(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、高屈折率高分散性ガラスにおいて着色性を悪化させる原因となっている成分は、TiO
2またはNb
2O
5成分である。一方、これらの成分は、屈折率を改良する主要成分である。よって、着色性を改良するためにTiO
2またはNb
2O
5成分の含有量を減少させると、高屈折率高分散性を維持するのが困難となり、これらの特性を両立させることは極めて困難である。
【0006】
また、TiO
2またはNb
2O
5成分の存在下においてSb
2O
3を用いると、着色性が極めて悪化する。一方、Sb
2O
3等の清澄剤を用いないと、ガラス中の泡の量を安定して低減させることは困難である。
【0007】
さらに、TiO
2成分またはNb
2O
5成分の含有量を高いSi系ガラスは、失透を生じやすいという欠点がある。光学ガラスを溶融し、板状ガラスに成形し、切断等の冷間加工をしたガラス塊をリヒートプレスして光学素子を作製する場合があるが、このリヒートプレスの際に失透が生じやすい。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、着色性が改良され、高屈折率高分散性を備え、ガラス中の泡の量が安定して極めて少なく、さらに、耐失透性に優れる光学ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討し、SiO
2−TiO
2−Nb
2O
5−Na
2O系ガラスにおいて、高屈折率高分散性を実現するためにTiO
2、Nb
2O
5を比較的多量に含有させつつ、Sb
2O
3の含有率を極めて限定された特定範囲とすることで、高屈折率高分散を備え、着色性が改良され、ガラス中の泡の量が安定して極めて少なく、さらに、耐失透性に優れる光学ガラスが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は以下の(1)〜(6)である。
(1)屈折率が1.83以上でアッベ数が26以下であり、酸化物基準で必須成分としてSiO
2、TiO
2、Nb
2O
5およびNa
2Oを含有し、外割りでSb
2O
3を0質量%超0.01質量%未満含有する、光学ガラス。
(2)酸化物基準で、SiO
2、TiO
2、Nb
2O
5およびNa
2Oの合計含有率が70質量%以上である、上記(1)に記載の光学ガラス。
(3)日本光学硝子工業規格JOGIS02−
2003に規定される光学ガラスの着色度の測定方法によって測定したときに、分光透過率70%を示す波長が450nm以下となる着色度を備える、上記(1)または(2)に記載の光学ガラス。
(4)日本光学硝子工業規格JOGIS12−
1994に規定される光学ガラスの泡の測定方法によって測定したときに、100mlのガラス中における泡の断面積の総和が0.03mm
2以下となる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学ガラス。
(5)Sb
2O
3の含有率が、外割りで0.001〜0.005質量%である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学ガラス。
(6)酸化物基準の質量%で、
SiO
2:21.0〜30.0%、
TiO
2:24.0〜40.0%、
Nb
2O
5:15.5〜30.0%、
Na
2O:10.0〜23.0%、
ZrO
2:0〜9.0%、
BaO:0〜25%、
K
2O:0〜23.0%
を含有し、(TiO
2+Nb
2O
5)/(Na
2O+K
2O)が3.0〜4.0である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学ガラス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、着色性が改良され、高屈折率高分散性を備え、ガラス中の泡の量が安定して極めて少なく、さらに、耐失透性に優れる光学ガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光学ガラスについて説明する。
本発明の光学ガラスは、屈折率が1.83以上でアッベ数が26以下であり、酸化物基準で必須成分としてSiO
2、TiO
2、Nb
2O
5およびNa
2Oを含有し、外割りでSb
2O
3を0質量%超0.01質量%未満含有する、光学ガラスである。
【0013】
