(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606512
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】シャフト機械加工防振デバイス
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20191031BHJP
B23B 29/02 20060101ALI20191031BHJP
B23B 27/00 20060101ALI20191031BHJP
B23B 29/03 20060101ALI20191031BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
B23Q11/00 A
B23B29/02 A
B23B27/00 C
B23B29/03 Z
B23Q11/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-561607(P2016-561607)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公表番号】特表2017-514706(P2017-514706A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】FR2015050906
(87)【国際公開番号】WO2015155469
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】1453079
(32)【優先日】2014年4月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥジョンヌ,クロード
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアディ,シリル
【審査官】
津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02283497(US,A)
【文献】
特開2012−030344(JP,A)
【文献】
特表2009−513374(JP,A)
【文献】
実開昭62−058102(JP,U)
【文献】
米国特許第03591304(US,A)
【文献】
オーストリア国特許発明第00251373(AT,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23B 27/00
B23B 29/02
B23B 29/03
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)であって、少なくとも部分的に、シャフト(30)に関してシャフト(30)内の固定位置に維持されることが意図され、シャフト(30)内を軸方向に移動するガイドバー(40)の案内を可能にする第1の要素(10)を備えていることを特徴とし、第1の要素は、
シャフト(30)の内側表面に関連し、シャフト(30)の内周と接触する、第1の要素(30)の外周に位置する少なくとも1つの第1の機械式振動減衰手段(121)と、
ガイドバー(40)の外側表面に関連し、ガイドバー(40)の外側表面と接触する、第1の要素(10)の周の内部に配置された少なくとも1つの第2の機械式振動減衰手段(110、110’)と、を備えている、中空シャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項2】
第1の要素(30)がさらに、第1の要素(10)を通って流れる潤滑流体(122)を介する液体減衰手段(18)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項3】
第1の要素が、肩部(17)により、シャフト(30)に対する軸方向の固定位置に保持された第1のカラーであり、前記防振デバイスが、
少なくとも1つの第1の外側溝(12)および、前記第1の外側溝(12)と協同するように適合され、第1の減衰手段(121)を形成する少なくとも1つの第1の外側シール(121)と、
少なくとも第1の内周溝(11)および、前記第1の内側溝(11)と協同するように適合され、第2の減衰手段(110、110’)を形成する少なくとも1つの第1の内側シール(110)と、
第1のダクト(14、16)を介して到り、第2のダクト(13、15)を介して出る流体(122)を循環させることが可能な内周キャビティ(18)であって、第1のダクト(14、16)および第2のダクト(13、15)が防振デバイス(10)の径方向の厚さを貫通し、内周キャビティ(18)が、圧縮潤滑流体が第1の要素を通って流れる場合に液体手段(18)を形成する、内周キャビティ(18)と、を備えていることを特徴とする、請求項2に記載の中空シャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項4】
