特許第6606166号(P6606166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606166
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】流量計井戸ツール
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/44 20060101AFI20191031BHJP
   G01V 1/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G01F1/44
   G01V1/00 C
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-502698(P2017-502698)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公表番号】特表2017-522560(P2017-522560A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】US2015036377
(87)【国際公開番号】WO2016010672
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】14/330,785
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】メロ,ラファエル アドルフォ ラストラ
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0121371(US,A1)
【文献】 特開2007−212465(JP,A)
【文献】 特表2002−513141(JP,A)
【文献】 特開2002−286514(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0081460(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0279292(US,A1)
【文献】 米国特許第05887657(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0293634(US,A1)
【文献】 特表2003−506603(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0326654(US,A1)
【文献】 特開2002−081976(JP,A)
【文献】 特開2001−165741(JP,A)
【文献】 特開2006−162417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/34−1/46,
E21B 21/08,43/00−43/40,
E21B 47/00−47/26,
G01V 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑井内に配置されることになる井戸体積流量計を備え、
前記井戸体積流量計は、前記坑井内に配置されることになる中空円筒管を備え、
前記中空円筒管は、前記坑井を通る井戸流体を、前記井戸体積流量計を通って流れる内部流体と、前記坑井と前記井戸体積流量計との間の環状部を通って流れる外部流体とに分割し、前記中空円筒管は内部部分を備え、前記内部部分の内側断面積が、前記中空円筒管の内側断面積よりも小さくなっており
前記井戸体積流量計の出口端部に取り付けられた排出格子コンポーネントをさらに備え、前記排出格子コンポーネントは、前記内部流体を前記環状部へ排出すると共に前記井戸体積流量計の前記出口端部を流れ去る前記内部流体及び前記外部流体を前記環状部内で混合する、
流量計井戸ツール。
【請求項2】
前記排出格子コンポーネントは、前記井戸体積流量計の前記出口端部において前記中空円筒管に取り付けられる管を備え、前記管は、前記外部流体と混合するために前記内部流体が流れて通過する開口部を備える、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項3】
前記開口部の開口面積は、前記井戸体積流量計の前記中空円筒管の前記内側断面積以上である、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項4】
