【実施例】
【0063】
実施例1 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物の形態
実施例1−1 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の合成
アセトニトリル(50mL)中、3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)メタンアミン(2.00g、7.32mmol)と5−ブロモ−2−クロロ−3−ニトロピリジン(1.66g、6.97mmol)との撹拌溶液に、N、N−ジイソプロピルエチルアミン(1.13g、8.71mmol)を添加した。得られた混合物を加熱還流し、撹拌した。64時間後、反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈した。混合物をジクロロメタンで2回抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、5−ブロモ−N−(3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)ベンジル)−3−ニトロピリジン−2−アミン 3.34g(>100%)を黄褐色固体として得た。
【0064】
テトラヒドロフラン(40mL)、エタノール(40mL)及び水(40mL)中の5−ブロモ−N−(3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)ベンジル)−3−ニトロピリジン−2−アミンの撹拌溶液に、次亜硫酸ナトリウム(6.09g、34.99mmol)を添加した。得られた混合物を加熱還流し撹拌した。4時間後、反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈した。黄色混合物をジクロロメタンで3回抽出した。有機相を合わせブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸マグネシウム)、濾過し、次いで、濃縮して、黄褐色固体3.10gを得た。クロマトグラフィー精製(Combi−Flash SiO
2 40g 金カラム、メタノール/ジクロロメタン1〜2.5%)により、5−ブロモ−N
2−(3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)ベンジル)ピリジン−2,3−ジアミン1.28g(51%)を黄色固体として得た。
【0065】
ジクロロメタン(30mL)及びメタノール(30mL)中の5−ブロモ−N
2−(3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)ベンジル)ピリジン−2,3−ジアミン(0.850g、1.91mmol)の撹拌溶液に臭化シアン(アセトニトリル5.0M中、573μL、2.87mmol)を添加した。得られた溶液を室温で撹拌した。24時間後、臭化シアン溶液の第2のアリコートの(600μL)を添加し、攪拌を続けた。48時間後、臭化シアン溶液(600μL)の第3のアリコートを加え、攪拌を続けた。合計72時間後、反応混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタンに溶解した。溶液を1N水酸化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して褐色固体1.17gを得た。クロマトグラフィー精製(Combi−Flash、40g SiO2 金カラム、メタノール/ジクロロメタン中1−10%2Mアンモニア)により、6−ブロモ−3−(3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)ベンジル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン0.28g(32%)を褐色固体として得た。
【0066】
1,4−ジオキサン(10mL)および水(4mL)中、6−ブロモ−3−(3−メトキシ−4−(4−メトキシベンジルオキシ)ベンジル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン(0.25g,0.53mmol)の撹拌溶液に、1−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(0.14g,0.66mmol)、リン酸三カリウム(0.39g、1.84mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.015g、0.052mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.005g、0.026mmol)を添加した。反応混合物をマイクロ波反応器中で125℃に加熱した。15分後、反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈した。その混合物を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、次いで、濃縮し、うぐいす色の固体0.36gを得た。クロマトグラフィー精製(Combi−Flash、SiO2 12g 金カラム、メタノール/ジクロロメタン中、アンモニア 1〜10% 2M)により、淡緑色の固体生成物0.10g(41%)を得た。
【0067】
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンをアセトン(2mL)及び水(0.1mL)の混合物に添加した。この懸濁液をマグネチックスターラで室温下、一晩撹拌した。固体を濾過によって回収し、空気中で乾燥させた。構造をプロトンNMRによって確認した。示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、76.72℃、160.13℃及び195.78℃において、3つの熱事象を示し、熱重量分析(TGA)サーモグラムは25〜100℃の間で3.7%の重量損失を示し、及びX線粉末回折分析(XRPD)では、CuKα(正確度±0.2°)を用いて測定し、固有のピークを3.6、7.1、8.9、10.4、10.7、12.4、12.7及び14.3に2θピークとして示した。
【0068】
実施例1−2 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の結晶構造の同定
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の結晶構造もまた解明した。3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の結晶をアセトン/水から再結晶させた。得られた0.20x0.08x0.03mmの大きさの結晶は、MiTeGen MicroMountの最上部に置いた場合、回折フレームに適切であった。X線回折データは、SMART APEX領域検出器、45kV/650μAで動作する低温デバイス(モデルLT2)及び銅−Kマイクロフォーカス発生器、像集束スポット直径約250μmを有する集束ビームMontel多層光学系を備えた、Bruker/AXS三環式回折計で収集した。(Wiesmann et al、2007)。データはプログラムパッケージSMART V 5.628(Bruker AXS、2001)を用いて収集し、プログラムSAINT+Release 6.45(Bruker AXS、2003)で処理した。2459回の反射(θmin= 1.78、θmax=50.21;0<h<24、−4 <k<0、−19<l<19 )を生じたこの解析では、2459回の反射全てが固有(Rint=na、Rσ=0.1583)であった。セルパラメータの精緻化は1405回の反射を使用して行った。吸収補正を経験的に適用し、位相問題はAPEX2 suiteの「構造解」モジュールで解消した。
