(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブであって、前記ポリ乳酸繊維の少なくとも一部が、約0.1重量%〜約5.0重量%の帯電性添加物を含む溶融紡糸された延伸帯電繊維であり、前記ウェブがスルーエア接着されたウェブである、スパンボンドエレクトレットウェブ。
【発明を実施するための形態】
【0006】
用語集
エレクトレットウェブとは、少なくともの準恒久的な電気的な帯電を示す繊維を含む不織布ウェブを意味する。
【0007】
用語のポリ乳酸は、本明細書において、乳酸モノマー(繰り返し)単位を含むポリマー及びコポリマーを意味するよう、便宜的に使用される。この用語及び用語のポリ(乳酸)及びポリ(ラクチド)は、一般に、互換的に使用することができる。
【0008】
用語「溶融紡糸」は、本明細書で使用する場合、一組のオリフィスから溶融フィラメントを押し出し、このフィラメントを冷却して、(少なくとも一部を)固化させて繊維を形成させることにより形成される繊維であって、フィラメントの冷却及び固化を補助するために、フィラメントを空気隙間(移動空気流が含まれてもよい)に通すこと、及びこうして形成した繊維を、次に細径化(すなわち、延伸)ユニットに通して、繊維を延伸することを伴う、繊維を指す。溶融紡糸法は、押出オリフィスにかなり近接して配置されている空気吹出しオリフィスによって導入される高速度の収束空気流に、溶融フィラメントを押し出すことを必要とするメルトブロー法とは区別することができる。
【0009】
便宜上、用語「フィラメント」は、一組のオリフィスから押し出される熱可塑性材料の溶融流を指すために一般に使用され、用語「繊維」は、固化フィラメント及びそれを含むウェブを指すために一般に使用される。これらの名称は、単に説明の便宜上用いられる。当業者であれば、溶融紡糸プロセスにおいて、この繊維は、一部の状況(例えば、延伸の間)で、例えば、わずかに軟化したか又は粘性のある表面を依然として示すことがあることを理解するであろう。
【0010】
「スパンボンドされている」とは、繊維ウェブとして捕集され、場合により、1つ以上の接着作業を施された一組の溶融紡糸された繊維を含むウェブを意味する。
【0011】
用語「ウェブ」は、繊維の塊が、自己支持層として取り扱われるのに十分な機械的完全性を有している程、互いに十分に接着されている不織布繊維の塊を意味する。例えば、ウェブは、慣用的なロール−ツー−ロール式ウェブ−取り扱い機器を用いて取り扱うことができる。用語「マット」は、自己支持ウェブを形成するのに十分な程、互いに接着されていない繊維の塊を意味する(例えば、互いにまだ接着されていない、捕集された溶融紡糸繊維の塊)。
【0012】
「直接捕集された繊維」とは、一組のオリフィスから溶融フィラメントを押し出し、このフィラメントを固化させて繊維を形成し、この繊維を延伸する、及びフィラメント若しくは繊維がオリフィスと捕集器表面との間の偏向板などに接触することなく、例えば、捕集器表面で繊維を捕集することによる、本質的に1つの作業で、ウェブとして形成されて捕集される繊維を意味する。直接捕集された繊維は、例えば、ステープル繊維、カードウェブなどと区別することができる。
【0013】
「ひだ付け」とは、少なくとも部分的に折りたたまれて、一般に並列に、対向して折り目の列をなす形状を形成するウェブを意味する。こうして、ウェブのひだ付けは、例えば、個々の繊維のクリンプ加工とは区別される。
【0014】
「固体度」とは、固体(例えば、ポリマー繊維)材料によって占められる繊維ウェブの全容積の割合を表す無次元率(通常、パーセントで報告される)を意味する。
【0015】
スパンボンドエレクトレットウェブ
ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブであって、ポリ乳酸繊維の少なくとも一部が、溶融紡糸されて延伸された、帯電性添加物を含むエレクトレット含有(帯電)繊維である、スパンボンドエレクトレットウェブが本明細書において開示される。ウェブのポリ乳酸繊維の少なくとも一部は、例えば、スルーエア接着によって、互いに自発的に溶融接着している。
【0016】
ポリ乳酸ポリマー又はコポリマー(例えば、溶融加工可能な材料、特に繊維形成性樹脂)は、乳酸モノマー(繰り返し)単位を含む。こうしたポリマー又はコポリマーは、L−乳酸、D−乳酸又はそれらの混合物など乳酸のいずれかの異性体から選択されるモノマーに、一般に、由来することができる。ポリ乳酸はまた、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド又はそれらの混合物を含めた、乳酸の任意の異性体の無水物から形成することもできる。こうした乳酸及び/又はラクチドの環式二量体も使用することができる。したがって、例えばポリ乳酸のL−乳酸モノマー単位は、L−乳酸モノマーから、又はこうして形成するポリマー中で等価なモノマー単位をもたらす任意の供給源から誘導可能なものとして理解されよう。重縮合又は環開環重合などの公知の任意の重合方法を使用して、こうしたポリマーを製造することができる。
【0017】
ポリ乳酸は、L−乳酸又はD−乳酸ホモポリマーとすることができ、又は、ポリ乳酸は、L−乳酸モノマー単位及びD−乳酸モノマー単位を含むものなどのコポリマーであってもよい。(こうしたポリマーでは、ホモポリマー又はコポリマーの名称は、化学物質組成上でよりもむしろ、モノマー単位の立体規則性に基づく「ステレオ」名になるであろう。)やはり、こうしたモノマー単位は、L−乳酸、D−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチドなどのコポリマー鎖への取り込みに由来することができる。一部の実施形態では、ポリ乳酸は、少量のD−乳酸モノマー単位(これは、例えば、ポリマーの溶融加工性を改善することができる)と一緒にL−乳酸モノマー単位を主に含む、L−Dコポリマーとすることができる。様々な実施形態では、ポリ乳酸コポリマーは、少なくとも約85、90、95、96、97、98、99、99.5又は99.7重量%のL−乳酸モノマー単位を含むことができる。更なる実施形態では、ポリ乳酸コポリマーは、最大でも、約15、10、5、4、3、2、1、0.5又は0.3重量%のD−乳酸モノマー単位しか含み得ない。
【0018】
一部の実施形態では、溶融紡糸された繊維のポリ乳酸含有量(及び/又は、溶融紡糸された繊維の全ポリマー含有量)の実質的にすべて(すなわち、99.5重量%以上)が、ポリ乳酸(ステレオ)コポリマーによってもたらされ得る。例えば、コポリマーは、少量のD−乳酸モノマー単位と一緒に、L−乳酸モノマー単位を主に含む(具体的な実施形態では、繊維のポリ乳酸含有量の実質的にすべてが、L−乳酸ホモポリマーの形態にあってもよい)。他の実施形態では、D−乳酸(ステレオ)ホモポリマーからなる、追加のポリ乳酸が少量存在していてもよい。D−乳酸ホモポリマーのこうした更なる量の添加(例えば、物理ブレンドとして、例えば、押し出し中の溶融添加物として)により、一部の場合、ポリ乳酸材料のある種の特性(例えば、溶融加工性、核形成速度など)が強化されることがある。すなわち、様々な実施形態では、例えば、溶融紡糸において使用されるポリ乳酸は、少なくとも約0.5、1、2、3、5又は8重量%のD−乳酸ホモポリマー添加物を含んでもよい。更なる実施形態では、こうしたポリ乳酸材料は、最大でも、約15、10、8、5、3、2、1又は0.5重量%のD−乳酸ホモポリマーしか含み得ない。(こうした場合、ポリ乳酸繊維成形材料の残りは、例えば、上記のL−Dステレオコポリマーとすることができる。)
【0019】
一部の実施形態では、溶融紡糸された繊維中に存在している少なくとも一部のポリ乳酸は、1種以上の追加の(非乳酸)モノマー単位を含む、(組成上の)コポリマーとすることができる。こうしたモノマー単位は、例えば、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などを含むことができる。様々な実施形態では、乳酸モノマー単位(L又はDであろうと、どの供給源に由来するものであろうと)は、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の、少なくとも約80、85、90、95、97、99又は99.5重量%を占めることができる。
【0020】
溶融加工可能な(繊維形成性)ポリ乳酸ポリマー材料(例えば、L−Dコポリマー)は、例えば、INGEO 6100D、6202D及び6260Dという商標名で、Natureworks LLC(Minnetonka、MN)から市販されている。溶融加工可能なポリ乳酸ポリマー材料(例えば、D−乳酸ホモポリマー)は、例えば、商標名SYNTERRA PDLA1010でSynbra Technologies、The Netherlandsから市販されている。他の多数の潜在的に好適なポリ乳酸材料も入手可能である。
【0021】
様々な実施形態では、延伸されて自発接着している(例えば、スルーエア接着された)帯電性添加物含有ポリ乳酸繊維は、少なくとも約20、30、40又は50%の百分率結晶化度を示すことができる。
【0022】
