特許第6606368号(P6606368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6606368熱源電源機器の運転計画演算方法及び運転計画演算サーバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606368
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】熱源電源機器の運転計画演算方法及び運転計画演算サーバー
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20191031BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   H02J3/00 170
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-141835(P2015-141835)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-27120(P2017-27120A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小柳 秀光
【審査官】 衣川 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−155286(JP,A)
【文献】 特開2012−195988(JP,A)
【文献】 特開2012−231568(JP,A)
【文献】 特開2015−119575(JP,A)
【文献】 飯野 穣,スマートグリッドのモデル化とシミュレーション,スマートグリッド,日本,株式会社大河出版,2013年10月15日,第3巻,第4号,p.15-19,ISSN:2185-9604
【文献】 島岡 厚一,スマートグリッド実証実験報告,スマートグリッド,日本,株式会社大河出版,2014年 4月15日,第4巻,第2号,p.13-18,ISSN:2185-9604
【文献】 末吉 義雄,マイクロコジェネレーションシステム“マイクロエコターボMTG−28”の応用システム,三菱電機技報,日本,三菱電機エンジニアリング株式会社,2001年 9月25日,第75巻,第9号,p.17-20,ISSN:0369-2302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンドレスポンス要請を受信し、前記デマンドレスポンス要請に基づいて、管理対象となる複数の熱源電源機器の運転計画を演算する、熱源電源機器の運転計画演算システムであって、
前記デマンドレスポンス要請の指定時間における電力負荷及び/または熱負荷を予測する予測値演算部と、
エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の前記基本性能パラメータを使用して、前記予測された電力負荷及び/または熱負荷を充足するように、前記複数の熱源電源機器の各々の、前記指定時間における運転計画を演算する運転計画演算部と、
備え、
前記目的パラメータは、テーブルに格納されており、
前記基本性能パラメータは、前記各熱源電源機器の、定格出力、エネルギー消費効率、及び、立上り時間を含み、
前記基本性能パラメータは、前記目的パラメータと、前記運転計画の演算に使用される、熱源電源機器の運転計画演算システム
【請求項2】
前記目的パラメータは、前記熱源電源機器の単位出力あたりの光熱費、単位出力あたりのCO排出量、またはピークカット量の少なくとも1つを含み、
前記運転計画は、前記指定時間の光熱費またはCO排出量の少なくとも1つを低減する、または、ピークカット量を増加するように演算される、請求項1に記載の運転計画演算システム
【請求項3】
前記エネルギーは、電気、ガス、灯油、またはA重油の少なくとも1つを含み、
前記エネルギーに関するパラメータは、前記エネルギーの、単価、CO排出係数、及び、一次エネルギー量を含む、請求項1または2に記載の運転計画演算システム
【請求項4】
デマンドレスポンス要請を受信し、前記デマンドレスポンス要請に基づいて、管理対象となる複数の熱源電源機器の運転計画を演算する、熱源電源機器の運転計画演算サーバーであって、
前記デマンドレスポンス要請の指定時間における電力負荷及び/または熱負荷を予測する、予測値演算部と、
エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の前記基本性能パラメータを使用して、前記予測された電力負荷及び/または熱負荷を充足するように、前記複数の熱源電源機器の各々の、前記指定時間における運転計画を演算する、運転計画演算部と、
を含み、
前記目的パラメータは、テーブルに格納されており、
前記基本性能パラメータは、前記各熱源電源機器の、定格出力、エネルギー消費効率、及び、立上り時間を含み、
前記基本性能パラメータは、前記目的パラメータと、前記運転計画の演算に使用される、熱源電源機器の運転計画演算サーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源電源機器の運転計画演算方法及び運転計画演算サーバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需要の逼迫を受けて、電力会社をはじめとする地域エネルギー管理者から、需要家、例えば、構造建築物、あるいは、工場などの施設の、エネルギー管理者に対して、エネルギーの消費を抑制するように働きかける、いわゆるデマンドレスポンス要請が、導入されつつある。
【0003】
