(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハイブリッド制御ユニットが故障したときにおけるアクセルオフ時に、前記駆動輪及び前記第2のモータジェネレータと前記エンジンとの動力の伝達を遮断し、前記駆動輪の運動エネルギを用いた前記第2のモータジェネレータによる発電が可能な状態にするトランスミッション制御ユニットをさらに含む、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御システム。
前記エンジン制御ユニットは、前記ハイブリッド制御ユニットが故障したときにおけるアクセルオフ時に、前記エンジンにより出力される駆動力のうち、前記第1のモータジェネレータによる発電に用いられる駆動力を、前記車速に基づいて、制御する、請求項2に記載のハイブリッド車両の制御システム。
駆動輪を駆動するための駆動力を出力可能なエンジンの出力を用いて発電可能な第1のモータジェネレータ、及び前記エンジンの出力を用いて発電可能、かつ、ハイブリッド車両の減速時に前記駆動輪の運動エネルギを用いて発電可能な第2のモータジェネレータを制御するモータ制御ユニットであって、
前記駆動輪は、前記エンジンを制御するエンジン制御ユニット、及び前記モータ制御ユニットへ制御指令を出力するハイブリッド制御ユニットが故障したときに、前記エンジンの出力によって駆動され、
前記モータ制御ユニットは、前記ハイブリッド制御ユニットが故障したときに、車速が高くなるにつれて、前記第1のモータジェネレータ及び前記第2のモータジェネレータによる発電量に対する前記第2のモータジェネレータによる発電量の割合を増大させる、
モータ制御ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.ハイブリッド車両の駆動系>
まず、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動系1の構成について、説明する。
【0017】
[1−1.全体構成]
図1は、本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動系1の概略構成の一例を示す模式図である。駆動系1は、エンジン10と、第1のモータジェネレータ(M/G1)20と、第2のモータジェネレータ(M/G2)24と、を備え、エンジン10、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24を駆動源として併用可能なパワーユニットである。具体的には、エンジン10は、駆動輪80を駆動するための駆動力を出力可能である。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24は、駆動輪80を駆動するための駆動力をそれぞれ独立して出力可能である。駆動系1では、シングルモータEV走行モードと、ツインモータEV走行モードと、エンジン走行モードと、ハイブリッド走行モードと、を切り替えながら、車両の駆動力制御が行われる。
【0018】
シングルモータEV走行モードは、第2のモータジェネレータ24の出力で車両を駆動するモードである。ツインモータEV走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24の出力で車両を駆動するモードである。エンジン走行モードは、エンジン10の出力で車両を駆動するモードである。ハイブリッド走行モードは、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24の出力のうちの少なくともいずれか一方と、エンジン10の出力とで車両を駆動するモードである。
【0019】
エンジン10は、ガソリン等を燃料として駆動力を生成する内燃機関であり、出力軸としてのクランクシャフト11を有する。クランクシャフト11は、自動変速装置30内に延設されている。また、クランクシャフト11には、ギヤ式のオイルポンプ15が連結されている。オイルポンプ15は、エンジン10の駆動力又は駆動輪80の回転により駆動されて、自動変速装置30に向けて作動油を供給する。自動変速装置30に供給される作動油は、CVT31及び各クラッチを作動させる作動油として用いられる。自動変速装置30は、第1のモータジェネレータ20と、第2のモータジェネレータ24と、自動変速機としての無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)31と、を備える。
【0020】
また、オイルポンプ15は、第2の伝達クラッチ46より駆動輪80側の軸(例えば、第2のモータジェネレータ24のモータ軸25)、CVT31のプライマリ軸34又はセカンダリ軸36に対して、図示しないギヤ機構を介して連結されていてもよい。オイルポンプ15が第2の伝達クラッチ46より駆動輪80側の軸に対して連結されている場合、駆動輪80の回転によってもオイルポンプ15が駆動され得る。オイルポンプ15がプライマリ軸又はセカンダリ軸36に対して連結されている場合、第2の伝達クラッチ46が締結されている間、駆動輪80の回転によってもオイルポンプ15が駆動され得る。オイルポンプ15が第2の伝達クラッチ46より駆動輪80側の軸、プライマリ軸34又はセカンダリ軸36に対して連結される場合、オイルポンプ15と連結される第2の伝達クラッチ46より駆動輪80側の軸、プライマリ軸34又はセカンダリ軸36と、クランクシャフト11とのうち、回転数がより高い方の回転により駆動されるようになっている。
【0021】
エンジン10と第1のモータジェネレータ20とはエンジンクラッチ42を介して直列的に配列される。エンジン10のクランクシャフト11と、第1のモータジェネレータ20のモータ軸21との間には、クランクシャフト11とモータ軸21との間を締結又は解放するエンジンクラッチ42が設けられている。エンジンクラッチ42が締結状態にあるときに、クランクシャフト11とモータ軸21との間で動力を伝達することができる。
【0022】
第1のモータジェネレータ20は、例えば、三相交流式のモータであり、インバータ70を介して高電圧バッテリ50に接続されている。第1のモータジェネレータ20は、高電圧バッテリ50の電力を用いて駆動(力行駆動)されて車両の駆動力を生成する駆動モータとしての機能と、エンジン10の駆動力を用いて駆動されて発電する発電機としての機能とを有する。換言すると、第1のモータジェネレータ20は、エンジン10の出力を用いて発電可能である。さらに、第1のモータジェネレータ20は、エンジン10を始動又は停止させるスタータモータとしての機能と、モータ軸21に連結されたオイルポンプ28を回転駆動させるモータとしての機能とを併せ持つ。
【0023】
第1のモータジェネレータ20をスタータモータ、駆動モータ、又はオイルポンプ28の駆動モータとして機能させる場合、インバータ70は、高電圧バッテリ50から供給される直流電力を交流電力に変換し、第1のモータジェネレータ20を駆動する。また、第1のモータジェネレータ20を発電機として機能させる場合、インバータ70は、第1のモータジェネレータ20で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ50に充電する。
【0024】
上述のとおり、本実施形態に係る駆動系1では、トルクコンバータではなく、エンジンクラッチ42により、クランクシャフト11とモータ軸21との間で動力の伝達が行われる。このため、第1のモータジェネレータ20を駆動モータとして機能させる場合に、第1のモータジェネレータ20とエンジン10とを完全に切り離すことにより、第1のモータジェネレータ20からの駆動力がエンジン10で消費されることがなく、第1のモータジェネレータ20の効率の低下を抑制することができる。
