特許第6606544号(P6606544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6606544モディファイドリーンNOxトラップを有する排気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6606544
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】モディファイドリーンNOxトラップを有する排気システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20191031BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20191031BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20191031BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20191031BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20191031BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20191031BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20191031BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B01D53/94 222
   B01J29/74 A
   F01N3/08 B
   F01N3/08 A
   F01N3/10 A
   B01J37/02 101D
   B01D53/94 400
   B01J29/90 A
   B01D53/96 500
   B01J38/02
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-507715(P2017-507715)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公表番号】特表2017-532188(P2017-532188A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】IB2015056016
(87)【国際公開番号】WO2016024193
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】62/036,184
(32)【優先日】2014年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スワロー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リード, スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ワイリー, ジェームズ
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−146693(JP,A)
【文献】 特表2010−507480(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118047(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0287658(US,A1)
【文献】 特開2002−089246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
F01N 3/08
B01J 29/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを処理するための排気システムであって、モディファイドリーンNOトラップ(LNT)、尿素注入システム、及びアンモニア−選択的触媒的還元(NH−SCR)触媒を含み、モディファイドLNTが、NOを200℃未満の温度において貯蔵し、かつ貯蔵されたNOを200℃より上の温度において放出し、かつモディファイドLNTが:
(a)NO吸着成分及び1以上の白金族金属を含む第一の層と;
(b)白金族金属、ゼオライト、及び任意選択的にアルカリ土類金属を含むディーゼル酸化触媒ゾーン、並びに白金族金属及びキャリアを含むNO酸化ゾーンを含む第二の層と;
を含む、排気システム。
【請求項2】
尿素注入システムが180℃より上の温度において尿素を注入する、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
NO吸着成分が、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属及びそれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の排気システム。
【請求項4】
アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属及びそれらの混合物が、無機酸化物材料上に担持される、請求項3に記載の排気システム。
【請求項5】
無機酸化物材料が、セリア含有材料又はマグネシア−アルミナである、請求項4に記載の排気システム。
【請求項6】
マグネシア−アルミナが、マグネシウム−アルミン酸塩スピネルである、請求項5に記載の排気システム。
【請求項7】
NO吸着成分がバリウムを含む、請求項1から6の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項8】
第一の層の1以上の白金族金属が、パラジウム、白金、ロジウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項9】
ディーゼル酸化触媒ゾーンのゼオライトが、AEI、CHA、LEV、BEA、FAU及びMFIからなるフレームワークタイプの群から選択される、請求項1から8の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項10】
ディーゼル酸化触媒ゾーンが、アルミナ又はシリカ−ドープアルミナを含む無機酸化物担体を更に含む、請求項1から9の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項11】
NO酸化ゾーンのキャリアが、アルミナ及びセリアを含む、請求項1から10の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項12】
NO酸化ゾーンが、マンガンを更に含む、請求項1から11の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項13】
NH−SCR触媒が、バナジア−チタニア触媒、バナジア−タングスタ−チタニア触媒、及び金属/ゼオライトからなる群から選択される、請求項1から12の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項14】
金属/ゼオライトが、鉄又は銅からなる群から選択される金属、及びAEI、CHA、LEV、BEA(例えば、ベータゼオライト)又はFER(例えば、フェリエライト)からなるフレームワークタイプの群から選択されるゼオライトを含む、請求項13に記載の排気システム。
【請求項15】
NH−SCR触媒が、アンモニア−選択的触媒的還元フィルタ(NH−SCRF)である、請求項1から14の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項16】
NH−SCRFが、バナジア−チタニア触媒、バナジア−タングスタ−チタニア触及び金属/ゼオライトからなる群から選択されるNH−SCR触媒を有するフィルタを含む、請求項15に記載の排気システム。
【請求項17】
(a)NO吸着成分及び1以上の白金族金属を含む第一の層と;
(b)白金族金属、ゼオライト、及び任意選択的にアルカリ土類金属を含むディーゼル酸化触媒ゾーン、並びに白金族金属及びキャリアを含むNO酸化ゾーンを含む第二の層と;
を含む、モディファイドリーンNOトラップ(LNT)。
【請求項18】
車両の内燃機関からの排気ガスを処理するための方法であって:
(a)排気ガスを請求項17のモディファイドリーンNOトラップ(LNT)上に通過させて、排気ガスからの窒素の酸化物(NOを200℃未満の温度において除去し、かつNOを200℃より上の温度において放出することと;
(b)180℃より上の温度においてモディファイドLNTの下流の排気ガス中に尿素を注入することと;
(c)モディファイドLNTから放出されるNOを含有する排気ガス及び尿素をNH−SCR触媒上に通過させて、NOを窒素に変換することと;
を含む方法。
【請求項19】
モディファイドLNTをリッチな空気:燃料比の環境下で500℃より上の温度に定期的に供して、モディファイドLNT上に蓄積された硫黄を除去することを更に含む請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理するための排気システム、及び内燃機関からの排気ガスを処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、政府法規の対象である窒素酸化物(「NO」)と一酸化炭素と未燃炭化水素とを含む種々の汚染物質を含有する排気ガスを生じる。排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用され、かつ典型的には、一旦それらがそれらの作動温度(典型的には、200℃以上)に達すると、非常に高い効率を達成する。しかしながら、これらのシステムは、それらの作動温度未満(「コールドスタート」期間)で相対的に非効率である。
【0003】
例えば、Euro 6bに応じるために実施される現在の尿素ベースの選択的触媒的還元(SCR)アプリケーションは、尿素が投与されてかつNOを変換するように使用され得る前に、尿素投与位置における温度が約180℃より上であることを、要求する。180℃未満でのNO変換は、現在のシステムを使用して扱うことが難しく、かつ将来の欧州及び米国法規は、低温NOx貯蔵及び変換に重点を置くであろう。現在、加熱ストラテジによりこれが達成されるが、これはCO排出物の有害な効果を有する。