様々な実施形態では、ポリ乳酸は、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の材料(例えば、ポリマー材料)の少なくとも約85、90、95、96、97、98、99、又は実質的にすべて(すなわち、99.5以上)、又は本質的にすべて(すなわち、99.9%以上)を構成(重量%)してもよい。一部の実施形態では、少量の非ポリ乳酸ポリマー材料が、溶融紡糸された繊維の少なくとも一部に存在してもよい(例えば、押出プロセスにおいて、溶融添加物としてポリ乳酸に添加される)。一部のこうした非ポリ乳酸ポリマー材料は、例えば、ポリマー核形成剤として働くことができる(例えば、どのようなD−乳酸ホモポリマーが存在し得るか、及び既に議論したものと同様の目的として働き得るかに関わりなく)。この文脈では、1モルあたり4000グラムの分子量が、ポリマー核形成剤と非ポリマー核形成剤との間の境界線として働き得る。任意の適切な非ポリ乳酸ポリマーが、所望の場合、いかなる好適な量でも使用することができる。特定の実施形態では、ポリオレフィン材料(例えば、ポリプロピレン)は、少なくとも一部の溶融紡糸された繊維中に、最大約5、3、2、1又は0.5重量%で存在することができる。他の実施形態では、ポリオレフィン材料は、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維中に、実質的(すなわち、0.5重量%未満)に又は本質的(すなわち、0.1重量%未満)に存在していない。
【0023】
一部の実施形態では、少量の非ポリ乳酸の溶融紡糸された繊維又は溶融紡糸されていない非ポリ乳酸繊維(例えば、ステープル繊維、複合接着繊維など)がウェブ中に存在していてもよい。様々な実施形態では、ポリ乳酸繊維は、ウェブの全繊維材料の少なくとも約85、90、95、96、97、98、99、又は実質的にすべて(すなわち、99.5以上)を構成(重量%)してもよい。こうした実施形態では、任意の非ポリ乳酸繊維が、ウェブの全繊維材料の、約15、10、5、4、3、2、1、0.5又は0.1重量%未満しか構成していなくてもよい。
【0024】
ポリ乳酸の溶融紡糸された繊維の少なくとも一部は、帯電性添加物(この用語は、単一の帯電性添加物と2種以上の帯電性添加物の組合せの両方を含む)を含む。様々な実施形態では、帯電性添加物は、ウェブの溶融紡糸された繊維の少なくとも約0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.4又は1.8重量%を構成する。更なる実施形態では、帯電性添加物は、ウェブの溶融紡糸された繊維の最大でも約3.0、2.0、1.6、1.2、1.1、0.8又は0.6重量%しか構成しない。多くの場合、こうした帯電性添加物は、押出プロセスにおいて、溶融添加物としてポリ乳酸繊維形成性樹脂に添加するのが好都合となり得る。
【0025】
溶融紡糸されたポリ乳酸繊維が、電荷を受容及び/又は維持することができる能力を増強することができる、任意の好適な帯電性添加物を使用することができる(その結果、この繊維は、エレクトレットと一般に称される、準恒久的な電荷を有する)。少なくとも一部の実施形態では、帯電性添加物として有用となる可能性のある化合物には、有機トリアジン化合物(オリゴマーを含む)が挙げられ、このトリアジン化合物は、トリアジン環中の窒素原子に加え、少なくとも1個の窒素原子を含有してもよい(例えば、Rousseauへの、米国特許第6268495号、同第5976208号、同第5968635号、同第5919847号及び同第5908598号を参照されたい)。好適となる可能性のある化合物の具体例には、2−(4,6−ビフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)フェニル及び他のフェノール含有トリアジン環などが挙げられる。一部の実施形態では、ヒンダードアミン化合物が使用されてもよい。こうした化合物は、時として、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizers、HALS)と呼ばれ、混み合った立体環境内での1つ以上のアミン部位の存在により特徴付けられる。こうした化合物は、1つ以上の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジル基、例えば、1つ以上の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジル−4−アミノ基を含むことが多い。様々な実施形態では、2,2,6,6−テトラアルキル基は、1〜6個の炭素原子、例えばヘキシル、ペンチル、ブチル、プロピル、エチル及びメチル基を有する脂肪族基とすることができる。具体的な実施形態では、4つのアルキル基はすべて、メチル基とすることができる。こうしたピペリジル基は、例えば、4位において、又は所望の場合、4−アミノ基を介して別の有機基に共有結合されていてもよい。
【0026】
一部の実施形態では、脂肪族金属塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、及び他のC
8〜24カルボン酸金属塩など)が、単独で、又は別のタイプの帯電性添加物、例えば、ヒンダードアミン及び/又は有機アミドと組み合わせて使用され得る。帯電性添加物として使用するのが好適となり得る、様々なカルボン酸金属塩、ヒンダードアミン及び有機アミドが、Berkemannへの米国特許出願公開第2013/0288555号に記載されている。
【0027】
一部の実施形態では、1つ以上の縮合芳香族ウレア又はチオウレア化合物が、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、2014年6月23日出願のELECTRET WEBS WITH CHARGE−ENHANCING ADDITIVESと題する、米国仮特許出願第62/015637号に記載されている通り使用することができる。帯電性添加物として有用となる可能性のある更に他の材料には、Sebastianへの米国特許第7765698号、及びNishiuraへの米国特許第5057710号に記載されているN−置換アミノ芳香族性化合物(特に、三アミノ置換化合物)、並びにLeirへの米国特許出願公開第2007/0180997号において言及されているもの、並びにNakamuraへの日本特許公開第5047848号において言及されているものが挙げられ、これらの全体がすべて、参照により本明細書に組み込まれている。帯電性添加物として好適に機能し得る化合物を含むことができる、他の一般的なクラスの材料には、例えば光安定剤、一次及び二次酸化防止剤、金属不活性化剤、ヒンダードフェノール、脂肪酸金属塩、フッ素含有化合物及びメラミンが挙げられる。他の好適となる可能性のある化合物には、N−置換アミノ芳香族化合物、特に、商標名UVINUL T−150でBASF、Ludwigshafen、ドイツから市販されている、2,4,6−トリアリニノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジンなどの三アミノ置換化合物が挙げられる。別の好適となる可能性のある化合物は、商標名CHIMASSORB944でCiba Specialty Chemicals,Inc.から入手可能である。更に別の好適となる可能性のある化合物は、トリステアリルメラミンとしても知られている、2,4,6−トリス−(オクタデシルアミノ)−トリアジンである。上述のものは、単に、帯電性添加物として有用となり得る例示的な化合物の非限定的なリストに過ぎず、様々な分類において、化合物間で重複することがあることに留意されたい。
【0028】
任意の補助的な材料(例えば、非ポリマー添加物)が、任意の目的のために、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の少なくとも一部において存在してもよい。こうした材料には、例えば、酸化防止剤、UV安定剤、加工助剤、抗微生物剤、顔料、染料などのうちの1種以上を挙げることができる。一部の実施形態では、溶融紡糸された繊維は、1種以上の非ポリマー核形成剤を含んでもよい。しかし、特定の実施形態では、スパンボンドウェブのポリ乳酸繊維中に、(例えば、Tokudaへの米国特許出願公開第2005/0176325号に記載されている任意のタイプの)非ポリマー核形成剤は本質的に存在しない(すなわち、ポリ乳酸100重量部に対して、約0.01重量部未満)。
【0029】
作製方法
図1は、本明細書において開示されるスパンボンドウェブを形成するために使用することができる例示的な装置を示している。こうした装置を使用する例示的な方法では、ポリ乳酸繊維形成性材料(ペレット又は粒子形態であることが多い)は、ホッパー11(好適な量の帯電性添加物と一緒に)に導入され、この際に、ポリ乳酸(及び、固体として添加する場合、帯電性添加物)が、押出成形器12中で溶融されて、ポンプ13により押出ヘッド10にポンプ注入される。
【0030】
押出ヘッド10は、規則的なパターン、例えば一直線の列に配置されている複数のオリフィスを一般に含めた、従来のスピナレット又はスピンパックであってもよい。繊維形成性液体の溶融フィラメント15が、押出ヘッドから押し出され、空気充填空間17を通り、細径化器16に向かう。押し出されたフィラメント15が空気隙間17を通って細径化器16に達するまでに移動する距離は、フィラメント15が曝露される条件と同様に、様々となり得る。1つ以上の空気の流れ18(例えば、急冷用空気)が、押し出されたフィラメント15の方向に向かい、押し出されたフィラメント15の温度を低下させて、これを少なくとも一部、固化させて、繊維115となることができる(本明細書では、用語「空気」が便宜上、使用されているが、この用語は、本明細書において開示される急冷及び延伸プロセスにおいて使用することができる、他のガス及び/又はガス混合物を包含することが理解される)。所望の場合、複数の空気の流れ、例えば、押し出しの間に放出される望ましくないガス状材料又は煙霧を除去する働きを主にすることができる、フィラメント流を横切って吹く第1の空気流18a、及び温度低下を達成する働きを主にすることができる第2の急冷空気流18bを使用してもよい。