【0069】
構造は、APEX2スイート(Bruker AXS、2011)のXLモジュールを用いて、最小自乗法((F
o2-F
c2)
2の最小化)による精緻化を行った。全ての水素原子の位置を計算し、S(適合度)=1.085、R(全データ)=0.1329(|Fobs|>4σを有する1614回の反射について、R(観測データ)=0.0920、wR2(全データ)=0.2710、wR2(観測データ)=0.2377)であった。差分マップにおいて、割当てられていない最大ピークは、Å
3 につき−0.348対+0.386電子に対応する。C−C結合の平均推定標準偏差(e.s.d.)は0.009Åであり、O−C結合のそれは0.009Åであり、N−C結合の平均標準偏差は0.009Åである。C−C−C結合角の平均e.s.d.は0.7であり、C−C−Cのねじれ角は1.004°である。
【0070】
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の結晶構造を
図3に示す。
図4は、単結晶構造から計算したものと試験的粉末パターンとを重ね合わせて表示した。適合度が強いのは、単結晶構造がバルク材料を示すことを示唆している。
【0071】
実施例2 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン一水和物微結晶懸濁液製剤
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態を有効成分とするTrk阻害剤の微結晶性懸濁液医薬製剤を開発した。これらの製剤は、身体へのTrk阻害剤の送達を、長い時間をかけて、持続させるための、不溶性の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン粒子の懸濁液として開発した。このアプローチは、溶解度の低い有効成分と放出期間を制御するための投与量に依存し、又、それはインビボで、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを略ひと月間、持続的に送達することを示した。
【0072】
実施例2−1 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン一水和物の注射用微結晶懸濁液 20mg/mL
溶液単位mL当たり、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態20mgを含む医薬製剤を調製した。微結晶懸濁液20mg/mLの組成を以下の表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例2−2 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン一水和物の微結晶懸濁液製剤20mg/mLの製造方法
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン一水和物形態の水溶液20mg/mLを、以下の工程に従って調製した。
【0075】
1. 注射用水(WFI)及びジヒドロゲンホスフェートナトリウムの適当量を合体し、完全に溶解するまで撹拌し、次いで水酸化ナトリウム1N溶液でpHを7.4(±0.2)に調整することにより、pH7.4のリン酸緩衝液10mMを調製した。
2. ソルビトール及びポビドンK17パイロジェンの適当量を合体し、pH7.4のリン酸緩衝液10mMをを添加し、次いで、完全に溶解するまで撹拌することにより賦形剤を調製した。
3. 次いで、得られた賦形剤をPVDF[ポリフッ化ビニリデン]製0.22μmの親水性フィルタを通して濾過した。
4. 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態と賦形剤とを混合し、約30mg /mLの濃縮懸濁液を得た。
5. 濃縮懸濁液を撹拌をしながら、75μmステンレス鋼製の篩上で濾過した。
6. 攪拌を続けながら、予備的に濾過した懸濁液を、次に、40μmステンレス鋼製篩上で濾過し、濃縮物懸濁液が得られる。
7. 濃縮懸濁液を、濾過した賦形剤で調整して、懸濁液20mg/mLを得る。
8. 最終懸濁液を、滅菌し、かつパイロジェンを除去した無色のI型ガラス製バイアルに、充填容量3.6mLまで充填する。バイアルは、滅菌し、かつパイロジェンを除去したETFEで被覆したブロモ−ブチル製ストッパーで閉栓する。ストッパーは、滅菌アルミニウムキャップと滅菌白色プラスチック蓋でバイアル上に圧着した。
9. 充填されたバイアルをオートクレーブ装置内で滅菌した。
【0076】
実施例2−3 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物の微結晶懸濁液製剤20mg/mLの臨床用量
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の微結晶懸濁液20mg/mLを、更に改良し、最終的薬剤製品の形状で患者に投与される用量及び容量を達成した。目標用量は、微結晶懸濁液20mg/mLから必要に応じて再構成される。様々な投与量及び容量の様式の概要を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例3 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン徐放性製剤
いくつかの場合において、薬剤放出の持続時間は、例えば曝露時間が3ヶ月以上に延長されることが望まれている。そのため、Trk阻害剤である3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを有効成分とする徐放製剤をを製造し、化合物の無水物又は一水和物の形態のいずれかを用いて製剤化した。徐放性製剤へのアプローチとしては、ポリ(D、L−ラクチド)(PLA)、ポリ(D、L−ラクチド−CO−グリコリド)(PLGA)ポリマー、又はPLA−PLGAポリマーの組み合わせを用いて3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン(有効医薬成分[API]又は原薬[DS]である)をカプセル化し、注射可能なマイクロカプセルの医薬[DP]溶液を製造する。これらの製剤は、薬剤による身体への暴露を持続して、即ち3カ月以上、提供することができる。この実施例の徐放性製剤の調製に用いた種々のポリマーの概要を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