【0004】
国家及び地域のより一層厳重な法規がディーゼル又はガソリン機関から排出されてよい汚染物質の量を低下させるので、コールドスタート期間の間に排出物を低減させることは、主たる挑戦になる。したがって、コールドスタート条件の間に排出されるNOのレベルを低減させるための方法は、調査され続ける。
【0005】
例えば、PCT国際出願WO 2008/047170は、リーン排気ガスからのNOが200℃未満の温度において吸着され続いて200℃より上の温度で熱的に放出されるシステムを開示する。NO吸着剤は、パラジウム、及びセリウム酸化物若しくは混合酸化物、又はセリウム及び少なくとも1の他の遷移金属を含有する複合酸化物からなることが教示される。
【0006】
米国出願公開第2011/0005200号は、アンモニア選択的触媒的還元(「NH−SCR」)触媒製剤をリーンNOトラップの下流に配置することにより、同時にアンモニアを除去してかつ正味のNO変換を向上させる、触媒システムを教示する。NH−SCR触媒は、リッチパルスの間に発生するアンモニアをリーンNOトラップ中で吸着することが教示される。貯蔵されたアンモニアは、その後、リーンNOトラップの上流から排出されるNOと反応し、そしてそれが、貯蔵されたアンモニアを使い尽くす一方でNO変換率を増加させる。
【0007】
PCT国際出願WO 2004/076829は、SCR触媒の上流に配置されたNO貯蔵触媒を含む排気ガス精製システムを開示する。NO貯蔵触媒は、少なくとも1の白金族金属(Pt、Pd、Rh又はIr)でコーティング又は活性化される少なくとも1のアルカリ、アルカリ土類又は希土類金属を含む。特に好適なNO貯蔵触媒は、白金でコーティングされたセリウム酸化物、及び追加的に、アルミニウム酸化物ベースの担体上の酸化触媒としての白金を含むことが教示される。EP 1027919は、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、チタニア及び/又はランタナのような多孔質担体材料、並びに少なくとも0.1重量%の貴金属(Pt、Pd及び/又はRh)を含むNO吸着剤材料を開示する。アルミナ上に導入される白金が例示される。
【0008】
任意の自動車のシステム及び方法と同様に、排気ガス処理システム、特にコールドスタート条件下、において一層更なる改善を達成することが望まれている。良好なCO酸化活性を維持し、かつサルフェーションによる不活性化に対する耐性を示す一方でコールドスタート期間の間にNO排出物を低減し得るシステムを、我々は発見した。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理するための排気システムである。システムは、モディファイドリーンNOトラップ(LNT)、尿素注入システム及びアンモニア選択的触媒的還元(NH−SCR)触媒を含む。モディファイドLNTは、第一の層及び第二の層を含む。第一の層は、NO吸着成分及び1以上の白金族金属を含む。第二の層は、ディーゼル酸化触媒ゾーン及びNO酸化ゾーンを含む。ディーゼル酸化触媒ゾーンは、白金族金属、ゼオライト及び任意選択的にアルカリ土類金属を含む。NO酸化ゾーンは、白金族金属及びキャリアを含む。モディファイドLNTは、NOを、約200℃未満の温度において貯蔵し、かつ約200℃より上の温度において放出する。本発明は、モディファイドLNT、及びモディファイドLNTを使用する方法も含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モディファイドLNTを用いた機関試験からの累積的なNOを示す。
図2】NO吸着材を含む第一の層上にディーゼル酸化触媒ゾーン及びNO酸化ゾーンを含むLNTについてのNO/NO比の改善された濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理するための排気システムである。システムは、モディファイドリーンNOトラップ(LNT)を含む。リーンNOトラップは、当該技術分野でよく知られている。リーンNOトラップは、典型的には、リーン排気条件下でNOを吸着し、吸着されたNOをリッチ条件下で放出し、かつ放出されたNOをNに還元するように、設計される。
【0012】
LNTは、典型的には、NO貯蔵成分、酸化成分及び還元成分を含む。NOx貯蔵成分は、好ましくは、(バリウム、カルシウム、ストロンチウム及びマグネシウムのような)アルカリ土類金属、(カリウム、ナトリウム、リチウム及びセシウムのような)アルカリ金属、又は(ランタン、イットリウム、プラセオジム及びネオジムのような)希土類金属、又はそれらの組み合わせを含む。金属は、典型的には、酸化物の形態で見られる。典型的には、白金は、酸化機能を果たすように含まれ、かつロジウムは、還元機能を果たすように含まれる。これらの成分は、1以上の担体上に含有される。
【0013】