前記排出格子コンポーネントは、さらに、前記管内にブルノーズを備える、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項5】
前記排出格子コンポーネントに取り付けられた測定補正コンポーネントをさらに備え、前記測定補正コンポーネントは、前記坑井の内径の公差によって生じる流れの測定誤差を補正する、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項6】
前記井戸体積流量計の外径と、前記排出格子コンポーネントの外径と、前記測定補正コンポーネントの外径とは、互いに実質的に等しい、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項7】
前記井戸体積流量計の長手方向長さは、前記測定補正コンポーネントの長手方向長さと実質的に同じである、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項8】
前記井戸体積流量計の入口端部に、前記井戸流体を均一化する流れ調整装置をさらに備える、
請求項1に記載の流量計井戸ツール。
【請求項9】
前記流れ調整装置は、前記井戸流体を均一化するように配置された複数のフィンを有する調整装置管を備え、前記調整装置管は、前記井戸体積流量計の前記入口端部において前記中空円筒管に結合された、
請求項に記載の流量計井戸ツール。
【請求項10】
前記井戸体積流量計は、前記坑井内のダウンホール圧送ユニットの取入口の上流に配置された、
請求項1に記載の流量計井戸ツール。
【請求項11】
坑井内に配置された井戸体積流量計であって、前記坑井を流れている井戸流体を、前記井戸体積流量計を通って流れる内部流体と、前記坑井と前記井戸体積流量計との間の環状部を通って流れる外部流体とに分割する中空円筒管を備える井戸体積流量計と;
前記井戸体積流量計の出口端部に取り付けられた排出格子コンポーネントであって、前記内部流体を前記環状部へ排出すると共に前記井戸体積流量計の前記出口端部を流れ去る前記内部流体及び前記外部流体を前記環状部内で混合する排出格子コンポーネントと;
管区域と補正センサとを有する測定補正コンポーネントであって、前記補正センサが、前記測定補正コンポーネントと前記坑井との間で、前記内部流体及び前記外部流体が混合された流体の圧力差を測定する、測定補正コンポーネントと;
前記内部流体の圧力差を測定する、前記中空円筒管の内部センサと;
前記外部流体の圧力差を測定する、前記中空円筒管の外部センサと;
前記内部センサ及び前記外部センサに接続された処理回路とを備え;
前記処理回路は、
前記内部センサ及び前記外部センサから圧力信号を受信するステップと、
前記井戸体積流量計を通る前記内部流体の圧力差及び前記環状部を通る前記外部流体の圧力差を判定するステップと、
前記判定された圧力差に基づいて、前記井戸流体の流体特性を判定するステップと、を備える操作を実行する、
井戸流量計システム。
【請求項12】
前記中空円筒管は、前記中空円筒管の内側断面積よりも小さい断面積を有する内部部分を備える、
請求項11に記載の井戸流量計システム。
【請求項13】
前記内部センサと、前記外部センサと、前記補正センサと、に電子的に結合された送信機と;
前記内部センサと、前記外部センサと、前記補正センサと、に結合された送信機から送信される圧力差データを、前記内部センサと前記外部センサと前記補正センサとから受信する受信機とをさらに備える;
請求項11に記載の井戸流量計システム。
【請求項14】
前記操作は、前記補正センサの外側を流れる、前記内部流体及び前記外部流体が混合された前記流体の圧力差を判定するステップをさらに備え、
前記流体特性は、前記混合された流体の体積流量と、前記内部流体の体積流量と、前記外部流体の体積流量と、流体密度と、流体流路抵抗とを備える、
請求項11に記載の井戸流量計システム。
【請求項15】
前記井戸流体の前記流体特性を判定するステップは、以下の数式を解くステップを備え、
【数3】
前記井戸体積流量計の内側断面積(A)、前記内部流体の前記圧力差(ΔP12)、前記井戸体積流量計の内部部分の最小内側断面積(A)、前記外部流体の前記圧力差(ΔPxy)、前記混合された流体の前記圧力差(ΔPij)、前記井戸体積流量計を通る前記流体の流路抵抗(R)、及び上下高低変化(H)を用いて、前記混合された流体の体積流量(Q)、前記内部流体の体積流量(Q)、前記外部流体の体積流量(Q)、流体密度(ρ)、及び流体流路抵抗(R)の解を得る、
