特許第6606073号(P6606073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000002
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000003
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000004
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000005
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000006
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000007
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000008
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000009
  • 特許6606073-金属合金の加工方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606073
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】金属合金の加工方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 8/00 20060101AFI20191031BHJP
   C22F 1/10 20060101ALI20191031BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20191031BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20191031BHJP
   B21J 5/00 20060101ALI20191031BHJP
   B21J 1/02 20060101ALI20191031BHJP
   B21J 1/06 20060101ALI20191031BHJP
   C22F 1/18 20060101ALN20191031BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20191031BHJP
【FI】
   C21D8/00 E
   C22F1/10 A
   C22C38/00 302Z
   C22C38/60
   B21J5/00 A
   B21J5/00 D
   B21J5/00 E
   B21J1/02 Z
   B21J1/06 Z
   !C22F1/18 H
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 612
   !C22F1/00 601
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 684C
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】23
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-528833(P2016-528833)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公表番号】特表2017-501299(P2017-501299A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】US2014062525
(87)【国際公開番号】WO2015073201
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】14/077,699
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501187033
【氏名又は名称】エイティーアイ・プロパティーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス・ジョーンズ,ロビン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ミニサンドラム,ラメッシュ・エス
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−247023(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0156628(US,A1)
【文献】 特開平06−093389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00−11/00
C22F 1/00− 1/18
C22C 38/00−38/60
C22C 19/00−19/07
B21J 1/02
B21J 1/06
B21J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の加工方法であって、
スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工温度範囲内の温度に加熱すること、前記加工温度範囲は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の再結晶温度から前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の融解開始温度未満の温度までである;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を前記加工温度範囲内で加工すること;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を前記加工温度範囲内加熱すること、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することから少なくとも前記表面領域を加熱することまでの時間中、前記加工温度範囲未満の温度まで冷却しない;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を再結晶させ、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金において00〜3のASTM結晶粒サイズ数を達成するために、5分〜2時間、前記加工温度範囲内で維持すること;及び
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を、前記加工温度範囲から周囲温度まで、0.17摂氏温度毎分から5.6摂氏温度毎分(0.3華氏温度毎分から10華氏温度毎分)の範囲内の冷却速度で冷却すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することと、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の表面領域を加熱することとの間に、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加熱装置に移動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金が、合金総重量に基づく重量パーセントで、0.2以下の炭素;20以下のマンガン;0.1〜1.0のケイ素;14.0〜28.0のクロム;15.0〜38.0のニッケル;2.0〜9.0のモリブデン;0.1〜3.0の銅;0.08〜0.9の窒素;0.1〜5.0のタングステン;0.5〜5.0のコバルト;1.0以下のチタン;0.05以下のホウ素;0.05以下のリン;0.05以下の硫黄;鉄;及び不可避不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を鍛造すること、圧延すること、分塊すること、押出しすること、及び成形することのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金をロール鍛造すること、スエージングすること、鍛伸すること、自由鍛造すること、彫込み型鍛造すること、圧縮鍛造すること、自動熱間鍛造すること、ラジアル鍛造すること、及び据込み鍛造することのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を加熱することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を炉加熱すること、火炎加熱すること、及び誘導加熱することのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を前記加工温度範囲に加熱することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の金属間化合物シグマ相析出物のソルバス温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記融解開始温度未満までの温度範囲に加熱することを含み;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工する前記加工温度範囲は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物シグマ相析出物の時間−温度−変態図の頂点温度を超える温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記融解開始温度未満までであり;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を維持する前記加工温度範囲は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物シグマ相析出物の前記時間−温度−変態図の前記頂点温度を超える温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記融解開始温度未満までであり;且つ
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の温度は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の加工中及び前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも前記表面領域の加熱前に、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物シグマ相析出物の前記時間−温度−変態図と交差しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を鍛造すること、圧延すること、分塊すること、押出しすること、及び成形することのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金をロール鍛造すること、スエージングすること、鍛伸すること、自由鍛造すること、彫込み型鍛造すること、圧縮鍛造すること、自動熱間鍛造すること、ラジアル鍛造すること、及び据込み鍛造することのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の表面領域を加熱することが、前記表面領域を炉加熱すること、火炎加熱すること、及び誘導加熱することのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記加工温度範囲内で維持することが、前記表面領域を再結晶させ、前記表面領域にある前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物シグマ相析出物を溶解させ、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金において00〜3のASTM結晶粒サイズ数を達成するために、5分〜2時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記加工温度範囲内で維持することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を冷却することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を焼入れすること、強制空冷すること、及び空冷することのうちの1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を冷却することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を水焼入れすること及び油焼入れすることのうちの1つを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の加工方法であって、前記方法が
スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を、金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の金属間化合物相析出物溶解温度に加熱すること、前記金属間化合物相析出物溶解温度範囲は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の金属間化合物相析出物のソルバス温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の融解開始温度直下の温度までである;
前記金属間化合物相析出物を溶解させ、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金において00〜3のASTM結晶粒サイズ数を達成するために、1分〜2時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を前記金属間化合物相析出物溶解温度範囲内で維持すること;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物相析出物の時間−温度−変態曲線の頂点温度のすぐ上から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記融解開始温度直下までの加工温度範囲内の加工温度で、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工すること;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物相析出物の前記時間−温度−変態曲線の前記頂点温度のすぐ上の温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記融解開始温度直下までの焼きなまし温度範囲内の温度に前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を加熱すること、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の温度は、前記合金を加工する間及び前記合金の少なくとも表面領域を前記焼きなまし温度範囲内の温度に加熱する前に、前記時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却せず、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することから、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を前記加工温度範囲内の温度に加熱することまでの時間、前記頂点温度まで冷却しない;
前記表面領域を再結晶させ、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金において00〜3のASTM結晶粒サイズ数を達成するために、5分〜2時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記焼きなまし温度範囲内で維持すること;及び
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を、0.17摂氏温度毎分から5.6摂氏温度毎分(0.3華氏温度毎分から10華氏温度毎分)の範囲内の冷却速度で、周囲温度に冷却すること
を含む、方法。
【請求項15】
前記金属間化合物相析出物がシグマ相を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することと、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を加熱することとの間に、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加熱装置に移動させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を鍛造すること、圧延すること、分塊すること、押出しすること、及び成形することのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金をロール鍛造すること、スエージングすること、鍛伸すること、自由鍛造すること、彫込み型鍛造すること、圧縮鍛造すること、自動熱間鍛造すること、ラジアル鍛造すること、及び据込み鍛造することのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金をラジアル鍛造することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の表面領域を加熱することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を炉加熱すること、火炎加熱すること、及び誘導加熱することのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を冷却することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を焼入れすること、強制空冷すること、及び空冷することのうちの1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を冷却することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を水焼入れすること、及び油焼入れすることのうちの1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金が、合金総重量に基づく重量パーセントで、0.2以下の炭素;20以下のマンガン;0.1〜1.0のケイ素;14.0〜28.0のクロム;15.0〜38.0のニッケル;2.0〜9.0のモリブデン;0.1〜3.0の銅;0.08〜0.9の窒素;0.1〜5.0のタングステン;0.5〜5.0のコバルト;1.0以下のチタン;0.05以下のホウ素;0.05以下のリン;0.05以下の硫黄;鉄;及び不可避不純物を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は金属合金を熱機械的に加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインゴット、棒またはビレット等の金属合金加工物が熱機械的に加工される(すなわち熱加工される)場合、加工物表面は、加工物内部よりも速く冷却する。この現象の具体例は、ラジアル鍛造プレスまたは自由プレス鍛造を使用して金属合金棒が加熱され、次いで鍛造される際に生じる。熱間鍛造中、型の作用により金属合金の結晶粒構造は変形する。変形中の金属合金温度が合金の再結晶温度よりも低い場合、合金は再結晶せず、その結果結晶粒構造は、再結晶していない細長い結晶粒からなる。一方、変形中の合金温度が合金の再結晶温度よりも高いかまたは同じである場合、合金は再結晶して等軸構造になる。
【0003】
金属合金加工物は、通常、熱間鍛造前に合金の再結晶温度よりも高い温度に加熱されるので、加工物表面ほど速く冷却しない加工物の内部は、通常、熱間鍛造時には完全に再結晶した構造を示す。しかしながら加工物の表面は再結晶していない結晶粒と完全に再結晶した結晶粒の混合物を示し得る。これは、相対的に速く冷却する結果、表面での温度はより低温となるためである。この現象の見本として、図1はDatalloy HP(商標)合金のラジアル鍛造棒のマクロ構造を示しており、棒の表面領域の再結晶していない結晶粒を示している。Datalloy HP(商標)合金は、米国ノースカロライナ州モンローのATI Allvacから入手可能なスーパーオーステナイトステンレス鋼合金である。表面領域の再結晶していない結晶粒は望ましくなく、なぜなら例えば超音波試験中のノイズレベルを増加させてこのような試験の有用性を減少させるからである。超音波検査は、重要な用途で使用する金属合金加工物の状態を確かめるのに必要とされてもよい。第2に、再結晶していない結晶粒は、合金の高サイクル耐疲労性を減少させる。
【0004】
熱機械的に加工した、例えば鍛造棒等の金属合金加工物の表面領域で、再結晶していない結晶粒を無くす従来の試みは不十分であることがわかっている。例えば、表面領域の再結晶していない結晶粒を無くす処理中に、合金加工物の内部で結晶粒の過剰成長が生じている。特大の結晶粒も、金属合金の超音波検査を困難にし得る。内部での過剰な結晶粒成長は、合金加工物の耐疲労性も許容できないレベルまで減少させ得る。さらに、熱機械的に加工した合金加工物の表面領域で再結晶していない結晶粒を無くす試みにより、例えばシグマ相(σ相)等の有害な金属間化合物析出物の析出が生じている。このような析出物の存在は、耐食性を減少させ得る。
【0005】
加工物の表面領域で再結晶していない結晶粒を最小限にするかまたは無くすような方法で、金属合金加工物を熱機械的に加工する方法を開発することは有利であろう。加工物の断面を通して等軸に再結晶した結晶粒構造を提供するために、金属合金加工物を熱機械的に加工する方法を開発することもまた有利であろう。この断面は、等軸結晶粒構造の平均結晶粒サイズを限定するが、有害な金属間化合物析出物を実質的に有しない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一非限定的態様に従って、金属合金を加工する方法は、加工温度範囲内の温度に金属合金を加熱することを含む。この加工温度範囲は、金属合金の再結晶温度から、金属合金の融解開始温度直下の温度までである。次いで金属合金を加工温度範囲内の温度で加工する。金属合金を加工後、金属合金の表面領域を加工温度範囲内の温度まで加熱する。金属合金の表面領域は、金属合金の表面領域を再結晶させ、且つ金属合金内部での結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、加工温度範囲内で維持する。金属合金は、加工温度範囲から、金属合金における結晶粒成長を最小限にする温度まで、金属合金における結晶粒成長を最小限にする冷却速度で冷却する。
【0007】