【0025】
第1のモータジェネレータ20のモータ軸21には、ギヤ式のオイルポンプ28が連結されている。オイルポンプ28は、モータ軸21により回転駆動され、CVT31及び各クラッチに向けて作動油を供給する。オイルポンプ28は、第1のモータジェネレータ20により駆動される電動オイルポンプとして構成される。また、第1のモータジェネレータ20のモータ軸21は、第1の伝達クラッチ44を介して、CVT31のプライマリ軸34に連設されている。第1の伝達クラッチ44は、モータ軸21とプライマリ軸34との間を締結又は解放する。第1の伝達クラッチ44が締結状態にあるときに、モータ軸21とプライマリ軸34との間で動力を伝達することができる。
【0026】
CVT31は、プライマリ軸34と、当該プライマリ軸34に平行に配設されたセカンダリ軸36とを有する。プライマリ軸34にはプライマリプーリ33が固定され、セカンダリ軸36にはセカンダリプーリ35が固定されている。プライマリプーリ33及びセカンダリプーリ35には、ベルト又はチェーンからなる巻き掛け式の動力伝達部材37が卷回されている。CVT31は、プライマリプーリ33及びセカンダリプーリ35上での動力伝達部材37の巻き掛け半径を変化させてプーリ比を変化させることにより、プライマリ軸34とセカンダリ軸36との間において、任意の変速比で変換した動力を伝達する。
【0027】
セカンダリ軸36は、第2の伝達クラッチ46を介して、第2のモータジェネレータ24のモータ軸25に連設されている。第2の伝達クラッチ46は、セカンダリ軸36とモータ軸25との間を締結又は解放する。第2の伝達クラッチ46が締結状態にあるときに、セカンダリ軸36とモータ軸25との間で動力を伝達することができる。第2のモータジェネレータ24のモータ軸25は、図示しない減速ギヤ及び駆動軸を介して駆動輪80に連設され、モータ軸25を介して出力される駆動力が駆動輪80に伝達可能になっている。モータ軸25が、図示しないデファレンシャルギヤに接続され、駆動力が前輪及び後輪に分配されてもよい。
【0028】
第2のモータジェネレータ24は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46を介してエンジン10に連設されている。第2のモータジェネレータ24は、第1のモータジェネレータ20と同様、三相交流式のモータであり、インバータ70を介して高電圧バッテリ50に接続されている。第2のモータジェネレータ24は、高電圧バッテリ50の電力を用いて駆動(力行駆動)されて車両の駆動力を生成する駆動モータとしての機能と、エンジン10の駆動力を用いて駆動されて発電する発電機としての機能と、車両の減速時に駆動輪80の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能とを有する。換言すると、第2のモータジェネレータ24は、エンジン10の出力を用いて発電可能、かつ、車両の減速時に駆動輪80の運動エネルギを用いて発電可能である。
【0029】
第2のモータジェネレータ24を駆動モータとして機能させる場合、インバータ70は、高電圧バッテリ50から供給される直流電力を交流電力に変換し、第2のモータジェネレータ24を駆動する。また、第2のモータジェネレータ24を発電機として機能させる場合、インバータ70は、第2のモータジェネレータ24で発電された交流電力を直流電力に変換して高電圧バッテリ50に充電する。第2のモータジェネレータ24の定格出力と第1のモータジェネレータ20の定格出力とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24に接続された高電圧バッテリ50には、DC/DCコンバータ55を介して低電圧バッテリ60が接続されている。高電圧バッテリ50は、例えば定格電圧が200Vの充放電可能なバッテリであり、低電圧バッテリ60は、例えば定格電圧が12Vの充放電可能なバッテリである。低電圧バッテリ60は、ハイブリッド車両のシステムの主電源として用いられる。DC/DCコンバータ55は、高電圧バッテリ50の直流電力の電圧を降圧させて、充電電力を低電圧バッテリ60に供給する。
【0031】
また、駆動系1は、アクセル開度センサ95及び車速センサ97を備える。アクセル開度センサ95及び車速センサ97は、それぞれアクセル開度及び車速を検出し、検出結果を各ECUへ出力する。当該検出結果は、後述する各ECUが行う処理に用いられる。
【0032】
エンジン10は、エンジン制御ユニット(エンジンECU)200により制御される。自動変速装置30は、トランスミッション制御ユニット(トランスミッションECU)300により制御される。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24は、モータ制御ユニット(モータECU)400により制御される。これらのエンジンECU200、トランスミッションECU300、及びモータECU400は、システム全体を統合的に制御するハイブリッド制御ユニット(ハイブリッドECU)100に接続されている。ハイブリッドECU100は、エンジンECU200、トランスミッションECU300、及びモータECU400に制御指令を出力することにより、エンジンECU200、トランスミッションECU300、及びモータECU400等を用いて、車両の走行制御又は減速制御、あるいは、高電圧バッテリ50の充電制御を行う。駆動系1では、ハイブリッドECU100、エンジンECU200、トランスミッションECU300、及びモータECU400によって、制御システム900が構成される。
【0033】
本実施形態に係る制御システム900によれば、ハイブリッドECU100が故障したときにおける各ECUが行う制御によって、ハイブリッドECU100が故障した場合における車両の走行可能な距離をより増大させることが可能となる。なお、ハイブリッドECU100が故障したときにおける各ECUの機能の詳細については、後述する。
【0034】
各ECUは、マイクロコンピュータをはじめとして各種インタフェース又は周辺機器等を備えて構成される。各ECUは、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信ラインを介して双方向通信可能に接続され、制御情報や制御対象に関連する各種の情報を相互に通信する。
【0035】
各ECUは、具体的には、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)等で構成される。各ECUは、CAN通信を用いて各センサと通信を行ってもよい。なお、本実施形態に係る各ECUが有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信ラインを介して、互いに接続されてもよい。以下、ハイブリッドECU100が故障していない通常時における、各ECUの機能の概略について説明する。
【0036】
エンジンECU200は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受け、エンジン10に備えられた各種センサにより検出される情報に基づいて、スロットル開度、点火時期、及び、燃料噴射量等の制御量を算出する。エンジンECU200は、算出された制御量に基づいてスロットル弁、点火プラグ、及び燃料噴射弁等を駆動し、エンジン10の出力が制御指令値となるように、エンジン10を制御する。
【0037】
