の比率で含有する弾性繊維用処理剤であれば、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は、 シリコーン油、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1種のベース成分(A)と、有機リン酸エステル(B1)、有機アミン(B2)及び有機リン酸エステルアミン塩(B3)から選ばれる少なくとも1種である成分(B)と、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)とを含有し、
前記成分(B)100重量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の重量割合が75〜1000重量部である弾性繊維用処理剤であって、
前記有機リン酸エステル(B1)が下記一般式(1)で表され、
前記有機アミン(B2)が下記一般式(2)で表され、
前記有機リン酸エステルアミン塩(B3)が下記一般式(3)で表され、
前記R及びRが、分岐数が2以上の分岐鎖のアルキル基であり、前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)が、前記ベース成分(A)100重量部に対して0.01〜20重量部である、弾性繊維用処理剤である。
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、mは1〜2の数である。Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。aは0〜30の数である。分子内にR、(AO)が2つある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記有機アミン(B2)が下記一般式(2)で表されると好ましい。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。bは1〜30の数である。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。cは1〜30の数である。)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、nは1〜2の数である。Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。dは0〜30の数である。分子内にR、(AO)が2つある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。Mは、HNRで表される。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。eは1〜30の数である。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。fは1〜30の数である。)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R、R10はそれぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基を表す。Mは、1価若しくは2価の金属イオン及びR11NR121314から選ばれる1種を表す。R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。gは1〜30の数である。qはMの価数を表す。)
【0014】
ミノ変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンをさらに含有すると好ましい。
本発明の弾性繊維は、上記弾性繊維処理剤が弾性繊維本体に対して付与されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弾性繊維用処理剤は高温保管後も良好な制電性及び解舒性を有するため、当該弾性繊維処理剤を付与した弾性繊維は、夏場などに高温下で保管後も弾性繊維の後加工工程の通過性が良好で、且つ、静電気の発生が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ローラー静電気発生量の測定方法を説明する模式図。
図2】解舒速度比の測定方法を説明する模式図。
図3】編成張力の測定方法を説明する模式図。
図4】繊維間摩擦係数の測定方法を説明する模式図。
図5】風綿吸着の測定方法を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の弾性繊維用処理剤は、ベース成分(A)と、上記成分(B)と、上記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)とを含有し、前記成分(B)及びジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)を特定の比率で含有することを特徴とする。以下に詳細に説明する。
【0018】
(ベース成分(A))
前記ベース成分(A)は、シリコーン油、鉱物油及びエステル油より選ばれる少なくとも1種である。当該ベース成分(A)は、上記弾性繊維用処理剤に必須な成分であり、繊維/金属間の摩擦を低減する剤である。
【0019】
シリコーン油としては、特に限定はないが、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等を挙げることができ、1種又は2種以上を使用してもよい。シリコーン油の25℃における粘度は、2〜100mm/sが好ましく、5〜70mm/sがより好ましく、5〜50mm/sがさらに好ましい。該粘度が2mm/s未満であるとシリコーン油が揮発する場合があり、100mm/sを超えると、処理剤に配合される他成分の溶解性が悪くなることがある。
シリコーン油のシロキサン結合(SiOR1516:R15及びR16は、それぞれ独立して、有機基を示す)の平均結合量は、3〜100が好ましく、7〜60がより好ましく、7〜50がさらに好ましい。R15、R16の有機基は、炭素数1〜24の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができ、特に、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0020】
鉱物油としては、特に限定はないが、マシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができ、1種又は2種以上を使用してもよい。鉱物油の30℃におけるレッドウッド粘度計での粘度は、30秒〜350秒が好ましく、35秒〜200秒がより好ましく、40秒〜150秒がさらに好ましい。鉱物油としては、臭気の発生が低いという理由から、流動パラフィンが好ましい。鉱物油の粘度が30秒未満であると、得られる弾性繊維の品質が低下することがある。一方、鉱物油の粘度が350秒を超えると処理剤に配合される他成分の溶解性が悪くなることがある。
【0021】
