(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各コイルにおいて渦巻きばね自体に巻き付けられたストリップから形成される渦巻きばね(3)、及び、実質的に三角形状に延在するストリップ(7、27、47)を有するコレット(5、25、45)を有し、前記ストリップ(7、27、47)は、前記三角形の頂点の各々に、ばね(3)の内挿コイル(SI)に向かって放射状に延在するバルジ(2、4、8、22、24、28、42、44、48)を有し、前記ばね(3)及び前記コレット(5、25、45)間の接着点は、前記コレット(5、25、45)の中心(C)及び前記接着点を通過するスタッフ(A、103)に対して対称である前記三角形のバルジ(2、4、8、22、24、28、42、44、48)の1つに配置される、ひげぜんまい(1、21、41)であって、
前記三角形の各頂点の間の3辺において、前記ストリップ(7、27、47)が、少なくとも長さ、高さ及び幅が同一かつ前記幅が一定である範囲で実質的に幾何学的形状が同一の第1及び第2の延在された領域(Z1X、Z2X)、並びに、前記第1及び第2の領域(Z1X、Z2X)間に配置され、前記第1及び第2の領域(Z1X、Z2X)の幅(W1X、W2X)と比較して広い幅を有し、かつ、前記第1及び第2の2つの領域(Z1X、Z2X)に対する弾性的な変形応力を変化させるためにスタッフ(A、103)上に取り付けられる様に構成された第3の領域(Z3X、Z4X、Z5X)から形成される、ことを特徴とするひげぜんまい(1、21、41)。
共振器が、てん輪(105)、及び、請求項1〜8の内、何れか一項に記載のひげぜんまい(1、21、41)がその上に取り付けられたスタッフ(A、103)を有することを特徴とする、時計用の共振器(101)。
【発明の概要】
【0005】
本願発明の目的は、特に、接触点及び多角形の頂点において、ストリップにおける接触及び曲げ応力の発生を抑制しつつ、欧州特許出願第2916177号明細書の利点を維持するコレットを提案することにより、上述した問題点の全部または一部を解決することである。
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、各コイルにおいて渦巻きばね自体に巻き付けられたストリップから形成される渦巻きばね、及び、実質的に三角形状に延在するストリップを有するコレットを有するひげぜんまいに関する。上記ストリップは、上記三角形の頂点の各々に、ばねの内挿コイルに向かって放射状に延在するバルジ(隆起部)を有する。上記ばね及び上記コレット間の接着点は、上記コレットの中心及び上記接着点を通過するスタッフに対して対称である上記三角形のバルジの1つに配置される。上記ひげぜんまいは、上記三角形の各頂点の間において、上記ストリップが、実質的に一定の幅を有する第1及び第2の領域、並びに、上記第1及び第2の領域間に配置され、上記第1及び第2の領域の幅と比較して広い幅を有し、かつ、上記第1及び第2の2つの領域に対する弾性的な変形応力を変化させるためにスタッフ上に取り付けられる様に構成された第3の領域から形成される、ことを特徴とする。
【0007】
驚くことに、上記スタッフ、及び、上記コレットの上記多角形頂点の間の接触点間の弾性領域を変化させることにより、欧州特許出願第2916177号明細書の
図9のコレットの接触応力及び曲げ応力と比較して、接触応力を70%、曲げ応力を40%も、低減することができた。従って、コレット内では、内部応力が極めて低くなることは明らかである。更に、取り付け作業中に、上記スタッフに対する保持締め付けトルクを最小に維持しつつ、接触応力のバランスをより良く取ることができた。
【0008】
本願発明の他の有益な変形態様によれば:
上記第1及び第2の領域は、同一の幅を有し;
上記第3の領域の長さは、3つの領域の長さの合計値の20%及び50%の間の値を採り;
上記第3の領域の幅は、上記第1及び第2の領域の幅の140%及び300%の間の値を採り;
上記第3の領域は、上記コレットの中心に向かって放射状に延在するに連れて厚くなる;
上記第3の領域は、上記ばねの内挿コイルに向かって放射状に延在するに連れて厚くなる;
上記第3の領域は、上記コレットの中心に向かって、かつ、上記ばねの内挿コイルに向かって、放射状に延在するに連れて厚くなる;
上記ばねは、シリコン(ケイ素)から形成される。
【0009】
更に、本願発明は、上述した変形態様の何れかに係るてん輪及びひげぜんまいがその上に取り付けられたスタッフを有することを特徴とする、時計用の共振器に関する。
【0010】
他の特徴及び利点は、以下の添付図面を参照した、限定されない例示により為される後述の説明から明確となるであろう:
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明は、ワッシャにより弾性的に固定されることを意図されたひげぜんまいに関する。より具体的には、本願発明は、ワッシャの弾性的なクランプを用いて、ひげぜんまいをスタッフに固定させる様に考案されたコレットに関する。
【0013】
