(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606543
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】複合材料からなる音響製品
(51)【国際特許分類】
G10D 13/00 20060101AFI20191031BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20191031BHJP
G10D 1/00 20060101ALN20191031BHJP
【FI】
G10D13/00 250
C08J5/04
!G10D1/00 100
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-507085(P2017-507085)
(86)(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公表番号】特表2017-515167(P2017-515167A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】FI2015050275
(87)【国際公開番号】WO2015162337
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年4月4日
(31)【優先権主張番号】20145374
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】516317584
【氏名又は名称】オイ オール−プラスト アーベー
【氏名又は名称原語表記】OY ALL−PLAST AB
(73)【特許権者】
【識別番号】516317595
【氏名又は名称】フラックスウッド オイ
【氏名又は名称原語表記】FLAXWOOD OY
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】パルタカリ,ヨウニ
【審査官】
千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0090800(US,A1)
【文献】
特開2008−197450(JP,A)
【文献】
実開昭61−024795(JP,U)
【文献】
特開平08−325410(JP,A)
【文献】
米国特許第04818604(US,A)
【文献】
米国特許第04364990(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04
G10D 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセルロース系物質とプラスチック系物質とを含む原材料から、プレス加工、圧縮成形、射出成形、押出、熱によるブロー成形および/または回転成形などの熱可塑性プロセスによって製造される、楽器、楽器の一部または音響設備などの、複合材料からなる音響製品において、該音響製品は、表面修飾セルロースに基づく繊維物質(1)と、プラスチック系物質(2)とからなる材料組成を有し、該音響製品は、三次元において、実質的に木質様であるが、等方性の音伝播を有し、
該複合材料内の表面修飾セルロース繊維(1)間の空間が、連続網目(IPN/相互貫入網目)を形成するプラスチック物質(2)で充填されることを特徴とする音響製品。
【請求項2】
表面修飾セルロース繊維(1)によって形成される連続IPNの形態でその材料を少なくとも部分的に通過する浸透物を有することを特徴とする、請求項1に記載の音響製品。
【請求項3】
音響製品の材料を連続的に通過する、少なくとも表面修飾セルロース繊維物質(1)とプラスチック物質(2)とからなる別個のIPNを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の音響製品。
【請求項4】
音響製品の材料が、表面修飾セルロース繊維物質(1)と、1000μm以下の直径を有する、プラスチック粒子などのプラスチック系物質(2)と、相溶性改良剤(3)とからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の音響製品。
【請求項5】
音響製品の材料が、でんぷん、充填剤、表面活性剤、保持剤、分散剤、浮遊剤および/またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の音響製品。
【請求項6】
製造されるべき音響製品に要求される音響特性によって決定される限度内で、より長い繊維および/または金属、セラミック、天然鉱物成分を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の音響製品。
