(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
視野検査は、緑内障や網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、網膜剥離、黄斑変性などの疾患や各疾患の進行度を調べるために実施される。かかる視野検査は、ゴールドマン視野計やハンフリー視野計などが使用される。これらの機器による視野計では、一点を注視したときに周囲に見える範囲を測定して視野を測定する。具体的には、視野計に顔を固定して、被験者に視野計内の表示部に示されている中心のマークを見つめさせる。その状態で、表示部の周辺に光などを出現させて、その光が見えたときに、被験者にブザーを鳴らさせる。このようにして、被験者がどの位置の光を認識できるか否かを調べることによって、視野や欠落部を調べている。
http://medical-checkup.info/article/43671142.html
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/ryokunai_ryokunai.jsp
【0003】
しかし、上述したような視野計では、両目の検査が終わるまでに30分程度の時間を要するうえ、視線を固定して検査を行うので、検査における被験者の負担が大きい。しかも、長時間の検査を行うので、検査中に注意力が低下し、欠陥でなくても光の認識ができなくなってしまう等の問題も生じている。そして、視野検査を適切に実施するためには、検査技師が装置の操作や検査ミスを監視しなければならないので、被験者だけでなく、検査技師の負担も大きいという問題もある。
【0004】
かかる視野検査の負担を軽減する技術として特許文献1〜3の技術が開発されている。これらの文献では、固視点を凝視した状態で周辺に視標を提示させて、その周辺に表示させた視標を新たな固視点とする技術が開示されている。これらの技術では、現在見ている視標を固視点にするので、固定された固視点を注視する場合に比べて、被験者の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の視野検査装置は、被験者の視野検査に使用される装置であって、視野検査の精度の低下を防止できるようにしたことに特徴を有している。
【0012】
<視野検査装置1>
図1に示すように、本実施形態の視野検査装置1は、表示部2と、検出部3と、記憶部4と、表示制御部10と、を備えている。この視野検査装置1では、表示制御部10によって検査視標Mを表示部2に表示させる位置が変化するようになっている。
【0013】
<検査視標Mについて>
視野検査装置1が表示する検査視標Mはとくに限定されない。例えば、ランドルト環や被験者の母語となる文字等を使用することができるし、黒丸などの単純な形状の図形なども使用できる。
【0014】
また、後述する基準位置BPに表示させる視標(基準検査視標BM)と周辺位置SPに表示させる視標(周辺検査視標SM)は、同じ種類の視標である必要はない。つまり、基準検査視標BMと周辺検査視標SMは異なる種類の視標を使用してもよい。例えば、基準位置BPには基準検査視標BMとして文字等を表示させて、周辺位置SPには周辺検査視標SMとして単なる黒点等を表示させてもよい。もちろん逆でもよい。なお、基準位置BPが特許請求の範囲にいう「基準検査視標の表示位置」に相当し、周辺位置SPが特許請求の範囲にいう「周辺検査視標の表示位置」に相当する。
【0015】
<表示部2>
表示部2は、表示制御部10や外部からの指示に基づいて、表示制御部10や外部から供給される情報を表示できるものである。具体的には、表示制御部10からの指示に基づいて、検査視標Mを所定の位置に表示させることができるものである。
【0016】
なお、表示部2は、検査視標Mをある程度高速で表示させることができるものであれば、どのような表示装置を使用してもよい。例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の公知の表示装置を使用することができる。この表示部2の大きさもとくに限定されないが、できるだけ小さい方が装置をコンパクトにできるので望ましい。人が文字などを認識できる視野は、視野中心からせいぜい30度程度の範囲である。したがって、表示部2の大きさは、例えば、視距離(被験者から表示部2までの距離)が450mmの場合、縦横の長さが300mm×520mm程度(23インチディスプレイ)であれば、十分に視野検査を行うことができる。なお、表示部2の形状はとくに限定されず、正方形でも長方形でもよいし、その他の形状でもよい。