第1および第2の内周溝は各々が、第1のカラー(10)の端部近くに位置していることを特徴とする、請求項3に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項5】
内周キャビティ(18)が、
第1の内周溝(11)に近接する第1の端部(180)と、
第2の内周溝(11’)に近接する第2の端部(180’)との間を長手方向に延びることを特徴とする、請求項3と請求項4のいずれか、または両方に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項6】
第1のダクト(14、16)が、
防振デバイス(10)の外部からの流体(122)が内周キャビティ(18)に向かって流れて通過することを可能にする第1の曲折開口(14、16)であって、長手方向開口(16)と、第1のカラー(10)の外側表面の長さと、前記キャビティ(18)の第1の端部に近接する内周キャビティ(18)に繋がる径方向延長部分(14)と、を備えている第1の曲折開口(14、16)を備えていることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項7】
第2のダクト(13、15)が、
内周キャビティ(18)からの流体(122)が防振デバイス(10)の外部に向かって流れて通過することを可能にする第2の曲折開口(13、15)であって、前記キャビティ(18)の第2の端部の近位の径方向開口(13)と、前記防振デバイス(10)の外部に繋がるように、肩部(17)を貫通する長手方向延長部分(15)と、を備えている第2の曲折開口(13、15)を備えていることを特徴とする、請求項3から6のいずれか一項に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項8】
防振デバイスが、少なくとも部分的に機械加工ヘッド(50)の外部に対し、この機械加工ヘッド(50)の外部に関して固定位置に維持されることが意図される第2の要素(20)を備え、第2の要素は、
第2の要素(20)の外周上に、シャフトの内側表面と関連して、シャフトの内側表面に接触して配置された少なくとも第3の機械式減衰手段(22)を備えていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項9】
第2の要素(20)が、外側溝(23)と、前記第2の外側溝(23)と協同するように適合され、第3の機械式減衰手段を形成する第2の外側シール(22)と、を備えていることを特徴とする、請求項8に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項10】
第1の要素(10)および/または第2の要素(20)の本体(10C、20A)がポリアミドで形成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のシャフト(30)の機械加工のための防振デバイス(10)。
【請求項11】
シャフト(30)のボーリングが意図され、シュー(51)の集合を備えた機械加工ヘッド(50)であって、前記機械加工ヘッド(50)は、係止リング(60)によって機械加工ヘッド(50)に固定されたガイドバー(40)によって案内され、可動カラー(20)が前記機械加工ヘッド(50)に一体に取り付けられ、前記可動カラー(20)は、第2の外側溝(23)と、前記第2の外側溝(23)と協同して、シャフト(30)の内側表面との少なくとも1つの接触部を形成するように適合され、シャフトの機械加工の際に生じる機械振動の一部が吸収されることを可能にする外側シール(22)と、を備え、
可動カラー(50)が、前記機械加工ヘッド(50)の端部のエッジと、係止リング(60)との間の前記機械加工ヘッド(50)の周囲において長手方向に固定されて保持されていることを特徴とする、機械加工ヘッド(50)。
【請求項12】
穴が開けられるシャフトの一部内への潤滑流体の導入を可能にする流入口を備えた請求項11に記載の機械加工ヘッド(50)と、
