特許第6606472号(P6606472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606472
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】走路形状認識装置、走路形状認識方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20191031BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20191031BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G06T1/00 330A
   G06T7/60 150S
   G08G1/16 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-132606(P2016-132606)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2018-5617(P2018-5617A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 知彦
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 直輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊輔
【審査官】 山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/172713(WO,A1)
【文献】 特開2010−211283(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0118552(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/081359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00−7/90
G08G 1/16
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段(10)から車両の進行方向前方の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像内における走路境界を示す複数の特徴点に基づいて、前記走路境界の形状を近似した第1の走路形状を算出する第1形状算出部と、
前記撮像画像における車両近方から車両遠方にかけて、前記第1の走路形状において前記特徴点との一致度が悪化する悪化位置を検出する位置検出部と、
前記悪化位置が検出された場合に、前記撮像画像内における前記悪化位置から前記車両遠方の走路境界の形状を近似した第2の走路形状を算出する第2形状算出部と、
前記悪化位置から前記車両近方の前記走路境界を前記第1の走路形状により認識し、前記悪化位置から前記車両遠方の前記走路境界を前記第2の走路形状により認識する認識部と、を備える走路形状認識装置。
【請求項2】
前記位置検出部は、前記第1の走路形状と前記特徴点との車両横方向でのずれ量を前記一致度として用いることで前記悪化位置を検出する、請求項1に記載の走路形状認識装置。
【請求項3】
前記画像取得部は、所定周期で前記撮像画像を取得し、
今回取得された前記撮像画像において算出された前記第1の走路形状に基づいて、その後に取得される前記撮像画像に対して前記第1の走路形状の算出に用いる前記特徴点を探索するための探索領域を設定する探索領域設定部、を備える請求項1又は請求項2に記載の走路形状認識装置。
【請求項4】
前記第2形状算出部により算出された前記第2の走路形状における前記車両近方側の端の位置を、前記第1の走路形状に近づけるよう変更する位置変更部を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の走路形状認識装置。
【請求項5】
前記第2形状算出部により算出された前記第2の走路形状における前記車両近方側の端の曲線の傾きを、前記第1の走路形状の前記車両遠方側の端の曲線の傾きに近づけるよう変更する曲線傾き変更部を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の走路形状認識装置。
【請求項6】
撮像手段から車両の進行方向前方の撮像画像を取得する画像取得工程と、
前記撮像画像内における前記車両が走行する走路境界を示す複数の特徴点に基づいて、前記走路境界の形状を近似した第1の走路形状を算出する第1形状算出工程と、