有効成分として、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを有するTrk阻害剤の徐放性医薬製剤は、生物分解性ポリマーである、ポリ(D、L−ラクチド)及び/又はポリ(D、L−ラクチド−CO−グリコリド)を使用することにより、薬剤粒子が溶解しポリマーの加水分解で、有効成分が放出される際の制御を変化させる。ポリマーと有効成分充填との適切な組み合わせを用いて、薬剤放出速度を制御した結果、3ヶ月又はそれ以上の曝露が可能となった。PLGA/PLAポリマーと3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンとの特定の組合せを、薬剤放出の持続時間を3ヶ月より長く延長するような方法で組合わせた。これらの製剤についてこの実施例において更に議論する。
【0081】
実施例3−1 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの充填がインビトロの徐放性特性に及ぼす影響
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのマイクロスフィアを含む医薬組成物を溶媒抽出によって調製した。各々のバッチを調製するために使用した3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン及びPLA/PGLAポリマーの量を表4に示した。これらの種々の製剤のインビトロ放出(IVR)動力学を試験した。
【0082】
【表4】
【0083】
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンをジクロロメタン(DCM):メタノール(MeOH)の比が9:1、2mLに穏やかな加熱下、(約30分間)溶解させた。ポリマーを加え、30分かけて溶解させた。別に、滅菌濾過した冷たいポリビニルアミン(PVA)溶液(水中5%w/v)39.9mLを7.9×38.1mmのテフロン(登録商標)磁気攪拌棒を備えた250mLビーカーに入れた。ビーカーを、500rpmに設定したIKA社製RCTベーシック撹拌プレート上の氷浴中に置いた。ポリマー/薬剤溶液を、5ccガラスハミルトンシリンジに取り付けたPall Acrodisc0.2μmPTFEシリンジフィルターを使用してPVA溶液に濾過した。添加すると、ポリマー/薬剤溶液はエマルションを形成した。1分後、脱イオン冷水160mLを添加した。5分後、攪拌速度を300rpmに下げた。3時間にわたる溶媒抽出によってマイクロスフェアを形成した。マイクロスフェアを、脱イオン水中の冷Kolliphor P407 0.1%を用いて、75μm及び38μmの積層篩を通して篩過した。38〜75μm画分を集め、過剰なすすぎ液を除去した。マイクロスフェアを−80℃で凍結し、凍結乾燥した。
【0084】
マイクロスフェア製剤から、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンが放出されるIVR動力学を、関節内環境の模倣を意図した、ヒアルロン酸0.2%+Kolliphor P407 0.2%中のマイクロスフィア水性懸濁液2%(w/v)を調製することにより測定した。理論的充填量が500μgの3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを含む懸濁液をを放出媒体であるPBS pH7.4の中に0.5%ドデシル硫酸ナトリウムを含む別々の50mLガラス遠心管、3本にピペットで入れた。これらの試験管を、37℃の往復振盪インキュベータ内の側面に置いた。各時点で、マイクロスフェアを沈降させ、放出媒体1mLをサンプリングし、再設置した。IVR試料中の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの実際の全量を決定するために、放出試験で使用したのと同じ容量の懸濁液を(3回)サンプリングし、ジメチルスルホキシド10mLを添加した。試料を超音波処理し、穏やかに加熱し、室温でロッカー上に置き、溶解させた。これらの試料は、HPLC−UVを使用して、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの全含量を分析した。累積的IVR特性を3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの実際の充填量に対するパーセント割合として経時的にプロットした。
【0085】
3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンをカプセル化する場合の効率は、実際の薬剤充填量を理論充填量で割ることによって決定した。実際の充填量を決定するには、正確に重量測定した3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアをジメチルスルホキシドに溶解し、次いで3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの濃度をHPLC−UVで測定する。
【0086】
IVR特性は、薬剤充填レベルが16%(w/w)を超えるとバースト放出をすることを示した(
図5)。このバーストの原因は、示差走査熱量測定(DSC)及び走査電子顕微鏡(SEM)により確認した。DSC分析では、130〜150℃での溶融吸熱によって証明されるように、薬剤含有量が16%(w/w)を超えるとマイクロスフェア内で薬剤の結晶化が起こることを示した(
図6)。薬剤の結晶化はSEMによっても示され、薬剤含有量が16%を超えるとマイクロスフェア表面上で薬剤の結晶を示した(
図7)。
【0087】
図6は、20%のマイクロスフェアが130〜150℃の間で融解吸熱を示し、これは薬剤表面に結晶が確実に存在することを示している。
図7及び
図8に、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアの1500倍のSEMを示す。
図7は、16%の薬剤充填マイクロスフェアであり、薬剤の結晶を示さない(薬剤が非晶質である)。
図8は、20%の薬剤充填マイクロスフェアであり、表面に薬剤の結晶を示す。
【0088】
関連するマイクロスフェア組成物を用いてIVRに及ぼす薬剤の結晶化の効果も実証した。
図9に、R202Hポリマーで調製したマイクロスフェアからの3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのIVRを示した。
図10に、R202HとRG752Hとのポリマー比が9.5:0.5で調製したマイクロスフェアからの3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのIVRを示した。これらの実施例において、16%(w/w)を超えた薬剤充填レベルではバースト放出を示し、その薬剤バーストの程度は薬剤充填レベルに直接関係していた。
【0089】
実施例3−2 ポリラクチド及びポリラクチド−CO−グリコリドポリマーブレンドの、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのインビトロ放出特性に及ぼす影響
実施例3−2−1 16%API/R202H、16%API/R202H:RG752Hの比が9.5:0.5、及び16%API/R202H:752Hの比が9:1のマイクロスフェア