シャフト(30)の機械加工の間の、ガイドバー(40)の通過に適合した請求項1から10のいずれか一項に記載の防振デバイス(10)と、を備えていることを特徴とする防振機械加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、機械加工デバイスに関し、より詳細には、タービンシャフトのリーマ仕上げ、フライス削り、ボーリング、およびざぐりのために使用される機械加工デバイスに関する。本技術分野は、シャフトのリーマ仕上げ、フライス削り、ボーリング、またはざぐりを含む機械加工操作の際に印加される振動を制限するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シャフトのリーマ仕上げ、ボーリング、およびざぐりを可能にする様々な技術が存在する。そのような操作は、長いシャフトに行われる場合は、精通するのはかなり複雑であり、見えない状態で、すなわち、行われる操作を視認しない状態で行わなければならない。
【0003】
具体的には、機械加工を可能にするツールは、デルタが一定であることを保証するため、すなわち、シャフトの内径の公差が考慮されることを保証するために、操作の真直度を確実にしなければならず、力学的操作基準を考慮するために、うねりがあってならない。さらに、このツールは、機械加工された外径が制限された公差内にあることを確実にしなければならない。さらに、ツールは、機械加工後に得られる表面状態のバランスおよび規則性を保証しなければならない。
【0004】
通常、航空機用のタービンエンジンシャフトについて、大きさの程度は、機械加工長さが2300mmであり、デルタが0.01mm、真直度の公差は0.02mmである。
【0005】
現在、この校正操作は、端部に校正ヘッドを備えたバーによってボーリングマシンに行われている。
【0006】
留意される問題の1つが、機械加工されるシャフトの直径が小さくなるほど、機械加工時の振動が増大することである。このタイプの機械加工によって生じる振動現象は、機械加工される部分と切削ツールとの間の相対移動に対応し、このことは、被加工表面におけるいくぶん顕著なうねりになる。
【0007】
ツールのベアリングバーの直径が小さいほど、振動の振幅はより増大するものと思われる。
【0008】
深ざぐりの場合、直径と長さの関係を考慮すると、振動現象を解決することは困難である。
【0009】
様々な解決策が存在し、この解決策には、たとえば以下のものが含まれる。
【0010】
回転ボーリングの際にシャフトを外部から保持するための受け溝を使用して部品を補強すること。
【0011】
最適な切削角度、鋼種、またはカバーを有する切削ツールの選択。
【0012】
回転速度、切削エッジの数、回転毎のツールの進度、ならびに、切削用流体クーラントの流量および圧力の調整などの、切削パラメータの最適化。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これら解決策は、完全には満足のいくものではなく、この理由は、これら解決策は、振動の発生を全体的に抑制するものではないためである。さらに、これら解決策は、実施するには複雑かつ困難である場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の不利な点を解決する。
【0015】
本発明の一実施形態は、中空シャフトの校正および機械加工のための防振デバイスであって、少なくとも部分的にシャフト内にあり、シャフトに対して固定位置にあることが意図され、シャフト内を軸方向に移動するガイドバーの案内を可能にする第1の要素を備えていることを特徴とする、防振デバイスに関し、第1の要素は、
シャフトの内側表面に関連して第1の要素の外周に配置され、シャフトの内側表面と接触する、少なくとも1つの第1の機械式減衰手段と、
ガイドバーの外側表面に関連して第1の要素の周の内部に位置、ガイドバーの外側表面と接触する、少なくとも1つの第2の機械式減衰手段と、を備えている。
【0016】
有利には、さらに、第1の要素が、第1の要素を通して流れる潤滑流体の本体を介する液体減衰手段を備えている。
【0017】
有利には、第1の要素は、肩部により、シャフトに関連する軸方向の固定位置に保持された第1のカラーであり、前記防振デバイスは、
少なくとも1つの第1の外側溝および、第1の前記外側溝と協同するように適合され、第1の減衰手段を形成する少なくとも1つの第1の外側シールと、
少なくとも1つの第1の内周溝および、第1の前記内側溝と協同するように適合され、第2の減衰手段を形成する少なくとも1つの第1の内側シールと、
第1のダクトから到り、第2のダクトを介して出る流体を循環させるように適切に形成された内周キャビティであって、第1および第2のダクトが防振デバイスの径方向の厚さを横断し、内周キャビティが、流体が第1の要素を通って流れる場合に液体手段を形成する、内周キャビティと、を備えている。
【0018】
有利には、第1および第2の内周溝はそれぞれ、第1のカラーの各端部の近くに位置している。
【0019】
有利には、内周キャビティは、
第1の内周溝に近い第1の端部と、
第2の内周溝に近い第2の端部との間を長手方向に延びる。
【0020】