以下の説明において、特に断りが無い限り、単に「%」と記した場合、「質量%」を意味するものとする。
【0014】
Sb
2O
3成分は、ガラス中の泡の量を安定して極めて少なくする成分である。本発明の光学ガラスはSb
2O
3を必須成分として含有する。
本発明の光学ガラスは、SiO
2−TiO
2−Nb
2O
5−Na
2O系ガラスにおいて、Sb
2O
3含有率を外割りで0超0.01%未満という、極めて限定された特定範囲とすると、ガラス中の泡の量が安定して極めて少なくすることができ、同時に、着色性が悪化しないこと等を本発明者が見出し完成させたものである。
【0015】
Sb
2O
3含有率は、外割りで0.001〜0.005%であることが好ましく、0.002〜0.004%であることがより好ましい。
【0016】
なお、本発明の光学ガラスにおいてSb
2O
3成分の含有率は外割りで表している。すなわち、ガラスに含まれるカチオン成分の全てと、それらカチオン成分の電荷に釣り合うだけの酸素とが結合した酸化物によって本発明の光学ガラスが形成されていると仮定した上で、それら酸化物でできたガラス全体の質量を100質量%とし、それに対するSb
2O
3成分の含有量を質量%で表している(酸化物基準の質量に対する外割り質量%)。
【0017】
本発明の光学ガラスは、SiO
2、TiO
2、Nb
2O
5およびNa
2Oの合計含有率が、酸化物基準で70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の光学ガラスは、さらにBaOを含有することが好ましい。
そして、SiO
2、TiO
2、Nb
2O
5、Na
2OおよびBaOを合計含有率が、酸化物基準で72%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。
【0019】
SiO
2成分は本発明のガラスにおける主要なガラス形成成分であり、必須に含有する。しかしその量が少なすぎるとガラスの安定性、化学的耐久性が悪くなりやすく、また多すぎるとガラスの溶融性が悪化するうえ、高屈折率を得にくくなる。従って、好ましくは21%、より好ましくは23%、さらに好ましくは24%を下限とし、好ましくは30%、より好ましくは28%、さらに好ましくは27%を上限として含有する。
【0020】
TiO
2成分はガラスの屈折率、分散および化学的耐久性を高める効果があり、必須に含有する。しかし、その量が少なすぎると所望の効果が得にくくなり、多すぎると耐失透性が低下し結晶化しやすくなり、さらに着色性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは24%、より好ましくは25%、さらに好ましくは26%を下限とし、好ましくは40%、より好ましくは30%、さらに好ましくは27%を上限として含有できる。
【0021】
Nb
2O
5成分はガラスの屈折率、分散を高める効果があり、必須に含有する。しかし、その量が少なすぎると所望の効果を得にくくなり、多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは15.5%、より好ましくは16%、さらに好ましくは17%を下限とし、好ましくは30%、より好ましくは25%、さらに好ましくは18%を上限として含有できる。
【0022】
Nb
2O
5成分およびTiO
2成分はガラスの安定性維持、高屈折率付与および着色抑制のために、所定の比にて含有することが好ましい。TiO
2成分の量に比べNb
2O
5の量が多すぎると、アッベ数が大きくなりやすく、要求される高分散性が実現しにくくなる。TiO
2成分の量に比べNb
2O
5の量が少なすぎると、着色が大きくなり透明性が悪くなりやすいので、光学ガラスとして使用することが困難になりやすい。従って、Nb
2O
5成分に対するTiO
2成分の含有量の割合、すなわちTiO
2/Nb
2O
5の値の下限は好ましくは1.2、より好ましくは1.25、さらに好ましくは1.3であり、その上限は好ましくは2.0、より好ましくは1.95、さらに好ましくは1.90である。
【0023】
Na
2O成分はガラスの溶融性を高めるとともに、ガラスを安定化させる効果があり、必須に含有する。しかし、その量が少なすぎると所望の効果が得にくくなり、多すぎると屈折率を低下させすぎ、所望の光学恒数が得にくくなる。従って、好ましくは10%、より好ましくは10.5%、さらに好ましくは11%を下限とし、好ましくは23%、より好ましくは15%、さらに好ましくは13%を上限として含有できる。