R202H、R202H:RG752Hの比9.5:0.5、及びR202H:752Hの比9:1中の16% 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、及びR202H、R202H:RG502Hの比が9.5:0.5、及びR202H:RG502Hの比が9:1中の16% 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを含む医薬組成物を調製し、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのインビトロ放出動力学に及ぼす種々のポリマーブレンドの効果を評価した。表5は、各々のバッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量を示す。これらの製剤を調製するために使用する方法を、実施例3−1に記載した。
【0090】
【表5】
【0091】
カプセル化効率及びIVR分析を、実施例3−1に記載したように実施した。製剤4番,5番及び6番のカプセル化効率はそれぞれ96.1±2.6%、87.8±6.3%及び77.7±8.6%であった。
【0092】
R202Hポリマー中の16%3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを使用するマイクロスフィアは二相の放出速度を示し、初期の0〜70日間は遅い放出速度を有し、引続く70〜110日間は、より速い二次的放出速度を有した(
図11)。より親水性のポリマーであるRG752H(75:25 PLGA)をPLAマイクロスフェア製剤にブレンドすると、初期放出速度が増加した。このPLGAポリマーは、マイクロスフェア内へのより早い吸水を可能にし、(放出)速度の増加をもたらした。R202H:RG752Hの比9:1の時、初期放出は二次的放出速度と一致し、3ヶ月以上の擬0次放出特性を生じた(
図11)。
【0093】
実施例3−2−2 16%API/R202H、16%API/R202H:RG502Hの比が9.5:0.5及び16%API/R202H:RG502Hの比が9:1のマイクロスフェア
202H、R202H:RG502Hの比が9.5:0.5、及びR202H:RG502Hの比が9:1中の16%3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン含む医薬製剤を調製し、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのインビトロ放出動力学に及ぼす種々のポリマーブレンドの効果を評価した。表6は、各々のバッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量を示す。これらの製剤を調製するために使用する方法を、実施例3−1に記載した。
【0094】
【表6】
【0095】
カプセル化効率及びIVR分析を、実施例3−1に記載のように実施した。製剤7番,8番及び9番のカプセル化効率は、各々96.1±2.6%、91.7±3.3%及び94.2±2.5%であった。
【0096】
R202Hポリマー中の16%3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを使用するマイクロスフィアは二相の放出速度を示し、初期の0〜70日間は遅い放出速度を有し、引続く70〜110日間は、より速い二次的放出速度を有した(
図12)。より親水性の50:50PLGAポリマー(RG752H)をPLAマイクロスフェア製剤にブレンドすると、初期放出速度が増加した。RG752Hはマイクロスフェア内へのより早い吸水を可能にし、この(放出)速度の増加をもたらした。R202H:RG502Hの比が9:1の時、初期放出は二次的放出速度と一致し、6ヶ月以上の擬0次放出特性を生じた(
図12)。
【0097】
実施例3−3:180日以上に亘るゼロ次インビトロ放出動力学を示すマイクロスフェア製剤の調製及び特性評価
R203H:RG752Hの比が9:1中の15%3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン及びR202H:RG502Hの比が9.5:0.5 中の16%3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを含む医薬組成物を調製し、インビトロ放出動力学について分析した。表7は、各バッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量を示す。
【0098】
【表7】
【0099】
カプセル化効率及びIVRの分析を、実施例3−1に記載のように実施した。製剤10番及び11番についてのカプセル化効率はそれぞれ89.7±2.1%及び91.7±3.3%であった。
【0100】
R203H:752Hの比が9:1であるポリマー中の15% 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、及びR202H:RG502Hの比が9.5:0.5であるポリマー中の16% 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを使用して調製したマイクロスフィアは6ヶ月に亘り、擬似ゼロ次放出特性を示した(
図13)。
【0101】
実施例3−4 調製時における共溶媒系が3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのインビトロにおける放出プロフィールに及ぼす影響
実施例3−4−1 DCM:MeOHの比が9:1、DCM:MeOH:BAの比が9:0.5:0.5、DCM:BAの比が9:5及びDCM:BAの比が9:1中において、調製された場合の16%API/202H:RG752Hの比が9:1
R202H:RG752Hの比が9:1中で、16%3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアを含む医薬組成物を、種々の比率で、種々の共溶媒溶液、ジクロロメタン(DCM)、メタノール(MeOH)及びベンジルアルコール(BA)を用いて調製した。使用した比率は、DCM:MeOHの比が9:1、DCM:MeOH:BAが9:0.5:0.5、DCM:BAが9.5:0.5、及びDCM:BAが9:1であった。各バッチを調製するために使用した薬剤、ポリマー及び共溶媒については、表8を参照のこと。これらの製剤を調製するために使用した方法は、実施例3−1に記載した。
【0102】
【表8】
【0103】
カプセル化効率及びIVR分析を、実施例3−1に記載のように実施した。バッチ12番,13番,14番及び15番のカプセル化効率は、それぞれ77.7±8.6%、94.9±2.0%、90.5±2.6%及び94.4±1.5%であった。ベンジルアルコールを共溶媒系に選択して組み入れたのは、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを可溶化する能力を増強するからである。
図14及び
