特許第6606411号(P6606411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606411
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】排水管の改修方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20191031BHJP
   E03C 1/126 20060101ALI20191031BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   E03C1/122 Z
   E03C1/126
   E03C1/12 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-228675(P2015-228675)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-95967(P2017-95967A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮道 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】雨森 一則
(72)【発明者】
【氏名】大友 章弘
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−162906(JP,A)
【文献】 特開2007−023627(JP,A)
【文献】 特開2007−023628(JP,A)
【文献】 特開2004−019131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
F16L 1/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部に各階を上下に貫くように設置されている縦管部と、
該縦管部の中間部分に複数設けられている排水用継手とを有する排水管を更新する排水管の改修方法において、
前記縦管部および排水用継手を、下側または上側から順に更新して行くと共に、
施工の一時中断時に、更新部分と既存部分との境界部分に一時的に設けられる接続部材の近傍に、負圧を緩和するための負圧緩和手段、または、正圧を緩和するための正圧緩和手段の少なくとも一方を設置することを特徴とする排水管の改修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水管の改修方法において、
前記負圧緩和手段を、前記接続部材よりも下側の部分に取付けることを特徴とする排水管の改修方法。
【請求項3】
請求項1に記載の排水管の改修方法において、
前記正圧緩和手段を、前記接続部材よりも上側の部分に取付けることを特徴とする排水管の改修方法。
【請求項4】
請求項3に記載の排水管の改修方法において、
前記正圧緩和手段または前記接続部材の近傍に、消臭装置を設置することを特徴とする排水管の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水管の改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の内部には、排水管が設けられている。この排水管は、少なくとも、建物の各階を上下に貫くように設置された縦管部と、この縦管部の中間部分に設置された複数の排水用継手とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、これまでに数多くの高層建物が建築されているが、近年、高層建物の老朽化した排水管に対する改修工事が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−162906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高層建物の場合、排水管が長大なものとなっているため、1日で改修工事の全てを終わらせることが不可能なので、1日分の施工が終了した時点で、排水管は更新部分と既存部分とが混在した状態(仕掛り途中で中断した状態)になる。
【0006】
このように、更新部分と既存部分とが混在すると、排水管に排水性能の違う排水用継手(排水システム)が共存することになるため、更新部分と既存部分との間を境として排水の流れが滞(とどこお)るなどにより、管内圧力の変動が大きくなって、排水管内に負圧または正圧が発生する。
【0007】
そして、例えば、負圧の発生によって排水管や排水設備に設けられたトラップが破封したり、または、正圧の発生によって排水管に接続された排水設備から排水が溢れ出たりするなどの不具合が生じることになる。
【0008】
上記不具合は、更新部分と既存部分との間に芯ズレが生じている場合にも、芯ズレの部分で排水の流れが滞ることなどによって、上記と同様に生じ得る。
【0009】
このような不具合は、特に、排水管の上側の排水用継手と、下側の排水用継手との排水性能が異なる場合(または、上側と下側の排水用継手のタイプが異なる場合(例えば、減速型のソベント継手と旋回型の継手との違い))などに生じ易い。また、一般的に上側と下側の排水用継手が異種継手となる場合や、境界部または芯ずれ部などに対して、負圧は排水管の下側の部分に発生し易く、正圧は排水管の上側の部分に発生し易い。
