(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(実施形態)
初めに、実施形態に係る製造方法が適用される回転電機の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る回転電機の縦断面図であり、中心軸線C1を中心として片側の半分だけを示している。
図2は、回転電機の横断面図である。
【0009】
図1に示すように、回転電機10は、例えば、永久磁石型の回転電機として構成されている。回転電機10は、環状あるいは円筒状の固定子12と、固定子12の内側に中心軸線C1の回りで回転自在に、かつ固定子12と同軸的に支持された回転子14と、これら固定子12および回転子14を支持するケーシング30と、を備えている。
以下の説明では、中心軸線C1の延在方向を軸方向、中心軸線C1回りに回転する方向を周方向、軸方向および周方向に直交する方向を径方向と称する。
【0010】
図1および
図2に示すように、固定子12は、円筒状の固定子鉄心16と固定子鉄心16に巻き付けられた回転子巻線(コイル)18とを備えている。固定子鉄心16は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板17を多数枚、同芯状に積層して構成されている。多数枚の電磁鋼板17は、固定子鉄心16の外周面の複数個所を溶接することにより、互いに積層状態に連結されている。固定子鉄心16は、軸方向一端に位置する第1端面16a、および軸方向他端に位置する第2端面16bを有している。第1端面16aおよび第2端面16bは、中心軸線C1と直交して延在している。
【0011】
固定子鉄心16の内周部には、複数のスロット20が形成されている。複数のスロット20は、円周方向に等間隔を置いて並んでいる。本実施形態において、各スロット20は固定子鉄心16の内周面に開口している。各スロット20は、固定子鉄心16の内周面側から放射方向(固定子鉄心16の中心軸に対する径方向の外側)に延出している。各スロット20は、固定子鉄心16の軸方向の全長に亘って延在している。各スロット20の軸方向の一端は第1端面16aに開口し、軸方向の他端は第2端面16bに開口している。なお、各スロット20の内周側端部を固定子鉄心16の内周側に開口しないように構成し、固定子鉄心16の内周面を円筒面状としても構わない。
複数のスロット20を形成することにより、固定子鉄心16の内周部は、中心軸線C1に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では48個)のティース21を構成している。ティース21は、周方向に沿って等間隔を置いて配置されている。このように、固定子鉄心16は、円環状のヨーク部と、ヨーク部の内周面から中心軸線C1に向かって径方向に突出した複数のティース21とを一体に有している。
【0012】
複数のスロット20にコイル18が埋め込まれ、各ティース21に巻き付けられている。コイル18は、固定子鉄心16の第1端面16aおよび第2端面16bから軸方向外側に向かって延出するコイルエンド18a、18bを有するように設けられている。コイル18に交流電流を流すことにより、固定子12(ティース21)に所定の鎖交磁束が形成される。
【0013】
図1に示すように、固定子鉄心16の軸方向両端には、固定子鉄心16と略同一断面形状を有する鉄心端板(以下、端板と称する)24がそれぞれ設けられている。更に、これら端板24の上に鉄心押え26が設けられている。
ケーシング30は、ほぼ円筒状の第1ブラケット32aと、お椀形状の第2ブラケット32bと、を有している。第1ブラケット32aは、固定子鉄心16の駆動端側に位置する鉄心押え26に連結されている。第2ブラケット32bは、反駆動端側に位置する鉄心押え26に連結されている。第1および第2ブラケット32a、32bは、例えば、アルミニウム合金等で形成されている。第1ブラケット32aの先端側に、環状のベアリングブラケット34がボルトにて同軸的に締結されている。ベアリングブラケット34の中央部に、例えば、ころ軸受35を内蔵した第1軸受部36が締結されている。第2ブラケット32bの中央部に、例えば玉軸受37を内蔵した第2軸受部38が締結されている。