【0031】
次に、繊維115は、
図1に例示されている通り、繊維を延伸するため細径化器に通すことができる。細径化器16は、繊維上の急速移動する空気流に衝突するように構成されており、この空気流は、少なくとも一部分の繊維の細径化器への移動の間に、繊維と同じ方向に少なくとも一般に動く。こうして、移動空気により、繊維を延伸する働きをするせん断力が繊維上に作用する(細径化器中の移動空気は、繊維115の冷却及び/又は急冷をするよう働くこともでき、その冷却及び/又は急冷のいずれかの他に、押出ヘッド10と細径化器16との間の距離を通過する際、既に起こり得る)。
【0032】
こうして、本明細書において開示される細径化器は、例えば、繊維が最初に押し出される時点よりも速い速度で繊維を巻き取る(例えば、ボビン又はスプール)ことにより繊維に力を加えることによって、長く使用されてきた繊維の延伸方法の代替として働くことができることが理解されよう。こうした延伸は、各繊維の少なくとも一部分の少なくともある配向を達成するよう働くことができる。こうした延伸はまた、延伸の行わない場合の直径から、繊維の最終的な直径が低下することに現れ得る。しかし、帯電性添加物を含むポリ乳酸繊維の延伸はやはり、本明細書の後ほどで議論する通り、高温エージングよりも繊維の電荷を保持するのに追加的かつ予想外の有益性を有し得ることが発見された。
【0033】
繊維115の延伸度は、以下の式:
V
apparent(m/分)=4M/ρπd
f2×1000000
(式中、
Mは、ポリマー流速(1分あたりのグラム/オリフィス)であり、
ρは、ポリマー密度(グラム/立方センチメートル)であり、
d
fは、測定された平均繊維直径(マイクロメートル)である)によって算出される、見かけ繊維速度により特徴付けることができる。
【0034】
当業者であれば、見かけ繊維速度は、作製された繊維の実際の直径(すなわち、例えば、光学顕微鏡により得られる、平均測定直径)、及び溶融紡糸用オリフィスによる溶融フィラメントの流速を考慮すると、押し出した溶融フィラメントを延伸繊維に変換する際に起こる延伸度を示す、パラメータをもたらすことを理解しているであろう。様々な実施形態では、この見かけ繊維速度は、1分間あたり、少なくとも約1000、2000、3000又は4000メートルとすることができる。更なる実施形態では、この見かけ繊維速度は、1分間あたり、最大でも約14000、12000、10000、8000又は6000メートルにしかなり得ない。
【0035】
図2は、例示的な細径化器16の拡大側面図である。例示的な細径化器16は、一部の場合、
図2の設計にある通り、それらの間に細径化チャンバ24を画定するように分離されている二等分又は側部16a及び16bを含んでもよい。細径化器16は、二等分又は側部(この具体的な場合)として存在しているが、1つの単一デバイスとして機能し、その統合形態で先ず議論する。例示的な細径化器16は、細径化チャンバ24の入口空間又は喉部24aを画定する、傾斜した入口壁27を含む。この入口壁27は、好ましくは、入口の先端又は表面27aにおいて屈曲し、繊維115を運ぶ空気流の進入を円滑にする。壁27は、本体部分28に取り付けられており、本体部分28と壁27との間に空隙部30を確保するよう、凹領域29が設けられてもよい。導管31を通って、空隙部30内に空気を導入してもよい。エアナイフ32からチャンバ24内への空気の通過を円滑にするため、細径化器本体28は28aにおいて屈曲していてもよい。細径化器本体の表面28bの角度(α)は、細径化器を通過する繊維の流れにエアナイフが衝突する所望の角度を決定するように選択することができる。
【0036】
細径化チャンバ24は、均一な間隙幅を有してもよく、又は
図2に例示されている通り、この間隙幅は細径化器チャンバの長さに沿って変わり得る。細径化チャンバ24の長手方向の長さの少なくとも一部分を画定する壁は、主要本体部分28とは別個であり、主要本体部分28に取り付けるプレート36の形態が取られてもよい。一部の実施形態では、細径化器16のある部分(例えば、側部16a及び16b)は、例えば、このシステムの変動に応答して、互いの方向に及び/又は互いに離れて移動可能であってもよい。そのような能力は状況によって有利であり得る。例示的な細径化器及び可能な変形形態の更なる詳細は、参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれている、Berriganへの米国特許第6607624号、同第6916752号及び同第7470389号に見いだされる。
【0037】
次に、繊維115は、細径化器16を通り抜けた後、
図1に示されている通り、繊維115が繊維(マット)20の塊として捕集される、捕集器表面19上に堆積され得る。捕集器表面19は、連続ベルト又はドラム又はロールによってもたらされるものなどの、例えば、単一連続捕集器表面を含むことができる。捕集器19は、一般に多孔性であり、ガス吸収(真空)デバイス14がこの捕集器の下に配置されており、捕集器上での繊維の堆積を補助することができる。細径化器出口と捕集器との間の距離21、及び適用される真空の量などは、様々な効果を得るために変えることができる。
【0038】
具体的な特長(例えば、細径化器の設計、細径化器及び捕集器の配置など)にかかわらず、上記の溶融紡糸プロセスは、メルトブロー法と区別される。特に、フィラメントが少なくとも一部固化して繊維になる空隙部を溶融フィラメントが通過し、次いで、押出ヘッド(空隙部の傍)から離れて設けられているユニットで繊維の細径化/延伸が行われるのは、押出ヘッドのオリフィスからの出口点にできる限り近くで溶融フィラメントに空気を衝突させるメルトブロープロセスとは区別される。更に、当業者は、例えば、結晶ドメイン量及び性質、分子鎖の配向などの様々な特徴により、溶融紡糸された繊維がメルトブロー繊維と容易に区別され得ることを理解するであろう。
【0039】
次に、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の捕集マット20に接着プロセスを施すことができ、この場合、マットの少なくとも一部の繊維が、互いに接着されて、マットが繊維ウェブへと変換される。こうした方法が、繊維の物理的絡み、繊維の相互溶融接着、ある作用剤の添加による接着などに頼るかどうかに関わらず、任意の好適な方法を使用することができる。一部の実施形態では、この接着には、熱処理(本明細書では、溶融紡糸された捕集繊維のマットを少なくとも約80℃の温度に曝露することを意味すると広く定義される)が必要となり得、これは、本明細書において詳細に議論されている具体的な利点を有することができる。
【0040】
一部の実施形態では、熱接着は、その間の接触点における相互のポリ乳酸繊維の溶融接着と本明細書において定義されている、自発接着の形態をとることができ、こうした接着は、マット上に固体接点圧を適用することなく、高温で行われる。(したがって、こうした接着方法は、例えば、カレンダー加工、超音波接着などと対比され得る。)更に、こうした自発接着は、添加されるバインダー(繊維、粉末、又は液体/ラテックス形態)、又は添加される任意の接着剤などの使用を必要としない。更なる自発接着は、ニードルパンチング、水流交絡などの物理的な接着方法と区別される。当業者は、自発接着(特に、下記のスルーエア接着)は、他の手段(例えば、カレンダー加工又は超音波接着による、又は添加されたバインダー(繊維、液体又は粉末形態に関わらない)による、又はニードルパンチング又は水流交絡による)により達成される接着と容易に区別される、繊維−繊維接着をもたらすことを理解するであろう。
【0041】
特定の実施形態では、この自発接着は、捕集繊維のマットに加熱空気流を強制的に通すことにより実現される、スルーエア接着の形態をとることができる(すなわち、マットに加熱空気を衝突させて、その結果、この加熱空気がこのマットの第1の主面に入り、マットの厚みを通り抜け、所望の場合、マットの第2の主面に適用される真空により補助されて、反対側になるマットの第2の主面から出る)。こうした接着は、例えば、
図1における例示的な実施形態に示されている通り、スルーエア接着器101の使用により行うことができる。例示的なスルーエア接着器は、参照により本明細書に組み込まれている、Berriganへの米国特許出願公開第2008/0038976号(これは、これらの例示的なスルーエア接着器を冷却流体加熱機(quenched-flow heater)と呼んでいる)に詳細に議論されている。繊維マットの主面に対して少なくとも実質的に垂直な方向で、加熱された移動空気をこの繊維マットの主表面に衝突させるのが好都合となり得る(
図1における加熱空気流の方向を示す矢印201によって例示されている)。
【0042】