前記撮像画像における車両近方から車両遠方にかけて、前記第1の走路形状において前記特徴点との一致度が悪化する悪化位置を検出する位置検出工程と、
前記悪化位置が検出された場合に、前記撮像画像内における前記悪化位置から前記車両遠方の走路境界の形状を近似した第2の走路形状を算出する第2形状算出工程と、
前記悪化位置から前記車両近方の前記走路境界を前記第1の走路形状により認識し、前記悪化位置から前記車両遠方の前記走路境界を前記第2の走路形状により認識する認識工程と、を備える走路形状認識方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する走路の形状を認識する走路形状認識装置、及び走路形状認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像手段により車両の進行方向前方を撮像し、撮像画像から車両が走行する走路の形状等を認識する走路形状認識装置が知られている。例えば、走路形状認識装置は、撮像画像から白線等の区画線を示すエッジ点を検出し、各エッジ点を車両進行方向で結んだ線分を近似することで走路境界の形状を算出する。そして、算出した走路形状に基づいて走路を認識する。
【0003】
特許文献1では、撮像画像内の遠方での区画線を検出することを目的として、その定めた車両からの距離に基づいて撮像画像を近傍領域と遠方領域とに分けて、それぞれの領域で走路境界の形状を算出する走路形状認識装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−186515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、その定めた車両からの距離に基づいて撮像画像を一義的に近方と遠方とに分けて、それぞれの位置で走路境界の形状を算出する場合、遠方での走路境界の形状を適正に近似できない場合がある。例えば、走路の遠方に急カーブが存在する場合や、S字カーブにおいて近方と遠方とでカーブ形状が異なる場合に、車両進行方向において車両から走路形状が変化する位置までの距離は、車両が現在走行している位置に応じて時系列で変化する。そのため、撮像画像をその定めた車両からの距離に基づいて一義的に分けると、各領域を分ける位置が走路境界の形状が変化する位置から大きく外れてしまう場合がある。このような場合、遠方の走路境界の形状を適正に近似することができず、走路の認識性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、遠方の走路の認識性能を向上させることができる走路形状認識装置、及び走路形状認識方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明では、撮像手段から車両の進行方向前方の撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像内における前記車両が走行する走路境界を示す複数の特徴点に基づいて前記走路境界の形状を近似した第1の走路形状を算出する第1形状算出部と、前記撮像画像における車両近方から車両遠方にかけて前記第1の走路形状において前記特徴点との一致度が悪化する悪化位置を検出する位置検出部と、前記悪化位置が検出された場合に、前記撮像画像内における前記悪化位置から前記車両遠方の走路境界の形状を近似した第2の走路形状を算出する第2形状算出部と、前記悪化位置から前記車両近方の前記走路境界を前記第1の走路形状により認識し、前記悪化位置から前記車両遠方の前記走路境界を前記第2の走路形状により認識する認識部と、を備える。
【0008】
撮像画像内の走路境界を適正に近似できていない場合、この走路境界の特徴点と算出した走路形状との一致度が低下する位置が出現する。そこで、撮像画像内の走路境界を示す特徴点に基づいて第1の走路形状を算出し、この第1の走路形状と特徴点との一致度が悪化する悪化位置を車両近方から車両遠方にかけて検出する。そして、悪化位置を検出した場合に、この悪化位置から車両遠方に対しては新たな走路形状である第2の走路形状を算出し、この走路形状により走路を認識することとした。上記構成により、走路境界と算出した走路形状との一致度が悪化する位置を撮像画像毎に検出し、この位置から遠方の走路境界に対して新たな走路形状により認識を行うので遠方の走路の認識性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両制御装置100の構成を説明する図。
図2】車両からの距離に起因する走路境界と近似曲線との一致度の違いを説明する図。
図3】近似曲線を説明する図。
図4】形状認識処理を説明するフローチャート。
