特許第6606541号(P6606541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルケマ フランスの特許一覧

特許6606541架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物
<>
  • 特許6606541-架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物 図000005
  • 特許6606541-架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物 図000006
  • 特許6606541-架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物 図000007
  • 特許6606541-架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物 図000008
  • 特許6606541-架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物 図000009
  • 特許6606541-架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606541
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】架橋のためのモノペルオキシカーボネート過酸化物の混合物の使用及び架橋可能なポリマーの組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20191031BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20191031BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20191031BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20191031BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C08J3/24 ZCES
   C08K5/14
   C08L23/08
   C08L31/04 S
   C08J5/18CES
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-504064(P2017-504064)
(86)(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公表番号】特表2017-521540(P2017-521540A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】FR2015052016
(87)【国際公開番号】WO2016012718
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年7月20日
(31)【優先権主張番号】1457184
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デフランシッシ, アルフレード
(72)【発明者】
【氏名】ルー, チャオ
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−512984(JP,A)
【文献】 特開2013−221145(JP,A)
【文献】 特開2012−069866(JP,A)
【文献】 特表2011−528389(JP,A)
【文献】 特開2012−023106(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0108758(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102732160(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、5/00−5/02、
5/12−5/22、99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンホモポリマー又はコポリマー、及び特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー又はEVAの混合物からなる少なくとも一つのポリマーと、別のエチレンホモポリマー又はコポリマーとを架橋するための過酸化物の使用であって、過酸化物が、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート(TA−IPC)とO,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートを含むことを特徴とする、使用。
【請求項2】
過酸化物が、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートと、O,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート若しくはO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートの混合物、又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートとO,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート若しくはO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートの混合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートが、溶媒で希釈されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも一つのエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー及び少なくとも一つの過酸化物を含む架橋可能な組成物であって、過酸化物がO,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートと、O,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートを含むことを特徴とする架橋可能な組成物。