請求項14に記載の井戸流量計システム。
【請求項16】
方法であって:
井戸体積流量計の中空円筒管を用いて、坑井を通って流れる流体を、前記井戸体積流量計の内部を流れる内部流体と、前記井戸体積流量計の外部を流れる外部流体とに分けるステップと;
前記内部流体における圧力差及び前記外部流体における圧力差を測定するステップと;
前記内部流体及び前記外部流体を、組み合わせた流体にするように混合するために、前記井戸体積流量計の出口端部に取り付けられた排出格子コンポーネントを用いて、前記内部流体を、前記坑井と前記井戸体積流量計との間の環状部へ排出するステップと;
前記組み合わせた流体における圧力差を測定するステップと;
前記坑井を通って流れる前記流体の1つ以上の流体特性を、前記測定された圧力差に部分的に基づいて判定するステップとを備える;
方法。
【請求項17】
前記坑井を通って流れる前記流体を前記内部流体と前記外部流体とに分けるステップの前に、前記坑井を通って流れる前記流体を均一化するステップをさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記内部流体における圧力差及び前記外部流体における圧力差を測定するステップは、前記井戸体積流量計内の圧力差センサを用いるステップを備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記内部流体、外部流体、及び組み合わせた流体の前記測定した圧力差から、前記流体の流量、流体密度、又は流路抵抗のうちの1つを判定するステップをさらに備える、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年7月14日に出願された米国特許出願第14/330,785号に基づく優先権を主張し、当該米国特許出願のすべての記載内容を援用する。
【0002】
本開示は、井戸システム(例えばダウンホール井戸ツール)における井戸流量計に関する。
【背景技術】
【0003】
井戸流量計(例えば、体積及び圧力に基づく流量計)は、炭化水素を産出する油井等の井戸システムで用いられて、その井戸システムにおける流体の流量を測定する。井戸内流量計は、井戸システム内の流体の流体特性を測定するためのセンサを含む。井戸内流量計は、場合によっては、ダウンホール(下げ穴)圧送ユニット、例えば電動水中ポンプ(ESP)、の出口端部及び入口端部のいずれか一方に設けた井戸ツール(工具)上に配置されたり、井戸ツールの一部であったりする。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、井戸内の流体の、流量、流体密度、及び流量制限のような流体特性を測定する、井戸流量計システム及び流量計井戸ツールについて記載する。
【0005】
ある態様は、坑井内に配置されることになる井戸体積流量計を含む流量計井戸ツールを包含する。井戸体積流量計は、坑井内に配置されることになる中空円筒管を含み、中空円筒管は、坑井を通る井戸流体を、井戸体積流量計を通る内部流体と、坑井と井戸体積流量計との間の環状部を通る外部流体とに分割する。中空円筒管は内部部分を含み、前記内部部分の内側断面積が、前記中空円筒管の内側断面積よりも小さい。
【0006】
上記の態様は、以下の特徴の、いくつか又はすべてを含むことができるし、何も含まなくてもよい。流量計井戸ツールは、井戸体積流量計の出口端部に取り付けられた排出格子コンポーネントを含み、排出格子コンポーネントは、井戸体積流量計の出口端部を流れ去る内部流体及び外部流体を混合する。排出格子コンポーネントは、井戸体積流量計の出口端部において中空円筒管に取り付けられる管を含み、管は、外部流体と混合するために内部流体が流れて通過する開口部を含む。開口部の開口面積は、井戸体積流量計の中空円筒管の内側断面積以上である。排出格子コンポーネントは、さらに、管内にブルノーズを含む。流量計井戸ツールは、排出格子コンポーネントに取り付けられた測定補正コンポーネントを含み、測定補正コンポーネントは、坑井の内径の公差によって生じる流れの測定誤差を補正する。井戸体積流量計の外径と、排出格子コンポーネントの外径と、測定補正コンポーネントの外径とは、互いに実質的に等しい。井戸体積流量計の長手方向長さは、測定補正コンポーネントの長手方向長さと実質的に同じである。流量計井戸ツールは、井戸体積流量計の入口端部に、井戸流体を均一化する流れ調整装置を含む。流れ調整装置は、井戸流体を均一化するように配置された複数のフィンを有する調整装置管を含み、調整装置管は、井戸体積流量計の入口端部において中空円筒管に結合されている。井戸体積流量計は、坑井内のダウンホール圧送ユニットの取入口の上流に配置されている。