本開示の別の態様に従って、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を加工する方法の非限定的実施形態は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を、金属間化合物相溶解温度範囲内の温度まで加熱することを含む。金属間化合物相溶解温度範囲は、金属間化合物相のソルバス温度からスーパーオーステナイトステンレス鋼合金の融解開始温度直下までであってもよい。非限定的実施形態においては、金属間化合物相はシグマ相(σ相)であり、シグマ相はFe−Cr−Ni金属間化合物からなる。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、金属間化合物相を溶解させ、且つスーパーオーステナイトステンレス鋼合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、金属間化合物相溶解温度範囲内で維持する。その後、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の金属間化合物相における時間−温度−変態曲線の頂点温度のすぐ上から、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の融解開始温度直下までの加工温度範囲内の温度で、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を加工する。加工後、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱する。この焼きなまし温度範囲は、合金の金属間化合物相における時間−温度−変態曲線の頂点温度のすぐ上から、合金の融解開始温度直下までである。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の温度は、時間中、時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却しない。この時間中とは、合金を加工することから、合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱することまでの時間である。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の表面領域は、表面領域を再結晶させ、且つスーパーオーステナイトステンレス鋼合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、焼きなまし温度範囲内で維持する。合金は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の金属間化合物析出物の生成を妨げ且つ結晶粒成長を最小限にする温度まで、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の金属間化合物析出物の生成を妨げ且つ結晶粒成長を最小限にする冷却速度で冷却する。
【0008】
本開示の別の非限定的態様に従って、熱加工されたスーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、合金総重量に基づく重量パーセントで0.2以下の炭素、20以下のマンガン、0.1〜1.0のケイ素、14.0〜28.0のクロム、15.0〜38.0のニッケル、2.0〜9.0のモリブデン、0.1〜3.0の銅、0.08〜0.9の窒素、0.1〜5.0のタングステン、0.5〜5.0のコバルト、1.0以下のチタン、0.05以下のホウ素、0.05以下のリン、0.05以下の硫黄、鉄、及び不可避不純物を含む。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、合金の断面を通して等軸に再結晶した結晶粒構造と、ASTM 00〜ASTM 3の範囲の平均結晶粒サイズとを含む。熱加工されたスーパーオーステナイトステンレス鋼合金の等軸に再結晶した結晶粒構造では、金属間化合物シグマ相析出物は実質的に無い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書において記載される方法、合金、及び物品の特徴及び利点は、添付の図面を参照することによって、より深い理解がなされてもよい。図面は以下のとおりである。
【0010】
図1図1は、棒の表面領域において再結晶していない結晶粒を含むDatalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金のラジアル鍛造棒のマクロ構造を示す。
図2図2は、高温(2150°F)で焼きなましたDatalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金のラジアル鍛造棒のマクロ構造を示す。
図3図3は、本開示に従って金属合金を加工する方法の非限定的実施形態を例示しているフローチャートである。
図4図4は、オーステナイトステンレス鋼合金のシグマ相金属間化合物析出物の典型的な等温変態曲線である。
図5図5は、本開示に従ってスーパーオーステナイトステンレス鋼合金を加工する方法の非限定的実施形態を例示しているフローチャートである。
図6図6は、本開示の特定の非限定的な方法の実施形態の、時間に対する加工温度の図である。
図7図7は、本開示の特定の非限定的な方法の実施形態の、時間に対する加工温度の図である。
図8図8は、図6の時間に対する加工温度の図に従って加工したDatalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を含む工場生産品のマクロ構造を示す。
図9図9は、図7の時間に対する加工温度の図に従って加工したDatalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を含む工場生産品のマクロ構造を示す。
【0011】
本開示の特定の非限定的実施形態についての以下の詳細な記載を考慮することによって、上述の詳細及びその他を読者は理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において記載される実施形態についての特定の記載は簡素化されており、開示される実施形態を明白に理解することに関連した実施形態の工程、要素、特徴、及び/または態様のみを例示しており、明確化の目的で、他の工程、要素、特徴、及び/または態様は除いていることを理解する必要がある。他の工程、要素、及び/または特徴は、開示される実施形態の特定の実施または用途においては望ましくてもよいことを、開示される実施形態についての本記載を考慮することにより当業者は理解するであろう。しかしながら、かかる他の工程、要素、及び/または特徴は、開示される実施形態についての本記載を考慮することにより当業者によって容易に確認され、実施されてもよく、したがって開示される実施形態を完全に理解することに対して必要なものではないため、かかる工程、要素、及び/または特徴は本明細書においては提供されていない。よって、本明細書の記載は、開示される実施形態の単なる好例及び例示であり、特許請求の範囲によってのみ規定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解する必要がある。
【0013】
また、本明細書において記載されるあらゆる数の範囲は、その範囲に包含される全ての部分範囲を含むよう意図される。例えば、「1〜10」の範囲は、記載される最小値の1から、記載される最大値の10の間の(及びそれらの値を含む)全ての部分範囲、すなわち1以上の最小値と10以下の最大値とを有する全ての部分範囲を含むよう意図される。本明細書に記載されるあらゆる最大数値限定は、その中に包含されるそれよりも低い全ての数値限定を含むよう意図され、また本明細書に記載されるあらゆる最小数値限定は、その中に包含されるそれよりも高い全ての数値限定を含むよう意図される。したがって、本出願者は、特許請求の範囲を含む本明細書を、本明細書に明記される範囲内に包含される任意の部分範囲を明記するよう補正する権利を有する。全てのかかる範囲は、任意のかかる部分範囲を明記する補正が米国特許法第112条第1章、及び米国特許法第132条(a)の要件に準拠するように、本明細書において本質的に開示されるよう意図される。
【0014】
本明細書において使用される場合、文法的冠詞の「1つの(one)」、「a」、「an」、及び「その(the)」は、別途指定されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むよう意図される。したがって、本明細書においては、冠詞は、1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法的目的語を指すのに使用される。例として、「構成要素」は、1つ以上の構成要素を意味し、したがって、場合により複数の構成要素が意図され、記載される実施形態の実施に利用または使用されてもよい。
【0015】
参照により全体的または部分的に本明細書に援用されると述べられている任意の特許、刊行物、または他の開示資料は、援用される資料が本明細書に記載される目下の規定、記述、または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に援用される。そのようにして、且つ必要な範囲において、本明細書に記載される開示は、参照により本明細書に援用され矛盾している任意の資料を破棄する。参照により本明細書に援用されると述べられているが、本明細書に記載される目下の規定、記述、または他の開示資料と矛盾する任意の資料またはその一部は、援用される資料と目下の開示資料との間に矛盾が生じない範囲でのみ援用される。
【0016】
本開示は様々な実施形態の記載を含む。本明細書において記載される全ての実施形態は典型的なものであり、例示するものであり、且つ非限定的なものであることを理解する必要がある。したがって、本発明は、様々な典型的な実施形態、例示の実施形態、及び非限定的実施形態によって限定されない。反対に、本発明は特許請求の範囲によってのみ規定されるものであり、特許請求の範囲は、本開示において明記されるかまたは本質的に記載される任意の特徴を記載するよう、あるいは本開示によって明白に支持されるかまたは本質的に支持される任意の特徴を記載するよう補正されてもよい。
【0017】
焼きなまし熱処理を行い、それにより合金の再結晶温度を超える焼きなまし温度に合金を加熱し、再結晶が完了するまでその温度で維持することによって、熱加工した金属合金棒または他の加工物において再結晶していない表面結晶粒を除去することは可能である。しかしながら、この方法で加工した際、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及び特定の他のオーステナイトステンレス鋼合金では、シグマ相析出物等の有害な金属間化合物析出物が生成しやすい。これらの合金のより大きいサイズの棒及び他の大きい素材成形物を焼きなまし温度まで加熱すると、例えば、特に素材成形物の中心領域において有害な金属間化合物が析出し得る。したがって、焼きなまし回数及び焼きなまし温度は、表面領域結晶粒を再結晶させるだけでなく、任意の金属間化合物を溶解させるよう選択しなければならない。大きな棒の断面を通して金属間化合物が溶解していることを確実にするために、例えば有意な時間、棒を高温で維持することが必要であってもよい。棒の直径は、有害な金属間化合物を十分に溶解するのに必要な最小維持時間を決定する因子であるが、最小維持時間は1〜4時間、またはそれ以上の長さであることができる。非限定的実施形態においては、最小維持時間は2時間、2時間超、3時間、4時間、または5時間である。金属間化合物を溶解すること、及び表面領域の再結晶していない結晶粒を再結晶させることの両方が行われる温度及び維持時間を選択することが可能であってもよいが、溶解温度で長い時間維持することによって、結晶粒を許容できないほど大きな寸法に成長させる可能性もある。例えば、高温(2150°F)で長い時間焼きなましたATI Datalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金のラジアル鍛造棒のマクロ構造を図2に示す。図2において明らかな、加熱中に形成された過剰に大きな結晶粒は、棒を超音波検査して、特定の需要ある工業用途への適合性を保証することを困難にする。さらに、過剰に大きな結晶粒は、許容できないほど低いレベルに金属の耐疲労性を減少させた。
【0018】
ATI Datalloy HP(商標)合金は、例えば米国特許出願第13/331,135号において概して記載されており、当該出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。図2に示すATI Datalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金棒の実測化学組成は、合金総重量に基づく重量パーセントで0.006の炭素;4.38のマンガン;0.013のリン;0.0004の硫黄;0.26のケイ素;21.80のクロム;29.97のニッケル;5.19のモリブデン;1.17の銅;0.91のタングステン;2.70のコバルト;0.01未満のチタン;0.01未満のニオブ; 0.04のバナジウム;0.01未満のアルミニウム;0.380の窒素;0.01未満のジルコニウム;残部の鉄、及び未検出不可避不純物であった。概してATI Datalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、合金総重量に基づく重量パーセントで0.2以下の炭素、20以下のマンガン、0.1〜1.0のケイ素、14.0〜28.0のクロム、15.0〜38.0のニッケル、2.0〜9.0のモリブデン、0.1〜3.0の銅、0.08〜0.9の窒素、0.1〜5.0のタングステン、0.5〜5.0のコバルト、1.0以下のチタン、0.05以下のホウ素、0.05以下のリン、0.05以下の硫黄、鉄、及び不可避不純物を含む。