図15は、ベンジルアルコールが放出速度に影響を及ぼすことなく、ジクロロメタン又はジクロロメタン及びメタノールとの共溶媒系の一部として使用して、マイクロスフェアを製造出来ることを示している。これは、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのマイクロスフィア製造時における再結晶の可能性を低減するのに有用であり得る。
【0104】
実施例3−4−2 DCM:BAの使用による3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン充填の増加
R202H:RG752H の比が9:1中の16%及び25%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、R202H 中の30%及び40%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、及びR203H中の25%、30%、40%及び50%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを含む医薬組成物を、種々の容量のジクロロメタン(DCM)及びベンジルアルコール(BA)を使用して調製した。各バッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量及び溶媒量については、表9を参照のこと。これらの製剤の調製に用いた方法は実施例3−1に記載した。
【0105】
【表9】
【0106】
カプセル化効率及びIVR分析は実施例3−1に記載のように実施した。ジクロロメタン(DCM)及びベンジルアルコール(BA)を種々の容量で用いて製造した製剤のカプセル化効率は以下の通りであった:
バッチ カプセル化効率
16 94.4±1.5%
17 96.0±1.8%
18 99.2±3.6%
19 94.0±1.0%
20 100.5±1.0%
21 91.2±0.5%
22 90.2±2.8%
23 95.5±6.8%
24 95.4±3.1%
25 95.0±0.8%
26 94.7±1.7%
【0107】
ベンジルアルコールを共溶媒系に組み入れるために選択したのは、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを可溶化する能力が増強されるからである。
図10は、ベンジルアルコールが、ジクロロメタンとの共溶媒系の一部として使用され、50%(w/w)程度の高充填量のマイクロスフィアを製造出来ることを示している。示された放出特性の中には、最小限のバースト放出及び3〜6ヶ月の持続時間を達成すべき動力学を有するものもある。この方法で使用されるベンジルアルコールの容積は、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのバースト放出に影響する。ポリマー中のAPIである、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの溶解度を十分維持しながら、溶媒系中のベンジルアルコールの量を減少させると、バースト効果が低下する。API充填が増加すると、患者に投与されるポリマーの量が減少することによる利益をもたらす。これは、埋込剤の生体適合性を改善し、しかも反復投与後のポリマー蓄積の可能性を低減することが期待される。更に、API充填の増加は、当然、ユニットあたりの製造コストの低減と言い換えるべきである。
【0108】
実施例3−5:マイクロ懸濁液マイクロカプセル化プロセス系が3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのインビトロ放出特性に及ぼす影響
R202H:RG752Hの比が9:1中の25%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン(一水和物形態)、R203H:RG752Hの比が9:1中の30%及び40%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、R202H中の25%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、、R202S中の30%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン及びR203S中の30%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを含む医薬組成物を3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態で調製した。各バッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量については、表10を参照のこと。バッチ27番,28番及び29番はバッチで製造した3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを使用して調製し、一方、バッチ30番,31番,32番,33番,34番及び35番は、確実に直径10μm未満の粒径とするためにマイクロフルイダイズ化プロセスを用いてマイクロ化した3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを用いて調製した。この実施例では、ポリマーをエチルアセテート(EA)、同じくAPIの充填、ポリマー組成物、及び種々に濃度を変えた(EA容量を変化させた)ポリマー溶液と共に又は無しでポリビニルアルコール(PVA)溶液中に分散させたときに得られるマイクロスフェアの差を比較する。
【0109】
【表10】
【0110】
SEM分析では、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの懸濁液をカプセル化することによって製造したマイクロスフェアは表面に包埋した薬剤結晶が存在することに起因する粗い表面組織を有する球形であることを示した(
図16)。カプセル化効率及びIVRの分析を、実施例3−1に記載のように実施した。バッチ番号30番,31番,32番,33番,34番、及び35番のカプセル化効率は、それぞれ103.3±3.8%、101.6±5.3%、94.7±4.0%、97.1 ±0.2%、35.6±0.8%、及び62.5±3.0%であった。バッチ27番,28番又は29番については、カプセル化効率分析を実施しなかった。
【0111】
IVR特性は、25%から47%の範囲でバースト放出を示し、その後4日は放出が不足した(
図17)。バッチを21日間に亘り評価した。
【0112】
実施例3−6 マイクロカプセル化プロセスが、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンのインビトロ放出特性に及ぼす影響
R202H:RG752Hの比が9:1中の16% 及び 25% の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン、及びR203H中の25%及び30%の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを含む医薬組成物をジクロロメタン(DCM):ベンジルアルコール(BA)の9:1の比を用いて、調製した。各バッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量については、表11を参照のこと。バッチ23を調製するために使用した方法は、実施例3−1、バッチ2に記載されている。バッチ24は、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを 穏やかな超音波処理をしながらDCM/MeOHの比が9:1の5.016gに溶解して調製した。次いで、2種のポリマーを添加し、溶解させた。