モータECU400は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受け、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24をそれぞれ制御する。モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のそれぞれの回転数や電圧、電流等の情報に基づいてインバータ70に対して電流指令や電圧指令を出力し、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24の出力が制御指令値となるように、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24をそれぞれ制御する。
【0038】
トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受けてCVT31の変速比を決定し、運転状態に応じた適切な変速比に制御する。トランスミッションECU300は、例えば、油圧を制御し、プーリ比を調節することにより、CVT31の変速比を制御する。また、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100からの制御指令を受けて、走行モードの切り替えに応じて、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46等の制御を行う。トランスミッションECU300は、例えば、各クラッチの作動油の油圧を制御することにより、各クラッチの断接を制御する。
【0039】
駆動系1の制御システム900によれば、ハイブリッドECU100が故障していない通常状態において、各ECUが、ハイブリッドECU100からの制御指令に基づいて、各種制御を行うことによって、シングルモータEV走行モード、ツインモータEV走行モード、エンジン走行モード、及びハイブリッド走行モードが実現される。
【0040】
シングルモータEV走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46をすべて開放する。また、モータECU400は、インバータ70を介して第2のモータジェネレータ24を駆動させ、トルクを出力させる。それにより、高電圧バッテリ50からインバータ70を介して第2のモータジェネレータ24へ電力が供給される。そして、第2のモータジェネレータ24から出力されるトルクが、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0041】
ツインモータEV走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42を開放し、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46を締結する。また、モータECU400は、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24をそれぞれ駆動させ、トルクを出力させる。それにより、高電圧バッテリ50からインバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24へ電力が供給される。そして、第1のモータジェネレータ20から出力されるトルクが、CVT31を介してモータ軸25に伝達され、第2のモータジェネレータ24から出力されるトルクと合わせて、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0042】
エンジン走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46をすべて締結する。また、エンジンECU200は、エンジン10を駆動させ、トルクを出力させる。それにより、エンジン10から出力されるトルクが、駆動輪80を駆動するための駆動力として、CVT31を介して駆動輪80に伝達される。なお、エンジン走行モードは、例えば、各モータジェネレータが故障している場合や高電圧バッテリ50の残存容量SOC(State Of Charge)が不足している場合等により、正常に動作できないときに選択される。
【0043】
ハイブリッド走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46をすべて締結する。また、エンジンECU200は、エンジン10を駆動させ、トルクを出力させる。また、モータECU400は、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方を駆動させ、トルクを出力させる。それにより、エンジン10から出力されるトルクが、CVT31を介してモータ軸25に伝達され、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方から出力されるトルクと合わせて、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0044】
さらに、エンジン10を始動させる際に、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42を締結させる。また、モータECU400は、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20を駆動させ、第1のモータジェネレータ20の駆動力によりエンジン10をクランキングさせる。このとき、エンジン10と第1のモータジェネレータ20との差回転により車両の前後振動が発生しないように、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42を締結させる前に、第1の伝達クラッチ44を開放させる。
【0045】
本実施形態に係る駆動系1では、通常状態におけるすべての走行モードにおいて、車両の減速時に、第2のモータジェネレータ24に駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって、発電させることができる。また、ツインモータEV走行モード、エンジン走行モード、及びハイブリッド走行モードにおいて、車両の減速時に、第1のモータジェネレータ20に駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって、発電させることができる。また、シングルモータEV走行モード及びハイブリッド走行モードにおいて、エンジン10からの駆動力の一部又は全部により第1のモータジェネレータ20に発電させることができる。さらに、エンジン走行モードにおいて、エンジン10からの駆動力の一部により第1のモータジェネレータ20に発電させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る駆動系1では、第1のモータジェネレータ20が、エンジン10のスタータモータとしての機能を有する。したがって、エンジン10の始動時又は停止時にしか使用されていなかった従来のスタータモータを省略することができる。また、第1のモータジェネレータ20は、オイルポンプ28と一体となって電動オイルポンプとしての機能を有する。従って、エンジン10又は駆動輪80が停止し、ギヤ式のオイルポンプ15により作動油圧を生成できない場合にしか使用されていなかった従来の電動オイルポンプを省略することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る駆動系1では、第1のモータジェネレータ20が、第1の伝達クラッチ44を介して、CVT31のプライマリプーリ33に連設されており、走行中において、第1のモータジェネレータ20を駆動モータとして機能させることができる。従って、車両の動力性能を向上させることができる。さらに、エンジン10により車両の駆動力を発生させている間、エンジン10の出力に余剰の駆動力がある場合には、第1のモータジェネレータ20を発電機として機能させることができる。したがって、車両の燃費性能を向上させることができる。
