(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
本発明は、内燃機関の点火コイル及びその製造方法に関する。
図1に、本発明の一実施形態に係る点火コイル2が示されている。
図1において矢印Xはこの点火コイル2の前方を表す。この逆が後方である。矢印Yはこの点火コイル2の右方向を表す。この逆が左方向である。矢印Zはこの点火コイル2の上方向を表す。この逆が下方向である。この矢印X、Y及びZについては、
図2−4においても同じ意味である。図で示されるように、この点火コイル2は、本体4と、コネクタ部6と、フランジ部8とからなる。
【0016】
本体4は点火コイル2の中央に位置する。後述される通り、本体4は、高圧部体を含む。高圧部体は二次コイルを含んでいる。さらに本体4は、内部に一次コイル、鉄心及びイグナイタを含む。これらにより、本体4では、数十kVの高電圧が発生させられる。プラグ接続部10は、本体4の下部を構成する。図示されないが、プラグ接続部10の先には、点火プラグが接続される。本体4で発生された高電圧は、プラグ接続部10を通して点火プラグに引加される。
【0017】
コネクタ部6は、本体4の前方に位置している。コネクタ部6は筒状を呈する。コネクタ部6はその前方が開口されている。コネクタ部6は、内側に複数のコネクタ端子12を備えている。図示されないが、コネクタ端子12の一つは、本体4のイグナイタと電気的に接続されている。イグナイタは、点火コイル2の動作を制御するためのスイッチである。図示されないが、点火コイル2が車に装着されたとき、コネクタ部6は車の制御装置(ECU)に接続される。制御装置からの制御信号は、コネクタ部6を介して、イグナイタに送られる。これにより、制御装置は、点火コイル2の動作を制御する。これにより、制御装置は、ガソリンに点火するタイミングを制御する。
【0018】
フランジ部8は、本体4の後方に位置する。フランジ部8には、上下に貫通する孔14が設けられている。図示されないが、ボルトをこの孔14とエンジンに設けられた孔に通すことにより、点火コイル2はエンジンに固定される。フランジ部8により、点火コイル2はエンジンに堅固に固定される。
【0019】
以下では、この点火コイル2の製造方法が説明されつつ、併せてこの点火コイル2の構造が説明される。この点火コイル2の製造方法は、
(1)高圧部体を得る工程、
(2)一次コイルを高圧部体に装着する工程、
(3)外周鉄心を高圧部体に装着する工程、
(4)イグナイタを高圧部体に装着する工程、
及び
(5)周辺構造体を形成する工程
を有する。
【0020】
図2は、(1)の工程で得られる高圧部体16の分解斜視図である。この工程では、まず二次コイル18、カバー20及び収容体22が用意される。
【0021】
二次コイル18は、ボビン24及び二次ワイヤ(図示されず)を備えている。ボビン24は筒状である。ボビン24は、その前方から後方まで至る貫通孔26を備えている。ボビン24は、絶縁性の樹脂よりなる。ボビン24の典型的な材質は、ポリフェニレンエーテル(PPE)である。ボビン24はその前面に、貫通孔26の開口を囲む環状突起部28を有する。図示されないが、同様にボビン24は後面にも、貫通孔26の開口を囲む環状突起部28を有する。ボビン24は、その周囲に複数の鍔30を備えている。図示されないが、互いに隣接する鍔30の間には、二次ワイヤが巻回されている。二次ワイヤの巻回し回数は、発生させる電圧により、適宜決められる。この巻回し回数は、典型的には9000回から20000回である。これにより、コイルが形成されている。二次ワイヤの典型的な材質は銅(Cu)である。図示されないが、二次コイル18には、二次ワイヤと電気的に接続する端子が設けられている。
【0022】
カバー20は、上板部32、右板部34及び左板部36を備える。カバー20は、前面、後面及び底面が開いている。カバー20は、二次コイル18の上側部分に対応した形状を呈する。カバー20は、絶縁性の樹脂よりなる。後述するとおり、カバー20は、二次コイル18の上側部分を覆う。この図では示されていないが、後述するとおり、右板部34及び左板部36は、外部鉄心の凹凸と嵌まり合わせるための、凹凸を備えている。