【0113】
【表11】
【0114】
噴霧乾燥は、0.4mmの開口を有する2流体ノズルを備えたProCepT、4M8ユニットを用いて実施した。噴霧乾燥条件及びパラメーターを以下に列挙する。
【表12】
【0115】
SEM分析では、溶媒抽出マイクロスフェアは平滑な表面組織を有する球状であり、噴霧乾燥したマイクロスフェアはある程度表面組織を有する球状であることを示した(
図18及び
図19)。カプセル化効率及びIVRの分析は、実施例3−1に記載のように実施した。溶媒抽出バッチ36番及び噴霧乾燥バッチ37番及び38番のカプセル化効率は、それぞれ107.4±11.6%、91.4±4.3%及び92.6±3.6%であった。
【0116】
2つのマイクロカプセル化プロセスでは、ほぼゼロ次の放出特性を有するマイクロスフェアを製造した。
図18及び
図19には、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアのSEM、1000倍を示した。IVR特性は、異なる放出速度を示した(
図20)。噴霧乾燥製剤は、所望の送達期間3〜6ヶ月を達成した。
【0117】
実施例3−7 1%10kDa PEG又は1%ポロキサマー407の16%(w/w)3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの噴霧乾燥によるマイクロスフェアのインビトロ放出特性に及ぼす影響。
この試験は、PLA/PGAマイクロスフェアからのGZ389988のインビトロ放出速度を促進するため親水性添加剤の添加を使用し得るかどうかのために行ったものである。この試験では、マイクロスフェア(添加剤なし)を、1%10kDa PEG又は1%ポロキサマー407のいずれかを用いて調製したマイクロスフェアと比較した。表12には、各バッチを調製するために使用した薬剤及びポリマーの質量を詳述した。
【0118】
【表13】
【0119】
噴霧乾燥は、0.4mmの開口を有する二流体ノズルを備えたProCepT、4M8ユニットを使用して実施した。噴霧乾燥の条件及びパラメーターを以下に列挙する。
【表14】
【0120】
SEM分析では、噴霧乾燥で調製したマイクロスフェアは、親水性添加剤の有無にかかわらず、粒径分布及び表面組織が同様であることを示した。噴霧乾燥マイクロスフェアは、全て、ある程度の表面組織を有する球状であった(
図21、
図22、及び
図23)。カプセル化効率及びIVRの分析を実施例3−1に記載のように実施した。噴霧乾燥したバッチ番号40番,41番及び42番のカプセル化効率はそれぞれ102.0±16.3%、101.7±16.3%及び100.5±16.1%であった。
【0121】
添加剤無しで調製したマイクロスフィアは、ゆっくりとした0次に近いGZ389988の放出を示し、有効化合物の約20%を35日間に亘り放出した(
図24)。1%10
kDa PEG又は1%ポロキシマー407の何れの添加も放出速度が増加した。有効化合物の約42%を35日にわたって放出した。この実施例より、親水性賦形剤を組み込むとPLA/PGAマイクロスフェアからのGZ389988のインビトロの放出速度を加速することが実証された。
【0122】
実施例4 インビボでの研究
実施例4−1 [
14C]−3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアをラット膝関節に関節内注射した後のインビボ性能
2種の製剤を選択して、インビトロ放出動力学をラット膝関節内のインビボ薬剤持続性と比較した。製剤を表13に表示した。
【0123】
インビトロ放出試験は、実施例3−1に記載の方法を用いて実施した。インビボ薬剤持続試験は、[
14C]−3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン及び非標識の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを用いて行った。二つの薬剤形態をマイクロカプセル化プロセスの間に互いに溶解させ、マイクロスフェア内での薬剤分布が均一となるのを確実にした。各ラットの関節に投与された放射能の総量は約1.2MBqであった。
【0124】
ラットの膝関節に残っている薬剤の評価は、各時点で2〜3匹のラットを犠牲にし、膝関節を凍結粉砕し、次いで粉砕した組織から3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを抽出することにより実施した。液体シンチレーション計数によって定量を行った。関節内で回収した放射能の量は、処置して0.1時間後に屠殺したラット内の放射能カウントで各時点の放射能カウントを除することにより算出した。ラット血液中の放射性薬剤の濃度(nEq/gと表記)を経時的にプロットし、化合物の既知のIC50(50%阻害濃度)値と比較した。
【0125】
【表15】
【0126】
バッチ40番及び41番のIVR特性は、約3−4ヶ月及び5−6ヶ月亘りほぼゼロ次放出を示した(
図25)。ラットの膝関節内への関節内投与後、バッチ43番及び44番は、5〜6ヶ月にわたって薬剤放出を示した。バッチ43番は、5ヶ月後で12%が関節内に残存し、バッチ44番は6ヶ月後で薬剤の30%が残存していることを示した(
図26)。インビボの薬剤放出速度は、滑膜中のマイクロスフィアの局在におそらく起因するIVR速度と比較してわずかに遅かった。
【0127】
図27は、血液中の薬剤濃度−経時特性を示す。3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアの関節内投与後、全身区画中の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの濃度は、第1週の間はEC50(50%効果濃度)値(細胞ベース)をわずかに上回ったが、試験の期間中(5〜6ヵ月)は、EC50値未満に低下した。この試験は、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアが、全身への(即ち、治療量以下の)薬剤の暴露は低いままで、局所である膝関節へ薬剤送達を持続的に提供することを実証した。
【0128】
実施例4−2 3種の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンを充填したマイクロスフェアによる徐放性マイクロスフェア製剤の関節内単回注射後のGZ389988の薬物動態の評価
3種類の製剤を選択し、ラットの膝関節への関節内注射の後の全身コンパートメントにおけるインビトロ及びインビボの薬物動態を比較した。製剤を表14に表示した。
【0129】
