特許第6606321号(P6606321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606321
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】車両用スラスト軸受
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/019 20060101AFI20191031BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20191031BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20191031BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B60G17/019
   B60G15/06
   G01L5/00 K
   F16F9/54
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-198896(P2014-198896)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-68706(P2016-68706A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513023044
【氏名又は名称】オイレス ドイチェラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168538
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 来
(74)【代理人】
【識別番号】100186495
【弁理士】
【氏名又は名称】平林 岳治
(72)【発明者】
【氏名】ハムロディ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】メッツラー カイ
(72)【発明者】
【氏名】永島 剛
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 講平
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−065418(JP,A)
【文献】 特開2010−085215(JP,A)
【文献】 特開平09−061268(JP,A)
【文献】 特開2006−170352(JP,A)
【文献】 特開2005−090525(JP,A)
【文献】 特開2013−076573(JP,A)
【文献】 実開平04−043088(JP,U)
【文献】 特開平08−132840(JP,A)
【文献】 特開平09−142123(JP,A)
【文献】 特開2004−034865(JP,A)
【文献】 特開2004−177411(JP,A)
【文献】 特開2009−216664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/019
B60G 15/06
F16F 9/54
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディ側取付部と対向する上部ケースと、車両のサスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う下部ケースとを備えた車両用スラスト軸受において、
前記車両用スラスト軸受内に設けて前記サスペンションの上下方向に負荷される荷重を測定する荷重センサと、
前記車両用スラスト軸受内に設けるとともに前記荷重センサに積層配設して前記車両ボディ側取付部と接触するスペーサ部材とを備えていることを特徴とする車両用スラスト軸受。
【請求項2】
負荷されるスラスト荷重を受ける円環状の軸受片が、前記上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用スラスト軸受。
【請求項3】
前記荷重センサが、前記上部ケース、前記軸受片および下部ケースのいずれかに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用スラスト軸受。
【請求項4】
前記荷重センサが、前記荷重を測定する液体圧式荷重センサであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の車両用スラスト軸受。
【請求項5】
前記液体圧式荷重センサが、前記サスペンションの上下方向に負荷される荷重を受ける環状液体封入体と、該環状液体封入体に接続されて環状液体封入体内における液体の圧力を信号に変換する圧力−信号変換器とを備え、
前記環状液体封入体が、スラスト軸受の軸心に対して同心円状に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両用スラスト軸受。
【請求項6】
前記サスペンションが、ストラット型サスペンションであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の車両用スラスト軸受。
【請求項7】
前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部に接続され、
該制御部が、前記車両のドライバーがブレーキを操作した際に前記サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車両用スラスト軸受。
【請求項8】
前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部に通信回線を通じて接続され、
前記積載量管理部が、前記車両毎の積載量をオンラインで管理することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つの車両用スラスト軸受。
【請求項9】
前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部に接続され、
該制御部が、前記サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさに応じて前記減衰力および前記ばね定数の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車両用スラスト軸受。
【請求項10】
前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部に接続され、
該制御部が、前記サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように前記減衰力および前記ばね定数の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車両用スラスト軸受。
【請求項11】
前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信することでタイヤからの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の車両用スラスト軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部ケースおよび下部ケースを有して相対的に回転する車両用スラスト軸受に関するものであって、特に、四輪自動車の前輪におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)のスラスト軸受として車両に組み込まれる車両用スラスト軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪自動車の前輪に用いられるストラット型サスペンションは、一般に、主軸と一体となった外筒の中に油圧式及びガス式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにダンパーコイルスプリングを組合せた構造をもっている。
ストラット型サスペンションにおいては、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがダンパーコイルスプリングとともに回る際に、ストラットアッセンブリのピストンロッドが回る形式のものと、ピストンロッドが回らない形式のものとがあるが、いずれの形式においてもストラットアッセンブリの円滑な回動を許容するべく、ストラットアッセンブリの車両への取付機構とダンパーコイルスプリングの上端部との間に、車両用スラスト軸受が使用される。
【0003】
従来、車両用スラスト軸受として、車両のストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着するトップカップと、ピストンロッドの軸心の回りでトップカップに対して回動自在に重ね合うボトムカップと、トップカップに連結された固定トップレースとボトムカップに連結された回転ボトムレースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける回転体と、回転ボトムレースに対して回転可能に装着されてパルスを発生するコーダーと、このコーダーに対して固定されて回転ボトムレースの回転角を測定するためにパルスを検出するセンサとを備えたサスペンション制御装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、車両用スラスト軸受として、車両のストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着するトップカップと、ピストンロッドの軸心の回りでトップカップに対して回動自在に重ね合うボトムカップと、トップカップに連結された固定トップレースとボトムカップに連結された回転ボトムレースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける回転体と、ホイールに作用する力により生じる固定部材としてのトップカップやトップレースに連結された変形センサとを備えたサスペンション制御装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−182223号公報
