(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606145
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 3/00 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-183130(P2017-183130)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-58956(P2019-58956A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2018年11月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 知之
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 武亮
【審査官】
臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−238297(JP,A)
【文献】
特開平04−344505(JP,A)
【文献】
特開2013−071231(JP,A)
【文献】
特表2013−528121(JP,A)
【文献】
特開2014−050950(JP,A)
【文献】
特開平04−275887(JP,A)
【文献】
特開平05−341834(JP,A)
【文献】
特開平10−177409(JP,A)
【文献】
特開2013−071239(JP,A)
【文献】
特開2015−100677(JP,A)
【文献】
特開2016−064474(JP,A)
【文献】
特開2016−120561(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/033351(WO,A1)
【文献】
米国特許第04640663(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00−19/06
B66C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者によって加えられる外力に従って動作可能なロボットと、
該ロボットに設けられ該ロボットに作用する外力の大きさを検出する力検出部と、
前記ロボットのアームおよび前記ロボットが載置される基台の少なくとも一方に設けられ、振動を発生する振動部と、
所定の第1の閾値以上の大きさの外力が前記力検出部によって検出されたときに前記振動部に振動を発生させる警告手段と、
前記所定の第1の閾値よりも大きい所定の第2の閾値以上の外力が前記力検出部によって検出されたときに前記ロボットを停止させる停止手段とを備えるロボットシステム。
【請求項2】
前記力検出部が、前記外力の方向を検出し、
前記警告手段が、前記外力の方向によって前記振動を異ならせる請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記警告手段が、前記外力の大きさに応じて前記振動を変化させる請求項1または請求項2に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットに過度な外力が作用することを防止するために、ロボットに作用する外力の大きさを力センサによって検出し、検出された外力の大きさに基づいてロボットを制御するロボットシステムが知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されているロボットシステムは、人間と共通の作業空間で作業する協働ロボットシステムであり、人間または周囲の物体とのロボットの接触を力センサによって検出し、検出された外力の大きさが所定の閾値を超えたときにロボットを停止させる。
特許文献2に開示されているロボットシステムは、人間がロボットの手先を直接操作するダイレクトティーチ方式のロボットシステムであり、人間がロボットの手先に加える力を力センサによって検出し、検出された外力の大きさが所定の閾値を超えたときに、ロボットを停止したり警告を発したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−64474号公報