【0017】
また、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイを表示部2として使用してもよい。本実施形態の視野検査装置1に限らず、視野の検査に使用される装置は、被験者の目から表示部2までの距離(視距離)を一定に保って検査を実施することを前提に設計されている。表示部2としてヘッドマウントディスプレイを使用すれば、被験者が意識しなくても、被験者の目からディスプレイ(つまり表示部2)までの視距離を一定に保ちやすくなる。しかも、人が顔を動かした場合でも、ディスプレイ(つまり表示部2)と被験者の目との相対的な位置が変化しない。すると、液晶ディスプレイ等のように試験場所などに設置されたディスプレイを表示部2として使用する場合に比べて、視野検査の精度を向上させることができる。
【0018】
<検出部3>
検出部3は、表示部2に表示された検査視標Mを被験者が認識したか否かを検出する機能を有するものである。
【0019】
<視線検出機能3a>
この検出部3は、被験者の視線を検出する視線検出機能3aを有している。この視線検出機能3aは、公知のアイトラッキング技術を用いて視線を検出する機能である。例えば、角膜反射法や眼球電位法等、視線を検出する公知のアイトラッキング技術を採用することができる。なお、表示部2として、ヘッドマウントディスプレイのディスプレイを使用した場合には、ヘッドマウントディスプレイがアイトラッキング機能を有していれば、そのアイトラッキング機能を視線検出機能3aとして使用することができる。
【0020】
<視認判断機能3b>
検出部3は、視線検出機能3aからの視線に関する情報(視線情報)が送信される視認判断機能3bを有している。この視認判断機能3bは、視線情報と、後述する表示制御部10によって表示部2に表示されている検査視標Mの表示位置に関する情報と、を比較して、被験者が検査視標Mを認識したか否かを判断する機能を有している。例えば、視線情報に基づいて被験者の視線の情報と、表示部2における検査視標Mが表示されている座標の情報と、を比較することによって、被験者が検査視標Mを視認しているかを判断することができる。また、視認判断機能3bは、被験者が検査視標Mを視認したと判断すると、トリガー信号(認識信号)を発信する機能を有している。
【0021】
被験者が検査視標Mを視認しているか否かを判断する際には、被験者の視線の動きが一定の範囲内に留まっているかどうかを判断してもよい。例えば、被験者の視線が検査視標Mが表示されている座標近傍の一定の範囲内に一定の時間以上留まっていれば、被験者が検査視標Mを視認していると判断するようにしてもよい。
【0022】
なお、視認判断機能3bは、後述する反応時間が一定の時間よりも短い場合には、その測定データを無効にする機能を有していてもよい。かかる場合には、被験者が視線を移動させているときに、偶然に検査視標Mの位置に視線が到達した可能性が有り、反応時間が本来の反応時間よりも短くなり、検査精度が低下する可能性がある。したがって、上記場合には、測定データを無効にしてもよい。上述した一定の時間は、被験者等によって変更してもよいし被験者等によらず一定にしてもよい。例えば、反応時間が100ミリ秒以下の場合には、その測定データを無効にするようにしてもよい。
【0023】
<記憶部4>
記憶部4は、表示制御部10と接続されており、表示制御部10の各機能から情報が送信され、その情報を記憶する機能を有している。例えば、表示制御部10の検査視標表示機能11から送信される、周辺検査視標SMを表示させた位置(座標)に関する情報と、後述する反応時間と、を関連付けて記憶する機能を有している。
【0024】
加えて、記憶部4は、表示制御部10や外部からの指示に基づいて、記憶している情報(例えば、後述する表示情報等)を表示部2に供給したり外部に送信したりする機能も有している。
【0025】
さらに、記憶部4には、表示部2に関する情報も記憶されている。表示部2に関する情報とは、表示部2の大きさ(幅や高さ)や形状(四角形や周辺部の曲率など)も記憶されている。また、表示部2において、表示画像のにじみや変形等が一定以上生じる領域(以下、忌避領域EEという場合がある)に関する情報も記憶されていることが望ましい。
【0026】
<表示制御部10>
表示制御部10は、表示部2に検査視標Mを表示させる位置およびタイミングを制御する機能を有するものである。この表示制御部10は、検査視標表示機能11と、表示位置調整機能12と、反応時間測定機能14と、暗点判断機能15と、を備えている。
