(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1突出部は前記配管部の内部まで突出して、該配管部に前記廂部が一体形成されるとともに該第1突出部の側方に切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却機構。
前記配管部の端部より下流側に配置され、前記容器部の下壁から該端部より上方まで突出する第2突出部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却機構。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、モータ100をロータ110の回転軸方向から見た図である。なお、
図1中、ロータ110の回転軸方向(以下、単に軸方向と称す)をX軸とする。モータ100は、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載され、ロータ110と、ステータ120とを含んで構成される。
【0015】
ロータ110は、永久磁石を含んで構成され、シャフト112によって、ステータ120の中心孔120aに回転自在に挿通される。具体的に説明すると、ロータ110は、その外周面がステータ120の内周面と離間した状態で、シャフト112に固定されており、シャフト112はベアリング(不図示)によってケースCに回転自在に軸支される。つまり、ロータ110は、ケースCに回転自在に軸支されることとなる。
【0016】
ステータ120は、ステータコア122と、コイル124とを含んで構成される。ステータコア122の本体部126は、円筒形状であり、本体部126の径方向内側には、複数の巻装部(不図示)が形成されており、巻装部に巻線が巻装されてコイル124が形成される。なお、軸方向(
図1中、X軸方向)におけるコイル124の両端は、樹脂等の絶縁体で構成されるモールド部によって封止されている。
【0017】
本体部126の外周面126aには、径方向外方に突出するとともに、軸方向(
図1中、X軸方向)に延在した突起128が設けられている。本実施形態において、突起128は、本体部126の周方向に所定間隔離隔して複数箇所(本実施形態では、3箇所)設けられている。以下、突起128のうち、最も鉛直上方に位置する突起128を第1突起128a、最も鉛直下方に位置する突起128を第2突起128b、第1突起128aと第2突起128bとの間に位置する突起128を第3突起128cと称する。
【0018】
また、突起128には、軸方向に貫通する貫通孔128dが設けられており、貫通孔128dに不図示の固定具(ボルト)が挿通され、ステータ120が固定具によってケースCに固定される。こうして、ケースCは、所定の間隔を維持してステータ120の外周面126aを囲繞することとなる。
【0019】
ステータ120の上方であって、ステータ120とケースCとの間には、冷却機構130が配される。冷却機構130は、配管部140と、容器部150と、スロープ160(傾斜部)を含んで構成され、オイル等の冷却液をモータ100におけるステータ120の外周面126aに掛け流して、モータ100(ステータ120)を冷却する。
【0020】
図2は、冷却機構130の外観斜視図である。配管部140は、軸方向(X軸方向)に延在した管であり、不図示の冷却液供給手段によって冷却液が導入される。
【0021】
容器部150は、ステータ120の上方に設けられ、Y軸方向よりもX軸方向に長く延在する。容器部150は、下壁152を有し、下壁152の外周から側壁154が立設する容器状の部材である。容器部150の上面は開口しており、容器部150の内部が露出している。このように、上面を開口した形状とすることで、容器部150を単体の部品で構成でき、部品点数を削減するとともに組立工数を削減することが可能となる。
【0022】
側壁154のうち、短手方向(Y軸方向)に延在する短壁154a、154bが対向配置されるとともに、長手方向(X軸方向)に延在する長壁154c、154dが対向配置される。短壁154aには、短手方向の中心部に配管部140が挿通されており、配管部140の端部142は、容器部150の内部に突出している。配管部140は、例えば、容器部150に溶着されている。短壁154bには、短手方向の中心部に、配管部140の端部142に向かってX軸方向に突出する分流壁154eが形成される。
【0023】
下壁152には、傾斜面152a、152b、152c、152dが形成される。傾斜面152a、152b、152c、152dは、それぞれ、短壁154a側より短壁154b側が低くなる向きに僅かに傾斜している。
【0024】
そして、傾斜面152aと傾斜面152bとの間には、段差面152eが形成される。段差面152eは、傾斜面152a、152bよりも急な傾斜勾配で傾斜面152a、152bと逆向きに傾斜する。傾斜面152bと傾斜面152cとの間、および、傾斜面152cと傾斜面152dとの間にも、同様の形状の段差面152f、152gが設けられる。