この様な組み立て方式は、同一出願人による欧州特許出願第2860591号明細書及び欧州特許出願第2860592号明細書に記載されており、また、本願発明の説明においても、参照により組み入れられる。この様な組み立て方式は、使用される材料に関し、極めて高い自由度を提供する。従って、この様な組み立て方式は、特に、その材料が有効な塑性領域を有さない部分、すなわち、非常に限られた塑性領域を有する部分に対しても、異なる種類の材料を有する部材と共に、適用可能である。
【0014】
時計製作の分野においては、以降、使用材料に関して極めて高い自由度を可能とする上記種類の組み立て品が、例えば、ドープ若しくは非ドープの単結晶(若しくは多結晶)シリコン、酸化ケイ素、珪石粉または石英等、単結晶若しくは多結晶のコランダム(鋼玉)またはより一般的なアルミナ、窒化ケイ素、及び、炭化ケイ素等のシリコンベースの材料の様な、非常に限定された塑性領域を有する材料の占有率の増加に起因して、提案されなければならない。
【0015】
図1に、上記種類の組み立て品の一例を示す。時計用の共振器101は、好都合には、本願明細書に記載されたひげぜんまい1、21、41であってもよい、てん輪105及びひげぜんまい107がその上に取り付けられたスタッフ103を有する。
図1に示す例では、ひげぜんまい107のコレットは、ワッシャ109、及び、スタッフ103のショルダ(肩部)111の間において、スタッフ103上に弾性的に取り付けられている。欧州特許出願第2860591号明細書及び欧州特許出願第2860592号明細書において説明される様に、ワッシャ109は、主にその周辺部分において、弾性的な締め付けにより、ひげぜんまい107のコレットを保持する。
【0016】
欧州特許出願第2916177号明細書の
図9に示すコレットは、欧州特許出願第2860591号明細書及び欧州特許出願第2860592号明細書に記載された上記種類の組み立て品のために考案された、三角形状に延在するストリップ67を有する。上記三角形の各頂点間において、ストリップ67は、一定でない幅を有する。より具体的には、上記三角形の各頂点間のストリップ67は、クランプ点において、2つのアーム、及び、ストリップの幾何学的中心上に重心を位置決め可能とする第4バルジを有する第3アーム上の頂点に向かって、最大の幅から次第に減少する様に変化する。
【0017】
ミーゼス条件の適用により、欧州特許出願第2916177号明細書に記載のコレット65は、直径6μmの保持用のストリップ67に沿った応力の大きな変化を受け易いことが判明している。実際に、スタッフとの接触点における接触応力は、300MPa及び450MPaの間の値を採り、曲げ応力は、三角形の頂点において、500MPa及び600MPaの間の値を採る一方で、上記接触点及び上記頂点間において、実質的に0となる。これらの最大値は、それ自体が、時計製作に使用される殆どの材料にとって不利益とはならないが、とは言え、コレットは、そのストリップに沿った応力の大きな変化を受け易い。この様な理由により、本願では、特に接触点における、ストリップに沿った応力の変化を抑制することを提案する。
【0018】
驚くことに、単に、幾何学的形状のコレットアームを採用するのみで、欧州特許出願第2916177号明細書に記載の利点を依然享受し、かつ、スタッフに対する保持締め付けトルクを最小に維持しつつ、スタッフとの接触点に付与される接触応力を大幅に減少させると共に、ストリップに沿って観測される最大曲げ応力を抑制することも可能となる、ことが判明した。
【0019】
本願発明によれば、この様なひげぜんまい1、21、41は、各コイルにおいて渦巻きばね3自体に巻き付けられたストリップを有する渦巻きばね3、及び、実質的に三角形状に延在するストリップ7、27、47を有するコレット5、25、45を有する。ストリップ7、27、47は、上記三角形の頂点の各々に、ばね3の内挿コイルS
Iに向かって放射状に延在するバルジ2、4、8、22、24、28、42、44、48を有する。最終的に、ばね3及びコレット5、25、45間の接着点は、コレットの中心C及び上記接着点を通過する軸に対して対称である上記三角形のバルジ2、22、42の1つに配置される。中心Cは、コレット5、25、45の開口部に内接する円の中心として、規定されるものとしてもよい。
【0020】
コレット5、25、45のスタッフA及び上記三角形の頂点間の接触点P
1、P
2、P
3間の弾性領域、すなわち可撓性領域を変化させることにより、幾何学的形状を有する、コレット5、25、45のアーム、すなわち、三角形の頂点間のストリップ7、27、47の部分を適応させることを提案する。
【0021】
この様に、本願発明によれば好都合に、上記三角形の各頂点の間に、ストリップ7、27、47が、実質的に一定の幅を有する第1及び第2の領域Z
1X、Z