エステル油としては、1価アルコールと1価カルボン酸とのエステル、1価アルコールと多価カルボン酸とのエステル、又は多価アルコールと1価カルボン酸とのエステルであれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用してもよい。1価アルコールとしては、後述の1価の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環式アルコール、フェノール類等を使用できる。これらの中でも、一価の脂肪族アルコール、芳香族アルコールが好ましい。
【0022】
1価の脂肪族アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、1−ヘキサデカノール、パルミトレイルアルコール、1−ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、1−エイコサノール、ベヘニルアルコール、1−テトラコサノール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール等が挙げられる。
芳香族アルコールとしては、フェノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
脂環式アルコールとしては、シクロオクタノール、シクロドデカノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロペンタノール、メントール等が挙げられる。
【0023】
1価カルボン酸としては、同じく後述の1価の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸を使用できる。これらの中でも、一価の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましい。
【0024】
上記1価カルボン酸としては、特に限定はないが、例えば、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セチロン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0025】
多価カルボン酸としては、特に限定はないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸、イソクエン酸等が挙げられる。
【0026】
多価アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、9−ノナンジオール、2−メチル−1、8−オクタンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0027】
エステル油の具体例としては、特に限定はないが、例えば、吉草酸ヘプチル、カプロン酸ヘプチル、カプロン酸オクチル、カプリル酸セチル、ラウリン酸イソオクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ラウリン酸オレイル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸トリデシル、ステアリン酸イソブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸オレイル、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジミリスチル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリプロピレングリコール、ジミリスチン酸ポリプロピレングリコール、ジオレイン酸ポリプロピレングリコール、ジステアリン酸ポリプロピレングリコール、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジイソオクチル、コハク酸ジラウリル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジオクチル、フマル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリイソブチル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリイソステアリル、グリセリントリイソオクチル、グリセリントリラウリル、グリセリントリミリスチル、グリセリントリオレイル、グリセリントリステアリル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリパルミテート等が挙げられる。
【0028】
(成分(B))
上記成分(B)は、有機リン酸エステル(B1)、有機アミン(B2)及び有機リン酸エステルアミン塩(B3)から選ばれる少なくとも1種である。
上記成分(B)を後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)と共に特定の比率で含有すると、各成分を単独で含有する場合と比較して、高温保管後も良好な制電性及び解舒性を示し、平滑性が低下しない成分である。
各成分単独時より高温保管後も良好な制電性及び解舒性を示す要因は定かではないが、特定の比率でしか効果が得られないことから、上記成分(B)とジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との塩交換等による相互作用によるものではいかと推定している。成分(B)は混合物であってもよく、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0029】
上記成分(B)は、有機リン酸エステル(B1)、有機アミン(B2)及び有機リン酸エステルアミン塩(B3)から選ばれる少なくとも1種であるが、1種類のみを含む場合には、風綿吸着量が低下する効果が得られる観点から、有機リン酸エステルアミン塩(B3)が好ましい。
【0030】
有機リン酸エステル(B1)は、有機リン酸エステルの未中和物である。ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用による高温保管後の良好な制電性が得られやすい観点から、上記一般式(1)で表される構造であると好ましい。
一般式(1)中、mは1〜2の数である。Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。aは0〜30の数である。分子内にR、(AO)が2つある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
上記一般式(1)中、mが1であるときは、有機リン酸エステル(B1)は、有機リン酸モノエステル(以下、モノ体)を表す。mが2であるときは、有機リン酸ジエステル(以下、ジ体)を表す。一般式(1)中、nは1〜2であり、有機リン酸エステル(B1)が、モノ体及びジ体の混合物であることを意味する。例えば、mが1.3であるときは、モノ体のモル数:ジ体のモル数の比が7:3であることを示す。
