(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、1200MPaより高い引張強度Rmおよび少なくとも6%の破断伸びA50を有する鋼部品の製造方法に関する。
【0002】
本発明に従って製造される鋼部品は、非常に高い強度と良好な伸張特性の組合わせによって区別され、そのため、自動車の車体用の部品に特に適している。
【0003】
“平鋼製品”という用語は、圧延プロセスによって製造される鋼板または鋼帯、それら鋼板や鋼帯から切り離されるシートバーなどを意味するものとして、ここでは理解される。本発明に係る種類の鋼部品は、そのような平鋼製品から成形プロセスによって製造される。
【0004】
特に明記しない限りは、合金の含有量が単に“%”で与えられたときは、常に“重量%”を意味するものとする。
【0005】
“破断伸びA50”、“破断伸びA80”または“引張強度Rm”に言及する場合は、DIN EN 6892−1に従って決められる機械的特性値を意味している。
【0006】
US6,364,968B1は、3.5mm以下の厚さにおいて均一に分布した機械的特性と、特に優れた穴広げ性とを有することが意図される熱間圧延鋼板の製造方法を開示している。この方法によれば、(重量%で)0.05−0.30%のC、0.03−1.0%のSi、1.5−3.5%のMn、0.02%以下のP、0.005%以下のS、0.150%以下のAl、0.0200%以下のN、代替的または追加的に、0.003%−0.20%のNbまたは0.005−0.20%のTiを含むスラブが、1200℃以下で加熱され、その後、少なくとも800℃、特に950℃−1050℃の最終熱間圧延温度で熱間圧延されて熱延鋼帯とされる。得られた熱延鋼帯は、その後、20−150℃/秒の冷却速度で、300−500℃のコイリング温度で冷却され、その温度でコイルに巻き取られる。この場合、冷却は、熱間圧延の終了から2秒以内に開始される。こうして得られた熱延鋼帯は、少なくとも90%がベイナイト画分を有する微細なベイナイト微細組織を備えることが意図され、その平均粒径は3.0μmを超えることはなく、また、粒子の短軸の長さに対する長軸の長さの比率が1.5以下であり、かつ粒子の長軸の長さが10μm以下であることが意図されている。ベイナイトによって占められない微細組織の残りの部分は、焼き戻しマルテンサイトで構成されており、その外観および性質は、ベイナイトに非常に類似している。この方法で製造されたこのような形態の熱延鋼帯は、15−23%の伸びで850−1103MPaの引張強度を有している。
【0007】
EP2546382A1も、少なくとも1470MPaの引張強度を有する鋼板の製造方法を開示しており、伸びと引張強度の積が少なくとも29000MPa%である。この場合に鋼板を構成する鋼は、鉄と不可避の不純物に加えて、(重量%で)0.30−0.73%のCと、3.0%以下のSiと、3.0%以下のAlとを含み、ここでSiとAlの含有量の合計が少なくとも0.7%であり、さらに0.2−8.0%のCrと、10.0%以下のMnとを含み、ここでCrとMnの含有量の合計が少なくとも1.0%であり、さらに0.1%以下のPと、0.07%以下のSと、0.010%以下のNとを含む。このような組成の鋼板は、鋼の微細組織全体に対するマルテンサイト領域の割合が15−90%の範囲に入り、かつ微細組織に含まれる残留オーステナイトの量が10−50%となるように処理される。この場合、少なくとも50%のマルテンサイトが、焼き戻しマルテンサイトの形態をとるように意図され、焼き戻しマルテンサイト領域の割合が、少なくとも10%となることが意図される。微細組織にそれらが存在する場合には、同時に微細組織に存在するポリゴナルフェライト領域の割合は、最大でも10%とするべきである。
【0008】
これを達成するため、EP2546382A1によれば、最初に、特定の組成を有する熱間圧延鋼帯が、例えばスラブのような予備的鋼材を1000℃−1300℃に加熱し、その後、870−950℃の最終熱間圧延温度で、熱延鋼帯に圧延することによって製造される。その後、得られた熱延鋼帯は、350−720℃のコイリング温度でコイルに巻き取られる。巻き取り後、酸洗浄が実行され、その後40−90%の成形の程度で冷間圧延される。こうして得られた冷間圧延鋼帯は、完全なオーステナイト微細組織を保持する温度で15−1000秒間焼鈍しが行われた後、鋼板の微細組織に焼き戻しマルテンサイトを作製するために、少なくとも3℃/秒の冷却速度で、マルテンサイト開始温度未満からそれよりも150℃低い温度までの温度範囲内に入る温度に冷却される。その後、冷間圧延鋼帯は、存在する残留オーステナイトを安定化するために、340−500℃で15−1000秒間に亘って加熱される。こうして製造された冷間圧延鋼板は、最大27%の伸びで1600MPaよりも高い引張強度を達成している。