2X、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2X間に配置され、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅と比較して広い幅を有し、かつ、ストリップ7、27、47の第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xに対する弾性的な変形応力を変化可能とするスタッフA上に取り付けられる様に構成された第3の領域Z
3X、Z
4X、Z
5Xから、形成される。
【0022】
再びミーゼス条件の適用により、驚くことに、本願発明に係るコレット5、25、45は、欧州特許出願第2916177号明細書に記載のコレットと比較して、そのストリップ7、27、47に沿った応力変化が、より少なくなることが判明した。実際に、6μmの同一の望ましい保持に関し、スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3における接触応力は、全て約100MPaであり、かつ、ストリップ7、27、47に沿った曲げ応力は、400MPaを超えることはない。
【0023】
恐らく最も驚くべきことは、第4バルジ6、26、46は、コレット5、25、45のアームの1つの上において、ストリップ7、27、47の厚くなる部分であると既に考え得るが、接触応力もまた、接触点P
2において低減されることであろう。従って、各アーム上における、3つの領域Z
1X、Z
2X、Z
3X、Z
4X、Z
5Xの幾何学的形状は、実質的に同一であると共に、コレット5、25、45内において、曲げ応力及び接触応力に対し、より良いバランスを保ちかつ低くするために、適した形状となる様な配慮が為されなければならない様である。
【0024】
上述の結果を得るために、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xにおいては、好適には、同一の長さL
13、L
23、L
1X、L
2X、高さ、及び、幅W
13、W
23、W
1X、W
2Xが維持された。更に、第3の領域Z
3X、Z
4X、Z
5Xの長さが、3つの領域Z
1X、Z
2X、Z
3X、Z
4X、Z
5Xの長さの合計の20%及び50%の間の値であり、かつ、第3の領域Z
3X、Z
4X、Z
5Xの幅が、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅W
1X、W
2Xの140%及び300%の間の値であることにより、上述した利点を維持することが可能となることが明らかとなった。
【0025】
第3の領域Z
3X、Z
4X、Z
5Xの長さ及び幅が変化しても高さが維持される、本願発明の3つの適用例が、以下に提供される。このため、
図5に示す第1実施形態によれば、ひげぜんまい4は、コレット45の中心Cに向かって各々が放射状に延在する3つの肥厚領域Z
51、Z
52、Z
53を有するストリップ47を有するコレット45を有する。第3の領域Z
51、Z
52、Z
53の各々は、スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3に対して、実質的に平面を提供することが観察可能である。
【0026】
ストリップ47の各アームの第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xは、全て同一であり、かつ、相互に同一の弾性特性を提供する、正確な直角プリズムを形成する。3つの領域Z
51、Z
52、Z
53の長さの合計の20%と実質的に等しい、第3の領域Z
51、Z
52、Z
53の長さ、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅W
1X、W
2Xの143%と実質的に等しい、第3の領域Z
51、Z
52、Z
53の幅が、
図5に示す第1実施形態において、適用される。スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3に対する実質的な平面上の実質的に一定の幅、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅の間において、第3の領域Z
51、Z
52、Z
53の幅は、半径に沿って、すなわち次第に減少することも視認可能である。
【0027】
最終的に、内挿コイルに向かって放射状に延在する第4バルジ46は、コレット45の重心をコレット45の中心Cに配置するために、バルジ42とは反対側のアームの第3の領域Z
52上に存在することが視認される。
【0028】
図4に示す第2実施形態によれば、ひげぜんまい21は、ばねの内挿コイルに向かって各々が放射状に延在する3つの第3の肥厚領域Z
41、Z
42、Z
43を有するストリップ27を有するコレット25を有する。第3の領域Z
41、Z
42、Z
43の各々は、スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3に対して、隣接する第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの延長線上に、実質的に平面を提供することが観察可能である。
【0029】