更には、既存継手を選定した時の排水負荷計算方法と、更新継手を選定する時の排水負荷計算方法とが異なる場合などにも、排水用継手や排水管の口径が異なることから、上記と同様の不具合が生じ易くなる。更にまた、排水管や排水用継手の更新と同時に排水器具の更新を行った場合にも、排水器具の特性の変化によって同様の現象が生じる場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決することを、主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
建物の内部に各階を上下に貫くように設置されている縦管部と、
該縦管部の中間部分に複数設けられている排水用継手とを有する排水管を更新する排水管の改修方法において、
前記縦管部および排水用継手を、下側または上側から順に更新して行くと共に、
施工の一時中断時に、更新部分と既存部分との境界部分に一時的に設けられる接続部材の近傍に、負圧を緩和するための負圧緩和手段、または、正圧を緩和するための正圧緩和手段の少なくとも一方を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成によって、排水管の改修中における管内圧力の変動による不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態にかかる排水管の改修方法を示す、建物の排水管の概略図である(下側から更新する場合)。
図2図1と同様の建物の排水管の概略図である(上側から更新する場合)。
図3】芯ズレがある場合の排水管の改修方法を示す、建物の排水管の概略図である(下側から更新する場合)。
図4図3と同様の建物の排水管の概略図である(上側から更新する場合)。
図5】負圧緩和手段を取付けた、図1と同様の建物の排水管の概略図である。
図6】正圧緩和手段を取付けた、図1と同様の建物の排水管の概略図である。
図7】正圧緩和手段を取付けた、図1と同様の建物の排水管の概略図である。
図8】新たな排水用継手(集合管継手)の側面図である。
図9】既存の排水用継手(ソベント継手)の側面図である。
図10】接続部材を斜め側方から見た斜視図である。
図11】(a)は芯ズレ対処用の別の接続部材を斜め側方から見た斜視図、(b)は(a)の縦断面図である。
図12】正圧緩和手段の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図12は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0015】
<構成>以下、構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、建物1の内部には、排水管2が設けられている。この排水管2は、少なくとも、建物1の各階を上下に貫くように設置された縦管部3と、この縦管部3の中間部分に設置された複数の排水用継手4とを有している。
【0017】
ここで、建物1は、鉄筋コンクリート製のものなどとされる。排水管2は、例えば、排水と通気とを同時に行わせるようにした単管式排水システムのものなどとされる。なお、排水管2は、排水と通気とを別個に行わせるようにした二管式排水システムのものであっても良い。排水用継手4は、各階ごとに縦管部3から横枝管を分岐するために設けられる。そして、排水用継手4には、例えば、横枝管を介して各階のキッチン、風呂、トイレ、洗面台などの各種の排水設備などが接続される。
【0018】
そして、建築から長期間が経過した高層建物1Aなどに対し、老朽化した排水管2の改修工事を行う。ここで、高層建物1Aは、1日では改修工事の全てを終わらせることができない高さ、例えば、20階程度以上の高さを有する建物1などとされる。
【0019】
以下、この実施例にかかる排水管2の改修方法について説明する。
【0020】
(1)図1図2に示すように、上記縦管部3および排水用継手4を、下側(図1図3)または上側(図2図4)から順に更新して行くようにする。
そして、施工の一時中断時に、更新部分21と既存部分22との境界部分に一時的に設けられる接続部材23の近傍に、図5に示すような、負圧を緩和するための負圧緩和手段24、または、図6に示すような、正圧を緩和するための正圧緩和手段25の少なくとも一方を設置する。
【0021】
ここで、排水管2の更新は、図1図3に示すように下側から順に行っても良いし、図2図4に示すように上側から順に行っても良いが、一方向に続けて行うようにする。施工の一時中断時とは、主に、1日分の施工が終了した時のことを指している。但し、それ以外の理由で一時中断した場合であっても良い。更新部分21には、新たな縦管部3aと排水用継手4aとが設置されることになる。
【0022】
新たな排水用継手4aは、例えば、図8に示すように、上下方向へ延びるほぼ円筒状をした継手本体41aと、この継手本体41aの上端部および下端部に設けられた縦管接続口部42a,43aと、継手本体41aの側面に単数または複数設けられた(横枝管5を接続するための)横枝管接続口部44aとを有する樹脂製の集合管継手などとされる。
継手本体41aの内部などには、排水に螺旋流を与えるための旋回羽根46a〜48aが複数枚設置される。この旋回羽根46a〜48aは、排水を、縦管部3の内壁に沿って螺旋状に流下させると共に、縦管部3の中心部に空気が通る空気芯を形成させるようにするためのものである。樹脂製の集合管継手に更新する場合、新たな縦管部3aには、樹脂製のパイプなどが使用される。