【0019】
図3に関しては、本開示の態様に従って、金属合金を加工する方法の非限定的実施形態10の特定の工程が模式的に示されている。方法10は、金属合金を加工温度範囲の温度まで加熱すること12を含んでもよい。この加工温度範囲は、金属合金の再結晶温度から、金属合金の融解開始温度直下の温度までであってもよい。方法10の一非限定的実施形態においては、金属合金はDatalloy HP(商標)スーパーオーステナイトステンレス鋼合金であり、加工温度範囲は、1900°F超から2150°F以下である。さらに、金属合金がスーパーオーステナイトステンレス鋼合金または別のオーステナイトステンレス鋼合金である場合、合金は、合金中に存在する金属間化合物相析出物を溶解するのに十分高い程度の加工温度範囲内の温度に加熱すること12が好ましい。
【0020】
加工温度範囲内の温度に加熱したら、金属合金を加工温度範囲内で加工14する。非限定的実施形態においては、金属合金を加工温度範囲内で加工することにより、金属合金の少なくとも内部領域の結晶粒が再結晶する。例えば加工型との接触による冷却に起因し、金属合金の表面領域はより速く冷却する傾向があるため、金属合金の表面領域の結晶粒は、加工温度範囲よりも低い温度に冷却してもよく、加工中に再結晶しなくてもよい。本明細書の様々な非限定的実施形態においては、金属合金または金属合金加工物の「表面領域」は、表面から、合金または加工物の内部への深さ0.001インチ、0.01インチ、0.1インチ、または1インチ以上までの領域を指す。加工14中に再結晶しない表面領域の深さは複数の要因に依存し、例えば金属合金の組成、加工開始時の合金温度、合金の直径または厚さ、加工型の温度、及び同種の物といった要因に依存することが理解されるであろう。加工中に再結晶しない表面領域の深さは、必要以上な実験を行うことなく当業者によって容易に決定されるので、よって本開示の方法の任意の特定の非限定的実施形態中に再結晶しない表面領域の深さについては、本明細書においてさらなる議論がなされる必要は無い。
【0021】
表面領域は加工中に再結晶しなくてもよいため、金属合金を加工後、合金の任意の意図的な冷却前に、合金の少なくとも表面領域を加工温度範囲内の温度まで加熱18する。任意に、金属合金の加工14後、合金を加熱装置に移動16させる。様々な非限定的実施形態においては、加熱装置は、1つ以上の炉、火炎加熱場所、誘導加熱場所、または当業者に公知の任意の他の好適な加熱装置を含む。加熱装置は加工場所の所定位置にあってもよく、または型、ロール、もしくは加工場所にある任意の他の熱加工装置を加熱して、合金の接触した表面領域の加工中の冷却を最小限にしてもよいことが認識されるであろう。
【0022】
金属合金の少なくとも表面領域を加工温度範囲内まで加熱18後、表面領域の温度を、金属合金の表面領域を再結晶させるのに十分な時間、加工温度範囲内に維持20し、金属合金の全断面を再結晶させる。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイト合金に使用される場合、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金またはオーステナイトステンレス鋼合金の温度は、合金を加工すること14から合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱すること18までの時間内では、時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却しない。これにより、例えばシグマ相等の有害な金属間化合物相が、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金またはオーステナイト合金中に析出することが妨げられる。この制限について、以下でさらに説明する。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及び他のオーステナイトステンレス鋼合金に使用される本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、加熱した表面領域の温度を焼きなまし温度範囲内で維持20する時間は、表面領域の結晶粒を再結晶させ、且つ任意の有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分な時間である。
【0023】
金属合金を加工温度範囲内で維持20して合金の表面領域を再結晶させた後、合金を冷却22する。特定の非限定的実施形態においては、金属合金は、周囲温度に冷却してもよい。特定の非限定的実施形態においては、金属合金は、加工温度範囲から、金属合金中の結晶粒成長を最小限にするのに十分な温度まで、金属合金中の結晶粒成長を最小限にするのに十分な冷却速度で冷却してもよい。非限定的実施形態においては、冷却工程中の冷却速度は、0.3華氏温度毎分から10華氏温度毎分の範囲内である。本開示の典型的な冷却方法としては、焼入れ(例えば水焼入れ及び油焼入れ等)、強制空冷、ならびに空冷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属合金中の結晶粒成長を最小限にする冷却速度は多くの要因に依存し、その要因としては金属合金の組成、加工開始温度、及び金属合金の直径または厚さが挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属合金の少なくとも表面領域を加工温度範囲に加熱18する工程と、表面領域を、加工温度範囲内で、表面領域を再結晶化させる時間維持20する工程との組合せは、本明細書において「瞬間焼なまし」と呼んでもよい。
【0024】
本方法と関連して本明細書において使用される場合、「金属合金」という用語は、ベース金属元素または主金属元素と、1つ以上の意図的合金化付加物と、不可避不純物とを含む材料を包含する。本明細書において使用される場合、「金属合金」には、「工業用純」材料、ならびに金属元素及び不可避不純物からなる他の材料が含まれる。本方法は、任意の好適な金属合金に使用されてもよい。非限定的実施形態に従って、本開示の方法は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金、オーステナイトステンレス鋼合金、チタン合金、工業用純チタン、ニッケル合金、ニッケル系超合金、及びコバルト合金から選択される金属合金において行われてもよい。非限定的実施形態においては、金属合金はオーステナイト材料を含む。非限定的実施形態においては、金属合金は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金のうちの1つを含む。別の非限定的実施形態においては、金属合金は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を含む。特定の非限定的実施形態においては、本開示の方法によって加工される合金は、以下の合金から選択される。ATI Datalloy HP(商標)合金(UNS番号無し);ATI Datalloy2(登録商標)ESR合金(UNS番号無し);Alloy25−6HN(UNS N08367);Alloy600(UNS N06600);Hastelloy(登録商標)G−2(商標)合金(UNS N06975);Alloy625(UNS N06625);Alloy800(UNS N08800);Alloy800H(UNS N08810)、Alloy800AT(UNS N08811);Alloy825(UNS N08825);Alloy G3(UNS N06985);Alloy2535(UNS N08535);Alloy2550(UNS N06255);及びAlloy316L(UNS S31603)。
【0025】
ATI Datalloy2(登録商標)ESR合金は、米国ノースカロライナ州モンローのATI Allvacから入手可能であり、国際特許出願公開第WO99/23267号において概して記載されており、当該出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。ATI Datalloy2(登録商標)ESR合金は、合金総重量に基づく重量パーセントで、以下の化学組成を有する。0.03の炭素;0.30のケイ素;15.1のマンガン;15.3のクロム;2.1のモリブデン;2.3のニッケル;0.4の窒素;及び残部の鉄、及び不可避不純物。概してATI Datalloy2(登録商標)合金は、合金総重量に基づく重量パーセントで0.05以下の炭素;1.0以下のケイ素;10〜20のマンガン;13.5〜18.0のクロム;1.0〜4.0のニッケル;1.5〜3.5のモリブデン;0.2〜0.4の窒素;鉄;及び不可避不純物を含む。
【0026】
スーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、ステンレス鋼の古典的な規定には適合しないが、これは鉄が占めるのはスーパーオーステナイトステンレス鋼合金の50重量パーセント未満であるためである。従来のオーステナイトステンレス鋼と比べて、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、ハロゲン化物を含む環境において優れた耐孔食性と耐隙間腐食性とを示す。
【0027】
本方法に従って高温で金属合金を加工する工程は、公知技術のいずれかを使用して行ってもよい。本明細書において使用される場合、「成形」、「鍛造」、及び「ラジアル鍛造」という用語は熱機械的加工(thermomechanical processing)(「TMP」)を指す。熱機械的加工は、本明細書においては、「熱機械的加工(thermomechanical working)」、または単純に「加工」とも呼ばれてもよい。本明細書において使用される場合、別段の定めがない限り、「加工」は「熱加工」を指す。本明細書において使用される場合、「熱加工」は、金属合金の再結晶温度以上の温度で金属合金を成形する、制御された機械操作を指す。熱機械的加工は、制御された加熱と変形とを組み合わせて相乗効果を得る、いくつかの金属合金成形プロセスを包含する。この相乗効果とは、靱性を失うことなく強度が改善すること等である。例えば、ASM Materials Engineering Dictionary、J.R.Davis、ASM International編(1992)、480頁を参照のこと。
【0028】
本開示の方法10の様々な非限定的実施形態においては、図3に関して、金属合金の加工14は、金属合金の鍛造、圧延、分塊、押出し、及び成形のうちの1つ以上を含む。様々な、より詳細な非限定的実施形態においては、金属合金の加工14は、金属合金の鍛造を含む。様々な非限定的実施形態は、ロール鍛造、スエージング、鍛伸、自由鍛造、彫込み型鍛造、圧縮鍛造、自動熱間鍛造、ラジアル鍛造、及び据込み鍛造から選択される1つ以上の鍛造技術を使用した、金属合金の加工14を含んでもよい。非限定的実施形態においては、加熱した型、加熱したロール、及び/または同種の物を使用して、加工中、金属合金の表面領域の冷却を減少させてもよい。
【0029】
本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、再度図3に関し、金属合金の表面領域を加工温度範囲内の温度に加熱すること18は、焼きなまし炉または別の種類の炉に合金を配置することによって表面領域を加熱することを含んでもよい。本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、表面領域を加工温度範囲に加熱すること18は、炉加熱、火炎加熱、及び誘導加熱のうちの1つ以上を含む。
【0030】