ストリップ27の各アームの第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xは、全て同一であり、かつ、相互に同一の弾性特性を提供する、正確な直角プリズムを形成する。3つの領域Z
1X、Z
2X、Z
4Xの長さの合計の42%と実質的に等しい、第3の領域Z
41、Z
42、Z
43の長さ、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅W
1X、W
2Xの267%と実質的に等しい、第3の領域Z
41、Z
42、Z
43の幅が、
図4に示す第2実施形態において、適用される。スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3に対する実質的な平面上の実質的に一定の幅、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅の間において、第3の領域Z
41、Z
42、Z
43の幅は、半径に沿って、すなわち次第に減少することも視認可能である。
【0030】
最終的に、内挿コイルに向かって放射状に延在する第4バルジ26は、コレット25の重心をコレット25の中心Cに配置するために、バルジ22とは反対側のアームの第3の領域Z
42の延長線上に存在することが視認される。更に、第2実施形態に係る第4バルジ26は、第1実施形態に係る第4バルジ46よりも、比例的に大きいことが視認可能である。
【0031】
図2、3に示す第3実施形態によれば、ひげぜんまい1は、コレット5の中心Cに向かって、かつ、ばね3の内挿コイルS
Iに向かって各々が放射状に延在する3つの肥厚領域Z
31、Z
32、Z
33を有するストリップ7を有するコレット5を有する。従って、第3実施形態は、第1及び第2の実施形態の混合であると考えることができる。しかしながら、第3実施形態においては、第3の領域Z
31、Z
32、Z
33の各々は、スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3に対して、実質的に凹面を提供することが視認される。
【0032】
ストリップ7の各アームの第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xは、全て同一であり、かつ、相互に同一の弾性特性を提供する、正確な直角プリズムを形成する。3つの領域Z
31、Z
32、Z
33の長さの合計の38%と実質的に等しい、第3の領域Z
31、Z
32、Z
33の長さ、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅W
1X、W
2Xの167%と実質的に等しい、第3の領域Z
51、Z
52、Z
53の幅が、
図2及び
図3に示す第3実施形態において、適用される。より具体的には、50%の厚み増加が、コレット5の中心Cに向かって放射状に適用され、かつ、117%の厚み増加が、ばね3の内挿コイルS
Iに向かって放射状に適用される。スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3上の最大幅、並びに、第1及び第2の領域Z
1X、Z
2Xの幅の間において、第3の領域Z
31、Z
32、Z
33の幅は、各アームの内面及び外面上で、2つの異なる半径に沿って、すなわち次第に減少することも視認可能である。
【0033】
最終的に、内挿コイルS
Iに向かって放射状に延在する第4バルジ6は、コレット5の重心をコレット5の中心Cに配置するために、バルジ2とは反対側のアームの第3の領域Z
32の延長線上に存在することが視認される。
【0034】
当然のことながら、本願発明は、例示された実施例に限定されず、当業者の考え得る様々な変形態様及び修正態様を採ることができる。特に、3つの実施形態は、本願発明の主旨から逸脱することのない範囲内で、相互に組み合わせ可能である。従って、一つの例として、スタッフAとの接触点P
1、P
2、P
3上の表面は、第1及び第3の実施形態の間において切替え可能である。この様に、接触点P
1、P
2、P
3上の表面が、本願発明の主旨から逸脱することのない範囲内で、平面、凸面、または、凹面の何れであってもよいことは明らかである。
【0035】
更に、本願発明に係るコレット5、25、45は、三角形状のストリップ7、27、47に限定されない。本願発明は、異なる種類の多角形に対しても、適用可能である。
【0036】
また、ひげぜんまい1、21、41は、幾つかの材料を用いて形成することもできる。従って、かかる態様に限定はされないが、例えば、シリコン等の基材は、その全部または一部が、ひげぜんまい1、21、41の気候条件に対する感度を低減させるために、温度補償層、及び/または、水分に対して耐性及び不浸透性を有する層により、被覆されるものとしてもよい。
【0037】
最終的に、共振器内に組み込まれる時間測定法を改良するために、ひげぜんまい1、21、41は、グロスマンタイプの曲線を有する内挿コイルS
I、及び、一部が肥厚性の外側コイルもまた、有するものとしてもよい。