【請求項7】
音響製品の材料は、ナノセルロールとともに、ナノ粘土、ナノケイ酸塩および/またはナノ炭素繊維剤などのナノ充填物質を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の音響製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料からなる音響製品であって、それに関する独立請求項の前提部分により詳細に規定される、音響製品に関する。
【背景技術】
【0002】
楽器に使用される材料の多様性が高い。木材の他に、いろいろな種類の、金属、プラスチックおよび複合材料が用いられる。しかしながら、それらすべての材料のうち、木材は最も古く、最も多く使用されている。木材は、最も簡単な工具による場合ですら利用可能性および加工性を有し、それが楽器の開発を可能にした。木材の他に、金管楽器およびドラムなどの金属製の楽器がある。新たな複合材解決手段は、特に、バイオリン、打楽器およびギターを作製するときの楽器の製造において使用される。現在、炭素およびガラス繊維系複合材ならびにより新しい木質繊維系複合材が楽器の作製において使用されている。
【0003】
技術的には、音の挙動に関して、木材は、木材の木目構造のために、異方性材料である。音の木目を横断する横断方向の伝播は、典型的には、木目の方向に沿う伝播の1/3〜1/5であるので、楽器における木目の方向は、音の伝播に関して有利となるように選択される。木目の方向を正しく選択することによって、楽器における音伝播に対して不利な方向の影響を最小化することができる。音伝播に関して、木目構造を横断する横断方向は、楽器を通して楽器の共鳴を減衰させ、減速させる。しかしながら、セルロース繊維は、木管楽器に典型的な心地よい柔らかな音を与える。
【0004】
金属は音の挙動に関して等方性材料とみなされ得る。なぜなら、金属において、三次元の音の伝播は、方向にかかわらず、ほぼ同じであるからである。これは、材料が、特に、各ピース片が困難な形状である場合、、特に回転対称な小片(たとえばドラム、金管楽器)の場合、音に素早く反応することを可能とし、演奏に対する楽器の応答をより素早くする。したがって、金属製楽器の音は、より硬質でより明瞭であるが、金属製楽器は、木材に特徴的な音響的柔らかさを欠いている。
【0005】
ガラス繊維および炭素繊維構造は、横断方向における木材の音響特性の弱点を解決するのに試行されてきた。特に、炭素繊維複合材の相対的な軽量性および剛性は、多くの楽器(たとえばバイオリン、チェロ)において利点を証明してきた。編まれた繊維構造の場合、音の伝播は、2つの異なる方向に強く方向付けることができるが、依然として、音の伝播は三次元ではなく、木材に特徴的である音響的な柔らかさが欠けている。また、これらの種類の材料の使用は、典型的には念のはいった手作りであり、このことが手頃なコストで大規模生産を不可能にする理由である。
【0006】
本発明の使用例として、ドラムなどの打楽器について言及可能であり、ドラムは可聴的に鳴動しなければならず、スティックのタッチに敏感でなければならないので、本体およびリムがドラムの音に関して特に意味を持つ。今日でも本体の作製は依然として非常に複雑であり、なぜなら、まず、木材の本体は、典型的には、複数層が積層された木材薄層を曲げて接着することによって、または無垢木材から加工することによって作製されるからである。またドラムのリムは、典型的には、金属から作製される。したがって、ドラムは、等方性材料と異方性材料との組み合わせであり、これによって最適なドラム音が達成できない。
【0007】
天然繊維に基づく複合材料は、今日では乾式粉砕セルロースおよび/または木材粉末と別の熱可塑性プラスチックとの混合物に基づいている。これらのうち、木材粉末は、その粒子の形状および表面特性のために問題がある。これらは、木材粉末粒子がそれ自身の不連続相を熱可塑性プラスチック内に形成するという事実のためであり、充填物質としてだけ機能する木材粉末粒子は、剛性および音の最適な伝播などの楽器の重要な特性の達成を弱体化させるだけである。代わりに、天然繊維の使用は、楽器の実施形態における熱可塑性プラスチック複合材の品質を有意に向上させることが証明された。
【0008】
これに関連して、特に出願公開US2006/0032358には、射出成形において繊維が有利な方向に向くように音響複合材料を製造する際に天然繊維とプラスチックとを使用ことが示されている。したがって、音配向異方性複合構造が製造されており、これの場合には、木材と同種の配向構造を求めようとしている。しかしながら、このように配向された複合材料は、繊維の方向にだけ、木材と同様に音を強く伝播させる。したがって、この材料は異方性であり、音の伝播は、木材と同様に、配向に沿う以外の方向においては弱い。