【特許文献2】特開平04−344505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2のロボットシステムは、外力が所定の閾値を超える度にロボットを停止させるので、作業者は、その都度作業を中断しなければならず、作業効率が低下するという不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ロボットに過度な外力が加わることを防止しつつ、作業の中断を防止して作業効率を向上することができるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、作業者によって加えられる外力に従って動作可能なロボットと、該ロボットに設けられ該ロボットに作用する外力の大きさを検出する力検出部と、
前記ロボットのアームおよび前記ロボットが載置される基台の少なくとも一方に設けられ、振動を発生する振動部と、所定の第1の閾値以上の大きさの外力が前記力検出部によって検出されたときに
前記振動部に振動
を発生させる警告手段と、前記所定の第1の閾値よりも大きい所定の第2の閾値以上の外力が前記力検出部によって検出されたときに前記ロボットを停止させる停止手段とを備えるロボットシステムである。
【0008】
本態様によれば、作業者がロボットに力を加えてロボットを操作している間、ロボットに作用する外力の大きさが力検出部によって検出され、外力の大きさが所定の第1の閾値以上になったときに警告手段によってロボットが振動する。その後、ロボットに作用する外力がさらに増大し、外力の大きさが所定の第2の閾値以上になったときに停止手段によってロボットが停止する。
【0009】
このように、外力が第2の閾値に達する前に、外力の大きさが第2の閾値に近づいていることがロボットの振動によって作業者に報知されるので、作業者は、停止手段によってロボットが停止させられる前に、ロボットに加えている力を弱める等の適切な行動をとることができる。これにより、ロボットに過度な外力が加わることを防止しつつ、作業の中断を防止して作業効率を向上することができる。さらに、周囲の環境が騒がしくても、また、作業者がどのような方向を見ていても、ロボットの振動は、ロボットを操作中の作業者の手に確実に伝わるので、外力の大きさが第1の閾値に達したことを、作業者に確実に認識させることができる。
【0010】
上記態様においては、前記力検出部が、前記外力の方向を検出し、前記警告手段が、前記外力の方向によって前記振動を異ならせてもよい。
このようにすることで、大きさが第1の閾値以上である外力の方向を、振動の差異によって作業者に認識させることができる。
【0011】
上記態様においては、前記警告手段が、前記外力の大きさに応じて前記振動を変化させてもよい。
このようにすることで、ロボットに作用している外力の大きさを、振動の変化によって作業者に認識させることができる。
【0012】
本発明の
参考態様は、作業者によって加えられる外力に従って動作可能なロボットと、該ロボットに設けられ該ロボットに作用する外力の大きさおよび方向を検出する力検出部と、所定の第1の閾値以上の大きさの外力が前記力検出部によって検出されたときに警告を発する警告手段と、前記所定の第1の閾値よりも大きい所定の第2の閾値以上の外力が前記力検出部によって検出されたときに前記ロボットを停止させる停止手段とを備え、前記警告手段が、前記力検出部によって検出された前記外力の方向によって異なる警告を発するロボットシステムである。
【0013】
本態様によれば、作業者がロボットに力を加えてロボットを操作している間、ロボットに作用する外力の大きさが力検出部によって検出され、外力の大きさが所定の第1の閾値以上になったときに警告手段によって警告が発せられる。その後、ロボットに作用する外力がさらに増大し、外力の大きさが所定の第2の閾値以上になったときに停止手段によってロボットが停止する。
【0014】
このように、外力が第2の閾値に達する前に、外力の大きさが第2の閾値に近づいていることが警告によって作業者に報知されるので、作業者は、停止手段によってロボットが停止させられる前に、ロボットに加えている力を弱める等の適切な行動をとることができる。これにより、ロボットに過度な外力が加わることを防止しつつ、作業の中断を防止して作業効率を向上することができる。さらに、外力の方向によって警告が異なるので、作業者は、いずれの方向の外力が大きくなっているかを認識することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロボットに過度な外力が加わることを防止しつつ、作業の中断を防止して作業効率を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
【
図2】
図1のロボットシステムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係るロボットシステム10について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るロボットシステム10は、1人の作業者Aと1台のロボット1とが共同で作業を行う協働ロボットシステムであり、