【0014】
一方、回転子14は、第1および第2軸受部36、38により、中心軸線C1を中心に回転自在に支持された円柱形状のシャフト(回転軸)42と、シャフト42の軸方向ほぼ中央部に固定された円筒形状の回転子鉄心44と、回転子鉄心44内に埋め込まれた複数の永久磁石46と、を有している。回転子鉄心44は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板47を多数枚、同芯状に積層した積層体として構成されている。回転子鉄心44は中心軸線C1と同軸的に形成された内孔48を有している。シャフト42は内孔48に挿通および嵌合され、回転子鉄心44と同軸的に延在している。回転子鉄心44の軸方向両端に、略円板状の磁気遮蔽板54、回転子鉄心押え56が設けられている。
【0015】
図1および
図2に示すように、回転子鉄心44は、固定子鉄心16の内側に僅かな隙間(エアギャップ)を置いて同軸的に配置されている。すなわち、回転子鉄心44の外周面は、僅かな隙間をおいて、固定子鉄心16の内周面(ティース21の先端面)に対向している。
【0016】
回転子鉄心44には、軸方向に貫通する複数の磁石埋め込み孔52が形成されている。各磁石埋め込み孔52内に、永久磁石46が装填および配置され、例えば、接着剤等により回転子鉄心44に固定されている。各永久磁石46は、回転子鉄心44の全長に亘って延在している。また、複数の永久磁石46は、回転子鉄心44の周方向に所定の間隔を置いて配列されている。
【0017】
図2に示すように、回転子鉄心44は、それぞれ回転子鉄心44の半径方向あるいは放射方向に延びるd軸、およびd軸に対して電気的に90°離間したq軸を有している。ここでは、隣合う磁極間の境界および中心軸線C1を通って放射方向に延びる軸をq軸とし、q軸に対して電気的に直角な方向をd軸としている。d軸およびq軸は、回転子鉄心44の円周方向に交互に、かつ、所定の位相で設けられている。
【0018】
回転子鉄心44の円周方向において、各d軸の両側に2つの磁石埋め込み孔52が形成されている。各埋め込み孔52は、回転子鉄心44を軸方向に貫通して延びている。埋め込み孔52は、ほぼ矩形の断面形状を有し、それぞれd軸に対して傾斜している。回転子鉄心44の中心軸線C1と直交する平面でみた場合、2つの埋め込み孔52は、例えば、ほぼV字状に並んで配置されている。ここでは、磁石埋め込み孔52の内周側の端はそれぞれd軸に隣接し、僅かな隙間をおいて互いに対向している。埋め込み孔52の外周側の端は、回転子鉄心44の円周方向に沿ってd軸から離間し、回転子鉄心44の外周面の近傍およびq軸の近傍に位置している。これにより、埋め込み孔52の外周側の端は、隣合う磁極の埋め込み孔52の外周側端と、q軸を挟んで隣接対向している。回転子鉄心44において、埋め込み孔52の外周側端と回転子鉄心44の外周縁との間に幅の狭い磁路狭隘部(ブリッジ部)が形成されている。
【0019】
回転子鉄心44に複数の空隙孔(透孔)31が形成されている。空隙孔31は、それぞれ回転子鉄心44を軸方向に貫通して延びている。空隙孔31は、それぞれq軸上に位置し、隣合う磁極の2つ埋め込み孔52の間に設けられている。
【0020】
永久磁石46は、各埋め込み孔52に装填され、回転子鉄心44に埋め込まれている。永久磁石46は、例えば、断面が矩形状の細長い平板状に形成され、回転子鉄心44の軸方向長さとほぼ等しい長さを有している。永久磁石46は、軸方向(長手方向)もしくは周方向(幅方向)に複数に分割された磁石を組み合わせて構成されてもよく、この場合、複数の磁石の合計の長さが回転子鉄心44の軸方向長さとほぼ等しくなうように形成される。各永久磁石46は回転子鉄心44のほぼ全長に亘って埋め込まれている。永久磁石46の磁化方向は、永久磁石46の表面および裏面と直交する方向としている。