【0024】
ZrO
2成分はガラスの化学的耐久性を向上させ、屈折率を高め得る任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が低下しやすくなる。従って好ましくは9%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%を上限として含有する。
【0025】
BaO成分はガラス溶融の際、ガラスの溶融性を促進し、均質なガラスを得る効果がある重要な成分である。しかし、その量が多すぎると耐失透性や化学的耐久性が悪化しやすくなる。従って、好ましくは25%、より好ましくは20%、さらに好ましくは19%を上限として含有できる。また、本成分は必ずしも含有しなくともよいが、上記効果を発揮させるためには、好ましくは2%、より好ましくは10%、さらに好ましくは16%を下限として含有することが好ましい。
【0026】
K
2O成分はNa
2O成分と同様にガラスの溶融性を向上させ、ガラスを安定化させる効果を有する任意成分である。しかし、その量が多すぎると屈折率を低下させ、所望の光学恒数が得にくくなる。従って好ましくは23%、より好ましくは15%、さらに好ましくは13%を上限として含有できる。
【0027】
本発明の光学ガラスにおいては、高屈折率高分散性を維持しつつ、着色性および耐失透性を悪化させないようにするために、Na
2OおよびK
2O成分の合計含有量に対するNb
2O
5およびTiO
2成分の合計含有量の割合、すなわち(TiO
2+Nb
2O
5)/(Na
2O+K
2O)の値を所定の範囲に調整することが好ましい。この範囲内に当該成分を調整することにより、他の物性を損なうことなく、TiO
2およびNb
2O
5成分を比較的多量に含有させることが可能となる。一方、この値が大きすぎると、ガラスの着色が大きく、耐失透性が悪くなりやすい。他方、この値が小さすぎると屈折率が低くなりやすく、所望の光学恒数を有する光学ガラスが得にくくなる。従って好ましくは4.0、より好ましくは3.85、さらに好ましくは3.8を上限とし、好ましくは3.0、より好ましくは3.5、さらに好ましくは3.55を下限として含有する。
【0028】
また、リヒートプレス時の耐失透性はTiO
2およびNb
2O
5成分の合計含有量とNa
2O成分との比に大きく依存する。従って、(TiO
2+Nb
2O
5)/Na
2O比を所定の範囲とすることで、TiO
2、Nb
2O
5成分を大量に含有させても着色しにくく、かつ、リヒートプレス時の耐失透性が特に良好な光学ガラスを製造できる。従って、前記(TiO
2+Nb
2O
5)/Na
2O比の下限は、好ましくは3.50、より好ましくは3.55、さらに好ましくは3.60であり、その上限は3.85、より好ましくは3.83、さらに好ましくは3.80とする。
【0029】
B
2O
3成分はガラスの溶融性を向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると屈折率を低下させ、所望の光学恒数を有数する光学ガラスが得にくくなる。従って好ましくは3%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%を上限として含有する。
【0030】
Al
2O
3成分はガラスの化学的耐久性と耐失透性向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると溶融性や屈折率を低下させやすくなる。従って好ましくは4%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%を上限として含有する。
【0031】
MgO成分はガラスの化学的耐久性を向上させる効果が任意成分であるが、その量が多すぎると溶融時の安定性を低下させやすくなる。従って好ましくは5%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%を上限として含有する。
【0032】
CaOおよびSrO成分は、BaO成分と同様にガラスの溶融性を促進し、均質なガラスを得る効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなる。従ってCaOおよびSrO成分の含有量は、それぞれ好ましくは5%、より好ましくは4%、さらに好ましくは3%を上限とし、両成分の合計量も好ましくは5%、より好ましくは4%、さらに好ましくは3%を上限として含有できる。
