【実施例】
【0021】
図1に示すように、2系統対応の車両用ブレーキ液圧制御装置10は、ブレーキレバー11の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する第1マスタシリンダ12と、前輪ブレーキキャリパ14側から逃がされた作動液を一時的に貯留する第1リザーバ13と、第1マスタシリンダ12と前輪ブレーキキャリパ14の間に設けられる組付部品であり常開型電磁弁である第1入口制御弁15及び組付部品であり常閉型電磁弁である第1出口制御弁16と、第1リザーバ13に貯留された作動液を吸入して第1マスタシリンダ12側に戻す組付部品である第1ポンプ17と、ブレーキペダル21の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する第2マスタシリンダ22と、後輪ブレーキキャリパ24側から逃がされた作動液を一時的に貯留する第2リザーバ23と、第2マスタシリンダ22と後輪ブレーキキャリパ24の間に設けられる組付部品であり常開型電磁弁である第2入口制御弁25及び組付部品であり常閉型電磁弁である第2出口制御弁26と、第2リザーバ23に貯留された作動液を吸入して第2マスタシリンダ22側に戻す組付部品である第2ポンプ27と、第1・第2ポンプ17、27を駆動するモータ29と、このモータ29の駆動制御及び第1・第2入口制御弁15、25と第1・第2出口制御弁16、26の開閉制御をなす制御装置30と、基体40に設けられブレーキ液を流す第1系統のブレーキ液路A1、B1、C1、D1、E1、及び第2系統のA2、B2、C2、D2、E2とを備えている。
【0022】
ここで、ブレーキ液路A1は、入口ポート12Pから第1入口制御弁15に至る液路であり、ブレーキ液路B1は、第1入口制御弁15から出口ポート14Pに至る液路である。また、ブレーキ液路C1は、ブレーキ液路B1から第1リザーバ13に至る液路であり、ブレーキ液路D1は、第1リザーバ13から第1ポンプ17に至る液路である。さらに、ブレーキ液路E1は、第1ポンプ17からブレーキ液路A1に至る液路である。ブレーキ液路A2、B2、C2、D2、E2については、説明が重複するため、説明を省略する。
【0023】
第1・第2ポンプ17、27の吸入側に各々吸入弁31が設けられ、吐出側に各々吐出弁32が設けられている。
また、基体40は、第1マスタシリンダ12から延びる液路(ブレーキ配管)が接続される入口ポート12Pと、第2マスタシリンダ22から延びる液路(ブレーキ配管)が接続される入口ポート22Pと、前輪ブレーキキャリパ14へ延びる液路(ブレーキ配管)が接続される出口ポート14Pと、後輪ブレーキキャリパ24へ延びる液路(ブレーキ配管)が接続される出口ポート24Pとを備えている。
【0024】
次に、車両用ブレーキ液圧制御装置10の動作を説明する。なお、ブレーキレバー11から前輪ブレーキキャリパ14までの第1系統と、ブレーキペダル21から後輪ブレーキキャリパ24までの第2系統とは、動作が同じであるため、第1系統のみを説明する。
【0025】
・ABS非作動状態:前輪がロックする心配がないときは、制御装置30で、第1ポンプ17を停止し、第1入口制御弁15を開き、第1出口制御弁16を閉じる。この状態で、ブレーキレバー11が制動側に操作されると、第1マスタシリンダ12で液圧が高められ、この液圧が第1入口制御弁15を介して前輪ブレーキキャリパ14に伝えられる。
【0026】
・ABS(減圧モード):前輪がロックしそうになると、制御装置30は、第1入口制御弁15を閉じ、第1出口制御弁16を開く。前輪ブレーキキャリパ14内の液圧は、第1出口制御弁16を介して第1リザーバ13へ逃がされる。これで前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が減圧される。
【0027】
・ABS(保持モード):制御装置30は、第1入口制御弁15と第1出口制御弁16を共に閉じる。これによって、前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が一定に保持される。