【0021】
永久磁石46は、埋め込み孔52に装填され、接着剤等により回転子鉄心44に固定されている。各d軸の両側に位置する2つの永久磁石46は、ほぼV字状に並んで配置されている。すなわち、2つの永久磁石46は、内周側端から外周側端に向かうに従って、d軸からの距離が徐々に広がるように配置されている。d軸の両側に位置する2つの永久磁石46は、回転子鉄心44の円周方向において磁化方向が逆向きとなるように配置され、また、q軸の両側に位置する2つの永久磁石46は、磁化方向が同一となるように配置されている。
複数の永久磁石46を上記のように配置することにより、回転子鉄心44の外周部において各d軸上の領域は1つの磁極を中心に形成している。本実施形態では、回転電機10は、隣接する1磁極毎に永久磁石46のN極とS極の表裏を交互に配置した、8極(4極対)、48スロットで、単層分布巻で巻線した永久磁石埋め込み型の回転電機を構成している。
【0022】
次に、固定子12の構成およびその製造方法について説明する。
【0023】
図3は、固定子の第1端面側を示す斜視図、
図4は、固定子の第2端面側を示す斜視図、
図5は、径方向に延びる1つのスロットを拡大して示す断面図、
図6は、コイルセグメントの一例を示す図である。
【0024】
コイル18は、平角導体としての平角線からなる複数のコイルセグメントCSを用いて構成され、かつ、固定子鉄心16に組みつけられている。平角導体は、長手方向に垂直な断面(横断面)が略矩形の形状をしているか、少なくとも、長手方向に垂直な断面の形状が対向する2長辺を有する。平角導体の横断面が矩形である場合、四隅は直角である必要はなく、面取りやR加工がされていてもよい。また、横断面が対向する2長辺を有する場合、例えば長円状など、断面においてこれらの対向する2長辺の端部を結ぶ部分は曲線であってもよい。
図6に示すように、コイルセグメントCSは、平角線を切断および折り曲げることにより、ほぼU字形状に形成されている。すなわち、コイルセグメントCSは、互いに間隔を置いて対向する一対の直線部CSSと、直線部CSSの一端部同士に繋がる架橋部CSBと、を一体に有している。コイルセグメントCSは、矩形の断面形状を有し、すなわち、断面は、互いに対向する一対の長辺L1および互いに対向する一対の短辺S1を有している。コイルセグメントCSの外面は絶縁被覆で覆われている。各直線部CSSの延出端部は、被覆が除去され、導通可能な導通部を形成している。
【0025】
図3および
図4に示すように、複数のコイルセグメントCSは、一対の直線部CSSが、例えば、固定子鉄心16の第1端面16a側からそれぞれ対応する異なるスロット20に差し込まれ、固定子鉄心16の第2端面16bから所定長さだけ突出している。
図5に示すように、1つのスロット20に例えば、6つのコイルセグメントCSの直線部CSSが挿通される。6つの直線部CSSは、スロット20において、固定子鉄心16の半径方向に並んで配置されている。横断面で見た場合、6つの直線部CSSは、長辺L1同士が平行に向かい合った状態で、スロット20内に配置されている。各直線部CSSの外面に絶縁紙Pが巻付けられ、直線部CSSは絶縁紙Pと共にスロット20内に挿入されている。なお、絶縁紙Pをスロット20に予め挿入し、スロット20内に絶縁紙Pが配置された状態でコイル18を挿入しても構わない。絶縁紙Pは、コイル18を外部から電気的に絶縁し、コイル18を物理的に保護している。
【0026】
図3に示すように、コイルセグメントCSの架橋部CSBは、固定子鉄心16の第1端面16aに僅かに隙間を置いて対向している。架橋部CSBは、固定子鉄心16のほぼ円周方向に沿って延在し、幾つかの架橋部CSBは、他の架橋部CSBと交差して延在している。これらの架橋部CSBは、第1端面16aから突出するコイルエンド18aを構成している。
