(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606384
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】樹脂軸受けを使用した回転位置検出用レゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
G01D5/20 110X
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-182072(P2015-182072)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-58200(P2017-58200A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】川上 泰典
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−106653(JP,A)
【文献】
特開2014−105691(JP,A)
【文献】
特開2007−192640(JP,A)
【文献】
特開2010−117225(JP,A)
【文献】
特開2005−155858(JP,A)
【文献】
特開2004−150950(JP,A)
【文献】
特開2011−202966(JP,A)
【文献】
特開2012−78238(JP,A)
【文献】
特開2004−266889(JP,A)
【文献】
特開昭53−108484(JP,A)
【文献】
実開平7−36584(JP,U)
【文献】
特開平4−236303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
H02K 24/00、3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転量を減速器とレゾルバにより検出する回転位置検出器用レゾルバにおいて、
中心部に固定軸を通す穴の開いた樹脂製歯車と、軟磁性体から成るとともに前記樹脂製歯車に接合されたロータコアと、を有するロータ部と、
前記固定軸と、前記ロータコアに対して軸方向に対向配置される励磁巻線及び検出巻線と、前記励磁巻線及び検出巻線を挟んで前記ロータコアの反対側に配置される軟磁性体金属から成るバックコアと、前記バックコア及び固定軸を支持する樹脂製ハウジングと、を有するステータ部と、
を備え、
前記励磁巻線及び検出巻線は、前記固定軸から一定距離離して前記固定軸の周囲に配置され、
前記バックコアは、固定軸に近接又は接合し、
前記樹脂製歯車は、中央がバックコアに接触するように突出した形状である、
ことを特徴とする回転位置検出用レゾルバ。
【請求項2】
前記励磁巻線及び検出巻線は、同一のプリント基板上の導体パターンで形成される、ことを特徴とする請求項1記載の回転位置検出器用レゾルバ。
【請求項3】
前記ステータ部は、さらに、前記固定軸に挿入されて固定され、前記バックコアと協働して前記樹脂製歯車を回転可能に挟持する止め輪を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の回転位置検出器用レゾルバ
【請求項4】
前記固定軸は、前記樹脂製ハウジングから前記ロータ側に延びており、
前記樹脂製歯車は、大径部と、大径部より小径で前記バックコア側に突出する突出部と、を有した段付き形状であり、
前記ロータコアは、前記大径部のうち前記バックコア側の端面に接合されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の回転位置検出用レゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の送り軸等の回転角度検出に利用される位置検出器の改良に関し、特に樹脂軸受けを使用したレゾルバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機と複数のレゾルバにより回転を検出する検出器として特許文献1のレゾルバがある。
【0003】
図4は、特許文献1で開示された従来のエンコーダにおける軸直角方向の断面図である。
図5は
図4に示すB−B部の断面図である。
図6は