多くの構造建築物や施設には、構造建築物や施設内で消費する電力や熱を生成するための、熱源電源機器が設置されている。熱源電源機器の例として、蓄電池や太陽光による発電機、コジェネレーションシステムなどが挙げられる。このような熱源電源機器は、運転計画演算システムによって制御されている。運転計画演算システムは、地域エネルギー管理者などからの、デマンドレスポンスの対象となる指定時間やインセンティブ単価などの情報を含んだデマンドレスポンス要請を受信し、受信したデマンドレスポンス要請に基づいて各熱源電源機器の運転計画を演算により立案し、立案した運転計画に従って、各熱源電源機器を制御している。これにより、エネルギー消費抑制の要請に応えながら、光熱費の低減を図っている。
【0004】
図9に、従来の運転計画演算システム100の例を示す。運転計画演算システム100は、デマンドレスポンス要請や気象予報に関する情報を提供する外部サーバー105に接続されている。運転計画演算システム100は、運転計画演算サーバー101、ローカルコントロールサーバー102、実績データ保存サーバー103、及び、これらのサーバー間を接続する、BACnetなどのネットワーク104を備えている。
【0005】
運転計画演算サーバー101は、ネットワーク104経由で、デマンドレスポンス要請や気象予報に関する情報を、外部サーバー105から受信し、熱源電源機器の運転計画を演算して、立案する。ローカルコントロールサーバー102は、各熱源電源機器へ演算された運転計画を送信し、各熱源電源機器を制御する。実績データ保存サーバー103は、各熱源電源機器の稼働履歴などの実績データを保存する。
【0006】
運転計画演算サーバー101は、予測値演算部106、運転計画演算部107、チェック・修正部108、予測値演算パラメータ格納部109、及び、運転計画演算パラメータ格納部110を備えている。予測値演算部106は、デマンドレスポンス要請の指定時間における、電力負荷及び/または熱負荷、すなわち、電力や熱の使用量を予測する。運転計画演算部107は、限界コスト法や、分枝限定法などの最適化手法によって、運転計画を演算する。チェック・修正部108は、演算された運転計画をディスプレイなどに表示し、構造建築物や施設の運転計画演算システム管理者が、表示された運転計画をチェック、修正する。
【0007】
予測値演算パラメータ格納部109には、予測値演算部106が、例えば、ニューラルネットワークによる予測を行う場合には、ニューラルネットワークの重み係数などが格納されている。運転計画演算パラメータ格納部110には、最新の電力・ガス単価、電力・ガスCO原単位、及び、各熱源電源機器のエネルギー消費効率などが、格納されている。
【0008】
図10に、従来の運転計画演算システム100における処理の流れを示す。デマンドレスポンス要請を受信していない、定常的な状態においては、予測値演算パラメータ格納部109、及び、運転計画演算パラメータ格納部110に格納されている各パラメータが、分析、更新される(ステップS120〜S122)。
【0009】
外部サーバー105によりデマンドレスポンス要請が発行されると(ステップS123)、デマンドレスポンス要請は、ネットワーク104を経由して、運転計画演算サーバー101により受信される。運転計画演算サーバー101の予測値演算部106は、外部サーバー105から気象予報を、予測値演算パラメータ格納部109から予測値演算パラメータを、それぞれ取得して(ステップS124、125)、デマンドレスポンス要請の指定時間における、電力負荷及び/または熱負荷を予測する(ステップS126)。
【0010】
運転計画演算サーバー101の運転計画演算部107は、運転計画演算パラメータ格納部110から運転計画演算パラメータを取得して(ステップS127)、予測値演算部106による予測結果と、デマンドレスポンス要請の、インセンティブ単価等の条件を基に運転計画を演算し(ステップS128)、一定時間ごとにどの熱源電源機器を稼働するか、その出力量をどの程度にするか、等を決定する。運転計画は、一日の光熱費やCO排出量削減を目標に、限界コスト法や、分枝限定法などの最適化手法によって演算される。
【0011】
担当者が、演算された運転計画をチェック、修正(ステップS129)した後、運転計画演算サーバー101は、ローカルコントロールサーバー102に、運転計画を送信する。ローカルコントロールサーバー102は、デマンドレスポンス要請の指定時間に、演算された運転計画に従って、熱源電源機器を稼働させる(ステップS130)。稼働実績は、実績データ保存サーバー103に保存される。
【0012】
特許文献1には、このような、運転計画を最適化手法によって演算する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2014− 96946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような従来手法においては、運転計画の演算を最適化手法によって行っているため、運転計画の演算に多くの時間を要する。構造建築物や施設の有する熱源電源機器の数は、多くなると20個程度にもなり、一回の演算に、例えば30分程度の、時間が必要となる場合もある。
【0015】
また、最適化手法を用いた運転計画の演算においては、最適化演算に使用するアルゴリズムや制約条件の精度などにより、演算結果となる運転計画に問題がある場合がある。しかし、例えば構造建築物が医療施設である場合、運転計画の問題による電力不足は人命にかかわる恐れがある。また、構造建築物が一般のオフィスビルである場合でも、住人は寒暖の差に敏感であり、室内環境は原則として変えてはならないものである。したがって、上記のような従来手法においては、演算結果をそのまま使用するのが難しい場合があるため、管理者による演算結果のチェックが必須である。更に、最適化手法の制約条件に反映することが難しいパラメータがある場合には、当該パラメータを運転計画に反映させるために、運転計画演算部107の演算した運転計画を、管理者が人手で修正しなければならない。