当業者であれば、熱による接着(例えば、自発接着、特にスルーエア接着)は、繊維が崩壊するか、又はそうでない場合、こうして形成したウェブの細孔を許容できない程、低下させる点まで繊維を加熱することなく、十分な数の繊維を互いに溶融接着して、溶融紡糸された繊維マットを自己支持繊維ウェブに変換するよう、行うことができる(こうして、このウェブは、スパンボンドウェブと呼ぶことができる)ことを理解するであろう。しかし、こうした熱曝露は、帯電性添加物を含むポリ乳酸繊維に行った場合、本明細書のどこかで詳細に議論されている通り、高温エージングよりも、繊維の電荷を保持するのに追加的かつ予想外の有益性を有することができることも見いだされた。
【0043】
自発接着(例えば、スルーエア接着)は、使用される特定のポリ乳酸繊維を適切に接着するのに十分で、かつ本明細書において開示される繊維の電荷の保持に有利な効果を実現するのに十分な、任意の適切な温度まで(例えば、空気が、繊維マットと遭遇する前に、わずかに冷え得るということを認識した、名目上の設定点まで)、加熱された移動空気を利用することができる。様々な実施形態では、移動空気は、少なくとも約90、100、120、130、140、150、160又は170℃の温度で供給され得る。更なる実施形態では、移動空気は、最大でも、約200、180、170、160、150又は140℃の温度で供給され得る。
【0044】
移動加熱空気を、本明細書に記載されている効果を実現するために好適な任意の線速度で繊維マットに衝突させることができる。様々な実施形態では、加熱空気の線速度は、1分間あたり、少なくとも約150、200、300、500、600又は800メートルとすることができる。更なる実施形態では、加熱空気の線速度は、1分間あたり、最大でも約1500、1200、1000、800又は600メートルにしかなり得ない。当業者であれば、加熱移動空気の温度及び/又は加熱移動空気の速度は、繊維マットが移動加熱空気に曝露されている時間と組み合わせて選択され、所望の累積全熱曝露を実現することができることを理解するであろう。様々な実施形態では、移動加熱空気(例えば、スルーエア接着器に接近しているマット/ウェブの滞留時間)への曝露時間は、少なくとも約0.1、0.2、0.4、0.8、1、2又は4秒とすることができる。更なる実施形態では、この移動加熱空気への曝露時間は、最大でも約4、2、1、0.8又は0.4秒にしかなり得ない。
【0045】
当分野において公知のいかなる帯電方法も使用され得る。例示的な方法には、例えば、コロナ帯電及びハイドロ帯電が挙げられる。一部の実施形態では、コロナ帯電とハイドロ帯電との組合せ(任意の順序で)も使用することができる(この様式で帯電された繊維は、コロナハイドロ帯電繊維と呼ばれ、作業の順番を暗示するものではない)。コロナ帯電は、例えば、van Turnhoutへの米国再発行特許第30782号、及びDavisへの米国特許第4215682号に記載されている方法を使用する、例えば、ウェブを適切なDCコロナ放電に曝露して、ウェブにろ過性向上エレクトレット電荷を付与することにより行うことができる。ハイドロ帯電は、ウェブにろ過性向上エレクトレット電荷を付与するのに十分な圧力で、水の噴流又は水滴流をウェブ上に衝突させることによって実施することができる。最適な結果を達成するために必要となる圧力は、使用される噴霧器のタイプ、繊維の特定の組成、存在する場合、任意の帯電性添加物のタイプ及び濃度、ウェブの厚さ及び密度、並びにハイドロ帯電の前に、DCコロナ表面処理などの前処理の実施が行われるかどうかに依存して変わり得る。繊維を水力交絡(hydraulically entangling)するのに有用な一般タイプの装置は、ハイドロ帯電に有用となり得るが、ハイドロ帯電作業は、水流交絡において一般に使用されるものよりも低い圧力で実施することができることが多い。ハイドロ帯電は、Angadjivandへの米国特許第5496507号に記載されている方法、及び流体湿式工程及びデウェッティングプロセスを使用して、エレクトレット電荷をもたらす他の様々な誘導法(例えば、Horiguchiへの日本特許出願番号JP2002161467号に記載されている)も含むことが理解される。
【0046】
帯電の他の方法(例えば、摩擦帯電法など)も好適となり得る。帯電作業(任意のタイプ)は、ウェブ製造プロセスを用いてインラインで実施することができ、又は、所望の場合、形成したウェブは、ウェブを帯電するのが望まれる時間まで、保管(例えば、ロールへの巻き取り)されてもよい。
【0047】
しかし、帯電プロセスは、達成されると、本明細書において開示されるエレクトレットウェブを生じるであろう。X線放電試験は、エレクトレットウェブの特定及び/又は特徴付けに使用することができる。こうした試験では、ウェブのろ過性能は、X線の形態の電離放射線にウェブを曝露する前及びその後に測定される。X線への曝露後に、ろ過性能が本質的に変わらない場合、このことは、X線への曝露によって電荷がほとんど又は全く中和されなかったこと、及びウェブが、エレクトレットウェブと見なすのに十分な電荷を有していなかったことを示している。しかし、X線照射への曝露後に、ろ過性能が十分に低下する場合、この結果は、ウェブがエレクトレットウェブであったことを示している。(当業者は、電離放射線としてのこうした強力な手段がこうした電荷を中和する能力は、エレクトレット電荷を「準恒久的」なものであると説明することと矛盾しないことを理解するであろう)。
【0048】
X線放電試験では、(ウェブによるエアゾールの)百分率浸透率は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、PCT国際特許出願公開WO2014/105107に開示される手順及び計算方法にしたがって、X線照射へのウェブの曝露前及びその後に得ることができる。ウェブが本明細書において定義されているエレクトレットウェブと見なされるためには、百分率浸透率は少なくとも約300%である。様々な実施形態では、百分率浸透率は少なくとも400%、500%又は600%である。更なる実施形態では、百分率浸透率は、少なくとも750%又は800%である。特定の実施形態では、百分率浸透率は、少なくとも1000%又は少なくとも1250%である。一部の実施形態では、百分率浸透率は、最大でも約4000%である。
【0049】
エレクトレットウェブを含む物品
スパンボンドされている帯電ウェブ20は、例えば、ろ過目的などのために、任意の所望の物品へと形成されるか、又はそれに組み込まれ得る。こうした目的の場合、ウェブ20は、1つ以上のエンボス加工用ステーション、ラミネート加工装置、カッターなどの任意の所望の装置に運搬され得る。所望の場合、1つ以上の二次接着作業(自発接着に加えて)が行われてもよい。こうしたいかなる作業も、インラインで、ウェブ製造作業で行うことができ、又は、ウェブは、更なる加工が望まれるこうした時間まで、保管用ロールに巻き取られてもよい。追加の層、例えば支持層、プレフィルター層などが、本明細書において開示されるウェブと組み合わされてもよい(例えば、ラミネート化により)。したがって、一部の実施形態では、本明細書において開示されるポリ乳酸のエレクトレットスパンボンドウェブは、多層物品中の1つ以上の下層として提供されてもよい。
【0050】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるエレクトレットウェブは、平面(ひだなし)形態で、ろ過、例えば空気ろ過に使用することができる。他の実施形態では、本明細書において開示されるエレクトレットウェブは、例えば、空気ろ過などの用途に使用するために、ひだ付きフィルターを形成するよう、ひだ付けが施されてもよい。本明細書に記載されている、ひだ付きフィルターは自己支持型とすることができ、このことは、通常、強制換気システムにおいて発生する空気圧に曝露されると、破壊しないか又は過度に屈曲しないことを意味する。本明細書に記載されているひだ付きフィルターは、ひだ付きフィルターの安定性を高めるために、1つ以上のスクリム及び/又は剛直(例えば、厚紙)な周囲枠を場合により備えてもよい。
図3は、本明細書に記載されているスパンボンドウェブ20を含むろ材からなり、周囲枠112及びスクリム110を更に備えた、例示的なひだ付きフィルター114を示している。スクリム110は、ろ材の1つの面と断続的に接触している平面の構成体として
図3に示されているが、ろ材と共に(例えば、ろ材と実質的に連続して接触するように)ひだ付けされていてもよい。任意選択のスクリム110は、不織布材料、ワイヤ、ガラス繊維などを含んでいてもよい。
【0051】
本明細書に記載されているウェブは、有利なろ過特性、例えば、低い圧力低下と組み合わせると、高いろ過効率を示すことができる。こうした特性は、浸透率、圧力低下、品質係数、捕捉効率(例えば、最低複合効率(Minimum Composite Efficiency)、最低効率報告値)などを含めた、周知のパラメータのいずれかによって特徴付けることができる。特定の実施形態では、本明細書において開示されるウェブは、少なくとも約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は1.0の品質係数を有する。
【0052】
これまで、長時間、高温に曝露した際に、優れた電荷保持及びろ過性能を維持する、満足される帯電性添加物含有ポリ乳酸エレクトレットウェブを実現することが可能であると見いだされてはいなかった。例えば、HVAC空気フィルターなどの製品は、トラック又は鉄道車両で輸送されることが多いが、これらは、長時間、高温に到達する恐れがあり、この欠点はこうした製品の使用を限定する恐れがある。