本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、再度図3に関し、金属合金の表面領域を加工温度範囲内で維持すること20は、加熱した金属合金の表面領域を再結晶させ、且つ金属合金中の結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、表面領域を加工温度範囲内で維持することを含んでもよい。金属合金中の結晶粒が過剰に大きいサイズへ成長することを避けるために、例えば、特定の非限定的実施形態においては、表面領域の温度を加工温度範囲内で維持する時間は、加熱した金属合金の表面領域を再結晶させ、その結果金属合金の全断面を通して結晶粒が再結晶するのに必要な時間を超過しない時間に制限されてもよい。他の非限定的実施形態においては、維持すること20は、金属合金の温度を、金属合金成形物の表面から中心まで均一にさせるのに十分な時間、金属合金を加工温度範囲内で維持することを含む。詳細な非限定的実施形態においては、金属合金は、1分〜2時間、5分〜60分、または10分〜30分の時間、加工温度範囲内で維持20する。
【0031】
さらに、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金に使用される本方法の非限定的実施形態においては、好ましくは合金を加工14し、表面領域を加熱18し、且つ合金を加工温度範囲内の温度で維持20する。この加工温度範囲は、これらの工程中、合金の機械特性または物理特性に有害である金属間化合物相を固溶体中で保つのに十分に高温であるか、または任意の金属間化合物析出物相を固溶体へ溶解させるのに十分に高温である。非限定的実施形態においては、金属間化合物相を固溶体中で保つことにより、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金の温度が、時間中、時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却することが妨げられる。上記の時間中とは、合金を加工することから、合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱することまでの時間である。これを以下でさらに説明する。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金に使用される本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、加熱した表面領域の温度を加工温度範囲内で維持20する時間は、表面領域の結晶粒を再結晶させ、任意の有害な金属間化合物析出物相を溶解し、且つ合金中の結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間である。上記の金属間化合物析出物相は、加工14中の表面領域の意図しない冷却に起因して、加工14工程中に析出していてもよい。このような時間の長さは、金属合金の組成、及び金属合金成形物の寸法(例えば直径または厚さ)を含めた因子に依存することが認識されるであろう。特定の非限定的実施形態においては、金属合金の表面領域は、1分〜2時間、5分〜60分、または10分〜30分の時間、加工温度範囲内で維持20してもよい。
【0032】
金属合金がスーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金のうちの1つである本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、加熱すること12は、金属間化合物析出物相のソルバス温度から金属合金の融解開始温度直下までの加工温度範囲に加熱することを含む。金属合金がスーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金のうちの1つである本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、金属合金を加工14する工程中の加工温度範囲は、金属合金の金属間化合物シグマ相析出物のソルバス温度直下の温度から金属合金の融解開始温度直下の温度までである。
【0033】
いかなる特定の理論にも拘束されることを意図するものではないが、特定の金属間化合物相の析出に対する合金の等温変態曲線のノーズ温度または頂点温度以下の温度へと、合金の任意の部分の温度が冷却する際、析出の反応速度論は、合金中で析出を生じさせるのに十分な程度に速いため、金属間化合物析出物は、オーステナイトステンレス鋼合金及びスーパーオーステナイトステンレス鋼合金中で主として生成すると考えられる。図4は典型的な等温変態曲線40である。等温変態曲線は、時間−温度−変態図または時間−温度−変態曲線(「TTT図」または「TTT曲線」)としても知られる。図4は、典型的なオーステナイトステンレス鋼合金中の0.1重量パーセントのシグマ相(σ相)金属間化合物析出物の反応速度論を予測する。図4より、金属間化合物析出物は、等温変態曲線40を含む「C」曲線の頂点42または「ノーズ」において、最も速く、すなわち最も短い時間で生じることがわかるであろう。したがって本開示の方法の特定の非限定的実施形態においては、加工温度範囲に関して、金属合金の金属間化合物シグマ相析出物の「頂点温度のすぐ上」という句は、特定の合金のTTT図にあるC曲線の頂点42温度のすぐ上の温度を指す。他の非限定的実施形態においては、「頂点温度のすぐ上の温度」という句は、金属合金の金属間化合物シグマ相析出物の頂点42温度の5華氏温度、または10華氏温度、または20華氏温度、または30華氏温度、または40華氏温度、または50華氏温度上の範囲内の温度を指す。
【0034】
本開示の方法を、オーステナイトステンレス鋼合金またはスーパーオーステナイトステンレス鋼合金において行う場合、金属合金を冷却22する工程は、金属合金における金属間化合物シグマ相析出物の析出を妨げるのに十分な速度で冷却することを含んでもよい。非限定的実施形態においては、冷却速度は、0.3華氏温度毎分から10華氏温度毎分の範囲内である。本開示の典型的な冷却方法としては、例えば水焼入れ及び油焼入れ等の焼入れ、強制空冷、ならびに空冷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本開示の方法を使用して加工してもよいオーステナイト材料の具体例としては以下の物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ATI Datalloy HP(商標)合金(UNS番号無し);ATI Datalloy2(登録商標)ESR合金(UNS番号無し);Alloy25−6HN(UNS N08367);Alloy600(UNS N06600);Hastelloy(登録商標)G−2(商標)合金(UNS N06975);Alloy625(UNS N06625);Alloy800(UNS N08800);Alloy800H(UNS N08810)、Alloy800AT(UNS N08811);Alloy825(UNS N08825);Alloy G3(UNS N06985);Alloy2550(UNS N06255);Alloy2535(UNS N08535);及びAlloy316L(UNS S31603)。
【0036】
さて図5〜7に関しては、本開示の態様に従って、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金及びオーステナイトステンレス鋼合金のうちの1つを加工する方法50の非限定的実施形態は、図5のフローチャートと、図6及び7の時間−温度図とに示す。方法50の非限定的実施形態の以下の記載は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金とオーステナイトステンレス鋼合金の両方、及び他のオーステナイト材料に等しく適用されることが認識される必要がある。便宜上、図5はスーパーオーステナイトステンレス鋼のみに関する。また、図6及び7は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金であるDatalloy HP(商標)合金に使用される方法の時間−温度プロットであるが、概して異なる温度を使用した同様のプロセス工程は、オーステナイトステンレス鋼合金及び他のオーステナイト材料に適用可能である。
【0037】
方法50は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を、例えば金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の温度に加熱52することを含む。この金属間化合物相析出物溶解温度範囲とは、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金中の金属間化合物相析出物のソルバス温度から、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の融解開始温度直下の温度までである。Datalloy HP(商標)合金での特定の非限定的な方法の実施形態においては、金属間化合物析出物溶解温度範囲は、1900°F超〜2150°Fである。非限定的実施形態においては、金属間化合物相はシグマ相(σ相)であり、シグマ相はFe−Cr−Ni金属間化合物からなる。
【0038】
スーパーオーステナイトステンレス鋼は、金属間化合物相析出物を溶解し、且つスーパーオーステナイトステンレス鋼合金での結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、金属間化合物相析出物溶解温度範囲内で維持53する。非限定的実施形態においては、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金またはオーステナイトステンレス鋼合金は、1分〜2時間、5分〜60分、または10分〜30分の時間、金属間化合物相析出物溶解温度範囲内で維持してもよい。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金またはオーステナイトステンレス鋼合金を金属間化合物相析出物溶解温度範囲内で維持53して金属間化合物相析出物を溶解するのに必要な最小時間は、例えば合金の組成、加工物の厚さ、及び使用する金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の特定温度といった因子に依存することが認識されるであろう。本開示を考慮することにより、当業者は、金属間化合物相の溶解に必要な最小時間を、必要以上の実験を行うことなく決定することができることが理解されるであろう。
【0039】
維持工程53後、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金は、合金の金属間化合物相析出物におけるTTT曲線の頂点温度のすぐ上から、合金の融解開始温度直下までの加工温度範囲内の温度で加工54する。
【0040】
表面領域は加工54中に再結晶しなくてもよいため、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を加工後、合金の任意の意図的な冷却前に、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度まで加熱58する。非限定的実施形態においては、焼きなまし温度範囲は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の金属間化合物相析出物における時間−温度−変態曲線の頂上温度(例えば図4の点42を参照のこと)のすぐ上の温度から、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の融解開始温度直下までである。
【0041】
任意に、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の加工54後、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金を加熱装置に移動56させてもよい。様々な非限定的実施形態においては、加熱装置は、1つ以上の炉、火炎加熱場所、誘導加熱場所、または当業者に公知の任意の他の好適な加熱装置を含む。例えば、加熱装置は加工場所の所定位置にあってもよく、または型、ロール、もしくは加工場所にある任意の熱加工装置を加熱して、金属合金の接触した表面領域の意図しない冷却を最小限にしてもよい。
【0042】