【0016】
このように、従来手法においては、運転計画の演算自体に、及び、演算された演算計画のチェック、修正に、多くの時間を必要とする。したがって、デマンドレスポンス要請を受信したが、デマンドレスポンス要請の指定時間が、デマンドレスポンス受信時間の直前であるような場合、デマンドレスポンス要請に十分に対応することが難しい。
【0017】
図11は、この様子を例示したグラフである。図11において、参照番号140は、ある一日の、電力負荷、熱負荷の予測値の、時間による推移を示す。このとき、13:00から16:00までの時間141を指定時間としたデマンドレスポンス要請を、指定時間141の15分前、すなわち12:45に受信し、光熱費の最小化を目標に、光熱費が小さい順に熱源電源機器を稼働させる計画を立案する場合を考える。
【0018】
運転計画演算サーバー101は、各熱源電源機器の出力が、13:00から16:00までの予測値であるTkWh/hを満たすように、熱源電源機器の運転計画を立案する。この運転計画の演算、及び、演算された演算計画のチェック、修正に時間がかかると、デマンドレスポンス要請の指定時間141の開始時、すなわち13:00に、運転計画の立案が間に合わず、したがって、運転計画を計画通りに実行することができない。例えば、3つの熱源電源機器の、それぞれの実際の稼働時間を、参照番号142、143、144で表される時間帯とすると、これらの熱源電源機器の稼働開始は指定時間141の開始時間に間に合っていない。結果として、これらの熱源電源機器が全て稼働し、デマンドレスポンス要請に対応できた対応時間145は、指定時間141の開始時間よりも後にずれこんでいる。すなわち、図11のような場合においては、デマンドレスポンス要請に対して十分な対応ができていない。
【0019】
上記のような従来手法の、他の課題として、各熱源電源機器の立上り時間を考慮できないことが挙げられる。運転計画演算サーバー101が最適化手法により運転計画を演算する際に、その制約条件として各熱源電源機器の立上り時間を使用することは、最適化問題を過度に複雑にするため、演算時間や精度の観点から現実的でない。すなわち、上記のような従来手法においては、最適化手法による演算時には、立上り時間を考慮しないのが一般である。
【0020】
しかし、最適化手法による演算において、立上り時間が考慮されないため、演算された運転計画を熱源電源機器に伝達して起動指示を行っても、その時点で熱源電源機器の立ち上げを開始するため、熱源電源機器の立ち上げが終わり、実際に稼働し始めるまでに時間がかかり、結果として、デマンドレスポンス要請に十分に対応できないことがある。
【0021】
図12は、この様子を例示したグラフである。図12は、13:00から16:00までの時間141を指定時間としたデマンドレスポンス要請を、指定時間141の充分前に受信し、指定時間141の開始前に、運転計画の演算が完了している状態を表している。しかし、運転計画は熱源電源機器の立ち上げ時間を考慮していないため、指定時間141の開始時間である13:00に、各熱源電源機器に運転計画に従った実行を指示したとしても、各熱源電源機器の稼働開始は、13:00から、各熱源電源機器の立上り時間分だけ遅れてしまう。例えば、3つの機器の、それぞれの立上り時間を1分、5分、30分とすると、各熱源電源機器の実際の稼働開始はそれぞれ、13:01、13:05、13:30となり、それぞれの実際の稼働時間146、147、148の開始時間は、指定時間141の開始時間に間に合っていない。結果として、これらの熱源電源機器が全て稼働し、デマンドレスポンス要請に十分に対応できた対応時間149は、指定時間141の開始時間よりも後にずれこんでいる。すなわち、図12のような場合においては、デマンドレスポンス要請に対して十分な対応ができていない。
【0022】
各熱源電源機器の立上り時間を見込むように、演算された運転計画を人手によって修正することも考えられるが、これは、運転計画立案に要する時間が、更に長くなることを意味する。したがって、前記のような、急なデマンドレスポンス要請に対応できないという問題が、更に致命的なものとなってしまう。
【0023】
特許文献1に記載の装置は、運転計画を最適化手法によって演算しているため、上記のように、急なデマンドレスポンス要請に対応でき、及び、熱源電源機器の立上り時間を考慮できる構造になっていない。
【0024】
本発明の課題は、熱源電源機器の立上り時間を考慮して運転計画を短時間で演算することで、効果的に光熱費やCO排出量を低減できる、熱源電源機器の運転計画演算方法及び運転計画演算サーバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、デマンドレスポンス要請を受信し、前記デマンドレスポンス要請に基づいて、管理対象となる複数の熱源電源機器の運転計画を演算する、熱源電源機器の運転計画演算方法であって、前記デマンドレスポンス要請の指定時間における電力負荷及び/または熱負荷を予測すること、エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の前記基本性能パラメータを使用して、前記予測された電力負荷及び/または熱負荷を充足するように、前記複数の熱源電源機器の各々の、前記指定時間における運転計画を演算すること、を含む、熱源電源機器の運転計画演算方法を提供する。
上記のような構成によれば、最適化手法を使用せず、エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の基本性能パラメータを使用して、運転計画を演算するため、運転計画の演算を高速に行うことが可能である。すなわち、演算時間を低減できるため、デマンドレスポンス要請の指定時間の開始に、熱源電源機器の稼働を間に合わせることが可能となる。これにより、エネルギー消費抑制の要請に応えながら、効果的に、光熱費やCO排出量を低減することができる。