【0023】
新たな排水用継手4a(集合管継手)は、建物1の内部を各階ごとに仕切る床スラブ1aに設けられた孔部1bに通されると共に、孔部1bごとモルタル1cなどによって埋め戻される。
【0024】
これに対し、既存の排水用継手4は、例えば、図9に示すように、側面視ほぼ三角形状をした継手本体41と、この継手本体41の上端部および下端部に設けられた縦管接続口部42,43と、継手本体41の側面に単数または複数設けられた横枝管接続口部44とを有する金属製のソベント継手などとされている。金属製のソベント継手の場合、縦管部3には、金属製のパイプなどが使用されている。
【0025】
接続部材23には、例えば、図10に示すような金属製の接続用継手23aなどが使用される。この接続用継手23aは、短管部材の両端部に接続用のフランジ部を一体に設けたものである。この接続用継手23aには、掃除口23hが備えられている。このように掃除口23hを備えることにより、例えば、初日に施工した新規の縦管部3aの満水試験と、後日、残っていた既存の縦管部3配管を除去して施工される新規の縦管部3aの満水試験と、の両方を行うことが可能になる。但し、掃除口23hは必ず必要なものではなく、掃除口23hを備えていないものとしても良い。
なお、図3図4に示すように、更新部分21と既存部分22との間に、芯ズレが生じている場合には、接続部材23として、フレキシブル管や、図11に示すような金属製の曲がり継手23bなどが使用される。この曲がり継手23bは、屈曲された短管部材の両端部に接続用のフランジ部を一体に設けたものである。
【0026】
「接続部材23の近傍」は、接続部材23が設けられた階、または、接続部材23が設けられた階から上下に3階層分程度の範囲とされる。「接続部材23の近傍」への設置には、縦管部3,3aに取付ける場合や排水用継手4,4aに取付ける場合が含まれるのは勿論であるが、その他に、横枝管5に取付ける場合や、横枝管5と縦管部3,3aまたは排水用継手4,4aとの間に跨るように取付ける場合などを含むことができる。
【0027】
負圧緩和手段24と正圧緩和手段25は、両方備えるようにしても良い。負圧緩和手段24には、例えば、通気弁や、吸排気弁や、空気抜き弁やなどのような吸気装置や、ループ通気管などの空気迂回装置を使用することができる。
また、正圧緩和手段25には、例えば、風船や袋などを萎ませたバルーン装置や、図12に示すように、耐圧容器51の内部を弾性変形可能な隔膜52で2つの室53,54に仕切って、一方の室53を大気に開放させる開口部53aを有すると共に、他方の室54を正圧発生源(排水管2など)に接続させる接続部54aを有するようにした緩衝装置や、(負圧緩和手段24と同様の)通気弁や、吸排気弁や、空気抜き弁などのような大気開放装置や、ループ通気管などの空気迂回装置を使用することができる。
【0028】
正圧緩和手段25や負圧緩和手段24は、更新部分21が延びて行くのに伴って、位置を移し替えて同じものを再利用するようにしても良い。または、正圧緩和手段25や負圧緩和手段24は、付けた位置に残しつつ、更新部分21が延びて行くのに伴って、新たに別のものを設置して行くようにしても良い。また、正圧緩和手段25や負圧緩和手段24は、改修完了時には、取り外しても良いし、または、そのまま残しておくようにしても良い。
【0029】
(2)より具体的には、図5に示すように、上記負圧緩和手段24は、上記接続部材23よりも下側の部分に取付けるようにする。
【0030】
ここで、下側の部分は、図中で接続部材23が設けられた階、または、接続部材23が設けられた階から直下の3階層程度までの範囲内の部分とするのが好ましい。
【0031】
なお、図5は、図1と同様に下側から更新する場合に負圧緩和手段24を設ける例となっているが、図2のように上側から更新する場合や、図3図4に示すように、芯ズレが生じている場合に適用しても良い。
【0032】
(3)また、図6に示すように、上記正圧緩和手段25は、上記接続部材23よりも上側の部分に取付けるようにする。
【0033】
ここで、上側の部分は、図中で接続部材23が設けられた階、または、接続部材23が設けられた階から直上の3階層程度までの範囲内の部分とするのが好ましい。
【0034】
なお、図6は、図1と同様に下側から更新する場合に正圧緩和手段25を設ける例となっているが、図2のように上側から更新する場合や、図3図4に示すように、芯ズレが生じている場合に適用しても良い。
【0035】
(4)そして、図7に示すように、上記正圧緩和手段25または上記接続部材23の近傍に、消臭装置26を設置する。
【0036】
ここで、消臭装置26は、正圧緩和手段25を、通気弁や、吸排気弁や、空気抜き弁などのような大気開放装置とした時に、大気開放装置(通気弁など)に対して付設させるようにする。または、消臭装置26自体を正圧緩和手段25(大気開放装置)となるように構成して(例えば、大気開放管に取付けて)接続部材23の近傍に直接取付けるようにしても良い。消臭装置26には、活性炭フィルターなどの消臭フィルターを用いることができる。
【0037】
なお、図7は、図1と同様に下側から更新する場合に消臭装置26を設ける例となっているが、図2のように上側から更新する場合や、図3図4に示すように、芯ズレが生じている場合に適用しても良い。
【0038】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0039】