【0053】
この問題の考えられる原因が、今や発見された。表2を参照すると、例示的な実施例であるIE−AとIE−Bとの比較、及び例示的な実施例IE−CとIE−Dとの比較により、帯電性添加物は、溶融から冷却されると、ポリ乳酸の結晶化速度(示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)実験における、10℃/分の冷却速度で達成される百分率結晶化度によって評価される)をかなり低下させ得ることが明らかである。溶融紡糸において得られた結果は、これらの知見と一致する。すなわち、帯電性添加物を含有する溶融紡糸されたポリ乳酸繊維は、帯電性添加物を含有しないで同様に作製された繊維よりも、固化プロセス中にかなり低い結晶化度を実現し得ることが見いだされた。(実際に、当業者は、溶融紡糸における冷却速度は、通常、10℃/分よりもかなり急速であるので、溶融紡糸された繊維の百分率結晶化度に及ぼす帯電性添加物の効果は、表2のDSCデータに示されている効果よりも、多くの場合、大きくなり得ることを予期することができる。)
【0054】
理論又は機構に制限されるものではないが、帯電性添加物含有ポリ乳酸の高温エージングに伴う、電荷保持/ろ過能力における、これまで観察されてきた低下は、ポリ乳酸のガラス転移温度(通常、55℃の範囲)に近づくか又はそれを超える温度でのエージングの間のポリ乳酸の結晶化に少なくとも一部、起因し得るということになり得る。こうした知見は、一般に、メルトブローした帯電性添加物含有ポリ乳酸ウェブ(ウェブの繊維は、メルトブロープロセスの性質のため、通常、作製されたままでは非常に低い結晶化度を示し、したがって、高温エージングの間に、特に、結晶化度がかなり向上する傾向となり得る)は、本明細書における実施例において実証されている通り、高温エージング時に、その電荷/ろ過能力をかなり失うことが多い。
【0055】
これらの実現により、実施例の例えば表3において立証されている知見は、今では理解することができる。例示的な実施例IE−4と例示的な実施例IE−1との比較は、帯電性添加物の存在下でさえも、十分な延伸により、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維が、帯電性添加物の非存在下で溶融紡糸された繊維のそれとかなり近い結晶化度レベルを保持することを可能にし得ることを明らかにしている。例示的な実施例IE−2、IE−3及びIE−4からなる一連の検討により、延伸度の向上は、帯電性添加物を含有している溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の結晶化度を延伸が存在しない場合よりもかなり向上させる働きをすることが更に例示されている。例示的な実施例IE−4
tと例示的な実施例IE−1
tとの比較、及び実施例IE−2
t、IE−3
t及びIE−4
tの一連の項目の試験により、この傾向が同様に例示されている。
【0056】
こうして、これらの例示的な実施例により、帯電性添加物を含む溶融紡糸されたポリ乳酸繊維を比較的高い延伸速度で加工すると、こうした高い延伸速度の非存在下で起こると思われるものに比べると、結晶化度が向上し得ることが明らかにされている。また、本明細書における代表的な実施例において例示されている通り、こうした結晶化度の向上(こうした高い延伸速度に曝露された繊維が特定され得る、少なくとも1つの具体的な特性をもたらすことに加えて)により、長時間エージングにわたり、エレクトレット電荷の保持増強が意外なこと及び有利なことにもたらされ得ると考えられる。
【0057】
例示的な実施例により、好適な熱曝露(例えば、自発接着、特にスルーエア接着)は、有利な効果をやはりもたらし得ることが更に明らかにされている。すなわち、スルーエア接着プロセスへの曝露により、帯電性添加物を含有している溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の結晶化度がかなり向上し得る。例示的な実施例IE−1
tとIE−1との比較、IE−2
tとIE−2との比較、IE−3
tとIE−3との比較、及びIE−4
tとIE−4との比較により、この知見が例示される(すべての場合において、下付け文字「
t」は、スルーエア接着済み試料を意味する)。これらの結果は、少なくとも、スルーエア接着が、溶融紡糸されたポリマーの結晶化度のかなりの向上をもたらすことが必ずしも予期されないと思われる、比較的短期間の熱曝露であるという点で、驚くべきことである。(実際、当業者であれば、スルーエア接着は、例えば、より低い結晶化度であって、高くはない結晶化度をもたらすよう、少なくとも一部の結晶が溶融する及び急冷するという逆効果を有すると予期する。)スルーエア接着は、比較的低い延伸速度において、延伸された溶融紡糸された繊維の場合でさえも、有利にも高い範囲にまで、百分率結晶化度を向上させ得るように思われることが理解されよう(例えば、例示的な実施例IE−2とIE−2
tとを比較することによって分かり得る)。したがって、本明細書において立証されている有利な結果を実現するために、非常に高い延伸速度と組み合わせて、好適な熱曝露(例えば、スルーエア接着によって達成される)を必ずしも使用しなければならないことにはなり得ない。
【0058】
こうして、高い延伸速度が、高い初期結晶化度を有する、溶融紡糸された帯電性添加物含有ポリ乳酸繊維をもたらすことができるという知見に加えて、好適な熱曝露(例えば、自発接着プロセス、特にスルーエア接着プロセス)により、溶融紡糸された帯電性添加物含有ポリ乳酸繊維の結晶化度が向上し得ることも見いだされた。更に、こうした結晶化度の実現及び/又は保持は、実施例中に立証されている通り、こうした繊維の高温エージング時に、電荷の保持及びろ過特性を有利かつ予想外に向上させる手助けに、少なくとも一部なり得る。
【0059】
こうして、一般に、本明細書において開示される組成物及び条件を使用して、例えば、高温エージングの場合よりも保持され得る優れたろ過特性を有する、帯電性添加物を含む溶融紡糸された延伸帯電ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブが製造され得る。これらの知見は、
図4に実証されており、この中で、代表的な実施例のウェブにひだを付け、空気フィルターに形成し、この空気フィルターは、70℃で3日間、エージングした後でさえも、優れた粒子除去効率を示すことが見いだされた。これらの知見は、表5に更に実証されており、この表は、54℃及び70%の相対湿度で1、4及び7日間、エージングした後の、平面ウェブの品質係数保持(比)を示している。
【0060】
例示的な実施形態のリスト
実施形態1は、ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブであって、このポリ乳酸繊維の少なくとも一部が、約0.1重量%〜約5.0重量%の帯電性添加物を含む溶融紡糸された延伸帯電繊維であり、このウェブがスルーエア接着されたウェブである、スパンボンドエレクトレットウェブである。
【0061】
実施形態2は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、約0.5重量%〜約2.0重量%の帯電性添加物を含む、実施形態1のスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態3は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、少なくとも約30%の百分率結晶化度を示す、実施形態1〜2のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態4は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、ウェブの繊維材料の少なくとも約97重量%を構成する直接捕集繊維である、実施形態1〜3のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態5は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、約0.1%〜約5.0%の非ポリ乳酸ポリマー核形成剤を含む、実施形態1〜4のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態6は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維の、非ポリ乳酸ポリマー核形成剤の含有量が0.1%未満である、実施形態1〜4のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態7は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維の、非ポリマー核形成剤の含有量が0.01%未満である、実施形態1〜6のいずれかのスパンボンドウェブである。
【0062】