【0027】
<検査視標表示機能11>
検査視標表示機能11は、表示部2に検査視標Mを表示させる機能を有するものである。より詳しく説明すると、検査視標表示機能11は、表示部2における基準位置BPと基準位置BP以外の周辺位置SPとに、それぞれ基準検査視標BMと周辺検査視標SMとを表示させる機能を有している。しかも、検査視標表示機能11は、基準位置BPにおける基準検査視標BMの表示と、周辺位置SPにおける周辺検査視標SMの表示を交互に実施させる機能を有している。つまり、検査視標表示機能11は、基準位置BPに基準検査視標BMを表示させた後周辺位置SPに周辺検査視標SMを表示させ、その後、再び基準位置BPに基準検査視標BMの表示させた後周辺位置SPに周辺検査視標SMを表示させる、という作業を繰り返し実施する機能を有している(
図2参照)。また、検査視標表示機能11は、基準位置BPに基準検査視標BMを表示させるとトリガー信号(開始信号)を発信する機能を有している。
【0028】
なお、「基準位置BPにおける基準検査視標BMの表示と周辺位置SPにおける周辺検査視標SMの表示を交互に実施させる」とは、一方の検査視標Mの表示が消えてから他方の検査視標Mを表示させる場合を含んでいる。また、「基準位置BPにおける基準検査視標BMの表示と周辺位置SPにおける周辺検査視標SMの表示を交互に実施させる」には、一時的に両方の検査視標Mが消えた状態となり、その後他方の検査視標Mだけが表示れた状態になることも含んでいる。一時的に両方の検査視標Mが消える場合、両方が消えている時間の長さはとくに限定されない。例えば、17ミリ秒以下の場合を挙げることができる。
【0029】
この検査視標表示機能11は、検査視標Mを表示部2に表示させる場合、検査視標Mに関する表示情報を記憶部4から取得して、取得した表示情報を表示部2に送信して、検査視標Mを表示部2に表示させる。この表示情報には、基準位置BPに表示される基準検査視標BMの情報(基準検査視標情報)と、この基準検査視標BMを表示した後に周辺位置SPに表示される周辺検査視標SMの情報(周辺検査視標情報)と、が関連づけられて記憶部4に記憶されている。基準検査視標情報と周辺検査視標情報とが関連づけられて記憶部4に記憶されている状態はとくに限定されない。例えば、基準検査視標情報と周辺検査視標情報とが一つのセットとなったセット情報として記憶されている場合を挙げることができる(
図4参照)。
【0030】
なお、表示情報には、複数の基準検査視標情報と複数の周辺検査視標情報とが含まれており、それぞれ関連付けられている。例えば、基準検査視標情報と周辺検査視標情報とがセット情報となっている場合には、複数のセット情報が表示情報に含まれている。この表示情報は、記憶部4に記憶されており、検査視標表示機能11からの指令により読みだされる。
【0031】
上述した表示情報における基準検査視標情報および周辺検査視標情報に含まれる情報の一例を説明する。なお、表示情報における基準検査視標情報および周辺検査視標情報に含まれる情報は、以下で説明する情報に限られず、基準検査視標BM等の輝度や色等の情報が含まれていてもよい。
【0032】
基準検査視標情報には、基準位置BPに関する情報が含まれている。基準位置BPに関する情報とは、表示部2上における基準位置BPの座標等の情報である。基準位置BPは、予め設定された位置であり、表示部2の形状や大きさによって適切な位置に設定される。
【0033】
基準位置BPを設定する位置はとくに限定されず、適切な検査ができる位置に設定すればよい。例えば、表示部2の中央に基準位置BPを設定してもよいし、表示部2の中央から若干ずれた位置に基準位置BPを設定してもよい。しかし、より精度よく検査する上では、各眼の視野(視界)における中央に基準位置BPが位置するように設定することが望ましい。この場合の各眼の視野(視界)は、一般的な人の標準的な視野を基準として設定してもよい。
【0034】
また、表示部2を左右で2分割して、各領域で左右の眼を別々に検査する場合には、各領域に基準位置BPを設定することができる。つまり、左右の眼を検査する各領域でそれぞれ適切な位置に基準位置BPを設定すればよい。例えば、ヘッドマウントディスプレイを表示部2として使用する場合であれば、表示部2を左右方向で2分割にした際の各領域の中央に基準位置BP、つまり、各眼を検査する際の基準位置BPを設定することができる。この場合も、各領域の中央から若干ずれた位置に基準位置BPを設定してもよいが、各眼についてより精度よく検査する上では、各眼の視野(視界)における中央の位置に基準位置BPを設定することが望ましい。この場合も、各眼の視野(視界)は、一般的な人の標準的な視野を基準として設定してもよい。