【0007】
ある態様は、坑井内に配置された井戸体積流量計であって、坑井を通る井戸流体を、体積流量計を通る内部流体と、坑井と井戸体積流量計との間の環状部を通る外部流体とに分割する中空円筒管を有する井戸体積流量計を含む井戸流量計システムを包含する。井戸流量計システムは、内部流体の圧力差を測定する中空円筒管の内部センサと、外部流体の圧力差を測定する中空円筒管の外部センサと、内部センサ及び外部センサに接続された処理回路とを含む。処理回路は、内部センサ及び外部センサから圧力信号を受信するステップと、井戸体積流量計を通る内部流体全域の圧力差及び環状部を通る外部流体全域の圧力差を判定するステップと、判定された圧力差に基づいて、井戸流体の流体特性を判定するステップと、を含む操作を実行する。
【0008】
上記の態様は、以下の特徴の、いくつか又はすべてを含むことができるし、何も含まなくてもよい。中空円筒管は、中空円筒管の内側断面積よりも小さい断面積を有する内部部分を含む。井戸流量計システムは、井戸体積流量計の出口端部に取り付けられた排出格子コンポーネントであって、井戸体積流量計の出口端部を流れ去る内部流体及び外部流体を混合する排出格子コンポーネントと、測定補正コンポーネントとを含み、測定補正コンポーネントは、管区域と、測定補正コンポーネントと坑井との間で、混合された内部流体及び外部流体の圧力差を測定する補正センサとを含む。井戸流量計システムは、内部センサと、外部センサと、補正センサと、に電子的に結合された送信機と、内部センサと、外部センサと、補正センサと、に結合された送信機から送信される圧力差データを、内部センサと外部センサと補正センサとから受信する受信機とを含む。操作は、補正センサの外側を流れる混合された内部流体及び外部流体全域の圧力差を判定するステップをさらに含み、流体特性は、混合された流体の体積流量と、内部流体の体積流量と、外部流体の体積流量と、流体密度と、流体流路抵抗とを含む。井戸流体の流体特性を判定するステップは、以下の数式を解くステップを含み、
【数1】
井戸体積流量計の内側断面積(A)、内部流体の圧力差(ΔP12)、井戸体積流量計の内部部分の最小内側断面積(A)、外部流体の圧力差(ΔPxy)、混合された流体の圧力差(ΔPij)、井戸体積流量計を通る流体の流路抵抗(R)、及び上下高低変化(H)を用いて、混合された流体の体積流量(Q)、内部流体の体積流量(Q)、外部流体の体積流量(Q)、流体密度(ρ)、及び流体流路抵抗(R)の解を得る。
【0009】
ある態様は、坑井を通って流れる流体を、井戸体積流量計の内部を流れる内部流体と、井戸体積流量計の外部を流れる外部流体とに分けるステップと;内部流体の内部及び外部流体の内部の圧力差を測定するステップと;坑井を通って流れる流体の1つ以上の流体特性を、測定された圧力差に部分的に基づいて判定するステップとを含む方法を包含する。
【0010】
上記の態様は、以下の特徴の、いくつか又はすべてを含むことができるし、何も含まなくてもよい。方法は、内部流体及び外部流体を、組み合わせた流体にするように混合するステップと、組み合わせた流体における圧力差を測定するステップとを含む。方法は、坑井を通って流れる流体を内部流体と外部流体とに分けるステップの前に、坑井を通って流れる流体を均一化するステップを含む。内部流体の内部及び外部流体の内部の圧力差を測定するステップは、井戸体積流量計内の圧力差センサを用いるステップを含む。方法は、内部流体、外部流体、及び組み合わせた流体の測定した圧力差から、流体の流量、流体密度、又は流路抵抗のうちの1つを判定するステップを含む。
【0011】
ある態様は、坑井を通る井戸流体を、体積流量計を通る内部流体と、坑井と井戸体積流量計との間の環状部を通る外部流体とに分割する手段を含む井戸流量計システムを包含する。井戸流量計システムは、内部流体の圧力差を検出(センシング)する手段と、外部流体の圧力差を検出する手段と、内部流体及び外部流体から圧力信号を受信する手段と、井戸体積流量計を通る内部流体全域の圧力差及び環状部を通る外部流体全域の圧力差を判定する手段と、判定された圧力差に基づいて、井戸流体の流体特性を判定する手段とを含む。