【0009】
一方、出願公開US2012/0090800には、いわゆる湿式ウェブ形成に基づく中間製品およびその製造方法が示され、これに関連して、繊維原材料およびマトリクスプラスチックが、必要に応じて、いわゆる相溶性改良剤を用いて化学薬品の力を借りて組み合わされている。湿式ウェブ形成による中間製品の製造において製造される複合材は、たとえば着色剤などの他の可能性のある必要物質とともに押出し機に供給されており、これらは混合され、内部にスクリュを有する押出し機のシリンダ内において締まった塊にプレスされ、これによって、該塊がノズルを介して供給されて、たとえばペレット化される。天然繊維複合ペレットまたは粒状物は、たとえば射出成形、押出およびインフレーション成形によって、異なる種類の製品を製造するための原材料として、プラスチック工業において一般的に使用されている。
【0010】
今日の技術にもかかわらず、特に、楽器の音楽的に最適な音に関して、十分に満足するレベルは、たとえば上記の打楽器またはそれらの設備などの音響製品では達成されていない。なぜなら、たとえば金属および木材の良好な音響特性をうまく組み合わせることができていないからである。
【発明の概要】
【0011】
本発明に従う複合材料からなる音響製品の目的は、上述した課題を改善し、したがって先行技術のレベルを実質的に上げることである。この目的を実行するために、本発明に従う複合材料からなる音響製品は、繊維物質およびプラスチック系物質からなる表面修飾セルロースに基づく材料組成を有し、該製品が実質的に木質様であるが、等方性の音を有することを、主として特徴とする。
【0012】
本発明の最も重要な利点として、まず最初に、その音響的特質または木材と同様であるが等方性の他の特性とともに、一方で本発明に従う材料の製造に関する設備の貯蔵の容易さおよび効率によるものである音響的に完全に新しい種類の複合材料を可能にすることを挙げることができる。本発明に従う複合材料は、以前の複合材料とは、材料の配向が次第になくなるように管理されており、複合材の音響特性(たとえば音の伝播)および硬さ品質が三次元的にほぼ比例する点で異なる。したがって、本発明は、その音響特性によって均質な金属構造に似ているが、その組成によって、熱可塑性プラスチックと表面修飾セルロース繊維物質との混合物である複合構造を可能にする。これは、湿式粉砕によってセルロース繊維の一次壁を粉砕して開くことによって達成することができ、その二次層中の微小繊維に到達することができる。小繊維のおかげで、セルロース繊維の反応表面積は顕著に増加し、これは、さらに、繊維間の浸透がたとえば30〜50%重量部に達する混合物を可能にする。「浸透閾値に達する」とは、各繊維が他の繊維を介してすべての他の繊維に接触していることを意味する。このように、小片を通って連続するIPN(相互貫入網目)構造を形成することができる。また、溶融プラスチックが、IPN構造それ自体を形成する繊維間の空間を充填する。したがって、該材料は、特に2つのIPN構造を有する。これら2つのIPN構造は、該材料の音配向特性を徐々に小さくし、そのおかげで音響的に等方性の複合材が形成される。
【0013】
本発明に従う製品によって、音の三次元的なより大きな伝播が楽器において達成され、これは楽器をより敏感に反応させ、至る所でよりよく共鳴させる。にもかかわらず、材料組成の密度のおかげで、金属と比較してより暖かな音を維持することができる。したがって、本発明のおかげで、金属と木材との最も良い音響特性を組み合わせることができ、敏感でかつ良好な共鳴であるが、暖かい音を結果として生じる。
【0014】
したがって、本発明に従う製品は、たとえば少なくとも2つの相(重合体および表面修飾セルロース繊維物質)を有し、その両方がそれ自体IPN構造を形成する材料から製造可能である。なぜなら、湿式粉砕によってセルロース繊維の二次壁から「開いた」繊維が、それぞれとの結合(網目化)およびセルロース繊維の重合体との結合を改善し、接触面積を加えるからである。これに関連して、当然ながら、ナノセルロースおよびナノウィスカなどのさらに湿式粉砕された繊維も用いることができる。IPN構造のおかげで、音の伝播は、配向した、すなわち異方性複合材料と比較したとき、材料内で等方的に方向づけられる。本発明に従う製品において使用されている表面修飾セルロールは、自然界から見出せないので、実際には、それ自体は天然繊維ではない。一方、表面修飾セルロース繊維は、乾式粉砕セルロースとは異なる。なぜなら、乾式粉砕によって、一次壁を選択的に取り払うことはできず、そのために、本発明に従う製品において要求される小繊維構造を達成することができず、したがって、結果としてIPN構造を達成できないからである。