【特許文献2】特開2004−177411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した前者の従来のサスペンション制御装置では、トップレースに対するボトムレースの回転角を回転角測定センサで測定して上下方向の力を演算する構成であるため、走行時の車輪毎にサスペンションの上下方向に負荷される荷重を精度よく測定することが困難であるという問題があった。
また、上述した後者の従来のサスペンション制御装置では、固定部材としてのトップカップやトップレースの変形量を変形センサで継続的に測定して間接的に上下方向の力を演算する構成であるため、走行時の車輪毎にサスペンションの上下方向に負荷される荷重を精度よく測定することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、走行時の車輪毎にサスペンションの上下方向に負荷される荷重を他の部材の影響を殆ど受けることなく精度よく測定する車両用スラスト軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、車両ボディ側取付部と対向する上部ケースと、車両のサスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う下部ケースとを備えた車両用スラスト軸受において、前記車両用スラスト軸受内に設けて前記サスペンションの上下方向に負荷される荷重を測定する荷重センサと、前記車両用スラスト軸受内に設けるとともに前記荷重センサに積層配設して前記車両ボディ側取付部と接触するスペーサ部材とを備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、負荷されるスラスト荷重を受ける円環状の軸受片が、前記上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に配設されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記上部ケース、前記軸受片および下部ケースのいずれかに設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記荷重を測定する液体圧式荷重センサであることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項5に係る発明は、請求項4に記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記液体圧式荷重センサが、前記サスペンションの上下方向に負荷される荷重を受ける環状液体封入体と、該環状液体封入体に接続されて環状液体封入体内における液体の圧力を信号に変換する圧力−信号変換器とを備え、前記環状液体封入体が、スラスト軸受の軸心に対して同心円状に設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記サスペンションが、ストラット型サスペンションであることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部に接続され、該制御部が、前記車両のドライバーがブレーキを操作した際に前記サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を制御することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0015】
本請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部に通信回線を通じて接続され、前記積載量管理部が、前記車両毎の積載量をオンラインで管理することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0016】
本請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部に接続され、該制御部が、前記サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさに応じて前記減衰力および前記ばね定数の少なくとも一方を制御することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0017】
本請求項10に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部に接続され、該制御部が、前記サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように前記減衰力および前記ばね定数の少なくとも一方を制御することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0018】
本請求項11に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載された車両用スラスト軸受の構成に加えて、前記荷重センサが、前記荷重センサの出力信号を受信することでタイヤからの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部に接続されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用スラスト軸受は、車両ボディ側取付部と対向する上部ケースと、車両のサスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの軸心の回りで上部ケースに対して回動自在に重ね合う下部ケースとを備えていることにより、上部ケースと下部ケースとの円滑な相対的な回動を実現することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0020】
本請求項1に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、車両用スラスト軸受内に設けてサスペンションの上下方向に負荷される荷重を測定する荷重センサと、車両用スラスト軸受内に設けるとともに荷重センサに積層配設して車両ボディ側取付部と接触するスペーサ部材とが設けられていることにより、自動車やトラックなどの車両に装備した車輪のサスペンションのそれぞれにおいて荷重がスペーサ部材を介して荷重センサに作用するため、走行時の車輪毎にストラット型サスペンションの上下方向に負荷される荷重を他の部材の影響を殆ど受けることなく精度よく測定することができる。
【0021】
本請求項2に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、負荷されるスラスト荷重を受ける円環状の軸受片が、上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に配設されていることにより、上部ケースと下部ケースとの間における摩擦抵抗が小さくなるため、上部ケースと下部ケースとの相対的な回動をより円滑にすることができる。
【0022】
本請求項3に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、上部ケース、軸受片および下部ケースのいずれかに設けられていることにより、荷重が荷重センサにより確実に作用するため、走行時の車輪毎にストラット型サスペンションの上下方向に負荷される荷重をより精度よく測定することができる。
【0023】
本請求項4に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、荷重を測定する液体圧式荷重センサであることにより、精度よく荷重を測定することができる。
【0024】
本請求項5に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項4に係る発明が奏する効果に加えて、液体圧式荷重センサが、サスペンションの上下方向に負荷される荷重を受ける環状液体封入体とこの環状液体封入体に接続されて環状液体封入体内における液体の圧力を信号に変換する圧力−信号変換器とを備え、環状液体封入体が、ピストンロッドの軸心に対して同心円状に設けられていることにより、走行時にサスペンションの上下方向に生じる荷重がスラスト軸受の軸心の回りで局所的に偏在して負荷されても環状液体封入体内における液体の圧力が環状液体封入体全体に亘って均等に作用するため、精度よく荷重を測定することができる。
【0025】
本請求項6に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、サスペンションが、ストラット型サスペンションであることにより、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがダンパーコイルスプリングとともに回って回転力が生じるため、ストラットアッセンブリの円滑な回動を許容することができる。
【0026】
本請求項7に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、荷重センサの出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部に接続され、この制御部が、車両のドライバーがブレーキを操作した際にサスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を制御することにより、例えば、制動力を大きく制御するとサスペンションに作用する荷重の増大に伴ってドライバーがブレーキ操作をしたときのブレーキの制動力が大きくなるため、車両積載量が変化しても安定して車両を減速させ、車両積載量の差による制動距離の差を小さくすることができる。
