(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、建築工事現場においては、建築物の周囲を仮設の囲いで覆い、工事に伴う埃等の飛散や、工事の騒音が外部に漏れることを抑えている。このような仮設の囲いにおいて、工事用の専用車両が出入りする出入り口は一般には開口幅が広いので、その出入り口を開閉するための門扉も幅広の形態のものが用いられており、埃の飛散や騒音の漏れも防ぐために複数の板状の扉体を幅方向に湾曲可能に連結された、いわゆる折り戸タイプの門扉が多く用いられている。
【0003】
このような折り戸タイプの門扉においては、扉体と地面との間に隙間が生じることがあり、この隙間から埃の飛散や騒音の漏れが生じるおそれがあり、加えて、犬・猫等がその隙間から進入することも考えられる。
【0004】
このような門扉において、地面との間に生じる隙間を防ぐために、例えば、特許文献1には、扉体の両側より支持アームを突設し、相対向するように立設した支柱の上端に支持アームの端部を各々回転自在に取り付け、扉体が縦方向を向くように回転操作した状態で閉塞されると共に扉体が横方向を向くように回転操作した状態で開放されるガレージ扉であって、扉体の下端に隙間防止片を上下方向スライド自在に垂設せしめてなるガレージ扉が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のガレージ扉においては、明細書において「隙間防止片4の下端縁にはクッション材13が設けられているので、該クッション材13でなる隙間防止片4の下端は地面に緩衝的に当止するものである」ことが記載されており、これにより扉体と地面との間の隙間を塞ぎやすくなるが、特許文献1のような上下方向にスライドするものばかりでなく、折り戸タイプ門扉ように、横方向に移動する扉体に対しては、隙間防止片や、これに更にクッション材を設けた形態では、地面と接触した状態で横方向に移動することになるので、隙間を塞ぎつつ、耐久性にも優れた門扉が求められていた。
【0007】
本発明は、折り戸タイプの門扉のような横方向に移動するに対しても、門扉と地面との間の隙間を塞ぎつつ、耐久性にも優れた門扉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る門扉は、複数の扉体が幅方向に沿って連結され
、前記扉体は、地面との間の隙間を塞ぐ隙間塞ぎ材を備え、前記隙間塞ぎ材は、前記扉体に固定された固定部材と押さえ部材とによって挟持される被挟持部と、前記被挟持部の下方であって奥行き方向のいずれの面にも前記固定部材及び押さえ部材が配置されていない自由端部と、前記被挟持部と自由端部との間であって奥行き方向のいずれか一方の面にのみ固定部材又は押さえ部材が配置されている中間部とを備え
た門扉であって、前記扉体は、縦枠と横枠とからなる矩形状の枠体を有し、下方の横枠の背面側には、前方に向けて凹んだ凹溝が該横枠の長手方向に沿って形成されており、前記固定部材は、前記扉体の前方に向けて突出する突出部を有し、前記突出部は、前記凹溝内に挿入されて、固定具を介して該凹溝の底部に固定されるとともに、前記凹溝の上側壁部の端部の前後方向の位置は、前記固定具の頭部の前後方向の位置よりも後方に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隙間塞ぎ材は地面に接触すると、扉体の奥行き方向のいずれかに湾曲した状態で地面と接することとなるところ、隙間塞ぎ材に中間部を形成することによって湾曲する際の支軸となる高さ位置が奥行き方向の両面において異なるので、湾曲した際に隙間塞ぎ材に生じる負荷が上下方向に分散されて、隙間塞ぎ材が地面に接して湾曲する状態が繰り返しなされても破断しにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る門扉Pにおいて実施の一形態を示す正面図である。1は扉体1、2は扉体1と地面との間の隙間Sを塞ぐ隙間塞ぎ材2である。
【0013】