図5】一致度を説明する図。
図6】近似曲線を説明する図。
図7】第2近似曲線の変更を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる走路形状認識装置、及び走路形状認識方法の実施形態を図面と共に説明する。なお、以下の実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態に係る走路形状認識装置は車両を制御する車両制御装置の一部として構成されている。また、車両制御装置は、走路形状認識装置により算出された走路形状を用いて、自車両が白線等の区画線から逸脱しないように制御するレーンキーピングアシストを実施する。
【0012】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る車両制御装置100の構成について説明する。車両制御装置100は、カメラ装置10、走路形状認識ECU20、運転支援ECU30、を備えている。図1では、走路形状認識ECU20が走路形状認識装置として機能する。
【0013】
カメラ装置10は、撮像手段として機能し、自車両の進行方向前方を撮像する。カメラ装置10は、CCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等であり、その撮像方向を車両前方に向けた状態で自車両に搭載されている。詳しくは、カメラ装置10は、自車両の車幅方向の中央、例えばルームミラーに取り付けられており、車両前方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を撮像する。
【0014】
走路形状認識ECU20は、CPU、ROM、RAMを備えたコンピュータとして構成されている。そして、CPUが、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、画像取得部21、特徴検出部22、第1形状算出部23、位置検出部24、第2形状算出部25、認識部26として機能する。
【0015】
走路形状認識ECU20は、カメラ装置10からの撮像画像に基づいて、自車両が走行する走路を認識する。この実施形態では、走路形状認識ECU20は、走路境界の一例である区画線の形状を近似曲線により近似し、この近似曲線に基づいて自車両が走行する走路を認識する。
【0016】
運転支援ECU30は、図示しない各種センサから入力された車速やヨーレート等と走路形状認識ECU20による走路の認識結果とに基づいて、自車両を制御する。すなわち、車速及びヨーレートにより自車両の将来の位置を予測し、予測した将来の位置と走路の認識結果とを用いて、自車両が区画線を逸脱するおそれがあるか否かを判断する。例えば、運転支援ECU30が警報機能を有していれば、自車両が区画線を逸脱するおそれがあると判断した場合、自車両が備えるディスプレイにより警告表示を行ったり、自車両が備えるスピーカにより警告音を発生させたりする。また、運転支援ECU30が運転補助機能を有していれば、自車両が区画線を逸脱するおそれがあると判断した場合、操舵装置に操舵力を加える。
【0017】
走路形状認識ECU20が、撮像画像内で走路境界の形状を近方から遠方まで同じ近似式を用いて近似する場合、遠方側において、算出した近似曲線が実際の走路境界の形状に沿わない場合がある。例えば、図2(a)では、走路の遠方に急カーブが存在しており車両近方と遠方とで区画線の形状が大きく異なっている。そのため、図2(b)に示すように、この区画線の形状を単一の近似曲線ACを用いて近似する場合、遠方の走路境界を近似した近似曲線が実際の走路境界から大きく外れてしまう場合がある。
【0018】
また、車両の走行環境等に応じてエッジ点の検出の精度が変化するため、近方領域と遠方領域との境界点が一義的に定められることは好ましくないと考えられる。仮に近方領域と遠方領域との境界点が近すぎると、近方領域でのエッジ点のサンプリング数が減り、その近方領域の認識精度が低下する。また、境界点が遠すぎると、検出精度の低い遠方エッジ点を用いて近方領域の走路形状を認識することで、やはり近方領域の認識精度が低下する。同様なことは、S字カーブにおいて車両近方側と車両遠方側とでカーブの曲率が異なっている場合にも生じうる。
【0019】
そのため、走路形状認識ECU20は遠方の走路の認識性能を向上させるため、図1に示す各部を備えている。次に、走路形状認識ECU20の各部の機能を説明する。
【0020】
図1に戻り、画像取得部21は、カメラ装置10から撮像画像を取得する。画像取得部21は、カメラ装置10により所定周期で撮像される撮像画像を不図示のメモリに記憶していく。
【0021】