【0027】
本請求項8に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、荷重センサの出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部に通信回線を通じて接続され、積載量管理部が、車両毎の積載量をオンラインで管理することにより、例えば、運送業者の司令室に各車両の積載量の情報が集まるため、運送業者の司令室が現在の各車両の積載量を把握して効率よく各車両へ集荷の指示を出すことができる。
【0028】
本請求項9に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、荷重センサの出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部に接続され、この制御部が、サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさに応じて減衰力およびばね定数の少なくとも一方を制御することにより、例えば、荷重の大きさに応じて減衰力やばね定数を増大させる制御をすると荷重の増加分が受止められるため、車両積載量が変化しても車両の走行安定性を確保することができる。
【0029】
本請求項10に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、荷重センサの出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部に接続され、この制御部が、サスペンションの上下方向に生じる荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように減衰力およびばね定数の少なくとも一方を制御することにより、例えば、積載荷重の大きい側の減衰力やばね定数を増大させる制御をすると車両の傾きが低減するため、積載荷重のバランスが車両の中心からずれても車両の姿勢を制御して走行安定性を確保することができる。
【0030】
本請求項11に係る発明の車両用スラスト軸受によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、荷重センサが、荷重センサの出力信号を受信することでタイヤからの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部に接続されていることにより、例えば、悪路に切り替わったときに減衰力を低減させる制御をすると入力荷重が時間的に分散されて受止められるため、車両の走行安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】(A)(B)は本発明の第1実施例である車両用スラスト滑り軸受の平面図および側面図。
図2図1(A)に示す符号2−2で視た断面図。
図3】本発明の第1実施例の車両用スラスト滑り軸受をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図。
図4図2に示す符号4で示す箇所の拡大断面図。
図5】(A)(B)は本発明の第2実施例である車両用スラスト滑り軸受の平面図および側面図。
図6図5(A)に示す符号6−6で視た断面図。
図7】本発明の第2実施例の車両用スラスト滑り軸受をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図。
図8図6に示す符号8で示す箇所の拡大断面図。
図9】(A)(B)は本発明の第3実施例である車両用スラスト滑り軸受の平面図および側面図。
図10図9(A)に示す符号10−10で視た断面図。
図11】本発明の第3実施例の車両用スラスト滑り軸受をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図。
図12図10に示す符号12で示す箇所の拡大断面図。
図13】(A)(B)は光ファイバ式荷重センサの原理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、車両ボディ側取付部と対向する上部ケースと、車両のサスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの軸心の回りで上部ケースに対して回動自在に重ね合う下部ケースとを備えた車両用スラスト軸受において、サスペンションの上下方向に負荷される荷重を測定する荷重センサと、この荷重センサに積層して配設されて車両ボディ側取付部と接触するスペーサ部材とを備えていることにより、走行時の車輪毎にサスペンションの上下方向に負荷される荷重を他の部材の影響を殆ど受けることなく精度よく測定するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0033】
例えば、車両用スラスト軸受は、上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してタイヤ側から負荷されるスラスト荷重を受ける軸受片を備えるものでもよいし、軸受片を備えずに上部ケースと下部ケースとが直接摺動するものでもよい。
また、軸受片を備える場合、この軸受片は、上部ケースまたは下部ケースに対して摺動する滑り軸受片でもよいし、ボールなどの転動体を転動自在に保持する転がり軸受片でもよい。
荷重センサは、サスペンションの上下方向に負荷される荷重を測定するものであれば、液体圧式荷重センサ、フィルム式荷重センサ、光ファイバ式荷重センサなど如何なるものであっても構わない。
車両のサスペンションは、タイヤ側からスラスト荷重が負荷される構造であれば、如何なるものであっても構わない。
上部ケースは、車両ボディ側取付部と当接していればよく、サスペンションの一例としてのストラット型サスペンションは、ショックアブソーバのピストンロッドの上端部が、車両ボディ側取付部に嵌合されているタイプでもよいし、上部ケースに嵌合されているタイプのいずれでもよい。
【実施例1】
【0034】
以下に、本発明の第1実施例である車両用スラスト軸受としての車両用スラスト滑り軸受100について、図1乃至図4に基づいて説明する。
ここで、図1(A)は、本発明の第1実施例である車両用スラスト滑り軸受100の平面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す符号1Bから視た側面図であり、図2は、図1(A)に示す符号2−2で視た断面図であり、図3は、本発明の第1実施例の車両用スラスト滑り軸受100をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図であり、図4は、図2に示す符号4で示す箇所の拡大断面図である。
【0035】
本発明の第1実施例である車両用スラスト滑り軸受100は、図1(A)乃至図4に示すように、合成樹脂製の上部ケース110と、合成樹脂製の下部ケース120と、軸受片としての合成樹脂製の滑り軸受片130とを備えている。
このうち、上部ケース110は、車両ボディ側取付部としての車両側の取付部材VAと対向するように構成されている。
【0036】
本実施例では、上部ケース110は、ピストンロッドの軸方向Yにおいて円環状の上部ケース上面111aおよび上部ケース下面111bを形成して車両側に取付けられる円環状の上部ケース基部111と、この上部ケース基部111の径方向Xの内周端から垂下した内周側円筒部112と、上部ケース基部111の径方向Xの外周端から垂下した外周側円筒部113とを夫々一体的に有している。
上部ケース基部111の上部ケース上面111aには、環状凹部としての環状凹所111aaが形成され、この環状凹所111aaには、後述する油圧式荷重センサ140の環状オイル封入体141および圧力−信号変換器142が配設されている。
【0037】
また、下部ケース120は、ピストンロッドの軸心AXの回りで上部ケース110に対して回動自在に重ね合うように構成されている。
本実施例では、下部ケース120は、上部ケース110に対して軸心AXの回りで回転自在に上部ケース110に重ね合わされる円環状の下部ケース基部121と、下部ケース基部121の径方向内側から垂下する内周側円筒部122とを夫々一体的に有している。
【0038】
下部ケース基部121の径方向外側には、内側環状係合爪121aが形成され、内側環状係合爪121aが、上部ケース110の外周側円筒部113に形成された外側環状係合爪113aと円周方向Rに回動自在に係合する。
また、下部ケース基部121の内側環状係合爪121aより径方向内側には、外側環状係合溝121bが形成され、外側環状係合溝121bが、上部ケース基部111の上部ケース下面111bに形成された外側環状係合突条111baと僅かな隙間を空けて噛み合うように係合する。
これにより、径方向外側から上部ケース110と下部ケース120との間に形成された環状空間内への異物の侵入を防止する。
【0039】
さらに、下部ケース120の内周側円筒部122の内側には、内側環状係合突条122aが形成され、内側環状係合突条122aが、上部ケース110の内周側円筒部112の下端に形成された内側環状係合溝112aと僅かな隙間を空けて噛み合うように係合する。
これにより、径方向内側から上部ケース110と下部ケース120との間に形成された環状空間内への異物の侵入を防止する。
【0040】
また、滑り軸受片130は、上部ケース110と下部ケース120との間に形成された環状空間内に介在してタイヤ側から負荷されるスラスト荷重及びラジアル荷重を受けるように構成されている。
本実施例では、滑り軸受片130は、上部ケース基部111の上部ケース下面111bと下部ケース基部121の下部ケース上面121cとの間の環状空間および内周側円筒部112の外周面112bと下部ケース基部121の内周面121dとの間の環状空間に配設されている。