【0048】
[1−2.ハイブリッドECU100が故障したときにおける各ECUの機能]
続いて、ハイブリッドECU100が故障したときにおける各ECUの機能の詳細について、説明する。
【0049】
(エンジンECU)
エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときに、エンジン10に駆動力を出力させることによって駆動輪80を駆動する。また、エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときに、駆動輪80の駆動に用いられる駆動力の他に、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方による発電に用いられる駆動力をエンジン10に出力させてもよい。以下、エンジン10によって出力される駆動力のうち、駆動輪80の駆動に用いられる駆動力に対応するトルクを走行用エンジントルクと呼び、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方による発電に用いられる駆動力に対応するトルクを発電用エンジントルクと呼ぶ。
【0050】
エンジンECU200は、例えば、走行用エンジントルクの目標値及び発電用エンジントルクの目標値をそれぞれ算出し、算出された走行用エンジントルクの目標値及び発電用エンジントルクの目標値の合計値をエンジン10によって出力されるトルクの目標値として決定する。そして、エンジンECU200は、エンジン10によって出力されるトルクが走行用エンジントルクの目標値及び発電用エンジントルクの目標値の合計値となるように、エンジン10を制御する。
【0051】
エンジンECU200は、アクセル開度に基づいて、走行用エンジントルクの目標値を算出してもよい。具体的には、エンジンECU200は、走行用エンジントルクの目標値として、アクセル開度が大きいほど、大きい値を算出する。エンジンECU200は、アクセルオフ時には、例えば、エンジン10のアイドル回転を維持するためのトルクを、走行用エンジントルクの目標値として、算出してもよい。
【0052】
エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、エンジン10により出力される駆動力のうち、第1のモータジェネレータ20による発電に用いられる駆動力を、車速に基づいて、制御してもよい。アクセルオフ時には、後述するように、トランスミッションECU300により、駆動輪80及び第2のモータジェネレータ24とエンジン10との動力の伝達は遮断され、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電が可能な状態となる。また、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって第2のモータジェネレータ24により発電可能な電力は、車速が高いほど大きい。ゆえに、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電における発電量に応じて、適切にエンジン10により出力される駆動力を低減させることができる。
【0053】
例えば、エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、第1のモータジェネレータ20による発電に用いられる駆動力のエンジン10による出力を、車速が閾値より高い場合に、停止させてもよい。当該閾値は、車両の減速時に、駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって第2のモータジェネレータ24により発電され得る電力が、ハイブリッドECU100の故障時に高電圧バッテリ50へ充電される電力の目標値(以下、充電目標値とも呼ぶ。)を上回る程度に、車速が高いか否かを判定し得る値に設定され得る。また、充電目標値は、車両の各種設計仕様に応じて適宜設定され得る。ゆえに、駆動輪80の運動エネルギを用いた発電によって充電目標値を上回る電力が確保される場合において、エンジン10により出力される駆動力を効果的に低減させることができる。
【0054】
具体的には、エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、車速に基づいて、発電用エンジントルクの目標値を算出する。例えば、エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、車速が閾値TH1より高い場合に、発電用エンジントルクの目標値として0を算出し、車速が閾値TH1以下の場合に、発電用エンジントルクの目標値として0より大きい所定のトルクを算出してもよい。当該閾値TH1は、車両の減速時に、駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって第2のモータジェネレータ24により発電され得る電力が、充電目標値を上回る程度に、車速が高いか否かを判定し得る値に設定される。
【0055】
後述するように、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24により発電される電力が充電目標値を上回るように、インバータ70に制御指令を出力することによって、各モータジェネレータの発電を制御する。車速が閾値TH1以下の場合に算出され得る上記所定のトルクは、各モータジェネレータが制御指令値に相当する電力を発電できるように設定される。例えば、当該所定のトルクは、エンジン10からの出力を用いた発電のみが行われる場合であっても、充電目標値を上回る電力が発電され得るように設定される。エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオン時には、車速によらず、発電用エンジントルクの目標値として当該所定のトルクを算出する。
【0056】
なお、エンジンECU200は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、発電用エンジントルクの目標値として、車速が大きいほど、小さい値を算出してもよい。
【0057】
(モータECU)
モータECU400は、ハイブリッドECU100が故障したときに、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24により発電される電力が充電目標値を上回るように、インバータ70に制御指令を出力することによって、各モータジェネレータの発電を制御する。具体的には、モータECU400は、ハイブリッドECU100が故障したときに、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24により発電される電力が充電目標値より高い所定の電力となるように、各モータジェネレータの発電を制御する。また、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合を算出し、算出された割合に従って、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24を制御する。