【0033】
ZnO成分はガラスの化学的耐久性を向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると溶融時の安定性を低下させやすくなる。従って好ましくは5%、より好ましくは2%、さらに好ましくは1%を上限として含有する。
【0034】
Li
2O成分はガラスの溶融性を向上させる効果がある任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの安定性を低下させやすくなる。従って好ましくは5%、より好ましくは3%、さらに好ましくは1%を上限として含有する。
【0035】
Ta
2O
5成分は屈折率を高める効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなり、ガラスを安定して作製することが困難になりやすくなる。従って好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは2%を上限として含有する。
【0036】
WO
3成分は屈折率を高める効果がある任意成分であるが、その量が多すぎると耐失透性が悪化しやすくなり、ガラスを安定して作製することが困難になりやすくなる。従って好ましくは10%、より好ましくは5%、さらに好ましくは2%を上限として含有する。
【0037】
また、Sb
2O
3に加えて、清澄剤としてSnOおよび/またはSnO
2成分をさらに含有させてもよい。SnOおよびSnO
2成分の合計含有率は、外割りで、好ましくは1%、より好ましくは0.5%さらに好ましくは0.3%を上限として含有する。
【0038】
鉛化合物は、精密プレス成形時に金型と融着しやすい成分であるという問題並びにガラスの製造のみならず、研磨等のガラスの冷間加工およびガラスの廃棄に至るまで、環境対策上の措置が必要となり、環境負荷が大きい成分であるという問題があるため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
【0039】
F成分は、溶融ガラスからガラス塊を作る際に脈理を発生しやすくするため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
【0040】
As
2O
3、カドミウムおよびトリウム成分は、共に、環境に有害な影響を与え、環境負荷の非常に大きい成分であるため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
【0041】
さらに本発明の光学ガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Eu、Nd、Sm、Tb、Dy、Er等の着色成分は、含有しないことが好ましい。ただし、ここでいう含有しないとは、不純物として混入される場合を除き、人為的に含有させないことを意味する。
【0042】
次に、本発明の光学ガラスの物性について説明する。
【0043】
本発明の光学ガラスは高屈折率高分散特性を備える。
屈折率は1.83以上、より好ましくは1.84以上、さらに好ましくは1.845以上である。
アッベ数は26以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは24以下である。
【0044】
本発明の光学ガラスは、その成形品をレンズ等の光学素子として使用するものであるため、光線透過率が高く、着色性が改善されたものであることが好ましい。
【0045】
具体的には、日本光学硝子工業規格JOGIS02−
2003に規定される光学ガラスの着色度の測定方法に基づき、その反射損失を含む分光透過率曲線を作成して測定したときに、分光透過率70%を示す波長(λ
70)が450nm以下であることが好ましく、430nm以下であることがより好ましく、410nm以下であることがより好ましく、405nm以下であることがさらに好ましい。
【0046】
また、同様の方法で測定した分光透過率5%を示す波長(λ
5)が400nm以下であることが好ましく、390nm以下であることがより好ましく、380nm以下であることがより好ましく、370nm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の光学ガラスは、それに含まれる泡の量が安定して極めて少ない。
【0048】