【0041】
そして、滑り軸受片130は、円環状のスラスト滑り軸受片部131と、円筒状のラジアル滑り軸受片部132と、スラスト滑り軸受片部131から下方に突出した回転止め突起部133とを有している。
スラスト滑り軸受片部131は、上部ケース基部111の上部ケース下面111bと摺動自在に接触する軸受上面131aと、下部ケース120の下部ケース基部121の下部ケース上面121cと接触する軸受下面131bとを有している。
【0042】
他方、ラジアル滑り軸受片部132は、上部ケース110の内周側円筒部112の外周面112bと摺動自在に接触する軸受内周面132aと、下部ケース120の下部ケース基部121の内周面121dと接触する軸受外周面132bとを有している。
また、回転止め突起部133は、下部ケース120の下部ケース上面121cに形成された回転止め凹部123と係合し、滑り軸受片130の下部ケース120に対する回転を規制する。
なお、本実施例では、一例として滑り軸受片130が下部ケース120に対して回転しないように回転止め突起部133および回転止め凹部123とを設けたが、これらを設けずに滑り軸受片130が下部ケース120に対して回転するように構成してもよい。
【0043】
図3に示すように、下部ケース基部121の下部ケース下面121eには、ゴムで環状に形成されたスプリングパッドSPが配設されている。
ストラット型サスペンション(マクファーソン式)において、車両用スラスト滑り軸受100は、後述するように上部ケース110の環状凹所111aaに配設した油圧式荷重センサ140の環状オイル封入体141の荷重受け面141aをボディ側取付部としての車両側の取付部材VAの車両側座面VA1に当接させ、他方、スプリングパッドSPをダンパーコイルスプリングSSの上端部に当接させて、車両用スラスト滑り軸受100を車両側の取付部材VAの車両側座面VA1とダンパーコイルスプリングSSとの間に配設して、組み込まれる。
【0044】
本実施例では、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される荷重としての積載荷重を測定する液体圧式荷重センサとしての油圧式荷重センサ140が、上部ケース110および下部ケース120のうちの一例として上部ケース110の環状凹所111aaに装着されている。
これにより、自動車やトラックなどの車両に装備した車輪のストラット型サスペンションのそれぞれにおいて積載荷重が、油圧式荷重センサ140に作用する。
さらに、本実施例では、本発明を実施するための形態でスペーサ部材などを備えていればその具体的な実施態様は如何なるものであっても構わないと説明したように、環状凹所111aa内において、図示しないがスペーサ部材が、油圧式荷重センサ140に積層して配設されていても良く、この場合には、走行時の車輪毎にストラット型サスペンションの上下方向に負荷される荷重を他の部材の影響を殆ど受けることなく精度よく測定することができる。
【0045】
具体的には、油圧式荷重センサ140が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を受ける環状オイル封入体141と、この環状オイル封入体141に接続されて環状オイル封入体141内におけるオイルOLの圧力を信号に変換する圧力−信号変換器142とを備えている。
さらに、環状オイル封入体141が、ピストンロッドの軸心AXに対して同心円状に設けられている。
【0046】
これにより、走行時にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重がピストンロッドの軸心AXの回りで局所的に偏在して負荷されても、環状オイル封入体141内におけるオイルOLの圧力が、環状オイル封入体141全体に亘って均等に作用する。
【0047】
さらに、環状オイル封入体141の上端側に環状に突出した荷重受け面141aが、上部ケース110の上部ケース上面111aから上方へ突出して形成され、車両側の取付部材VAと接触して積載荷重を受けるように構成されている。
これにより、この荷重受け面141aが、車両側の取付部材VAから積載荷重を周辺部材と非接触状態で偏りなく全面で受けて変位する。
【0048】
また、本実施例では、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部CTと、コネクタ143を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、車両のドライバーがブレーキを操作した際にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を、例えば、大きく制御するように構成されている。
これにより、ストラット型サスペンションに作用する積載荷重の増大に伴ってドライバーがブレーキ操作をしたときのブレーキの制動力が大きくなる。
なお、制御部CTは、CPUなどの演算ユニットなどで構成され、制御部CTを油圧式荷重センサ140と一体に上部ケース110の内部に設けてもよい。
【0049】
さらに、本実施例では、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部ADと、通信回線を通じて接続されている。
そして、積載量管理部ADが、車両毎の積載量をオンラインで管理するように構成されている。
これにより、例えば、運送業者の司令室に各車両の積載量の情報が集まる。
【0050】
また、本実施例では、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTと、コネクタ143を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じて減衰力およびばね定数の少なくとも一方を、例えば、増大させる制御をするように構成されている。
これにより、積載荷重の大きさに応じて減衰力やばね定数が増大して積載荷重の増加分が受止められる。
【0051】
さらに、本実施例では、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTと、コネクタ143を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように減衰力およびばね定数の少なくとも一方を、例えば、積載荷重の大きい側の減衰力やばね定数を増大させる制御をするように構成されている。
これにより、車両の傾きが低減する。
なお、車両の四輪それぞれの4つの油圧式荷重センサ140によって検出された積載荷重の大きさの左右差および前後差が、所定の許容値を超えた場合、車両のドライバーに対して積載位置を変更するようにコクピットの表示パネルにその旨を表示して注意を促してもよいし、警告音を発して注意を促してもよい。
この場合、積み荷の一部または全部を積載荷重の最も大きい位置から積載荷重の最も小さい位置へ移動するように案内すると、ドライバーは前後左右の積載バランスを容易に取ることができる。
【0052】
また、本実施例では、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信することでタイヤ(サスペンション)からの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部CTと、コネクタ143を介して接続されている。
これにより、例えば、舗装路から未舗装路のような悪路に切り替わったときに減衰力を低減させる制御をすると入力荷重が時間的に分散されて受止められる。
【0053】
なお、液体圧式荷重センサの形状は、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を精度よく測定するものであれば、如何なるものであっても構わない。
また、液体圧式荷重センサは、液体の圧力をダイヤフラム(ステンレスダイヤフラム、シリコンダイヤフラムなど)を介して、感圧素子で計測し、電気信号に変換し出力するものであれば、半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサタイプ、静電容量形圧力センサタイプなど如何なるものであってもよい。
ここで、半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサタイプは、ダイヤフラムの表面に半導体ひずみゲージを形成して、外部からの力(圧力)によってダイヤフラムが変形して発生するピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を電気信号に変換するものである。
また、静電容量形圧力センサタイプは、ガラスの固定極とシリコンの可動極を対向させてコンデンサを形成して、外部からの力(圧力)によって可動極が変形して発生する静電容量の変化を電気信号に変換するものである。
液体圧式荷重センサの圧力検出媒介となる液体は、オイルや水など荷重を精度よく測定するものであれば、如何なるものであっても構わない。
【0054】
このようにして得られた本発明の第1実施例である車両用スラスト軸受としての車両用スラスト滑り軸受100は、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される荷重としての積載荷重を測定する液体圧式荷重センサとしての油圧式荷重センサ140が、上部ケース110、下部ケース120および滑り軸受片130のいずれかである上部ケース110に設けられていることにより、走行時の車輪毎にストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を精度よく測定することができる。
【0055】