実施形態8は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、少なくとも約97重量%のポリ乳酸を含み、この繊維の非ポリ乳酸ポリマーの含有量が約3重量%未満である、実施形態1〜7のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態9は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、L−乳酸モノマー単位とD−乳酸モノマー単位との質量比が約97:3〜約100:0のポリ乳酸を含む、実施形態1〜8のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態10は、溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、L−乳酸モノマー単位とD−乳酸モノマー単位との質量比が約99:1〜約99.7:0.3のポリ乳酸のステレオコポリマーを含む、実施形態1〜8のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態11は、ポリ乳酸繊維が、溶融添加物として存在し、かつポリ乳酸繊維の約0.5重量%〜約10重量%を占める、D−ポリ乳酸ホモポリマーも含む、実施形態1〜10のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。
【0063】
実施形態12は、溶融紡糸された延伸帯電ポリ乳酸繊維が、コロナ帯電繊維、ハイドロ帯電繊維、コロナハイドロ帯電繊維、又はそれらの混合物である、実施形態1〜11のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態13は、少なくとも約400%の百分率浸透率を示す、実施形態1〜12のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。実施形態14は、70℃、約15%の湿度で3日間、エージングした後に、少なくとも約75%の品質係数保持Q
3/Q
0を有する、実施形態1〜13のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブである。
【0064】
実施形態15は、実施形態1〜14のいずれかのスパンボンドエレクトレットウェブを含む空気フィルターである。実施形態16は、ウェブが対向して面するひだの列を含むようにひだ付けされており、このひだ付きウェブが剛直な周囲枠により枠付けされて、空気フィルターが枠付けされた空気フィルターとなっている、実施形態15の空気フィルターである。実施形態17は、周囲空気を実施形態15の空気フィルター又は実施形態16の枠付けされたひだ付き空気フィルターに通す工程を含む、空気をろ過する方法である。
【0065】
実施形態18は、ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブを作製する方法であって、約0.1重量%〜約5.0重量%の帯電性添加物を含むポリ乳酸を含む溶融フィラメントを溶融紡糸する工程、この溶融紡糸された溶融ポリ乳酸フィラメントを少なくとも一部固化して、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維を形成する工程、このポリ乳酸繊維が少なくとも約1000m/分の見かけ繊維速度で延伸されるように、このポリ乳酸繊維を細径化する工程、ポリ乳酸繊維のマットとして、この延伸されたポリ乳酸繊維を捕集する工程、このポリ乳酸繊維のマットをスルーエア接着させて、ポリ乳酸繊維のマットを自発接着したポリ乳酸繊維のウェブに変換する工程、及び溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の少なくとも一部を帯電させる工程を含む、方法である。
【0066】
実施形態19は、繊維の少なくとも一部を帯電させる工程が、コロナ帯電、ハイドロ帯電又はコロナハイドロ帯電を含む、実施形態18の方法である。実施形態20は、繊維を帯電する工程が、自発接着したポリ乳酸繊維のウェブを帯電させる工程を含む、実施形態18〜19のいずれかの方法である。実施形態21は、ポリ乳酸繊維が、少なくとも約2000m/分の見かけ繊維速度で延伸される、実施形態18〜20のいずれかの方法である。実施形態22は、ポリ乳酸繊維が、少なくとも約3000m/分の見かけ繊維速度で延伸される、実施形態18〜20のいずれかの方法である。実施形態23は、スルーエア接着する工程が、少なくとも約120℃の温度に加熱されている移動空気を用いて行われる、実施形態18〜22のいずれかの方法である。実施形態24は、スルーエア接着する工程が、少なくとも約150℃の温度に加熱されている移動空気を用いて行われる、実施形態18〜22のいずれかの方法である。実施形態25は、自発接着したポリ乳酸繊維のウェブにひだを付け、このひだ付きウェブの周囲に剛直な周囲枠を取り付けて、枠付けされたひだ付き空気フィルターを形成する工程を更に含む、実施形態18〜24のいずれかの方法である。
【0067】
実施例
材料
実施例で使用した様々な材料が、表1に一覧表示されている。
【表1】
【0068】
百分率結晶化度
ポリマー試料の百分率結晶化度は、TA Instruments Q2000変調示差走査熱量測定器(Modulated Differential Scanning Calorimeter、MDSC)又はその等価物の使用により測定することができる。試験片を秤量し、適合性アルミニウム製の鍋に入れる。この試料を1分間あたり10℃の加熱速度で室温からこの材料の推定される融点より約30℃高い温度まで加熱し、溶融曲線を得る。溶融熱及び冷結晶化熱は、溶融曲線の各ピーク下の面積を積分することにより測定する。次に、百分率結晶化度は、融解熱から冷結晶化熱を減算して、この差を溶融の基準熱(問題のポリマーについて公知である)で除算することにより得られる。
【0069】
固体度
固体度は、この記載が参照により本明細書に組み込まれている、Foxへの米国特許第8162153号(カラム11及び12)に記載されている一般方法により測定することができる。
【0070】
百分率浸透、圧力低下及び品質係数
ウェブ試料の百分率浸透、圧力低下及びろ過品質係数(Quality Factor、QF)を、DOP(フタル酸ジオクチル)の液滴を含むチャレンジエアゾールを(別段の指示がない限り)85リットル/分の流速で送液して求め、14cm/sの面速度を実現し、TSI(商標)高速自動フィルター試験機(型番8130)(TSI Inc.より市販)を使用して評価した。DOP試験の場合、エアゾールは、約0.185μmの直径を有する粒子を含んでもよく、自動ろ過試験機は、加熱機をオフにし、粒子中和器をオンにして操作してもよい。較正した光度計をフィルターの入口と出口とに使用し、このフィルターを通る粒子濃度及び粒子の%浸透を測定することができる。フィルターによる圧力低下(ΔP、mmH
2O)を測定するために、MKS圧力変換器(MKS Instrumentsより市販)を使用することができる。式:
【数1】
は、QFを算出するために使用することができる。初期品質係数QF値は、通常、より高い初期QF値がより良いろ過性能を示し、より低い初期QF値が低いろ過性能を示す、全体的な性能の信頼性の高い指標を提供する。QFの単位は、圧力低下の逆数である(1/mmH
2Oで報告される)。エージング済み試料の場合、品質係数保持パラメータは、エージング前に達成した初期品質係数(Q
0)に対する、エージング後の品質係数の比を採用することにより算出することができる。圧力低下が非常に小さいウェブ試料の場合、ウェブ試料の2つ以上の層が互いに上に積み重なり、この試験を一層容易に行うことができる範囲で、全体的な圧力低下を得ることができる。この様式における多層試料の使用により、得られた品質係数を著しく変えるとは予想されない。
【0071】
捕捉効率
フィルターのろ過特性は、ASHRAE Standard 52.2(「Method of Testing General Ventilation Air−Cleaning Devices for Removal Efficiency by Particle Size」)に準拠して試験することにより求めることができる。この試験は、ウェブをフィルター(例えば、ひだ付きフィルター及び/又は枠付けされたフィルター)として構成すること、このフィルターを試験ダクト内に取り付けること、及び乾燥して電荷を中和させた塩化カリウム粒子にこのフィルターを曝露することを含む。1.5メートル/秒の試験面速度を使用することができる。一連の12の粒子サイズ範囲又はチャネルにわたる試験フィルターから上流側及び下流側の粒子濃度を測定するために、光学式粒子数計測器を使用することができる。式:
【数2】
は、各チャネルに関する、捕捉効率(時として、粒子除去効率と呼ばれる)を求めるために使用することができる。フィルターにかかる圧力低下を、清潔なフィルター上で測定する。初期効率曲線から、0.3〜1.0μmの間の4つの効率値を平均して、E1効率を得ることができ、1.0〜3.0μmの間の4つの効率値を平均して、E2効率を得ることができ、3.0〜10.0μmの間の4つの効率値を平均して、E3効率を得ることができる。
【0072】
例示的な実施例
DSCの百分率結晶化度−冷却試料
様々な組成の溶融紡糸されたウェブ試料が得られた。第1の試料はPLA−1を含み、例示的な実施例IE−Aとして使用した。第2の試料は、99重量%のPLA−1及び1重量%の代表的なヒンダードアミン帯電性添加物を含み、例示的な実施例IE−Bとして使用した。第3の試料は、3重量%のポリプロピレンPP−1を含み、その残り(97重量%)はPLA−1であり、例示的な実施例IE−Cとして使用した。第4の試料は、3重量%のポリプロピレンPP−1及び1重量%の代表的なヒンダードアミン帯電性添加物を含み、その残り(96重量%)は、PLA−1であり、例示的な実施例IE−Dとして使用した。