また、最適化手法を使用せずに、目的パラメータや熱源電源機器の基本性能パラメータを参照して、目的パラメータや熱源電源機器の基本性能パラメータを忠実に反映した運転計画を演算することができる。したがって、演算結果の人手によるチェックや修正が基本的に不要となり、運転計画の立案に必要な時間を更に低減することができるとともに、管理者の労力を低減することも可能である。
【0026】
前記目的パラメータは、前記熱源電源機器の単位出力あたりの光熱費、単位出力あたりのCO排出量、またはピークカット量の少なくとも1つを含み、前記運転計画は、前記指定時間の光熱費またはCO排出量の少なくとも1つを低減する、または、ピークカット量を増加するように演算されてもよい。
このような構成によれば、光熱費またはCO排出量の少なくとも1つを効果的に低減する、または、ピークカット量を効果的に増加する運転計画を立案することが可能となる。
【0027】
前記目的パラメータは、テーブルに格納されており、前記基本性能パラメータは、前記各熱源電源機器の、定格出力、エネルギー消費効率、及び、立上り時間を含み、前記基本性能パラメータは、前記目的パラメータと、前記運転計画の演算に使用されていもよい。
このような構成によれば、熱源電源機器の性能を、正確に反映した運転計画を演算することが可能となる。
特に、立上り時間を運転計画に反映させることにより、デマンドレスポンス要請の指定時間の開始前に熱源電源機器の立上り処理を終了させて、指定時間の開始と同時に、熱源電源機器を稼働させることが可能となる。これにより、エネルギー消費抑制の要請に応えながら、効果的に、光熱費やCO排出量を低減することができる。
また、管理者が立上り時間を運転計画に反映させる作業が不要となり、管理者の労力を低減することが可能である。
【0028】
前記エネルギーは、電気、ガス、灯油、またはA重油の少なくとも1つを含み、前記エネルギーに関するパラメータは、前記エネルギーの、単価、CO排出係数、及び、一次エネルギー量を含んでもよい。
このような構成によれば、電気、ガス、灯油、A重油の、単価、CO排出係数、及び、一次エネルギー量を、運転計画に正確に反映することが可能となる。
【0029】
また、本発明は、デマンドレスポンス要請を受信し、前記デマンドレスポンス要請に基づいて、管理対象となる複数の熱源電源機器の運転計画を演算する、熱源電源機器の運転計画演算サーバーであって、前記デマンドレスポンス要請の指定時間における電力負荷及び/または熱負荷を予測する、予測値演算部と、エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の前記基本性能パラメータを使用して、前記予測された電力負荷及び/または熱負荷を充足するように、前記複数の熱源電源機器の各々の、前記指定時間における運転計画を演算する、運転計画演算部と、を含む、熱源電源機器の運転計画演算サーバーを提供する。
上記のような構成によれば、最適化手法を使用せず、エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の基本性能パラメータを使用して、運転計画を演算するため、運転計画の演算を高速に行うことが可能である。すなわち、演算時間を低減できるため、デマンドレスポンス要請の指定時間の開始に、熱源電源機器の稼働を間に合わせることが可能となる。これにより、エネルギー消費抑制の要請に応えながら、効果的に、光熱費やCO排出量を低減することができる。
また、最適化手法を使用せずに、目的パラメータや熱源電源機器の基本性能パラメータを参照して、目的パラメータや熱源電源機器の基本性能パラメータを忠実に反映した運転計画を演算することができる。したがって、演算結果の人手によるチェックや修正が基本的に不要となり、運転計画の立案に必要な時間を更に低減することができるとともに、管理者の労力を低減することも可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、効果的に、光熱費やCO排出量を低減することができる、熱源電源機器の運転計画演算方法及び運転計画演算サーバーを、提供することが可能となる。
【0031】
好ましい様態では、管理者の労力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムのブロック図である。
図2】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、運転計画演算パラメータ格納部に格納されるパラメータを示す表である。
図3】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、運転計画演算パラメータ格納部に格納されるパラメータを示す表である。
図4】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、テーブルを示す表である。
図5】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、テーブルの導出に使用するグラフを示す。
図6】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、テーブルの導出に使用するグラフを示す。
図7】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、処理の流れを示す図である。
図8】本発明の実施形態として示した運転計画演算システムにおける、運転計画の演算例である。
図9】従来の運転計画演算システムのブロック図である。
図10】従来の運転計画演算システムにおける、処理の流れを示す図である。