また、油圧式荷重センサ140が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を受ける環状液体封入体としての環状オイル封入体141と、この環状オイル封入体141に接続されて環状オイル封入体141内におけるオイルOLの圧力を信号に変換する圧力−信号変換器142とを備え、環状オイル封入体141が、スラスト軸受100の軸心と同心であるピストンロッドの軸心AXに対して同心円状に設けられていることにより、精度よく荷重を測定することができる。
【0056】
さらに、環状オイル封入体141が、上部ケース110の上部ケース上面111aに設けた環状凹部としての環状凹所111aaに装着され、環状オイル封入体141の上端側で車両ボディ側取付部としての車両側の取付部材VAの車両側座面VA1と接触して積載荷重を受ける荷重受け面141aが、上部ケース110の上部ケース上面111aから上方へ突出して形成されていることにより、各ストラット型サスペンションに作用する上下方向の積載荷重をより一層精度よく測定することができる。
【0057】
また、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部CTに接続され、この制御部CTが、車両のドライバーがブレーキを操作した際にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を制御することにより、例えば、車両積載量が変化しても安定して車両を減速させ、車両積載量の差による制動距離の差を小さくすることができる。
【0058】
さらに、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部ADに通信回線を通じて接続され、この積載量管理部ADが、車両毎の積載量をオンラインで管理することにより、例えば、運送業者の司令室が現在の各車両の積載量を把握して効率よく各車両へ集荷の指示を出すことができる。
【0059】
また、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTに接続され、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じて減衰力およびばね定数の少なくとも一方を制御することにより、例えば、積載荷重の大きさに応じて減衰力やばね定数を増大させる制御をすると車両積載量が変化しても車両の走行安定性を確保することができる。
【0060】
さらに、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTに接続され、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように減衰力およびばね定数の少なくとも一方を制御することにより、例えば、積載荷重の大きい側の減衰力やばね定数を増大させる制御をすると積載荷重のバランスが車両の中心からずれても車両の姿勢を制御して走行安定性を確保することができる。
【0061】
また、油圧式荷重センサ140が、油圧式荷重センサ140の出力信号を受信することでタイヤからの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部CTに接続されていることにより、例えば、悪路に切り替わったときに減衰力を低減させる制御をすると車両の走行安定性を確保することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0062】
続いて、本発明の第2実施例である車両用スラスト軸受としての車両用スラスト滑り軸受200について、図5乃至図8に基づいて説明する。
ここで、図5(A)は、は本発明の第2実施例である車両用スラスト滑り軸受200の平面図であり、図5(B)は、図5(A)に示す符号5Bから視た側面図であり、図6は、図5(A)に示す符号6−6で視た断面図であり、図7は、本発明の第2実施例の車両用スラスト滑り軸受200をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図であり、図8は、図6に示す符号8で示す箇所の拡大断面図である。
【0063】
本発明の第2実施例である車両用スラスト滑り軸受200は、図5(A)乃至図8に示すように、合成樹脂製の上部ケース210と、合成樹脂製の下部ケース220と、軸受片としての合成樹脂製の滑り軸受片230とを備えている。
このうち、上部ケース210は、車両ボディ側取付部としての車両側の取付部材VAと対向するように構成されている。
【0064】
本実施例では、上部ケース210は、ピストンロッドの軸方向Yにおいて円環状の上部ケース上面211aおよび上部ケース下面211bを形成して車両側に取付けられる円環状の上部ケース基部211と、この上部ケース基部211の径方向Xの内周端から垂下した内周側円筒部212と、上部ケース基部211の径方向Xの外周端から垂下した外周側円筒部213とを夫々一体的に有している。
上部ケース基部211の上部ケース上面211aには、凹部としての環状凹所211aaが形成され、この環状凹所211aaの底面上には、後述するフィルム式荷重センサ240のフィルム層241が配設されている。
また、環状凹所211aa内において、スペーサ部材250が、フィルム層241に積層して配設されている。
【0065】
また、下部ケース220は、ピストンロッドの軸心AXの回りで上部ケース210に対して回動自在に重ね合うように構成されている。
本実施例では、下部ケース220は、上部ケース210に対して軸心AXの回りで回転自在に上部ケース210に重ね合わされる円環状の下部ケース基部221と、下部ケース基部221の径方向内側から垂下する内周側円筒部222とを夫々一体的に有している。
【0066】
下部ケース基部221の径方向外側には、内側環状係合爪221aが形成され、内側環状係合爪221aが、上部ケース210の外周側円筒部213に形成された外側環状係合爪213aと円周方向Rに回動自在に係合する。
また、下部ケース基部221の内側環状係合爪221aより径方向内側には、外側環状係合溝221bが形成され、外側環状係合溝221bが、上部ケース基部211の上部ケース下面211bに形成された外側環状係合突条211baと僅かな隙間を空けて噛み合うように係合する。
これにより、径方向外側から上部ケース210と下部ケース220との間に形成された環状空間内への異物の侵入を防止する。
【0067】
さらに、下部ケース220の内周側円筒部222の内側には、内側環状係合突条222aが形成され、内側環状係合突条222aが、上部ケース210の内周側円筒部212の下端に形成された内側環状係合溝212aと僅かな隙間を空けて噛み合うように係合する。
これにより、径方向内側から上部ケース210と下部ケース220との間に形成された環状空間内への異物の侵入を防止する。
【0068】
また、滑り軸受片230は、上部ケース210と下部ケース220との間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受けるように構成されている。
本実施例では、滑り軸受片230は、上部ケース基部211の上部ケース下面211bと下部ケース基部221の下部ケース上面221cとの間の環状空間および内周側円筒部212の外周面212bと下部ケース基部221の内周面221dとの間の環状空間に配設されている。
【0069】
そして、滑り軸受片230は、円環状のスラスト滑り軸受片部231と、円筒状のラジアル滑り軸受片部232と、スラスト滑り軸受片部231から下方に突出した回転止め突起部233とを有している。
スラスト滑り軸受片部231は、上部ケース基部211の上部ケース下面211bと摺動自在に接触する軸受上面231aと、下部ケース220の下部ケース基部221の下部ケース上面221cと接触する軸受下面231bとを有している。
【0070】
他方、ラジアル滑り軸受片部232は、上部ケース210の内周側円筒部212の外周面212bと摺動自在に接触する軸受内周面232aと、下部ケース220の下部ケース基部221の内周面221dと接触する軸受外周面232bとを有している。
また、回転止め突起部233は、下部ケース220の下部ケース上面221cに形成された回転止め凹部223と係合し、滑り軸受片230の下部ケース220に対する回転を規制する。
なお、本実施例では、一例として滑り軸受片230が下部ケース220に対して回転しないように回転止め突起部233および回転止め凹部223とを設けたが、これらを設けずに滑り軸受片230が下部ケース220に対して回転するように構成してもよい。
【0071】
図7に示すように、下部ケース基部221の下部ケース下面221eには、ゴムで環状に形成されたスプリングパッドSPが配設されている。
ストラット型サスペンション(マクファーソン式)において、車両用スラスト滑り軸受200は、後述するように上部ケース210の環状凹所211aaに配設したスペーサ部材250の上面側の少なくとも一部であるスペーサ上面251をボディ側取付部としての車両側の取付部材VAの車両側座面VA1に当接させ、他方、スプリングパッドSPをダンパーコイルスプリングSSの上端部に当接させて、車両用スラスト滑り軸受200を車両側の取付部材VAの車両側座面VA1とダンパーコイルスプリングSSとの間に配設して、組み込まれる。
【0072】
本実施例では、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を測定するフィルム式荷重センサ240が、上部ケース210および下部ケース220のうちの一例として上部ケース210の環状凹所211aaに配設されている。
これにより、自動車やトラックなどの車両に装備した車輪のストラット型サスペンションのそれぞれにおいて積載荷重が、フィルム式荷重センサ240に作用する。
【0073】
具体的には、フィルム式荷重センサ240が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重の大きさに応じて変形するフィルム層241を有している。