有利には、第1のダクトは、防振デバイスの外部からの流体が内周キャビティに向かって流れて通過することを可能にする第1の曲折開口であって、長手方向開口と、第1のカラーの外側表面の長さと、前記キャビティの第1の端部に近接する内周キャビティに繋がる径方向延長部分と、を備えている第1の曲折開口を備えている。
【0021】
有利には、第2のダクトは、内周キャビティからの流体が防振デバイスの外部に向かって流れて通過することを可能にする第2の曲折開口であって、前記キャビティの第2の端部に近接する径方向開口と、前記防振デバイスの外部に繋がるように、肩部を横断する長手方向延長部分と、を備えている第2の曲折開口を備えている。
【0022】
有利には、防振デバイスは、少なくとも部分的に機械加工ヘッドの頭部に対し、この機械加工ヘッドの頭部に対する固定位置に維持されることが意図されている第2の要素を備え、第2の要素は、第2の要素の外周上に、シャフトの内側表面と関連し、シャフトの内側表面に接触する少なくとも1つの第3の機械式減衰手段を備えている。
【0023】
有利には、第2の要素は、外側溝および、前記第2の外側溝と協同するように適合され、第3の機械式減衰手段を形成する第2の外側シールを備えている。
【0024】
有利には、第1および/または第2の要素の本体は、ポリアミドで形成されている。
【0025】
本発明の別の目的は、シャフトのボーリングが意図され、シューの集合を備えた機械加工ヘッドに関し、前記機械加工ヘッドは、アタッチメントによって機械加工ヘッドに固定されたガイドバーによってガイドされ、前記機械加工ヘッド上にしっかりと取り付けられた移動カラーによって特徴付けられ、前記移動カラーは、外側溝と、前記第2の外側溝と協同して、シャフトの内側表面との少なくとも1つの接触部を形成し、機械加工の際に生じる振動の一部が吸収されることを可能にするように適合された外側シールと、を備えている。
【0026】
有利には、アタッチメント手段は、係止カラーを介する。
【0027】
有利には、移動カラーは、前記機械加工ヘッドの端部のエッジと、係止リングとの間の前記機械加工ヘッドの周囲において長手方向に固定されて保持されている。
【0028】
本発明の別の目的は、
本発明の機械加工ヘッドであって、穴が開けられるシャフトの一部内への潤滑流体の流入を可能にするオリフィスを備えた機械加工ヘッドと、
シャフトの機械加工の際のガイドバーの通過に適合された本発明の防振デバイスと、を備えた防振機械加工システムに関する。
【0029】
本発明の他の特性および有利な点は、以下の詳細な説明を読み、添付図面を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、流体が内部を循環するキャビティを備えた本発明の係止カラーを示す図である。
【
図2】
図2は、機械加工ヘッドに取り付けられることが意図された本発明の可動カラーを示す図である。
【
図3】
図3は、穴が開けられるシャフト内へ挿入された防振機械加工システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、穴が開けられる中空シャフト30に固定されることが意図され、長手軸30Aに沿って置かれている、係止カラー10を形成する第1の要素を備えた本発明の防振デバイスを示している。シャフト30は
図3に示されている。
【0032】
係止カラー10は、長手軸10Bに沿って位置し、前記軸に沿って位置し、本体10Aを貫通する中心開口10Cを有する本体10Aを有する。本体10Aは、その一方の端部において、肩部17によって延長されている。肩部17により、係止カラー10と、穴が開けられるシャフト30の一方の端部との間のスラスト面の規定が可能になる。係止カラー10の肩部17は、したがって、係止カラー10をシャフト30に対して長手方向に維持することを可能にする。
【0033】
係止カラー10の本体10Aは、1つの第1の外側溝12と、第1の外側溝12と協同して、係止カラー10がシャフト30上に取り付けられている場合にシャフト30と内側表面と周囲で接触部を形成するように適合された少なくとも1つの外側シール121と、を備えている。
【0034】
係止カラー10は同様に、第1の内周溝11と、協同して、
図3に示す機械加工ヘッド50などの切削ツールのガイドバー40の外側表面と周囲で接触部を形成するように適合された、少なくとも1つの第1の内側シール110と、を備えている。この第1の溝11は、好ましくは肩部17とは反対側の、係止カラー10の一方のエッジ、すなわち、係止カラー10の一方の端部の近位に位置している。
【0035】