【請求項5】
過酸化物がO,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートと、O,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TAEC)の混合物からなることを特徴とする、請求項4に記載の架橋可能な組成物。
【請求項6】
過酸化物の混合物が、前記組成物中に存在するポリマーの質量の0.2%から4%に相当することを特徴とする、請求項5に記載の架橋可能な組成物。
【請求項7】
前記エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーが、前記組成物中に、組成物の重量に対して70重量%から99.9重量%の範囲の含有量で存在することを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の架橋可能な組成物。
【請求項8】
一又は複数の架橋助剤又は架橋促進剤も含むことを特徴とする、請求項4に記載の架橋可能な組成物。
【請求項9】
一又は複数の架橋助剤又は架橋促進剤が、前記組成物中に、組成物の重量に対して0.05から30重量%の範囲の含有量で存在することを特徴とする、請求項8に記載の架橋可能な組成物。
【請求項10】
架橋ポリマーのフィルムを製造するための方法であって、少なくとも:
− a°)請求項4から9のいずれか一項に記載の架橋可能な組成物をフィルムの形態に押出成形する工程、
− b°)前記押出成形する工程a°)の後で、20分以内の時間にわたり、前記架橋可能な組成物を架橋する工程
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンホモポリマー又はコポリマー、及び特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー又はEVAの混合物と、別のエチレンホモポリマー又はコポリマーの架橋のための、特定の過酸化物の使用と、この特定の過酸化物を含む過酸化物の混合物とに関する。本発明は、エチレンホモポリマー又はコポリマー、及び特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーと、この特定の過酸化物又は上記過酸化物の混合物を含む架橋可能な組成物にも関する。本発明は、エチレンホモポリマー又はコポリマー及び特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋のための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンホモポリマー又はコポリマー及び特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーを、O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートのようなフリーラジカル開始過酸化物の存在下において、EVAコポリマーを用いて架橋する手順が既知である。このような過酸化物O,O−tert−ブチル O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートは、本出願人によりLuperox(登録商標)TBECという名称の下に製造及び販売されている。
【0003】
特定の用途、特に光起電モジュール(ソーラーパネル)の電気部品を被包するフィルムの生産において、架橋フィルムには、電気回路を環境から完全に絶縁するために、最大の電気抵抗を提供することが絶対的に必須である。
【0004】
このような一つの用途(光起電モジュールエンキャプスレーター)において、EVAは極めて一般的に使用されており、現時点で市場の大部分を占めている。EVAは、特にこの用途のために満足のゆく熱機械特性を獲得するように、必ず架橋される。具体的には、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーの架橋方法において、良好な架橋密度を保つことが重要である。この理由は、架橋密度が完成製品の機械的特性の指標であるためである。したがって、架橋密度が低すぎる場合、完成製品は、平凡な又は場合によっては不十分な破壊強度又は引き裂き強度を特徴とするかもしれない。
【0005】
ここで、現時点で従来的に実施されるEVAとO,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートの架橋は、架橋ポリマーが不満足な電気絶縁特性を有するという結果を有する。
【0006】
さらに、O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートを用いるこのような方法による、特にEVAの架橋時間は比較的長い。これにより、このようなエラストマーを完成製品に変化させる産業の生産効率が失われる結果となっている。
【0007】
最後に、このような架橋に必要な過酸化物の量は、過酸化物自体のコストに関してだけでなく、このような架橋方法の結果として必ず生じる分解生成物のために、重要な因子である。
【0008】
エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーのような弾性ポリマーの架橋性可能な組成物のための架橋剤としての、O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートに固有の特に上記特徴及び欠点又は弱点のすべてを考慮すると、代替となる架橋剤を単体で又は混合物として見出すことが、現実に求められている。
【0009】
すべてエチレンポリマー又はコポリマーの架橋のための特定の過酸化物、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート(TBIC)を開示している、米国特許第3344126号、特開2012−69866、国際公開第2011/020760号及び同第2011/067505号も既知である。
【0010】