図11】従来の運転計画演算システムにおける、運転計画の演算例である。
図12】従来の運転計画演算システムにおける、運転計画の演算例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態として示した運転計画演算システム1のブロック図である。
【0035】
運転計画演算システム1は、デマンドレスポンス要請を受信し、デマンドレスポンス要請に基づいて、管理対象となる複数の熱源電源機器の運転計画を演算し、演算された運転計画に基づいて熱源電源機器を制御する。運転計画演算システム1は、デマンドレスポンス要請や気象予報に関する情報を提供する外部サーバー6に、ネットワーク5を介して接続されている。
【0036】
外部サーバー6は、運転計画演算システム1が設置されている構造建築物や施設の、基本的には外部に設けられているサーバーである。図1においては、外部サーバー6は一つのブロックとして図示されているが、実際には、エネルギーを供給する地域エネルギー管理者などの管理するサーバーや、気象予報会社が管理するサーバーなどの、役割の異なる複数のサーバーが、外部サーバー6として同時に存在し得る。地域エネルギー管理者などの管理するサーバーである外部サーバー6は、デマンドレスポンス要請を送信する。気象予報会社の管理するサーバーである外部サーバー6は、気象予報に関する情報を送信する。
【0037】
デマンドレスポンス要請として送信される情報の内訳は、デマンドレスポンスの方式によっても異なるが、主に共通するものとして、デマンドレスポンス要請の対象となる指定時間、ピークカットの基準値、インセンティブ単価などが挙げられる。
【0038】
気象予報に関する情報としては、水平面全天日射量、雲量、乾球外気温度、絶対温度など、電力負荷、熱負荷、または再生可能エネルギー出力に影響する気象条件が挙げられる。
【0039】
外部サーバー6の送信した、デマンドレスポンス要請や、気象予報に関する情報は、運転計画演算システム1によって受信される。運転計画演算システム1は、運転計画演算サーバー2、ローカルコントロールサーバー3、実績データ保存サーバー4、及び、これらのサーバー間を接続する、BACnetなどのネットワーク5を備えている。
【0040】
運転計画演算サーバー2は、ネットワーク5経由で、外部サーバー6の送信した、デマンドレスポンス要請や、気象予報に関する情報を受信し、これらの情報を基に、管理対象となる複数の熱源電源機器の運転計画を演算する。運転計画演算サーバー2は、予測値演算部7、運転計画演算部8、予測値演算パラメータ格納部9、運転計画演算パラメータ格納部10、テーブル11、及びテーブル演算部12を備えている。
【0041】
予測値演算部7は、デマンドレスポンス要請の指定時間における、電力負荷及び/または熱負荷、すなわち、電力や熱の使用量を予測する。予測値演算部7はまた、気象予報に関する情報を基に、デマンドレスポンス要請の指定時間における、再生可能エネルギーの出力値を予測する。
【0042】
予測値演算パラメータ格納部9には、予測値の演算時に使用するパラメータが、格納されている。
【0043】
予測値の演算は、例えば、ニューラルネットワークによって行われてもよい。この場合、予測値演算パラメータ格納部9には、ニューラルネットワークの重み係数などが格納されており、予測値演算部7は、予測値演算パラメータ格納部9に格納されたパラメータを使用して、予測値を演算する。
【0044】
後述の実績データ保存サーバー4に格納された実績値は、定期的に分析され、この分析結果などを基に、予測値演算パラメータ格納部9に格納されたパラメータは更新される。
【0045】
予測値演算部7は、演算した予測値を、運転計画演算部8に送信する。
【0046】
テーブル演算部12は、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている、熱源電源機器の基本性能パラメータと、同様に運転計画演算パラメータ格納部10に格納される、エネルギーに関するパラメータを基に、目的パラメータを算定し、テーブル11に格納する。
【0047】
エネルギーに関するパラメータの一例を、図2に示す。本図において、エネルギーは電気、ガスなどである。電気、ガスなどの、単価、CO排出係数、及び、一次エネルギー量の値が、運転計画演算パラメータ格納部10に登録されている。単価としては、電力、ガスなどの、料金メニューに記載の単価を使用してもよい。また、CO排出係数や、一次エネルギー量の値に関しては、地球温暖化対策の推進に関する法律や、エネルギーの使用の合理化に関する法律などに定められる値を使用してもよい。
【0048】
熱源電源機器の基本性能パラメータの一例を、図3に示す。本図においては、熱源電源機器A−Eの、それぞれの、定格出力、エネルギー消費効率(COP)、及び、立上り時間が、パラメータとして登録されている。定格出力は、熱源電源機器の最大出力値である。エネルギー消費効率は、エネルギー単位当たりの出力値である。エネルギー消費効率は、一次エネルギー利用効率であってもよい。立上り時間は、熱源電源機器を起動してから稼働まで、すなわち、出力を開始するまでに、必要な時間である。
【0049】
運転計画は、後述のように、光熱費、及び/または、CO排出量を低減することを目的として、演算される。この目的を達成するに当たり、各熱源電源機器の、特定の目的パラメータが、運転計画の演算時に考慮される。この目的パラメータとしては、各熱源電源機器の単位出力あたりの光熱費や、単位出力あたりのCO排出量などが挙げられる。図4に示すテーブル11は、これらの目的パラメータと、各熱源電源機器との対応関係を基に、テーブル演算部12によって構築される。
【0050】