本形態に係る門扉Pは、所定の間隔をあけて立設された一対の門柱3と、前記門柱3間に取付けられた梁31と、前記梁31に吊り下げされて梁31の長手方向に移動可能となされた縦桟32と、前記縦桟32に取付けられた扉体1と、前記扉体1の下端部に取付けられた隙間塞ぎ材2とを備えている。これにより、扉体1は縦桟32によって梁31に吊り下げられた状態で梁31の長さ方向に沿って移動可能となされている。
【0014】
図2は
図1の扉体の正面図、
図3は
図2のA−A断面の主要部の拡大図、
図4は
図2のB−B断面の主要部の拡大図である。扉体1は、本形態では、矩形状の枠体11の内側に板部材12が取付けられている。すなわち、板部材12の外周縁部に沿って枠体11が配置されて扉体1が形成されている。なお、本形態では、扉体1の中段部に支持材が取付けられている。
【0015】
枠体11は、本形態では、上下一対の横枠14と左右一対の縦枠13とによって矩形状に形成されており、該枠体11の内壁部には、その長手方向に沿って連続して開口する溝部が設けられている。すなわち、
図3、
図4に示すように、縦枠13、横枠14のそれぞれの内壁部には、溝部15、溝部16が設けられており、前記溝部15、溝部16に板部材12の周縁部が挿入されることによって、板部材12が枠体11により固定される。
【0016】
板部材12は、本形態では、合成樹脂性のシート状の芯材の両面に金属板が貼着されて金属板、芯材、金属板の順に積層された形態であって、軽量で遮音性能に優れたものとなり好ましい。芯材の厚さは、成型性、強度、取り扱い性等を考慮すると1〜10mmが好ましく、更には1〜3mmが更に好ましい。また金属板の厚さは、重量、加工性、取り扱い等を考慮すると0.05〜1mmが好ましい。
【0017】
板部材12は、本形態に限られるものではなく、合成樹脂製の板材のみから形成されるものでもよく、金属板のみでもよく、要は、敷地内で発生する埃等が敷地外に飛散しにくく、また発生する騒音が敷地側に漏れにくいものであればよい。
【0018】
図5、
図6は、
図1の門扉の可動状態を示す説明図である。扉体1は、本形態では、縦枠13に取付けられたヒンジ部材17を介して縦方向に支軸されて折り畳み可能に連結されている。そして、
図5のように隣接する扉体1同士がヒンジ部材17を軸にして拡げられた状態と、隣接する扉体1同士が折り畳まれた状態との間で変形可能となされている。なお、ヒンジ部材17は、同じ形態のものを用いてもよく、敷地外側からの意匠性等を考慮して折り畳み方向に応じて異なる形態のものを用いてもよく、要は該ヒンジ部材17によって連結された扉体17同士がスムーズに折り畳み、またはそれを拡げることができればよい。
【0019】
隙間塞ぎ材2は、本形態では、奥行き方向に薄い板状に形成されており、地面に接触した際に奥行き方向のいずれか一方に湾曲する可撓性を有する材料を用いることが好ましく、一般には、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等を好適に用いることができる。
【0020】
次に、扉体1の下部と隙間塞ぎ材2との関係について、
図7〜
図9を用いて詳しく説明する。
図7は
図2のC−C断面の主要部の拡大図である。隙間塞ぎ材2は、扉体1に固定された固定部材4と、該固定部材4と一対で配置される押さえ部材5とによって挟持されており、これにより、扉体1の下方に固定される。
【0021】
固定部材4は、本形態では、扉体1の下方の枠体11の下端面に固定される固定部41と、前記固定部41から垂下された受け部42とを備え、固定部41と受け部42とがそれぞれ扉体1の幅方向に沿って連続して形成された等断面状であって側面視逆L字状に形成されている。また押さえ部材5は、本形態では、扉体1の幅方向に沿って連続して形成された等断面状の板材である。
【0022】
固定部41は、本形態では、前記横枠14の下端面に対して、垂直方向に螺着させたビス43を介して固定されており、門扉Pの開閉に伴って隙間塞ぎ材2が受ける扉体1の厚さ方向の荷重とは直交する方向となるので、前記ビス43が緩みにくくなって好ましいが、扉体1にしっかり固定することができれば、前記横枠14の前面側に固定される形態でもよく、前記横枠14の背面側に固定される形態でもよい。