【0025】
また、下壁152には、Z軸方向に貫通する流下孔152hが4隅に(傾斜面152a、152dに2つずつ)形成されている。また、傾斜面152b、152cに合わせて3つの流下孔152hが形成されている。
【0026】
下壁152の段差面152eには、邪魔板156a、156bが設けられ、段差面152fには、邪魔板156c、156dが設けられる。邪魔板156a、156b、156c、156dは、長壁154c側と長壁154d側に1つずつ設けられる。2つの邪魔板156a、156b、および、2つの邪魔板156c、156dは、互いに隙間Sa、Sbを空けて配置される。隙間Saには、配管部140の端部142が位置する。
【0027】
邪魔板156a、156bは、邪魔板156c、156dよりも短手方向に長く延在しており、隙間Sbは隙間Saよりも広い。邪魔板156a、156cは長壁154cと離隔し、邪魔板156b、156dは、長壁154dと離隔している。
【0028】
また、下壁152には、溝部152iが形成される。溝部152iは、配管部140の端部142から、邪魔板156a、156bの隙間Saを通って段差面152fまでX軸方向に沿って延在している。
【0029】
下壁152には、複数の突出部158が設けられる。突出部158は、大凡円柱形状であって、中心軸が下壁152に対して大凡垂直となる向きに立設している。
【0030】
スロープ160の本体部160aは、X軸方向の幅が長壁154dよりも短く、一端160bが容器部150の長壁154dのうち、短壁154b側(配管部140と反対側)に接続されている。長壁154dのうち、スロープ160が接続される部位は、長壁154dの他の部位よりも高さが低くなっており、長手方向に離隔して複数の窪み154fが形成される。
【0031】
スロープ160の本体部160aの他端160cは、一端160b(容器部150)よりもYZ軸平面において斜め下方に位置している。そして、スロープ160は、一端160bから他端160cへ、ステータ120に形成された第1突起128aに向かって延在する(
図1参照)。詳細には、スロープ160の他端160cは、第1突起128aの鉛直上方に位置する。
【0032】
スロープ160の本体部160aには、ガイド壁162、164が形成される。ガイド壁162は、スロープ160の本体部160aのうち、幅方向の両端から立設する。ガイド壁164は、本体部160aの幅方向の大凡中心から立設する。本体部160aの他端160cには、2つのガイド壁162の間に窪み160dが形成されており、ガイド壁164は、窪み160dの分だけ、ガイド壁162よりも短くなっている。
【0033】
配管部140を流通した冷却液は、配管部140の端部142から容器部150の内部に流出する。そして、冷却液は、段差面152e、152f、152g、邪魔板156a、156b、156c、156d、および、複数の突出部158によって、流速を低下させながら、流下孔152hから流下してモータ100のステータ120に供給される。また、冷却液の一部は、長壁154d(窪み154f)を乗り越えてスロープ160のガイド壁162、164の間を流れ、スロープ160の他端160cから流下する。
【0034】
図3は、モータ100および冷却機構130を、
図1に対して側面側から見た図である。
図3に示すように、モータ100は、シャフト112の回転軸が水平方向から所定の傾斜角(例えば、5.7度程度)、
図3中、反時計回りに傾斜して設置されている。冷却機構130は、モータ100に合わせて傾斜して設置される。
【0035】
スロープ160の他端160cから第1突起128aに流下した冷却液は、本体部126の外周面126aに沿って周方向に流下しつつ、ロータ110の回転軸の傾斜に沿って、
図3中、左下に流れる。そこで、スロープ160を容器部150の長壁154dのうち、
図3中、右側(短壁154b側)に偏らせて配置している。そのため、モータ100は全体として水平方向に対して傾斜しているが、冷却液を第1突起128aより下方の外周面126aに満遍なく行き渡らせることができる。
【0036】
図4は、配管部140の端部142の内部を説明するための図であり、
図4(a)には、端部142近傍について、端部142の中心軸を通るXZ軸平面の断面を示し、
図4(b)は、
図4(a)を上方から見た図を示す。
【0037】
図4に示すように、端部142には、下壁152側に切り欠き部142aが形成される。切り欠き部142aは、端部142のうち下壁152側の略半分が切り欠かれることによって形成されており、後述する第1突出部158aの側方に延在する。
【0038】
また、端部142には、切り欠き部142aが形成された残りの部分である廂部142cが一体的に設けられる。廂部142cは、端部142のうち、上方(下壁152と反対側)の部位である。