【0058】
本実施形態に係るモータECU400は、ハイブリッドECU100が故障したときに、車速が高くなるにつれて、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合を増大させる。具体的には、モータECU400は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、車速が高いほど、大きい値を算出する。
【0059】
それにより、車両の加速時に、車速の上昇に伴って、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合を増大させることができる。ここで、上述したように、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって第2のモータジェネレータ24により発電可能な電力は、車速が高いほど大きい。ゆえに、本実施形態によれば、走行状態が加速から減速へ切り替わることに伴って、第2のモータジェネレータ24による発電がエンジン10からの出力を用いた発電から駆動輪80の運動エネルギを用いた発電へ切り替わる際における、第2のモータジェネレータ24による発電の応答性を良好にすることができる。
【0060】
それにより、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電量を、車速に応じて適切に確保することができる。よって、車両の減速時において、エンジン10により出力される駆動力のうち、第1のモータジェネレータ20による発電に用いられる駆動力を、第2のモータジェネレータ24による発電における発電量に応じて、低減させることができる。従って、ハイブリッドECU100が故障した場合に、燃料消費量を低減することができるので、走行可能な距離をより増大させることが可能となる。
【0061】
モータECU400は、例えば、車速が閾値TH2より低い場合、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、0を算出する。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合が0であるとき、第1のモータジェネレータ20によって発電が行われ、第2のモータジェネレータ24による発電は制限される。
【0062】
ここで、車速が比較的低い場合、第2のモータジェネレータ24に駆動輪80の運動エネルギを回生させることによって、駆動輪80へ過剰に大きい制動力が掛かるおそれがある。例えば、当該閾値TH2は、このように過剰に大きい制動力が駆動輪80へ掛かることを防止する観点から、閾値TH1より低い値に適宜設定され得る。
【0063】
また、モータECU400は、車速が閾値TH1より高い場合、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、1を算出する。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合が1であるとき、第2のモータジェネレータ24によって発電が行われ、第1のモータジェネレータ20による発電は制限される。このように、モータECU400は、ハイブリッドECU100が故障したときに、車速が閾値より高い場合に、第1のモータジェネレータ20による発電を停止させてもよい。
【0064】
また、モータECU400は、車速が閾値TH2以上、かつ、閾値TH1以下の場合、車速が高くなるにつれて、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合が増大するように、当該割合として0から1の間の値を算出する。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合が0から1の間の値であるとき、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24によって、当該割合に従って、発電が行われる。
【0065】
(トランスミッションECU)
トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100が故障したときに、アクセル開度に応じて、各クラッチの断接を制御する。
【0066】
具体的には、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、駆動輪80及び第2のモータジェネレータ24とエンジン10との動力の伝達を遮断し、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電が可能な状態にする。例えば、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、エンジンクラッチ42を締結し、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46を開放する。それにより、駆動輪80及び第2のモータジェネレータ24とエンジン10との動力の伝達は遮断される。また、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電が可能な状態になる。ゆえに、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電の効率を向上させることができるので、エンジン10により出力される駆動力をより効果的に低減させることができる。
【0067】
また、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオン時に、エンジン10と駆動輪80との動力の伝達を接続する。例えば、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオン時に、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46をすべて締結する。それにより、エンジン10と駆動輪80との動力の伝達は接続される。
【0068】
なお、トランスミッションECU300は、ハイブリッドECU100が故障したときに、CVT31の変速比を、所定の変速比になるように、制御してもよい。当該所定の変速比は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるエンジン10の出力特性に応じて、適宜設定され得る。
【0069】
<2.動作>
続いて、ハイブリッドECU100が故障したときにおける、本実施形態に係る制御システム900が行う処理の流れについて説明する。
【0070】
まず、
図2を参照して、ハイブリッドECU100が故障したときにおける、エンジンECU200が行う処理の流れについて説明する。
図2は、ハイブリッドECU100が故障したときにおける、本実施形態に係るエンジンECU200が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図2に示したように、ハイブリッドECU100が故障したときにおいて、エンジンECU200は、アクセルがオフであるか否かを判定する(ステップS502)。アクセルがオフであると判定されなかった場合(ステップS502/NO)、エンジンECU200は、発電用エンジントルクの目標値として所定のトルクを算出する(ステップS504)。
【0071】