【0009】
上述した従来技術の背景に対して、本発明の目的は、上述した種類の平鋼製品から複雑に成形される部品を簡単に製造することを可能にする方法を提供することであった。
【0010】
この目的は、高い強度および優れた伸長特性を有する鋼部品を製造するために、本発明に従って請求項1で特定される操作ステップが順に実行されることによって達成される。
【0011】
本発明の有用な改良点は、従属請求項で特定されており、本発明の基本概念と共に、以下に詳細に説明される。
【0012】
本発明に係る方法は、1200MPaより高い引張強度および少なくとも6%の破断伸びA50を有する鋼部品の製造に適している。そのために、本発明に係る方法は、
−平鋼製品を提供する操作ステップを備え、平鋼製品が、鉄および不可避の不純物に加えて(重量%で)、
C:
0.10−0.60%、
Si:0.4−2.5%、
Al:3.0%以下、
Mn:0.4−3.0%、
Ni:1%以下、
Cu:2.0%以下、
Mo:0.4%以下、
Cr:2%以下、
Co:1.5%以下、
Ti:0.2%以下、
Nb:0.2%以下、
V:0.5%以下、
を含み、平鋼製品の微細組織の少なくとも10体積%が、少なくとも1μmの粒径の球形の島状残留オーステナイト(globular residual austenite islands)を含む残留オーステナイトから成る、操作ステップと、
−150乃至400℃の成形温度に平鋼製品を加熱する操作方法と、
−前記成形温度に加熱された平鋼製品を、一様伸びAgを最大とする成形の程度で、部品に成形する操作ステップと、
−得られた部品を冷却する操作ステップとを備える。
【0013】
本発明は、本発明に従って提供される種類の平鋼製品を150乃至400℃で成形プロセスに曝すことで製造された部品が、その後の室温への冷却の後に、実質的に伸長特性に変化を生じることなく、元の平鋼製品の強度と比較して、顕著に高い強度を有するという、知見に基づいている。
【0014】
本発明に従って規定される温度範囲への加熱の結果として、本発明に従って処理された平鋼製品の延性が顕著に増加し、その結果、特別な取り組なしに、最小のリスクで、クラックの発生を未然に防止することができるとともに、非常に複雑な構成を有する部品形態をもたらすことができる。実際の試験は、本発明に従って提供される種類の平鋼製品が、本発明に従って成形が行われることが意図される温度範囲において、多くの場合、少なくとも30%の破断伸びA50を達成する一方で、一般に22%の範囲おいて、開始製品としての役割を果たす平鋼製品と比べて、室温における部品の破断伸びA50が変わらないことを示している。
【0015】
驚くべきことに、強度が増加するにもかかわらず、本発明に従って製造された部品の伸び特性は、室温成形した部品と比較して低下することはない。その結果、150−400℃での予備成形により、本発明は、何れの場合も、得られる部品の延性を変えることなく、強度の著しい増加をもたらす。
【0016】
成形プロセスの後に行う冷却は、特別な取り組を必要としない。従って成形プロセスの後に実行される平鋼製品の冷却は、静止空気中で行うことができる。
【0017】
本発明に従って実行される成形で達成される強度の増加は、非常に大きい。このため、本発明に従って高温で実行される15%の成形プロセスに部品を曝すことにより、15%の成形の程度で同様に成形に曝されるがそれが室温である試験片の引張強度と比較して、多くの場合、引張強度を80−120MPa程度増加させることができることが実証されている。同時に、本発明に従って得られる部品の伸長特性が、室温で成形に曝される部品の伸長特性と一致することから、その変形特性により、本発明に従って製造される部品は、自動車の車体に使用するのに特に適している。
【0018】