図5は、図3に示される機器A−Eの、デマンドレスポンス要請において提示されるインセンティブ単価と、単位出力あたりのコストの関係を示すグラフである。本図は、図2図3に示される各パラメータを基にして導出された結果をグラフ化したものである。デマンドレスポンス要請が電力供給会社などから発行される場合においては、機器Aは、ガスを使用する機器、例えば、吸収式冷凍機、コジェネレーションシステム等であり、インセンティブ単価が上がるにつれて、単位出力あたりのコストが下降している。すなわち、ガス系の機器を使用すると、節電に対するインセンティブは上がっている。機器Eは、電気を使用する機器である。このように、各熱源電源機器の特性を、目的パラメータと関連付ける。
【0051】
図6は、機器A−Eの、単位出力あたりのCO排出量を示すグラフである。本図も、図2図3に示される各パラメータを基にして導出された結果を、グラフとして表したものである。
【0052】
図4は、図5、6に示されるグラフを表、すなわちテーブル11の形式に変換したものである。以上のように、テーブル11は、図2、3に示されるような、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されるパラメータを、目的パラメータと関連付け、この関連性を表にすることで作製されている。
【0053】
運転計画演算パラメータ格納部10に格納されるパラメータは、値が変わることがある。例えば、エネルギーの単価は、料金メニューの変更などにより、変わる可能性がある。エネルギー消費効率は、寒暖、季節によって相違する場合がある。熱源電源機器の種類によっては、季節により出力が変わるものもある。また、後述の実績データ保存サーバー4に格納された実績値は、定期的に分析され、この分析結果などを基に、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されるパラメータは更新される。このように、運転計画演算パラメータ格納部10の値は、必要により、随時、更新される。これに伴い、テーブル演算部12は、テーブル11の値も更新する。
【0054】
運転計画演算部8は、予測値演算部7により演算された予測値、すなわち使用が予想される電力負荷及び/または熱負荷を充足するように、熱源電源機器の各々の、デマンドレスポンス要請の指定時間における運転計画を演算する。具体的には、運転計画演算部8は、予測値のうち、再生可能エネルギーの出力によって賄えない電力負荷及び/または熱負荷を、様々な熱源電源機器を稼働することにより調達するための運転計画を、光熱費、及び/または、CO排出量をできるだけ低減できるように、立案、演算する。
【0055】
運転計画演算部8は、上記のように構成されたテーブル11を参照して、各熱源電源機器の運転優先順位を決定する。例えば、光熱費削減を目標としている場合は、目的パラメータを単位出力あたりの光熱費として、これが小さい機器を優先するように、熱源電源機器を稼働する優先順位を決定する。
【0056】
次に、運転計画演算部8は、運転計画の演算終了予定時間からデマンドレスポンス要請の開始時間までの差分時間と、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている、熱源電源機器の各々の、立上り時間とを比較し、立上り時間が差分時間よりも大きい場合は、当該熱源電源機器を立ち上げてもデマンドレスポンス要請の開始時間までに稼働が間に合わないと判断し、運転優先順位から除外する。立上り時間が差分時間よりも小さい場合、すなわち、当該熱源電源機器の立ち上げがデマンドレスポンス要請の開始時間までに間に合う場合は、デマンドレスポンス要請の開始時間から立ち上げ時間を逆算した結果を、当該熱源電源機器の稼働開始時間として記憶する。
【0057】
運転計画演算部8は、運転優先順位が高い熱源電源機器から順に、当該熱源電源機器の定格出力を、予測値演算部7により演算された予測値を充足するまで、つまり、予測値と同じ値かそれ以上になるまで、累積加算する。加算値が、予測値演算部7により演算された予測値以上になった場合には、定格出力が加算された熱源電源機器を稼働対象と判断する。定格出力が加算されなかった、運転優先順位がより低い熱源電源機器は、定格出力が加算された熱源電源機器によって既に予測値相当の出力が確保されているため、稼働対象とはならない。
【0058】
運転計画演算部8は、上記のように運転計画を演算し、運転計画を、ローカルコントロールサーバー3に送信する。
【0059】
ローカルコントロールサーバー3は、運転計画演算部8から、運転計画、すなわち、稼働対象となる熱源電源機器と、各熱源電源機器の稼働開始時間を受信する。ローカルコントロールサーバー3は、稼働開始時間になると、対応する熱源電源機器を稼働させる。
【0060】
実績データ保存サーバー4は、各熱源電源機器の稼働履歴などの実績データを保存する。
【0061】
次に、上記の、図1に示される実施形態に基づいて、運転計画を演算し、熱源電源機器を稼働する手順を、図7を用いて説明する。
【0062】
デマンドレスポンス要請を受信していない、定常的な状態においては、予測値演算パラメータ格納部9、及び、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている各パラメータが、適宜更新される(ステップS20〜S22)。
【0063】
また、テーブル演算部12が、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている各パラメータを基に作成されているテーブル11を、運転計画演算パラメータ格納部10の更新に伴って、更新する(ステップS23)。
【0064】
地域エネルギー管理者などの管理する外部サーバー6によって、デマンドレスポンス要請が発行されると、運転計画演算サーバー2は、ネットワーク5を経由して、デマンドレスポンス要請に関する情報を取得する(ステップS24)。
【0065】