【0035】
また、基準検査視標情報には、基準位置BPに表示させる基準検査視標BMに関する情報が含まれている。基準位置BPに表示させる基準検査視標BMに関する情報とは、表示させる基準検査視標BMの大きさや形状等に関する情報である。なお、検査視標表示機能11によって表示させる基準検査視標BMの大きさや形状は、予め定められた大きさや形状でもよいし、被験者に合わせて適切な大きさや形状に変更してもよい。
【0036】
周辺検査視標情報には、周辺検査視標SMを表示させる周辺位置SPに関する情報が含まれている。周辺位置SPに関する情報とは、表示部2上における基準位置BPとは異なる位置であって周辺検査視標SMを表示させる座標等の情報である。この周辺位置SPに関する情報は、基準位置BPに関する情報と関連付けられている。例えば、基準検査視標情報と周辺検査視標情報とがセット情報になっているとする。この場合、一つのセット情報(SET1)において、基準位置BPの座標をBP1(a,b)とすると、周辺位置SPの座標をSP1(a+c,b+d)等のように定義して、基準位置BPに関する情報と周辺位置SPに関する情報とを関連付けてもよい(
図4参照)。
【0037】
また、周辺検査視標情報には、周辺位置SPに表示させる周辺検査視標SMに関する情報が含まれている。周辺位置SPに表示させる周辺検査視標SMに関する情報とは、表示させる周辺検査視標SMの大きさや形状等に関する情報である。なお、検査視標表示機能11によって表示させる周辺検査視標SMの大きさや形状は、予め定められた大きさや形状でもよいし、被験者に合わせて適切な大きさや形状に変更してもよい。また、周辺検査視標SMの大きさや形状等は、基準検査視標BMと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
また、検査視標表示機能11において、基準検査視標BMと周辺検査視標SMとの間で表示を切り替えるタイミングは、検出部3からのトリガー信号に基づいて行われる。具体的には、一つのセット情報の基準検査視標BMと周辺検査視標SMについて基準検査視標BMの表示から周辺検査視標SMの表示に切り替えるタイミングや、一つのセット情報の周辺検査視標SMの表示から次のセット情報の基準検査視標BMの表示に切り替えるタイミングは、検出部3からのトリガー信号に基づいて行われる。
【0039】
例えば、検査視標表示機能11は、検出部3からのトリガー信号が入力されると、あるセット情報に基づいて基準位置BPに基準検査視標BMを表示させたり、一つのセット情報に基づいて表示されている基準検査視標BMを消滅させて周辺位置SPに周辺検査視標SMを表示するように切り替える。
また、一つのセット情報に基づいて周辺位置SPに周辺検査視標SMが表示されている場合には、一つのセット情報に基づいて表示されている周辺検査視標SMを消滅させて、他のセット情報に基づいて基準位置BPに基準検査視標BMを表示させる。
【0040】
なお、検査視標表示機能11は、トリガー信号が入力されると同時に基準検査視標BMや周辺検査視標SMを表示消滅させる処理を行ったり、一つのセット情報から他のセット情報に切り替える処理を行ったりするようにしてもよい。また、トリガー信号が入力されてから一定の期間経過後、上記処理を行うようにしてもよい。前者の場合には、検査が迅速に実施できるという利点が得られるし、後者の場合には、被験者の疲労低減等の利点が得られる。
【0041】
<表示位置調整機能12>
表示位置調整機能12は、周辺位置SPと表示部2との関係に基づいて、周辺検査視標SMを表示する位置と、基準検査視標BMを表示する位置と、を調整する機能を有している。
【0042】
例えば、ディスプレイにおいて、表示部2の横方向(両目の並ぶ方向)に比べて上下方向の長さが短い場合には、上下方向では、基準位置BPから表示部2のエッジまでの距離が短くなる。すると、あるセット情報において、基準位置BPと周辺位置SPとの距離が、基準位置BPから表示部2のエッジまでの距離よりも長くなっていると、周辺位置SPを表示部2に表示できなくなる。つまり、視野検査できる範囲が狭くなってしまう可能性がある。
【0043】
また、上下方向に限らず横方向であっても、周辺位置SPが表示部2のエッジ近傍に表示される場合には、表示部2の性能等によって周辺検査視標SMが変形したりにじんだりする可能性がある。この場合、その位置における周辺検査視標SMの視認性が他の位置の周辺検査視標SMに比べて低下したり逆によくなったりする可能性がある。すると、表示部2のエッジ近傍に対応する位置では、視野検査の精度が低下してしまう可能性がある。