酸化/還元触媒及びNOx貯蔵成分は、好ましくは、排気システム内での使用のためのLNTを形成するように無機酸化物のような担体材料上に担持される。
【0014】
本発明のモディファイドLNTは、それらがNOを約200℃未満の温度において貯蔵してかつ貯蔵されたNOを約200℃より上の温度において放出するように好ましくは設計される既知のLNTとは異なる機能、を有するように設計される。貯蔵されたNOの放出は、熱的にもたらされてよく、又はリッチパージによりもたらされてもよい。
【0015】
モディファイドLNTは、第一の層及び第二の層を含む。第一の層は、NO吸着成分及び1以上の白金族金属を含む。NO吸着成分は、好ましくは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属及びそれらの混合物を含む。アルカリ土類金属は、好ましくは、バリウム、カルシウム、ストロンチウム又はマグネシウムである。アルカリ金属は、好ましくは、カリウム、ナトリウム、リチウム又はセシウムである。希土類金属は、好ましくは、ランタン、イットリウム、プラセオジム又はネオジムである。最も好ましくは、NO吸着成分はバリウムを含む。
【0016】
利用される場合、アルカリ土類金属、アルカリ金属、希土類金属又はそれらの混合物は、好ましくは、無機酸化物上に担持されてよい。無機酸化物材料は、好ましくは、セリア含有材料又はマグネシア−アルミナである。セリア含有材料は、好ましくは、セリア、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−アルミナ又はそれらの混合物である。より好ましくは、セリア含有材料は、セリア、特に微粒子セリアである。マグネシア−アルミナは、好ましくは、スピネル、マグネシア−アルミナ混合金属酸化物、ハイドロタルサイト又はハイドロタルサイトのような材料、及びそれらの2つ以上の組み合わせである。より好ましくは、マグネシア−アルミナ担体はスピネルである。
【0017】
アルカリ土類金属、アルカリ金属又は希土類金属成分は、任意の既知の手法により無機酸化物材料上に担持されてよく、添加の方法は、特に重要だとは考えられない。例えば、バリウム化合物(酢酸バリウムのような)は、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウエットネス又は沈殿等により、セリア含有材料に添加されてよい。好ましくは、第一の層は、少なくとも2.5重量%のバリウムを含む。
【0018】
白金族金属は、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム又はそれらの混合物である。白金及びパラジウムは、特に好適である。
【0019】
好ましくは、第一の層は担体も含む。担体は、好ましくは、第2、第3、第4、第5、第13及び第14族元素の酸化物である。最も好ましくは、担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、それらの任意の2以上の混合酸化物又は複合酸化物、及びそれらの混合物である。
【0020】
好適な担体は、10から1500m/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の細孔体積、及び約10から1000オングストロームの細孔直径を好ましくは有する。80m/gを上回る表面積を有する高表面積担体は、特に好適である。
【0021】
第二の層は、ディーゼル酸化触媒ゾーン及びNO酸化ゾーンを含む。ディーゼル酸化触媒ゾーンは、白金族金属、ゼオライト及び任意選択的にアルカリ土類金属を含む。任意選択的なアルカリ土類金属は、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム、より好ましくは、バリウムである。白金族金属は、好ましくは、白金及びパラジウムを含む。好ましくは、ディーゼル酸化触媒ゾーン中のPd:Pt比は、0.25から1の範囲にわたる。
【0022】
ゼオライトは、任意の天然又は人工的なゼオライトであってよく、好ましくは、アルミニウム、ケイ素及び/又はリンで構成される。ゼオライトは、典型的には、酸素原子の共有により結合されるSiO、AlO及び/又はPOの三次元配置を有するが、同様に二次元構造でもあってよい。ゼオライトフレームワークは、典型的にはアニオン性であり、そしてそれは、電荷補償するカチオン、典型的には、アルカリ及びアルカリ土類元素(例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr及びBa)、アンモニウムイオン並びにまたプロトン、により相殺される。
【0023】
好ましくは、ゼオライトは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、金属置換アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、金属置換アルミノリン酸塩ゼオライト、シリコアルミノリン酸塩ゼオライト又は金属置換シリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択される。