本発明の知見によれば、本発明に係る方法で達成された強度増加の理由は、本発明に従って処理された平鋼部品の微細組織に存在し、かつ少なくとも1μmの粒径で特徴付けられる球形の残留オーステナイトが、本発明に従って規定される150−400℃の温度範囲での成形プロセスの負荷の下で、膜状の残留オーステナイトおよびベイ二ティックフェライトに変態するか、マルテンサイト開始温度未満でマルテンサイトに変態することにある。該当温度範囲での成形プロセスの間、平鋼製品における球形の残留オーステナイトの存在は、伸びの増加に寄与する。部品の成形および冷却の後、本発明に従って処理された鋼は、追加的に形成されるフェライトベイナイトおよびマルテンサイトによってより高い引張強度を示す。膜状残留オーステナイト画分は、冷却プロセスの期間に亘って変化せずに、成形プロセスの後に達成される優れた残留伸びを確保する。この効果は、本発明に係る方法で部品へと成形されるプロセスを受けるために、平鋼製品が200−400℃、特に200−300℃に加熱される場合に、特に確実に利用できる。
【0019】
本発明に係る方法は、本発明に従って成形が実行される温度が非常に低いことにより、金属保護コーティングを含む平鋼製品を部品に成形するのに特に適している。本発明で実行される加熱による、金属保護層への影響は多くてもわずかである。保護コーティングは、例えば、従来の亜鉛、亜鉛合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金のコーティングであってもよい。
【0020】
本発明に従って処理される平鋼製品の組成は、以下の側面を考慮して選択されている。
【0021】
0.1−0.6重量%の量で含まれる炭素は、本発明によって処理された平鋼部品の鋼におけるフェライト/パーライトへの変態を遅延させ、マルテンサイト開始温度MSを低下させ、硬度の増加に寄与する。これらの好ましい効果を使用するため、本発明による平鋼製品のC含有量は、少なくとも0.25重量%で、特に少なくとも0.27重量%、少なくとも0.28重量%または少なくとも0.3重量%に設定され、特に、C含有量が0.25−0.5重量%より大きい範囲内、特に0.27−0.4重量%または0.28−0.4重量%である場合に確実に、比較的高い炭素含有量で達成される効果を利用することができる。
【0022】
本発明に従って処理される平鋼製品において、0.4−2.5重量%の量で含まれるSiと、最大3重量%含まれるAlの存在は、ベイナイト中の炭化物の成形を抑制することができ、それに付随する効果として、残留オーステナイトを溶解炭素により安定化させることができる。また、Siは固溶体の強化に寄与する。可能な限りSiの有害な影響を避けるため、Si含有量は、2.0重量%に制限してもよい。強度増加のための固溶体形成剤としてSiを使用するためには、本発明に従って処理される平鋼製品が少なくとも1重量%のSiを含むことが好ましい場合もある。
【0023】
Alは、本発明に従って処理される鋼においてSi含有量に部分的に置き換えることができる。最小含有量である0.4重量%のAlが、提供されてもよい。これは、特に、鋼の硬度または引張強度が、Alの添加により、変形性の改善に有利になるように低い値に調節されるときはいつでも当てはまる。
【0024】
AlおよびSiが同時に存在することの好ましい影響は、本発明に従って規定される限度内のSiおよびAl含有量が、%Si+0.8%Al>1.2重量%という条件、または%Si+0.8%Al>1.5重量%という条件(%Si:重量%による各Siの含有量、%Al:重量%による各Alの含有量)を満たすときはいつでも、特に効果的に利用することができる。
【0025】
少なくとも0.4重量%および3.0重量%以下、特に2.5重量%以下または2.0重量%の量で含まれるMnは、本発明に従って処理される鋼においてベイナイトへの成形を助成し、選択的、付随的に存在するCu、CrおよびNiの含有量も同様にベイナイトの成形に貢献する。本発明に従って処理された各場合の鋼におけるその他の構成成分に応じて、Mnの最大含有量を1.6重量%または1.5重量%に制限することは、この点に関して好ましい場合もある。
【0026】
任意のCrの添加は、マルテンサイト開始温度を低下させ、ベイナイトがパーライトまたはセメンタイトに変態する傾向を抑制することができる。更に、本発明に従って規定される最大2重量%の上限値以下の量で含まれるCrは、フェライト変態を促進し、Crの存在の最適な効果は、Cr含有量が1.5重量%に制限される場合に本発明に係る平鋼製品中において得られるものである。
【0027】