【0023】
受け部42は、本形態では、隙間塞ぎ材2を挟持する面は平坦に形成されているが、押さえ部材5との間で隙間塞ぎ材2をより強固に挟持するために、受け面の長手方向に沿って複数の溝部が形成された側面視鋸歯状に形成してもよく、また受け面の一部又は全部に凹部と凸部を付与したエンボス加工を施してもよい。同様に押さえ部材5においても、隙間塞ぎ材2を挟持するための面は前記のような加工を施してもよい。
【0024】
また固定部材4及び押さえ部材5は、いずれも一個の扉体1に一個の固定部材4が固定され、一個の固定部材4と一個の押さえ部材5との間に隙間塞ぎ材2が挟持されたものであり、更に具体的には、固定部材4、隙間塞ぎ材2、押さえ部材5とを貫通するリベット51によって締結されたものであるが、例えば、固定部材4が複数個からなり、押さえ部材5が複数個からなり、又は固定部材4及び押さえ部材5いずれも複数個からなり、扉体1の幅方向に沿って断続して配置されたものでもよい。また固定部材と押さえ部材とが一体に形成された形態でもよい。更に、本形態では、固定部材4が扉体1に固定された形態であるが、固定部材4と押さえ部材5とが扉体1に固定された形態でもよい。
【0025】
隙間塞ぎ材2は、前後を固定部材4の受け部42と押さえ部材5とによって挟持された被挟持部21と、該隙間塞ぎ材2のいずれの面にも受け部42及び押さえ部材5が配置されていない自由端部22と、被挟持部21と自由端部22との間であって、隙間塞ぎ材2のいずれかの面に受け部42又は押さえ部材5が配置されている中間部23とを備えている。
【0026】
扉体1の下端に配置された隙間塞ぎ材2は、地面と接触するに際して、
図8に示すように下端部が押さえ部材5側に湾曲して地面に接触するか、
図9に示すように固定部材4の受け部42側に湾曲して地面に接触する。この隙間塞ぎ材2の湾曲は、門扉Pの開閉作業において開く作業から閉じる作業に変更した際、あるいは逆の作業の際には、隙間塞ぎ材2の下端部が、押さえ部材5側への湾曲から受け部42側への湾曲が生じたり、または逆の湾曲が生じたりする。
【0027】
図8に示す隙間塞ぎ材2が押さえ部材5側に湾曲する場合は、押さえ部材5の下端52を支軸として湾曲する。一方、
図9に示す受け部42側に湾曲する場合は、受け部42の下端44を支軸として湾曲する。
【0028】
隙間塞ぎ材2が湾曲する際、押さえ部材5の下端52又は受け部42の下端44と接している箇所付近は、伸縮が繰り返し生じやすく負荷がかかりやすい。しかし、隙間塞ぎ材2にかかる負荷の高さ位置は、押さえ部材5側と受け部42側で異なっているため、前記負荷が上下方向に分散されることとなり、隙間塞ぎ材2に生じる破断等の不具合が生じにくくなる。したがって、隙間塞ぎ材2が、押さえ部材5側への湾曲から受け部42側への湾曲が生じたり、または逆の湾曲が生じたりしても、湾曲によって生じる負荷が上下方向に分散されるため、破断等の不具合が生じにくくなる。
【0029】
押さえ部材5の下端52と受け部42の下端44との水平方向の高さ位置の違いが大きいほど、隙間塞ぎ材2の押さえ部材5側に生じた負荷と受け部42側に生じた負荷とが高さ方向に分散されることとなって好ましいが、高さ位置の違いは、隙間塞ぎ材2の厚さ寸法より大きい方が好ましく、本形態では、隙間塞ぎ材2の奥行き方向の厚さは2mm、前記高さ位置の違いは10mmであって約5倍となっている。
【0030】
また、本形態では、隙間塞ぎ材2が受け部42側に湾曲する場合、中間部23において受け部42から離れる方向に側面視弓形状に変形するため、受け部42の下端44を支軸として湾曲する場合に、その湾曲度合いが抑えられて、受け部42の下端44と接している箇所付近での伸縮度合いが緩和される。
【0031】
本形態では、押さえ部材5の下端部の方が、固定部材4の受け部42の下端44よりも上方に位置しているが、その逆で、押さえ部材5の下端52の方が、下方に位置してもよい。また、押さえ部材5の下端52と受け部42の下端44は、横方向には直線上に形成されているのが好ましい。