【0023】
収容体22は、受部38、壁部40、平板部42及びプラグ接続部44を備える。図に示されるとおり、受部38、壁部40、平板部42及びプラグ接続部44は、一体として形成されている。収容体22は、絶縁性の樹脂よりなる。収容体22の典型的な材質として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)及びPBTが例示される。
【0024】
受部38は、側面視において下側に凸な略円弧状を呈する。受部38は、上面視において略円形を呈する。図示されないが、受部38の上面には窪みが設けられている。
【0025】
平板部42は、受部38の上面に設けられている。前面から見たとき、平板部42は、受部38の上面から左右に突出している。側面から見たとき、平板部42は、受部38の上面から前後に突出している。図示されないが、平板部42の中央には孔が設けられている。この孔により、平板部42と受部38とを上面から見たとき、受部38の窪みは露出している。平板部42は前方に舌部46を有している。平板部42は、その縁に沿って延びる突起部48を有している。
【0026】
壁部40は、平板部42の上面に設けられている。壁部40は、受部38の窪みを囲うように設けられている。受部38の窪みと壁部40とで形成された空間は、二次コイル18の下側部分に対応する形状を呈している。後述するとおり、この空間に、二次コイル18の下側部分が嵌め込まれる。壁部40の前面及び後面には、切り欠き50が設けられている。この切り欠き50は、二次コイル18の環状突起部28の下側部分の形状に対応している。この切り欠き50により、二次コイル18が、受部38の窪みと壁部40とで形成された空間に嵌め込まれたとき、壁部40が二次コイル18の貫通孔26を塞ぐことが防止されている。二次コイル18の貫通孔26は、高圧部体16の貫通孔を形成する。
【0027】
プラグ接続部44は、受部38の下側に位置する。プラグ接続部44は、前述した高圧部体16のプラグ接続部10を構成する。図示されないが、プラグ接続部44は、その内部に高圧端子を備える。この高圧端子は、二次コイル18の端子と接続されている。図示されないが、点火コイル2が車両に装着されたとき、この高圧端子は点火プラグと接続される。これにより、二次コイル18で発生した高電圧が、点火プラグに引加される。
【0028】
上記(1)の工程では、次に二次コイル18、カバー20及び収容体22が組み合わされる。二次コイル18の下側部分が、受部38の窪みと壁部40とで形成された空間に嵌め込まれる。二次コイル18の環状突起部28が、壁部40の切り欠き50に嵌め込まれる。環状突起部28と壁部40との接触部分は、超音波溶接によって、堅固に結合される。カバー20が二次コイル18の上側から被せられる。カバー20の右板部34及び左板部36の下端が、収容体22の壁部40の上端と当接する。このとき、カバー20の上板部32と二次コイル18の環状突起部28との間には隙間が存在する。二次コイル18は、カバー20と、収容体22の壁部40及び受部38の窪みとで構成された空間(収容空間)の内部に収容される。カバー20と収容体22とは、高圧部用ケースを構成する。この高圧部用ケースの内部に、二次コイル18が収容される。
【0029】
上記(1)の工程では、最後に収容空間内に残った隙間が樹脂により埋められる。すなわち、二次コイル18と、高圧部用ケースとの間の隙間が埋められる。図示されないが、カバー20の上板部32と環状突起部28との間の隙間から、液状のエポキシ樹脂が流し込まれる。エポキシ樹脂が収容空間内の隙間に充填される。充填後、このエポキシ樹脂は熱硬化される。これにて、高圧部体16が得られる。
図3に得られた高圧部体16が示されている。高圧部体16では、二次ワイヤは、高圧端子と接続する部分を除いて、外部から絶縁される。
【0030】
このエポキシ樹脂としては、後述する周辺構造体を構成するための樹脂よりも、絶縁性能が優れたものが選択される。これにより、この高圧部体16では、小さな体積で高電圧部分の絶縁が可能となる。これは、点火コイル2の小型化に貢献する。これにより、小型化と優れた絶縁性能とが実現されている。