任意のTi、V、またはNbの追加によって、微粒化された微細組織の生成を支援することができるとともに、フェライト変態を促進することができる。また、これらのマイクロ合金元素は、析出の形成を通じて硬度の増加に寄与する。Ti、VおよびNbの好ましい効果は、それら元素の各含有量が0.002−0.15重量%の範囲内にあり、特に0.14重量%を超えない場合に、本発明に従って処理される平鋼製品において特に効果的に利用することができる。
【0028】
本発明によって提供される微細組織の成形は、本発明に従って処理される平鋼製品におけるMn、Cr、Ni、CuおよびCの含有量が次の条件を満たすことによって、特に確実なものとすることができる。
1<0.5%Mn+0.167%Cr+0.125%Ni+0.125%Cu+1.334%C<2
ここで、%Mnは重量%による各Mnの含有量、%Crは重量%による各Crの含有量、%Niは重量%による各Niの含有量、%Cuは重量%による各Cuの含有量、%Cは重量%による各Cの含有量を示している。
【0029】
本発明に従って特定される組成を有する、熱間圧延または冷間圧延された平鋼製品は、本発明に係る方法の出発製品として原則的に適している。これに考慮した、熱間圧延平鋼製品およびその製造方法は、欧州特許出願EP12178330.2の主題であり、その内容は、明示的に本特許出願の開示に組み込まれる。
【0030】
引用したEP12178330.2によって説明されるように、この特許出願に従って製造された熱間圧延平鋼製品は、伸び特性および強度の最適な組み合わせで特徴付けられる。この特性の組み合わせは、任意に存在する5体積%以下のフェライトと、10体積%以下のマルテンサイトの画分に加えて、少なくとも60体積%の割合のベイナイトと、残部として残留オーステナイトとにより構成される、本発明に従って処理される平鋼製品の微細組織によって、特に確実に達成することができる。この微細組織において、残留オーステナイトの含有量は少なくとも10%体積であり、残留オーステナイトの少なくとも一部はブロック状であり、ブロック状である残留オーステナイトブロックの少なくとも98%が、5μm以下の平均径を有している。
【0031】
EP12178330.2に係る形態の熱間圧延平鋼製品は、2相によって占められる微細組織を有する。その一方の主要な成分がベイナイトであり、もう一方の主要な成分が残留オーステナイトである。この2つの主要な成分に加えて、わずかな割合のマルテンサイトとフェライトが存在するが、その含有量は非常に少ないので、熱間圧延平鋼製品の特性に影響を与えることはない。
【0032】
“ブロック状”の残留オーステナイトは、微細組織に存在する残留オーステナイトの構造的成分において長さ/幅の比率、すなわち最長範囲/厚みの比率が1乃至5である場合に、これに関して使用される用語である。これに対して、微細組織に存在する残留オーステナイトの集積において長さ/幅の比率が5より大きく、かつ残留オーステナイトの各微細組織の構成成分の幅が1μmより小さい場合に、残留オーステナイトは“膜状”と呼ばれる。このため、膜状の残留オーステナイトは、典型的には、微細に分布した薄膜の形態をとる。
【0033】
本発明に係る方法のための出発製品として最適である、熱間圧延平鋼製品を製造する方法は、次の操作ステップ:
−鉄および不可避の不純物に加えて、(重量%で)0.10−0.60%のC、0.4−2.0%のSi、2.0%以下のAl、0.4−2.5%のMn、1%以下のNi、2.0%以下のCu、0.4%以下のMo、2%以下のCr、0.2%以下のTi、0.2%以下のNb、0.5%以下のVを含む前製品をスラブ、薄スラブまたは鋳造鋼帯の形態で提供する操作ステップと、
−1またはそれ以上の圧延パスにおいて熱延鋼帯へと前製品を熱間圧延するステップであって、得られた熱延鋼帯が、最後の圧延パスを離れるときに、少なくとも880℃の最終の熱間圧延温度を有する、操作ステップと、
−マルテンサイト開始温度MSと600℃との間にあるコイリング温度に、得られた熱延鋼帯を少なくとも5℃/秒の冷却速度で急速に冷却する操作ステップと、
−熱延鋼帯をコイルに巻き取る操作ステップと、
−コイルを冷却する操作ステップを含み、この操作ステップにおいて、ベイナイトを成形するために、熱延鋼帯の微細組織の少なくとも60体積%がベイナイトから構成されるまで、冷却中のコイルの温度が所定の温度範囲に維持され、その温度範囲の上限が、熱延鋼帯の微細組織にベイナイトが生じ始めるベイナイト開始温度BSに等しく、下限が、熱延鋼帯の微細組織にマルテンサイトが生じ始めるマルテンサイト開始温度MSに等しくなる。