係止カラー10は、第2の内周溝11’と、協同して、機械加工ヘッド50などの切削ツールのガイドバー40の外側表面と周囲で接触部を形成するように適合された、少なくとも1つの第1の内側シール110’と、を備えている。この第2の溝11’は、係止カラー10の他方のエッジ、すなわち、第1の周溝11が見られるのとは反対側の端部の近位、好ましくは肩部17の端部に位置している。
【0036】
このシール110および110’により、ガイドシャフト40との接触部の形成が可能になり、カラー10内を循環する流体の漏洩または通過を制限することが可能になる。
【0037】
係止カラー10の開口10Cはさらに、第1のダクト14、16を介して到り、第2のダクト13、15を介して出る流体122の循環が可能である内周キャビティ18を備えている。
【0038】
カラー10に機械加工されるこのキャビティ18は、周状バスを形成している。この理由から、バスの長さにわたるカラーの厚さは、バスの端部における厚さよりも小である。したがって、一定量の流体が所与の幅にわたって係止カラー10内を循環することが可能である。
【0039】
カラーを通過する流体は、係止カラー10の主開口10Cを通る流体122の流れを止める内側シール110、110’、シャフト30と係止カラー10との間の係止カラー10の外周上の流体の流れを止める外側シール121、の存在に起因して、キャビティ18を通って流れることのみが可能である。
【0040】
好ましくは、内側シールおよび外側シールは、水、油、および潤滑剤に耐性のある適切な材料で形成されている。
【0041】
流体122は、有利には、機械加工の際に、とりわけ、潤滑剤の注入を可能にする開口を備え得る切削ツールによって導入することができる潤滑流体である。
【0042】
係止カラー10により、係止カラー10のキャビティ18内の潤滑剤122の流れを、機械加工操作によって生じる振動の減衰器として使用しつつ、潤滑剤122のシャフト30の外部への回帰ルーティングが可能になる。
【0043】
潤滑剤122をキャビティ18の内部に向けるために、係止カラーは、シャフト30の内部に位置するこの係止カラーの端部に開口16、14を備えている。開口16、14は、曲折形状のダクトまたは穴16、14を形成している。
【0044】
図1は、曲折形状の溝16、14の断面を示している。この図では、第1の長手方向の溝が、一方では、係止カラー10の端部に向かって繋がっており、他方では、キャビティ18内に繋がる径方向溝14に向かって繋がっている。
【0045】
したがって、穴が開けられるシャフト内に、切削ツール50の開口(図示せず)を介して予め注入された潤滑剤は、少なくとも第1のダクト14、16によって出され得、係止カラー10の中空キャビティ18上に与えられ、周状キャビティ18を形成する。
【0046】
係止カラー10は、曲折形状の開口を形成する複数の流入口16および流出口14を備え得る。
図1は、たとえば、断面平面における2つの径方向開口と2つの径方向開口とを示している。次いで、この例では、6つの径方向溝が存在し、シャフトの内部に繋がる同数の長手溝を有して延びている。
【0047】
開口16、14の配置は、係止カラー10の周囲にわたって一様に広がっている。
【0048】
したがって、複数の開口14、16は、キャビティ内を循環する流体の流量に関連して寸法が決められ得、したがって、振動を低減する一定程度の減衰が得られる。
【0049】
一実施形態では、係止カラー10は、係止カラー10の他方の端部、すなわち、シャフトの外側に、第1の開口16、14に関して対称に配置された第2の出口開口13、15を備えている。第2の開口13、15の形状は、開口14、16とほぼ同様、すなわち、曲折形状を有していてもよい。係止カラー10の周囲に配置された穴を形成する径方向開口13は、シャフト30の外側から係止カラー10の外部に繋がる長手方向の開口15によって延びている。別の実施形態では、長手方向の開口15は、係止カラー10の肩部17を横切る穴を形成している。
【0050】
流体122は、
図1の破線によって示される経路に沿って流れる。シャフト30の内部に存在する流体122は、シール110の側から係止カラー10に入り、曲折ダクト16、14に沿って流れ、次いで、周囲のキャビティ18全体にわたって広がり、次いで、曲折ダクト13、15を介して排出される。
【0051】
周囲のキャビティ18は、潤滑剤などの流体22が通過する際に、振動減衰器の機能を提供する。周状キャビティ18を通過する流体により、エネルギの吸収によってさらなる流体の減衰係数を提供する流体の粘度に関する流体圧力を生じることが可能になる。
【0052】
図2は、