【0044】
そこで、表示制御部10は、セット情報に基づいて検査視標表示機能11が基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMを表示する前に、表示位置調整機能12がセット情報を変更するようになっている。
【0045】
表示位置調整機能12は、次に表示部2に表示するセット情報について、周辺位置SPの情報と表示部2の情報とを比較して基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMを表示する位置を調整する機能を有している。そして、表示位置調整機能12は、基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMを表示する位置を調整した情報(または調整しない情報)を検査視標表示機能11に送信する機能も有している。
【0046】
具体的には、表示位置調整機能12は、基準位置BPを所定の位置(表示部2の中央等)とした場合に、セット情報の周辺位置SPの情報と表示部2の情報とを比較して周辺位置SPが表示部2内に存在しているか否かを判断する。
そして、周辺位置SPが表示部2内に存在していると判断した場合には、表示位置調整機能12は、そのままのセット情報を検査視標表示機能11に送信し、送信されたセット情報に基づいて基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMが表示される。
一方、周辺位置SPが表示部2内に存在していないと判断した場合には、表示位置調整機能12は、周辺位置SPが表示部2内に位置し、かつ、周辺位置SPとの相対的な位置が変化しない位置に基準位置BPを変更したセット情報を作成する。そして、変更したセット情報が検査視標表示機能11に送信され、送信されたセット情報に基づいて、変更された基準位置BPおよび周辺位置SPに基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMが表示される(
図3(C)、(D)参照)。
【0047】
また、表示位置調整機能12は、基準位置BPを所定の位置(表示部2の中央等)とした場合に、周辺位置SPの情報と表示部2の情報を比較して周辺位置SPが忌避領域EEに位置するか否かを判断する。
そして、周辺位置SPが忌避領域EE内に存在していないと判断した場合には、表示位置調整機能12は、そのままのセット情報を検査視標表示機能11に送信し、送信されたセット情報に基づいて基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMが表示される。
一方、周辺位置SPが忌避領域EE内に位置すると判断した場合には、表示位置調整機能12は、周辺位置SPが忌避領域EE外となり、かつ、周辺位置SPとの相対的な位置が変化しない位置に基準位置BPを変更したセット情報を作成する。そして、変更したセット情報が検査視標表示機能11に送信され、送信されたセット情報に基づいて、変更された基準位置BPおよび周辺位置SPに基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMが表示される(
図3(A)、(B)参照)。
【0048】
以上のように、表示位置調整機能12によってセット情報を変更すれば、基準位置BPと周辺位置SPとの相対的な位置関係は維持した状態で基準検査視標BMおよび周辺検査視標SMを適切に表示部2に表示させることができる。例えば、周辺位置SPを移動させた同じ方向に同じ距離だけ、基準位置BPを移動させて基準検査視標BMを表示させることができる。したがって、使用する表示部2に係らず、視野検査を幅広い範囲で精度よく実施することができる。
【0049】
さらに、表示位置調整機能12は、検査視標表示機能11に送信する直前にセット情報を変更するようにしてもよい。また、表示位置調整機能12は、表示部2に関する情報が得られると、表示部2に関する情報に基づいてセット情報を変更し、変更したセット情報を記憶部4に記憶させるようにしてもよい。
【0050】
(反応時間測定機能14)
反応時間測定機能14は、検査視標表示機能11によって周辺検査視標SMが周辺位置SPに表示された後、被験者が周辺検査視標SMを認識したと検出部3の視認判断機能3bが判断した旨のトリガー信号(認識信号)が入力されるまでの時間を測定する機能を有している。
【0051】