【0031】
このエポキシ樹脂としては、周辺構造体を構成するための樹脂よりも、粘度が低いものが選択される。これにより、収容空間内に残った隙間の隅々まで樹脂を行き渡らせることができる。さらに、樹脂内にボイドが残留することが抑制される。これにより、高圧部体16では、高耐圧かつ高品質な絶縁性能が実現されている。
【0032】
上記のとおり、この方法では、高圧部体16は、鉄心等の熱容量の大きい部品を含まない。エポキシ樹脂の熱硬化処理においては、少ない熱量で均一に樹脂を熱硬化させることができる。この方法では、効率的に品質の良い熱硬化が実現できる。
【0033】
上記(2)の工程では、まず一次コイル52が用意される。
図3にこの様子が示されている。一次コイル52は、I字鉄心54、絶縁体56、一次ワイヤ58及びフレーム60からなる。I字鉄心54の形状は、前後に延びる角柱状を呈する。I字鉄心54は、典型的には積層珪素鋼板からなる。絶縁体56は、I字鉄心54の側面を覆っている。絶縁体56は、I字鉄心54と一次ワイヤ58とを絶縁する。一次ワイヤ58は、絶縁体56の周りに巻回されている。一次ワイヤ58の巻回し回数は、発生させる電圧により、適宜決められる。この巻回し回数は、典型的には100回から250回である。これにより、コイルが形成されている。フレーム60はI字鉄心54の前面に取り付けられている。フレーム60は絶縁体である。フレーム60は、その上端に端子部62を備える。一次ワイヤ58の両端は、それぞれこの端子部62まで引き出されている。
【0034】
上記(2)の工程では、一次コイル52が、高圧部体16の貫通孔に挿入される。すなわち、一次コイル52が、二次コイル18の貫通孔26に挿入される。一次コイル52の後の部分が、貫通孔26の前方から挿入される。これにより、一次コイル52が高圧部体16に装着される。フレーム60は、貫通孔26の前方の開口を塞ぐように位置する。I字鉄心54の後端は、貫通孔26の後方の開口まで延びている。このI字鉄心54は、二次コイル18の鉄心にもなっている。
【0035】
上記(3)の工程では、外周鉄心64が用意される。外周鉄心64は、典型的には珪素鋼よりなる。外周鉄心64は、リング状を呈する。外周鉄心64においては、このリングの内部が内側、このリングの外部が外側である。
図3に示されるとおり、外周鉄心64はそれぞれが半リング状の第一部66と第二部68とから構成されている。
【0036】
上記(3)の工程では、高圧部体16の外周に外周鉄心64が装着される。
図4に、高圧部体16に外周鉄心64が装着された状態が示されている。この図では、後述するイグナイタ70も装着されている。図で示されるとおり、第一部66は、高圧部体16の前側部分を囲うように装着される。第一部66は、前方からフレーム60を覆う。第二部68は、高圧部体16の後側部分を囲うように装着される。このとき、第二部68とI字鉄心54の後端とは接触している。第一部66及び第二部68は、収容体22の平板部42の上側に配置される。第一部66及び第二部68は、壁部40と突起部48との間に配置される。
【0037】
図5は、
図4のV−V線に沿った拡大断面図である。この断面図では、I字鉄心54、外周鉄心64及びカバー20のみが示されている。
図5において矢印Xはこの点火コイル2の前方を表す。この逆が後方である。矢印Yはこの点火コイル2の右方向を表す。この逆が左方向である。
【0038】
図5に示されるとおり、上面視において、第一部66の二つの先端は、それぞれ第一先端凹凸87を備えている。この図では、それぞれの第一先端凹凸87は、一つの凸部88と一つの凹部90とで構成されている。上面視において、第二部68の二つの先端は、それぞれ第二先端凹凸91を備えている。この図では、それぞれの第二先端凹凸91は、一つの凸部92と一つの凹部94とで構成されている。図で示されるように、第一先端凹凸87と第二先端凹凸91とは、嵌まり合っている。即ち、第一先端凹凸87の凸部88は第二先端凹凸91の凹部94に入り込んでいる。第二先端凹凸91の凸部92は第一先端凹凸87の凹部90に入り込んでいる。第一先端凹凸87と第二先端凹凸91とを嵌まり合わすことで、上記第一部66と上記第二部68とが接続されている。