【0012】
上記の態様は、以下の特徴の、いくつか又はすべてを含むことができるし、何も含まなくてもよい。井戸流量計システムは、井戸体積流量計の出口端部を流れ去る内部流体及び外部流体を混合する手段を含む。井戸流量計システムは、坑井の内径の公差によって生じる流れの測定誤差を補正する手段を含む。井戸流量計システムは、井戸流体を均一化する手段を含む。井戸流量計システムは、混合された内部流体及び外部流体の圧力差を検出する手段を含む。井戸流量計システムは、井戸流体の圧力差データを送信する手段と、送信された井戸流体の圧力差データを受信する手段とを含む。
【0013】
この開示で説明される主題の一つ以上の実施の詳細を、添付する図面及び以下の説明に記載する。その主題の他の特徴、態様及び利点は、かかる説明及び図面並びに請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示の井戸システムの概略部分断面図である。
【0015】
図2】例示の井戸システムの概略部分断面図である。
【0016】
図3】例示の流量計井戸ツールの概略部分断面図である。
【0017】
図4】例示の井戸流量計システムの概略部分断面図である。
【0018】
図5】井戸における流体流れを解析する方法を示すフロー図である。
【0019】
種々の図面における同様の符号及び記号は同様の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、井戸内の流体の流体特性、例えば、流量、流体密度、及び流体流れの流量制限を測定する流量計井戸ツールについて記載する。流量計井戸ツールは、坑井内に位置決めされた井戸体積流量計を含み、井戸体積流量計は、坑井を通る井戸流体を、井戸体積流量計内の内部流体と、坑井の壁と井戸体積流量計との間の環状部内の外部流体とに分割する。井戸体積流量計は、内部流体と外部流体との両方の流体特性(例えば、圧力差)を測定する。実施によっては、流量計井戸ツールは、以下で説明するように、流体流れを複数の別々の経路に分割し、各経路の圧力差を測定する。井戸体積流量計は、別のダウンホール井戸ツール(例えば、ダウンホール圧送ユニット)に結合することもでき、その一部とすることもでき、さもなければ、ダウンホールから独立して実装することにより、井戸流体流れ、例えば、生産井内の炭化水素含有流体、掘削された井戸内の掘削泥流体、及び/又は、井戸内の他の流体流れ、を解析することができる。
【0021】
実施によっては、流量計井戸ツールにより、井戸からの産出、ダウンホール圧送ユニットの性能、スケールの形成、ケーシングの摩耗、及び/又は坑井の損耗を連続的に監視できる。流量計井戸ツールにより、流量、流体密度、及び、坑井やケーシングやライナの内径によらない流路抵抗、の計算が可能になる。流量計井戸ツールは、坑井壁やケーシングの内径の不確定性に由来する測定値の分散を補正できる。流量計井戸ツールを、ダウンホールゲージに組み込むことができ、又は、ダウンホールゲージから切り離して実装することができる。実施によっては、流量計井戸ツールは、ダウンホールゲージ同士の間に配置された場合、他のダウンホールゲージ(例えば、圧送ユニット)に干渉するおそれのある制御及び/又は電力線を追加する必要がない。実施によっては、流体が圧送ユニットによる影響を受ける前に、流量計井戸ツールにより流体特性の評価が可能になる。
【0022】
図1は、地表104から、1つ以上の対象地下区間106(図示は1か所)内へ地中に向けて下方へ延びる坑井102を含む井戸システム100の概略図である。井戸ストリング108は、地表104から坑井102内を降下しているように図示されている。実施例によっては、井戸ストリング108は、端部どうしを繋げた長さの一連の管及び/又はコイル状の連続管(すなわち、繋がれていない管)である。井戸ストリング108は、ドリルストリング、産出ストリング、又は、井戸システムの耐用期間に用いられるその他の井戸ストリングを構成できる。井戸ストリング108は、圧送ユニット112と、例えば流量計井戸ツールを含むダウンホールアセンブリ(組立体)110とを含む。実施例によっては、井戸ストリング108は、圧送ユニット112を含まない。図2に示すように、実施によっては、井戸システム100は、地表104から地中へ延在する坑井102の一部を補強する、管の長さによって画成されるライナ(不図示)又はケーシング114を含む。