【0028】
・ABS(増圧モード):ブレーキ液圧を増圧する際は、制御装置30は、第1入口制御弁15を開け、第1出口制御弁16を閉じる。これによって、マスタシリンダ12で発生された液圧が、前輪ブレーキキャリパ14に伝えられる。これで前輪ブレーキキャリパ14のブレーキ液圧が増圧される。
【0029】
図2(a)に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置10は、ブロック状の基体40と、この基体40に取付けられたハウジング36と、基体40に取付られたモータ29とを備えている。ハウジング36の開口はカバー38で塞がれている。
基体40の一面には、ブレーキ配管を挿通される挿通孔42が、
図1で説明した入口ポート12P、22P及び出口ポート14P、24Pに対応する部位に設けられ、略中央部分に略三角形状の凹部44Bが設けられている。
また、モータ29は、複数個のビス29aで基体40に取付けられ、ハウジング36は、基体40に沿って延びるコネクタ部37を一体的に備えている。
【0030】
図2(b)は
図2(a)のb−b線断面図である。
図2(b)に示すように、基体40の設けられる凹部44Bは、平面状の内周面を備えた断面コ字状に形成される。凹部44の底面には、孔部103が形成され、孔部103は封止部材によって、封止されている。
【0031】
図3(a)はモータ29側から見た要部拡大図であり、
図3(b)はハウジング36側から見た要部拡大図である。
図3(a)に示すように、基体40の第1面111に、略三角形の凹部44B及びブレーキ配管を接続する挿通孔42が設けられている。この挿通孔42には、後述するバンジョー金具(
図4、符号120)を介してブレーキ配管を接続する他、フレアー型金具などの管継手を介してブレーキ配管を接続するようにしてもよい。
【0032】
次に、バンジョー金具120の構成を説明する。
図4に示すように、ブレーキ配管118の先端には、バンジョー金具120が取付けられている。バンジョー金具120は、筒部120aと、この筒部120aから延びてブレーキ配管118へ差し込まれる管部120bと、筒部120aから延ばされたL又はJ形状の突起部(先端部)120cとからなる。
【0033】
バンジョー金具120は、筒部120aを貫通するバンジョーボルト121とセットで使用される。
バンジョーボルト121は、六角穴121a及び鍔121bを有するヘッド部121cと、このヘッド部121cから延びるとともに雄ねじ部121dを有する軸部121eとからなる。
この軸部121eに軸中心孔121fが設けられ、軸部121eの鍔121b側部位(雄ねじ部121dに干渉しない部位)に環状溝121gが設けられ、この環状溝121gから軸中心孔121fへ貫通する貫通孔121hが設けられている。
【0034】
基体40に、ブレーキ配管118に対応する挿通孔42が設けられている。挿通孔42の開口端に、雌ねじ部42aが設けられている。
基体40に下位シール材としてのワッシャー(座金)123を載せ、このワッシャー(座金)123にバンジョー金具120の筒部120aを載せ、この筒部120aに上位シール材としてのワッシャー(座金)124を載せる。
【0035】
次に、バンジョーボルト121の軸部121eが、ワッシャー(座金)124、筒部120a及びワッシャー(座金)123を貫通するようにして、雄ねじ部121dを雌ねじ部42aにねじ込む。ワッシャー(座金)124は鍔121bで抑えられ、ワッシャー(座金)123は筒部120aで抑えられるため、共にシール作用を発揮する。
【0036】
ブレーキ配管118から流入するブレーキ液は、バンジョー金具120の管部120b、バンジョーボルト121の環状溝121g、貫通孔121h、軸中心孔121fの順に流れて基体40内のブレーキ液路へ至る。
環状溝121gが設けられているため、筒部120aの方位が何処であってもブレーキ液の流れは確保される。
【0037】