【0015】
乾式粉砕は、構造の小繊維を制御して開くことができないが、代わりに該構造はより小さな大きさに機械的に破断され、粉砕される。水の存在のおかげで、繊維の外壁は、最初に粉砕の切断力に直面し、一次壁が開き、したがって繊維が膨張し得る。二次壁は、大量の水の内に取り込まれる。なぜなら、その中では、ヘミセルロース濃度が最も高いからである。その後、繊維のフィブリル化構造が繊維の表面に近接して解放され開かれる。
【0016】
本発明に従う複合材料からなる製品に関する従属請求項には、本発明の他の有利な実施形態が示される。
【0017】
以下の説明において、本発明が、添付の図面を参照して詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明に従う製品において使用される表面修飾セルロース繊維の形態を示す。
【
図3】本発明に従う製品の製造に関する有利な実施形態を示す。
【
図4】本発明に従う製品を形成する複合材料のIPN構造を示す。
【
図5】繊維配向を変更させながら複合材料の物理的特性の実験測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、少なくともセルロース系物質とプラスチック系物質とを含む原材料から、プレス加工、圧縮成形、射出成形、押出、熱によるブロー成形および/または回転成形などの熱可塑性プロセスによって製造される、楽器、楽器の一部または音響設備などの、複合材料からなる音響製品に関する。
音響製品は、たとえば
図2および
図3に示されるものに従う表面修飾セルロースに基づく繊維物質1と、プラスチック系物質2とからなる材料組成を有し、該製品は実質的に木質様であるが、等方性の音を有する。
【0020】
本発明に従う音響製品の有利な実施形態として、表面修飾セルロース繊維1によって形成される連続網目(IPN/相互貫入網目)の形態で、少なくとも部分的に材料を通過する上述のような浸透物を有する。
【0021】
本発明に従う音響製品のさらに有利な実施形態として、材料中の表面修飾セルロース繊維1間の空間が、連続網目IPNを形成するプラスチック物質2で充填される。これに関連して、さらに有利な実施形態として、
図4に示される原理において、該製品の材料を連続的に通過する、少なくとも表面修飾繊維物質1とプラスチック物質2とからなる別個の網目IPNを有する。
【0022】
さらに、本発明に従う音響製品の有利な実施形態として、該製品の材料は、表面修飾セルロース繊維1と、1000μm以下の直径を有するプラスチック粒子などのプラスチック系物質2と、相溶性改良剤3とからなり、これら物質は、たとえば以下に説明されるように本発明に従う製品を製造するために一緒に処理されてもよい。
【0023】
本発明に従う音響製品のさらに有利な実施形態として、いつでも製造されるべき製品の要求された特性を達成するために、その材料は、でんぷん、充填剤、表面活性剤、保持剤、分散剤、浮遊剤および/またはこれらの混合物を含む。
【0024】
本発明に従う音響製品のさらに有利な実施形態として、製造されるべき製品の要求される音響特性によって規定される制限内で、より長い繊維および/または金属、セラミック、天然鉱物成分を有する。
【0025】
本発明に従う音響製品のさらに有利な実施形態として、その材料は、ナノセルロースとともに、ナノ粘土、ナノケイ酸塩および/またはナノ炭素繊維剤などのナノ充填物質を含有する。
【0026】
本発明に従う製品の製造において、セルロース繊維物質の一次壁は、有利には、少なくともそれぞれとの結合(網目化)およびセルロース繊維の重合体との結合を向上させ、その接触表面積を増加させるその二次壁における小繊維を促進するために、少なくともSR(ショッパー・リーグラ)値25まで湿式粉砕によって破壊される。
【0027】
このように、湿式ウェブ形成および配合または脱揮発などの、湿式粉砕された表面修飾セルロース繊維物質1とプラスチック系物質2との混合および加工によって、表面修飾天然繊維1からなる連続ウェブ(IPN/相互貫入網目)の形態で製造される製品に入る浸透が達成される。これに関連して、セルロース繊維物質の表面修飾セルロース繊維1間の浸透は、セルロース繊維物質の重量部を製造材料の30〜60%にすることによって生み出される。
【0028】