【0032】
は炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。Rの炭素数は10〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、10〜14がさらに好ましい。Rの炭素数が6未満又は24超では、制電性が不足する可能性がある。Rは直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。Rは、分岐を2以上有する分岐鎖のアルキル基であると、極性の低いベースオイルに対し、多くの分岐を有するリン酸エステルが弾性繊維用処理剤全体として相溶性が優れることに起因して本願の効果が発揮され易いため好ましい。Rの好ましい分岐数の上限値は11である。なお、分岐数は「アルキル基中に含まれるメチル基の数−1」と定義される。
【0033】
Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。aはAOの平均付加モル数を表す。aは0〜30の数であり、平滑性の観点から、0〜20が好ましく、0〜10がさらに好ましい。aが0である場合には、処理剤中における安定性が特に優れる。aが30超では、処理剤中の安定性が不足する可能性がある。
【0034】
有機リン酸エステル(B1)としては、特に限定はされないが、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用時に高温保管後の制電性が向上する観点から、ヘキシルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル、デシルリン酸エステル、ドデシルリン酸エステル、テトラデシルリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル、オクタデシルリン酸エステル、ベヘニルリン酸エステル、トリオクタコサニルリン酸エステル、オクタデセニルリン酸エステル、2−エチルヘキシルリン酸エステル、イソへプチルリン酸エステル、イソオクチルリン酸エステル、イソノニルリン酸エステル、イソデシルリン酸エステル、イソウンデシルリン酸エステル、イソドデシルリン酸エステル、イソトリデシルリン酸エステル、イソテトラデシルリン酸エステル、イソヘキサデシルリン酸エステル、イソオクタデシルリン酸エステル、t−ブチルリン酸エステル、ベンジルリン酸エステル、オクチルフェニルリン酸エステル、シクロヘキシルリン酸エステル、ポリオキシエチレン5モル付加ヘキサデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン15モル付加ヘキサデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン7モル付加ポリオキシプロピレン3.5モル付加セカンダリーアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン2モルポリオキシプロピレン5モル付加ドデシルリン酸エステル、ポリオキシエチレン3モル付加セカンダリーアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン2モル付加ドデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン4モル付加フェノールリン酸エステル等が挙げられる。
【0035】
有機リン酸エステル(B1)は、公知の方法で合成できる。例えば、Pなどの無機リン酸を、アルコールやポリオキシアルキレン付加のアルキルエーテルなどのアルコール性水酸基を分子中にもつ化合物と、任意のモル比で反応させることで得られる。
アルコール性水酸基を分子中にもつ化合物1モルに対するPのモル比は0.15〜0.4が好ましい。0.2〜0.335がより好ましく、0.25〜0.3が特に好ましい。0.4を超えると、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用時に平滑性が低下することがある。0.15未満では、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用時に高温保管後の制電性の性能が低下することがある。
【0036】
有機アミン(B2)は、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用による高温保管後の制電性向上が得られやすい観点から、上記一般式(2)で表される構造であるとより好ましい。
【0037】
一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。bは1〜30の数である。
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。cは1〜30の数である。
、R及びRのアルキル基は、直鎖でも分岐でもよく、炭素数は1〜18であり、高温保管後の制電性及び解舒性の観点から、4〜18が好ましく、4〜12がさらに好ましい。
【0038】
、R及びRのアルカノール基は、直鎖でも分岐でもよく、炭素数は1〜18であり、高温保管後の制電性及び解舒性の観点から、1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0039】
有機アミン(B2)としては、特に限定されないが、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用による高温保管後の良好な制電性が得られやすい観点から、ジブチルアミン、ジドデシルアミン、ドデシルジエタノールアミン、ドデシルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシプロピレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデセニルアミン、ポリオキシプロピレンオクタデセニルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0040】
有機リン酸エステルアミン塩(B3)は、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用による高温保管後の良好な制電性が得られやすい観点から、上記一般式(3)で表される構造であると好ましい。
【0041】
式中、nは1〜2の数である。Rは炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。dは0〜30の数である。
分子内にR、(AO)が2つある場合には、お互いに同一であっても異なっていてもよい。Mは、HNRで表される。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。eは1〜30の数である。