【0039】
第一先端凹凸の形状及び第二先端凹凸の形状は、
図5に示される形状に限られない。第一先端凹凸と第二先端凹凸とが嵌まり合えばよい。例えば、第一部66の先端が中央に位置する一つの凸部とその両側に位置する二つの凹部とを備え、第二部68の先端が中央に位置する一つの凹部とその両側に位置する二つの凸部とを備えていてもよい。
【0040】
図5に示されるように、高圧部体16の外周面は、第一外側凹凸71、75及び第二外側凹凸73、77を備えている。すなわち、カバー20の外側面は、第一外側凹凸71、75及び第二外側凹凸73、77を備えている。この実施形態では、カバー20の右板部34の第一外側凹凸71は、一つの第一凸部72で構成されている。右板部34の第二外側凹凸73は、一つの第二凸部74で構成されている。左板部36の第一外側凹凸75は、一つの第一凸部76で構成されている。左板部36の第二外側凹凸77は、一つの第二凸部78で構成されている。
【0041】
第一部66の内側面は、第一内側凹凸79、81を備えている。図で示されるように、この実施形態では、右側の内側面の第一内側凹凸79は、一つの第一凹部80で構成されている。左側の内側面の第一内側凹凸81は、一つの第一凹部82で構成されている。第一外側凹凸71、75と、第一内側凹凸79、81とは嵌まり合っている。すなわち、右板部34の第一凸部72は、第一部66の右側の第一凹部80に嵌め込まれている。左板部36の第一凸部76は、第一部66の左側の第一凹部82に嵌め込まれている。
【0042】
第一内側凹凸の形状及び第一外側凹凸の形状は、
図5に示される形状に限られない。第一内側凹凸と第一外側凹凸とが嵌まり合えばよい。例えば、第一内側凹凸が凸状であり、第一外側凹凸が凹状であってもよい。第一内側凹凸が凸状及び凹状を含んでおり、第一外側凹凸が凸状及び凹状を含んでいてもよい。第一内側凹凸が複数の凹状又は凸状を含んでおり、第一外側凹凸が複数の凹状又は凸状を含んでいてもよい。
【0043】
第二部68の内側面は、第二内側凹凸83、85を備えている。図で示されるように、この実施形態では、第二部68の右側の内側面の第二内側凹凸83は、一つの第二凹部84で構成されている。左側の内側面の第二内側凹凸85は、一つの第二凹部86で構成されている。第二外側凹凸73、77と、第二内側凹凸83、85とは嵌まり合っている。すなわち、右板部34の第二凸部74は、第二部68の右側の第二凹部84に嵌め込まれている。左板部36の第二凸部78は、第二部68の左側の第二凹部86に嵌め込まれている。
【0044】
第二内側凹凸の形状及び第二外側凹凸の形状は、
図5に示される形状に限られない。第二内側凹凸と第二外側凹凸とが嵌まり合えばよい。例えば、第二内側凹凸が凸状であり、第二外側凹凸が凹状であってもよい。第二内側凹凸が凸状及び凹状を含んでおり、第二外側凹凸が凸状及び凹状を含んでいてもよい。第二内側凹凸が複数の凹状又は凸状を含んでおり、第二外側凹凸が複数の凹状又は凸状を含んでいてもよい。
【0045】
上記のとおり、第一先端凹凸87と第二先端凹凸91とは嵌まり合っている。この第一先端凹凸87と第二先端凹凸91との嵌まり合わせは、外周鉄心64が高圧部体16から上下にずれることを抑制する。さらに第一外側凹凸71、75と、第一内側凹凸79、81とは嵌まり合っている。この第一外側凹凸71、75と、第一内側凹凸79、81との嵌まり合わせは、第一部66が高圧部体16から左右にずれることを抑制する。第二外側凹凸73、77と、第二内側凹凸83、85とは嵌まり合っている。この第二外側凹凸79、81と、第二内側凹凸83、85との嵌まり合わせは、第二部68が高圧部体16から左右にずれることを抑制する。これらの嵌まり合わせを組み合わせることにより、外周鉄心64は、高圧部体16から上下左右いずれの方向にもずれることが効果的に抑えられている。この外周鉄心64は、後の周辺構造体を形成する工程においても、高圧部体16からずれることが抑えられている。この点火コイル2では、外周鉄心64の位置ずれに起因する性能の低下及び外周鉄心64のショートが抑えられている。
【0046】