さらに、フィルム層241の電気的抵抗が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重による変形量に応じて変化するように構成されている。
これにより、上下方向の積載荷重の大きさに応じて電流値が変化する。
【0074】
また、本実施例では、フィルム層241が、上部ケース210の上部ケース上面211aに設けた凹部としての環状凹所211aaの底面上に配設されている。
さらに、環状凹所211aaにおいて、スペーサ部材250が、フィルム層241に積層して配設されている。
スペーサ部材250の上面側の少なくとも一部であるスペーサ上面251が、上部ケース210の上部ケース上面211aから上方へ突出して車両側の取付部材VAと接触している。
これにより、車両の積載荷重が、スペーサ部材250を介してフィルム層241に作用して他の部材の影響を殆ど受けない。
【0075】
さらに、本実施例では、フィルム層241が、ピストンロッドの周方向に複数配列されている。
そして、この複数のフィルム層241の電気的抵抗値の合計が、上下方向の積載荷重値として用いられるように構成されている。
これにより、周方向における積載荷重の偏りが影響しない。
【0076】
また、本実施例では、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部CTと、コネクタ242を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、車両のドライバーがブレーキを操作した際にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を、例えば、大きく制御するように構成されている。
これにより、ストラット型サスペンションに作用する積載荷重の増大に伴ってドライバーがブレーキ操作をしたときのブレーキの制動力が大きくなる。
なお、制御部CTは、CPUなどの演算ユニットなどで構成され、制御部CTをフィルム式荷重センサ240と一体に上部ケース210の内部に設けてもよい。
【0077】
さらに、本実施例では、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部ADと、通信回線を通じて接続されている。
そして、積載量管理部ADが、車両毎の積載量をオンラインで管理するように構成されている。
これにより、例えば、運送業者の司令室に各車両の積載量の情報が集まる。
【0078】
また、本実施例では、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTと、コネクタ242を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じて減衰力およびばね定数の少なくとも一方を、例えば、増大させる制御をするように構成されている。
これにより、積載荷重の大きさに応じて減衰力やばね定数が増大して積載荷重の増加分が受止められる。
【0079】
さらに、本実施例では、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTと、コネクタ242を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように減衰力およびばね定数の少なくとも一方を、例えば、積載荷重の大きい側の減衰力やばね定数を増大させる制御をするように構成されている。
これにより、車両の傾きが低減する。
なお、車両の四輪それぞれの4つのフィルム式荷重センサ240によって検出された積載荷重の大きさの左右差および前後差が、所定の許容値を超えた場合、車両のドライバーに対して積載位置を変更するようにコクピットの表示パネルにその旨を表示して注意を促してもよいし、警告音を発して注意を促してもよい。
この場合、積み荷の一部または全部を積載荷重の最も大きい位置から積載荷重の最も小さい位置へ移動するように案内すると、ドライバーは前後左右の積載バランスを容易に取ることができる。
【0080】
また、本実施例では、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信することでタイヤ(サスペンション)からの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部CTと、コネクタ242を介して接続されている。
これにより、例えば、舗装路から未舗装路のような悪路に切り替わったときに減衰力を低減させる制御をすると入力荷重が時間的に分散されて受止められる。
【0081】
なお、フィルム式荷重センサの形状は、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を精度よく測定するものであれば、如何なるものであっても構わない。
また、フィルム式荷重センサは、外部からの力(圧力)によってフィルム層が変形して、電気抵抗や電圧が変化するものであれば、電極抵抗タイプ、ピエゾフィルムタイプ、静電容量変化タイプなど如何なるものであってもよい。
ここで、圧力の大きさに応じた電気抵抗や電圧の変化は、圧力の大きさと電気抵抗または電圧の大きさとの対応関係が一義的に決まれば、圧力が大きくなるにしたがって増加する構成でもよいし、減少する構成でもよい。
また、電極抵抗タイプは、電極と例えばカーボンシートとの間に隙間が形成され、圧力が作用すると電極とカーボンシートとが接触して電気抵抗が変化し、圧力の変化によって電極とカーボンシートとの接触範囲が変化して電気抵抗が変化するものである。
さらに、電極抵抗タイプは、例えば、2枚のフィルムにそれぞれ、行、列の銀電極を配線し、銀電極の上に感圧導電性インクをコーティングして、圧力の大きさだけでなく、圧力の分布をも検出するものでもよい。
また、ピエゾフィルムタイプは、圧力の変化によってフィルム層内のピエゾが変形して圧力を電圧に変える構成であり、電圧が変化するものである。
静電容量変化タイプは、フィルム層内に2つの電極を対向させてコンデンサを形成して、圧力の変化によって2つの電極間の距離が変化することにより電気抵抗が変化するものである。
【0082】
このようにして得られた本発明の第2実施例である車両用スラスト軸受としての車両用スラスト滑り軸受200は、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を測定するフィルム式荷重センサ240が、上部ケース210、下部ケース220および滑り軸受片230のいずれかに設けられていることにより、走行時の車輪毎にストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を精度よく測定することができる。
【0083】
また、フィルム式荷重センサ240が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重の大きさに応じて変形するフィルム層241を有し、フィルム層241の電気的抵抗が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重による変形量に応じて変化することにより、電流値を測定するだけで精度よく積載荷重を測定することができる。
【0084】
さらに、フィルム層241が、上部ケース210の上部ケース上面211aに設けた凹部としての環状凹所211aaの底面上に配設され、環状凹所211aaのフィルム層241に積層して配設されたスペーサ部材250の上面側の少なくとも一部であるスペーサ上面251が、上部ケース210の上部ケース上面211aから上方へ突出して車両ボディ側取付部としての車両側の取付部材VAと接触していることにより、各サスペンションに作用する車両の積載荷重をより精度よく測定することができる。
【0085】
また、フィルム層241が、ピストンロッドの周方向に複数配列され、この複数のフィルム層241の電気的抵抗値の合計が、上下方向の積載荷重値として用いられることにより、各ストラット型サスペンションに作用する車両の積載荷重をより一層精度よく測定することができる。
【0086】
さらに、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部CTに接続され、この制御部CTが、車両のドライバーがブレーキを操作した際にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を制御することにより、例えば、車両積載量が変化しても安定して車両を減速させ、車両積載量の差による制動距離の差を小さくすることができる。
【0087】
また、フィルム式荷重センサ240が、フィルム式荷重センサ240の出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部ADに通信回線を通じて接続され、積載量管理部ADが、車両毎の積載量をオンラインで管理することにより、例えば、運送業者の司令室が現在の各車両の積載量を把握して効率よく各車両へ集荷の指示を出すことができるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0088】
続いて、本発明の第3実施例である車両用スラスト軸受としての車両用スラスト滑り軸受300について、図9乃至図13に基づいて説明する。
ここで、図9(A)は、は本発明の第3実施例である車両用スラスト滑り軸受300の平面図であり、図9(B)は、図9(A)に示す符号9Bから視た側面図であり、図10は、図9(A)に示す符号10−10で視た断面図であり、図11は、本発明の第3実施例の車両用スラスト滑り軸受300をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図であり、図12は、図10に示す符号12で示す箇所の拡大断面図であり、図13(A)は、積載荷重が作用していないときまたは積載荷重の作用が小さいときの光ファイバ式荷重センサ340の原理を示す図であり、図13(B)は、積載荷重の作用が大きいときの光ファイバ式荷重センサ340の原理を示す図である。