運転計画演算サーバー2の予測値演算部7は、気象予報会社の管理する外部サーバー6から、気象予報に関する情報を取得する(ステップS25)。予測値演算部7は、更に、予測値演算パラメータ格納部9から、予測値演算パラメータを取得する(ステップS26)。予測値演算部7は、これらの情報を基に、デマンドレスポンス要請の指定時間における、電力負荷、熱負荷を予測する(ステップS27)。
【0066】
次に、運転計画演算部8は、テーブル11を照合し、管理対象の熱源電源機器と目的パラメータの関係を取得する(ステップS28)。運転計画演算部8は、更に、目的パラメータを効果的に削減できる熱源電源機器を優先するように、熱源電源機器の運転優先順位を決定する(ステップS29)。例えば、光熱費削減を目標としている場合は、目的パラメータを単位出力あたりの光熱費として、これが小さい機器を優先するように、順位を決定する。
【0067】
運転計画演算部8は、運転計画の演算終了予定時間からデマンドレスポンス要請の開始時間までの差分時間と、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている、熱源電源機器の各々の、立上り時間とを比較し、立上り時間が差分時間よりも大きい場合は、当該熱源電源機器を立ち上げてもデマンドレスポンス要請の開始時間までに稼働が間に合わないと判断し、運転優先順位から除外する。立上り時間が差分時間よりも小さい場合、すなわち、当該熱源電源機器の立ち上げがデマンドレスポンス要請の開始時間までに間に合う場合は、デマンドレスポンス要請の開始時間から立ち上げ時間を逆算した結果を、当該熱源電源機器の稼働開始時間として記憶する(ステップS30)。
【0068】
運転計画演算部8は、運転優先順位が高い熱源電源機器から順に、当該熱源電源機器の定格出力を、予測値演算部7により演算された予測値を充足するまで加算する。加算値が、予測値演算部7により演算された予測値以上になった場合には、定格出力が加算された熱源電源機器を稼働対象と判断する。運転計画演算部8は、このように導出された運転計画を、ローカルコントロールサーバー3に送信する(ステップS31)。
【0069】
予測値演算部7が出力した予測値は、デマンドレスポンス要請の指定時間内に、時間の推移と共に変動したものとなっている可能性がある。例えば、指定時間の開始時間と終了時間で、異なる予測値が算出されている場合がある。あるいは、電力、ガスの料金メニューが時間に依存して異なる単価を有するものとなっており、デマンドレスポンス要請の指定時間内に、時間に依存して単価が変わる場合も考えられる。このような場合に対応するため、一度の運転計画の演算においては、例えば30分や1時間単位の計画を立てるものとする。すなわち、ステップS28−31の運転計画の演算を複数回、例えばデマンドレスポンス要請の指定時間間隔が3時間で、一つの計画が30分単位である場合は6回行う。
【0070】
ローカルコントロールサーバー3は、運転計画演算部8から、運転計画、すなわち、稼働対象となる熱源電源機器と、各熱源電源機器の稼働開始時間を受信する。ローカルコントロールサーバー3は、稼働開始時間になると、対応する熱源電源機器を稼働させる(ステップS32)。
【0071】
上記のように、運転計画演算部8での運転計画の演算においては、最適化手法を使用せず、エネルギーに関するパラメータと熱源電源機器の基本性能パラメータを用いて算定された目的パラメータ、及び、熱源電源機器の基本性能パラメータを使用して、運転計画を演算している。そのため、運転計画の演算を高速に行うことが可能である。これにより、運転計画の演算時間を低減できるため、デマンドレスポンス要請の指定時間の開始に、熱源電源機器の稼働を間に合わせることが可能となる。これにより、エネルギー消費抑制の要請に応えながら、効果的に、光熱費やCO排出量を低減することができる。
【0072】
また、最適化手法を使用せずに、目的パラメータや熱源電源機器の基本性能パラメータを参照して、目的パラメータや熱源電源機器の基本性能パラメータを忠実に反映した運転計画を演算することができる。したがって、演算結果の人手によるチェックや修正が基本的に不要となり、運転計画の立案に必要な時間を更に低減することができるとともに、管理者の労力を低減することも可能である。
【0073】
また、熱源電源機器の性能を、正確に反映した運転計画を演算することが可能となる。特に、立上り時間を運転計画に反映させることにより、デマンドレスポンス要請の指定時間の開始前に熱源電源機器の立上り処理を終了させて、指定時間の開始と同時に、熱源電源機器を稼働させることが可能となる。これにより、エネルギー消費抑制の要請に応えながら、効果的に、光熱費やCO排出量を低減することができる。
【0074】
また、管理者が立上り時間を運転計画に反映させる作業が不要となり、管理者の労力を低減することも可能である。
【0075】
また、目的パラメータが熱源電源機器の単位出力あたりの光熱費、単位出力あたりのCO排出量などであるため、光熱費やCO排出量を効果的に低減する、運転計画を演算することが可能となる。
【0076】
次に、本実施形態における運転計画の演算例を、図8を用いて説明する。
【0077】
ここで例示する運転計画演算システム1は、図3に示される5種類の熱源電源機器A−Eを管理しており、図4に示されるテーブル11を有し、一日の光熱費を低減することを目標として、稼働しているものと仮定する。また、運転計画の時間単位は30分であるものとする。
【0078】
地域エネルギー管理者の管理する外部サーバー6によって、インセンティブ単価が25円/kWhで、デマンドレスポンスの指定時間41が13:00から16:00までという内容の、デマンドレスポンス要請が、12:45に発行された場合の、運転計画演算システム1の挙動を説明する。
【0079】