図5において、第一先端凹凸87の凸部88は、第二先端凹凸91の凸部92の外側に位置している。すなわち、第一部66の右側の先端と第二部68の右側との先端の接合部においては、第一先端凹凸87の凸部88は、第二先端凹凸91の凸部92の右側に位置している。第一部66の左側の先端と第二部68の左側の先端の接合部においては、第一先端凹凸87の凸部88の先端は、第二先端凹凸91の凸部92の左側に位置している。このように、第一先端凹凸87の凸部88は、第二先端凹凸91の凸部92の外側に位置するのが好ましい。後述するとおり、高圧部体16の前方において、第一部66は、イグナイタ70とフレーム60とに挟まれる。周辺構造体を形成する工程において、第一部66は第二部68よりずれにくい。ずれにくい第一部66の凸部88が、外側から第二部68の凸部92を抑える。この第二部68はずれにくい。このようにすることで、この外周鉄心64が、高圧部体16からずれることがより効果的に抑えられている。
【0047】
第一部66及び第二部68の凹凸の形状が
図5とは異なり、第一先端凹凸が複数の凸部を有する場合がある。この場合は、少なくとも一つの第一先端凹凸の凸部が、第二先端凹凸の凸部の外側に位置していればよい。この第一先端凹凸の凸部が、外側から第二先端凹凸の凸部を抑える。これにより、外周鉄心64が、高圧部体16からずれることがより効果的に抑えられている。
【0048】
上記(4)の工程では、イグナイタ70が用意される。イグナイタ70は、一次コイル52の電流の導通と切断とを切り替えるスイッチである。この工程では、イグナイタ70が高圧部体16に装着される。
図4に、イグナイタ70が装着された後の状態が示されている。図で示されるとおり、イグナイタ70は、高圧部体16の前方に配置される。イグナイタ70は、第一部66の外側に配置される。イグナイタ70は、収容体22の平板部42の上に配置される。高圧部体16の前方において、第一部66は、イグナイタ70とフレーム60とに挟まれる。
【0049】
ここでは、高圧部体16に装着される部品は、コイルアセンブリと称される。この実施形態では、一次コイル52、外周鉄心64及びイグナイタ70がコイルアセンブリである。高圧部体16にコイルアセンブリが装着されたものは、コイル構造体96と称される。
図4には、コイル構造体96が示されている。
【0050】
上記(5)の工程では、コイル構造体96の周りに、周辺構造体が形成される。この実施形態では、周辺構造体は、射出成形により形成される。この工程の様子が、
図6で示されている。この図の例では、射出成形により、コイルアセンブリを絶縁するための外殻部が形成されている。この工程では、コイル構造体96は、金型98のキャビティ100の中に入れられる。高圧部体16の平板部42より下側の形状は、キャビティ100の下側部分の形状と同じである。平板部42より上側では、コイル構造体96と金型98との間には隙間が設けられている。プランジャーを用いて、この隙間に液体の樹脂102が注入される。充填後、樹脂102は熱硬化される。これにより、外殻部が形成される。外殻部は、コイル構造体96の平板部42より上側を覆う。このコイル構造体96とそれを覆う外殻部とは、
図1の本体4に該当する。典型的な樹脂102として、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル及びエポキシ樹脂が例示される。
【0051】
図示されないが、上記(5)の工程では、コイル構造体96と外殻部とに対して、さらに射出成形が行われる。これにより、コネクタ部6及びフランジ部8が形成される。周辺構造体として、外殻部、コネクタ部6及びフランジ部8が形成される。これにより、
図1の点火コイル2が得られる。
【0052】
周辺構造体の形成においては、二次コイル18のような高圧が発生するところはない。周辺構造体を形成するための樹脂102は、上記(1)の工程で使用される樹脂ほど、絶縁性能は要求されない。この樹脂102はより安価なものが選択されうる。この方法では、二次コイル18の周辺と周辺構造体とを、一度に絶縁性能の高い樹脂を用いて射出成形する方法に比べて、製造コストを下げることができる。この方法では、二次コイル18の周辺と周辺構造体とを、絶縁性能の低い安価な樹脂を用いて射出成形する方法に比べて、優れた絶縁性能が実現される。この方法では、低コストで優れた絶縁性能を備える点火コイル2が得られる。