【0039】
下壁152に設けられた複数の突出部158の一つである第1突出部158aは、廂部142cと対向する下壁152から立設し、切り欠き部142aを通って配管部140の内部まで突出している。第1突出部158aの先端(上方)は、廂部142cに覆われるとともに廂部142cから離隔して、廂部142cとの間に間隙Scを有する。
【0040】
また、下壁152に設けられた複数の突出部158の一つである第2突出部158bは、端部142より冷却液の流れ方向の下流側に配置される。第2突出部158bは、第1突出部158aより下流側に位置し、端部142の開口142bに対向し、容器部150の下壁152から配管部140の端部142より上方まで突出する。
【0041】
配管部140を流通する冷却液は、第1突出部158aに衝突しY軸の正方向と負方向および第1突出部158aの上方に分流するとともに減速される。そして、第1突出部158aの上方を通り第2突出部158bに到達した冷却液は、第2突出部158bによってY軸の正方向と負方向に分流するとともに減速される。
【0042】
そのため、冷却液が容器部150内で減速され、他の側壁154から冷却液を飛散させずに長壁154dからスロープ160に導くことができる。そのため、スロープ160を介して多量の冷却液を第1突起128aに導くことができ、モータ100の冷却性能を向上することが可能となる。
【0043】
また、廂部142cが設けられていることから、容器部150の上面から冷却液が飛散し難く、スロープ160や流下孔152hから冷却液を流下させて、効率的にモータ100を冷却することができる。
【0044】
図5は、複数の突出部158の配置を説明するための図であり、容器部150および配管部140の上面図を示す。複数の突出部158のうち、第1突出部158aおよび第2突出部158b以外の突出部158を第3突出部158cと称す。
図5に示すように、第3突出部158cは、第1突出部158aおよび第2突出部158bよりも下流側に位置し、下流側(短壁154b側)ほど複数の第3突出部158cが広範囲に拡散して配置される。また、第3突出部158cは、第2突出部158bと同様、下壁152から配管部140の端部142より上方まで突出する。
【0045】
これらの第3突出部158cは、千鳥状(互い違い)に配置される。具体的には、第3突出部158cは第2突出部158bとスロープ160との間または流下孔152hとの間に配置される。配管部140の端部142から流出した冷却液は、第3突出部158cに衝突しながら、第3突出部158c間の隙間を通って短壁154b側に流れる。
【0046】
このように、複数の第3突出部158cを設けることで、冷却液の流速を減速することが可能となる。その上、複数の第3突出部158cを千鳥状に配列することで、冷却液が効率的に減速される。
【0047】
また、分流壁154eに導かれた冷却液は、分流壁154eで
図5中、上下に分流されて減速される。端部142から短壁154b側に向かう冷却液の一部は、短壁154b側から短壁154a側に押し戻され、邪魔板156aと長壁154cの隙間、および、邪魔板156bと長壁154dの隙間から、端部142の両側の流下孔152hに導かれる。
【0048】
このように、冷却機構130は、配管部140から流出する冷却液を効率的に減速し、スロープ160や流下孔152hから流下させる。そのため、第1突起128aがあっても、冷却液がスロープ160から第1突起128aを乗り越えるとき、側壁154を乗り越えてステータ120の上方(第1突起128aよりも手前側)に飛散する飛散量を抑え、多量の冷却液をモータ100に掛け流して効率的に冷却することが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上述した実施形態のモータ100を、モータジェネレータとして機能させてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、第2突出部158b、第3突出部158cを設ける場合について説明したが、第2突出部158b、第3突出部158cは必須の構成ではない。ただし、第2突出部158b、第3突出部158cを設けることで、冷却液の減速効果が相乗的に向上し、モータ100を一層効率的に冷却することが可能となる。
【0052】
また、上述した実施形態では、第3突出部158cは、千鳥状に配列される場合について説明したが、第3突出部158cの配列は、千鳥状でなくてもよい。ただし、第3突出部158cを千鳥状に配列することで、冷却液が効率的に減速される。
【0053】
また、上述した実施形態では、配管部140は、容器部150と一体形成されている場合について説明したが、配管部140を容器部150と別体に形成してもよい。ただし、配管部140を容器部150と一体形成することで、部品点数を削減するとともに組立工数を削減することが可能となる。