図1に示されるように、協働ロボット1と、ロボット1に設けられロボット1に作用する外力を検出する力検出部2と、ロボット1に設けられ振動を発生する振動部3と、力検出部2によって検出された外力の大きさに基づいてロボット1および振動部3を制御する制御部(警告手段、停止手段)4とを備えている。符号5は、ロボット1が載置される基台である。
【0018】
ロボット1は、6軸多関節型のロボットであり、多関節のアーム6と、アーム6の先端部に着脱可能なハンドガイド7とを備えている。ロボット1は、他の構造のロボットであってもよい。アーム6の先端部には、ワークを加工するためのツールまたはワークを把持するハンド等のエンドエフェクタが取り付けられている。
【0019】
ロボット1は、アーム6に加えられた外力に従って動作可能である。例えば、作業者Aは、ハンドに把持されているワークをロボット1と協働して搬送したいときや、アーム6の先端部の動作を直接教示するダイレクトティーチのときに、アーム6の先端部に取り付けられたハンドガイド7を手で把持してハンドガイド7に力を加えることで、力の方向にアーム6の先端部を移動させることができる。また、作業者Aは、アーム6を退避させたいとき、アーム6を手で直接押すことで、押した方向にアーム6を移動させることができる。このとき、力検出部2によって検出された、作業者Aがアーム6の先端部に加えた力の大きさおよび方向に基づき、検出された外力の方向へのアーム6の移動を補助するように、制御部4がアーム6の各関節のモータを制御してもよい。
【0020】
力検出部2は、例えば、ロボット1の基部に設けられた6軸力センサであり、相互に直交する3軸方向の力の大きさおよび3軸回りのモーメントを検出する。力検出部2は、ロボット1の各軸に設けられた力センサであってもよい。力検出部2は、検出された外力の大きさおよび方向の情報を制御部4に送信する。力検出部2は、外力の大きさおよび方向と共に、外力が加わった範囲の情報を制御部4に送信してもよい。
【0021】
振動部3は、例えば振動モータであり、ロボット1の少なくとも一部に設けられている。
図1に示される例では、アーム6、ハンドガイド7、および基台5のそれぞれに振動部3が設けられている。
【0022】
力検出部2によって検出される力には、作業者Aがアーム6およびハンドガイド7に加える外力の他に、アーム6に加わる重力と、アーム6の先端部に取り付けられたツール、ハンド、ハンドガイド7等の物体に加わる重力とが含まれ、ハンドがワークを把持しているときにはワークに加わる重力も含まれる。さらに、アーム6が動いているときには、アーム6、アーム6に取り付けられている物体、およびワークに作用する慣性力も、力検出部2によって検出される力に含まれる。
【0023】
制御部4は、ロボット1に加わる上記の重力および慣性力を考慮して、力検出部2によって検出された力の大きさから、作業者Aによってアーム6およびハンドガイド7に加えられた正味の外力の大きさを算出する。このような正味の外力の大きさは、例えば、特許第5820013号公報に記載の手法によって算出することができる。
【0024】
制御部4は、所定の第1の閾値以上の大きさの外力が力検出部2によって検出されたときに、振動部3を間欠的に振動させる。また、制御部4は、所定の第2の閾値以上の外力が力検出部2によって検出されたときに、ロボット1を停止させる。第2の閾値は、例えば65Nであり、第1の閾値は、第2の閾値よりも小さい値である。制御部4は、力検出部2によって検出される外力が第1の閾値未満になったとき、または、外力が第2の閾値以上になってロボット1を停止状態にしたときに、振動部3による振動の発生を停止させる。
【0025】
次に、このように構成されたロボットシステム10の作用について
図2を参照して説明する。
本実施形態に係るロボットシステム10によれば、ロボット1の作動中に(ステップS1)、作業者Aがハンドガイド7を操作したりアーム6を押したりすることでロボット1に外力が作用したときに、外力の大きさが力検出部2によって検出される(ステップS2)。
【0026】
検出される外力の大きさが第1の閾値以上になったとき(ステップS2のYES)、制御部4が振動部3を作動させることでロボット1およびロボット1が載置されている基台5が振動し(ステップS5)、アーム6の先端部にハンドガイド7が取り付けられている場合にはハンドガイド7も振動する(ステップS3のYES、ステップS4)。第1の閾値以上の外力がロボット1に加えられている間、振動部3が間欠的に作動することでロボット1が間欠的に振動し続け、作業者Aがロボット1に加える力が第1の閾値未満まで低下したときにロボット1および基台5の振動が停止する。