【0024】
ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、MFI、FER、MWW、EUO、CON、BEA、FAU、MOR及びEMTのフレームワークタイプを有するゼオライト、同様に任意の2以上の連晶又は混合物も、特に好適である。最も好ましくは、ゼオライトは、AEI、CHA、LEV、BEA(例えば、ベータゼオライト)、FAU(例えば、ゼオライトY)又はMFI(例えば、ZSM−5)のフレームワークタイプを有する。
【0025】
ディーゼル酸化触媒は、好ましくは、マンガンも含む。
ディーゼル酸化触媒ゾーンは、好ましくは、無機酸化物担体も含む。無機酸化物担体は、第2、第3、第4、第5、第13及び第14族元素の酸化物を好ましくは含む。最も好ましくは、担体は、アルミナ、又はシリカドープアルミナ担体である。
【0026】
NO酸化ゾーンは、白金族金属及びキャリアを含む。白金族金属は、好ましくは、白金及びパラジウムを含む。好ましくは、NO酸化ゾーン中のPd:Pt比は、0から0.25の範囲にわたる。
【0027】
キャリアは、好ましくは、アルミナ、シリカ、セリア含有材料、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、任意の2以上のそれらの混合酸化物又は複合酸化物(例えば、シリカ−アルミナ、マグネシア−アルミナ)及びそれらの混合物である。セリア含有材料は、好ましくは、セリア、セリア−ジルコニア、セリア−ジルコニア−アルミナ又はそれらの混合物であり、より好ましくは、セリア含有材料は、セリア、特に微粒子セリア、である。アルミナ及びセリアのようなキャリアの混合物は、特に好適である。
【0028】
NO酸化ゾーンは、好ましくは、マンガンを含んでよい。
NO酸化ゾーンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、バリウム、を含有してよいが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属成分が実質的に無くてもよい。「実質的に無い」により、アルカリ金属又はアルカリ土類金属がNO酸化ゾーンへ故意に添加されないことが意味される。好ましくは、「実質的に無い」は、NO酸化ゾーンが、0.1重量%未満のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、より好ましくは0.05重量%未満のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有し、最も好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有しないことを意味する。
【0029】
モディファイドLNTは、好ましくは、基材を含む。基材は、好ましくは、セラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、任意の適切な耐火性材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、ケイ素窒化物、ケイ素炭化物、ジルコニウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンのような)、又は任意の2以上のそれらの混合酸化物若しくは混合物で作製されてよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩及びケイ素炭化物は、特に好適である。
【0030】
金属基材は、任意の適切な金属、特に耐熱性金属並びに金属合金、例えば、チタン及びステンレス鋼、同様に、他の微量金属に加えて、鉄、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムを含有するフェライト系合金で作製されてよい。
【0031】
基材は、好ましくは、フロースルー基材又はフィルター基材である。最も好ましくは、基材は、フロースルー基材である。特に、フロースルー基材は、基材を通り軸方向に延び基材全体にわたる多くの小さく平行な薄壁チャンネルを有するハニカム構造体を好ましくは有するフロースルーモノリスである。
【0032】
基材のチャネル断面は、任意の形であってよいが、好ましくは、四角形、シヌソイド、三角形、長方形、六角形、台形、丸又は楕円である。
【0033】
基材に添加された場合、モディファイドNOトラップの層は任意の順序で基材上に配置されてよいが、好ましくは、第一の層が基材上に配置され、かつ第二の層が第一の層上に配置される。第二の層のディーゼル酸化触媒ゾーンは、排気ガスがNO酸化ゾーンと接触する前にディーゼル酸化触媒ゾーンとまず接触するように、好ましくは、NO酸化ゾーンの上流に配置される。
【0034】
本発明のモディファイドNOトラップは、当該技術分野でよく知られた方法により調製されてよい。好ましくは、NOトラップは、ウォッシュコート法を用いて2つの層を基材上に付着させることにより調製される。
【0035】