運転計画演算サーバー2は、デマンドレスポンス要請に関する上記の情報を取得する。
【0080】
運転計画演算サーバー2の予測値演算部7は、デマンドレスポンス要請によって指定された時間帯における、電力負荷、熱負荷40を予測する。上記の指定時間13:00から16:00のうち、最初の時間単位となる13:00から13:30においては、電力負荷、熱負荷40は、200kWh/30分と予測されたものとする。
【0081】
運転計画演算部8は、テーブル11を照合し、管理対象の熱源電源機器と目的パラメータの関係を取得する。ここでは、一日の光熱費を低減することを目標としているため、テーブル11における、単位出力あたりの光熱費を考慮する。
【0082】
運転計画演算部8は、更に、目的パラメータである単位出力あたりの光熱費を、効果的に削減できる熱源電源機器を優先するように、熱源電源機器の運転優先順位を決定する。この場合、図4によると、熱源電源機器A−Eの、インセンティブ単価が25円/kWhの場合の値が、それぞれ、0、5、10、15、35であるため、運転優先順位を、熱源電源機器A、熱源電源機器B、熱源電源機器C、熱源電源機器D、熱源電源機器Eの順に決定する。
【0083】
運転計画の演算に5分必要だと仮定すると、運転計画演算が終了する時間は、デマンドレスポンス要請が発行、受信された12:45の5分後、すなわち、12:50となり、デマンドレスポンス要請の開始時間までの差分時間は10分となる。この差分時間である10分と、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている、各熱源電源機器の立上り時間とを比較する。熱源電源機器A−Eの、それぞれの立上り時間は、1分、5分、30分、1分、5分であり、熱源電源機器Cは起動してもデマンドレスポンス要請の開始時間に稼働が間に合わないため、運転優先順位から除外する。結果として、運転優先順位は、熱源電源機器A、熱源電源機器B、熱源電源機器D、熱源電源機器Eとなる。
【0084】
運転計画演算部8は、運転優先順位中の熱源電源機器について、デマンドレスポンス要請の開始時間から立ち上げ時間を逆算し、当該熱源電源機器の稼働開始時間を求める。具体的には、熱源電源機器A、B、D、Eの、それぞれの稼働開始時間は、12:59、12:55、12:59、12:55となる。
【0085】
運転計画演算部8は、運転優先順位が高い熱源電源機器から順に、定格出力を、予測値演算部7により演算された予測値、すなわち200kWh/30分以上になるまで加算する。熱源電源機器A、B、D、Eの、それぞれの定格出力は、100、50、50、50である。これを運転優先順位の高いものから順に加算すると、熱源電源機器A、B、Dで予測値と同じ200kWh/30分の出力を得ることが可能であることがわかる。すなわち、ここで演算された運転計画においては、熱源電源機器A、B、Dは稼働されるが、熱源電源機器Eは稼働されない。
【0086】
運転計画演算部8は、熱源電源機器Aの立ち上げを12:59に開始する計画42、熱源電源機器Bの立ち上げを12:55に開始する計画43、及び、熱源電源機器Dの立ち上げを12:59に開始する計画44からなる計画を、13:00から13:30の運転計画とする。
【0087】
上記の演算を、13:30以降の、5つの時間単位についても、同様に実施する。
【0088】
運転計画演算部8は、演算された運転計画45を、ローカルコントロールサーバー3に送信し、ローカルコントロールサーバー3は、各熱源電源機器を指定された時間に立ち上げることで、デマンドレスポンス要請の開始時間13:00には、運転計画45に従った熱源電源機器の稼働を実現することができる。
【0089】
なお、入札方式のデマンドレスポンス要請に対応するため、目的パラメータとして、熱源電源機器の単位出力あたりの光熱費、単位出力あたりのCO排出量に加え、ピークカット量としてもよい。複数の目的パラメータを考慮して運転計画を立案しても構わない。
【0090】
また、上記の実施形態においては、エネルギーは電気、ガスであったが、灯油やA重油であってもよい。すなわち、エネルギーは電気、ガス、灯油、またはA重油の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0091】
また、上記の実施形態においては、運転計画演算部8は、運転計画の演算終了予定時間からデマンドレスポンス要請の開始時間までの差分時間よりも、運転計画演算パラメータ格納部10に格納されている、熱源電源機器の立上り時間が大きい場合は、当該熱源電源機器を運転優先順位から除外した。これに替え、差分時間よりも立上り時間が大きい場合に、差分時間と立上り時間の差分の程度に応じて、当該熱源電源機器の運転優先順位をより低くするようにしてもよい。
【0092】
また、上記の実施形態においては、テーブル11の演算、更新を行うテーブル演算部12を、運転計画演算部8とは別に設けた構成となっている。これに替え、運転計画演算サーバー2はテーブル演算部12を有さない構成とし、運転計画演算部8が直接テーブル11の演算、更新を行うようにしてもよい。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能であることが理解できるであろう。
【0094】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 運転計画演算システム
2 運転計画演算サーバー
3 ローカルコントロールサーバー
4 実績データ保存サーバー
5 ネットワーク
6 外部サーバー
7 予測値演算部
8 運転計画演算部
9 予測値演算パラメータ格納部
10 運転計画演算パラメータ格納部
11 テーブル
12 テーブル演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12