確かに、その効率は有利であるが、出願人は、それを特定の種類の別の過酸化物と、極めて特殊な比率で混合することを選択することにより、非常に注目すべき相乗効果が起こることを発見した。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、驚くべきことに、O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートと同じファミリーの過酸化物を、TBEC(O,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート)又はTAEC(O,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート)から選択される特定の有機過酸化物と組み合わせて使用することにより、この有機過酸化物の欠点が克服されること、及びそれに加えて、特定のその他特徴に関して極めて重大な改善が達成されることを発見した。
【0012】
この結果は、架橋剤が、従来使用される過酸化物O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートとは異なり、以下に示す一つの分枝Rのみを有するため、さらに驚くべきことである。
【0013】
EVAを含むポリマーを架橋する特定の用途のために出願人によって発見された過酸化物は、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートであり、したがって上記のR基は以下の通りである。
【0014】
O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートの場合、R基は以下の通りである。
【0015】
構造的に極めて類似した二つの過酸化物が、官能性ポリマー、特にEVAの架橋において、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートに有利なこのような異なる特性/品質を有する可能性に想到することは、当業者にとって自明でなかった。
【0016】
したがって、本発明は、エチレンホモポリマー又はコポリマー、特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー又はEVAの混合物からなる少なくとも一つのポリマーと、別のエチレンホモポリマー又はコポリマーとの架橋のための(複数の)過酸化物に関し、過酸化物が、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート(TBIC)又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート(TA−IPC)、並びにO,O−tert−ブチル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TBEC)又はO,O−tert−アミル−O−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TAEC)を含むことを特徴とする。
【0017】
以下では、市販されている組成物であることから、本発明をTBICに関連させて提示する。しかしながら、実験はTA−IPCについても実施され、出願人はTA−IPCについて、TBICと少なくとも同じ程度に満足のゆく実験室の結果及び特性を見出した。
【0018】
本発明が提供する可能性によれば、架橋に使用される唯一の過酸化物は上記二つの過酸化物とそれらの組み合わせである。したがって、この場合、過酸化物は、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートとO,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートの混合物(「TBIC+TBEC」又は「TBIC+TAEC」混合物)であるか、又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートとO,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートの混合物(「TA−IPC+TBEC」又は「TA−IPC+TAEC」混合物)からなり、好ましくは、前記混合物を形成するこのような二つの過酸化物の質量比は、99%/1%から1%/99%、さらに好ましくは40%/60%から60%/40%、及びそれよりもさらに好ましくは45%/55%から55%/45%である。
【0019】
有利には、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートは、希釈形態であり、好ましくは希釈物中50%を上回る量で、さらに好ましくは希釈物中60%を上回る量で存在する。
【0020】
後述では、簡潔に示すため、O,O−tert−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートは、しばしば略称のTBECにより言及され、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートは、略称のTBICで言及される。このような記述の簡略化はTA−IPCとTAECにも適用されている。
【0021】
本発明の別の態様は、少なくとも一つのエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーと少なくとも一つの過酸化物を含む架橋性可能な組成物に関し、過酸化物がO,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート、並びにO,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の他の有利な特徴は以下のように特定される:
− 本発明が提供する可能性によれば、過酸化物は、O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートとO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TBIC+TBEC)又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TBIC+TAEC)との混合物からなるか、或いはO,O−tert−アミルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートとO,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート又はO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートとの混合物(「TA−IPC+TBEC」又は「TA−IPC+TAEC」混合物)からなり、好ましくは、前記混合物を形成するこのような二つの過酸化物の比は、40%から60%、さらに好ましくは45%から55%である;