【0027】
図4に示すように、固定子鉄心16の第2端面16b側において、各コイルセグメントCSの直線部CSSは、スロット20を貫通した後、固定子鉄心16の第2端面16bから所定長さ軸方向に延出および突出している。直線部CSSの延出部は、固定子鉄心16の円周方向に折り曲げられ、軸方向に対して傾斜して延在している。更に、直線部CSSの延出端は、斜めに切断され、第2端面16bとほぼ平行に延在する端面を有している。
【0028】
各スロット20に挿通された6本の直線部CSSは、交互に一方向および逆方向に折曲げられている。すなわち、最外周に位置する直線部CSSは、固定子鉄心16の円周方向の一方向に折り曲げられ、1つ内側の直線部CSSは、円周方向の他方向(逆方向)に折り曲げられている。更に1つ内側の直線部CSSは、前記一方向に折り曲げられている。異なる複数のスロット20から延出している6本の直線部CSSの端面が、固定子鉄心16の径方向に沿ってほぼ一列に並んで位置している。これら6つの端面は、ほぼ同一平面に延在している。
【0029】
各列の6つの直線部CSSの端面は、2つずつ(2本ずつ)互いに溶接され、電気的に導通している。溶接には、例えば、レーザー溶接を用いることがでいる。溶接部あるいは接合部は、粉体塗装、ワニス等の絶縁材料で覆われる。これら直線部CSSの延出端部は、第2端面16bから突出するコイルエンド18bを構成している。コイル18の内、3本のコイルに、それぞれU相接続端子TU、V相接続端子TV、W相接続端子TWが接続されている。本実施形態は固定子12のコイル並列数を1とした場合を例示しており、固定子12が備えるコイルの並列数が複数となる場合、コイル並列数に応じた接続端子がそれぞれ設けられる。
【0030】
図7は、上記のように構成された固定子12の製造工程を模式的に示す図、
図8は、複数のコイルセグメントを示す斜視図、
図9は、円筒状に配列されたコイルセグメントおよび固定子鉄心を示す分解斜視図、
図10は、コイルセグメントを固定子鉄心に挿入した状態を示す斜視図である。
【0031】
固定子12の製造工程では、
図8および
図9に示すように、まず、多数本のコイルセグメントCSを用意し、これらを円筒状に配列する。図示していないが、それぞれ円筒状に配列された3組のコイルセグメントCSを用意する。続いて、
図7(a)および
図10に示すように、円筒状に配列されたコイルセグメントCSを、固定子鉄心16の第1端面16a側から対応するスロット20に挿入する。この際、コイルセグメントCSの直線部CSSが対応するスロット20に差し込まれ、固定子鉄心16の第2端面16bから所定長さだけ突出する。1つのスロット20に、6つのコイルセグメントCSの直線部CSSが挿通される。
【0032】
次いで、
図7(b)、(c)、および
図11に示すように、円筒形状の曲げ治具50を第2端面16b側からコイルセグメントCSの延出端に装着する。一例では、曲げ治具50は、互いに同軸的に、かつ、互いに回動自在に配置された複数の環状部材を有し、各環状部材の一端に複数の直線状の係合凹所51が設けられている。直線部CSSの延出端部を係合凹所51に差し込んで把持した状態で、曲げ治具50がコイルセグメントCSに装着される。直線部CSS(コイルセグメントCS)の延出端部のうち曲げ治具50の係合凹所51に差し込まれた部分を延出端部把持部と称する。延出端部把持部は、コイルセグメントCSの延出端部の端部側の一部を構成する。曲げ治具50がコイルセグメントCSの延出端部に装着された状態で、曲げ治具50は固定子鉄心16の第2端面16bから固定子鉄心16の中心軸方向に離間している。なお、曲げ治具50によるコイルセグメントCSの延出端部の把持は、コイルセグメントCSの延出端部をそれぞれ確実に固定するものでなくても構わない。すなわち、曲げ治具50の係合凹所51はコイルセグメントCSの延出端部が差し込み可能となっていればよく、係合凹所51の内寸とコイルセグメントCSの延出端部の外寸との間の(周方向、径方向および/または軸方向の)隙間は許容される。