【0023】
図3に示すように、図1及び図2のダウンホールアセンブリ110で用いることができる例示の流量計井戸ツール200が断面図で示されている。この例示の流量計井戸ツール200は、井戸のケーシング又は坑井(例えば、ケーシング114又は坑井102)内の流体流れを分割し、分割した流体流れを解析して、例えば、流量、流体密度、分割した流体流れの流路抵抗を含む流体流れの特性、又は他の流体流れの特性を判定する。例示の流量計井戸ツール200は、井戸体積流量計202、排出格子コンポーネント(構成部品)204、測定補正コンポーネント206、及び、実施によっては、流れ調整装置208を含む。流体流れのすべて又は一部は、井戸体積流量計202の入口端部210に流入する。井戸体積流量計202は中空円筒管212を含み、中空円筒管212は、井戸流体を、井戸体積流量計202を通る内部流体と、井戸体積流量計202と坑井、ケーシング、又はライナとの間の環状部を通る外部流体とに分割する。外部流体は、井戸体積流量計202の横に沿って環状部内を流れる。排出格子コンポーネント204は、内部流れを受け、内部流体及び外部流体を混合し、測定補正コンポーネント206と並行に流れる単一の混合された流体流れにする。
【0024】
体積流量計202の中空円筒管212は、中空円筒管212の内側断面積よりも小さい内側断面積を有する内部部分214を含む。実施によっては、井戸体積流量計202は、内部流体の圧力差を測定する内部センサ216と、外部流体の圧力差を測定する外部センサ218とを含む。井戸体積流量計202は、追加のセンサ及び/又は異なるセンサを含むことができる。実施によっては、井戸体積流量計202は、外部流体及び内部流体の流れの圧力差を測定するように構成されたベンチュリ計であってもよい。特定の実施では、井戸体積流量計202は、外部流体及び内部流体の流れの圧力差を測定するよう構成されたタービン又はオリフィスであってもよい。
【0025】
排出格子コンポーネント204は、井戸体積流量計202の出口端部220に取り付けられており、井戸体積流量計202の出口端部220を流れ過ぎる内部流体と外部流体とを混合する。排出格子コンポーネント204は、井戸体積流量計202の出口端部220において中空円筒管212に結合された管222を含む。排出格子コンポーネント204の管222は複数の開口部224を含み、内部流体は、坑井の環状部内の外部流体と混合するように開口部224を通って流れる。開口部224は、内部流体が管222を通過し、環状部内の外部流体と合流できるように、例えば、格子スロット(細長い穴)、開口、穿孔、及び/又は他の開口部を含むことができる。開口部224は、例えば、開口部224を通過する内部流体のために一定した流れ面積を維持するように、井戸体積流量計202の中空円筒管212の内側断面積以上の開口面積を有する。実施によっては、排出格子コンポーネント204は、管222内の開口部224を通って環状部へ流れ込むように内部流体を付勢するために、管222内のブルノーズ(丸い角)226を含む。ブルノーズ226は、内部流体流れを、開口部224を通って排出格子コンポーネント204の外へ向けるよう、そして、排出格子コンポーネント204を通る内部流体の乱流を最小限にするよう、管222の長手方向端部の中央に位置決めされてもよい。例えば、ブルノーズ226は、内部流体を管222内の開口部224を通って環状部内へ外側に方向を変えるよう、排出格子コンポーネント204の管222内で円形又はテーパ形状を含んでいてもよい。
【0026】
測定補正コンポーネント206は、排出格子コンポーネント204に接続されており、坑井、ケーシング、又はライニングの内径の公差によって生じる流れの測定誤差を補正する。実施によっては、測定補正コンポーネント206は、補正センサ228と、排出格子コンポーネント204の管222に結合される管区域230とを含む。補正センサ228は、測定補正コンポーネント206の長さに沿う環状部内の混合された流体流れの圧力差を測定する。実施によっては、測定補正コンポーネント206は、流体流れの上流端部において、例えば、測定補正コンポーネント206の直径と同じ直径を有するダウンホール井戸ツールより下で、ダウンホール井戸ツールに取り付けられる。