【0032】
図10〜13は、本発明の他の実施形態を示すものであって、
図10は扉体の背面図、
図11は
図10のD−D断面における拡大断面図、
図12は
図11の横枠付近の拡大図、
図13は
図10のE−E断面における主要部の拡大断面図である。本形態に係る扉体1は、
図1〜9に示された扉体1と比べて、主に固定部材4の形態と、固定部材4が固定される扉体1の下部の横枠14の形態とが異なるものである。なお、既に説明した内容と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
本形態に係る固定部材4は、横枠14の背面に取付けられている。具体的には、固定部材4の固定部41は、固定部材4の受け部42よりも扉体1の前方に向けて突出する突出部41aを有している。一方、横枠14の背面側には、前方に向けて凹んだ凹溝6が横枠14の長手方向に沿って連続して形成されている。そして、前記突出部41aを凹溝6内に挿入し、固定具7を介して凹溝6の底部61に固定することにより、固定部材4が横枠14の背面に取付けられる。
【0034】
本形態では、
図12に示すように、凹溝6内に挿入される突出部41aの上下方向の幅Y1は、凹溝6の上側壁部62と下側壁部63との間隔Y2と比べて、略等しい幅か、僅かに短い幅となされている。これにより、突出部41aは、凹溝6内に挿入された後は、上側壁部62と下側壁部63とにより上下方向の移動が抑制されるので、左右方向の位置調整のみによって、突出部41aと底部61との位置合わせが可能となり、固定具7を介した横枠14に対する突出部41aの固定作業が容易になる。なお、本形態では、突出部41aと受け部42との間に段部41bが形成されており、この段部41bを凹溝6の下側壁部63に当接させて固定作業をしてもよい。
【0035】
また、本形態では、凹溝6の上側壁部62の端部の前後方向の位置Y3は、固定具7の頭部71の前後方向の位置Y4よりも後方に位置している。これにより、固定部材4を横枠14に取付けた後は、固定具7の頭部71に作業着等が引っ掛かる様な不具合が生じにくく、また作業者等から頭部71が上側壁部62の影になって見えにくくなり、外観上も好ましい。
【0036】
更に本形態では、
図12,13に示すように、横枠14の両側端部には縦枠13がそれぞれ位置しており、縦枠13は、横枠14の凹溝6の底部61より扉体1の背面側に位置する背側面部13aを有しており、突出部41aの左右の幅X1は、左右の縦枠13の背側面部13a間の間隔X2と比べて、略等しい幅か、僅かに短い幅となされている。これにより、突出部41aは、横枠14の凹溝6内に挿入された後は、左右の背側面部13aによって左右方向の移動が抑制されるので、上下方向の位置調整のみによって、突出部41aと底部61との位置合わせが容易となり、固定具7を介した横枠14に対する突出部41aの固定作業が容易になる。更に、前記幅Y1と間隔Y2との関係と相まって、上下方向、左右方向の位置調整をしなくても、固定具7を介した横枠14に対する突出部41aの固定作業が容易になる。
【0037】
なお、本形態に係る扉体1は、敷地の外側から突出部41aが目立たないように、扉体1の背面を敷地の内側に面するように配置させたものであるが、逆に、敷地の外側に面するように配置したものでもよい。
【0038】
本発明に係る門扉Pは、複数の扉体1が幅方向に沿って連結された門扉Pであって、前記扉体1は、地面との間の隙間Sを塞ぐ隙間塞ぎ材2を備え、前記隙間塞ぎ材2は、前記扉体1に固定された固定部材4と押さえ部材5とによって挟持される被挟持部21と、前記被挟持部21の下方であって奥行き方向のいずれの面にも前記固定部材4及び押さえ部材5が配置されていない自由端部22と、前記被挟持部21と自由端部22との間であって奥行き方向のいずれか一方の面にのみ固定部材4又は押さえ部材5が配置されている中間部23とを備えているので、隙間塞ぎ材2が地面に接して湾曲する状態が繰り返しなされても破断等の不具合が生じにくくなる。