図4に示すA−A部の断面図である。ロータ60は、入力軸19に勘合され、入力軸19が1回転するとロータ60が1回転する。また、入力軸19に勘合された、歯車25は、歯車26と噛み合い、軸20と、歯車27を駆動する。歯車27は、真鍮歯車28、30と噛み合い、ロータ62、64を駆動する。このように歯車を組み合わせ、減速機構を構成することにより、入力軸19が24回転するとロータ62が1回転し、入力軸19が25回転するとロータ64が1回転するようになっている。
図3は、
図6の左側のレゾルバ部分を拡大し、天地を逆に表現したレゾルバの断面図である。真鍮歯車28、30は、中心部に金属軸受93、94を通す穴を有し、旋盤加工後に外径部にホブ加工を行い、製造される。また、金属軸受93、94の穴に固定軸12、13を挿入し、真鍮歯車28、30の穴に金属軸受93、94の外輪を挿入し、双方とも接着し組み立てることで、真鍮歯車28、30のラジアル方向とスラスト方向の動きが制限される。また、真鍮歯車28、30は、歯車27にかみ合っており、入力軸に対して決まった減速比で回転する。固定軸12、13は、スチール等の金属材料で、アルミケーシング81に圧入され、固定される。ロータコア62、64は、外径が偏芯形状でフェライトや電磁ステンレスや珪素鋼板等の軟磁性材料からできており、金属軸受93、94の外輪と真鍮歯車28、30に接着固定される。
【0004】
ステータ部66には、4つの突極101、102、103、104が配置されている。この4つの突極は、ロータコア62の外周、かつ、ロータコア62の回転中心と同心円上に配置されている。それぞれの突極に2相検出巻線16と励磁巻線17が配置され、ロータコア62の回転により、ロータコア62とステータ部66の突極の先端のエアーギャップの変化によって磁気抵抗が変化する。この変化により2相検出巻線16の誘起電圧が変化し、ロータコア62の回転位置が検出できる。ロータコア64についても同様にして回転位置が検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5524600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6のレゾルバ回転軸に、ラジアル荷重とスラスト荷重を受けるためにボールベアリング等の軸受93、94を使用するとコストがアップする。また、真鍮歯車28、30およびハウジングを樹脂製とすれば、コストダウンができるとともに温度変化によるバックラッシの変動を小さく抑えることが可能となる。その一方で、スラスト軸受を樹脂製にすると、軸受の摩耗量が大きくなる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、入力軸の回転量を減速器とレゾルバにより検出する回転位置検出器用レゾルバにおいて、中心部に固定軸を通す穴の開いた樹脂製歯車と、軟磁性体から成るとともに前記樹脂製歯車に接合されたロータコアと、を有するロータ部と、前記固定軸と、前記ロータコアに対して軸方向に対向配置される励磁巻線及び検出巻線と、前記励磁巻線及び検出巻線を挟んで前記ロータコアの反対側に配置される軟磁性体金属から成るバックコアと、前記バックコアおよび固定軸を支持する樹脂製ハウジングと、を有するステータ部と、を備え、前記励磁巻線及び検出巻線は、前記固定軸から一定距離離して前記固定軸の周囲に配置され、前記バックコアは、固定軸に近接又は接合し、前記樹脂製歯車は、中央がバックコアに接触するように突出した形状である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂製歯車のうち、バックコアに接触する突出部は、樹脂製歯車のスラスト方向の動きを規制しつつ樹脂製歯車の回転を許容するスラスト軸受としても機能する。すなわち、本発明によれば、樹脂製歯車と軸受が同じ材質で一体に成型可能なため樹脂金型で製作できるので安価な回転検出用レゾルバとなる。さらに、軟磁性体金属製のバックコアがスラスト方向の磁路の形成の役目とスラスト側の摩耗面を支える構造のため、樹脂製軸受の摩耗量が少なく高寿命で小型な回転用レゾルバとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発明の実施の形態である回転用レゾルバの構成を示す図である。
【
図2】発明の実施の携帯である回転用レゾルバを上から見た図である。
【
図3】従来技術の回転用レソルバの構成を示す図である。
【
図4】特許文献1で開示された従来のエンコーダにおける軸直角方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は本発明の回転検出用レゾルバの構成を示す図である。
図2は、