は、分岐数が2以上である分岐鎖のアルキル基であると、極性の低いベースオイルに対し、多くの分岐を有するリン酸エステルが弾性繊維用処理剤全体として相溶性が優れることに起因して本願の効果が発揮され易いため好ましい。Rの好ましい分岐数の上限値は11である。なお、分岐数は「アルキル基中に含まれるメチル基の数−1」と定義される。
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。fは1〜30の数である。
【0042】
、R及びRのアルキル基は、直鎖でも分岐でもよく、炭素数は1〜18であり、高温保管後の制電性及び解舒性の観点から、4〜18が好ましく、4〜12がさらに好ましい。
、R及びRのアルカノール基は、直鎖でも分岐でもよく、炭素数は1〜18であり、高温保管後の制電性及び解舒性の観点から、1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0043】
有機リン酸エステルアミン塩(B3)を得る方法は、特に限定されないが、例えば、前記有機リン酸エステル(B1)及び前記有機アミン(B2)を反応することで得られる。
前記有機リン酸エステル(B1)と、前記有機アミン(B2)とを反応させる場合には、[有機リン酸エステル(B1)の重量]×[有機リン酸エステル(B1)の酸価]:[有機アミン(B2)の重量]×[有機アミン(B2)のアミン価]が、1:0.5〜1:1.5が好ましく、1:0.8〜1:1.2がより好ましい。1:0.5未満又は1:1.5超では、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)と併用しても、高温保管後の制電性の向上が得られない可能性がある。
【0044】
有機リン酸エステルアミン塩(B3)としては、特に限定されないが、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)との併用による高温保管後の良好な制電性が得られやすい観点から、ヘキシルリン酸エステルジブチルアミン塩、オクチルリン酸エステルジドデシルアミン塩、デシルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩、ドデシルリン酸エステルドデシルエタノールアミン塩、ヘキサデシルリン酸エステルドデシルエタノールアミン塩、ヘキサデシルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩、オクタデシルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ドコシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、オクタデセニルリン酸エステルポリオキシエチレン付加ドデシルアミン塩、イソオクチルリン酸エステルポリオキシエチレン付加ドデシルアミン塩、イソへプチルリン酸エステルポリオキシエチレン付加ドデシルアミン塩、イソノニルリン酸エステルポリオキシプロピレン付加ドデシルアミン塩、イソデシルリン酸エステルポリオキシエチレン付加オクタデセニルアミン塩、イソウンデシルリン酸エステルポリオキシプロピレン付加オクタデセニルアミン塩、イソオクタデシルリン酸エステルジメチルオクタデシルアミン塩、イソトリデシルリン酸エステルジエタノールアミン塩、イソヘキサデシルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、イソオクタデシルリン酸エステルドデシルエタノールアミン塩、t−ブチルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ベンジルリン酸エステルポリオキシエチレン付加ドデシルアミン塩、オクチルフェニルリン酸エステルジブチルアミン塩、シクロヘキシルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン付加ヘキサデシルエーテルリン酸エステルドデシルエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加セカンダリーアルキルエーテルリン酸エステルポリオキシエチレン付加ドデシルアミン塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加ドデシルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン付加セカンダリーアルキルエーテルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン付加ドデシルエーテルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩、ポリオキシエチレン付加フェノールリン酸エステルポリオキシエチレン付加オクタデセニルアミン塩、イソオクチルリン酸エステルドデシルジエタノールアミン塩、ヘキサデシルリン酸エステルジドデシルアミン塩、ヘキシルリン酸エステルオクタデシルジメチルアミン塩、デシルリン酸エステルジブチルアミン塩、イソトリデシルリン酸エステルポリエキシエチレン付加ドデシルアミン塩、ポリオキシエチレン付加イソトリデシルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、オクチルリン酸エステルドデシルエタノールアミン塩、イソオクタデシルリン酸エステルポリオキシプロピレン付加オクタデセニルアミン塩、オクタデセニルリン酸エステルジブチルエタノールアミン塩等が挙げられ、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0045】
処理剤中の成分(B)の状態については、特に限定はなく、処理剤に溶解していてもよく、個体として分散されていてもよく、一部が溶解し一部が個体として分散されていてもよい。
【0046】
(ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C))
ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)は、本発明の弾性繊維用処理剤に必須に含有される。ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)は、上記成分(B)と特定の比率で処理剤中に含まれると、高温保管後の制電性及び解舒性が向上する成分である。
【0047】
前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)は、上記成分(B)との併用による制電性向上が得られやすい観点から、上記一般式(4)の構造を有していると好ましい。
一般式(4)中、R、R10はそれぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基を表す。