【0089】
本発明の第3実施例である車両用スラスト滑り軸受300は、図9(A)乃至図12に示すように、合成樹脂製の上部ケース310と、合成樹脂製の下部ケース320と、軸受片としての合成樹脂製の滑り軸受片330とを備えている。
このうち、上部ケース310は、車両ボディ側取付部としての車両側の取付部材VAと対向するように構成されている。
【0090】
本実施例では、上部ケース310は、ピストンロッドの軸方向Yにおいて円環状の上部ケース上面311aおよび上部ケース下面311bを形成して車両側に取付けられる円環状の上部ケース基部311と、この上部ケース基部311の径方向Xの内周端から垂下した内周側円筒部312と、上部ケース基部311の径方向Xの外周端から垂下した外周側円筒部313とを夫々一体的に有している。
上部ケース基部311の上部ケース上面311aには、凹部としての環状凹所311aaが形成され、この環状凹所311aaの底面に形成された上部ケース側光ファイバ係合溝311abには、後述する光ファイバ式荷重センサ340の光ファイバとしての環状光ファイバ341が配設されている。
また、環状凹所311aa内において、スペーサ部材350が、環状光ファイバ341に積層して配設されている。
【0091】
スペーサ部材350のスペーサ下面352には、スペーサ側光ファイバ係合溝352aが形成されている。
そして、環状光ファイバ341の約上半分が、スペーサ側光ファイバ係合溝352aと係合し、環状光ファイバ341の約下半分が、上部ケース側光ファイバ係合溝311abと係合している。
さらに、積載荷重が環状光ファイバ341に作用するように、スペーサ下面352と、環状凹所311aaの底面との間には僅かな隙間が形成されている。
【0092】
また、下部ケース320は、ピストンロッドの軸心AXの回りで上部ケース310に対して回動自在に重ね合うように構成されている。
本実施例では、下部ケース320は、上部ケース310に対して軸心AXの回りで回転自在に上部ケース310に重ね合わされる円環状の下部ケース基部321と、下部ケース基部321の径方向内側から垂下する内周側円筒部322とを夫々一体的に有している。
【0093】
下部ケース基部321の径方向外側には、内側環状係合爪321aが形成され、内側環状係合爪321aが、上部ケース310の外周側円筒部313に形成された外側環状係合爪313aと円周方向Rに回動自在に係合する。
また、下部ケース基部321の内側環状係合爪321aより径方向内側には、外側環状係合溝321bが形成され、外側環状係合溝321bが、上部ケース基部311の上部ケース下面311bに形成された外側環状係合突条311baと僅かな隙間を空けて噛み合うように係合する。
これにより、径方向外側から上部ケース310と下部ケース320との間に形成された環状空間内への異物の侵入を防止する。
【0094】
さらに、下部ケース320の内周側円筒部322の内側には、内側環状係合突条322aが形成され、内側環状係合突条322aが、上部ケース310の内周側円筒部312の下端に形成された内側環状係合溝312aと僅かな隙間を空けて噛み合うように係合する。
これにより、径方向内側から上部ケース310と下部ケース320との間に形成された環状空間内への異物の侵入を防止する。
【0095】
また、滑り軸受片330は、上部ケース310と下部ケース320との間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受けるように構成されている。
本実施例では、滑り軸受片330は、上部ケース基部311の上部ケース下面311bと下部ケース基部321の下部ケース上面321cとの間の環状空間および内周側円筒部312の外周面312bと下部ケース基部321の内周面321dとの間の環状空間に配設されている。
【0096】
そして、滑り軸受片330は、円環状のスラスト滑り軸受片部331と、円筒状のラジアル滑り軸受片部332と、スラスト滑り軸受片部331から下方に突出した回転止め突起部333とを有している。
スラスト滑り軸受片部331は、上部ケース基部311の上部ケース下面311bと摺動自在に接触する軸受上面331aと、下部ケース320の下部ケース基部321の下部ケース上面321cと接触する軸受下面331bとを有している。
【0097】
他方、ラジアル滑り軸受片部332は、上部ケース310の内周側円筒部312の外周面312bと摺動自在に接触する軸受内周面332aと、下部ケース320の下部ケース基部321の内周面321dと接触する軸受外周面332bとを有している。
また、回転止め突起部333は、下部ケース320の下部ケース上面321cに形成された回転止め凹部323と係合し、滑り軸受片330の下部ケース320に対する回転を規制する。
なお、本実施例では、一例として滑り軸受片330が下部ケース320に対して回転しないように回転止め突起部333および回転止め凹部323とを設けたが、これらを設けずに滑り軸受片330が下部ケース320に対して回転するように構成してもよい。
【0098】
図11に示すように、下部ケース基部321の下部ケース下面321eには、ゴムで環状に形成されたスプリングパッドSPが配設されている。
ストラット型サスペンション(マクファーソン式)において、車両用スラスト滑り軸受300は、後述するように上部ケース310の環状凹所311aaに配設したスペーサ部材350の上面側の少なくとも一部であるスペーサ上面351をボディ側取付部としての車両側の取付部材VAの車両側座面VA1に当接させ、他方、スプリングパッドSPをダンパーコイルスプリングSSの上端部に当接させて、車両用スラスト滑り軸受300を車両側の取付部材VAの車両側座面VA1とダンパーコイルスプリングSSとの間に配設して、組み込まれる。
【0099】
本実施例では、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を測定する光ファイバ式荷重センサ340が、上部ケース310および下部ケース320のいずれかの一例として上部ケース310の環状凹所311aaに配設されている。
これにより、自動車やトラックなどの車両に装備した車輪のストラット型サスペンションのそれぞれにおいて積載荷重が、光ファイバ式荷重センサ340に作用する。
【0100】
具体的には、光ファイバ式荷重センサ340が、発光部としての発光部分342aと、受光部としての受光部分342bとを一例として一体に形成した発光受光部342と、環状光ファイバ341とを有している。
発光部分342aは、発光受光部342における周方向一端側に配設され、光を発するように構成されている。
受光部分342bは、発光受光部342における周方向他端側に配設され、環状光ファイバ341の内部を伝搬した光を受けてこの光の位相を計測するように構成されている。
環状光ファイバ341は、発光部分342aからの光を案内してストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重の大きさに従って変形するように構成されている。
【0101】
例えば、図13(A)に示す状態から、図13(B)に示すように環状光ファイバ341が、積載荷重の大きさに従って変形する。
これにより、環状光ファイバ341の内部を伝搬する光Wの波形の位相や伝搬路が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重による環状光ファイバ341の変形量に従って変化する。
ここで、積載荷重による環状光ファイバ341の変形は、上下方向の突出した突起部や周方向に対して傾斜した傾斜部などを、上部ケース側光ファイバ係合溝311ab内やスペーサ側光ファイバ係合溝352a内に形成して、積載荷重の大きさに応じて環状光ファイバ341の変形量が大きくなるようにしてもよい。
なお、積載荷重の大きさが減少したときは、環状光ファイバ341の変形量も減少するものとする。
【0102】
また、本実施例では、環状光ファイバ341が、上部ケース310の上部ケース上面311aに設けた凹部としての環状凹所311aaの底面上に配設されている。
さらに、スペーサ部材350が、環状凹所311aaの環状光ファイバ341に積層して配設されている。
スペーサ部材350の上面側の少なくとも一部であるスペーサ上面351が、上部ケース310の上部ケース上面311aから上方へ突出して車両側の取付部材VAと接触している。
これにより、車両の積載荷重が、スペーサ部材350を介して環状光ファイバ341に作用して他の部材の影響を殆ど受けない。
【0103】
また、本実施例では、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部CTと、コネクタ343を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、車両のドライバーがブレーキを操作した際にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を、例えば、大きく制御するように構成されている。
これにより、ストラット型サスペンションに作用する積載荷重の増大に伴ってドライバーがブレーキ操作をしたときのブレーキの制動力が大きくなる。
なお、制御部CTは、CPUなどの演算ユニットなどで構成され、制御部CTを光ファイバ式荷重センサ340と一体に上部ケース310の内部に設けてもよい。
【0104】
さらに、本実施例では、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部ADと、通信回線を通じて接続されている。
そして、積載量管理部ADが、車両毎の積載量をオンラインで管理するように構成されている。
これにより、例えば、運送業者の司令室に各車両の積載量の情報が集まる。
【0105】