一方、アクセルがオフであると判定された場合(ステップS502/YES)、エンジンECU200は、車速が閾値TH1より高いか否かを判定する(ステップS506)。車速が閾値TH1より高いと判定されなかった場合(ステップS506/NO)、エンジンECU200は、発電用エンジントルクの目標値として所定のトルクを算出する(ステップS504)。一方、車速が閾値TH1より高いと判定された場合(ステップS506/YES)、エンジンECU200は、発電用エンジントルクの目標値として0を算出する(ステップS508)。
【0072】
続いて、
図3〜
図9を参照して、ハイブリッドECU100が故障したときにおける、本実施形態に係る制御システム900の各ECUが行う処理の流れについて、各時刻についての駆動系1の動作状態とともに説明する。
【0073】
図3は、ハイブリッドECU100が故障したときに、本実施形態に係る制御システム900による制御が行われた場合における、各種状態量の推移の一例を示す説明図である。また、
図4〜
図9は、ハイブリッドECU100が故障したときにおける、各時刻についての駆動系1の動作状態について説明するための説明図である。
図4〜
図9において、破線は電力の流れを示し、一点鎖線は動力の流れを示す。
【0074】
図4は、
図3における時刻T2以前における駆動系1の動作状態を示す。また、
図4は、例えば、車両が停車している状態を示す。
図3に示したように、時刻T2以前において、アクセルはオフである。ゆえに、
図4に示したように、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42は締結され、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46は開放される。それにより、エンジン10と駆動輪80との動力の伝達は遮断される。
【0075】
時刻T2以前において、アクセルはオフであるので、エンジンECU200によって、走行用エンジントルクの目標値として、エンジン10のアイドル回転を維持するためのトルクが算出される。また、
図3に示したように、時刻T2以前において、車速は閾値TH1以下であるので、エンジンECU200によって、発電用エンジントルクの目標値として、所定のトルクが算出される。
【0076】
図3に示したように、時刻T2以前において、車速は閾値TH2より低い。ゆえに、モータECU400によって、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、0が算出される。それにより、
図4に示したように、エンジン10からの出力を用いて第1のモータジェネレータ20によって発電が行われ、第2のモータジェネレータ24による発電は制限される。
【0077】
図5は、
図3における時刻T2から時刻T4の間における駆動系1の動作状態を示す。
図3に示したように、時刻T2において、アクセルがオンに切り替わる。ゆえに、
図5に示したように、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46はすべて締結される。それにより、エンジン10と駆動輪80との動力の伝達は接続される。
【0078】
時刻T2から時刻T4の間、アクセルはオンであるので、エンジンECU200によって、走行用エンジントルクの目標値として、アクセル開度に応じた値が算出される。それにより、
図3に示したように、時刻T2から時刻T4の間、走行用エンジントルクが上昇する。それにより、
図5に示したように、エンジン10から出力される駆動力が、CVT31を介して駆動輪80に伝達される。また、発電用エンジントルクの目標値は、所定のトルクに維持される。
【0079】
図3に示したように、車速は、時刻T2において上昇し始め、時刻T4において閾値TH2に到達する。ゆえに、時刻T2から時刻T4の間、車速は閾値TH2より低い。ゆえに、モータECU400によって、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、0が算出される。それにより、
図5に示したように、エンジン10からの出力を用いて第1のモータジェネレータ20によって発電が行われ、第2のモータジェネレータ24による発電は制限される。
【0080】
図6は、
図3における時刻T4から時刻T6の間の時刻における駆動系1の動作状態を示す。
図3に示したように、時刻T4から時刻T6の間、アクセルがオンである状態が引き続き継続される。ゆえに、
図6に示したように、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46がすべて締結された状態が引き続き継続される。
【0081】
時刻T4から時刻T6の間、アクセルがオンである状態が引き続き継続されるので、走行用エンジントルクの目標値は維持される。それにより、時刻T4以後において、走行用エンジントルクは継続して上昇する。そして、
図3に示したように、走行用エンジントルクは目標値に到達した後、時刻T6までの間、当該目標値に維持される。それにより、
図6に示したように、エンジン10から出力される駆動力が、CVT31を介して駆動輪80に伝達される。また、発電用エンジントルクの目標値は、所定のトルクに維持される。
【0082】
図3に示したように、車速は、時刻T4において閾値TH2を上回り、時刻T6において閾値TH1に到達する。ゆえに、時刻T4から時刻T6の間、車速は閾値TH2以上、かつ、閾値TH1以下である。ゆえに、モータECU400によって、車速が高くなるにつれて、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合が増大するように、当該割合として0から1の間の値が算出される。それにより、
図6に示したように、エンジン10からの出力を用いて第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24によって、当該割合に従って、発電が行われる。
【0083】
このように、本実施形態によれば、ハイブリッドECU100が故障したときにおける車両の加速時に、車速の上昇に伴って、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合を増大させることができる。それにより、第2のモータジェネレータ24による発電がエンジン10からの出力を用いた発電から駆動輪80の運動エネルギを用いた発電へ切り替わる際における、第2のモータジェネレータ24による発電の応答性を良好にすることができる。それにより、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電量を、車速に応じて適切に確保することができる。
【0084】
図7は、
図3における時刻T6から時刻T8の間の時刻における駆動系1の動作状態を示す。
図3に示したように、時刻T6から時刻T8の間、アクセルがオンである状態が引き続き継続される。ゆえに、
図7に示したように、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42、第1の伝達クラッチ44、及び第2の伝達クラッチ46がすべて締結された状態が引き続き継続される。
【0085】
時刻T6から時刻T8の間、アクセルがオンである状態が引き続き継続されるので、走行用エンジントルクの目標値は維持される。ゆえに、
図3に示したように、時刻T6から時刻T8の間、走行用エンジントルクは当該目標値に維持される。それにより、
図7に示したように、エンジン10から出力される駆動力が、CVT31を介して駆動輪80に伝達される。また、発電用エンジントルクの目標値は、所定のトルクに維持される。
【0086】