好ましくは、基材の全体長さは、第一の層のウォッシュコートが基材の表面全体を覆うように、第一の層スラリーでコーティングされる。前端部からの基材の長さの一部は、ディーゼル酸化触媒ゾーンでコーティングされ、一方で基材長さの残部は、NO酸化ゾーンでコーティングされる。
【0036】
本発明のモディファイドLNTは、NOを約200℃未満の温度において貯蔵し、かつ貯蔵されたNOを約200℃より上の温度において放出する。
【0037】
本発明の排気システムは、アンモニア選択的触媒的還元(NH−SCR)触媒も含む。NH−SCR触媒は、当該技術分野でよく知られている任意の既知のNH−SCR触媒を含んでよい。NH−SCR触媒は、窒素化合物(アンモニア又は尿素のような)との反応によりNOをNに還元する触媒である。
【0038】
好ましくは、NH−SCR触媒は、バナジア−チタニア触媒、バナジア−タングスタ−チタニア触媒又は金属/ゼオライトから構成される。金属/ゼオライト触媒は、金属及びゼオライトを含む。好適な金属は、鉄及び銅を含む。
【0039】
ゼオライトは、任意の天然又は人工的なゼオライトであってよく、好ましくは、アルミニウム、ケイ素及び/又はリンで構成される。ゼオライトは、典型的には、酸素原子の共有により結合されるSiO、AlO及び/又はPOの三次元配置を有するが、同様に二次元構造であってもよい。
【0040】
ゼオライトフレームワークは、典型的にはアニオン性であり、そしてそれは、電荷補償するカチオン、典型的には、アルカリ及びアルカリ土類元素(例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr及びBa)、アンモニウムイオン並びにまたプロトンにより相殺される。
【0041】
好ましくは、ゼオライトは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、金属置換アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、金属置換アルミノリン酸塩ゼオライト、シリコアルミノリン酸塩ゼオライト又は金属置換シリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択される。
【0042】
ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、MFI、FER、MWW、EUO、CON、BEA、FAU、MOR及びEMTのフレームワークタイプを有するゼオライト、同様に任意の2以上の連晶又は混合物も、特に好適である。最も好ましくは、ゼオライトは、AEI、CHA、LEV、BEA(例えば、ベータゼオライト)又はFER(例えば、フェリエライト)のフレームワークタイプを有する。
【0043】
NH−SCR触媒は、上記のように、好ましくは、セラミック又は金属基材上にコーティングされる。基材は、典型的には、車両排気が通過する多くのチャネルを提供するように設計され、チャネルの表面は、好ましくは、NH−SCR触媒でコーティングされるであろう。
【0044】
NH−SCR触媒のための基材は、フィルタ基材又はフロースルー基材であってよい。好ましくは、NH−SCR触媒は、アンモニア選択的触媒的還元フィルタ(NH−SCRF)として既知のフィルタ上にコーティングされる。SCRFは、NH−SCR及び微粒子フィルタの機能性を組み合わせる単一基材装置である。それらは、内燃機関からのNO及び微粒子排出物を低減するように使用される。
【0045】
本発明のシステムは、尿素注入システムを更に含む。尿素注入システムは、好ましくは、NH−SCR触媒の上流及びモディファイドLNTの下流の排気ガス流中に尿素を注入する尿素注入器を含む。尿素注入システムは、好ましくは、尿素溶液のよく規格化された液滴を生じるようなノズルからなる。液滴サイズは、好ましくは、急速エバポレーション及び尿素分解が可能となるように、500マイクロ未満である。注入器の圧力及びポンプ速度は、排気ガス流における効果的な混合を可能にするようなものであろう。
【0046】
尿素注入システムは、好ましくは、尿素タンク、輸送ライン、及び、場合により尿素溶液の凍結を避けるための加熱システムからもなるであろう。
【0047】
好ましくは、尿素注入システムは、約180℃より上の温度において尿素を注入する。
【0048】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理するための方法も含む。方法は、上記のモディファイドLNTに排気ガスを通過させることを含む。モディファイドLNTは、約200℃未満の温度において排気ガスからの窒素の酸化物(NO)を除去し、かつ約200℃より上の温度においてNOを放出する。約180℃より上の温度において、尿素は、モディファイドLNTの下流の排気ガス中に注入され、モディファイドLNTから放出されたNOを含有する排気ガス及び尿素は、NH−SCR触媒上を通過する。放出されたNOは、NH−SCR触媒上でのアンモニア(尿素から発生する)とNOの反応により窒素に変換される。放出されたNOは、低温度においてモディファイドLNT上に貯蔵されてその後高温度において放出されるNOであり、かつ貯蔵されることなくNH−SCR触媒上を通過するNOも含む。