、R10としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、へプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、2−エチルデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などがあげられる。炭素数2〜30のアルケニル基としてはヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ウンドデセニル基、ドデセニル基、ノナデセニル基等が挙げられる。
これらR、R10は独立に、好ましくは炭素数3〜26、より好ましくは炭素数5〜15のアルキル基である。
一般式(4)中、Mは、1価若しくは2価の金属イオン及びR11NR121314から選ばれる1種を表す。R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルカノール基又は(AO)Hを表す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。gは1〜30の数である。qはMの価数を表す。
【0048】
一般式(4)においてMとしては水素原子、アルカリ金属、例えばリチウム、カリウム、ナトリウムなど、アルカリ土類金属、例えばカルシウム、マグネシウムなど、前記R11NR121314で示されるR11〜R14の構造としては、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ブチル基等が用いられる。
【0049】
ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の具体例として、特に限定はされないが、ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソオクチルスルホコハク酸カリウム、ジイソオクチルスルホコハク酸マグネシウム、ジイソオクチルスルホコハク酸アンモニウム、ジイソオクチルスルホコハク酸エタノールアミン、ジイソオクチルスルホコハク酸ジエタノールアミン、ジイソオクチルスルホコハク酸トリエタノールアミン、ジペンチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクタデシルスルホコハク酸カリウム、ジドデシルスルホコハク酸マグネシウム、ジデシルスルホコハク酸テトラブチルアンモニウム塩、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられ、中でも有機リン酸エステルアミン塩(B3)との併用による、高温保管後の良好な制電性が得られやすい観点から、ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソオクチルスルホコハク酸カリウム、ジイソオクチルスルホコハク酸マグネシウム、ジオクタデシルスルホコハク酸カリウム、ジドデシルスルホコハク酸マグネシウム、ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジデシルスルホコハク酸テトラブチルアンモニウム塩が好ましい。ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0050】
処理剤中のジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の状態については、特に限定はなく、処理剤に溶解していてもよく、個体として分散されていてもよく、一部が溶解して一部が個体として分散されていてもよい。
【0051】
(その他成分(D))
本発明の弾性繊維用処理剤は、平滑性や解舒性の性能向上という観点から、上記で説明した各成分以外に、アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、オルガノポリシロキサン樹脂、高級脂肪酸金属塩、ノニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一種のその他成分をさらに含有してもよい。中でも、平滑性や解舒性の性能向上という観点から、アミノ変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンが好ましい。その他成分(D)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0052】
変性シリコーンとは、一般には、ジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン)等のポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖、側鎖両末端の少なくとも1ヶ所において、反応性(官能)基又は非反応性(官能)基が少なくとも1つ結合した構造を有するものをいう。
【0053】
上記変性シリコーンとしては、より詳細には、長鎖アルキル基(炭素数6以上のアルキル基や2−フェニルプロピル基等)を有する変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン;エステル結合を有する変性シリコーンであるエステル変性シリコーン;ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基等)を有する変性シリコーンであるポリエーテル変性シリコーン等;アミノプロピル基やN−(2−アミノエチル)アミノプロピル基等を有する変性シリコーンである、アミノ変性シリコーン;アルコール性水酸基を有する変性シリコーンであるカルビノール変性シリコーン;グリシジル基又は脂環式エポキシ基等のエポキシ基を有する変性シリコーンであるエポキシ変性シリコーン;カルボキシル基を有する変性シリコーンであるカルボキシ変性シリコーン;メルカプト基を有する変性シリコーンであるメルカプト変性シリコーン等を挙げることができる。
【0054】
上記オルガノポリシロキサン樹脂(以下、単にシリコーンレジンという)とは、3次元架橋構造を有するシリコーンを意味する。シリコーンレジンは、一般に、1官能性構成単位(M)、2官能性構成単位(D)、3官能性構成単位(T)および4官能性構成単位(Q)から選ばれた少なくとも1種の構成単位からなっている。
【0055】
上記シリコーンレジンとしては、特に限定されないが、例えば、MQシリコーンレジン、MQTシリコーンレジン、Tシリコーンレジン、DTシリコーンレジン等のシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0056】
上記MQシリコーンレジンとしては、例えば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、Ra、およびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0057】
上記MQTシリコーンレジンとしては、例えば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0058】
上記Tシリコーンレジンとしては、例えば、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン(その末端は炭化水素基のほか、シラノール基やアルコキシ基となっていても良い。)等を挙げることができる。