特徴検出部22は、撮像画像から区画線の形状を示す特徴点を検出する。この実施形態では、特徴点として撮像画像内での区画線の外形を示すエッジ点Pを検出する。例えば、特徴検出部22は、周知のSobelオペレータを用いて、エッジ強度とエッジ勾配が閾値以上となる複数のエッジ点Pを検出する。そして、検出したエッジ点Pの内、所定の探索領域に位置するエッジ点Pを区画線のエッジ点Pとして検出する。
【0022】
第1形状算出部23は、特徴検出部22により検出された区画線のエッジ点Pに基づいて区画線の形状を近似した第1近似曲線AC1を算出する。この実施形態では、走路の車両横方向における左右の走路境界に対してそれぞれ第1近似曲線AC1を算出する。例えば、第1形状算出部23は、区画線の形状を近似するために、クロソイド曲線を近似した三次曲線を利用する。これは、道路のカーブ区間は、曲率の増加率が一定であるクロソイド曲線により定義される緩和区間、曲率が一定である区間、曲率の減少率が一定であるクロソイド曲線により定義される緩和区間の順に移行することを理由としている。そのため、この実施形態では、第1の走路形状の一例として第1近似曲線AC1を算出している。
【0023】
第1形状算出部23は、下記式(1)に示す第1近似曲線AC1を用いて、区画線の形状を近似する。なお、下記式(1)において、Yは自車両の進行方向の座標を示しており、f(Y)は自車両の進行方向に垂直に交差する方向(X軸方向)の座標を示しており、また、a、b、c、dはそれぞれ係数である。例えば、第1形状算出部23は、各エッジ点P間の距離が最小となる近似曲線の各係数a、b、c、dを周知の最小二乗法を用いて算出する。
【0024】
f(Y)=aY^3+bY^2+cY+d … (1)
なお、(^)は累乗を示している。
【0025】
位置検出部24は、第1形状算出部23により算出された第1近似曲線AC1における区画線のエッジ点Pとの一致度が悪化する悪化位置WPを、撮像画像における車両近方から車両遠方にかけて検出する。一致度は、第1近似曲線AC1と区画線のエッジ点Pとのずれ量を示す指標値である。この実施形態では、一致度が高い値である程、撮像画像内においてエッジ点Pが近似曲線ACに近い位置であることを示す。また、一致度が低い値である程、撮像画像内においてエッジ点Pが近似曲線ACから遠い位置であることを示す。また、この実施形態では、悪化位置WPは、画像において車両近方から車両遠方にかけて一致度を算出した場合に、一致度が閾値Th以下となる最初の位置である。
【0026】
図3では、近方において近似曲線ACが区画線の形状を適正に近似しており、この近似曲線AC上に区画線を示すエッジ点Pを重ねると、各エッジ点Pの位置と近似曲線ACとのずれ量ΔXが小さくなる。一方、遠方では、近似曲線ACに区画線の形状を適正に近似しておらず、車両横方向(X軸方向)でのエッジ点Pからのずれ量ΔXが大きくなる。そのため、近似曲線ACと区画線のエッジ点Pとの車両横方向でのずれ量ΔXを一致度として算出し、この一致度に基づいて悪化位置WPを検出することができる。
【0027】
第2形状算出部25は、位置検出部24が悪化位置WPを検出した場合に、撮像画像における悪化位置WPから車両遠方の区画線の形状を近似した第2近似曲線AC2を算出する。具体的には、悪化位置WPから車両遠方の区画線のエッジ点Pに基づいて第2近似曲線AC2を算出する。この第2近似曲線AC2は、第1近似曲線AC1とは各係数(a,b,c,d)が異なる曲線である。
【0028】
認識部26は、悪化位置WPから車両近方の区画線を第1近似曲線AC1により認識し、悪化位置WPから車両遠方の区画線を前記第2近似曲線AC2により認識する。例えば、認識部26は、各近似曲線ACに基づいて走路の曲率や走路幅を算出することで、走路を認識する。
【0029】
次に、走路形状認識ECU20が実行する走路認識処理を図4のフローチャートを用いて説明する。図4に示す処理は、走路形状認識ECU20により所定周期で実施される処理である。以下では、図4に示す一連の処理が実施された後、前の周期において実施された図4の処理を前回の処理と記載し、今回の処理と区別する。
【0030】
ステップS11では、カメラ装置10から撮像画像を取得する。この撮像画像内には、自車両が走行する走路の区画線が含まれているものとする。ステップS11が画像取得工程として機能する。
【0031】
ステップS12では、撮像画像内のエッジ点Pを検出する。走路形状認識ECU20は、撮像画像に対して所定強度の濃度勾配を生じさせている画素をエッジ点Pとして検出する。
【0032】