加工54後、合金の表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱58する。加熱58工程においては、焼きなまし温度範囲は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の金属間化合物相析出物における時間−温度−変態曲線の頂上温度(例えば図4の点42を参照のこと)のすぐ上の温度から、合金の融解開始温度直下までである。スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の温度は、時間中、時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却しない。上記の時間中とは、合金を加工54することから、合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱58することまでの時間である。しかしながら、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の表面領域は、合金の内部領域よりも速く冷却するため、加工54中、合金の表面領域が焼きなまし温度範囲よりも低い温度に冷却し、その結果表面領域に有害な金属間化合物相析出物が析出する危険性があることが認識されるであろう。
【0043】
非限定的実施形態においては、図5〜7に関し、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の表面領域は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金の表面領域を再結晶させ、且つ表面領域で析出していてもよい任意の有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分であるが合金中で過剰な結晶粒成長が生じない時間、焼きなまし温度範囲内で維持60する。
【0044】
再度図5〜7に関し、合金を焼きなまし温度範囲内で維持60した後、合金は、スーパーオーステナイトステンレス鋼合金中で金属間化合物シグマ相析出物の生成を妨げるのに十分な冷却速度で、金属間化合物シグマ相析出物の生成を妨げるのに十分な温度まで冷却62する。方法50の非限定的実施形態においては、合金を冷却62した際の合金の温度は、特定のオーステナイト合金におけるTTT図のC曲線の頂上温度未満の温度である。別の非限定的実施形態においては、冷却62した際の合金の温度は、周囲温度である。
【0045】
本開示の別の態様は、特定の金属合金工場生産品に関する。本開示の特定の金属合金工場生産品は、本開示の方法のいずれかによって加工された金属合金を含むか、またはその金属合金からなり、その金属合金は、研磨することまたは別の機械的材料除去技術によって、再結晶していない表面領域を除去するよう加工されていない。特定の非限定的実施形態においては、本開示の金属合金工場生産品は、本開示の方法のいずれかによって加工されたオーステナイトステンレス鋼合金またはスーパーオーステナイトステンレス鋼合金を含むか、またはその合金からなる。特定の非限定的実施形態においては、金属合金工場生産品の金属合金の結晶粒構造は、金属合金の断面を通して等軸に再結晶した結晶粒構造を含む。金属合金の平均結晶粒サイズは、ASTM指示E112−12に従って測定した場合、00〜3、または00〜2、または00〜1のASTM結晶粒サイズ数範囲内である。非限定的実施形態においては、金属合金の等軸に再結晶した結晶粒構造では、金属間化合物シグマ相析出物が実質的に無い。
【0046】
特定の非限定的実施形態に従って、本発明の金属合金工場生産品は、工場生産品の断面全体にわたって等軸に再結晶した結晶粒構造を有するスーパーオーステナイトステンレス鋼合金またはオーステナイトステンレス鋼合金を含むか、またはその合金からなり、その合金の平均結晶粒サイズは、ASTM指示E112−12に従って測定した場合、00〜3、もしくは00〜2、もしくは00〜1、もしくは3〜4のASTM結晶粒サイズ数範囲内であるか、または4よりも大きいASTM結晶粒サイズ数である。非限定的実施形態においては、合金の等軸に再結晶した結晶粒構造では、金属間化合物シグマ相析出物が実質的に無い。
【0047】
本開示の金属合金工場生産品に含まれてもよい金属合金の例としては、以下のものうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ATI Datalloy HP(商標)合金(UNS番号無し);ATI Datalloy2(登録商標)ESR合金(UNS番号無し);Alloy25−6HN(UNS N08367);Alloy600(UNS N06600);(登録商標)G−2(商標)(UNS N06975);Alloy625(UNS N06625);Alloy800(UNS N08800);Alloy800H(UNS N08810)、Alloy800AT(UNS N08811);Alloy825(UNS N08825);Alloy G3(UNS N06985);Alloy2535(UNS N08535);Alloy2550(UNS N06255);Alloy2535(UNS N08535);及びAlloy316L(UNS S31603)。
【0048】
本開示の様々な態様に関して、本開示の方法の様々な非限定的実施形態に従って作製される金属合金棒または他の金属合金工場生産品の結晶粒サイズは、様々な方法の工程において使用する温度を変えることによって調整してもよいことが予想される。例えば、限定するわけではないが、金属合金棒または他の成形物の中心領域の結晶粒サイズは、本方法において金属合金を加工する温度を下げることによって減少させてもよい。結晶粒サイズの減少を達成する可能性のある方法としては、加工した金属合金成形物を、前の加工工程中に生成した任意の有害な金属間化合物析出物を溶解させるのに十分高温である温度へ加熱することが挙げられる。例えばDatalloy HP(商標)合金の場合に、合金は、約2100°Fの温度に加熱してもよく、この温度は、合金のシグマ相ソルバス温度よりも高い温度である。本明細書において記載されるように加工されてもよいスーパーオーステナイトステンレス鋼のシグマ−ソルバス温度は、通常、1600°F〜1800°Fの範囲内である。その後、合金は、シグマ相のTTT図の頂点温度よりも低い温度へ温度を下げずに、例えばDatalloy HP(商標)合金では約2050°Fである加工温度へと直ちに冷却してもよい。合金は、ソルバス温度とTTT図の頂点温度の間での加工時間をTTT頂点までの時間よりも長くせずに、もしくはこの間にシグマ相のTTT図の頂点よりも低い温度へと温度を冷却させずに、またはスーパーオーステナイトステンレス鋼合金の温度が、合金の加工から合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱することまでの時間中、時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却しないように、例えばラジアル鍛造によって所望の直径に熱加工し、その後直ちに炉へ移動させて再結晶していない表面結晶粒を再結晶させてもよい。その後合金は、再結晶工程から、合金中での有害な金属間化合物析出物の生成を妨げる温度まで、その金属間化合物析出物の生成を妨げる冷却速度で冷却してもよい。十分に速い冷却速度は、例えば合金の水焼入れによって達成してもよい。
【0049】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、特定の非限定的実施形態をさらに記載することを意図するものである。以下の実施例の変形は本発明の範囲内で可能であり、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ規定されることを当業者は理解するであろう。
【実施例】
【0050】
実施例1
ATI Allvacから入手可能なDatalloy HP(商標)合金の直径20インチのインゴットを、アルゴン酸素脱炭工程とエレクトロスラグ再溶融工程とを組み合わせた従来の溶融技術を使用して調製した。インゴットは、合金総重量に基づく重量パーセントで以下の実測化学組成を有した。0.007の炭素;4.38のマンガン;0.015のリン;0.0003未満の硫黄;0.272のケイ素;21.7のクロム;30.11のニッケル;5.23のモリブデン;1.17の銅;残部の鉄、及び未検出不可避不純物。インゴットは、2200°Fで均質化させ、自由プレス鍛造炉で複数回の再加熱をしながら据込みと展伸とを行って、直径12.5インチのビレットにした。鍛造したビレットを、以下の工程によってさらに加工した。これは図6の参照によって理解してもよい。直径12.5インチのビレットを、本開示の金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の温度である2200°Fの金属間化合物相析出物溶解温度に加熱し(例えば図5の工程52を参照のこと)、2時間よりも長い間その温度で維持53して、あらゆるシグマ相金属間化合物析出物を溶解させた。ビレットを、本開示の加工温度範囲内の温度である2100°Fに冷却し、次いでラジアル鍛造(54)して直径9.84インチのビレットにした。ビレットを、本開示のこの合金用の焼きなまし温度範囲内の温度である2100°Fに設定した炉に直ちに移動(56)させ、合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度で加熱(58)した。ビレットを炉内で20分間保ち、合金中で過剰な結晶粒成長を生じさせることなく表面領域を再結晶させ、且つ表面領域のあらゆる有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分な時間、表面領域の温度を焼きなまし温度範囲内で維持(60)した。ビレットを、水焼入れによって室温に冷却(62)した。得られたビレットの断面を通したマクロ構造を図8に示す。図8に示されるマクロ構造は、鍛造棒の外周領域で(すなわち表面領域で)再結晶していない結晶粒の形跡を示していない。等軸結晶粒のASTM結晶粒サイズ数は、ASTM 0〜1である。
【0051】
実施例2
ATI Allvacから入手可能なDatalloy HP(商標)合金の直径20インチのインゴットを、アルゴン酸素脱炭工程とエレクトロスラグ再溶融工程とを組み合わせた従来の溶融技術を使用して調製した。インゴットは、合金総重量に基づく重量パーセントで以下の実測化学組成を有した。0.006の炭素;4.39のマンガン;0.015のリン;0.0004の硫黄;0.272のケイ素;21.65のクロム;30.01のニッケル;5.24のモリブデン;1.17の銅;残部の鉄、及び未検出不可避不純物。インゴットは、2200°Fで均質化させ、自由プレス鍛造炉で複数回の再加熱をしながら据込みと展伸とを行って、直径12.5インチのビレットにした。ビレットを以下の加工工程に付した。これは図7の参照によって理解してもよい。直径12.5インチのビレットを、本開示の金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の温度である2100°Fに加熱し(例えば図5の工程52を参照のこと)、2時間よりも長い間その温度で維持(53)して、あらゆるシグマ相金属間化合物析出物を溶解させた。ビレットを、本開示の加工温度範囲内の温度である2050°Fに冷却し、次いでラジアル鍛造(54)して直径9.84インチのビレットにした。ビレットを、本開示のこの合金用の焼きなまし温度範囲内の温度である2050°Fに設定した炉に直ちに移動(56)させ、合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度で加熱(58)した。ビレットを炉内で45分間保ち、合金中で過剰な結晶粒成長を生じさせることなく表面領域を再結晶させ、且つ表面領域のあらゆる有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分な時間、表面領域の温度を焼きなまし温度範囲内で維持(60)した。ビレットを、水焼入れによって室温に冷却(62)した。得られたビレットの断面を通したマクロ構造を図9に示す。図9に示されるマクロ構造は、鍛造棒の外周領域で(すなわち表面領域で)再結晶していない結晶粒の形跡を示していない。等軸結晶粒のASTM結晶粒サイズ数は、ASTM 3である。
【0052】
実施例3