【0059】
上記DTシリコーンレジンとしては、例えば、2官能性構成単位であるRSiO2/2(但し、R、およびRはいずれも炭化水素基である。)と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)等を挙げることができる。
【0060】
R、R、RおよびRの炭化水素基としては、炭素数1〜24の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができ、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基が好ましい。
【0061】
上記高級脂肪酸金属塩としては、炭素数8〜22の脂肪酸の2価又は3価の金属塩を挙げることができる。高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、パルミチン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、2−エチルヘキシル酸マグネシウム、ベヘニン酸亜鉛、トリベヘニン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、2−エチルヘキシル酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、カプリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0062】
上記高級脂肪酸金属塩の平均粒子径について、特に限定はないが、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜3μmがさらに好ましく、0.05〜2μmが特に好ましい。高級脂肪酸金属塩の平均粒子径が0.01μm未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、高級脂肪酸金属塩の平均粒子径が5μm超であると、繊維表面から脱落しやすく、紡糸後の工程でスカムの原因となる場合がある。
【0063】
上記高級脂肪酸金属塩の形状について、特に限定はないが、針状が好ましい。高級脂肪酸金属塩の形状が針状の場合、その縦方向と横方向との比は、解舒性の観点から、10:1〜2:1が好ましく、8:1〜3:1がさらに好ましい。
【0064】
上記ノニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数8〜22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル(EO1〜20モル)、炭素数8〜22のアルキル基を有するポリオキシプロピレンアルキルエーテル(PO1〜20モル)、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのEO付加物(EO1〜20モル)、ソルビタン脂肪酸エステルのPO付加物(PO1〜20モル)、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルキルフェノール、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルキルフェノールのEO付加物(EO1〜20モル)、脂肪酸ポリオキシエチレングリコールエステル(EO1〜20モル)、脂肪酸ポリオキシプロピレングリコールエステル(PO1〜20モル)等が挙げられる。なお、ここでいうEOはオキシエチレンを示し、POはオキシプロピレンを示す。
【0065】
〔弾性繊維用処理剤〕
本発明の処理剤全体に占めるベース成分(A)の重量割合は、40〜99.9重量%が好ましく、50〜98重量%がより好ましく、70〜95重量%がさらに好ましく、80〜90重量%が特に好ましい。40重量%未満の場合、前記成分(B)のベース成分(A)への溶解性が低下して、均一に弾性糸に付着せず、後加工で脱落して、スカムを生じることや、平滑性が低下することがある。
【0066】
本発明では、前記成分(B)100重量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の重量割合は、20〜2000重量部であり、30〜1800重量部が好ましく、40〜1600重量部がより好ましく、50〜1500重量部がさらに好ましく、75〜1000重量部が特に好ましい。20重量部未満及び2000重量部超では、高温保管後の優れた制電性及び解舒性が得られない。75〜1000重量部であると、高温保管後の解舒性が殆ど低下しない効果が得られる。その理由は、前記(B)成分及び前記(C)成分を適切な比率で用いた場合、高温保管後も塩交換等により繊維内部への浸透を防ぐ為に、十分な効果を発揮すると推測している。一方、前記成分を単独で用いた場合、若しくはどちらか一方の成分を過剰に用いた場合、高温にさらされる事でこれらの成分が繊維内部に浸透してしまう為に、十分な効果が得られなくなると推定している。
【0067】
本発明では、前記ベース成分(A)100重量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の重量割合は、0.01〜20重量部が好ましく、0.05〜10重量部がより好ましく、0.1〜8重量部がさらに好ましく、0.25〜5重量部が特に好ましく、0.5〜3重量部が最も好ましい。0.01重量部未満では、繊維表面における前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の分布に斑が発生し目的の効果が得られない可能性があり、20重量部超では、繊維表面における前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の存在量が過剰になり後加工工程中の脱落によりスカム発生の原因となる可能性がある。
【0068】
弾性繊維用処理剤がその他成分(D)を含有する場合、処理剤を使用する際の流動性を維持するという観点から、弾性繊維用処理剤全体に占めるその他成分(D)の重量割合は、好ましくは、0.01〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0069】
本発明の処理剤は、30℃における粘度が通常3〜100mm/sが好ましく、5〜50mm/sがより好ましく、8〜20mm/sがさらに好ましい。3mm/s未満では、処理剤の揮発が問題となる場合があり、100mm/sを超えると平滑性に劣る場合がある。
【0070】
本発明の弾性繊維用処理剤を製造する方法については、特に限定はなく、公知の方法を適用することができる。弾性繊維用処理剤は、構成する上記の各成分を任意の順番で添加混合することによって製造される。