【0034】
本発明に係る方法を実行するための出発製品として最適な冷間圧延平鋼製品およびそのような冷間圧延平鋼製品の製造方法は、欧州特許出願12178332.8の主題であり、その内容は同様に本特許出願の開示に明示的に組み込まれる。
【0035】
本発明に従って規定される鋼組成の範囲内に含まれる合金において、冷間圧延平鋼製品の微細組織は、好ましくは、少なくとも20体積%のベイナイト、10−35体積%の
残留オーステナイトおよび
残部としてのマルテンサイトから成る。他の構造的成分が技術的に不可避の微量で微細組織に存在し得ることは、言うまでも無い。このため、本発明に係る処理に適した冷間圧延平鋼製品は、3相の微細組織を有し、その主要成分はベイナイトであり、加えて残留オーステナイトおよび残部としてのマルテンサイトから構成される。任意選択的には、ベイナイト画分は少なくとも50体積%で、特に少なくとも60体積%であり、残留オーステナイト画分は10−25%の範囲内にあり、ここでも微細組織の残部はそれぞれマルテンサイトで占められている。最適なマルテンサイト画分は、少なくとも10体積%である。本発明に従って処理される冷間圧延平鋼製品に必要とされる通常は少なくとも1400Mpaの高い引張強度Rmおよび少なくとも5%の破断伸びA80によって、そのような組成の微細組織は、伸びと引張強度の最適な積Rm×A80をもたらす。本発明に従って処理される冷間圧延平鋼製品の、主成分である“ベイナイト”、“残留オーステナイト”および“マルテンサイト”に加えて、その他の構造的成分の含有物が存在しても良いが、その含有量は非常に少ないので冷間圧延平鋼部品の性質に影響を与えることはない。本発明に従って処理するのに適した、このような形態の平鋼製品においては、残留オーステナイトの大部分が膜状であり、5μm未満の粒径を有する、ブロック状残留オーステナイトの小さい球形の島(islands)を備える。その結果、残留オーステナイトは、高い安定性を有し、それに付随して、望ましくないマルテンサイトへの変態傾向が低くなる。残留オーステナイト内のC含有量は、この場合、通常1.0重量%より高い。
【0036】
そのような形態を有しかつ本発明に従って処理される冷間圧延平鋼製品を製造する方法は、次の操作ステップ:
−鉄および不可避の不純物に加えて、(重量%で)C:0.10−0.60%、Si:0.4−2.5%、Al:3.0%以下、Mn:0.4−3.0%、Ni:1.0%以下、Cu:2.0%以下、Mo:0.4%以下、Cr:2%以下、Co:1.5%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.2%以下、V:0.5%以下を含む前製品をスラブ、薄スラブまたは鋳造鋼帯の形態で提供する操作ステップと、
−1またはそれ以上の圧延パスにおいて前製品を熱延鋼帯に熱間圧延するステップであって、得られた熱延鋼帯が、最後の圧延パスを離れるときに、少なくとも830℃の最終の熱間圧延温度を有する、操作ステップと、
−最終熱間圧延温度と560℃の間にあるコイリング温度で、得られた熱延鋼帯を巻き取るステップと、
−少なくとも30%の冷間圧延の程度で、熱延鋼帯を冷延鋼帯に冷間圧延するステップと、
−得られた冷延鋼帯を熱処理する操作ステップとを含み、熱処理の過程において、冷延鋼帯が、
−少なくとも800℃の焼鈍し温度に加熱され、
−50乃至150秒の焼鈍し期間に亘って、焼鈍し温度に選択的に維持され、
−少なくとも8℃/秒の冷却速度で焼鈍し温度から保持温度に冷却され、この保持温度は、470℃の上限と、冷延鋼帯の微細組織にマルテンサイトが生じ始めるマルテンサイト開始温度MSより高い下限とを有する保持温度範囲内にあり、さらに冷延鋼帯は、
−冷延鋼帯の微細組織中で少なくとも20体積%のベイナイトを形成するのに十分な時間に亘って保持温度範囲で維持される、ステップとを備える。
【0037】
前述のマルテンサイト開始温度、すなわち、本発明に従って処理される鋼にマルテンサイトが形成され始める温度は、文献(「Thermodynamic extrapolation and martensite−start temperature of substitutionally alloyed steels」、H.Bhadeshia、Metal Science 15(1981)、178−180ページ)に説明される手順に従って何れの場合も計算することができる。