図1のレゾルバを上からみた図である。
図3に示す従来のエンコーダと同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
回転検出用レゾルバは、樹脂ハウジング8を有しており、当該樹脂ハウジング8からは、固定軸2が起立している。固定軸2は、スチール等の金属材料で表面が滑らかになるように加工され、樹脂ハウジング8に圧入され、固定される。
【0012】
固定軸2には、樹脂ハウジング8側から順に、バックコア5、樹脂歯車1、止め輪3が挿入される。樹脂歯車1は、中心部に固定軸2を通す穴を有し、射出成型等により一体成型して製造される。樹脂歯車1は、外周囲に歯車が形成された大径部と、大径部より小径でバックコア5側に突出する突出部とを備えた段付形状となっている。また、樹脂歯車1の中心には、穴が形成されており、この穴に固定軸2を挿入することにより、ラジアル方向の動きが制限される。ただし、樹脂歯車1の穴は、固定軸2より僅かに大きくなっており、樹脂歯車1は、固定軸2に対して回転可能となっている。そして、樹脂歯車1は、歯車27にかみ合っており、入力軸に対して決まった減速比で回転する。
【0013】
止め輪3は、表面が滑らかな板金を打ち抜きで金型にて加工される。止め輪3は、固定軸2に圧入され、固定軸2に対して固定される。止め輪3は、樹脂歯車1が当該止め輪3に対して周方向に滑って軽く動く程度に当該樹脂歯車1の上面を押さえ、樹脂歯車1のスラスト方向位置を固定する。
【0014】
また、樹脂歯車1の突出部の底面は、バックコア5に接触している。換言すれば、樹脂歯車1は、バックコア5と止め輪3とで挟まれている。その結果、樹脂歯車1は、止め輪3とバックコア5によりスラスト方向の動きを制限されつつも、歯車の固定軸2回りの回転を許容するスラスト軸受の機能も有する。
【0015】
バックコア5は、電磁ステンレスや珪素鋼板等の表面が滑らかな軟磁性材料のスチール製板金からできており、バックコア5は、2相検出巻線6の外径と同じか又は囲む大きさの円形に、打ち抜き金型にて加工される。また、バックコア5は、固定軸2に近接又は接合した状態で樹脂ハウジング8に接着等により固定される。
【0016】
ロータコア4は、フェライトや電磁ステンレスや珪素鋼板等の軟磁性材料からできている。ロータコア4は、固定軸2および樹脂歯車1の突出部が通る穴を持つ。ロータコア4は、その穴を中心とする最大外径が2相検出巻線6の外径以上となるように、かつ、その穴を中心とする最小外径が励磁巻線7の外径と同じになるような偏芯形状、凸極形状に加工され、樹脂歯車1に接着等で固定される。
【0017】
バックコア5の表面には、プリント基板9が載置されている。プリント基板9には、2相検出巻線6と励磁巻線7が導体パターンにて形成されている。また、プリント基板9は、樹脂歯車1の中央の突出部が通る穴を持ち、バックコア等に接着等で固定される。
【0018】
プリント基板9には、ロータコア4の回転中心と同心円上に、励磁巻線7および2相検出巻線6が形成されている。2相検出巻線6は、それぞれ、90度間隔で、4つ設けられている。励磁巻線7は、その外径が、2相検出巻線6の内径より小さく、その内径が、樹脂歯車1の中央の突出部よりも大きな内径を持つように、固定軸2の周囲にプリント基板9の導体パターンにて渦巻き状に形成される。2相検出巻線6は、その内径が励磁巻線7の外径よりも大きく、その外径がバックコア5の外径以下となるように、プリント基板9の導体パターンにて半月状に形成される。
【0019】
2相検出巻線6と励磁巻線7は、図示しないレゾルバ信号位置検出回路に接続され、励磁巻線7が発する磁束がロータコア4を回り2相検出巻線6を通りバックコア5を回る。その結果、ロータコア4の回転位置に応じた電圧が2相検出巻線に発生し、レゾルバ信号検出回路が回転位置を検出することができる。なお、従来技術で示すように、このようなレゾルバを複数配置してもよい。すなわち、本実施形態のレゾルバを複数、減速器を介して接続して、回転位置検出器を構成してもよい。
【0020】
以上のような構成とすることで、安価で高寿命で小型な回転検出用レゾルバを提供できる。
【符号の説明】
【0021】
1 樹脂歯車、2,12 固定軸、3 止め輪、4,62 ロータコア、5 バックコア、6 2相検出巻線、7 励磁巻線、8 樹脂ハウジング、9 プリント基板、27 歯車、28,30 真鍮歯車、93 金属軸受、81 アルミケーシング、66 ステータ部、16A 2相検出巻線の一部、101,102,103,104 突極。