【0033】
この状態で、曲げ治具50の複数の環状部材を時計方向あるいは反時計方向に回動させることで曲げ治具50の固定子鉄心16に対する相対的な位置を円周方向に回動(移動)させ、各コイルセグメントCSの直線部CSSを固定子鉄心16の円周方向に折り曲げ、軸方向に対して傾斜させる。この際、スロット20に挿通された6本の直線部CSSは、交互に一方向および逆方向に折曲げられている。その後、
図7(d)に示すように、曲げ治具50を取外すことにより、曲げ成形が完了する。このようにして、コイルセグメントCSの延出端部のうち、曲げ治具50の回動が完了した時点で曲げ治具50の係合凹所51に差し込まれた部分(延出端部把持部)以外の、固定子鉄心16と曲げ治具50との間に位置する部分が折曲げ部となる。
【0034】
図12は、曲げ成形したコイルセグメントCSを拡大して示す斜視図である。図示のように、コイルセグメントCSの各直線部CSSは、固定子鉄心16の軸方向から周方向に所定角度折れ曲がる第1曲げ部52aと、第1曲げ部52aから軸方向に対して傾斜して直線的に延在する傾斜部52bと、傾斜部の延出端から軸方向に折れ曲がる第2曲げ部52cと、第2曲げ部52cから固定子鉄心16の軸方向に直線的に延出した第2直線部(把持部)52dと、を一体に有している。第2直線部(把持部)52dは、曲げ治具50により把持される部分である。把持部52dは、6本ずつ、固定子鉄心16の径方向に整列して位置している。
【0035】
続いて、
図7(e)、
図13に示すように、直線部CSSの延出端部をカッティングラインCLに沿って切断し、把持部(第2直線部)52dの全体、すなわち、直線部CSSの延出端部のうち、折り曲げが完了した時点で曲げ治具50の係合凹所51に差し込まれた部分全て、を切除する。詳細には、第2曲げ部52cと傾斜部52bとの境界の近傍で延出端部を切断する。切断位置は、境界の近傍であれば、第2曲げ部52c内、あるいは、傾斜部52b内としてもよく、更に、境界上でもよい。カッティングラインCLは、固定子鉄心16の第2端面16aとほぼ平行な面内に設定する。すなわち、延出端部を切断することにより、第2端面16aとほぼ平行な切断面(先端面)dsが形成される。
【0036】
図14に示すように、一例では、切断具、例えば、はさみCTで延出端部を切断する。この際、固定子鉄心16の径方向に一列に並んでいる6本の把持部52dを、2本ずつ、あるいは、6本同時に切断する。切断方向、すなわち、はさみCTの歯の移動方向は、固定子鉄心16の周方向、すなわち、直線部CSSの長辺L1と平行な方向d1としている。このような切断方向d1とすることにより、
図15に示すように、切断部は、はさみCTにより圧縮され、長辺L1と平行な方向に縮み、短辺S1と平行な方向に伸びるように変形する。これにより、隣合う直線部CSSが互いに接近し、直線部CSS間の隙間を小さくすることが可能となる。隙間が小さい方が、後段の溶接工程で有利となる。径方向に並ぶ6本の直線部CSSの切断面dsは、ほぼ同一高さで面一に並んでいる。
なお、切断具は、はさみに限らず、カッター、レーザーカッター等の他の切断具を適宜選択可能である。
【0037】
更に、把持部(第2直線部)52dの切除は、コイルセグメントCSの延出端部を曲げ治具50の係合凹所51に差し込んだ状態のまま行ってもよい。
【0038】
また、切除の際の切断具の刃(またはレーザーカッターの場合のレーザー光の光軸)の移動方向を、固定子鉄心16の中心軸に対する周方向またはスロット20が延びる延出方向(径方向)に対して垂直な方向とすることで、切除方向を周方向とすることが好ましい。切断具の刃を周方向に移動させてコイルセグメントCSの延出部分を切断する場合、切断面には周方向(または径方向に垂直な方向)の力が作用して断面形状がスロット20の延出方向である径方向に広がることとなるため、径方向に隣接する2つのコイルセグメントCSの延出端同士の間隔ができにくく、以下に説明するコイルセグメントCSの直線部CSSの延出端の接合性を良好とできる。なお、切除方向は周方向以外に径方向としても構わない。