− 過酸化物の混合物は、前記組成物中に存在するポリマーの質量の0.2%から4%、好ましくは0.5%から2.5%に相当する;
− 好ましくは、上記エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーは、前記組成物中に、組成物の重量に対して、70重量%から99.9重量%、好ましくは97重量%から99重量%の範囲の含有量で存在する;
− 本発明が提供する可能性によれば、架橋ポリマーについて選択された用途の機能として、組成物は、一又は複数の架橋助剤又は促進剤も含む。多置換芳香族型の架橋促進剤として、ジビニルベンゼン、ジイソプロプロペニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー及びトリアリルトリメリテートを挙げることができる。多置換メタクリレートをベースとする架橋促進剤として、エチレングリコールジメタクリレート、フェニレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、1,3−グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートを挙げることができる。有利には、多置換メタクリレートベースの架橋促進剤、特にエチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートが使用される。多置換アクリレートベースの架橋促進剤として、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール 600ジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びジペンタエリトリトールペンタアクリレートを挙げることができる。窒素架橋促進剤として、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)及びN,N’−m−フェニレンジマレイミドを挙げることができる。ビニル基、ブタジエン、クロロプレン及びイソプレンにより多置換されたモノマーも挙げられる。架橋助剤は、組成物の重量に対して0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%の範囲の含有量で使用することができる。
【0023】
組成物中に、他の機能性補助剤、例えば一又は複数の可塑剤、付着促進剤、UV安定剤及び/又はUV吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤/蛍光増白剤、顔料及び強化補強充填剤を用いてもよく;
− この場合、機能性薬剤は、前記組成物中に、組成物の重量に対して0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%の範囲の含有量で存在する。
【0024】
後述では、本発明が提示されるとき、過酸化物と、O,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TBEC)からなる追加的過酸化物との混合物が存在することに注意が必要であるが、本出願人がさらにO,O−tert−アミルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート(TAEC)も試験したこと、及びTBIC又はTA−IPCとの混合物として使用されたとき、TAECが少なくともTBECと同じ程度に有効に機能することが明らかである。
【0025】
本発明は架橋ポリマーフィルムの製造方法にも関し、この方法は少なくとも:
− a°)上記に定義される架橋性可能な組成物をフィルムの形態に押出成形する工程、
− b°)前記押出成形する工程a°)の後で、20分以内、好ましくは15分未満の時間にわたり、前記架橋性可能な組成物を架橋する工程
を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下の記載は、添付図面を参照する純粋に非限定的な例示として提供される。
図1】種々の過酸化物の量の関数としてEVAフィルムの架橋密度(XL)を示している。
図2】純粋なEVA(非架橋)からTBEC及びTBICを用いて架橋させたEVAの混合物まで、様々な組成物の(電気的)体積抵抗率(VR)を示している。
図3】TBICの量の関数としてVRの変化を示している。
図4】イソドデカン(過酸化物のための標準的な炭化水素ベースの溶媒)の含有量の関数としてVRの変化を示している。
図5】TBICを用いて架橋させたEVAポリマーの体積抵抗率を架橋時間の関数として示している。
図6】TBICの量の関数としてVRの変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
過酸化物と、架橋されることが意図された好ましいポリマー、即ちEVAの両方に関して、これらすべての製品は、その製造及び商業的入手可能性の両方に関し、当業者に周知である。
【0028】
これら製品に関する以下の追加情報を簡単に記載する。
【0029】
本発明における使用に適したエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーは、例えば、アルケマ社によって商標名Evatane(登録商標)24−03、24−03 SA、28−03、28−05、28−25、28−40、28−150、28−420、28−800、33−15、33−25、33−45、33−45 PV、33−400、34−50 PVの下にそれぞれ販売されるエチレン−酢酸ビニルコポリマーである。本発明における使用に適したエチレン−酢酸ビニルコポリマーの酢酸ビニル含有量は変動してよく、例えば、このようなコポリマーは低含有量の酢酸ビニルを有しても、高含有量の酢酸ビニルを有してもよい。
【0030】
O,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートは、特に本出願人により、Luperox(登録商標)TBICという名称の下に市販されている。現時点で、この過酸化物は、77%までの範囲の濃度の液体形態で存在しており、溶媒は炭化水素、例えばイソドデカンである。本出願人は、例えば、この過酸化物をLuperox(登録商標)TBIC M75(即ちイソドデカン中75%)という名称の下に販売している。この過酸化物が純粋な形態又は実質的に純粋な形態で製造又は販売されていないという事実は、安全要件のみによるものであり(その本質的な熱感受性に関連して)、これは時間の経過により変化する可能性がある。後述では、試験された実施例は、Luperox(登録商標)TBIC M75を用いて実施されたが、もっと多量のO,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネート(75%超)が実験室で試験されたこと、及びこの製品に関して提示された結果が異なる含有量でも有効であったこと(特にさらに高い含有量のTBICにおいて。添付図面において繰り返さない)。