図3に示したように、車速は、時刻T6において閾値TH1を上回り、継続して上昇する。ゆえに、時刻T6から時刻T8の間、車速は閾値TH1より高い。ゆえに、モータECU400によって、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、1が算出される。それにより、
図7に示したように、エンジン10からの出力を用いて第2のモータジェネレータ24によって発電が行われ、第1のモータジェネレータ20による発電は制限される。
【0087】
図8は、
図3における時刻T8から時刻T10の間の時刻における駆動系1の動作状態を示す。
図3に示したように、時刻T8において、アクセルがオフに切り替わる。ゆえに、
図8に示したように、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42は締結され、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46は開放される。それにより、駆動輪80及び第2のモータジェネレータ24とエンジン10との動力の伝達は遮断される。また、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電が可能な状態になる。
【0088】
時刻T8から時刻T10の間、アクセルはオフであるので、エンジンECU200によって、走行用エンジントルクの目標値として、エンジン10のアイドル回転を維持するためのトルクが算出される。それにより、
図3に示したように、時刻T8において、走行用エンジントルクは降下し始める。そして、走行用エンジントルクは、エンジン10のアイドル回転を維持するためのトルクに到達した後、時刻T10までの間、当該トルクに維持される。
【0089】
また、
図3に示したように、車速は、時刻T8において降下し始め、時刻T10において閾値TH1に到達する。ゆえに、時刻T8から時刻T10の間、車速が閾値TH1より高い状態が引き続き継続される。さらに、上述したようにアクセルはオフである。よって、エンジンECU200によって、発電用エンジントルクの目標値として、0が算出される。換言すると、時刻T8以後において、発電用エンジントルクのエンジン10による出力は、エンジンECU200によって、停止される。
【0090】
上述したように、時刻T8から時刻T10の間、車速が閾値TH1より高い状態が引き続き継続される。ゆえに、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合として、1が維持される。また、時刻T8においてアクセルがオフに切り替わり、車両の減速が開始するので、
図8に示したように、時刻T8以後において、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電が行われる。一方、
図8に示したように、時刻T8から時刻T10の間、第1のモータジェネレータ20による発電は制限される。このように、モータECU400は、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、車速が閾値より高い場合に、第1のモータジェネレータ20による発電を停止させてもよい。
【0091】
以上のように、本実施形態によれば、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電によって充電目標値を上回る電力が確保される場合において、発電用エンジントルクの目標値を0にすることによって、エンジン10により出力される駆動力を効果的に低減することができる。
【0092】
図9は、
図3における時刻T10から時刻T12の間の時刻における駆動系1の動作状態を示す。
図3に示したように、時刻T10から時刻T12の間、アクセルがオフである状態が引き続き継続される。ゆえに、
図9に示したように、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42が締結され、第1の伝達クラッチ44及び第2の伝達クラッチ46が開放された状態が引き続き継続される。
【0093】
時刻T10から時刻T12の間、アクセルがオフである状態が引き続き継続されるので、走行用エンジントルクの目標値は、エンジン10のアイドル回転を維持するためのトルクに維持される。ゆえに、時刻T10から時刻T12の間、走行用エンジントルクは、エンジン10のアイドル回転を維持するためのトルクに引き続き維持される。
【0094】
また、
図3に示したように、車速は、時刻T10において閾値TH1を下回り、時刻T12において閾値TH2に到達する。ゆえに、時刻T10から時刻T12の間、車速は閾値TH1以下である。よって、エンジンECU200によって、発電用エンジントルクの目標値として、所定のトルクが算出される。
【0095】
図3に示したように、時刻T10から時刻T12の間、車速は閾値TH2以上、かつ、閾値TH1以下である。ゆえに、モータECU400によって、車速が高くなるにつれて、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合が増大するように、当該割合として0から1の間の値が算出される。それにより、
図9に示したように、エンジン10からの出力を用いて第1のモータジェネレータ20によって発電が行われる。また、駆動輪80の運動エネルギを用いて第2のモータジェネレータ24によって発電が行われる。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24は、当該割合に従って、発電を行う。
【0096】
このように、本実施形態によれば、ハイブリッドECU100が故障したときにおける車両の減速時に、車速の低下に伴って、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合を減少させることができる。それにより、車両の減速時において、駆動輪80へ掛かる制動力を、車速に応じて適切に調整することができる。ゆえに、過剰に大きい制動力が駆動輪80へ掛かることを防止することができる。
【0097】
時刻T12以後において、アクセルがオフである状態が引き続き継続される。また、時刻T12において、車速は閾値TH2を下回る。ゆえに、時刻T12以後において、車速は閾値TH2より低い。よって、時刻T12以後における駆動系1の動作状態は、
図4に示した動作状態となる。
【0098】
<3.変形例>
上述した駆動系1では、第2のモータジェネレータ24のモータ軸25は、第2の伝達クラッチ46を介して、セカンダリ軸36に連設されているが、第2のモータジェネレータ24の配置は係る例に限定されない。以下、駆動系1と比較して、第2のモータジェネレータ24の配置が異なる変形例に係る駆動系2について説明する。
【0099】
図10は、変形例に係るハイブリッド車両の駆動系2の概略構成の一例を示す模式図である。変形例に係る駆動系2では、
図1を参照して説明した駆動系1と比較して、第2のモータジェネレータ24の配置が異なる。また、変形例に係る駆動系2は、駆動系1と異なり、第2の伝達クラッチ46を備えない。
図10に示したように、変形例では、第2のモータジェネレータ24のモータ軸25は、プライマリ軸34に連設され、モータ軸25を介して出力される駆動力がプライマリ軸34に伝達可能になっている。また、セカンダリ軸36は、図示しない減速ギヤ及び駆動軸を介して駆動輪80に連設され、セカンダリ軸36を介して出力される駆動力が駆動輪80に伝達可能になっている。以下、変形例に係る駆動系2によって、ハイブリッドECU100が故障していない通常状態において、実現される各種走行モードについて説明する。