【0027】
流れ調整装置208は、井戸体積流量計202の入口端部210において、坑井又はケーシング内の井戸流体を均一化する。流れ調整装置208は、井戸流体の均一化を促進するよう、フィン234、整流板236、及び/又は他の均一化構造を有する調整装置管232を備える。調整装置管232は、井戸体積流量計202の入口端部210において中空円筒管212に結合される。図3は、井戸体積流量計202の入口端部210に結合された流れ調整装置208を示している。しかし、実施によっては、流れ調整装置208は、流量計井戸ツール200において除外される。
【0028】
実施によっては、井戸体積流量計202の外径、排出格子コンポーネント204の外径、及び測定補正コンポーネント206の外径は、互いに(実質的に、又は、正確に)等しい。井戸体積流量計202、排出格子コンポーネント204、及び測定補正コンポーネント206は、例えば、中心軸線A−Aに沿って長手方向に整列することができる。特定の実施において、中心軸線A−Aに沿う井戸体積流量計202の長手方向長さは、例えば、井戸体積流量計202の外部センサ218が、測定補正コンポーネント206の補正センサ228と同じ長さにわたる圧力差を測定できるように、中心軸線A−Aに沿う測定補正コンポーネント206の長手方向長さと(実質的に、又は、正確に)同じである。実施によっては、体積流量計202及び測定補正コンポーネント206の長手方向長さは異なっていてもよい。井戸体積流量計202及び測定補正コンポーネント206は、同じ又は異なる材料あるいは複数の材料からできていてもよい。
【0029】
例示の流量計井戸ツール200は、多くの位置及び構成で実装することができる。実施によっては、流量計井戸ツール200は、圧送ユニット(例えば、ダウンホールESP、掘削流体ポンプ、及び/又はその他)の取入口の上流に配置され、井戸体積流量計202の出口端部220は、井戸体積流量計202の入口端部210よりも圧送ユニットの取入口に隣接している。例えば、流量計井戸ツール200は、井戸流体が圧送ユニットを介して圧送される前に、井戸流体流れの特性を解析できる。実施例によっては、圧送ユニットの取入口の上流は、井戸流体が地表に向かって坑井を上に流れる場合(例えば、生産井)等では、圧送ユニットの下側になる。実施例によっては、圧送ユニットの取入口の上流は、井戸流体が地表から離れて坑井を下に流れる場合(例えば、掘削される井戸)等では、圧送ユニットの上側になる。他の実施では、流量計井戸ツール200は、圧送ユニットの出口の下流に配置される。例えば、流量計井戸ツール200は、井戸流体が圧送ユニットを介して圧送された後に、井戸流体流れの性能を解析できる。特定の実施例では、流量計井戸ツール200によって井戸流体が圧送ユニットを介して圧送された後に井戸流体流れの性能を解析することにより、圧送ユニットの性能及び効率に関するデータを提供してもよい。実施例によっては、圧送ユニットの出口の下流は、井戸流体が地表に向かって坑井を上に流れる場合(例えば、生産井)等では、圧送ユニットの上側になる。実施例によっては、圧送ユニットの出口の下流は、流体が地表から離れて坑井を下に流れる場合(例えば、掘削される井戸)等では、圧送ユニットの下側になる。さらなる実施において、流量計井戸ツール200は、例えば、圧送ユニットを除外した独立型井戸ツールとして坑井内に配置される。
【0030】
流量計井戸ツール200は、追加の又は異なるコンポーネント及び特徴を含むことができる。例えば、例示の流量計井戸ツール200は、坑井又はケーシング内で流量計井戸ツール200を中央に位置決めするように、流量計井戸ツール200の長手方向端部にセントラライザ(中心位置決め装置)を含むことができる。別の実施例では、流量計井戸ツール200は、タービン発電機や、バッテリや、別の電源などの、流量計井戸ツール200に接続された電源を含むことができる。電源は、井戸体積流量計202上及び測定補正コンポーネント206上のセンサ216、218、228及び/又は流量計井戸ツールに関連する電子装置に電力を供給できる。
【0031】