ATI Allvac AL−6XN(登録商標)オーステナイトステンレス鋼合金(UNS N08367)の直径20インチのインゴットを、アルゴン酸素脱炭工程とエレクトロスラグ再溶融工程とを組み合わせた従来の溶融技術を使用して調製する。インゴットは、合金総重量に基づく重量パーセントで以下の実測化学組成を有する。0.02の炭素;0.30のマンガン;0.020のリン;0.001の硫黄;0.35のケイ素;21.8のクロム;25.3のニッケル;6.7のモリブデン;0.24の窒素;0.2の銅;残部の鉄、及び他の不可避不純物。以下の加工工程は、図6を参照してより深く理解してもよい。インゴットを、本開示の金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の温度である2300°Fに加熱(52)し、その温度で60分間維持(53)して、あらゆるシグマ相金属間化合物析出物を溶解させる。インゴットを、加工温度範囲内の温度である2200°Fに冷却し、次いで熱間圧延(54)して1インチの厚板にする。この板を、2050°Fに設定した焼きなまし炉へ直ちに移動(56)させ、板の少なくとも表面領域を焼きなまし温度に加熱(58)する。焼きなまし温度は、オーステナイトステンレス鋼合金の金属間化合物シグマ相析出物における時間−温度−変態曲線の頂上温度のすぐ上の温度から、オーステナイトステンレス鋼合金の融解開始温度直下までである、焼きなまし温度範囲内の温度である。板は、熱間圧延(54)工程及び移動(56)工程中、シグマ相の時間−温度−変態図と交差する温度まで冷却しない。合金の表面領域を、焼きなまし温度範囲内で15分間維持(60)する。15分は、表面領域を再結晶させ、且つ任意の有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分であるが、合金の表面領域で過剰な結晶粒成長は生じない。次いで合金を、水焼入れによって冷却(62)する。この水焼入れは、合金中の金属間化合物シグマ相析出物の生成を妨げるのに十分な冷却速度を提供する。マクロ構造は、圧延した板の表面領域で再結晶していない結晶粒の形跡を示さない。等軸結晶粒のASTM結晶粒サイズ数は、ASTM 3である。
【0053】
実施例4
Grade316L(UNS S31603)オーステナイトステンレス鋼合金の直径20インチのインゴットを、アルゴン酸素脱炭工程とエレクトロスラグ再溶融工程とを組み合わせた従来の溶融技術を使用して調製する。インゴットは、合金総重量に基づく重量パーセントで以下の実測化学組成を有する。0.02の炭素;17.3のクロム;12.5のニッケル;2.5のモリブデン;1.5のマンガン;0.5のケイ素;0.035のリン;0.01の硫黄;残部の鉄、及び他の不可避不純物。以下の加工工程は、図3の参照によってより深く理解してもよい。金属合金を、合金の加工温度範囲内、すなわち合金の再結晶温度から合金の融解開始温度直下までの範囲内である2190°Fに加熱(12)する。加熱したインゴットを加工(14)する。詳細には、加熱したインゴットを、自由プレス鍛造炉で複数回の再加熱をしながら据込みと展伸とを行って、直径12.5インチのビレットにする。インゴットを2190°Fに再加熱し、ラジアル鍛造(14)して直径9.84インチのビレットにする。このビレットを、2048°Fに設定した焼きなまし炉へ直ちに移動(16)させる。炉の温度は、合金の再結晶温度から合金の融解開始温度直下までの範囲である焼きなまし温度範囲内である。合金の表面領域を、焼きなまし温度で20分間維持(20)する。20分は、合金の表面領域を再結晶させるのに十分な維持時間である。次いで合金を、水焼入れによって周囲温度に冷却する。水焼入れは、合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な冷却速度を提供する。
【0054】
実施例5
ATI Allvacから入手可能なAlloy2535(UNS N08535)の直径20インチのインゴットを、アルゴン酸素脱炭工程とエレクトロスラグ再溶融工程とを組み合わせた従来の溶融技術を使用して調製する。インゴットは、2200°Fで均質化させ、自由プレス鍛造炉で複数回の再加熱をしながら据込みと展伸とを行って、直径12.5インチのビレットにする。直径12.5インチのビレットを、本開示の金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の温度である2100°Fの金属間化合物相析出物溶解温度に加熱し(例えば図5の工程52を参照のこと)、2時間よりも長い間その温度で維持(53)して、あらゆるシグマ相金属間化合物析出物を溶解させる。ビレットを、本開示の加工温度範囲内の温度である2050°Fに冷却し、次いでラジアル鍛造(54)して直径9.84インチのビレットにする。ビレットを、本開示のこの合金用の焼きなまし温度範囲内の温度である2050°Fに設定した炉に直ちに移動(56)させる。ビレットの温度は、鍛造及び移動の時間中、合金中のシグマ相の時間−温度−変態図と交差するところまで冷却しない。合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度で加熱(58)する。ビレットを炉内で45分間保ち、合金中で過剰な結晶粒成長を生じさせることなく表面領域を再結晶させ、且つ表面領域のあらゆる有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分な時間、表面領域の温度を焼きなまし温度範囲内で維持(60)する。ビレットを、水焼入れによって室温に冷却(62)する。マクロ構造は、鍛造棒の外周領域で(すなわち表面領域で)再結晶していない結晶粒の形跡を示さない。等軸結晶粒のASTM結晶粒サイズ数は、ASTM 2である。
【0055】
実施例6
ATI Allvacから入手可能なAlloy2550(UNS N06255)の直径20インチのインゴットを、アルゴン酸素脱炭工程とエレクトロスラグ再溶融工程とを組み合わせた従来の溶融技術を使用して調製する。インゴットは、2200°Fで均質化させ、自由プレス鍛造炉で複数回の再加熱をしながら据込みと展伸とを行って、直径12.5インチのビレットにする。直径12.5インチのビレットを、本開示の金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の温度である2100°Fの金属間化合物相析出物溶解温度に加熱し(例えば図5の工程52を参照のこと)、2時間よりも長い間その温度で維持(53)して、あらゆるシグマ相金属間化合物析出物を溶解させる。ビレットを、本開示の加工温度範囲内の温度である1975°Fに冷却し、次いでラジアル鍛造(54)して直径9.84インチのビレットにする。ビレットを、本開示のこの合金用の焼きなまし温度範囲内の温度である1975°Fに設定した炉に直ちに移動(56)させ、合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度で加熱(58)する。ビレットの温度は、鍛造及び移動の時間中、合金中のシグマ相の時間−温度−変態図と交差するところまで冷却しない。ビレットを炉内で75分間保ち、合金中で過剰な結晶粒成長を生じさせることなく表面領域を再結晶させ、且つ表面領域のあらゆる有害な金属間化合物析出物相を溶解させるのに十分な時間、表面領域の温度を焼きなまし温度範囲内で維持(60)する。ビレットを、水焼入れによって室温に冷却(62)する。マクロ構造は、鍛造棒の外周領域で(すなわち表面領域で)再結晶していない結晶粒の形跡を示さない。等軸結晶粒のASTM結晶粒サイズ数は、ASTM 3である。
【0056】
本記載は、本発明を明確に理解することに関する発明の態様を例示するものであることが理解されるであろう。本明細書の簡略化のため、当業者に明らかである特定の態様、及び、すなわち本発明のより深い理解を助けるものではない特定の態様は示されていない。本明細書においては、本発明の限られた数の実施形態のみがやむをえず記載されているが、前述の記載を考慮することにより、当業者は多くの改造形態及び変形形態が使用されてもよいことを認識するであろう。このような本発明の変形形態及び改造形態の全ては、前述の明細書及び以下の特許請求の範囲によって網羅されるべきものである。
[発明の態様]
[1]金属合金の加工方法であって、
金属合金を加工温度範囲内の温度に加熱することであって、前記加工温度範囲は、前記金属合金の再結晶温度から前記金属合金の融解開始温度直下の温度までである加熱すること;
前記金属合金を前記加工温度範囲内の温度で加工すること;
前記金属合金の少なくとも表面領域を前記加工温度範囲内の温度に加熱すること;
前記金属合金の前記表面領域を、前記金属合金の前記表面領域を再結晶させ、且つ前記金属合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、前記加工温度範囲内で維持すること;及び
前記金属合金を、前記焼きなまし温度範囲から、前記金属合金における結晶粒成長を最小限にする温度まで、前記金属合金における結晶粒成長を最小限にする冷却速度で冷却すること
を含む、前記方法。
[2]前記金属合金を加工することと、前記金属合金の表面領域を加熱することとの間に、前記金属合金を加熱装置に移動させることをさらに含む[1]の方法。
[3]前記金属合金が、スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金、オーステナイト系ステンレス鋼合金、チタン合金、ニッケル合金、ニッケル系超合金、及びコバルト合金のうちの1つである[1]の方法。
[4]前記金属合金が、スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金及びオーステナイト系ステンレス鋼合金のうちの1つを含む[1]の方法。
[5]前記金属合金がスーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を含む[1]の方法。
[6]前記金属合金が、合金総重量に基づく重量パーセントで、0.2以下の炭素;20以下のマンガン;0.1〜1.0のケイ素;14.0〜28.0のクロム;15.0〜38.0のニッケル;2.0〜9.0のモリブデン;0.1〜3.0の銅;0.08〜0.9の窒素;0.1〜5.0のタングステン;0.5〜5.0のコバルト;1.0以下のチタン;0.05以下のホウ素;0.05以下のリン;0.05以下の硫黄;鉄;及び不可避不純物を含む[1]の方法。
[7]前記金属合金が、合金総重量に基づく重量パーセントで、0.05以下の炭素;1.0以下のケイ素;10〜20のマンガン;13.5〜18.0のクロム;1.0〜4.0のニッケル;1.5〜3.5のモリブデン;0.2〜0.4の窒素;鉄;及び不可避不純物を含む[1]の方法。
[8]前記金属合金が、UNS N08367合金;UNS N06600合金;UNS N06975合金;UNS N06625合金;UNS N08800合金;UNS N08810合金、UNS N08811合金;UNS N08825合金;UNS N06985合金;UNS N08535合金;UNS N06255合金;及びUNS S31603合金のうちの1つを含む[1]の方法。
[9]前記金属合金を加工することが、前記金属合金を鍛造すること、圧延すること、分塊すること、押出しすること、及び成形することのうちの1つ以上を含む[1]の方法。
[10]前記金属合金を加工することが、前記金属合金をロール鍛造すること、スエージングすること、鍛伸すること、自由鍛造すること、彫込み型鍛造すること、圧縮鍛造すること、自動熱間鍛造すること、ラジアル鍛造すること、及び据込み鍛造することのうちの1つ以上を含む[1]の方法。
[11]前記金属合金の少なくとも表面領域を加熱することが、前記金属合金の前記表面領域を炉加熱すること、火炎加熱すること、及び誘導加熱することのうちの1つ以上を含む[1]の方法。
[12]前記金属合金の前記表面領域を再結晶させる時間、前記金属合金の前記表面領域を前記加工温度範囲内で維持することが、5分〜60分間、前記金属合金の前記表面領域を前記加工温度範囲内で維持することを含む[1]の方法。
[13]前記冷却速度が、0.3華氏温度毎分〜10華氏温度毎分の範囲を含む[1]の方法。
[14]前記金属合金が、スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金及びオーステナイト系ステンレス鋼合金のうちの1つを含み;
前記金属合金を前記加工温度範囲に加熱することが、前記金属を、前記金属合金の金属間化合物シグマ相析出物のソルバス温度から、前記金属合金の融解開始温度直下までの温度に加熱することを含み;
前記金属合金を加工する前記加工温度は、前記金属合金の前記金属間化合物シグマ相析出物の時間−温度−変態図の頂点温度のすぐ上から、前記金属合金の融解開始温度直下までの加工温度範囲を含み;