【0100】
変形例では、シングルモータEV走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42及び第1の伝達クラッチ44を開放する。また、モータECU400は、インバータ70を介して第2のモータジェネレータ24を駆動させ、トルクを出力させる。それにより、高電圧バッテリ50からインバータ70を介して第2のモータジェネレータ24へ電力が供給される。そして、第2のモータジェネレータ24から出力されるトルクが、CVT31を介してセカンダリ軸36に伝達され、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0101】
また、変形例では、ツインモータEV走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42を開放し、第1の伝達クラッチ44を締結する。また、モータECU400は、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24をそれぞれ駆動させ、トルクを出力させる。それにより、高電圧バッテリ50からインバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24へ電力が供給される。そして、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24から出力されるトルクが、CVT31を介してセカンダリ軸36に伝達され、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0102】
また、変形例では、エンジン走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42及び第1の伝達クラッチ44を締結する。また、エンジンECU200は、エンジン10を駆動させ、トルクを出力させる。それにより、エンジン10から出力されるトルクが、CVT31を介してセカンダリ軸36に伝達され、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0103】
また、変形例では、ハイブリッド走行モードの場合、トランスミッションECU300は、エンジンクラッチ42及び第1の伝達クラッチ44を締結する。また、エンジンECU200は、エンジン10を駆動させ、トルクを出力させる。また、モータECU400は、インバータ70を介して第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方を駆動させ、トルクを出力させる。それにより、エンジン10から出力されるトルクが、CVT31を介してセカンダリ軸36に伝達され、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方から出力されるトルクと合わせて、駆動輪80を駆動するための駆動力として、駆動輪80に伝達される。
【0104】
続いて、ハイブリッドECU100が故障したときに、上述した制御システム900による制御が行われた場合における、変形例に係る駆動系2の動作状態について説明する。
【0105】
変形例では、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオフ時に、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42は締結され、第1の伝達クラッチ44は開放される。それにより、駆動輪80及び第2のモータジェネレータ24とエンジン10との動力の伝達は遮断される。また、駆動輪80の運動エネルギを用いた第2のモータジェネレータ24による発電が可能な状態になる。
【0106】
エンジンECU200は、第1のモータジェネレータ20による発電に用いられる駆動力をエンジン10に出力させてもよい。その場合、エンジン10から出力される当該駆動力が、エンジンクラッチ42を介してモータ軸21に伝達され、第1のモータジェネレータ20によって発電が行われ得る。また、駆動輪80の運動エネルギが、CVT31を介してモータ軸25に伝達される。第2のモータジェネレータ24は、当該運動エネルギを用いて発電してもよい。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電は、上述したように、モータECU400によって制御される。
【0107】
変形例では、ハイブリッドECU100が故障したときにおけるアクセルオン時に、トランスミッションECU300によって、エンジンクラッチ42及び第1の伝達クラッチ44は締結される。それにより、エンジン10と駆動輪80との動力の伝達は接続される。また、エンジンECU200は、エンジン10を駆動させ、駆動輪80を駆動するための駆動力を出力させる。それにより、エンジン10から出力される駆動力が、CVT31を介してセカンダリ軸36に伝達され、駆動輪80に伝達される。
【0108】
また、エンジンECU200は、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24のうちの少なくとも一方による発電に用いられる駆動力をエンジン10に出力させる。エンジン10から出力される当該駆動力は、エンジンクラッチ42を介してモータ軸21に伝達されるので、第1のモータジェネレータ20によって発電が行われ得る。また、エンジン10から出力される当該駆動力は、プライマリ軸34を介してモータ軸25に伝達されるので、第2のモータジェネレータ24によって発電が行われ得る。第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電は、上述したように、モータECU400によって制御される。
【0109】
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態によれば、モータECU400は、ハイブリッドECU100が故障したときに、車速が高くなるにつれて、第1のモータジェネレータ20及び第2のモータジェネレータ24による発電量に対する第2のモータジェネレータ24による発電量の割合を増大させる。ゆえに、走行状態が加速から減速へ切り替わることに伴って、第2のモータジェネレータ24による発電がエンジン10からの出力を用いた発電から駆動輪80の運動エネルギを用いた発電へ切り替わる際における、第2のモータジェネレータ24による発電の応答性を良好にすることができる。それにより、車両の減速時において、駆動輪80の運動エネルギを用いた発電による発電量を、車速に応じて適切に確保することができる。よって、車両の減速時において、エンジン10により出力される駆動力のうち、第1のモータジェネレータ20による発電に用いられる駆動力を、第2のモータジェネレータ24による発電における発電量に応じて、低減させることができる。従って、ハイブリッドECU100が故障した場合に、燃料消費量を低減することができるので、走行可能な距離をより増大させることが可能となる。
【0110】
また、上記では、本実施形態に係る車両の駆動系1がモータジェネレータを2つ備える例について説明したが、本発明の技術的範囲は、係る例に限定されない。例えば、モータジェネレータを3つ以上備える車両についても本発明を適用し得る。
【0111】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0112】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。