【0031】
O,O−tert−ブチル O−(2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートは、本出願人により、Luperox(登録商標)TBECという名称の下で市販されている。現時点で、この過酸化物は、純粋な(又は実質的に純粋な)形態で、又は場合によっては希釈された形態で存在している。
【0032】
本発明による架橋ポリマーの調製は、完全に一般的なものであり、当業者に周知である。唯一注意すべき点は、架橋に必用な加熱時間が本発明では短いこと、及び設定された目的、特に体積抵抗率の基準に関する目的を達成するために必要な過酸化物の量が比較的少ないことである。
【0033】
特に(但し非限定的に)光起電モジュールのエンキャプスレーターに対する本発明による架橋ポリマーの適用において、フィルムは、組成物の最大30重量%の割合まで組成物中に一又は複数の機能補助剤を含むことができ、後述の化合物又はそれら化合物の混合物から特に選択される。
【0034】
架橋密度及び反応速度を改善するために、本発明による組成物による組成物に一又は複数の架橋助剤、又は促進剤を加えることができる。多置換芳香族型の架橋促進剤として、ジビニルベンゼン、ジイソプロプロペニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー及びトリアリルトリメリテートを挙げることができる。多置換メタクリレートをベースとする架橋促進剤として、エチレングリコールジメタクリレート、フェニレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、1,3−グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートを挙げることができる。有利には、多置換メタクリレートベースの架橋促進剤、特にエチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートが使用される。多置換アクリレートベースの架橋促進剤として、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール 600ジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びジペンタエリトリトールペンタアクリレートを挙げることができる。窒素架橋促進剤として、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)及びN,N’−m−フェニレンジマレイミドを挙げることができる。ビニル基、ブタジエン、クロロプレン及びイソプレンにより多置換されたモノマーも挙げられる。
【0035】
実施を容易にし、且つ組成物及び構造を製造するための方法の生産効率を向上させるために、本発明による組成物に可塑剤を加えることもできる。例として挙げられるものには、パラフィン系、芳香族系、又はナフタレン系鉱油が含まれ、これらは本発明による組成物の付着力を向上させることもできる。さらに例として挙げられる可塑剤には、フタレート、アゼレート、アジペート及びトリクレジルホスフェートが含まれる。
【0036】
同様に、必要ではないが、付着強度が特に高くなければならないときには組成物の付着力を向上させるために、付着促進剤を有利に加えることができる。付着促進剤は非ポリマー成分であり、それは有機物、結晶体、鉱物であってもよく、好ましくは半鉱物半有機物である。半鉱物半有機物の中で、有機シラン又はチタネート、例えばモノアルキルチタネート、トリクロロシラン及びトリアルコキシシランを挙げることができる。また、これら付着促進剤は、第1又は第2のコポリマーに、当業者に周知の技術、例えば反応押出により直接グラフトすることも想到されうる。
【0037】
UV放射は、熱可塑性組成物をわずかに黄変させうるので、UV安定剤及びUV吸収剤(これら化合物は一般的に抗UV剤と呼ばれる)、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及びその他ヒンダードアミンを、そのような現象を避けなければならない特定の用途において付加することができる。これらの化合物は、例えばベンゾフェノン又はベンゾトリアゾールベースのものでよい。これらは、組成物の全質量に対して10質量%未満、好ましくは0.1から5質量%の量で付加することができる。
【0038】
組成物の製造中の黄変を制限するために、ホスフェート化合物(ホスホナイト及び/又はホスファイト)及びヒンダードフェノール系化合物といった酸化防止剤を付加してもよい。これら酸化防止剤は、組成物の全質量に対して10質量%未満、好ましくは0.05から5質量%の量で付加することができる。本発明の文脈において好まれる酸化防止剤は、例えば、略号TMQによっても知られている(1,2-ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)からなる。
【0039】
同様に、特定の適用において、難燃剤も本発明による組成物に付加することができる。これら薬剤は、ハロゲン化されていてもハロゲン化されていなくてもよい。ハロゲン化された薬剤の中では、臭素化生成物が挙げられる。使用できるさらなる非ハロゲン化薬剤には、ポリリン酸アンモニウム、アルミニウムホスフィナート及びホスホナート、メラミンシアヌレート、ペンタエリスリトール、ゼオライト、及びさらにはこれら薬剤の混合物といったリン系添加剤が含まれる。組成物は、組成物の全質量に対して典型的には3%から30%の範囲の割合で、これらの添加剤を含むことができる。染料又は蛍光増白剤を付加してもよい。
【0040】
組成物の全質量に対して通常5%から10%の範囲の割合で、組成物に顔料、例えば二酸化チタン又は酸化亜鉛を付加してもよい。
【0041】
組成物には、組成物の全質量に対して通常2.5%から30%の範囲、好ましくは10%以下の割合で、補強充填剤、例えばタルク、ガラス繊維、カーボンファイバー、モンモリロナイト、カーボンナノチューブ又はカーボンブラックを付加してもよい。
【0042】
試験製剤を作製するために用いた材料:
TBECは、O,O−tert−ブチルO−2−エチルヘキシルモノペルオキシカーボネートを意味する。上記に提示したように、これは、本出願人が製造及び販売するLuperox(登録商標)TBECにより本用途を例示する実施例において提供される。
【0043】
TBICはO,O−tert−ブチルO−イソプロピルモノペルオキシカーボネートを意味する。上記に提示したように、これは、Luperox(登録商標)TBIC M75(即ち、TBICはイソドデカン溶液中に75%まで存在する)により本用途を例示する実施例において提供される。本出願人が実施した試験のいくつかに基づく種々の図面において、TBICは特に、様々な希釈指数、特に略号M40、M50、及びM60にそれぞれ対応する40%、50%又は60%で示されている。
【0044】
Pは、tert−ブチルペルオキシベンゾエート(過酸化物)を意味し、従来純粋な形態で販売されている。これは、本出願人によりLuperox(登録商標)Pという名称の下に販売される。
【0045】
101は、2,5−ジメチル 2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンを意味し、従来純粋な形態又は実質的に純粋な形態で販売されている。この過酸化物は、本出願人によりLuperox(登録商標)101という名称の餅に販売される。
【0046】
270は、tert−ブチル ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートを意味し、従来純粋な形態又は実質的に純粋な形態で販売されている。この過酸化物は、本出願人によりLuperox(登録商標)270という名称の下に販売される。
【0047】
531M80は、例えばイソドデカン中において、80%に希釈された1,1−ビス(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサンを意味する。この過酸化物は、本出願人によりLuperox(登録商標)531M80という名称の下に販売される。
【0048】
331M50は、例えばイソドデカン中において、50%に希釈された1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンを意味する。この過酸化物は、本出願人によりLuperox(登録商標)331M50という名称の下に販売される。
【0049】
JWEB50は、例えばエチルベンゼン中において、50%に希釈されたポリ(t−ブチル)ペルオキシカーボネートポリエーテルを意味する。この過酸化物は、本出願人によりLuperox(登録商標)JWEB50という名称の下に販売される。
【0050】
EVAは、エチレン−酢酸ビニルコポリマーを意味する。結果が使用されたEVAの種類に依存しないことを保証するために、すべての実験及び試験に同じ種類のEVAが使用される。例として、上述のように、18%の酢酸ビニル及びメルトフローインデックス(MFI)値150(ASTM規格1238に従って測定)を有するEVAからなる、本出願人により販売されるEvatane(登録商標)18−150 EVA、又は40%の酢酸ビニル及びメルトフローインデックス(MFI)値55(ASTM規格1238に従って測定)を有するEVAからなる、本出願人により販売されるEvatane(登録商標)40−55が挙げられる。
【0051】
実施された試験及びその結果:
すべての図面において、用語「phr」は「樹脂100につき」を意味する。したがって、例として、所与の過酸化物について1 phrが考慮される場合、これは、試験された組成物において、架橋されるポリマー100単位につきこの過酸化物が1単位(重量により)存在することを意味する。
【0052】
図1は、過酸化物を用いたEVAの架橋密度測定を示している。
【0053】
TBECは、1phrにつき3.38dN.mでの架橋の基準と考えらえる。従来EVAの架橋に使用されているこの過酸化物TBECに関し、他の標準的過酸化物P、101、270、531M80、331M50及びJWEB50は、TBECと同レベルの架橋を得るためにはもっと多くの量で、又は場合によってははるかに多くの量で存在しなければならないことが観察される。
【0054】
同レベルの架橋を得るために、TBICだけが少量でよく、即ち本例の場合0.9phrを必要とする。したがって、TBICの使用により、コスト削減が可能であり(量の低減により)、したがって架橋EVA中の過酸化物自体の分解により生じる揮発性有機化合物のレベルが低下する。
【0055】
図2により、二つの主要な結論を導き出すことができる。まず、極めて小さな量(0.2 phr)で使用されるTBICは、架橋ポリマーの体積抵抗を劇的に低下させることができ、このTBICだけが、TBECのみよりはるかに良好な結果を有している。最後に、実質的に等量(50/50)のTBICとTBECの混合物は、このVR試験に観察される結果が最良であることから、相乗効果を有することも注目される。
【0056】
図3は、TBIC+TBEC混合物が、それぞれ特定の割合において、VR試験において最良の結果を有することを確認するものである。
【0057】
図4により、特に、希釈材又は溶媒、本例の場合イソドデカンが、体積抵抗の測定に影響を有さないことの立証が可能である。
【0058】
ここで、TBICに使用される溶媒がイソドデカンであること、しかし他の有機溶媒が試験されたこと、及び結果は本明細書に提示されるものと同一又は実質的に同一であったことに注意されたい。
【0059】
図5により、主に、TBICがポリマーの迅速な架橋を達成するという事実、及び架橋時間が短縮されるほど、体積抵抗のレベルが上昇し、それにより架橋されるポリマーの所望のレベルの体積抵抗の精密な計量が可能になるという事実の立証が可能となる。
【0060】
本明細書の文脈において提示されたすべての試験がEVAを用いて実施されたが、通常架橋される他の多くのポリマーは、EVAを含む混合物として(時に低い又は極めて低いEVAの割合で)試験されたか、又は場合によってはEVAなしで(別のポリマーに置き換えて)試験され、すべては(TBICと)同一の結果及び結論を有する。
【0061】
図6は、少量のTBICでVR試験に最良の結果を得ることができることを再度示すものである。
【0062】
本明細書において、好ましい範囲、又はさらに好ましい範囲として規定されるTBICの量は、言うまでもなく、このVR試験の結果と、さらには他のパラメーター、特に架橋ポリマーの熱機械特性によって決まることを明確に理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6