高級脂肪酸の金属塩を含む弾性繊維用処理剤は、既に粉砕された高級脂肪酸の金属塩をベース成分に混合して製造してもよく、また、ベース成分に高級脂肪酸金属塩を混合し、縦型ビーズミル、横型ビーズミル、コロイドミル、ジェットミル、サンドグラインダー等の従来公知の湿式粉砕機を用いて、所定の平均粒子径になるように粉砕して、製造してもよい。高級脂肪酸の金属塩の粉砕時には、従来公知の特開平10−259577号公報、特開2000−328459号公報などに記載の分散助剤を用いてもよい。
【0071】
[弾性繊維]
本発明の弾性繊維は、弾性繊維本体に本発明の処理剤が付与されたものである。弾性繊維全体に占める弾性繊維用処理剤の付着割合は0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。0.1重量%より少ないと本発明の効果が充分でなく、15重量%を越えると不経済である。付与方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。
【0072】
本発明の弾性繊維(弾性繊維本体)は、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー等を使用した弾性を有する繊維であり、その伸度は通常300%以上である。
【0073】
本発明の弾性繊維としては、PTMGやポリエステルジオールと有機ジイソシアネートを反応させ、次いで、1、4ブタンジオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタンジアミンなどで鎖延長した、ポリウレタンあるいはポリウレタンウレアから構成されるものが挙げられる。例えば、ポリウレタンウレア弾性繊維は、分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2〜1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等のジアミンで鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20〜40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400〜1200m/minで紡糸することにより製造できる。弾性繊維本体の適応繊度は、特に制限はない。
【0074】
本発明の弾性繊維本体は、酸化チタン、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛等の無機物を含有してもよい。無機物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0075】
弾性繊維本体が無機物を含有する場合、均一解舒性が不良になる場合があるが、弾性繊維本体に本発明の処理剤を付与することにより、均一解舒性を良好にすることができる。従って、本発明の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維本体が無機物を含有する場合に好適に使用できる。弾性繊維本体に占める無機物の含有量は特に限定は無いが、0.01〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がさらに好ましい。
【0076】
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツ等のアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示される「パーセント(%)」及び「部」は、特に限定しない限り、「重量%」及び「重量部」を示す。なお、実施例及び比較例において、弾性繊維用処理剤の各特性の評価は次の方法に従って行った。
【0078】
〔処理剤の評価方法〕
(酸価)
イソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(1/1)混合等の溶剤に溶解させた試料を、0.1N水酸化カリウムエチレングリコールイソプロピルアルコール溶液で自動電位差滴定装置(平沼社製COM−900)を使用して電位差滴定して、中和終点の滴定量(ml)を測定し、数式(1)より酸価を算出した。尚、酸価とは試料1gを中和するのに要するKOHのmg数で表されるものである。
酸価(KOHmg/g)=(A×F×5.61)/W 数式(1)
(数式(1)において、A=滴定量(ml)、F=0.1N水酸化カリウムの力価、W=試料重量(g))
【0079】
(アミン価)
イソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(1/1)混合等の溶剤に溶解した試料を、0.1N−HClエチレングリコール/イソプロピルアルコール溶液で自動電位差滴定装置(平沼社製COM−900)を使用して電位差滴定して、終点の滴定量(ml)を測定し、下式数式(2)よりアミン価を算出した。尚、アミン価とは試料1gを中和するのに要するHClと当量となるKOHのmg数で表されるものである。
アミン価(KOHmg/g)=(A×F×5.61)/W 数式(2)
(数式(2)において、A=滴定量(ml)、F=0.1N−HClの力価、W=試料重量(g))
【0080】
〔ローラー静電気発生量評価法〕
図1において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(1)をセットし、50m/分の周速で回転させ、チーズ上2cmのところにおいて、春日式電位差測定装置(2)で、回転を始めて1時間後の発生静電気を測定する。
また、以下の評価基準で○を合格とした。
○:高温保管前の静電気発生量が1kV未満、且つ高温保管前の静電気発生量と高温保管後の静電気発生量の差が1kV未満(良好)
×:上記以外(不良)
【0081】
〔解舒速度比評価法〕
図2において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(3)をセットし、巻き取り側に紙管(4)をセットする。巻き取り速度を一定速度にセットした後、ローラー(5)及び(6)を同時に起動させる。この状態では糸(7)に張力はほとんどかからないため、糸はチーズ上で膠着して離れないので、解舒点(8)は図5に示す状態にある。解舒速度を変えることによって、チーズからの糸(7)の解舒点(8)が変わるので、この点がチーズとローラーとの接点(9)と一致するように解舒速度を設定する。解舒速度比は数式(3)によって求める。この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
また、以下の評価基準で○以上を合格とした。
◎:高温保管前の解舒速度比と高温保管後の解舒速度比の差が5未満(非常に良好)
○:高温保管前の解舒速度比と高温保管後の解舒速度比の差が5以上30未満(良好)
△:高温保管前の解舒速度比と高温保管後の解舒速度比の差が30以上50未満(やや不良)
×:高温保管前の解舒速度比と高温保管後の解舒速度比の差が50以上(不良)
数式(3)
解舒速度比(%)=(巻取速度−解舒速度)÷解舒速度×100
【0082】
〔編成張力測定法〕