また、本実施例では、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTと、コネクタ343を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じて減衰力およびばね定数の少なくとも一方を、例えば、増大させる制御をするように構成されている。
これにより、積載荷重の大きさに応じて減衰力やばね定数が増大して積載荷重の増加分が受止められる。
【0106】
さらに、本実施例では、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信して車両の左右前後のバランスを監視してショックアブソーバの減衰力およびエアサスペンションのばね定数の少なくとも一方の制御を行う制御部CTと、コネクタ343を介して接続されている。
そして、この制御部CTが、ストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさの左右差および前後差に応じて車両の傾きを低減するように減衰力およびばね定数の少なくとも一方を、例えば、積載荷重の大きい側の減衰力やばね定数を増大させる制御をするように構成されている。
これにより、車両の傾きが低減する。
なお、車両の四輪それぞれの4つの光ファイバ式荷重センサ340によって検出された積載荷重の大きさの左右差および前後差が、所定の許容値を超えた場合、車両のドライバーに対して積載位置を変更するようにコクピットの表示パネルにその旨を表示して注意を促してもよいし、警告音を発して注意を促してもよい。
この場合、積み荷の一部または全部を積載荷重の最も大きい位置から積載荷重の最も小さい位置へ移動するように案内すると、ドライバーは前後左右の積載バランスを容易に取ることができる。
【0107】
また、本実施例では、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信することでタイヤ(サスペンション)からの入力荷重を監視してショックアブソーバの減衰力の制御をアクティブに行う制御部CTと、コネクタ343を介して接続されている。
これにより、例えば、舗装路から未舗装路のような悪路に切り替わったときに減衰力を低減させる制御をすると入力荷重が時間的に分散されて受止められる。
【0108】
なお、光ファイバ式荷重センサの形状は、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を精度よく測定するものであれば、如何なるものであっても構わない。
また、光ファイバ式荷重センサは、光ファイバを用いて積載荷重を測定するものであれば、FBG(Fiber Bragg Granting)タイプ、散乱光(分布)タイプ、位相変化検出タイプ、伝搬路変化検出タイプなど如何なるものであってもよい。
ここで、FBG(Fiber Bragg Granting)タイプは、光ファイバ何に微細加工したセンサで屈折率の異なる層を光ファイバ内に多段に作り込んで回析格子の役割をさせて、ある特定の波長の光のみを反射させ、それ以外の波長の光を透過させて応力、歪、圧力等を測定するものである。
散乱光(分布)タイプは、光ファイバ自在をセンサとし、光ファイバ内の散乱光を検知することにより長手方向の歪等を測定するものである。
また、位相変化検出タイプは、外部からの力(圧力)によって光ファイバが変形して光波長の位相が変化したとき、この位相の変化を検出することにより応力、歪、圧力等を測定するものである。
ここで、圧力による光ファイバの変形量の大きさに応じた光波長の位相の変化は、圧力の大きさと光波長の位相の基準位置からの変化量との対応関係が一義的に決まれば、圧力が大きくなるにしたがって光波長の位相が変化する方向はどのようであってもよい。
伝搬路変化検出タイプは、外部からの力(圧力)によって光ファイバが変形して光ファイバ内を伝搬する光の経路が変化したとき、この経路の変化を検出することにより応力、歪、圧力等を測定するものである。
【0109】
このようにして得られた本発明の第3実施例である車両用スラスト軸受としての車両用スラスト滑り軸受300は、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を測定する光ファイバ式荷重センサ340が、上部ケース310、下部ケース320および滑り軸受片330のいずれかに設けられていることにより、走行時の車輪毎にストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重を精度よく測定することができる。
【0110】
また、光ファイバ式荷重センサ340が、光を発する発光部としての発光部分342aと、この発光部分342aからの光を案内してストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重の大きさに従って変形する光ファイバとしての環状光ファイバ341と、この環状光ファイバ341の内部を伝搬した光を受けてこの光の位相を計測する受光部としての受光部分342bとを有し、環状光ファイバ341の内部を伝搬する波形の位相が、ストラット型サスペンションの上下方向に負荷される積載荷重による変形量に従って変化することにより、波形の位相を計測するだけで精度よく積載荷重を測定することができる。
【0111】
さらに、環状光ファイバ341が、上部ケース310の上部ケース上面311aに設けた凹部としての環状凹所311aaの底面上に配設され、環状凹所311aaの環状光ファイバ341に積層して配設されたスペーサ部材350の上面側の少なくとも一部であるスペーサ上面351が、上部ケース310の上部ケース上面311aから上方へ突出して車両ボディ側取付部としての車両側の取付部材VAと接触していることにより、各ストラット型サスペンションに作用する車両の積載荷重をより精度よく測定することができる。
【0112】
また、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信して車両のブレーキの制御を行う制御部CTに接続され、この制御部CTが、車両のドライバーがブレーキを操作した際にストラット型サスペンションの上下方向に生じる積載荷重の大きさに応じてブレーキの制動力を制御することにより、車両積載量が変化しても安定して車両を減速させ、車両積載量の差による制動距離の差を小さくすることができる。
【0113】
さらに、光ファイバ式荷重センサ340が、光ファイバ式荷重センサ340の出力信号を受信して車両積載量の管理を行う積載量管理部ADに通信回線を通じて接続され、積載量管理部ADが、車両毎の積載量をオンラインで管理することにより、例えば、運送業者の司令室が現在の各車両の積載量を把握して効率よく各車両へ集荷の指示を出すことができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0114】
100、 200、 300 ・・・ 車両用スラスト滑り軸受
110、 210、 310 ・・・ 上部ケース
111、 211、 311 ・・・ 上部ケース基部
111a、 211a、 311a ・・・ 上部ケース上面
111aa、211aa、311aa・・・ 環状凹所(環状凹部)
311ab・・・ 上部ケース側光ファイバ係合溝
111b、 211b、 311b ・・・ 上部ケース下面
111ba、211ba、311ba・・・ 外側環状係合突条
112、 212、 312 ・・・ 内周側円筒部
112a、 212a、 312a ・・・ 内側環状係合溝
112b、 212b、 312b ・・・ 外周面
113、 213、 313 ・・・ 外周側円筒部
113a、 213a、 313a ・・・ 外側環状係合爪
120、 220、 320 ・・・ 下部ケース
121、 221、 321 ・・・ 下部ケース基部
121a、 221a、 321a ・・・ 内側環状係合爪
121b、 221b、 321b ・・・ 外側環状係合溝
121c、 221c、 321c ・・・ 下部ケース上面
121d、 221d、 321d ・・・ 内周面
121e、 221e、 321e ・・・ 下部ケース下面
122、 222、 322 ・・・ 内周側円筒部
122a、 222a、 322a ・・・ 内側環状係合突条
123、 223、 323 ・・・ 回転止め凹部
130、 230、 330 ・・・ 滑り軸受片(軸受片)
131、 231、 331 ・・・ スラスト滑り軸受片部
131a、 231a、 331a ・・・ 軸受上面
131b、 231b、 331b ・・・ 軸受下面
132、 232、 332 ・・・ ラジアル滑り軸受片部
132a、 232a、 332a ・・・ 軸受内周面
132b、 232b、 332b ・・・ 軸受外周面
133、 233、 333 ・・・ 回転止め突起部
140 ・・・ 油圧式荷重センサ(液体圧式荷重センサ)
141 ・・・ 環状オイル封入体(環状液体封入体)
141a ・・・ 荷重受け面
142 ・・・ 圧力−信号変換器
143 ・・・ コネクタ
240 ・・・ フィルム式荷重センサ
241 ・・・ フィルム層
242 ・・・ コネクタ
250 ・・・ スペーサ部材
251 ・・・ スペーサ上面
340 ・・・ 光ファイバ式荷重センサ
341 ・・・ 環状光ファイバ
342 ・・・ 発光受光部
342a ・・・ 発光部分
342b ・・・ 受光部分
343 ・・・ コネクタ
350 ・・・ スペーサ部材
351 ・・・ スペーサ上面
352 ・・・ スペーサ下面
352a ・・・ スペーサ側光ファイバ係合溝
AD ・・・ 積載量管理部
AX ・・・ ピストンロッドの軸心
CT ・・・ 制御部
R ・・・ 円周方向
SS ・・・ ダンパーコイルスプリング
SP ・・・ スプリングパッド
VA ・・・ 車両側の取付部材(車両ボディ側取付部)
VA1 ・・・ 車両側座面
X ・・・ 径方向
Y ・・・ 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13