インビトロ放出試験を、実施例3−1に記載の方法を用いて実施した。3匹の雄Wistarラットの膝関節にGZ389988の0.1mg又は1mgいずれかを送達する所与のマイクロスフェア製剤を注射することによりインビボ性能を測定した。各時点で、血液試料(約0.25mL)を頸静脈カニューレを介して採取し、抗凝固剤としてK2EDTAを含む冷却管に入れ、混合し、遠心分離までは氷上で保持した。試料採取後、1時間以内に、温度4℃下、3,000×gで5〜10分間遠心分離した。血液試料を遠心分離した後、血漿はポリプロピレン管に採取した。LC−MS/MS分析の前に血漿試料をドライアイス上で凍結し−60〜−80℃に凍結保存した。ラット血漿中のGZ389988の濃度(ng/mLとして表示)を経時的にプロットした(合計28日間)。
【0130】
【表16】
【0131】
製剤A及び製剤BのIVR特性は、緩やかな放出を示し、有効化合物の約10%を28日以上に亘り放出した。製剤Cは、最初の5日間は初期放出が僅かに高く、次いで残りの23日間は放出速度が減少した。有効化合物の約22%を28日に亘り放出した。
【0132】
ラットの膝関節への関節内投与後、製剤A及びBは、28日に亘り、同様の血漿―薬剤曝露プロフィールを示した。両製剤は、試験の継続時間中に、定常状態の血漿レベルを有する1〜1.5時間のTmax値を示した(各々、0.1及び1.0mg用量について0.08及び0.8ng/mL)。製剤Cは、製剤A及びBと比較すると、試験期間を通じ、より高いCmax値とより高い定常状態血漿レベルを示した(各々、0.1及び1.0mg用量について1.2から12ng/mL)(
図29)。これらの結果は、IVRの試験結果とよく一致した。
【0133】
実施例4−3 疼痛を伴う変形性膝関節症患者における3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの安全性、耐容性、及び薬物動態を評価するための臨床調査
ヒトにおける3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの一水和物形態の安全性及び有効性を、二重盲検プラセボ対照臨床調査で試験し、単回の関節内漸増投与の安全性、耐容性、及び薬剤動態を評価し、次に、膝の疼痛を伴う変形性関節症の患者に、単回の関節内投与の有効性、安全性、耐容性の評価を行った。
【0134】
この研究の一部において、上記実施例2に従って製造した3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミン一水和物微結晶懸濁液の種々の用量を単回で膝に関節内注射し、3mL及び5mLのプラセボ用量に対して試験した。
用 量
3mg/3mL
10mg/3mL
30mg/3mL
60mg/3mL
100mg/5mL
【0135】
この研究への参加適格者は原発性膝関節症の診断を受けた成人男性及び女性とした。患者は6ヶ月以上の症状があり、研究に関する全ての処理の前に書面によるインフォームドコンセントを提供した。有効性は、注射し12週間後における安全性及び耐容性(有害事象、身体検査、体重、体温、臨床検査、血圧、心拍数、12誘導心電図、局所耐容)に基き評価する。薬物動態(血漿、及び可能なら関節液中)及び薬剤動力学も評価した。
【0136】
患者は治験薬又はプラセボを投与して後、84±7日間、追加の治験薬を投与することなく長期の安全性観察調査を続けるかどうかを選択し、長期的な安全性と有効性を評価した。
【0137】
実施例5 3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの多多形性に関する研究
純粋な溶媒及び溶媒と水との制御された混合物中の3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの結晶形態を同定するために、GZ389988の多型性の調査を実施した。多形性についての特徴付けをするツールとして使用した技術は、X線粉末回折(XRPD)、高分解能X線粉末回折(HR−XRPD)及び単結晶X線回折(XRSCD)、赤外線分光器(FT−IR)又は質量分析器(MS)と結合した熱重量分析(TGA)、水と溶媒との動的蒸気吸着(DVS)、及び光学顕微鏡(OM)などが含まれる。これらの技術については、以下でさらに詳述する。
【0138】
高解像度X線粉末回折(HR−XRPD)
高分解能ダイアグラムは、X’Celerator検出器と結合させたBragg−Brentano(垂直θ−2θ構成)パラフォーカシング・ジオメトリを使用するPanalytical X’Pert Pro MPD粉末回折計で周囲条件下で記録した。密閉した銅アノードX線管を使用し、45kV及び40mAレベルで操作した。入射ビームモノクロメータ(Johansson型:対称的にカットし湾曲したゲルマニウム(111)結晶)で純粋なCuΚα1線(λ=1.54060Å)を生成した。
【0139】
実験の各セットについて、単結晶シリコンウェーハで覆われたサンプルホルダーの表面上に製造物の薄層を堆積させた。ウェーハは、Si(510)結晶の配向に従って切り出され、組織的に消失させることにより、シリコンからのいかなるブラッグ反射も妨げた。利用可能な角度範囲は、2θで2〜50°に拡大され、2θで0.017°のステップサイズであった。1ステップ当たり100から2500秒に計数時間を変えて使用した。
【0140】
X線粉末回折(XRPD)
他のXRPD分析としては、Bragg−Brentano(垂直θ−θ配置)パラフォーカシングジオメトリー及びAnton−Paar TTK450温度チャンバーを用いて、Siemens社製−Brucker D8 Advance粉末回折計で行った。製造物の薄層を単結晶シリコンウェーハ上に堆積させ、Si(510)結晶学的配向に従って切り出し、組織的に消失させることにより、ウェーハーからのいかなるブラッグ反射も妨げた。40kV及び35mAレベルで動作する密封型銅アノードX線管を使用した。通常、CuKα1(λ=1.5405Å)及びCuKα2(λ=1.5443Å)の2本の線を放出する。検出器と試料との間に配置されたニッケルβ−フィルターは、CuKβ(λ=1.3922Å)線を完全に除去する訳ではなく、依然として検出器での回折ビームの約1%を占めていた(製造業者のデータ)。ビームはソーラスリットを通って平行度を向上させた。可変発散スリットはサンプル領域の照度を一定に保った。コリメータで、管と試料との間の拡散を制限した。LynxEyeのリニアディテクタでセットアップを完了した。角度2θにおいて3.5°の幅の検出窓を有した。図表は、以下の条件で記録した。周囲温度下、角度2θで2°から40°まで走査する。積算時間は実験条件に依存した。発展的研究や大部分の走査は、2θで0.1秒の計数時間を用いて実施した。より長い積算時間(5秒まで)を使用して、安定した形態を特徴づけることも可能である。
【0141】
X線単結晶回折(XRSCD、または SCXRD)
XRSCDデータをBruker Smart Apex単結晶回折計で記録した。モリブデン製IμSマイクロフォーカスX線源を使用する、Mo−Κα線(λ=0.710731Å)を放射し、50kV及び0.6mAで操作した。電荷結合素子(CCDチップ:4K、62mm)面検出器を6.0cmに配置した。Oxford Cryosystems社製窒素クライオスタット(Cryostream Plus)を用いて、100KでXRSCD実験を行った。
【0142】