具体的には、日本光学硝子工業規格JOGIS12−
1994に規定される光学ガラスの泡の測定方法によって測定したときに、100mlのガラス中における泡の断面積の総和が0.03mm
2以下となる。
なお、この規格の表1には、100mlのガラス中の泡の断面積の総和(mm
2)によって、泡の断面積の総和が0.03mm
2未満の場合は級1、0.03〜0.1mm
2未満の場合は級2、0.1〜0.25mm
2未満の場合は級3、0.25〜0.5mm
2未満の場合は級4、0.5mm
2以上の場合は級5と規定されている。
したがって、本発明の光学ガラスは、日本光学硝子工業規格JOGIS12−
1994に規定される光学ガラスの泡の測定方法によって測定したときに、級1に該当する光学ガラスであることが好ましい。
【0049】
本発明の光学ガラスは、耐失透性、特にリヒートプレス時の耐失透性に優れていることが好ましい。耐失透性の評価は、SiO
2−TiO
2系高屈折率高分散光学ガラスにおいて一般的に使用されている成形温度、具体的には800℃で10分間保持することにより、リヒートプレス時の熱履歴を再現し、その際に生じる単位体積あたりの失透箇所の個数で評価する。当該試験における失透箇所の個数と、実際のリヒートプレス工程における失透傾向とは、一定の相関関係があることが経験的に知られている。
【0050】
また、上記検査によりカウントされる失透箇所の大きさは、その径が20〜100μmのものに限ることとし、100μmを超える径を有する失透箇所は一箇所でも存在していれば本発明の光学ガラスからは除く(不合格とする)ものとする。ここで下限を20μmとしたのは、20μmを下回るような小さな失透箇所があっても光学ガラスとしては、実用上、特段の不利益が生じないからであり、上限を100μmとしたのは、径が100μmを超えるような失透箇所が存在すると、光線透過性が著しく減少し、光学ガラスとして使用するのが困難になるからである。従って、その径が20〜100μmの範囲内の失透箇所を好ましくは、1cm
3のガラス試料中に15個以下、より好ましくは12個以下、さらに好ましくは10個以下含有され、径が100μmを超えるような失透箇所が存在しないことが好ましい。
ここで、失透箇所の「径」とは、ガラス試料を観察した際に当該失透下箇所を略楕円形と見た場合の最大径を意味する。また失透箇所の形状が楕円と大きく異なる場合は、当該形状を含むことができる円のうちさらに小さいものの直径を、失透箇所の径と仮定することとする。
【0051】
本発明の光学ガラスの製造方法について説明する。
本発明の光学ガラスの製造方法は特に限定されないものの、次に説明する2つの製造方法(製造方法1、製造方法2とする)のいずれかによって製造することが好ましい。
【0052】
製造方法1について説明する。
製造方法1では、初めにカレット製造装置を用いてカレットを製造する。
カレット製造装置は、粉体のガラス原料を装入する石英ポットが、加熱炉の内部に配置されており、加熱炉の温度を調整することで、石英ポット内のガラス原料を溶解することができる。また、石英ポットの底部から、下方に配置された水槽まで、冷却パイプが延びていて、石英ポットの内部において溶解された溶融ガラスが冷却パイプ内を通過しながら徐々に冷却され、固体となった粉状のカレットが、冷却パイプの下方端部から排出されるように構成されている。
【0053】
このようなカレット製造装置において、本発明の光学ガラスが得られるように配合したガラス原料を石英ポットに装入し、例えば加熱炉における内部を1250〜1350℃に調整してガラス原料を溶解し、冷却パイプを通過させ、水槽内に、例えば1〜2mm程度の大きさの粉状のカレットを得ることができる。
水槽内のカレットは、例えば従来公知の電気乾燥炉を用いて乾燥して、次工程において用いることができる。
【0054】
製造方法1では、上記のような方法によってカレットを得た後、ガラス成形装置を用いて、得られたカレットを再溶解し、板状のガラスを成形する。
【0055】
ガラス成形装置は連続溶解炉を示している。ガラス成形装置は、原料投入部、溶融部、清澄部、撹拌部を含む構成である。原料投入部から溶融部にカレットが投入されて溶融ガラスとなり、清澄部で脱泡され、撹拌部で脱泡および均質化されて、撹拌部から出た流出パイプを通じて流出する。流出したガラスは板状に成形される。
【0056】