【0073】
各試料を秤量し、適合性アルミニウム製の鍋に入れた。次に、各試料を1分あたり約10℃の加熱速度で、室温から少なくとも約190℃まで加熱した(報告されているポリ乳酸の融点は、165〜180℃である)。この試料中に存在している既存の熱履歴のいずれも完全に消し去るため、各試料が完全に溶融したのを確実とするのに十分な時間、保持した。次に、各試料を1分あたり約10℃の冷却速度で室温まで冷却した。次に、各試料の百分率結晶化度を、上記の百分率結晶化度方法に記載されている通り測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0074】
スパンボンドウェブ試料の百分率結晶化度
スパンボンドウェブ試料は、PLA−1及び代表的なヒンダードアミンの帯電性添加物を使用し、以下の代表的な実施例に関して記載されているものと一般に類似の様式で作製した。ウェブは、約160℃に設定された空気温度でスルーエア接着させた。細径化器は、記載したような見かけ繊維速度を与えた様々な条件(様々な圧力)で操作した。こうして作製された繊維試料に関して得られた百分率結晶化度を表3に示している。
【表3】
【0075】
代表的な実施例
図1及び2に示されているものと同様の装置を使用し、PLA−2からスパンボンドウェブを形成し、ここに、CA−1を含む帯電性添加物約0.8重量%を(溶融添加物として)加えた。2インチ(5cm)の押出成形器を使用し、ギアポンプにより、41cm(16.2インチ)の概算幅の押出ダイに溶融押出物を送り込んだ。このダイは、60個のオリフィスの各々を26列で、合計1560個のオリフィス(オリフィス直径0.35mm)を有した。溶融ポリマーの流速は、1分あたりオリフィスあたり約0.47グラムであり、全体の押出速度は、1時間あたり約44.0kg(96.9ポンド)であった。押出温度は、約230℃に設定した。2つの対向した急冷空気流(
図1の18bに示されるものと同様であり、18aとして示されているタイプの流れは使用しなかった)を、上流側として高さ16インチ(406mm)の急冷ボックスから1.3m/秒の概算面速度で、及び下側流として高さ7.75インチ(197mm)の急冷ボックスから0.5m/秒の概算面速度で供給した。上流側及び下流側がわずかに冷え、正確な温度は記録しなかったが、10〜15℃の範囲にあると見積もった。
【0076】
米国特許第6607624号及び同第6916752号に示されているものと同様の移動壁型細径化器を、細径化器の上部の間隙幅7.6mm、細径化器の底部の間隙幅6.2mm、及び細径化チャンバの長さ6インチ(152mm)で使用した。空気は、97kPaの圧力で細径化器に供給した。これらの条件を組み合わせ、約4200メートル/分の範囲の見かけ繊維速度を得られた。押出ヘッドから細径化器までの距離は31インチ(79cm)であり、細径化器から捕集ベルトまでの距離は27インチ(69cm)であった。溶融紡糸された繊維は、20メッシュのステンレス鋼から作製されており、1分あたり約83フィート(25.3メートル)の速度(「形成速度」)で動かした細孔性捕集ベルト上にマットとして堆積させた。真空は、約700Pa(名目上の設定点)の捕集ベルトの下で確保(
図1の項目14として示されている一般的なタイプのデバイスによって)し、この真空によりベルト上での繊維の捕集が補助された。
【0077】
次に、捕集した溶融紡糸された繊維のマットを、スルーエア接着デバイスの下に通し、少なくとも繊維の一部を一緒に自発接着した。15.2cm(ウェブの縦方向の範囲)×76cm(ウエブの横方向の範囲)である、空気の出口スロットにおいて、約3.2m/秒の速度で、空気を接着デバイスに給送した。マットが接着デバイスの下を通過する際、空気出口はマットから約3.8cmにあった。接着デバイスのスロットを通過する空気の温度は、入口点でこのデバイスに入る加熱空気を測定した場合、約150℃であった。このウェブ(捕集ベルト上にまだ留まっている)は、接着デバイスの下に通した後、周囲空気に通した。上記の真空デバイスの延在部分は、
図1中の真空デバイス14及びスルーエア接着器101に関して図示されている一般的様式で、接着デバイスを通り過ぎてウェブの縦方向に延在した。
【0078】
こうして製造されたウェブは、通常のプロセス及び機器を使用して、自己支持して取り扱い可能となるのに十分な完全性を伴って接着されることが見いだされた。次に、このウェブをコロナ放電により帯電させた。帯電は、約1マイクロC/cm
2の放電曝露が生じる、正DCコロナ源の下、接地表面上でウェブに通すことにより行った。このウェブの場合に得られた様々なパラメータが表4に一覧表示されている。
【表4】
【0079】
上記の平面ウェブの試料に、約19mmのひだ高さ及び7.3mmのひだ間隔(先端から先端)でひだを付けた。次に、商標名FILTRETE1500 ULTRA ALLERGENで3M Company(St.Paul MN)から入手可能な製品と類似の様式で、このひだ付きウェブをワイヤ及びチャネル枠と組み立てると、名目上、16インチ×25インチ×1インチ(41cm×64cm×2cm)の枠付けされたフィルターが得られた。組み立てたひだ付きフィルターは、ASHRAE規格52.2に準拠して評価した。評価は、エージングしていないひだ付きフィルター、及び70℃で3日間、エージングしたひだ付きフィルター(このエージングは、周囲(部屋)空気を70℃まで加熱したオーブン中で行い、オーブン中の相対湿度はモニタリングしなかったが、例えば約10%未満と、非常に低いことが予期された)について実施した。この試験から得られた粒子除去(捕捉)効率データが
図4に示されている。これらのデータにより、エージング後のE1及びE2の効率は、初期値の約5〜10%以内にあり、E3の効率は、少なくとも約5%、実際に向上したことが明らかになっている。
【0080】
他の帯電平面ウェブ試料は、名目上16.5インチ(41.9センチメートル)のダイではなく、名目上9インチ(22cm)の幅のダイを用いたが、上記と一般に同様の様式で作製した。代表的な試料は、本明細書において先に記載したX線放電評価にかけると、約1500%の範囲の百分率浸透率を示した。ある種のこうした試料をDOPエアゾールろ過試験にかけ、品質係数を得た。次に、試料を約54℃及び相対湿度70%で数回、エージングした。得られた品質係数保持パラメータ(%で表されるQ
n/Q
0比率)を表5に示す。これらのデータにおいて、Q
0は初期品質係数であり、Q
1、Q
4及びQ
7は、それぞれ、1日間、4日間及び7日間エージングした後に得られた品質係数である。これらのデータにより、初期品質係数の少なくとも約90%が上記の条件で1日間、4日間及び7日間のエージングにわたって保持されたことが明らかになっている。
【表5】
【0081】
変形形態の代表的な実施例
様々な他のポリ乳酸含有組成物の結晶化速度(例えば、PLA−2;PP−1を含むPLA−2;PLA−3及びPP−1を含むPLA−2;すべてが代表的な帯電性添加物を含む、及び含まない)も評価した。多数の他のスパンボンドエレクトレットウェブ(例えば、ポリ乳酸2、及び溶融添加物であるポリプロピレン1を含むポリ乳酸2を含む)を配合し、百分率結晶化度を得た。特に、PLA−2(96重量%)、PP−1(3重量%)及び代表的なヒンダードアミン帯電性添加物(1重量%)を含む溶融紡糸された繊維を、スルーエア接着(140℃の空気温度で)を使用して、及びこれを使用しないで作製した(これらはすべて、3850m/分の見かけ繊維速度で延伸した)。この具体例では、スルーエア接着により、百分率結晶化度がかなり向上することが分かった(スルーエア接着の非存在下では約26.4%から、スルーエア接着の存在下では、約49.1%である)。
【0082】
プロセス条件(例えば、細径化器圧、スルーエア接着器温度など)の変形形態を行った。スパンボンドエレクトレットウェブも、様々な他の帯電性添加物を用いて作製した。ウェブはまた、コロナ帯電によるものよりもむしろ、ハイドロ帯電により帯電させた。一般に、上記の品質傾向に従った。
【0083】
比較例のメルトブローウェブ
比較目的で、従来のメルトブロー法を使用して、PLA−2(96重量%)、PP−1(3重量%)及び代表的な帯電性添加物(1重量%)から、メルトブロー繊維を作製した。メルトブロー繊維の百分率結晶化度は、非常に低いものであった(通常、5%未満)。メルトブロー繊維のウェブは、上記と同様の様式でコロナ帯電させた。これらの帯電性添加物を含有しているメルトブローポリ乳酸試料は、帯電能力に乏しいことが、一般的に分かった。更に、この試料は、高温エージングにより、電荷の保持のかなりの減少を示すことが分かった(例えば、3日間時の品質係数保持(Q
3/Q
0)によりモニタリングする)。メルトブローウェブを高温でアニーリング(例えば、100又は130℃で1時間)すると、メルトブローポリ乳酸繊維の百分率結晶化度がかなり向上したことに留意すべきである。しかし、これらのメルトブローしたアニーリング済みウェブをコロナ帯電する際に、アニーリングしたメルトブローウェブは、帯電能力が向上したことを示し、かつこうした電荷を保持する能力がいくらか向上することを示したが、このアニーリングしたコロナ帯電メルトブローウェブは、本明細書において開示される溶融紡糸されたウェブの優れた電荷保持を実現しないことが分かった。(通常、アニーリング済み/帯電メルトブローウェブのQ