建物1の排水管2は、各階におけるキッチン、風呂、トイレ、洗面台などの各種の排水設備から生じた排水を、横枝管5、排水用継手4(または4a)を介して縦管部3(または3a)へ送り、縦管部3(または3a)を流下させて外部へ排出させるために設けられている。このような排水管2が老朽化した場合、改修が必要になる。
【0040】
(作用効果1)そして、老朽化などによる排水管2の改修時には、建物1の内部に各階を上下に貫くように設置されている縦管部3および排水用継手4を、下側または上側から順に(縦管部3aおよび排水用継手4aに)更新して行くようにする。この際、例えば、高層建物1Aのように排水管2が長大なものとなっている場合、1日では改修工事は終わらないので、例えば、1日分の施工が終了した時点で、更新部分21と既存部分22とが混在した状態(仕掛り途中で中断した状態)になり、排水管2には排水性能の違う排水用継手4,4a(排水システム)が共存することになる。
【0041】
すると、更新部分21と既存部分22との境界部分に一時的に設けられる接続部材23の位置で、排水の流れが滞(とどこお)り易くなり、排水の流れが滞ることなどで、排水管2内の空気の流れも滞って、管内圧力の変動が大きくなる。
【0042】
このような排水および空気の流れの滞りは、特に、排水管2の上側の排水用継手4,4aが、下側の排水用継手4a,4よりも排水性能が良い場合などに特に生じ易い。具体的には、排水および空気の流れの滞りは、例えば、性能の良い新規の排水用継手4aを上側から更新して行く場合や、性能の劣る新規の排水用継手4aを下側から更新して行く場合などに生じ易い。排水用継手4,4aの性能の違いは、例えば、基本構造の違いや、メーカーの違いや、製品グレードの違いや、製品の設計変更や仕様変更などの様々な要因によって生じ得る。
【0043】
なお、排水管2の下側の排水用継手4,4aが、上側の排水用継手4a,4よりも排水性能が良い場合なども存在しており、この場合にも、排水および空気の流れの滞りが発生するおそれがある。そして、管内圧力の変動状態は、建物1ごとの排水管2の改修の状況に応じてそれぞれ異なったものとなる。
【0044】
そして、負圧は、排水管2の下側の部分に発生し易く、正圧は、排水管2の上側の部分に発生し易い。即ち、排水および空気の流れの滞り部分(接続部材23の周辺)よりも下側では、滞り部分からの排水の流下に随伴して空気の排出が促進されることで、負圧が発生し易い。反対に、排水および空気の流れの滞り部分よりも上側では、滞り部分へ向かって上から排水が流下して来ることで空気が圧縮されることによって、正圧が発生し易い。
【0045】
このことは、図3図4に示すように、更新部分21と既存部分22との間に芯ズレが生じている場合でも、同様である。このような芯ズレは、例えば、更新部分21を構成する縦管部3aや排水用継手4aをモルタル1cで埋め戻す時の誤差や、既存部分22を構成する縦管部3を切断した時に発生する残留応力による縦管部3の横変位などによって生じるものと考えられる。なお、芯ズレは、更新完了時には、解消される。
【0046】
そして、このように、更新部分21と既存部分22とが共存している場合に、更新部分21と既存部分22との境界部分に一時的に設けられた接続部材23またはその近傍に対して、負圧緩和手段24、または、正圧緩和手段25の少なくとも一方を設置する。これによって、負圧緩和手段24で排水管2内の負圧を緩和・解消することや、正圧緩和手段25で排水管2内の正圧を緩和・解消することができるので、排水管2の改修中における、負圧または正圧の発生などによる管内圧力の変動が小さくなる。
【0047】
その結果、例えば、負圧によって、排水管2や排水設備に設けられたトラップが破封したり、または、正圧によって、排水管2に接続された排水設備から排水が溢れ出たりするなどの不具合を防止することができる。
【0048】
(作用効果2)そして、負圧緩和手段24を、接続部材23よりも下側の部分に取付けるようにした。上記したように、負圧は、排水管2の下側の部分に発生し易いので、負圧緩和手段24を、接続部材23の下側に取付けることにより、負圧緩和手段24を有効に機能させて負圧を緩和することができる。
【0049】
(作用効果3)または、正圧緩和手段25を、接続部材23よりも上側の部分に取付けるようにした。上記したように、正圧は、排水管2の上側の部分に発生し易いので、正圧緩和手段25を、接続部材23の上側に取付けることにより、正圧緩和手段25を有効に機能させて正圧を緩和することができる。
【0050】
(作用効果4)更に、正圧緩和手段25または接続部材23の近傍に、消臭装置26を設置した。排水管2の正圧緩和手段25または接続部材23の近傍からは、排水管2内の正圧によって臭気成分が外部へ放出されるおそれがある。しかし、正圧緩和手段25または接続部材23の近傍に消臭装置26を設置することにより、排水管2内の正圧によって外部へ放出される臭気成分を消臭装置26で消臭または抑制することができる。
【0051】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0052】
1 建物
2 排水管
3 縦管部
3a 縦管部
4 排水用継手
4a 排水用継手
21 更新部分
22 既存部分
23 接続部材
24 負圧緩和手段
25 正圧緩和手段
26 消臭装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12