【0027】
作業者Aがロボット1に加える力が第1の閾値よりもさらに大きくなり、検出される外力の大きさが第2の閾値以上に達したとき(ステップS6のYES)、制御部4がロボット1を停止させる(ステップS7)。このときに、振動部3も停止することでロボット1および基台5の振動も停止する。
【0028】
このように、本実施形態によれば、第2の閾値以上の過度な外力がロボット1に加わる前に、ロボット1に加えられている外力が第2の閾値に近付いていることが、ロボット1の振動によって作業者Aに報知される。作業者Aは、ロボット1の振動に応答してロボット1に加える力を弱めることで、外力が第2の閾値に達してしまうことを防止することができる。すなわち、ロボット1に過度な外力が加わることを防止しつつ、ロボット1の停止による作業の中断を防止して作業効率を向上することができるという利点がある。
【0029】
さらに、周囲の環境が騒がしいときでも、また、作業者Aがどのような方向を見ているときでも、ロボット1を直接操作している作業者Aの手にはロボット1の振動が確実に伝わる。したがって、外力の大きさが第1の閾値以上であることを作業者Aに確実に認識させることができるという利点がある。
本実施形態においては、制御部4が、ロボット1および基台5に設けられた振動部3に加えて、作業者Aが携帯する携帯デバイスを振動させてもよい。
【0030】
本実施形態においては、第1の閾値以上の大きさの外力が力検出部2によって検出されたときに、制御部4は、振動部3が発生する振動の大きさ、周波数、時間間隔等を外力の大きさに応じて段階的にまたは連続的に変化させてもよい。例えば、外力が大きい程、振動が大きくなるように、あるいは、外力が大きい程、振動の時間間隔が短くなるように、制御部4が振動部3を制御してもよい。
このようにすることで、作業者Aは、振動の大きさ、周波数、時間間隔等に基づいて、アーム6またはハンドガイド7に加えている力の具体的な大きさを認識することができる。
【0031】
本実施形態においては、力検出部2が、外力の大きさに加えて外力の方向を検出し、制御部4は、振動部3が発生する振動の大きさ、周期、時間間隔等を外力の方向によって相互に異ならせてもよい。
このようにすることで、作業者Aは、振動の大きさ、周波数、時間間隔等に基づいて、いずれの方向において外力が第1の閾値以上となっているかを認識し、アーム6またはハンドガイド7に加える力をより適切に調整することができる。
【0032】
本実施形態においては、力検出部2が、アーム6の各軸に設けられたモータの電流値の変化に基づいて、ロボット1に加えられている外力を検出してもよい。
アーム6の動作中にアーム6またはハンドガイド7が周囲の物体と衝突したときに、モータの電流値は急激に低下する。同様に、アーム6の動作方向とは逆方向の外力を作業者Aがアーム6に加えたときにもモータの出力値が低下するが、このときのモータの出力値の低下は衝突時よりも緩やかである。このように、アーム6の動きに抗する外力がアーム6に加わったときに、モータの電流値は、外力が大きい程、大きな低下率で低下するので、モータの電流値の低下に基づいて、外力の大きさを見積もることができる。
【0033】
この場合、制御部4は、例えば、モータの出力値が第1の所定値以上の低下率で低下したときに振動部3を振動させ、モータの出力値が第1の所定値よりも大きい所定の第2の所定値以上の低下率で低下したときにロボット1を停止させる。このようにすることで、作業者Aは、アーム6の動作方向とは逆方向に大きな力を加えていることを、ロボット1が停止する前にロボット1の振動に基づいて認識することができる。
【0034】
本実施形態においては、外力の大きさが第1の閾値以上になったことをロボット1の振動によって作業者Aに報知することとしたが、聴覚的または視覚的な警告(例えば、音または表示)によって作業者Aに報知してもよい。
この場合、制御部4は、力検出部2によって検出された外力の方向によって警告を異ならせてもよい。例えば、ハンドに把持されているワークをロボット1と作業者Aが協働で搬送する場合には、搬送方向に沿う方向と搬送方向とは異なる方向とで、警告の種類(振動、音、表示)を異ならせてもよい。このようにすることで、作業者Aは、警告に基づいて、いずれの方向において外力が第1の閾値以上となっているかを認識し、アーム6またはハンドガイド7に加える力をより適切に調整することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ロボット
2 力検出部
3 振動部(警告手段)
4 制御部(警告手段、停止手段)
5 基台
6 アーム
7 ハンドガイド
10 ロボットシステム
A 作業者