具体的には、検査視標表示機能11によって周辺検査視標SMが表示部2に表示されると同時に、検査視標表示機能11から反応時間測定機能14にトリガー信号(開始信号)が送信される。その開始信号を受信すると反応時間測定機能14が時間の測定を開始する。やがて、被験者が周辺検査視標SMを認識したと検出部3の視認判断機能3bが判断すると、検出部3から反応時間測定機能14に認識信号が送信される。すると、反応時間測定機能14は時間の測定を終了し、測定された反応時間を、記憶部4に送信する。記憶部4では、反応時間が周辺位置SPの情報と関連付けられて記憶される。
【0052】
なお、反応時間測定機能14は、反応時間を測定せずに、単に、検査視標表示機能11から開始信号が送信された時間と、検出部3から認識信号が送信された時間を記憶して、その時間を記憶部4に送信するようにしてもよい。
【0053】
<暗点判断機能15>
暗点判断機能15は、反応時間測定機能14によって測定された反応時間に基づいて、周辺位置SPが暗点か否かを判断する機能を有している。加えて、暗点判断機能15は、その周辺位置SPを暗点と判断した場合、暗点情報を、周辺位置SPの情報や反応時間と関連付けて記憶部4に記憶させる機能を有している。
【0054】
暗点判断機能15が暗点を判断する方法は、種々の方法を採用できる。例えば、暗点判断機能15は、単純に、周辺位置SPに周辺検査視標SMを表示してから被験者が周辺検査視標SMを視認したと検出部3の視認判断機能3bが判断するまでの時間が一定以上となった場合に、その位置を暗点と判断することができる。
【0055】
また、検査視標表示機能11から反応時間測定機能14に上記開始信号が送信されるとき、および、検出部3から反応時間測定機能14に認識信号が送信されるときに、暗点判断機能15にも認識信号が送信されるようにしてもよい。この場合、検査視標表示機能11から反応時間測定機能14に開始信号が送信されたのち、一定時間以上、検出部3から暗点判断機能15に認識信号が入力されない場合、その周辺位置SPを暗点と判断する機能を暗点判断機能15に設けておく。同時に、検査視標表示機能11に対して、次の表示情報に基づいて検査視標Mを表示させる信号を送信する機能を暗点判断機能15に設けておく。すると、必要以上に入力を待たずに検査を進められるので、検査時間を短縮できる。
【0056】
なお、暗点判断機能15は必ずしも設けなくてもよい。例えば、視野検査終了後、記憶部4に記録されている情報を処理して暗点を判断する場合には、暗点判断機能15は設けなくてもよい。もちろん、検査視標表示機能11や反応時間測定機能14等に暗点判断機能15を具備させてもよい。
【0057】
<入力機能について>
上記例では、検出部3の視認判断機能3bによって被験者が検査視標Mを認識したと判断した場合に、検出部3からトリガー信号が検査視標表示機能11に入力され、基準検査視標BMと周辺検査視標SMとの間で表示を切り替える場合を説明している。
【0058】
一方、被験者が入力装置を操作することによって、トリガー信号が入力装置から検査視標表示機能11に入力されると、基準検査視標BMと周辺検査視標SMとの間で検査視標表示機能11が表示を切り替えるようになっていてもよい。例えば、キーボードやジョイスティック、マウス等の入力装置を設けてもよい。かかる入力装置を設けた場合には、被験者が入力装置の操作に不慣れな場合、被験者が正確に入力ができず、正確な検査ができない可能性がある。例えば、被験者が基準検査視標BMや周辺検査視標SMを視認できていても、入力ミスや入力に時間を要した場合には、被験者が基準検査視標BMや周辺検査視標SMを視認できなかったと判断される可能性がある。かかる問題を防ぐため、また、操作時間自体の短縮のためには、アイトラッキングデバイスを採用することが好ましい。
【解決手段】検査視標Mを表示する表示部2と、表示部2に表示された検査視標Mを被験者が認識したか否かを検出する検出部3と、表示部2に検査視標Mを表示させる位置およびタイミングを制御する表示制御部10と、を備えており、表示制御部10は、基準位置BPと周辺位置SPとに交互に検査視標Mを表示させる検査視標表示機能11と、周辺位置SPに検査視標Mを表示させてから、検査視標Mを被験者が認識するまでの時間を測定する反応時間測定機能14と、を備えており、基準検査視標BMの表示位置と周辺検査視標SMの表示位置とが相互に関連付けられており、検査視標表示機能11は、周辺検査視標SMの表示位置と表示部2との関係に基づいて、基準検査視標BMの表示位置および周辺検査視標SMの表示位置を調整する表示位置調整機能12を有している。