図5に示すように、凹部44Bにバンジョー金具120の先端部120cを挿入する。次に、バンジョーボルト121を所定の方向に回す。すると、バンジョー金具120がバンジョーボルト121に連れ回る。ただし、先端部120cが凹部44Bの壁に当たるため、バンジョー金具120の回り止めが図られる。
凹部44Bに複数のバンジョー金具120の先端部120cを挿入し、回り止めを図ることができる。
【0038】
次に、車両用ブレーキ液圧制御装置の要部である基体40の加工方法を説明する。
図6に基づいて、基体40に、凹部44Bの形成と3つの面の機械加工とを説明する。
図6(b)が平面図であり、
図6(a)が
図6(b)のa矢視図であり、
図6(c)が
図6(b)のc矢視図である。
【0039】
図6(c)に示すように、定盤207などに素材200を載せる。そして、クランプ金具210で素材200をクランプする。
図6(b)に示すように、素材200はクランプ金具210でクランプされる。この状態で、クランプ金具210と刃物が干渉しない3つの面(素材200の第1面201、第2面202及び第3面203)を機械加工する。このときに、
図6(a)にて、凹部44Bを形成する。
【0040】
凹部44Bなどの加工が終わったら、クランプ金具210を緩める又は外し、素材200を90°水平回転し、上下反転する。
図7(b)のように、凹部44Bの位置が変更された。
図7(c)にて、クランプ金具210で素材200をクランプするが、このときに凹部44Bを利用してクランプする。揺動タイプのクランプ金具210は、クランプの際に上下方向に移動する。凹部44Bが高さ方向に余裕があるため、揺動タイプのクランプ金具210の使用が可能となる。
【0041】
クランプ後に、クランプ金具210と刃物が干渉しない残り3つの面(素材200の第4面204、第5面205及び第6面206)を機械加工する。
この後に、
図5に示すように、凹部44Bにバンジョー金具120の先端部120cを入れ、バンジョー金具120の回り止めを図る。
【0042】
なお、本実施例では、略三角形状の凹部44を示したが、これに限らず三角形以外の形状であっても良い。
また、
図6、
図7に示した基体40の加工方法は一例であり、凹部44Bをクランプ穴として用いる形態であれば、他の加工方法でもよい。
【0043】
また、実施例では凹部44Bは、クランプ穴を兼ねるようにしたが、ブレーキ配管118の回り止めを図ることを主目的とすれば、クランプ穴を兼ねない回り止め専用の凹部であってもよい。
【0044】
すなわち、内部にブレーキ液路A1〜E1及びA2〜E2が形成された、車両用ブレーキ液圧制御装置10の基体40において、一面に、ブレーキ配管118が接続される挿通孔42が形成されるとともに、複数のブレーキ配管118の先端部120cが入り込む共通の凹部44Bが形成され、この凹部44Bで複数のブレーキ配管118の回り止めを成すようにすれば、複数のブレーキ配管118の回り止めを行うための加工工数を最小限に抑えることができる。
【0045】
凹部44Bの形状は任意であるが、略三角形状に形成すれば、先端部120c、120cの出し入れが長孔形状よりは容易になる。
また、凹部44Bの形成位置は任意であるが、実施例のように複数の挿通孔42で囲まれた位置に形成すれば、挿通孔42に対して凹部44Bをバランス良く配置することができる。
【0046】
また、凹部44Bの底面に孔部103を配置するか否かは任意であるが、
図3(b)で説明したように、凹部44Bの底面に孔部103を形成した場合には、凹部44Bの底面から孔部103を加工すれば良く、孔部103の加工を短縮できる。
【0047】
以上、前輪ブレーキキャリパ(
図1、符号14)と後輪ブレーキキャリパ(
図1、符号24)を制御する、2系統対応の車両用ブレーキ制御装置について説明したが、1系統対応の車両用ブレーキ制御装置に、本発明を適用することもできる。
【0048】
尚、本発明は、自動二輪車に好適であるが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。