ステップS13では、ステップS12で検出したエッジ点Pの内、区画線に該当するエッジ点Pを探索するための探索領域を設定する。探索領域は撮像画像において車両近方から車両遠方に延びる一定の領域として設定される。走路形状認識ECU20は、前回の処理において第1近似曲線AC1を算出している場合、この第1近似曲線AC1の形状に基づいて探索領域を設定する。ここで、設定された探索領域に含まれるエッジ点Pの数が閾値以下である場合、探索領域を変更するものであってもよい。なお、今回の処理が走路を認識するための初めての処理である場合、探索領域の初期形状を用いてエッジ点Pの探索が行われる。ステップS13が探索領域設定部として機能する。
【0033】
ステップS14では、ステップS13で設定された探索領域に含まれるエッジ点Pを近似することで、区画線の形状を近似した第1近似曲線AC1を算出する。走路形状認識ECU20は、例えば、探索領域に含まれる複数のエッジ点Pに対して周知の最小二乗法を用いて第1近似曲線AC1を算出する。なお、各エッジ点Pに対して、カメラ装置10の取り付け位置及び取り付け角度を用いて平面図上へ座標変換を行った後に、第1近似曲線AC1を算出するものであってもよい。ステップS14が第1形状算出工程として機能する。
【0034】
ステップS15では、ステップS14で算出された第1近似曲線AC1に対して各エッジ点Pとの一致度を算出する。走路形状認識ECU20は、車両進行方向(Y軸方向)において車両近方から所定距離(画素)毎に一致度を算出していく。例えば、図5(a)では、撮像画像に対して矩形の算出範囲CWを設定し、この算出範囲CWに含まれる第1近似曲線AC1上の値と、区画線のエッジ点Pとの一致度を算出する。ステップS15が位置検出工程として機能する。例えば、算出範囲CWのY軸方向の長さは、Y軸方向において区画白線のエッジ点Pが検出される間隔(画素数)に応じて設定される。
【0035】
図5(b)に示すように、走路形状認識ECU20は、算出範囲CWに属する区画白線のエッジ点Pを抽出する。次に、撮像画像においてエッジ点のY軸上の位置にある第1近似曲線AC1の値f(Y)を取得する。そして、この値f(Y)と区画線のエッジ点Pとの横方向でのずれ量ΔXを一致度として算出する。また、走路形状認識ECU20は、算出範囲CWの位置をY軸方向において車両遠方側に変更させながら、第1近似曲線AC1に対して一致度を順次算出していく。
【0036】
なお、図5(b)では、1つの算出範囲CWには1つのエッジ点Pのみを記載しているが算出範囲CWに複数の区画線のエッジ点Pが検出される場合、各エッジ点Pにおいてそれぞれ一致度を算出し、この一致度の平均値を算出するものであってもよい。
【0037】
第1近似曲線AC1において一致度が所定値以下となる悪化位置WPが検出されていなければ(ステップS16:NO)、ステップS17に進む。悪化位置WPはステップS15で算出される一致度が閾値Th以下となる第1近似曲線AC1上での最初の位置である。
【0038】
ステップS17では、ステップS14で算出した第1近似曲線AC1により撮像画像内の走路を認識する。この場合、第1近似曲線AC1は適正に区画線を近似しており、撮像画像において近方から遠方の形状をこの第1近似曲線AC1により認識する。
【0039】
一方、一致度が閾値Th以下となる悪化位置WPを検出した場合(ステップS16:YES)、ステップS18では、撮像画像内での悪化位置WPの座標を保持する。例えば、図6(a)では、撮像画像内の座標(X1,Y1)において、悪化位置WPが検出されているため、この座標(X1,Y1)を保持する。
【0040】
ステップS19では、この悪化位置WPから車両近方の区画線の形状をステップS14で算出した第1近似曲線AC1として設定する。
【0041】
ステップS20では、悪化位置WPから車両遠方のエッジ点Pに基づいて第2近似曲線AC2を算出する。例えば、走路形状認識ECU20は、ステップS13で設定した探索範囲に含まれるエッジ点Pに対して周知の最小二乗法を用いて第2近似曲線AC2を算出する。図6(b)では、撮像画像において悪化位置WP(X1,Y1)から遠方のエッジ点Pに対して第2近似曲線AC2が算出されている。ステップS20が第2形状算出工程として機能する。
【0042】
また、近方領域R1の第1近似曲線AC1と、遠方領域R2の第2近似曲線AC2とを個別に求める場合には、各近似曲線AC1,AC2の継ぎ目において車両横方向のずれが生じることが考えられる。そこで、ステップS21では、車両横方向において第2近似曲線AC2の車両近方側の端を、第1近似曲線AC1に近づけるよう変更する。図7(a)に示すように、第2近似曲線AC2の端部EがステップS19で設定した第1近似曲線AC1に対して車両横方向(X軸方向)で大きくずれている場合、図7(b)に示すように、第2近似曲線AC2の端部Eを第1近似曲線AC1側に近づけるよう第2近似曲線AC2の各係数(a,b,c,d)を変更する。そのため、ステップS21が位置変更部として機能する。