実施によっては、図1及び図2のダウンホールアセンブリ110は、図3の流量計井戸ツール200のコンポーネントを1つ以上含んでいる。例えば、図4は例示の井戸流量計システム300を示し、この井戸流量計システム300は、井戸体積流量計202と、内部センサ216と、外部センサ218とを含め、図3の流量計井戸ツール200のコンポーネントの何点かを含む。井戸流量計システム300は、内部センサ216及び外部センサ218に接続された処理回路302も含んでおり、内部センサ216及び外部センサ218から圧力差データを判定し、この圧力差データに基づいて流体特性の1つ以上を決定する。図4は、井戸内で流量計井戸ツール200と共に穴の下方にある処理回路302を示している。特定の実施において、処理回路302は、流量計井戸ツール200の穴の上方、例えば、井戸の表面(地表)に配置され、有線接続、無線接続、有線接続と無線接続との組み合わせ、及び/又はその他の接続を介して、内部センサ216及び外部センサ218に接続されている。実施によっては、井戸流量計システム300は、排出格子コンポーネント204と測定補正コンポーネント206とを含み、測定補正コンポーネント206の補正センサ228を含んでいる。処理回路302は、内部センサ216及び外部センサ218からの圧力差データに加え、補正センサ228からの圧力差データを評価することができる。特定の実施において、井戸流量計システム300は、処理回路302の代替又は追加として、1つ以上のプロセッサ(処理装置)によって実行可能な命令を格納するコンピュータで読取可能な記憶媒体を含む。
【0032】
実施によっては、処理回路302は、内部センサ216と、外部センサ218と、補正センサ228とに電子的に結合された送信機と、送信機から圧力差を受信するように構成された受信機とに接続される。実施例によっては、送信機は、体積流量計202、測定補正コンポーネント206、及び/又は別のコンポーネントに取り付けられ、受信機は、それぞれの井戸の表面(地表)に配置される。実施によっては、処理回路302は、データを評価すると共に圧力差に基づいて流体特性を計算するプロセッサを備える。処理回路302が判定する流体特性は変動する。実施例によっては、流体特性として、混合された流体の体積流量(Q)、内部流体の体積流量(Q)、外部流体の体積流量(Q)、流体密度(ρ)、及び流体流路抵抗(R)のうちの1つ以上が含まれる。流体特性は、井戸流量計システム300のセンサから判定された圧力差から判定できる。特定の実施によっては、以下の一組の数式を用いて流体特性の解を得ることができる:
【数2】
上記一組の数式は、5個の未知数を有し、解が得られる5つの数式を定めるが、ここで、5つの未知数とは、上で述べたQ、Q、Q、ρ、及びRである。以下の表1でこれら数式中の変数を定義する。流体特性は、処理回路302によって、上記数式から判定できる。
【表1】
【0033】
図5は、例えば上述した例示の井戸流量計ツールによって行われる、井戸内の流体を解析する方法400を説明するフロー図である。ステップ402では、坑井を通って流れる流体が、井戸体積流量計の内部を流れる内部流体と、井戸体積流量計の外部を流れる外部流体とに分けられる。ステップ404では、圧力差が、内部流体において、及び、外部流体において、測定される。ステップ406では、坑井を通って流れる流体の1つ以上の流体特性が、測定された圧力差に部分的に基づいて判定される。実施例によっては、処理回路が、方法400を、特には、坑井を通って流れる流体の1つ以上の流体特性を判定するステップ406を、実施できる。処理回路は、穴の上方、穴の下方、又はそれぞれの井戸現場から離れた遠隔部位に実装できる。
【0034】
ここまで、多くの実施を説明してきた。それにもかかわらず、本開示の精神及び適用範囲から逸脱することなく様々な改良が行われてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100 井戸システム
102 坑井
104 地表
106 対象地下区間
108 井戸ストリング
110 ダウンホールアセンブリ
112 圧送ユニット
114 ケーシング
200 流量計井戸ツール
202 井戸体積流量計
204 排出格子コンポーネント
206 測定補正コンポーネント
208 流れ調整装置
210 入口端部
212 中空円筒管
214 内部部分
216 内部センサ
218 外部センサ
220 出口端部
222 管
224 開口部
226 ブルノーズ
228 補正センサ
230 管区域
232 調整装置管
234 フィン
236 整流板
300 井戸流量計システム
302 処理回路
図1
図2
図3
図4
図5