【0039】
切断後、
図7(f)および
図16に示すように、径方向に隣り合う2つの直線部CSSの延出端を溶接により接合する。溶接には、レーザー溶接を用いる。径方向に隣り合う2本の直線部CSSの切断面dsにレーザー光を照射し、切断面dsおよび延出端を部分的に溶融し、2つの切断面dsに跨る溶接ビードWBを形成する。隣合う2本の直線部CSSが機械的かつ電気的に接合される。各列の直線部CSSを上記と同様に溶接および接合することにより、3相のコイル18が形成される。
その後、各溶接部あるいは接合部を粉体塗装、あるいは、ワニス等の絶縁材料で覆うことにより、コイル間の電気的絶縁を担保する。以上の工程により、固定子鉄心16にコイル18を装着および接続し、固定子12が構成される。
【0040】
以上のように構成された固定子およびその製造方法によれば、コイルセグメントCSの延出端部を切断、除去することにより、固定子鉄心16の第2端面16b側のコイルエンド18bの突出高さを大幅に削減し、固定子12の小型化を実現することができる。一例では、
図17に示すように、第2直線部あるいは把持部が残っているコイルエンド18bの突出高さT2が約29mmであるのに対して、本実施形態に係る固定子12のコイルエンド18bの突出高さT1は、約20mmであり、突出高さが30%以上低減している。
【0041】
第2直線部あるいは把持部を切除した場合でも、レーザー溶接を用いることにより、コイルセグメント同士を容易に溶接、接合することができる。切断面を固定子鉄心16の第2端面16bとほぼ平行にすることことにより、コイルエンド18bの高さを一層低くすることができるとともに、レーザー溶接あるいは接合を容易に行うことができる。
コイルエンドを曲げ成形した後に切断する構成であることから、曲げ成形は、従来と同様の簡易な曲げ治具を用いて行うことが可能である。同時に、予め、コイルセグメントの延出端を斜めに成形しておく必要がなく、製造工程の簡素化を図ることが可能となる。接合するコイルセグメントペアを同時に切断することで、接合部の密着度が向上し、更に、接合面(切断面)の段差を無くすることができる。これにより、以後の溶接工程を容易に、かつ、安定して行うことが可能となる。
【0042】
なお、本発明のいくつかの実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、コイルの巻数、コイルセグメントの設置数は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜、増減可能である。例えば、1つのスロットに4本あるいは8本のセグメント直線部が配置されるように構成してもよい。回転子の寸法、材質、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。本実施形態に係る回転子および電動機は、永久磁石界磁電動機に限らず、誘導電動機にも適用可能である。
実施形態によれば、固定子の製造方法は、平角導体を折り曲げて形成されたコイルセグメント(CS)の一対の直線部(CSS)を固定子鉄心(16)の第1端面(16a)側から固定子鉄心のスロットにそれぞれ挿入し、コイルセグメントの架橋部が第1端面と対向して位置し、直線部の延出端部を固定子鉄心の第2端面(16b)側から軸方向に突出させ、直線部の延出端部をそれぞれ把持可能な治具(50)を固定子鉄心の第2端面側に軸方向に離間して配置してコイルセグメントの延出端部の端部側の一部である延出端部把持部(52d)を治具で把持した状態で治具の前記固定子鉄心に対する相対的な位置を固定子鉄心の中心軸線に対する円周方向に回動させ、各延出端部のうち前記固定子鉄心と治具との間に位置する折曲げ部を周方向に折曲げ、各コイルセグメントの延出端部把持部(52d)の全体を切除する。