このようなガラス成形装置において、粉状のカレットを原料投入部から溶融部へ装入する。溶融部は、例えば白金製の槽が電気炉内に配置された構成であり、電気炉内を1290±20℃程度に調整することで溶融ガラスを得ることができる。清澄部では溶融ガラスの温度が1250〜1350℃程度となるように調整することが好ましい。また、撹拌部では溶融ガラスの温度が1100〜1200℃程度となるように調整することが好ましい。また、流出パイプから排出されたガラスの温度が1210℃程度となるように調整することが好ましい。さらに、板状に成形されたガラスの引上量は750〜950kg/日とすることが好ましい。
【0057】
本発明の光学ガラスは、このような製造方法1によって製造することが好ましい。
【0058】
次に、製造方法2について説明する。
製造方法2では、初めに、従来公知の方法によってカレットを製造する。具体的には、例えば、白金製の溶融設備で粉状のガラス原料を溶融した後、得られた溶融ガラスを公知の方法によって急冷し、必要に応じて粉砕してカレットを作成する。
次に、製造方法1の場合と同様に、ガラス成形装置(連続溶解炉)を用いて、得られたカレットを再溶解し、板状のガラスを成形する。
【0059】
本発明の光学ガラスは、このような製造方法2によって製造することが好ましい。
【実施例】
【0060】
本発明について実施例を用いて説明する。本発明は以下に説明する実施例に限定されない。
【0061】
<実施例1>
Sb
2O
3含有率が0.002%(外割り)となるようにガラス原料を調整し、前述の製造方法1によって板ガラスを製造して、着色度、泡の量、耐失透性の評価を行った。
着色度の評価は、前述の日本光学硝子工業規格JOGIS02−
2003に規定される方法で行った。
泡の量の評価は、前述の日本光学硝子工業規格JOGIS12−
1994に規定される光学ガラスの泡の測定方法によって測定して行った。
耐失透性の評価は、前述のように、800℃で10分間保持することにより、リヒートプレス時の熱履歴を再現し、その際に生じる失透箇所の有無を概観にて評価した。失透箇所が認められない場合には○とし、認められた場合には×とした。
結果を第1表に示す。
【0062】
なお、得られた板ガラスの組成(酸化物基準)は、次の通りであった。
SiO
2:24.7%
TiO
2:27.4%
Nb
2O
5:17.6%
Na
2O:12.0%
ZrO
2:0.9%
BaO:17.4%
Sb
2O
3:0.002%(外割り)
【0063】
<実施例2>
Sb
2O
3含有率が0.004%(外割り)となるようにガラス原料を調整し、その他については実施例1と同じ方法で板ガラスを製造して、実施例1と同じ方法で着色度、泡の量、耐失透性の評価を行った。得られた板ガラスの組成(酸化物基準)も、Sb
2O
3以外は実施例1と同じであり、Sb
2O
3含有率は0.004%(外割り)であった。
結果を第1表に示す。
【0064】
<比較例1>
Sb
2O
3含有率が0%(外割り)となるようにガラス原料を調整し、その他については実施例1と同じ方法で板ガラスを製造して、実施例1と同じ方法で着色度、泡の量、耐失透性の評価を行った。得られた板ガラスの組成(酸化物基準)も、Sb
2O
3以外は、実施例1は同じであった。
結果を第1表に示す。
【0065】
<比較例2>
Sb
2O
3含有率が0.01%(外割り)となるようにガラス原料を調整し、前述の製造方法2によって板ガラスを製造した。そして、実施例1と同じ方法で着色度、泡の量、耐失透性の評価を行った。得られた板ガラスの組成(酸化物基準)も、Sb
2O
3以外は実施例1と同じであり、Sb
2O
3含有率は0.01%(外割り)であった。
結果を第1表に示す。
【0066】
<比較例3>
Sb
2O
3含有率が0.02%(外割り)となるようにガラス原料を調整し、その他については実施例1と同じ方法で板ガラスを製造して、実施例1と同じ方法で着色度、泡の量、耐失透性の評価を行った。得られた板ガラスの組成(酸化物基準)も、Sb
2O
3以外は実施例1と同じであり、Sb
2O
3含有率は0.02%(外割り)であった。
結果を第1表に示す。
【0067】
<比較例4>
Sb
2O
3含有率が0.02%(外割り)となるようにガラス原料を調整し、前述の製造方法2によって板ガラスを製造した。そして、実施例1と同じ方法で着色度、泡の量、耐失透性の評価を行った。得られた板ガラスの組成(酸化物基準)も、Sb
2O
3以外は実施例1と同じであり、Sb
2O
3含有率は0.02%(外割り)であった。
結果を第1表に示す。
【0068】
【表1】