【0049】
好ましくは、モディファイドLNTは、リッチな脱硫工程に定期的に供される。硫黄化合物の酸化が排気ガス中の硫黄酸化物をもたらすので、燃料中の硫黄化合物の存在は、モディファイドLNTに有害であり得る。LNT中で、硫黄酸化物は、白金族金属上で硫黄三酸化物へと酸化され得、かつLNT表面上に硫酸塩面を形成し得る(例えば、バリウム酸化物又はバリウム炭化物は、硫黄三酸化物と反応してバリウム硫酸塩を形成する)。これらの硫酸塩は、硝酸塩より安定であり、かつ脱硫するためにより高い温度(>500℃)を必要とする。モディファイドLNTが、低いバリウム含有量を有する場合、より低い脱硫温度は、有用であってよい。
【0050】
リッチな脱硫において、モディファイドLNTは、典型的には、硫黄除去を果たすようなリッチな空気:燃料比の環境中で約500℃より上の温度に供される。脱硫は、好ましくは、後の燃料注入を通して排気温度を増加させることにより実施される。脱硫法は、単一、連続的なリッチ期間、又は一連の短いリッチな空気対燃料比のパルスを含んでよい。
【0051】
以下の例は、本発明を例示するものにすぎない。当業者は、本発明の精神及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【実施例1】
【0052】
モディファイドLNTの調製
モディファイドLNT 1A
400セル毎平方インチ(cpsi)フロースローコーディエライト基材モノリスは、2層を含むNO吸着触媒製剤でコーティングされる。より低い方の層のウォッシュ―コートは、Pt、Pd、28%のCe/マグネシウム−アルミン酸塩スピネル及び66%セリア(総セリアローディングの95%は、7%Baを含有する微粒子セリアを含む)を含む。ウォッシュコートは、WO 99/47260に記載の方法を使用して未使用の基材上にコーティングされ、後に、100℃において通風乾燥機で30分間乾燥させること、及びその後500℃において2時間熱することが続く。
【0053】
第二のスラリーは、スラリー化及びミリングされてd90<20マイクロとなるアルミナからなり、後に、適切な量の溶融白金及びパラジウム塩、並びに50%アルミナ及び50%微粒子セリアを与えるような微粒子セリアの添加が続き、調製される。第二のスラリーは、出口チャネルを介して、か焼されたより低い方の層に塗布される。部分は、500℃において乾燥及びか焼される。
【0054】
水中でスラリー化及びミリングされてd90<20マイクロとなるシリカドープアルミナ粉末からなる第三のスラリーが調製される。バリウム酢酸塩は、スラリーに添加され、後に、適切な量の溶融白金及びパラジウム塩が続く。スラリーは、その後、81%ドープシリカアルミナ及び19%ベータゼオライトを与えるようなベータゼオライトの添加の前に、均質化するように30分間撹拌される。第三のスラリーは、入口チャネルを介して、か焼されたより低い方の層に塗布される。部分は、89g/ft Pt及び30g/ft Pdの総PGMローディングを与えるように、500℃において乾燥及びか焼された。
【0055】
比較LNT 2
400セル毎平方インチ(cpsi)フロースルーコーディエライト基材モノリスは、Pt、Pd、Ce/マグネシウム−アルミン酸塩スピネル、Baコーティングされた微粒子セリアを含み33%のCe/マグネシウム−アルミン酸塩スピネル、61%のセリア(総セリアローディングの93%は、7%Baを含有する微粒子セリアを含む)並びに113g/ftのPt及びPdを含有する単一層を含むNO吸着触媒製剤でコーティングされる。ウォッシュコートは、WO 99/47260に記載の方法を使用して未使用の基材上にコーティングされ、後に、100℃において通風乾燥機で30分間乾燥させること、及びその後500℃において2時間熱することが続く。
【実施例2】
【0056】
機関試験
モディファイドLNT 1A及び比較LNT 2(1.4Lの触媒体積)は、5時間、800℃において、水熱的にエージングされる。各LNTは、100kphクルーズでラムダ0.95において5sのリッチパージを用いる4回のNEDCサイクル走行により、低圧力排気ガス再循環(EGR)を用いる1.6リットル機関上で事前調節される。評価は、その後、2.2リットル機関上でNEDC運転サイクルにわたり実施される。リッチなパージングは、評価の間で用いられない。
【0057】
結果は、モディファイドLNT 1Aが、約200℃まで約0.5gのNOを貯蔵し、その後貯蔵されたNOのほとんど完璧な熱的放出が200から300℃まで続くことを示し、それは、本発明のモディファイドLNTがNH−SCRシステムで使用可能であることを示す。図2は、モディファイドLNT 1Aの設計が、LNT後のNO/NOx比を、比較LNT 2についての5−20%と比較して20−40%に増加させることを示す。表1は、リッチなパージング無しで4回のNEDCにわたり、はるかに上回るCO変換、及び酸化不活性化に対する大いに改善された安定性を示す、モディファイドLNT 1Aを用いた排気管CO排出物を記載する。表2は、はるかに上回るHC変換を示すモディファイドLNT 1Aを用いる排気管HC排出物を記載する。
図1
図2