図3に示す機械加工ヘッド50などの移動切削ツールに取り付けられることが意図された可動カラー20を形成する第2の要素を示している。可動カラー20は、軸20B周りの環状本体20Aを有し、その外周には、シール22を受領するように適合された周状溝23がある。シール22は、シャフト30を機械加工する間に生じる振動の一部を減衰するように、可動カラー20と、穴が開けられるか機械加工されるシャフト30の内側表面との間の接触エリアを形成することが意図されている。可動カラー20は、機械加工ヘッド50の後方部分、すなわち、シャフト30との連結部にもっとも近いヘッド50の部分に配置されている。可動カラー20の後方部分は、機械加工ヘッド50が見えずにシャフト30内に挿入された際に、シャフト30からもっとも遠い部分である。
【0053】
可動カラー20は、機械加工ヘッド50に固定される。この目的のために、可動カラー20は係止リング60によって定位置に保持され得る。
【0054】
本実施形態によれば、可動カラー20は、機械加工ヘッド50の環状面あるいは傾斜面に載っている円錐状往還面を備えるように、円筒環状プロファイルまたは面取されたプロファイルなどの様々なプロファイルを有し得る。
【0055】
可動カラー20の下側周面24は、機械加工ヘッド50の上側周面上に位置する。
【0056】
図3は、ガイドバー40を用いて、穴が開けられる中空シャフト30内でスリーブが付けられたガイドシュー51を備えた機械加工ヘッド50のアセンブリを示している。
【0057】
ガイドバーは40であり係止リング60により、機械加工ヘッド50にしっかりと取り付けられている。係止リング60は、機械加工ヘッド50をガイドバー40にしっかりと取り付ける、可動カラー20を機械加工ヘッド50にしっかりと取り付ける、2つの機能を有し得る。
【0058】
有利には、ガイドバー40および機械加工ヘッド50は、潤滑剤などの流体122を機械加工されるシャフト30内に導入する手段を備えている。この潤滑剤は、上述したように係止カラー10を介して取り除かれ得る。注入される潤滑剤の流量は、周状溝内を循環する所望の流量に応じて、または、生じる振動の周波数応答を変化させるために、調整され得る。
【0059】
係止カラー10は、ガイドバー40上に取り付けられ、ガイドバー40に繋がっている切削ツール50と同時にシャフト30内に導入される。
【0060】
係止カラー10および可動カラー20は、ポリアミドから形成され得る。さらに、これら2つによって形成された集合体は、長いシャフトの機械加工によって生じる振動を低減するような方法で、シャフトの機械加工の前に配置され得る。カラーおよびリングの配置は、内径がガイドバー40の通路に適切であり、外径がシャフト30の内径と協同するのに適切である係止カラーを選択することによってシンプルに行われ得る。
【0061】
同様に、可動カラー20は、所与の機械加工ヘッド50と協同するように選択することができる。可動カラー20は、特に所与の機械加工ヘッド50用に設計され得る。別の実施形態では、可動カラー20は、機械加工ヘッド50と可動カラー20との間の厚みを追加することを可能にする校正カラーに関連し得る。これにより、可動カラー20の適切な機能による互換性を維持しつつ、より多数の機械加工ヘッドに適合させるために、たとえば、可動カラー20の直径をより大きくすることが可能になる。
【0062】
本発明の防振デバイス、特に、係止カラー10の利点の1つは、シャフト30におけるガイドバー40のためのガイド機能をも有することである。このガイド機能により、穴が開けられるシャフト30に対するガイドバー40、ひいては、機械加工ヘッド50の直線性をより正確にすることが可能になる。
【0063】
本発明によって得られる振動の低減は、一方ではシール110、110’、121、および22によって生じる減衰効果と、他方では係止カラー10のキャビティ内を循環する流体によって生じる減衰効果との組合せである。これら機械による減衰効果と液体による減衰効果との2つの組合せにより、機械による保持と粘性係数との両方によって生じる振動の周波数応答のよりよい制御が可能になる。
【0064】
さらに、2つの減衰効果により、
一方では、ガイドバー40と係止カラー10との間で生じ、
他方では、係止カラー10と穴が開けられるシャフト30との間、および、可動カラー20と穴が開けられるシャフト30との間で生じる振動に適合することになる周波数応答が可能になる。
【0065】
シャフト30のリーマ仕上げ、フライス削り、およびボーリングの際の振動の低減により、前記操作の後によりよい表面状態を得ることと、長いシャフト30の長さにおけるよりよい表面状態を得ることが可能になる。特に、本発明は、穴が開けられるシャフトの長さ全体にわたって適合可能である。表面状態における結果および向上は、長いシャフト、特に1800mmより長く、2300mmから2500mmの長さにもなるシャフトにおいて顕著である。本発明は、リーマ仕上げ、フライス削り、およびボーリングのための直径、特に30mmから60mmの間の直径全体に適用可能である。