図3において、チーズ(10)から縦取りした弾性糸(11)をコンペンセーター(12)を経てローラー(13)、編み針(14)を介して、Uゲージ(15)に付したローラー(16)を経て速度計(17)、巻き取りローラー(18)に連結する。速度計(17)での走行速度が定速(例えば、10m/分、100m/分)になるように巻き取りローラーの回転速度を調整して、巻き取りローラーに巻き取り、そのときの編成張力をUゲージ(15)で測定し、繊維/編み針間の摩擦(g)を計測する。
編成張力が低いほど、繊維/金属間の摩擦が低いことを示し、後工程における工程通過性が良好となる。
【0083】
〔繊維間摩擦係数測定方法〕
図4において、処理剤が付与された弾性繊維のモノフィラメントを50〜60cm程取り、一方の端に荷重T1(19)を吊り、ローラー(20)を介して、Uゲージ(21)にもう一方の端を掛けて定速(例えば、3cm/分)で引っ張り、そのときの2次張力T2をUゲージ(21)で測定し、数式(4)により、繊維間摩擦係数を求める。
数式(4)
繊維間摩擦係数=1/θ・ln(T2/T1)
(数式(4)において、θ=2π、ln=自然対数、T1は22dtex当り1g)
【0084】
〔チーズ捲形状評価方法〕
評価に供する処理剤が付与されたチーズ(巻き量400g)の捲形状にバルジや綾渡等の捲き崩れが有るか無いかを目視で確認した。
【0085】
〔風綿吸着量試験法〕
図5においてチーズ(22)から20m/分の速度で弾性糸を出し、コンペンセーター(23)を経てローラー(24)から風綿の吸糸口(25)を経て巻取ローラー(26)で80m/分で巻取る。綿糸(27)は、ガイド(28)からローラー(29)と編針(30)を経て巻取ローラー(31)で80m/分の速度で巻取られる。風綿はローラー(29)と編針(30)の間で綿糸を1回撚りでこすり合わせて発生させる。60分間弾性繊維を走行させたときの吸糸口に集積する風綿の重量を測定する。弾性繊維及び綿糸は20℃、45%RHの雰囲気下で3日間調湿したものを用いた。測定雰囲気は20℃、45%RHで行った。吸糸口は、直径0.2mm、長さ10mm、その材質はアルミナである。
風綿吸着量が少ない程、カバリング糸生産時等、風綿が発生する加工工程における糸切れ発生頻度及び清掃作業頻度が低減し、良好であることを示す。
【0086】
〔皮膚障害試験〕
各処理剤をアセトンに2重量%溶解させ、日本薬局方ガーゼを浸す。同ガーゼを30分間放置して乾燥させた後、一辺1.5cmに切り分けて、上腕裏側に貼布し、48時間保つ。48時間後に剥離し、30分間隔を空けて表1に基づき判定した。判定に対して表中のように採点を行い、これらの数値にそれを示した被験者数を乗じ、全被験者数で除して、各処理剤の平均の反応強度を算出した。
また、以下の評価基準で○以上を合格とした。
○:0点から1点未満(良好)
△:1点以上2点未満(やや不良)
×:2点以上(不良)
【0087】
【表1】
【0088】
<繊維引張強度保持率>
JIS1013に準じて測定を行った。
【0089】
(実施例1〜32、比較例1〜10)
<紡糸原液の調整>
数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4、4’―ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1、2−ジアミノプロパンのN、N’−ジメチルアセトアミドの溶液を用いて鎖延長し、ポリマー濃度30%のN、N’−ジメチルアセトアミド溶液を得た。30℃での粘度は1500mPaSであった。
【0090】
得られた紡糸原液を4つの細孔を有する紡糸口金より195℃のN気流中に吐出して乾式紡糸した。弾性繊維用処理剤をそれぞれオイリングローラーで、紡糸中の走行糸(弾性繊維本体)に対して6重量%付与した。従って、弾性繊維全体に対して弾性繊維用処理剤が5.66重量%付与された。その後、弾性繊維用処理剤で処理した弾性繊維をそれぞれ毎分500mの速度でボビンに巻取り、77dtexマルチフィラメントチーズ(巻き量400g)を得た。得られたチーズを用いて、上記評価方法によりそれぞれ評価した。その結果を表11及び12に示す。
【0091】
高温保管処理後の評価を行うものは、得られたチーズを60℃、80%RHの雰囲気中に10日間放置した後、20℃、45%RHの雰囲気中に48時間放置して評価に供した。
<弾性繊維用処理剤の調製>
高級脂肪酸金属塩(D−2、ステアリン酸マグネシウム)を含まないものは、表2〜10に記載の各成分を混合した後に20〜40℃で60分間撹拌して、高級脂肪酸金属塩(D−2、ステアリン酸マグネシウム)を含むものは、混合、攪拌したものを上記記載の湿式粉砕機を用いて高級脂肪酸金属塩を粉砕して、実施例1〜32及び比較例1〜12の弾性繊維用処理剤をそれぞれ得た。実施例及び比較例で用いた成分は、表2〜8に示し、実施例及び比較例で配合した処方は、表9及び10に示す。ただし、実施例1〜28及び31は、それぞれ参考例1〜28及び31とする。
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】
【0102】
表11及び12から分かるように、実施例1〜32では、シリコーン油、鉱物油及びエステル油から選ばれる少なくとも1種のベース成分(A)と、有機リン酸エステル(B1)、有機アミン(B2)及び有機リン酸エステルアミン塩(B3)から選ばれる少なくとも1種である成分(B)と、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)とを含有し、前記成分(B)100重量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の重量割合が20〜2000重量部である弾性繊維用処理剤を用いているので、高温保管後の良好な制電性及び解舒性を有する。
一方、前記成分(C)がない場合(比較例1〜3)、前記成分(B)がない場合(比較例8)、前記成分(B)100重量部に対する前記ジアルキルスルホコハク酸エステル塩(C)の重量割合が20〜2000重量部の範囲にない場合(比較例4〜7)、有機リン酸エステルアミン塩(B3)ではなく、有機リン酸エステルアルカリ金属塩を含む場合(比較例9及び10)には、本発明の効果は得られてない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維を製造する時に、好適に使用される。本発明の弾性繊維は、伸縮性が必要とされる製品等に使用される。
の産業用合成繊維に適用される。
【符号の説明】
【0104】
1 弾性繊維のチーズ
2 春日式電位差測定装置
3 チーズ
4 巻き取り用紙管
5 ローラー
6 ローラー
7 走行糸条
8 解舒点
9 チーズとローラーの接点
10 弾性繊維のチーズ
11 糸
12 コンペンセーター
13 ローラー
14 編み針
15 Uゲージ
16 ローラー
17 速度計
18 巻き取りローラー
19 荷重
20 ローラー
21 Uゲージ
22 弾性繊維のチーズ
23 コンペンセーター
24 ローラー
25 風綿の吸糸口
26 弾性繊維の巻取ローラー
27 綿糸
28 ガイド
29 ローラー
30 編針
31 綿糸の巻取ローラー
図1
図2
図3
図4
図5