【0053】
上記のとおり、周辺構造体の形成においては、高い絶縁性能は要求されない。これは、熱硬化処理における時間等の制限を緩和する。この周辺構造体の形成は容易である。
【0054】
上記では周辺構造体の形成には、熱硬化性の樹脂102が使用された。周辺構造体の形成に、熱可塑性の樹脂が使用されてもよい。また、上記の実施形態では、外殻部と、コネクタ部6及びフランジ部8とが別々に形成された。これら全てが、一度の射出成形で形成されてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、上記(5)の工程では、周辺構造体は、射出成形により形成された。周辺構造体が、射出成形により形成されなくてもよい。外殻部、コネクタ部6及びフランジ部8が一体化された「周辺カバー」を別途作成しておき、コイル構造体96にこの周辺カバーを被せることで、周辺構造体を形成してもよい。
【0056】
上記の実施形態では、上記(4)の工程で、イグナイタ70が高圧部体16に装着された。周辺カバーで周辺構造体を形成するときは、イグナイタ70は、上記周辺カバーに取り付けられていてもよい。この場合、イグナイタ70は、周辺構造体の一部となる。この場合、上記(4)の工程は存在しない。
【0057】
以下、本発明の作用効果が総括される。
【0058】
従来の点火コイルの製造では、まず高電圧が発生する二次コイルとその周辺とを高圧部体として作成し、次にこの高圧部体に一次コイルや外周鉄心等を装着してコイル構造体を作成し、最後にコイル構造体の周りに周辺構造体を形成する方法がある。この方法では、高圧部体の作成において、絶縁性の強い高品質のエポキシ樹脂を使用することで、小型化と高い耐電圧性能とが実現される。周辺構造体を安価な樹脂を用いた射出成形で形成することで、製造コストを下げることができる。
【0059】
しかし、この方法では、周辺構造体を形成する際に、外周鉄心が高圧部体からずれることが起こりうる。例えば、周辺構造体を射出成形により形成するとき、コイル構造体は、キャビティを有する金型の中に入れられる。コイル構造体と金型との間に、液体の樹脂が注入される。樹脂が流れる圧力により、外周鉄心が高圧部体からずれることが起こる。外周鉄心のずれが起こると、所望の点火コイルの性能が得られないことが起こりうる。外周鉄心のずれが起こると、射出成形後に、外周鉄心が表面に露出することが起こりうる。これは、ショートの原因となりうる。
【0060】
周辺構造体の形成においては、周辺カバーを別途作成しておき、コイル構造体にこの周辺カバーを被せる方法がある。この場合においても、周辺カバーの取り付けの際に、外周鉄心が高圧部体からずれることが起こりうる。
【0061】
本発明に係る点火コイル2は、高圧部体16を作成し、これに一次コイル52及び外周鉄心64を装着し、これらの周りに周辺構造体を形成することで製造される。上記の通りこれにより、この点火コイル2では、小型化、良好な絶縁性及び低コスト化が達成されている。さらに、本発明に係る点火コイル2では、上記外周鉄心64を上側から見たとき、外周鉄心64の第一部66の先端の第一先端凹凸87と第二部68の先端の第二先端凹凸91をとは嵌まり合っている。第一部66の内側面の第一内側凹凸79、81と高圧部体16の外周面の第一外側凹凸71、75とは嵌まり合っている。第二部68の内側面の第二内側凹凸83、85と高圧部体16の外周面の第二外側凹凸73、77とは嵌まり合っている。これらの嵌まり合わせの組み合わせは、外周鉄心64が、高圧部体16から上下左右いずれの方向にもずれることを効果的に抑える。この外周鉄心64は、後の周辺構造体を形成する工程においても、高圧部体16からずれることが抑えられている。この点火コイル2では、外周鉄心64の位置ずれに起因する性能の低下及び外周鉄心64のショートが抑えられている。この点火コイル2では、性能の低下及び外周鉄心64でのショートが抑えられたうえで、小型化、良好な絶縁性及び低コスト化が達成されている。以上より、本発明の優位性は明らかである。