本発明に従う製品の製造において使用される製造材料は、表面修飾セルロース繊維物質1と、プラスチック系物質2と、相溶性改良剤3とをともに混合することによって形成され、製品を製造するために、当該混合物を加圧および/または熱によって機械的に乾燥して、その中の水などの液体を除去する。相溶性改良剤3の量は、典型的には、表面修飾セルロース繊維物質1の量の0.1〜5%である。
【0029】
製品の製造において、相溶性改良剤は、表面修飾セルロース繊維物質1に、その湿式粉砕中に機械的に添加され、
図3に従う化学的表面修飾セルロース繊維物質1;1’も達成される。
【0030】
図1aに示される乾式粉砕木材物質の形態の図を参照して、たとえば乾式粉砕セルロースが角張り、「切断」による以外の方法では粉砕できない。繊維の一次壁は、乾式混合によって破壊することはできず、繊維粉末の表面に微小繊維が存在しない(なぜなら微小繊維は二次壁に存在するからである)。
図1bは、その一部について乾式粉砕木材粉末を示し、該乾式粉砕木材粉末は木材のリグニンおよびヘミセルロースをすべて含有し、繊維状から逸脱して、大部分は丸い形態を有する。
【0031】
図5には、同じ複合材料とは2つの繊維配向(MD:CD/4.0およびMD:CD/1.1)と結び付けられる配合繊維網目の面方向強度および深さ方向強度の図が示される。この図の根拠である試験の両図は、100%の浸透を示し、上側の楕円形状は、強い繊維配向を示し、配向の方向に沿う機械的特性は、横断方向のものよりも優位に大きい。また、下側の、上述のものよりもより明確に円形状の図は、配向を徐々に小さくすることによって、機械的特性を全方向に実質的に等しく達成することができる。繊維網目の機械的特性は、音の伝播と直接相互に関連するので、配向を除去することによって、音の伝播は、実質的に同じ速度で繊維網目において全方向に向けられてもよいことが分かる。このことは、2つの別個のIPN網目を有する複合材料の等方性の部分にも当て嵌まる。
【0032】
冒頭に説明した湿式ウェブ形成についての出願公開によれば、本発明に従う製品の製造において、相溶性改良剤3として、プラスチックと修飾セルロース繊維との間の接着を向上させる物質を使用することができ、これは、プラスチックとプラスチックの反応基と天然繊維と相性がよい、および/または反応する。したがって、相溶性改良剤は、少なくとも1つの反応基を有し、これは、セルロースなどの親水性物質と重合体の反応基と相性がよい、および/または反応する。
【0033】
さらに、相溶性改良剤として、たとえば無水マレイン酸(SMAなど)、マレイン酸グラフト重合体、ポリブタジエン、ポロメチルメタクリレート(PMMA)、EVA、それらの誘導体および混合物を使用することができる。相溶性改良重合体は、親水性天然繊維と相性がよい、および/または反応する基ととともに、疎水性プラスチックと相性がよい、および/または反応する基とを含有する共重合体であってもよい。また、各特性を有する他の分子が、相溶化において使用されてもよい。さらに、相溶性改良剤を、粉末状、液体、および/または重合体の形態で使用することができる。
【0034】
さらに、湿式ウェブ形成に向けられた冒頭に説明した出願公開US2012/0090800では、本発明に従う製品の製造において使用されるべきセルロース繊維物質およびプラスチック物質の部分に対する他の物質代替物が記載されている。
【0035】
本発明に従う製品の製造において、表面修飾セルロース繊維物質に基づく複合材料は、有利には、たとえば、AM(積層造形)技術、すなわち有利には、さらに特に、ナノセルロース強化複合材および/またはセルロース系ナノウィスカ強化複合材を用いることによる、3次元印刷などの材料の添加に基づく製造において使用することができる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、これに代えて、本発明の基本的着想内で、たとえば、いつでも製造される複合材料製品の使用目的に従って、当然修正することが可能である。
【0037】
本発明に従う製品の製造において、必要に応じて、たとえば、でんぷん、充填剤、表面活性剤、保持剤、分散剤、発泡防止剤、およびそれらの混合物などの添加剤を、製造される複合製品に含有することができる。この種の化学物質は、たとえば、このような成分を液体混合物に添加することによるウェブの形成に関連して添加されてもよく、この場合、製造された複合材料は、可能性のあるさらなる処理応用および最終製品の実施形態を視野に入れて、すでに必要な成分をまた含有している。さらに、本発明は、たとえば、製造されるべき製品の他の音響「調整」、たとえば共振周波数の所望の周波数領域への調整などを可能にする。本発明に従う製品において、製品の要求される音響特性によって決定される限度内で、より長い繊維および/または金属、セラミック、天然鉱物成分などを使用することもできる。