前記金属合金の前記表面領域を維持する前記加工温度は、前記金属合金の前記金属間化合物シグマ相析出物の時間−温度−変態図の頂点温度のすぐ上から、前記金属合金の融解開始温度直下までの加工温度範囲を含み;且つ
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金及びオーステナイト系ステンレス鋼合金の温度は、前記金属合金の加工中及び前記金属合金の少なくとも前記表面領域の加熱前に、前記金属合金の前記金属間化合物シグマ相析出物の前記時間−温度−変態図と交差しない
[1]の方法。
[15]前記金属合金を加工することが、前記金属合金を鍛造すること、圧延すること、分塊すること、押出しすること、及び成形することのうちの1つ以上を含む[14]の方法。
[16]前記金属合金を鍛造することが、前記金属合金をロール鍛造すること、スエージングすること、鍛伸すること、自由鍛造すること、彫込み型鍛造すること、圧縮鍛造すること、自動熱間鍛造すること、ラジアル鍛造すること、及び据込み鍛造することのうちの1つ以上を含む[14]の方法。
[17]前記金属合金の表面領域を加熱することが、前記表面領域を炉加熱すること、火炎加熱すること、及び誘導加熱することのうちの1つ以上を含む[14]の方法。
[18]前記金属合金の前記表面領域を前記加工温度範囲内で維持することが、前記表面領域を再結晶させ、前記表面領域にある前記金属合金の前記金属間化合物シグマ相析出物を溶解させ、且つ前記金属合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、前記金属合金の前記表面領域を前記焼きなまし温度範囲内で維持することを含む[14]の方法。
[19]前記金属合金の前記表面領域を前記加工温度範囲内で維持することが、前記金属合金の前記表面領域を、5分〜60分間、前記加工温度範囲内で維持することを含む[14]の方法。
[20]前記金属合金を冷却することが、前記金属合金における金属間化合物シグマ相析出物の析出を妨げるのに十分な速度で冷却することを含む[14]の方法。
[21]前記冷却速度が、0.3華氏温度毎分〜10華氏温度毎分の範囲を含む[14]の方法。
[22]前記金属合金を冷却することが、前記金属合金を焼入れすること、強制空冷すること、及び空冷することのうちの1つを含む[14]の方法。
[23]前記金属合金を冷却することが、前記金属合金を水焼入れすること及び油焼入れすることのうちの1つを含む[14]の方法。
[24]前記金属合金が、UNS N08367合金;UNS N06600合金;UNS N06975合金;UNS N06625合金;UNS N08800合金;UNS N08810合金;UNS N08811合金;UNS N08825合金;UNS N06985合金;UNS N08535合金;UNS N06255合金;及びUNS S31603合金のうちの1つを含む[14]の方法。
[25]スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の加工方法であって、前記方法が
スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を、金属間化合物相析出物溶解温度範囲内の金属間化合物相析出物溶解温度に加熱することであって、前記金属間化合物相析出物溶解温度範囲は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の金属間化合物相析出物のソルバス温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の融解開始温度直下の温度までである加熱すること;
前記金属間化合物相析出物を溶解させ、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼を前記金属間化合物相析出物溶解温度範囲内で維持すること;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物相析出物の時間−温度−変態曲線の頂点温度のすぐ上から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の融解開始温度直下までの加工温度範囲内の加工温度で、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することであって;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金は、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することから、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を焼きなまし温度範囲内の温度に加熱することまでの時間、前記頂点温度まで冷却しない加工すること;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記金属間化合物相析出物の前記時間−温度−変態曲線の前記頂点温度のすぐ上の温度から、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記融解開始温度直下までの前記焼きなまし温度範囲内の温度に前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を加熱することであって、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の温度は、前記合金を加工することから前記合金の少なくとも表面領域を前記焼きなまし温度範囲内の温度に加熱することまでの時間中、前記時間−温度−変態曲線と交差するところまで冷却しない加熱すること;
前記表面領域を再結晶させ、且つ前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金における結晶粒成長を最小限にするのに十分な維持時間の間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記焼きなまし温度範囲内で維持すること;及び
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を、前記金属間化合物相析出物の生成を妨げ且つ結晶粒成長を最小限にする冷却速度で、前記金属間化合物相析出物の生成を妨げ且つ結晶粒成長を最小限にする温度に冷却すること
を含む方法。
[26]前記金属間化合物析出物相がシグマ相を含む[25]の方法。
[27]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することと、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の少なくとも表面領域を加熱することとの間に、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加熱装置に移動させることをさらに含む[25]の方法。
[28]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を鍛造すること、圧延すること、分塊すること、押出しすること、及び成形することのうちの1つ以上を含む[25]の方法。
[29]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金をロール鍛造すること、スエージングすること、鍛伸すること、自由鍛造すること、彫込み型鍛造すること、圧縮鍛造すること、自動熱間鍛造すること、ラジアル鍛造すること、及び据込み鍛造することのうちの1つ以上を含む[25]の方法。
[30]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を加工することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金をラジアル鍛造することを含む[25]の方法。
[31]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の表面領域を加熱することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を炉加熱すること、火炎加熱すること、及び誘導加熱することのうちの1つ以上を含む[25]の方法。
[32]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記焼きなまし温度範囲内で維持することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を再結晶させ、且つ結晶粒成長を最小限にするのに十分な時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記焼きなまし温度範囲内で維持することを含む[25]の方法。
[33]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を再結晶させる時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を、前記焼きなまし温度範囲内で維持することが、1分〜2時間、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の前記表面領域を前記焼きなまし温度範囲内で維持することを含む[25]の方法。
[34]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を冷却することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を焼入れすること、強制空冷すること、及び空冷することのうちの1つを含む[25]の方法。
[35]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を冷却することが、前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を水焼入れすること、及び油焼入れすることのうちの1つを含む[26]の方法。
[36]前記冷却速度が、0.3華氏温度毎分〜10華氏温度毎分の範囲を含む[25]の方法。
[37]前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金が、合金総重量に基づく重量パーセントで、0.2以下の炭素;20以下のマンガン;0.1〜1.0のケイ素;14.0〜28.0のクロム;15.0〜38.0のニッケル;2.0〜9.0のモリブデン;0.1〜3.0の銅;0.08〜0.9の窒素;0.1〜5.0のタングステン;0.5〜5.0のコバルト;1.0以下のチタン;0.05以下のホウ素;0.05以下のリン;0.05以下の硫黄;鉄;及び不可避不純物を含む[25]の方法。
[38]合金総重量に基づく重量パーセントで、0.2以下の炭素;20以下のマンガン;0.1〜1.0のケイ素;14.0〜28.0のクロム;15.0〜38.0のニッケル;2.0〜9.0のモリブデン;0.1〜3.0の銅;0.08〜0.9の窒素;0.1〜5.0のタングステン;0.5〜5.0のコバルト;1.0以下のチタン;0.05以下のホウ素;0.05以下のリン;0.05以下の硫黄;鉄;及び不可避不純物を含む組成と;
前記スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金の断面を通して等軸に再結晶した結晶粒構造と;
ASTM指示E112−12に従って、ASTM 00〜ASTM 3の範囲のASTM結晶粒サイズ数を有する平均結晶粒サイズと;
を含む熱加工したスーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金であって、
前記等軸に再結晶した結晶粒構造には、金属間化合物シグマ相析出物が実質的にない、スーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金。
[39][38]の熱加工したスーパーオーステナイト系ステンレス鋼合金を含む工場生産品
[40]前記工場生産品が、棒、プレート、シート、及び押出成形物から選択される[39]の工場生産品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9