3/Q
0品質係数保持は、70℃で3日間のエージング後、60%未満のままであった。)ここでもやはり理論又は機構に制限されるものではないが、これらの結果により、帯電性添加物含有ポリ乳酸繊維の結晶化挙動(並びに、特に、組成物の相互作用、及び結晶化挙動に対するプロセス履歴)は重要となり得るが、溶融紡糸された帯電性添加物含有ポリ乳酸繊維の、明細書において開示される延伸処理及び加熱処理(例えば、スルーエア接着)は、例えば、その結晶化度を向上するための、例えば、単なるメルトブロー繊維の長時間アニーリングによって実現不可能な特有の効果をもたらし得るようにやはり思われることも示唆される。
【0084】
上記の実施例は、理解を明確にするためだけに示されたものであり、不必要な限定がそこから解釈されるべきではない。実施例に記載されている試験及び試験結果は、予測的なものではなく、あくまで例示的なものに過ぎないことが意図され、試験手順の変更により、異なる結果をもたらすことが予想され得る。実施例中の定量的値はすべて、使用された手順に含まれる一般に公知の許容誤差の観点から近似値であることが理解される。
本明細書において開示される特定の例示的な要素、構造、特長、詳細、構成などは、修正され得る、及び/又は多数の実施形態と組み合わされ得ることが、当業者には明らかであろう。こうした変更及び組合せはすべて、本発明者によって、例示的な説明としての役割を果たすべく選択された代表的な設計としてのみならず、想到される発明の境界内に存在すると企図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載されている特定の例示的構造に限定されるべきではないが、むしろ少なくとも、特許請求の範囲の言語によって説明される構造、及びそれらの構造の等価物にまで拡大する。本明細書において代替物として肯定的に列挙されている要素はいずれも、望ましい任意の組合せにおいて、特許請求の範囲に明確に含まれることがあり、又は特許請求の範囲から除外されることがある。オープンエンド言語で本明細書に列挙されているいずれの要素又は要素の組合せ(例えば、を含む(comprise)、及びその派生語)も、クローズエンド言語(例えば、からなる(consist)、及びその派生後)及び一部クローズエンド言語(例えば、から本質的になる(consist essentially)、及びその派生語)で更に列挙されていると見なされる。様々な理論及び可能な機構が本明細書において議論され得るが、こうした議論は、いかなる場合も、特許請求可能な主題を制限するべきものではない。記載されている通りの本明細書と、参照により本明細書に組み込まれている任意の文書の開示内容との間にいかなる不一致又は矛盾が存在する限り、記載されている通りの本明細書が優先する。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[25]に記載する。
[1]
ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブであって、前記ポリ乳酸繊維の少なくとも一部が、約0.1重量%〜約5.0重量%の帯電性添加物を含む溶融紡糸された延伸帯電繊維であり、前記ウェブがスルーエア接着されたウェブである、スパンボンドエレクトレットウェブ。
[2]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、約0.5重量%〜約2.0重量%の帯電性添加物を含む、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[3]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、少なくとも約30%の百分率結晶化度を示す、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[4]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、前記ウェブの繊維材料の少なくとも約97重量%を構成する直接捕集繊維である、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[5]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、約0.1%〜約5.0%の非ポリ乳酸ポリマー核形成剤を含む、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[6]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維の、非ポリ乳酸ポリマー核形成剤の含有量が0.1%未満である、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[7]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維の、非ポリマー核形成剤の含有量が0.01%未満である、項目1に記載のスパンボンドウェブ。
[8]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、少なくとも約97重量%のポリ乳酸を含み、前記繊維の非ポリ乳酸ポリマーの含有量が約3重量%未満である、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[9]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、L−乳酸モノマー単位とD−乳酸モノマー単位との質量比が約97:3〜約100:0のポリ乳酸を含む、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[10]
前記溶融紡糸された延伸ポリ乳酸繊維が、L−乳酸モノマー単位とD−乳酸モノマー単位との質量比が約99:1〜約99.7:0.3のポリ乳酸ステレオコポリマーを含む、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[11]
前記ポリ乳酸繊維が、溶融添加物として存在し、かつ前記ポリ乳酸繊維の約0.5重量%〜約10重量%を占める、D−ポリ乳酸ホモポリマーも含む、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[12]
前記溶融紡糸された延伸帯電ポリ乳酸繊維が、コロナ帯電繊維、ハイドロ帯電繊維、コロナハイドロ帯電繊維、又はそれらの混合物である、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[13]
少なくとも約400%の百分率浸透率を示す、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[14]
70℃、約15%の湿度で3日間、エージングした後に、少なくとも約75%の品質係数保持Q3/Q0を有する、項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブ。
[15]
項目1に記載のスパンボンドエレクトレットウェブを含む空気フィルター。
[16]
前記ウェブが対向して面するひだの列を含むようにひだ付けされており、前記ひだ付きウェブが剛直な周囲枠により枠付けされて、空気フィルターが枠付けされた空気フィルターとなっている、項目15に記載の空気フィルター。
[17]
電動送風機により起こした周囲空気を項目16に記載の枠付けされたひだ付き空気フィルターに通す工程を含む、空気をろ過する方法。
[18]
ポリ乳酸繊維を含むスパンボンドエレクトレットウェブを作製する方法であって、
約0.1重量%〜約5.0重量%の帯電性添加物を含むポリ乳酸を含む溶融フィラメントを溶融紡糸すること、
前記溶融紡糸された溶融ポリ乳酸フィラメントを少なくとも一部固化して、溶融紡糸されたポリ乳酸繊維を形成すること、
前記ポリ乳酸繊維が少なくとも約1000m/分の見かけ繊維速度で延伸されるように、前記ポリ乳酸繊維を細径化すること、
ポリ乳酸繊維のマットとして、前記延伸ポリ乳酸繊維を捕集すること、
前記ポリ乳酸繊維のマットをスルーエア接着させて、前記ポリ乳酸繊維のマットを自発接着したポリ乳酸繊維のウェブに変換すること、
及び
前記溶融紡糸されたポリ乳酸繊維の少なくとも一部を帯電させることを含む、方法。
[19]
前記繊維の少なくとも一部を帯電させることが、コロナ帯電、ハイドロ帯電又はコロナハイドロ帯電を含む、項目18に記載の方法。
[20]
前記繊維を帯電させることが、前記自発接着したポリ乳酸繊維のウェブを帯電させることを含む、項目18に記載の方法。
[21]
前記ポリ乳酸繊維が、少なくとも約2000m/分の見かけ繊維速度で延伸される、項目18に記載の方法。
[22]
前記ポリ乳酸繊維が、少なくとも約3000m/分の見かけ繊維速度で延伸される、項目18に記載の方法。
[23]
前記スルーエア接着が、少なくとも約120℃の温度に加熱されている移動空気を用いて行われる、項目18に記載の方法。
[24]
前記スルーエア接着が、少なくとも約150℃の温度に加熱されている移動空気を用いて行われる、項目18に記載の方法。
[25]
前記自発接着したポリ乳酸繊維のウェブにひだを付け、前記ひだ付きウェブの周囲に剛直な周囲枠を取り付けて、枠付けされたひだ付き空気フィルターを形成する工程を更に含む、項目18に記載の方法。