結晶は共にParatone N (商標)オイルドロップから低バックグラウンドのマイラーMiTeGenループにマウントした。エワルド球体の反射全てが収集された(フレーム幅が0.3°の680フレームの3つのオメガスキャン)。蓄積時間は結晶に依存する。
【0143】
オリエンテーションマトリックス及びユニットセルは、Apex2(v2014.11−0)プログラムスイートを使用して確立させた。3D反射特性及びすべての反射の統合は、SAINT(v8.34A)プログラムを用いて行った。SADABS(v2014/5)プログラムを使用して、ローレンツ及び分極効果、及び試料による吸収に関して補正した。仮の空間群は、XPREP(v2014/2)プログラムを用いて決定した。SHELXTL(v2014/7)スイートを使用し、固有のフェージング方法による構造の解決及び、F
2に関する完全行列最小二乗計算による精緻化を行った。
【0144】
多形体の同定及び特徴付け
上記の技術を用いて、3−(3−メトキシ−4−((4−メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)−6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3H−イミダゾ[4、5−b]ピリジン−2−アミンの結晶形態を同定した。これらの形態、CuKα線を用いて測定したXRPD2θピーク、及び形成条件を以下の表15に示した。
【0145】
【表17】
【0146】
一水和物形態1、無水物形態2及び3を測定したHR−XRPD図、並びに、セスキ水和物形態4の模擬XRPD図を、併せて
図30にプロットした。
【0147】
エタノール/水(99/1)の混合溶媒中、GZ389988A形態の一水和物の懸濁液20mg/mlを80℃で1時間加熱した。次いで、懸濁液を濾過した。次に、溶液を室温で一晩保持した。一晩後、結晶が観察され、後にエタノール溶媒和物形態(形態5と表示した)に一致するものとして同定した。エタノールと水との混合物(99/1)から緩やかな蒸発により得た結晶の物理的品質は、単結晶X線回折によって分析するのに適合した。測定は、100K下、5×50×200μm
3の結晶上でフレーム当たり300秒の蓄積時間で行った。回折図より、分析した粒子の結晶性を確認した。
図31には、室温で測定したエタノール溶媒和物粉末(底部)のHR−XRPD図を示し、100K下で測定したXRSCDデータ(上図)からの模擬的XRPD図とを比較した。
【0148】
GZ389988A形態の一水和物1(形態1)の懸濁液20mg/mlをアセトン/水(99/1)溶媒混合物中、又は純粋アセトン中で調製し、80℃で1時間加熱して、完全に溶解させた。次に、懸濁液を濾過した。次いで、溶液を室温又は5℃に保持した。一晩後、裸眼で結晶を視認でき、後で、アセトン溶媒和物形態(形態9と表示)に一致するものとして同定した。アセトンと水の混合物(99/1)から緩やかな蒸発により得た結晶の物理的品質は、単結晶XR回折によって分析するのに適合した。測定は100K下、100×200×2000μm
3の結晶上で、フレーム当たり30秒の蓄積時間で行った。
図32には、室温で測定した(底部)及び、100KでXRSCDからの模擬的な(上部)、アセトン溶媒和物粉末のXRPD図を示した。
【0149】
別の実験ではGZ389988A形態の一水和物1(形態1)の懸濁液20mg/mlを純粋なアセトン中で調製し、80℃で1時間加熱した。次に、懸濁液を濾過し、次いで5℃に直接冷却し、その温度で保管した。一晩後、結晶は裸眼で視認でき、アセトン溶媒和物1、形態9について得られたものと同様であった。乳鉢中でそれらを懸濁液中粉砕した後、別のアセトン溶媒和物、形態10に一致するものとして同定した。
図33では、2種のアセトン溶媒和物形態、形態9(下部)及び形態10(上部)についてXRPDを比較した。
【0150】
アセトニトリル(ACN)中、GZ389988A形態の一水和物の懸濁液20mg/mlを80℃で4時間加熱した。次いで、懸濁液を濾過した。次に、溶液を40℃で一晩保持し、次いで2時間放置して室温まで冷却した。一晩後、バイアルの底部に結晶のクラスターが形成された。アセトニトリル(ACN)溶媒和物形態(形態11)のHR−XRPD図を
図34に報告した。
【0151】
アセトン/水、及びアセトニトリル/水の混合溶媒中で形成した固体結晶相の同定
【0152】
GZ389988Aの一水和物1 50mgを、3つの異なる重量比:50/50、80/20及び95/5を有する、溶媒(アセトン又はアセトニトリル)と脱塩水との混合物2mLで補完した。アセトンを用いて、比99/1及び98/2の追加の混合物を調査した。80℃で2時間後、試料を公称孔径0.45μmを有するPTFEシリンジフィルターで濾過し、濾過後、再び80℃で15分間保管した。
【0153】
次いで、試料を40℃で一晩、次に室温でさらに24時間放置冷却した。
【0154】
次いで、試料を、対応する溶媒で飽和したチャンバー内でXRPDにより分析した。必要であれば、大きな結晶はバイアル内でスパチュラで粉砕し微粉化した。次いで、「湿った」粉末試料を、試料ホルダ上に可能な限り平坦に堆積させた。これらの分析結果を以下の表16に示した。
【0155】
【表18】
【0156】
エタノール、アセトン、アセトニトリル、並びにアセトン/水及びアセトニトリル/水混合物中の一水和物1の結晶化からの溶媒和物及び水和物の形成を調査し、この実施例に示した。10種の結晶相を同定した。
・無水相1(形態2)
・無水相2(形態3)
・無水相3(形態6/7)
・一水和物1(形態1)
・一水和物2(形態8)
・セスキ水和物(形態4)
・エタノール溶媒和物(形態5)
・アセトン溶媒和物1(形態9)
・アセトン溶媒和物2(形態10)
・アセトニトリル溶媒和物(形態11)
対応する回折図を、
図35に、併せてプロットした。
【0157】
エタノール、アセトン及びアセトニトリル、並びに、溶媒混合物(アセトン/水及びアセトニトリル/水)について実施した多形体の調査から、いくつかの結論を引出すことができた。純粋溶媒3種は全て、固体の結晶性溶媒和相の形成をもたらした。エタノール及びアセトニトリル中でのGZ389988Aの再結晶化は各々1種の溶媒和物の形態をもたらした。アセトン中での再結晶化により、2種の溶媒和物の形態が得られた。重量比が98:2、97:3、95:5、80:20及び50:50を有するアセトン/水混合溶媒系中で形成した結晶はすべて一水和物1の結晶相であった。重量比が95:5,80:20及び50:50を有するアセトニトリル/水混合溶媒系で形成された結晶も又、全て一水和物1結晶であった。アセトン溶媒和物1は、脱溶媒和を行なうと大部分は非晶質固体に変換することが観察された。もし、アセトンと水との混合蒸気の存在により、分子移動度が増加するならば、当初のアセトン溶媒和物1の結晶と非晶質固体は両方共に、再構成され、1水和物になる。エタノール、アセトニトリル及びアセトン溶媒和物1を窒素下、120℃の温度に暴露すると、脱溶媒和して、同じ無水物結晶相2になった。エタノール、アセトニトリル及びアセトン溶媒和物2の形態(単結晶X線回折によって確認される)については異種同形であることが観察された。これらは全て可逆的に脱溶媒和して同じ無水相3になった。無水物相3は水和して一水和物形態である「一水和物2」になるが、一水和物1とは異なる。