【0043】
ステップS21における第2近似曲線AC2の端を第1近似曲線AC1に近づける手法として、端部Eを含む車両近方側の曲線の傾きを、第1近似曲線AC1の車両遠方側の端の曲線の傾きに近づけるよう変更するものであってもよい。この場合においても、例えば、第2近似曲線AC2の各係数(a,b,c,d)を変更することで、曲線の傾きを変更する。そのため、ステップS21が曲線傾き変更部として機能する。
【0044】
ステップS22では、悪化位置WPから車両近方の区画線の形状を第1近似曲線AC1により認識し、悪化位置WPから車両遠方の区画線の形状を第2近似曲線AC2により認識する。例えば、走路形状認識ECU20は、撮像画像において悪化位置WPから車両近方の曲率や走路幅を第1近似曲線AC1に基づいて算出し、悪化位置WPから車両遠方の曲率や走路幅を第2近似曲線AC2に基づいて算出することで、走路の認識を行う。ステップS22が認識工程として機能する。その後、図4の処理を一旦終了する。
【0045】
以上説明したようにこの第1実施形態では、走路形状認識ECU20は、撮像画像内の走路境界を示すエッジ点Pに基づいて第1近似曲線AC1を算出し、車両近方から車両遠方にかけて、この第1近似曲線AC1における区画線を示すエッジ点Pとの一致度が悪化する悪化位置WPを検出する。そして、悪化位置WPを検出した場合に、この悪化位置WPから車両遠方に対しては新たな第2近似曲線AC2を算出し、悪化位置WPの前後で走路の認識を異ならせることとした。上記構成により、区画線の形状が適正に近似されない位置から遠方の近似曲線を新たに算出することで、遠方の走路の認識性能を向上することが可能となる。
【0046】
走路形状認識ECU20は、第1近似曲線AC1におけるエッジ点Pとの車両横方向でのずれ量を一致度として用いることで悪化位置WPを検出する。近似曲線と区画線との一致度が悪化する位置では、先に算出した第1近似曲線AC1と区画線のエッジ点Pとの間で車両横方向でのずれ量の差が大きくなる。そこで、区画線を示すエッジ点Pと第1近似曲線AC1との車両横方向でのずれ量に基づいて、悪化位置WPを検出することとした。上記構成により、悪化位置WPを適正に検出することができる。
【0047】
走路形状認識ECU20は、所定周期で前記撮像画像を取得し、今回取得された撮像画像において算出された第1近似曲線AC1に基づいて、その後に取得される撮像画像に対して第1近似曲線AC1の算出に用いるエッジ点Pを探索するための探索領域を設定する。上記構成により、第1近似曲線AC1の算出に要する時間を短縮することができる。
【0048】
悪化位置WPの前後で認識する近似曲線を変更する場合、この悪化位置WPの前後で認識される走路の見た目が大きく異なる場合がある。そこで、走路形状認識ECU20は、第2近似曲線AC2の車両近方側の端を第1近似曲線AC1に近づけるよう変更する。または、走路形状認識ECU20は、第2近似曲線AC2における車両近方側の端の曲線の傾きを、第1近似曲線AC1の車両遠方側の端の曲線の傾きに近づけるよう変更する。上記構成により、例えば、表示部に認識した走路を表示させる場合でも、悪化位置WPの前後で近似された境界形状の見た目が大きく異なるのを抑制することができる。
【0049】
(その他の実施形態)
走路境界として区画線に代えて、道路の側壁、又はガードレールを用いるもであってもよい。この場合、図4のステップS13において、走路形状認識ECU20は、走路境界として検出される各物体の形状に応じた探索領域を設定し、近似曲線ACを算出するためのエッジ点P点の探索を行う。
【0050】
走路境界を近似する近似曲線ACとして三次曲線を用いたことは一例に過ぎない。これ以外にも、四次曲線や円弧を用いるものであってもよい。
【0051】
走路境界を近似する近似曲線ACを2つ以上形成するものであってもよい。この場合、図4のステップS16において撮像画像に対して車両近方から車両遠方にかけて一致度を算出し、この一致度が閾値以上となる悪化位置WPを複数検出した場合に、まず、悪化位置WPで区画される走路境界に対して第2近似曲線AC2を算出する。そして、車両遠方の悪化位置WPから遠方の走路境界おいて第3近似曲線AC3を算出する。
【符号の説明】
【0052】
20…走路形状認識ECU、21…画像取得部、23…第1形状算出部、24…位置検出部、25…第2形状算出部、26…認識部、100…車両制御装置、WP…悪化位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7